バーチャルグランドオーダー
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1 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/10 06:35:39 ID:e2ryl5IgSn
鯖化Vtuberを皆で妄想するスレ様から着想を頂いて書くSSの長い奴です

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2 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:37:21 ID:e2ryl5IgSn
『第一特異点 炎上汚染界隈youtube』

「……どうしたもんですかね……これ」

 馬の覆面を被った奇人、もといばあちゃるは冬の青空を見上げ一人語散る。

「ねえ馬!しっかりして、ぼんやりしてたらシロ、置いていっちゃうよ?」
「はーいはいはいはいシロちゃん、今しっかりしましたから置いて行かないで下さいね」

 今ばあちゃるに楽しげに話しかけているのは白髪青目の幼びた美少女、電脳少女シロだ。

「いやぁ、でもこの状況何なんですかね、ヤバーしですよヤバーし」

 ばあちゃるは困惑していた。
 会社の健康診断の結果を受け取りに行っただけの筈が突然連れ去られ、気が付けばシロと名乗る美少女とともに雪山を連行されている。
 シロが友好的なこととばあちゃるの馬のマスクがシロに受けたのもあり和気藹々とした雰囲気ではあるものの、現在進行形で誘拐されているのは紛れもない事実である。
 そうこう思い悩みながら真白な雪をギュウと踏み固め雪山を登っていると、ポツリと小さく建物が見えてくる。

「シロちゃんに質問していいっすかね」
「ん&#12316;&#12316;良いよ!どんな質問?」
「オイラが連れていかれるであろうあそこの建物が何なのか教えて欲しいんですよハイハイハイハイ」
「そういう事ね、おけまる!あそこはねぇ、未来の観測所、それ以外の役割もあるけど、まぁいくらでも説明する時間は有りますし&#12316;」
「未来の観測所?何かヤバーシーっすね」

3 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:37:52 ID:e2ryl5IgSn
>>2
 ポツリとだけ見えていた建物は近づく程にグングンと存在感を増し、十分も歩かない内に到着した。
 シロが扉を開けばそこには巨大な大広間が広がっている。
 如何にも近未来チックな内装と、不可思議な紋様で埋め尽くされた床。そしてその中央に浮かぶ金髪の女性の似顔絵に立体感を足したようなもの、それが大広間の中央にズンと鎮座している。
「アレは……なんすか?」
「アレこそが、この未来観測所ブイデアの要、未来演算及び時間跳躍装置、KANGONだよ。凄いでしょ」
 

4 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:39:07 ID:e2ryl5IgSn
>>3
「KANGON?随分変わった名前っすね、と言うかサラッとヤバーし気な単語が」
「そーだねぇ、今の事情含めて説明出来る子がいるんだけど、、、いた!あずきちゃん!」
「ハァイ」

 背後から突然返事が聞こえたことに驚き、その弾みで前にバタンと倒れてしまう。咄嗟に手を突いたおかげで怪我は無いが、馬のマスクが90度程回転し古代エジプトの壁画のような珍妙な姿になってしまう。

「キュアアアッッwww、ごめん、ちょっと待って、笑っちゃうwww人の不幸を笑っちゃ駄目っておじいちゃんに言われてるのにwww」
「ハイハイハイハイ、ばあちゃる君はね全然不幸になって無いので笑ってもね問題無いですよ」
「www…………ふぅ、ありがとう。じゃあ改めて紹介するね、この子は木曽あずきちゃん。このブイデアの主席研究員でKANGONを実用化した凄い子なんじゃぁ」
「それは凄いっすね、そんな子がオイラに説明してくれるなんてばあちゃる君感激ですよ」
「ハァイ、あずきですぅ。さっきは驚かせてすみませんでした。呼び名なんですけど、あずき、あずきち、どんな風に呼んでもらっても構いません。でも、出来れば強そうな名前でお願いしますぅ」

 紫髪隠れ目の大人しそうな見た目、しかし内面はいい意味で掴みどころが無い。それがばあちゃるの受けた木曽あずきの印象だった。

5 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:40:55 ID:e2ryl5IgSn
>>4
 あずきはスタスタとKANGONの前まで歩くとばあちゃる達を手招きする。

「ハイハイハイハイ、これがKANGONでいいんすよね?改めて見るとなかなかヤバーしな見た目っすね」
「ハァイ、これこそ未来観測器KANGONですぅ。元々は神道の家の家宝だとか、色んな逸話があるんですけど、、、まぁ良いや。未来観測やはたまた未来から物を持ってこれたりと時間に関してなら一見万能なんですけど、、、とりあえず触れて見てください。」

 そう言われ、ばあちゃるは恐る恐るKANGONに手を触れる。そしてその瞬間流れ込む強烈なイメージ。
 燃え盛る室内、崩落する天井、瓦礫が四肢を砕き潰す音。
 その余りの内容とリアリティに打ちのめされ、思わず床に座り込む。

「フゥ……フゥ……」
「馬、大丈夫?息が相当荒いよ……」
「多分、嫌な未来が見えたんだと思いますぅ。でも安心してください、半年前からKANGONの未来観測は当たたっていません。」
「……え?そ、そうなんすか。それは良かったーーーそれヤバく無いっすか!?」
「ハァイ、かなりヤバいです。半年前までですら未来観測の精度は3割程度だったのに、今じゃ0割。2つ目の能力しか機能していないですぅ。」

 ばあちゃるは会話をしながら考えを整える。
 あずきの言葉をそのまま受け取るなら、あの流れ込んできたイメージが現実になる事は無いと言うことだろう。あってまだ数分だが、あずきが嘘をつくようには見えない。だから、あの光景が現実になる事は無い、無いのだ。強く自分に言い聞かせた。

6 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:42:57 ID:e2ryl5IgSn
>>5
「………えーっと、2つ目の能力と言うと時間跳躍、であってるすよね」
「そうです。時間跳躍ですぅ。未来や過去から物を取り寄せたり、こちらから未来や過去に行くことも可能です。ちなみに、私やシロさんはKANGONを用いて未来から呼び出された英霊なんですけどね」
「そう!そうなの!シロ達は英霊なんだ!あとあずきちゃんは恥ずかしがって言わないけど……任意の未来や過去に行く方法を確立したのはあずきちゃんなんじゃぁ」
「恐縮ですぅ」

 ポウと頬を染めるあずきとばあちゃるの驚く顔を見て得意げなシロ。
 英霊、英霊なら知っている。新入りとの話題づくりの為に見たfateで聞いた言葉だ。嘗て世界に名を刻んだ英雄達、それらが仮初の命を得た存在。

「まだまだこれからの事とか話すべき事は沢山あるんですけどぉ、それは明日説明しますね。」
「……そうっすね。そろそろばあちゃる君頭がパンクしそうなんで嬉しいっす」

7 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:45:41 ID:e2ryl5IgSn
>>6
 あずきとシロに別れを告げた後、寝泊まりする部屋へと案内される。
 近未来的な扉を開けると、部屋の中は温もりを感じる木張りの内装、趣味の良い家具、それと先客がいた。それは死にそうな雰囲気を出しながら書類と格闘していた。
 机にかじり付くその先客は小麦畑のような金髪にアホ毛をぴょこんと生やした、中性的な少女だった。
 
「あのー」
「あっ、ごめん。すぐ片付けるからちょっと待っててね」
「ハイハイハイハイ、終わるまでやっちゃっても全然大丈夫っすよ。オイラこれからお風呂入るんでねハイ」
「うん、ありがとう。でも大丈夫、仕事が丁度一段落したところだから。あと、僕の名前は牛巻りこ、君の名前は?」
「オイラの名前はばあちゃるでフゥ。大分疲れてる様に見えるっすけど大丈夫なんすか?」
「全然大丈夫だよ!平気平気!もう慣れっこだしね」
「それ大丈夫なんすかね……」

 牛巻と駄弁っていると、牛巻の目見麗しい姿と強い個性、そこからシロとあずきを連想する。

「そう言えば、りこりこも英霊、なんすか?」
「そうだよ。牛巻達は13人の英霊なんだ。シロちゃん、あずきちゃん、めめめちゃん、すずちゃん、いろは、ふたばちゃん、イオリン、なとりちゃん、ピノちん、ちえりちゃん、牛巻、もちにゃん、夜桜ちゃん。しめて13、凄く多いでしょ」
「いやー思ったより多いっすね。顔写真とかもあるっすかね。顔と名前一致させときたいんでねハイ」
「もちろんあるよ。なんたって牛巻はブイデア全員の健康の管理をになっているからね!」
「それって……まあ無理はしないで下さいね、、、おお!どの子もかわいいっすね」

8 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:48:12 ID:e2ryl5IgSn
>>7
 渡された写真に写る13人の子達。どの子も百人いれば百万人が振り返るような美少女だった。これからこの子達と仕事をするのが楽しみだ、と思った時。ふとばあちゃる自身の日常を思い出す。
 部下を笑わせようとしてよく滑る上司、生意気だが根はまっすぐな部下、先月結婚したばかりの同僚、さんざん自慢されたのを覚えている。両親とは年に数度しか会え無いが、それでも大切な家族だと間違いなく言える。そんな思い出が堰を切ったようにどんどんと溢れ出てくる。
 堪えきれずソファーに座り込む。馬のマスク内部の湿度がほんの少し上昇する。

「大丈夫?」
「大丈夫っす……いや、少しだけ大丈夫じゃ無いですね。なんで俺は攫われたんですかね……いつになったら俺は帰れるんですかね」
「それは……そうだね。少しくらい早く教えてあげても大丈夫だよね、うん。難しい事は省いて説明するね。ここ一年程、世界はあちこちが切り取られて無かったことにされているんだ。牛巻達もKANGONを使って過去の世界と見比べて初めて気づいたんだよ」
「世界が切り取られる?」
「そう、そして無かったことになる。家族や友人、恋人が切り取られた場所にいれば、その人達は居なかった事になる」
「なんすかそれ。そんなのどう仕様もないじゃ無いっすか……」

 ばあちゃるは更に姿勢を低くして座る。
 これからは大切な人や思い出を失ったことにすら気づけない恐怖に気づき、更に気分が沈む。

9 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:49:46 ID:e2ryl5IgSn
>>8
「いや、どうにかする方法はある。切り取られた世界は寄せ集められて、3個の世界を作っているの。そして各世界には、切り取られた世界のパーツを繋ぎ止める楔の様なものがあると見てる。だから牛巻達が楔を壊せば世界はもとに戻る筈なんだよ」
「なるほど、突飛な話ですがばあちゃる君は信じまフゥ。でも、なんでオイラなんすかね。ばあちゃる君魔術とかわからないっすよ」
「それはね、ばあちゃる含めて十人程しかその3つの世界に行けないからなんだ。その世界はただの時間跳躍じゃ辿り着けないifの時間軸に位置してるの、牛巻達はKANGONの雑さを利用して無理矢理行かないと行けないから本当に適正のある人間は少ないの。」

 ばあちゃるは背筋を伸ばし、さっきよりも明朗な声を作る。

「そうっすね、確かにばあちゃる君には頑張る理由があるみたいですねハイハイハイ」
「酷い事を言ってるのはわかってる。でも今は、今だけはお願いします」
「いやいやいやいや、全然大丈夫っすよ、りこりこ。ばあちゃる君は大人なんでねハイハイ」
「うん、ありがとう」

 会話がひと仕切り終わると牛巻は書類を持ち部屋を退出する。
 ばあちゃるはそれを見届けると、着替える事も忘れ、ベットに倒れ込み、眠りにおちる。

10 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:50:37 ID:e2ryl5IgSn
>>9
 深夜、ばあちゃるは赤い光とサイレンに突然叩き起こされる。
 慌てて部屋の外に出ればそこに見えるのは赤く燃え盛る廊下、罅割れてコンクリートを剥き出しにした青白い床、歯抜けの天井から覗く満天の星空。
 
「ちょいちょいちょい!何なんすかこれ!?ばあちゃる君まだ夢でも見てるんすかね!?」
「いーや馬、これは夢じゃ無いよ。現実だよ」
「あ!シロちゃんじゃないすか!と、とりあえず他の人達は?他の人達は無事なんすか!?」
「そうだよー、シロだおー。ブイデアの人達に関しては安心して、今管理室にいるリコちゃんとあずきちゃんがスタッフの保護をしてるから。シロが思うに、あの二人がいればここの人達は大丈夫。だから馬、今は馬が一番危ないの、早く行こ?」
「エグーー!ばあちゃる君が一番危ないんすか!?ばあちゃる君も怪我するのは嫌ですから速攻で行きますよハイ」

 ばあちゃるのもとに駆けつけたシロ。一見すれば日中の時と同じ落ち着きを保っている様に見えるが、やはり節々に焦りが見える。
 今の状況について走りながら聞こうとも考えたが、今にも崩れそうな壁や天井、そしてばあちゃるの手をクイと引いて走るシロを見てそんな暇は無いと思い直させられる。

 シロに連れられてばあちゃる達は牛巻とあずきのいる管理室へと向う。しかし管理室へと向う途中、不幸な事に瓦礫が道を塞ぎ大広間に立ち往生してしまう。
 そして不幸は続く。

「シロちゃん危ない!」
「え?」

 

11 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:52:06 ID:e2ryl5IgSn
>>10
 ばあちゃるがシロを突き飛ばす。そうやってばあちゃるはシロの上に落ちてきた瓦礫を代わりに受け止めた。
 次の瞬間ばあちゃるの四肢はグシャリと潰れ、その音にばあちゃるはデジャヴを感じると、不思議と冷めた頭でそう考える。
 掠れた視界でも辛うじて見える黄色い物体、それを認識したばあちゃるはデジャヴの正体に思い至る。
(ああそうだ、これはKANGONに触れた時見た、、あの光景だ、、、)
 当たらない筈の予言が当たった、その事に可笑しさを覚え、思い出した記憶と同じ風景の中で思わず笑ってしまう。

「馬!……ねえ馬!!しっかりしてよ!」
「アハハ、すんません……シロちゃん。もう駄目そうですね……世界を救う……やってみたかっんすけどね……」
「ねぇ、シロは英霊なんだよ!?馬より強いの!シロが瓦礫に当っても無事な可能性のほうが高いんだよ!?それに今のは瓦礫に気付かなかったシロの責任なの!シロが怪我するべきだったのに何で!?」
「シロ……ちゃん、ばあちゃる君はね……誰かが悲しんだり……怪我してる姿は……苦手なんですよ……だから……つい……」
「…………そうだったね、馬はいつもそうだもんね、バカだよ、ほんとにバカ」
「アハハ……返す言葉も無いっす」

12 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:54:15 ID:e2ryl5IgSn
>>11
 どんどんと体から命が抜けていく、眠る直前のように瞼が落ちていく。冷えていく。
 シロがばあちゃるの前にかがみ込みマスクを取り去る。吐息の音すら聴こえる距離でシロは問い掛ける。

「ねえ馬、まだ生きたい?」
「ーーーーーーーーー」
「わかった、、、宝具『ーーーー

 大広間は加速度的に崩壊を速めるが、シロはそれを気にも掛けずKANGONのそばまで行くと宝具を使い始める。
 少しするとシロとばあちゃるは白い光に包まれだす。それと同時にシロはKANGONに触れ魔力を流し込む。
 次の瞬間、大広間からシロとばあちゃるは消滅した。

13 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:54:48 ID:e2ryl5IgSn
>>12
■月■■日ーーー私は生まれた時から毎晩不思議な夢を見ている。人間、小人、鳥、はたまた怪物。様々な者が様々に登場し退場し、その中に私はいる。そして目が覚めると、時折物を夢から持ち帰っているのだ。


しかしこの頃は以前にも増して変な夢ばかり見る、、何か意味がある様に思えるので、内容を書き記して置こうと思う。


廃墟と化したコンクリートジャングルを闊歩する人の様なナニカとそれに怯えて暮す人々。唯一繁栄した場所、そこは人気者が全てを決める街、名はグーグルシティ。金に暴力、あらゆる手段でもって自分を誇示し『天国』を目指す醜悪な街。


しかし目を引くものはあった、自由を求め街を抜け出した者達、そしてーーー

ーー日記より抜粋ーーー

14 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:58:03 ID:e2ryl5IgSn
>>13
 朝日が眼球を焼き、ばあちゃるを目覚めさせる。

 二度寝しようとする体に活を入れて起こし、辺りを観察する。

 真っ先に目に入るのは崩れかけの室内と、ダイナミックに跳ね回る真白なアホ毛に真夏の湖畔の様に澄み光る蒼い目。シロだ。

「あれ……ここは?」
「おはよう、馬。ここはねぇーー切り取られた世界を改変して作られた3つ箱庭その1つ。シロ達は特異的Yと呼んでるかな」
特異的Y、、、りこりこの言ってた開放すべき世界の事っすね。………?でもばあちゃる君は何でここにいるんですかね?実はばあちゃる君昨日寝てから記憶が曖昧何すよねハイ」

「それは、、うん。実はね、馬が寝てる間にブイデアで火災が起きてね、シロが馬を担いでも間に合いそうになかったからね、取り敢えずKANGONを使って避難の為にここに跳んだの」

 シロは会話を区切ると、鍋を持ってくる。
 立ち昇る匂いが鼻をくすぐる。堪らず鍋を覗きこめば蜜を溶かしたようなスープに蜜柑色のニンジン、柔く透き通るタマネギ、そして湯気立つジャガイモが顔を見せる。暖かな野菜のスープだ。 

「もう朝だしお腹空いてるでしょ?野菜スープ、お上がりよぉ!!」

 シロは威勢よく叫ぶと2つ皿を並べスープをよそう。

「「いただきます」」

 ばあちゃるとシロは手を合わせると少しの間無言で朝ご飯を味わう。

15 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 07:00:39 ID:e2ryl5IgSn
>>14
「…………フゥ。これ美味しいっすね。不思議と懐かしい味ですねハイ。これシロちゃんが作ったんすか?」

「もちろん!この家から調味料と調理器具、あと家庭菜園から野菜をちょっとだけね、ちょっとだけ拝借したの、まぁここ廃墟だしぃ?問題無い問題無い」

「それ大丈夫なんすかね……あと今更何ですけど、ここは特異的Yの何処なんすか?」

「ごめんね、実はシロもここが何処なのか判らないの。KANGONはとにかく大雑把だからね。あずきちゃんの補助が無いと何処に出るかわからないんじゃぁ」

「そうなんすか、あの時ブイデアに残っていたりこりことあずあずは大丈夫だといいっすけどねハイ」

「大丈夫だよ。守る戦いで牛巻とあずきちゃんにかなう存在はいないからね、例えシロと他の子が束になってもあの二人の守りは抜けないからねぇ」

「じゃあ安心っすね……ごちそうさまです」

「ごちそうさま」

 朝食を食べ終わると二人は最低限身嗜みを整え外に出る。

 外から今まで滞在していた場所を見れば、やはりそこは廃墟と化した一軒家だった。そして外の景色はと言えば、ただ広がる荒廃し切ったビル群と住宅街、そしてーーー

「シロちゃん危な、「大丈夫だよ」

 さっきまで滞在していた廃墟の屋根から人影がシロに襲いかかる。しかしシロは最初から上を警戒してたのだろう。いつの間にか手に持っている自動小銃の照準を合わせ、余裕を持って頭を撃ち抜く。

「&#12316;&#12316;&#8814;‰%」

 しかし頭を撃ち抜かれた筈の人影は、奇怪な叫び声を上げながら四足で着地し、そのままの体制で今度はばあちゃるへ猛然と走り出す。

「うわ!ヤバーしですよヤバーし」

「馬、もう少し緊張感持って」

16 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 07:03:27 ID:e2ryl5IgSn
>>15
 慌てふためくばあちゃるを脇目に、シロはナイフを4、5本取り出し投げつけ、地面に縫い止める。

 トドメを刺そうと近づくが、頭を撃ち抜かれても平然としていたソレは既にピクリとも動かない。

「あるぅぇぇ?何で動かないの?死んだふり?」

「今死んだふりをしても意味ないんでねハイ、死んでると思いますよシロちゃん」

「凄い落ち着いてるね馬、もしかして強がりぃ?」

「ばあちゃる君はもう決意固めですからねハイ。それにしてもシロちゃん、これ人間じゃ無いのはわかるんすけど、何なんですかね?」

「シロも見た事無いかな……ほんとに何なんだろこれ。殆ど植物で構成されてる事と、さっきナイフの刺さった胸にコアみたいなのがあるのは解るけど、それぐらいかな。」

「そこまで解れば十分だと思いますよハイ。じゃあ出発しちゃいましょうか」

「そうだね」

 シロとばあちゃるは立ち上がり、ビル群へと向かい歩き出す。

17 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 07:11:37 ID:e2ryl5IgSn
続く

取り敢えず移行と一部表現の変更をしました。本筋にはなんの影響も無いです。

あとなんで原作の様に歴史の焼却にしなかったかと言いますと、まだVの歴史が短いからです。原作がウン千年単位で燃やしてやっとなのに、その百分の一未満では流石に足りないかなと思いました。

ちなみに現時点ではほぼ黒幕の思惑通りの状況です。

18 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/12 17:48:04 ID:.aMSgFpdSZ
好きだったのでうれしいです、気長に待ちます

19 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:12:12 ID:7NieBZAstA
>>16
 2人はひび割れた道路を歩く。ばあちゃるが前を、シロが後ろを警戒して歩いているが先の化物はあれ以降姿を見せない。

「あの化物全然見掛けないですねハイ。そういえばシロちゃん、今オイラ達は何処に向かってるんですかねハイハイ」
「今向かってるのは霊脈だねぇー。霊脈に行けばあずきちゃんと牛巻と連絡が取れるかもだから」
「霊脈って便利なんすね……」
「まあそうだね、この特異的の霊脈はシロ達の世界から切り取ったものだからねぇ。元の世界と魔術的な繋がりが残ってるんだよね」
「ハイハイハイ、なるほど、勉強になりますよシロちゃ、、ん、、、、!?」

 微かに聴こえるペタペタと言う足音。ばあちゃるが遠く前方に化け物を見つける、それも1、2体では無い、2桁は確実に居る。
 シロとばあちゃるは咄嗟に身構えるが、化け物達は一心不乱に霊脈の方へ向かっている。

「一体何が起こってるんですかね……?」
「わからないねぇ、でも嫌な予感がする。急ぐよ、馬」
「了解っす」

 化け物達の向かう方、霊脈へと2人は急ぐ。

 辿り着いた霊脈の周囲に辿り着いた2人は化け物達を警戒し、ビルの中から様を見る。
 そこには予想外の光景が広がっていた。

20 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:16:58 ID:7NieBZAstA
>>19
      「「うわぁ……」」

 2人がドン引きするのも無理はない。霊脈に辿り着いた化け物達は仲間割れを起こしていた。
 切り裂き、傷付け、喰らい合う。化け物が血も流さず緑色の中身をこぼし戦う様は何処かシュールですらあった。

「何やってるんですかねアイツら。ばあちゃる君もドン引きですよはい」
「シロもほちょにドン引きだよ……なんで霊脈まで来てやってるんだろうねぇ」
「さあ……あの化け物達は孤独が好きなんじゃないっすかね?」
「ウフフ、もしそうならパリピ嫌いのシロと気が合うねwwwん?まって、馬今なんて言った?」
「ハイハイ、あの化け物達は孤独が好きって言ったんすよシロちゃん」
「孤独、、、こどく、、蠱毒。馬、護身用にこれ持ってて、少しマズイかも」

 シロは手早く武器を渡す。ズシリと重い拳銃に軍用の真っ黒なハンドアックス。
 渡し終わるとシロは間髪入れずナイフを呼び出し、一人残る化け物のコアへ投げつける。ナイフは狙い通りの所へサクリと突き刺さる。
 しかし化け物は凄まじい速度で膨張をし、ナイフはコアまで届かない。

「遅かった!本格的にマズイねぇ……」
「化け物が進化しましたよシロちゃん!ばあちゃる君もびっくりですよ」
「馬、あれはーー蠱毒の法かな。毒虫に共食いをさせて人を殺せる毒虫を作り出す儀式だけど、毒虫を化け物に変えて行ってるね……」


     「グルオオオオオオ!!!!」

 化け物の膨張が終わる。身長は3メートル程まで巨大化し、体の色も返り血を思わせるくすんだ朱へと変わる。
 元々あった鉤爪は無くなったが、代わりに2本新しく生えた4本の長く強靭な腕。戦車を想起させる重厚な体躯。左胸に刺さるナイフすらこの化け物の脅威を表す装飾品に成り下がる。

 しかしシロは、そしてばあちゃるも臆しはしない。

21 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:19:48 ID:7NieBZAstA
>>20
「おほほい!おほほい!シロちゃんはー!アイドルになるんだからー!こんなやつー!屁でもないんだコラー!!」

「ばあちゃる君はどうすれば良いっすかね!?」

「周囲を警戒してて!!」

「了解!!」

 シロは先端にナイフを括り付けた自動小銃、いわゆる銃剣を取り出し銃弾を何発も叩き込みながら朱い化け物に突撃する。
 殆どの弾は表面を削るに留まり効いてる様子は無く、避ける様子も無い。が、胸に刺さるナイフに当たりそうな弾だけは大げさに避ける。

      「グルルルゥゥ……」

「!?、シロちゃん!押し込んじゃいましょうアレ!」

「解ってるよ馬!」

 化け物は4本の腕をブンと素早く振り回しシロを叩き潰そうとする。しかしシロはそれらを軽々避け続ける。

「頑張れシロちゃん!」

「もちろん!」

 ばあちゃるはせめてものの加勢としてシロを応援する。応援しか出来ない自分を密かに恥じながら。
 渡された武器を持つ手に自然と力がこもる。体の血がうるさく鳴る。

      「グ、グルオオオオオオ!!」

       「まだまだ行くよぅ!」  

 化け物の動きは徐々に精彩を欠いていくが、シロの動きに陰りは無い。

 そして決着の時が来る。
 化け物が4本全ての腕を振りかぶった瞬間、シロは銃剣の先端を地面に叩きつけ飛び上がり化け物の左胸に強烈な蹴りを叩き込み胸のナイフを深々と押し込む。


      「グルアアア……」 

 ナイフがコアまで辿り着いた化け物はついに倒れ伏す。

22 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:22:14 ID:7NieBZAstA
>>21
「凄い、凄いですよシロちゃん!こんなでっかい化け物倒しちゃうなんて、ばあちゃる君驚き桃の木さんしょの木ですよハイ」
「んふふー。もっと褒めても良いんだよー」
「もちろんですよハイハイ。シロちゃんがいたからばあちゃる君は助かったんですからねハイ」

 ばあちゃるからの感謝を聞いたシロはふと顔をうつむかせる。

「助ける、か…………馬。褒めてくれたのは嬉しいけど、シロ達のこと恨まないの?シロ達が馬を巻き込んだんだよ?」
「逆ですよシロちゃん。ばあちゃる君は感謝してるんです。確かにばあちゃる君は日常から無理やり引き離されちゃいましたよ。そこはちょっとだけ恨んでます」

「…………うん」
「でもねシロちゃん、あの時ばあちゃる君は立ち向かう権利を得たんですよ。ばあちゃる君ぐらいの年になるとね、もう会えない人、忘れたくない思い出、今の自分を作り上げる記憶、本当にたくさんあるんです。大人を支える柱は過去を土台にしてるんですよ。だからねシロちゃん、俺は世界を切り取って無かったことにする、過去を踏みにじる所業を許せない。ばあちゃる君はばあちゃる君が望んでここにいるんです」

「だから恨まないの……?」
「違いますよ、恨みでなく感謝してるんです」
「うん、、、解った。ありがとう」

 シロは顔を上げると頬を叩く。ほんのり赤くなった頬を携え明るい笑顔を浮かべる。

「よし!早速牛巻とあずきちゃんに通信しよう!!」
「そういえばその目的で霊脈に来たんでしたね……ばあちゃる君すっかり忘れてましたよハイ」

23 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:34:29 ID:7NieBZAstA
続く

今回は中ボス戦でした。最初は腕から伸縮性のある蔦を出したり、コアが2つあったり、死んだふりをする悪知恵が働くやつになる予定でしたが流石に長くなりすぎるなと思い大幅にナーフしました。結果予定していたばあちゃるの覚醒イベントが先送りになりました。

戦闘シーンが、戦闘シーンが書きにくいのが悪い……!!

あとついでにいくつか質問です。
「おほほい!」
「おほほい!」



「おほほい!」

「おほほい!」

のかどちらが読みやすいでしょうか

もう一つです、この化け物の名前を決めたいのですがいい名前が思いつきません。思いついた方は教えてくれると嬉しいです。(人と植物の)ハーフで趣味は鉤爪の手入れ、待ち伏せが出来る程度には頭の回るいい子達です。

24 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/15 18:54:44 ID:H6L99ygUQP
>>23
間開けてくれると個人的には読みやすいです
あと名前なのですが自分ネーミングセンスないので単純に
植物から名前を持って来たのですが「カカラ」はどうでしょう?
サルトリイバラという鉤爪状の棘を持った植物の別名で
秋ごろになると赤い実をつけます
…花言葉が不屈の精神、屈強、元気で化け物っぽくないけど

25 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 22:36:04 ID:7NieBZAstA
>>24
解りました!これからはカギカッコは間を開けます。

カカラ、凄くいいネーミングセンスだと思います!ありがたく使わせて頂きます

現地民の口からカカラの名前を聞く、見たいな形で出す予定です!

26 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/19 17:17:06 ID:tk0iUiz5fG
乙乙!
無理せずゆっくり書いてください!楽しみにしてますね!

27 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 07:57:06 ID:8AwobubcMH
>>22
 シロは霊脈の上に黒い布を敷き、宝石を並べ、宝石の間を絹糸で繋いでいく。

「星空見たいでキレイですねハイ。ばあちゃる君魔術見るの始めてなんで感激ですよハイハイ」

「んふふー。馬にしては鋭いねぇ?馬の言う通りこれは星空の模倣。近しい星空に近しい霊脈、これだけ揃えればブイデアとパスを繋げられるんだよねぇ」

「魔術って意外と大変なんすね……」

「魔術も根本は科学と同じだよ……っと。よし!出来た!!」

 星を宝石で、星座の繋がりを絹糸で表した星空の中央、北極星に当たる場所にシロは立つと魔力を流し込む。
 周囲の風景がユラリと揺らぎ、世界の境目が曖昧になっていく。灰色のビルはかつての姿を取り戻し、薄く重なる影の雑踏が地面を満たす。
 そしてブイデアへとパスが繋がる。

『ヤッホヤッホー!ハウディー!牛巻りこだよー』

『木曽、あずきですぅ。いやぁばあちゃるさんもシロさんも元気そうで何より』

「牛巻ぃ!それにあずきちゃん!大丈夫だった?」

『牛巻達は大丈夫だよ、ただ……ね』

『ブイデアは半壊。スタッフと食料、重要な機材以外は全滅ですぅ』

 ひとまず繋がりホット一息つくシロとばあちゃる。しかし牛巻とあずきの後ろに見える壁には亀裂が見える。

「そういえば、ブイデアの外はどんな感じ何ですかねハイ」

『それね、吹雪がキツくて外に出られないしネットも電話もなーんも繋がんないの、まさに『陸の孤島ですぅ』

『あずきち!?それ牛巻の決めゼリフゥ!』

 とは言え、牛巻達に現状を悲観する様子も、思考停止する様子も無い。
 まるでトラブル慣れしたプログラマーの様だ、とばあちゃるが考えているとシロにツンと脇腹を突かれ本題を思い出す。

28 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 07:59:49 ID:8AwobubcMH
>>27
「何はともあれケガが無くてばあちゃる君嬉しいですよハイハイ。それはそうと『楔』の場所って解りますかねハイ」

『もちろんわかるよー。ここから東に真っ直ぐ進めば辿り着ける筈だよ』

『あずき達がナビゲートするので安心してください』

「ありがとうね!牛巻、あずきちゃん。あの2人のナビがあればこの先も安心だよ」

「ガァララララ!!!」

「カカラは轢殺だヒャッハー!!」

「そうっすね!行きましょうか!」



『『「「ん?」」』』

 突然現れた例の化け物と、そしてゴトゴトと地面を鳴らし爆走するトラック。車体には神楽運送と書かれている。

「待て待て待て!逃げんじゃねえ!!」

「ガ、ガガガガ!!」

    グシャア

 化け物を轢殺し停止するトラック。
 中にはモヒカンの男が乗っているのが見える。鋼鉄の肩パットはピカピカと光を反射し、厳つい顔はニンマリと笑顔を浮かべている。

29 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 08:08:09 ID:8AwobubcMH
>>28
「ヒャッハー!仕事完了!!……ん?そこのお嬢ちゃんと馬男!見ない顔だな!何処のモンだ?!」

「えっとね、外から来た旅人見たいな感じかな」

「ボスと同じか!なら来てくれ!そんでボスの話し相手になってくれねえか!?寝床もあるからよ!」

 恐ろしげな男の怪しい提案。何故かシロはそれに即答する。

「良いよ」

「ちょっ、シロちゃん!?知らない人に付いていったら駄目ですよ!」

「大丈夫。シロの予想が正しいなら、あの人のボスはシロの後輩だからね」

「本当に大丈夫ですかね……人攫いじゃ無いかばあちゃる君心配ですよハイ」

『あずきの考えはシロさんと同じですぅ。殆ど人のいない荒野で人攫いをする意味は無い、とあずきは思います』

『牛巻も同じかなー。あのモヒカンの人ね、化け物を追ってここまで来ただけみたいだよ』

「確かに……それもそうっすね。怪しいとか言ってすみません!ばあちゃる君たちを乗らせて貰えますか?!」

「ヒャッハー!!気にしちゃいねえよ!乗りな!」

 結局、ばあちゃるは説得されモヒカンの男の提案に乗ることになった。

30 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 08:10:10 ID:8AwobubcMH
>>29
ひとまずトラックの助手席にシロが、荷台にはばあちゃるが乗り込む。

 転ばないようにソロソロと乗り込み、モヒカンの男から渡された明りを灯すばあちゃる。

 しかし光の照らす先、そこにあの化け物がいた。

「ウビイイイイイイ!!」

「馬!どうしたの!」

「た、助けて!」

「あ、いけね。荷台にカカラの死体乗せてるんだった」

「馬!それただの死体だって!」

「ウビビビビビ…………え?あー確かに、これ死体っすね」

「すまねえ!後で埋め合わせするから許してくれ」

「全然大丈夫っす。それよりもカカラってこの化け物の名前なんすかねハイハイ」

「おうともよ!コイツラはカカラって言うんだよ。誰がつけたか判らんがこのプラントモンスター共には勿体ない良い名前だせヒャッハー!!」

「それにしても何でカカラの死体なんかわざわざ運んでるんすかね?」

「あ、それシロも気になるかも」

「こいつらは家畜の飼料、畑の肥料に使えるんだぜ。こんな環境じゃ使えるモン全部使わねえと生き残れねえからな」

「へー。為になるなぁ」

 シロとばあちゃるはトラックに乗りモヒカンの男の住む街へと向かう。

 今までいた場所からドンドン離れ、数時間もすれば街が見えてくる。

「ようこそ。ここは俺らはみ出しものの街。ニーコタウンだぜ」

「ここが……」

「この世界の街……」

31 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 08:11:20 ID:8AwobubcMH
>>30
 瓦礫を積み上げて作りあげたねずみ色の防壁に設けられた錆びた鉄の門。

 キイキイと煩い門を通り抜けて目に入るのは廃墟のビルにペンキを塗り、木の板で穴を塞いだだけの粗末な住居。しかし廃墟では無い。

 人が歩き、人の営みがあり、人の温度を感じる街。ニーコタウン。

「悪くない街だろ?」

「もちろんっす」

「当たり前だよぉ」

「ヒャッハー!!照れるぜ!この街はボスと俺らで築き上げものだからな!この街は俺らの誇りそのものなんだよ」

「それは凄いっすね……そういえば、『楔』……じゃ無くて何か物凄く凄そうなモノとか見たこと無いっすかね?ばあちゃる君たち探しものしてるんすよハイハイ」

「何か凄そうなモノ……すまねえ。判らん。ただボスなら何か知ってるかも知れねぇな!」

「あずきちゃん、何かわかる?」

『ハァイ。ここらへんにはそれらしいモノは無さそうですぅ』

「だって。取り敢えずボスのところに行っちゃおう!」

「本当に大丈夫すかね……あんまりにも怖い人だったらばあちゃる君泣きますよ……」

 街の一番状態の良いビル、その最上階の部屋へと案内される。

 バイオリンと書棚の並ぶ部屋は程よく明るく、トラックが顔を突っ込んでいる事を除けば趣味の良い部屋と言えるだろう。

「ボス!客人を連れて来ましたぜ!」

「ありがとうございますヒャハオさん。………あ、ああ、あああ!!シロさん!プロデューサー!会えて良かった!!」

「すずちゃん!」

『すずちん!』

『すずさん』

「りこさんにあずきさん!お二人も無事で本当に良かった!」

 緑色の髪に透き通る声、清楚な言葉遣いの眼鏡で綺麗な娘。それがばあちゃるの神楽すずに対する『最初』の印象だった。

32 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 08:15:05 ID:8AwobubcMH
続く

最近忙しくて余り書けなかった……

トラックを乗り回してる人たちは運送族と言い、主な構成員はモヒオ、ヒャハオ、ノリスケ、ゴリラなどです

33 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 18:18:53 ID:hDlG2gopSS
>>31
神楽すずは二人をソファに座らせると緑茶を振る舞う。縞柄の湯呑みに緑の色がよく映える。

「心配でしたよ…………ここに飛んでからずっと通信の調子が悪かったけど、昨日から完全に音信不通になっちゃうんですもん」

「すずちゃん、心配させてごめんねぇ」

『現状ブイデアの施設は先日の大火事により半壊状態ですぅ。あずきの見立てによると、復旧に一月はかかるかなぁ、と』

「火事!?大丈夫でしたか!?そして何が原因なんです?」

 すずがテーブルに身を乗り出してシロ達に尋ねる。グリーンの髪がフワリと揺れる。

『それがね、解らないの。牛巻が何度調べてもボンヤリとした結果しか出ないの。複数の箇所から同時に出火してたから人為的な火災なのは確かなんだけどね』

「私たちがいない間にそんな事が…………スタッフさん達は無事ですか?」

『幸いな事に、みんな大怪我も無く生きてますぅ。完全に無傷とは言えないですけどね』

「そうですか…………それなら良かった。本当に良かったです」

 すずはホッとした表情になりソファに体を戻すと、茶をグイと勢い良く飲み干す。

 それに釣られてシロとばあちゃるも茶に口を付ける。仄かな甘みと爽やかな苦味が心地よく広がる。

34 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 18:21:30 ID:hDlG2gopSS
>>33
アッツ…………そう言えば『楔』の有る場所が解りましたよ」

「へぇ、そうなんすかハイハ………………え!?解ったんすか?」

「ハイ」

『『「「えぇ!?」」』』

「す、すずちゃん。本当なの?いやすずちゃんを疑う訳じゃないんだけどね」

「ハイ、本当です」

 サラリと爆弾発言をするスズ、驚く四人。

「グーグルシティ。この世界で唯一栄えた街。それが『楔』のある場所です」

「グーグルシティ…………どうしてそこにあるって解ったんすか?」

「それは…………知りません」

 頬をかいて照れるスズ、ずっこける四人。

「え、じゃ、じゃあ何で解ったの?」

「アハハ、すみません。双葉さんとピノさんから教えられた話なので詳しい事は知らないんです」

「あー、なるほ

 シロがスズの答えに返そうとした瞬間、シロのお腹がクゥと鳴る。
 顔をぽっと赤く染めるシロを見ない様にしながらばあちゃるが窓際に行き、外を見ると青空はすでに夜空へと変わっていた。

「シ、シロじゃ無いよ?」

「知ってますよシロちゃん。なにせ今のお腹の音は間違い無くばあちゃる君のですからねハイハイハイ」

「…………シロが言うのもアレだけど、かばい方不器用過ぎない?馬らしいと言えばらしいけどさ」

 咎めるような、それでいてどこか照れるような口ぶりでシロは答える。

 それを見てスズがボソリと呟く。

「白馬てぇてぇ…………」

「え?」

「な、何でも無いです!ハイ!えっと、そうだ。シロさんとプロデューサーを歓迎する宴を開くんですよ。来てくれますか?」

「シロにお誘い?もちろん行くよ!」

「オイラももちろん行くっす」

35 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 18:25:17 ID:hDlG2gopSS
ウルトラスーパーお久しぶりです。大学受験で手一杯でしたがやっとこさ終わりました。

ですが勉強に専念したおかげで理科大の理工学部に合格しました…………イヤッフーッ!!!!!

今回はリハビリがてらなので短めです

36 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 18:31:43 ID:hDlG2gopSS
久しぶりなのであらすじをば

ばあちゃる誘拐→世界を救う為と説明受ける→不服だったけどなんやかんやあって決意→火事が起きる→シロと一緒に逃げる→体がグシャァ→シロが治す→やむなくレイシフト→通信を回復させる→神楽すずと合流→歓迎を受ける(イマココ)

37 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 20:57:18 ID:F4mFArwlev
おめでてぇ!ゆっくりでいいでぇ・・・

38 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2021/03/02 01:50:40 ID:BXNhFkfmaY
おつおつ!
おかえりなさい!

39 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:09:00 ID:q/i5TjwP63
>>34
 ニーコタウンの中心にある広場、そこには薪を組んで作られた茶色い構造物が鎮座していた。
 大人も子供も老人も、この街に住む全員がこの広場にズラリと揃う。
 全員が何も喋らずに座っている。全員が宴を待ち望み、まだ火の付いていないソレを取り囲んでじっと見つめている。

 無言の緊張が頂点に達した瞬間、緑髪の少女が火の付いたマッチを薪の中に投げ入れる。
 炎が薪の上で踊りだす。茶色い薪を赤く彩りながら徐々に黒く染めていく。

「おはようございます、神楽すずです。まあ今は夜ですけどね。それはそうとして、ニーコタウンの皆さん、これから何をするか解りますよね」

「宴かなぁ」「宴っすね」「宴」「宴ですよね」「宴だぜ!」「宴じゃい!」「ウホ!!」

 ユラユラ揺れる火に顔を照らされた民衆達が我先にと返事を返す。

「皆さん正解です!シロさんとプロデューサーさん歓迎の宴…………開始です!!!」

「「「「ウオオオオオ!!!!!」」」」

 歓喜の声が大地を揺らす。宴の始まりだ。

 肉汁が今にもこぼれそうな肉、みずみずしいキャベツにレタス、ジューシーなトウモロコシ、ピーマン、マシュマロ、オニオン、キノコ、あらゆる食べ物が盛大に振る舞われる。

40 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:09:50 ID:q/i5TjwP63
>>39
「想像の100倍位は宴してるねぇ。シロびっくりだぁ……」

「オイラも同感ですねハイ。ばあちゃる君こう言うの大好きなんで心が踊りますよ」

「良いことがあった時は宴でお祝い。それがここニーコタウンの習慣なんですよ」

「そいつぁすげぇや!」

 串に刺した食材にかぶりつきながら会話をする3人。宴の雰囲気にあてられたのかいつもよりテンションが高い。

『なんか牛巻たちもお腹減ってきちゃったな。あずきち、確かバーベキューセットって無事だったよね?』

『全くの無傷ですね。ついでに言えば、スタッフ達がもう準備を済ませていますぅ』

『マジ!?早く行かないと!ごめん、シロピー、馬P。牛巻たちもバーベキュー行って来る!!』

「いってらっしゃーい」

「あ、スイマセン。私食べきっちゃったんで新しい肉取ってきます」

「私も行こうかなすずちゃん」

「二人ともいってらっしゃい。ばあちゃる君はここで待ってるんでねハイ」

 二人を見送り、久しぶりに一人だけになるばあちゃる。

「…………ふぅ。2人が帰ってくるまで何しましょうかね」

 シロとすずが遠くに行ったのを確認してから大きく大きく息を吐き、空をボウと見上げるばあちゃる。遮るもののない夜空の中で星がイキイキと自由に輝いている。

41 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:11:56 ID:q/i5TjwP63
>>40
「馬頭のニイチャン。こんなところでボーとしてどうしたんだい?」

「ウビッ!?あなたは誰……ってああ、昼間の人ですか。確か名前は」

「モヒオだ。ボスの下で運送族を名乗って働いてる。宜しくな」

「こちらこそヨロシクっす。オイラの名前はばあちゃる。ボスってすずすずの事っすよね?」

「もちろん、俺らのボスは神楽すず。俺が神楽さん以外の下につくなんてあり得ねえぜヒャッハー!」

 フラリとばあちゃるに近づいてきた強面の男。それは昼間にも出会ったモヒオと言う男だった。

 酒をたくさん飲んで来たのだろう、真っ赤な顔で足元はフラフラとして覚束ない。

「でもなんですずすずの事をボスって呼ぶんすか?」

「ああ…………それか…………少し長い話になる。隣、いいか?」

「良いっすよ」

 モヒオはばあちゃるの隣に座り込み、ポツリポツリと思い出話を語りだす。

「俺達、ボスの部下には俺みたく運送族って名乗る奴らが居る。んでもってそいつらはみんな昔、バカやって生きてた奴らだ」

「バカ、っすか」

「ああ、バカだ。略奪、傭兵紛い、密売、密輸。そんな馬鹿みてぇなことして生計立ててたんだよ。カカラ共に怯えながらな」

「それは、でもこんな化物のうろつく環境じゃ仕方が」

「仕方無く無いぜ。どんな理由が有ろうと、人傷つけて仕方無いじゃ済まされねえよ」

 酒が入ってるとは思えないほど厳しい顔を浮かべるモヒオ。
 自分自身を戒めるように、しかしほんの少し嬉しそうな口調で男は話しを続ける。

42 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:12:54 ID:q/i5TjwP63
>>41
「だけどよ、そんなある日ボスが現れた。ボスはすんげぇ力で俺達を蹴散らした。俺はあの時、ついに俺の悪運が尽きたんだな、と思った」

「……………」

「でもボスは俺達を縛り上げ、集めるとこう言ったんだ『わたしはここに住む人達を、怪物に怯える人達を見逃せない。わたしはここに誰もが住める、安心して過ごせる町を創りたい。その為にあなた達の力が必要なんです』てな」

「なんか凄い話っすね。でも、グーグルシティじゃ駄目なんすか?」

 男はゆっくりと首を横に振る。

「あそこに移住したかったら、まずグーグルシティに住んでる身元保証人がいるのさ。更に、その身元保証人が受け入れに必要な金を全部払わなきゃいけねえのさ」

「それは、あんまりですねハイ」

 ばあちゃるが同意を返せば、男はそれに頷きを返す。

「だからこそボスのした事は偉大なんだよ。俺達はボスの下でニーコタウンを創り上げた。その過程で感謝される嬉しさ、創り上げる達成感、そして、俺達が今までして来た事の罪深さに気が付いた」

「だから俺達はせめてもの償いとしてカカラ共と戦い続ける。運送族と名乗って過去を晒し続ける。そうやって俺のして来た事の1%位は償ってみせる」

 そう言い切ると酒瓶をグイと傾け、中身を飲み干す。

「すまねぇな。長々話しちまって」

「いやいや、実りある話でしたよハイ」

「そうか、そう言ってくれると嬉しいぜ。ニイチャンの連れも来たことだし俺は帰るぜ、またな馬のニイチャン…………ヒャッハー!!」

 モヒオはフラリと立ち上がり人混みの中へと消える。

43 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:13:29 ID:q/i5TjwP63
>>42
 ばあちゃるがモヒオの消えた方を何と無く見てると、目の前に串に刺さった肉や野菜がヒョイと割り込んでくる。

「せっかくだから馬の分も取ってきてあげたよ、ほら食べて」

「シロちゃんあざっす!シロちゃんに持ってきて貰えるなんてオイラ感謝感激ですよハイ」

「ちょ、ちょっと馬!」

 シロが持ったままの串に躊躇なくかぶりつくばあちゃる。

 後ろから驚かせようとしたばあちゃるの思わぬ対応にシロは慌てふためき硬直してしまう。

「ごちそうさまですシロちゃん」

「もう…………本当に馬は馬なんだから」

 あっと言う間に一串食べ切ると律儀に手を合わせるばあちゃる。シロはヤレヤレと言わんばかりに首を振りそれに答える。

「アハハハ、宴はまだまだ続くので楽しんでいってくださいね」

「もちろんだよすずちゃん!」

「見てくださいよシロちゃん、すずすず、キャンプファイヤーの周りで踊りをするみたいですよ」

「ホントだ、行こう行こう!」

 宴の夜はまだ続く。

44 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:20:47 ID:q/i5TjwP63
世界観の説明回&祭り回でした

出来ればこう言うシロちゃんやアイドル部があんまり出ない回は極力避けたいのですが、現地民じゃないと世界観の説明がマジでただの説明になっちゃうんですよね、、、、、

45 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:25:23 ID:U3.psekqZp
>>43
 次の日、すずとシロ、ばあちゃるは昼になってもまだ眠っていた。町の人間も殆どが眠っていた。

 昨日の宴は今日の朝方まで続いた。朝日が昇ると参加者はみな目にクマと満足げな笑顔を浮かべ、家へフラフラと帰って行った。

 結局シロたちが起きたのはお昼過ぎ、太陽がてっぺんを少し通り過ぎた頃だった。

「少し、、、、頭が痛いっす」

「シロも、、、ちょっと」

「アハハ、、、宴の後は寝不足になる、これもニーコタウンの習慣みたいなもんですから、、、、zzz」

 馬マスクの鼻がへんにょりと曲がったままのばあちゃる。アホ毛がしおれているシロ。

 すずは慣れた様子でしゃべりながら、うつらうつらと舟をこいでいる。

「うん、と、そうだ。『楔』の場所も分かったことだしグーグルシティに行かないとね」

「場所は知っているんで私がトラックで送りますね」

「ありがとう。あとすずちゃん、水面台どこ?」

「あ、ハイ、建物を出て右に行くと井戸があるのでそこでお願いします」

「OK。行ってくるね」

「ふわぁ、ああ、、、ばあちゃる君もいくっすよ」

 目をこすりながらも三人は身支度を進めていく。

46 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:26:39 ID:U3.psekqZp
>>45

 数時間後、そこにはトラックに乗り込み町の見送りを受ける三人の姿があった。

 『神楽すず』とプリントされたこのトラックには大小様々な傷があり、その大きさも相まって独特な迫力を醸し出している。

「ボス行ってらっしゃい!」「お元気で!」「ウホホホ!!」「行ってらっしゃい!」「三人ともお元気で!」「、、、!」「、、、、!」「、、、、!」

「行ってきます!!」

「んふふー。愛されてるねぇすずちゃん」

「アハハ、、、そう言われるとちょっと恥ずかしいですね」

 そう嬉しそうに言うとすずはシートベルトを締め、アクセルをダンと踏みしめる。トラックが勢い良く走り出す。

「うわっと」

「あ、すいません。急でしたか?」

「いやいや、大丈夫っすよハイ。むしろもっと飛ばしても良いっすよ」

「え、ほんとですか!?」

 何故か目をキラキラさせて聞き返すすず。

「ハイハイ、もちのロンですよ。ばあちゃる君嘘つきませんから」

「ちょっと待「やったあ!!じゃあつかまっててください!!行くぞ私は!!!!」

 ばあちゃるは当然同意を返す。何も知らぬがゆえに。
 シロはすぐに止めようとした。しかし、ほんの少しだけ遅かった。

47 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:27:34 ID:U3.psekqZp
>>46

 すずはハンドルから片手を離すと運転席の右端にあるボタン、『ニトロ』と書かれた赤いボタンをガチリ、と深く押し込む。
 直後、トラックの後部が開く。露わになった荷台の中にはジェットエンジンが三基見える。

 キュィィィとジェットエンジン特有の音が車内に鳴り響く。

 シロもばあちゃるも声を出して必死に止めようとするが、エンジンの音にかき消されすずに届かない。
 ほんの一瞬、エンジンの音がやむ。次の刹那、三基のジェットエンジンが同時に火を噴く。強烈なGが三人を襲う。

「「ああああああああ!!!」」

「アハハ!!行け!行くんだ!私のトラック!!!」

 ウキウキの少女、顔をひきつらせた少女、気絶した馬男を乗せたトラックはグーグルシティへ向け最高速で突っ走る

48 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:38:11 ID:IOHH5pb8iw
ボスが楽しそうで何より

49 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:40:46 ID:U3.psekqZp
ここからちょっとだけすずちゃん回挟んでグーグルシティ入る予定です

因みに悪役は基本オリキャラだけで作り上げてるので、そこはご容赦ください

ただ、fateファンの方ならニヤリとするかもしれないです

50 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 13:10:56 ID:U3.psekqZp
>>48
ありがとうございます!!特異点エンジョイ勢のボスですが何気にブイデアとしての役割もちゃんと果たしてたりします

コメントしていただいたのに返信しないのも失礼だと気づいたので、これからは出来る限り返信していこうと思います!!

51 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:03:31 ID:geMZ/3fDOc
>>47
しばらく後、三人は立ち往生していた。

「すみません、、、テンション上がっちゃって燃料の事考えていませんでした」

「うっぷ、、、、別にいいんすよ、、スピード出してと言ったのはオイラですし、、、、」

「そうそう、送ってくれるだけでも十分ありがたいんだから、、、、」

 スピードを出しすぎた為予定以上に燃料を消費し、トラックは燃料切れとなっていた。

「ねぇあずきちゃん、ここから徒歩でグーグルシティに行くとどれくらいかかる?」

『あずきの計測が正しければ、、、おおよそ3時間ですかね』

「まぁ、歩いて行けない距離では無いっすね」

『ただ、一つ問題が』

「どうしたの?」

『リコさん曰く、進行方向にカカラが集まっている場所がある様ですぅ』

『そうなの、これを見て』

 リコが手馴れた様子で何かの機械を操作し、レーダーの様な画面を表示させる。
 その中央には緑色の点がポツリと3つ、上部には赤い点がビッシリと浮かび上がっている。

「緑色の点がシロ達で…………この赤い点がカカラ、かな?」

『その通りだよシロピー、この20個以上有る点がカカラなんだよね』

「この数だと、戦うよりかは迂回した方が楽かなぁ」

「そうっすね」

 助手席側の扉を開け、トラックの外に出ようとするシロとばあちゃる。
 しかしすずは何かを思い出したのかパンと手をたたき、慌てて2人の肩に手をかけ引き止める。

52 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:04:59 ID:geMZ/3fDOc
>>51
「あ、すみません、ちょっと待ってください。そのカカラの集まっている場所でトラックの燃料が補給出来るかもしれないです」

「マジっすか?」

「ハイ、マジです」

「燃料に集まる習性がカカラにあるってことなの?」

「そういう訳ではないんですけど、、、、うーん、説明が難しいので実際に見てもらった方が早いと思います」

「分かったよすずちゃん。じゃあカカラ狩りに行こうか」

 そう言うとシロは今度こそトラックから降りる。その直後にすずが勢い良く、少し間を置いてばあちゃるが慎重にコンクリと雑草の大地へと足を下す。
 灰色と緑で構成された大地に色が加わる。ビュウと吹くビル風が3人の背中を押している。

「リコちゃん。カカラの場所は?」

『真北700メートル先、すぐそこだよ』

「オッケー、ありがとうね。馬、シロの渡した武器はまだ持ってる?」

「勿論っすよシロちゃん」

「すずちゃんも魔力は大丈夫?」

「大丈夫ですシロさん」

 シロはナイフ付きの自動小銃を手元に呼びだし、ばあちゃるも拳銃とナイフを懐から取り出す。
 すずはサングラスを装着し、足をドンと踏み鳴らす。すると腕の周りにノイズが走り巨大な火炎放射器が現れる。レモンのステッカーが貼りつけられたソレは強い魔力と神秘をまとっている。

「行きましょう!」

「うん!」

「うっす」

 3人はうなずくとカカラの方へと歩き始める。

53 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:05:37 ID:geMZ/3fDOc
>>52

「カカラいるねぇ」

「え、どこっすか」

「馬、あの校舎の中見てみなよ」

 10分も歩かないうちにカカラの集団が視界に入る。

 元は高校だったと思わしき廃墟、その中を歩き回っているカカラ達が割れた窓越しにチラチラ見える。

「行きましょう、私が正面玄関から突入するのでシロさんとプロデューサーは、、、、いい感じにお願いします」

「いい感じって大分アバウトっすねハイ、というかすずすずはそんな危険なことして大丈夫なんですか?」

「トラックの燃料切れは私のせいなんですからこれくらいはしないと。それに私、雑魚狩り得意なんですよ。ほら、こんな感じで焼き払うんです」

 火炎放射器を使うフリをしながらそう言うと、すずはスゥと大きく息を吸い込み叫び、前へ走り出す。

「かかってこい!有象無象がぁ!!!」

 すずの体から緑色の魔力が噴き出る。走るスピードが明らかに早くなる。

「馬、シロたちは裏口からいくよ」

「了解っす、、、、でも大丈夫ですかねハイ」

「馬、すずちゃんはね、無理なことはちゃんと無理だって言える子なの。そんなに心配しなくても大丈夫」

 シロは両手を腰に当て、優し気な表情で言い放つ。

 ばあちゃるがすずの向かった方に目をやれば、ここからでも真っ赤な火炎がハッキリ見える。

「、、、、確かにそうっすね」

「でしょ?」

54 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:06:45 ID:geMZ/3fDOc
>>53
 シロとばあちゃるは静かに歩き、校舎の裏手に回る。
 二人が裏口の扉をほんの少しだけ開けると、カカラ達がすずに気を取られていているのが見える。

「、、、馬、321で行くからね、、、」

「、、、うっす、、、」

 シロはフラッシュグレネードを扉の隙間からコロンと投げ入れ、直ぐに扉を閉じる。

「3、2、1、今!」

 グレネードが炸裂し、扉の隙間や窓から真っ白な光が漏れ出す。
 その直後シロが扉を蹴破り校舎に突入する。

「シロ魔法、、、発動!」

「ガッララッ、、、!!」

 シロが銃を横に倒し引き金を引く、反動で銃を横に動かし薙ぎ払う。
 強烈な光に視界を奪われた化け物たち、そのコアへ恐ろしいほどの精度で銃弾が襲い掛かる。

「ガララララララ!!!!!」

「やらせないっすよハイハイ!!」

 それでも生き残った化け物共の内、一番シロの近くにいた個体にばあちゃるが組み付き、逆手に持ったナイフでコアのある左胸を何度も刺す。

「ハイ!ハイ!ハイハイ!!」

「ガ、、ガラ、、、」

 ぐったりとしたカカラをそのまま盾にして、ばあちゃるはシロに弾をあてないことだけを意識して拳銃をでたらめに打つ。
 ほとんどは明後日の方向へと飛ぶが、いくつかは運良く命中する。
 ばあちゃるがそうしてカカラを牽制している間にシロはリロードを済ませる。

 シロが二度目に弾を打ち切った時、カカラは全て倒れていた。

55 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:11:16 ID:geMZ/3fDOc
この先まで書き終わっていますが長過ぎるので一度切りました

シロちゃんが五分休憩している間に投稿したかったけどさすがに無理があった(小並感)

56 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 21:44:22 ID:yz3T8UOek4
おっつおっつ、ボスはいつもどうりだなぁ・・・
さっすがシロちゃん、馬もなかなかやるやんけ

57 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 22:23:06 ID:geMZ/3fDOc
>>56
コメントありがとうございます!

今のばあちゃるは自分の能力でできる限りのことをしている感じですね、今後もシロちゃんのサイドキックとして成長して行く予定です

58 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:37:38 ID:aNzeUcfTP9
>>54

「フゥ、、フゥ、、、やりましたよシロちゃん」

「中々やるじゃん、馬」

「へへ、、、あ、ちょっ」

 もう敵がいないことを確認したシロはばあちゃるの正面に立ち、馬のマスクを目の出ないギリギリまで持ち上げる。
 驚くばあちゃるを他所にシロはハンカチでばあちゃるの顔を拭くとニコリと笑い、マスクから手を放し歩き始める。

「戦うとき緊張してたでしょ馬、汗ダラダラだよ。ほら、すずちゃんも待っているから早く行くよ」

「う、うっす」



 すずの突入した正面玄関に行くと、そこは凄まじい有様だった。
 辺り一面は黒く焦げ、カカラは炭となって転がっている。

「あ、シロさん、プロデューサー、こっちも終わりましたよ」

「割とエグーな感じですねハイハイ」

「ハハ、ちょっとやりすぎちゃいました。もう魔力がすっからかんです」

 すずはサングラスを外し懐にしまう。火炎放射器がノイズと共に消える。

「じゃあ帰りましょうか」

「そうだね、、、、て、ちょっと待って。ここには燃料を取りに来たんでしょすずちゃん」

「あ、そうでした。燃料ですよね燃料。えっと、あずきさん。ここの近くに地面から飛び出た不自然な突起物ありませんか?」

『突起物ですか、、、、地下一階の技工室にそれらしいものがあるかな、とあずきは思いますぅ』

「突起物?」

「見ればわかりますよ」

 そう言うとすずはどこからか持って来た赤いポリタンクを携え、二人と共に地下への階段を下りる。

59 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:38:42 ID:aNzeUcfTP9
>>58
「やっぱりありました」

「なにこれ、、、、」

『なんじゃこれ』

「大きな花、ですかねハイ」

『動く気配はないですけど、、、あずきもこれが何なのか解らないですぅ』

 技工室にたどり着いた三人の前に現れたのは、地面から斜めに突き出した巨大な根。そしてそこから生える巨大な花だった。

 電柱の様に太い茎からは、人の大きさほどもある薄黄色の花がいくつか垂れ下がっている。
 それらの花は時折ブラリと不自然に揺れている。

「シロさん、刃物貸して下さい」

「あ、うん」

 余りにも大きな植物から目を離せない二人をよそに、すずは手慣れた様子で茎に傷を付けポリタンクの口を押し付ける。
 茎から黒い液体がドロリと流れ出す。液体が流れ出す程に花はしおれていく。
 タンクが満タンになる頃には花は萎れ切っていた。

「え、これが燃料なの?と言うそもそも何?」

「これが燃料です。何故かガソリンとして使えます」

「それと、この植物はカカラの母体みたいなものですね。時々どこかに生えてはカカラを生み出すんですよ。いつの間にか枯れて消えますけど、こうすると直ぐに枯れてくれるんです」

「何というか、良く燃料として使えるってわかりましたねハイ」

「町の人がたまたま見つけたんです。この発見のおかげで電気や車が使えるようになったんですよ」

60 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:40:35 ID:aNzeUcfTP9
>>59
 重くなったポリタンクを三人でゆっくりと運び、トラックに燃料を補給する。

 ガソリンのメーターが満タンになる、すずがキーを回せばエンジンがドウと息を吐く。

「よし、今度は安全運転で行きますね」

「アハハ、お願いするっす」

 時速60キロ、今度は普通の速度でトラックはグーグルシティへと向かう。



「お二人とも見てください。あの先がグーグルシティですよ」

「ホントだ、、、、でっかいねぇ」

「話は聞いてましたけど、実際に見ると凄いですねハイ」

 すずが指さす先にあるのは、コンクリートの巨大な壁だった。壁の上から顔を出す高層ビルが、そこに街があることを示している。

 壁の周囲では、黒いボディアーマーと奇妙なゴーグルを付けた兵士が絶えず監視をしている。

 三人の乗るトラックがNo1と大きく書かれた門に辿り着く。

 門の近くにいた兵士が無言でトラックに近づいてくる。

61 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:41:14 ID:aNzeUcfTP9
>>60
「、、、、、」

「ん、ああ。どうぞ」

 すずが何かの書類を渡すと、兵士は無機質な動きで踵を返し書類をどこかに持っていく。

「ねえすずちゃん、あの人たち何なの」

「この街の警備兵です。ただ、昔はもっと人間味のある人たちが警備をやっていたんですけど、突然あの人たちに変わったんですよね、、、、今じゃ入るのも一苦労です」

「昔と違うの?」

「ハイ、今は街に住んでる人が身元の保証をしないと絶対に入れないんです」

「なるほどねぇ、世知辛いんじゃぁ、、、、ん?」

 シロがはたと首を傾げる。

「じゃあさ、シロたちの身元は誰が保証してくれたの?」

「ピノさんと双葉さんが保証してくれたんです。昔は大金を払っても一応入れたので、ピノさんと双葉さんはグーグルシティで、私は外で。といった感じで手分けして『楔』を探してたんですよ」

「なるほどねぇ」

「シロちゃん、すずすず。書類の確認が終わったみたいっすよ。ほら、門が開き始めてますよハイハイ」

 声を掛けられた二人が門を見ると、ばあちゃるの言った通り門がゆっくりと動き始めている。

「あ、ホントだ。遂にグーグルシティに入れますね。実は私も初めて来るので楽しみです」

「ふふ、じゃあシロとおそろいだね」

「ハイ!」

 すずはウキウキでペダルを踏み、開ききった門を通過する。
 入った瞬間、街の風景が目に入る。

62 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:42:12 ID:aNzeUcfTP9
>>61
 胡乱気な看板やネオンがズラリと立ち並び、見慣れた建物と現代アートの様な建物が不思議な調和を保ちそれぞれ乱立している。

 街の中心を見れば、遠近感がおかしくなりそうな程巨大なビル群が見える。

「いやー、凄いっすね、、、、、」

「だね、、、、」

「ですね、、、、、」

 しばし呆然として街を眺める三人。眺めている間にも無数の車と人が通り過ぎていく。

 一足早く我に返ったばあちゃるがすずに話しかける。

「そういえばすずすず、ピノピノとふたふたはどこにいるんすかね?」

「えーと、二人は入口から入ってしばらく真っすぐに行った所にいて、建物は見ればわかると聞いてますね」

「この街で見れば解るってどんな建物なんですかねハイ、、、、」

 ばあちゃるが改めて街を見渡す。

 屋台の提灯はカラフルに光り、路地裏には光る入れ墨を入れたヤクザがたむろしている。

「ま、多分大丈夫っすね」

「真っすぐ行けば良いのは確かですしね。行きましょう!」



「確かにこれは、見ればわかるねぇ」

「ですね、、、、りこさん、お二人はこの建物にいますよね?」

『ちょっと待ってね、、、、、、うん、確かにその中にいるよ。でもほんまごっついなぁこの建物』

 ピノと双葉のいる建物、そこはチョウをモチーフにした紋章と双葉の生えた植木鉢、二つのシンボルが掲げられたスタジアムだった。

 『ファイトクラブ スパークリングチャット』と入口に掲げられていた。

63 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:44:59 ID:aNzeUcfTP9
次回ピノ様と双葉ちゃんが登場します、後でボスのステータス出すかもしれません(宝具以外)

それはそうと、ガリベンガー放送枠上がったのうれしすぎる

64 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 21:56:35 ID:zW.Mj9fQ1k
おっつおっつ、毎回楽しませてもらってますです

65 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 22:36:04 ID:aNzeUcfTP9
>>64
楽しんでくれるなら本当に嬉しいです!!

ちなみにですが、馬のハーレムルートは残念ながらありません。書き方が分かりません。

好意的に接して来るシロちゃんにやや困惑しているものの、そんなシロちゃんの前でカッコイイ所を見せようとあがいてるのが馬です

シロちゃんの馬に対する思いは、、、、かなり複雑です。
ただし、英霊として召喚され世界を救う役目を背負い、同じ役目を持つアイドル部たちの前では、頼れる先輩として振る舞うこの世界のシロちゃんにとって馬は数少ない弱音を吐ける存在なのは間違いないです

66 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 23:19:04 ID:aNzeUcfTP9
【Vtuber名】神楽すず
【CLASS】ライダー
【所属】.live
【性別】女性
【種族】人
【年齢】17
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
 筋力B 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具B

【保有スキル】
『魔力放出(大声):C+』
大声とともに魔力放出を放出し、爆発的に身体能力を上げるもの。
効果は絶大だが隠密行動には向いていない。

『カリスマ(王道):B+』
人を引き付ける力。他人とともに道を開く、これこそ王道。

『普通:A』
常に普通であり続けるスキル。怪我、呪い、如何なる要因があっても通常通りに行動可能。
常にいつも通りであり続ける事は案外難しいものだ。

【宝具】
『????(未開示)』
【Weapon】
『火炎放射器』
注ぎ込んだ魔力に応じて火力の上がる火炎放射器。最大まで注ぐとレーザービームのようになる。

67 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 15:57:35 ID:pY7WdODbEh
>>62
『お は く ず!スパークリングチャットの名物司会、天開司だ!!』

「「「オオオオオ!!!!」」」

『今日の対戦者を紹介するぜ!!』

『赤コーナーに立つは我らがスター!パプリカの赤は返り血の赤!!!園芸部所属パプリカァ!!!!』

『緑コーナーも特A級!神話の住人ケンタウロス!!!岩本カンパニー所属馬越健太郎!!!!』

「やっちまえパプリカ!」「蹴り倒せ馬越!!」「負けんな!!!」「…………!」「……!」「…………!!」「!!!!…………

 入場料を払いスタジアムに入ると、そこは闘技場だった。

 熱気と野次が場を満たし、そのど真ん中を司会の煽り文句が朗々と響き渡る。

 真っ赤なパプリカの被り物をした大男が助走を付けてドンと床を蹴り、飛び膝蹴りを繰り出す。馬の下半身を持つ男はその蹴りを掴み受け流し、床に叩きつける。

「スタジアムの中に入りましたけど…………見た目以上に広いっすねハイ」

「だねぇ、ピノちゃんと双葉ちゃんはどこにいるのかな?」

「そこなんですよね…………」

68 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 15:58:36 ID:pY7WdODbEh
>>67
 3人が辺りを見渡していると、近くにいた老人がこちらにゆっくりと近づいて来る。

 その男は執事の様な装いをしており、それはこの場所でひどく浮いていた。

「そこのお客様、どうかお名前を教えて頂けませんか」

「ハイハイハイ、オイラ達はちょっと忙「シロです」

「私はセバスと申します。お嬢様方がお待ちです。どうぞこちらに」

 セバスはそう言うと懐からカギを取り出し『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉を開き、三人を招き入れる。

「ちょ、シロちゃん。あんな怪しい人について行ったらダメっすよ」

「大丈夫、あの人から敵意は感じないし。それに『お嬢様方』にも心当たりがあるしね」

 小声で訴えかけるばあちゃるをシロが軽く流す。

 徐々に小さくなる闘技場のざわめきを背にし、三人は下に緩く傾斜した通路を黙々と進んでいく。

「つきましたよ」

「おお、、、、」

「こいつぁすげえや、、、、」

「凄いですね、、、、、」

 長い長い通路を下った先、そこにあったのは上品な屋敷だった。

 洋風の庭は丁寧に整えられており、地下であるにも関わらず何故か空が見える。



 セバスの案内で応接室に通される。

「そう言えば、ピノピノとふたふたはどんな子なんですかねハイ?」

「えっと、ピノさんはザ、お嬢様って感じで、双葉さんはのんびりした感じの人ですね。どっちも良い人ですよ」

「そうだよ、アイドル部の子たちはみんないい子たちなんじゃぁ」

「そっすかぁ、、、、、そりゃ楽しみですねハイ」

 豪華なソファに座りあれこれと話し合っていると、応接室の扉がコン コンコンと三回ノックされ、一拍置いて扉が開く。

69 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 15:59:40 ID:pY7WdODbEh
>>68
 開いた先にいたのは、淡い紫色の長髪をサラリとなびかせる、黒を基調とした衣装に身を包む幼い少女だった。

「皆様御機嫌よう。カルロピノですわ」

「ピノちゃん!」

「ピノさん!」

「ピノピノ、っすよね?」

『ピノちー!』

『ピノさん!』

「シロお姉ちゃん、すずお姉ちゃん、お馬さん、りこお姉ちゃん、あずきお姉ちゃん!皆さんご無事で良かったです!!」

 大人びた様子で挨拶をする少女、もといピノ。

 しかし仲間の無事がわかると途端に相好を崩し、見た目相応の口調で喜びを表す。見開いたパステルカラーの瞳がキラリと光る。

「あれ、、、双葉さんは?」

「ごめんなさいすずお姉ちゃん。双葉お姉ちゃんは試合の運営で今忙しくて。しばらくしないと会えませんわ」

「なるほど、忙しいなら仕方ないですよね、、、、」

「ふふふ、すずちゃん。楽しみは後に取っておくのも乙なもんだよぉ」

「それとさ、ピノちゃん。試合の運営って上でやってる試合の事?」

 残念そうにするすずの頭をなでながら、シロはピノに質問をする。

 質問を受けたピノは満面の笑みでグッと胸を張り、心底誇らしげに語りだす。

「そうですわ。ここスパークリングチャットはわたくしと双葉お姉ちゃんで築き上げた最高のファイトクラブ!!宝具を用いることで実現したクリーンさと熱狂を両立したまさに至高の、、、、、」

「、、、、」

「、、、、、おほん。少しはしゃぎすぎましたわ。爺や、皆様にお茶を」

「ただいまお持ちします」

 周りの生暖かい視線に気づくとピノはわざとらしく咳ばらいをすると、指をパチンと打ち鳴らし執事を呼びつける。

70 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 16:01:42 ID:pY7WdODbEh
>>69
 呼び出された執事、セバスは返事をすると数分もしないうちに人数分の紅茶を持って来る。

 薄い湯気の立ち昇る紅茶は琥珀色。それをカップに口を付けゆっくり飲む、すると上品な香りが口の中にフワリと広がる。

「いやー、凄く美味しいですよハイハイハイ。もう一杯お願いできるっすか」

「勿論でございます」

「ありがとうございま、、、、ちょっと待ってくださいっす。セバスさん、あなた怪我してますよハイ」

「おや、本当ですか?」

「本当っすよハイ。ほら腕のとこ大きく切れてるっすよ、、、、アレ?血が出てない?」

 ばあちゃるがセバスの腕を指さす。
 その指さした先には大きな切れ込みが確かに走っていた。

 しかしその切れ込みから血が出る気配は一切ない。

「アレ?どうして、、、、?」

「うふふ、お馬さん。実はですね、爺やの腕は特殊な義手なんですの。爺や、お願い」

「仰せのままに」

 セバスは2、3歩後ろに下がると袖を捲り上げ、ほんの少し腕を力ませる。

 すると両腕から大きな刃が飛び出す。銀色の刃は綺麗に磨かれており、誰が見ても鋭いと解る。
 両腕から刃を生やしたその姿はどこかカマキリを連想させる。

「ね、ほら、すごいでしょう。ここだけの話、昔の爺やはイケイケで、、、」

「お嬢様、どうかお辞めくだされ、、、、恥ずかしゅうございます」

「だめですよ爺や、ここから先が面白いんですから」

「お、おやめください、お嬢様!ほ、ほら、例の話をしなければいけませぬぞ」

「しょーがないですねぇ爺やは。まあ今回は許してあげましょう」

71 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 16:02:34 ID:pY7WdODbEh
>>70
 シャンと音を鳴らし刃を納め、慌ててピノを止めようとするセバス。
 ピノはそんなセバスをひとしきりからかうと、机の上に大きな図面を広げる。

 定規とコンパスで描かれたその図には無数の消し跡があり、それが手書きであることをうかがわせる。


https://vt-bbs.com/upl/1615878154-1.png


72 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 16:06:41 ID:pY7WdODbEh
>>71
「ピノちゃん。これ何の図なの?」

「シロお姉ちゃん。カカラの母体、て何のことかわかりますか?」

「えっと、あの大きな花の生えた根っこの事だよね?」

「その通りです。そしてこの図はカカラの母体の出現位置と根っこの向きを、すずお姉ちゃんに頼んで調査して貰った物ですわ」

「こんなに調べたのか、、、、、凄いねぇすずちゃん」

「そうですよ。すずお姉ちゃんのデータは本当にサンプル量が多くて正確ですわ」

「いやぁ、、、アハハニーコタウンの皆さんで手分けしてやったのでそれほどでも、、、、」

「フフフ、照れるすずちゃんは可愛いなぁ、、、、、」

「と、ピノちゃん。じゃあさ、根っこはこの図の真ん中を中心にして生えてるけどさ、この真ん中はどこなのかな?」

 シロがその質問をした途端、スンと真面目な顔になるピノ。
 頭を掻き照れくさそうにしていたすずも、紅茶をコッソリ何倍もお代わりしていたばあちゃるもそれを見て姿勢を正す。

「この図の中心、それはここ、グーグルシティですわ。更に正確に言うならグーグルシティの中心部、『楽園』と呼ばれる部分ですの」

 そう、ピノは苦々しく言い切った。

73 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 16:15:27 ID:pY7WdODbEh
ここから徐々に話が進みだします。

実のところ、初期とはプロットがほぼ別物になっております

例を一つ上げると、初期ではアイドル部一人に付きマスターが一人つく予定だったのですが、恐ろしいほど登場キャラが増えることに気づき断念しました

74 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 14:33:12 ID:Av4LApCGnO
>>72
「ちょ、ちょいちょい!ピノピノ、それってもしかして、、、、」

「そうですお馬さん。カカラの大本はこの街にある可能性が非常に高いんですの」

 シンと静まり返る応接間、張り詰めた空気の中ピノは淡々と話を進めていく。

「この世界全体に根を張り、時折地上に根を出しては化け物を生み出す。出すのは常に根だけ、その大元を見た人間は誰もいませんの。根っこを辿ろうにも数日で腐るから不可能、だから考え方を変えたんですの」

「その成果がこの図面ということっすか?」

「そうですわ。もしも一つの場所から根が伸ばされているなら、伸ばされてきた根はきっとその場所を中心にして生えるだろう。そう思ってすずお姉ちゃんに調査を依頼したところ、結果は大当たりですわ」

「なるほどっすね、、、、、ん?」

 ふと首をかしげるばあちゃる。馬の茶色い被り物が首に合わせてへにょんと折れる。

「この街の楽園?とか言う場所にカカラの大元がいるなら気付かないはずがないと思うんですよねハイハイハイ」

「それは『楽園』の特異性のせいですの」

「特異性?」

「『楽園』はグーグルシティの特権階級が住む場所です。高い壁に守られたそこは、法外な量の献金をして初めて中に入ることが許されますわ」

「でも『楽園』にはカカラの大元がいるんすよね?」

「ええ、この街の人間さんが夢見る『楽園』ではない、と言う事でしょうね」

 ピノはそこまで言い切ると上品な所作で紅茶を飲み干す。冷めた紅茶のギュッと締め付ける苦みが顔を歪ませる。

75 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 14:34:22 ID:Av4LApCGnO
>>74

「そしてもう一つ。『楔』も同じ場所にある可能性がありますわ」

「ど、どういうことっすか?」

「人殺しの化け物を生む植物。それも生きるために殺すのではなく、殺す為に生きる化け物。あんな生き物さんはあり得ませんわ。どう考えてもエネルギーが足りませんから」

「でもカカラは存在してるっすよ」

「そうです、生きれないはずの生き物さんが生きている。ならば何か特別な物がカカラのエネルギー源となっている、そう考えるのが自然ですわ」

「それが『楔』ということっすか」

「その可能性は十分に有る。わたくしはそう考えていますわ」

「ハイハイハイ確かにあり得るっすね、、、、」

「そうですわ。まぁ、説明すべきなのはそれくらいです」

 真面目な話が終わり、ピンと張りつめた空気が徐々にほどけていく。

 緊張が解けたせいか、今日の疲れがどっと溢れ出すばあちゃる。

 背もたれに体重を乗せ横を見れば、シロとすずも同じ様にぐったりとしているのが見える。



 そんな三人を微笑ましい顔で眺めるピノにセバスが何か耳打ちをする。

「、、、、、ありがとう爺や。どうやら双葉お姉ちゃんの仕事が終わったようですわ。闘技場の入り口で待っているそうです」

「マジィ!?待たせちゃ悪いし早く行こう!」

「ですね!双葉さんとも久しぶりに会うから楽しみですよ」

「どんな子か、ばあちゃる君も楽しみですねハイ」

 さっきまでの疲れた様子が&#22099;のようにワクワクとした顔で立ち上がる二人。

 それを見たばあちゃるも飴色の机に手をグッと押し当て、体を持ち上げる。

 シロ、すず、ピノ、ばあちゃるの四人はセバスの見送りを背にし、屋敷の外へと歩き出した。

76 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 14:41:31 ID:Av4LApCGnO
villsのバラエティステージを買いそびれました、、、、

自分で書いておいてアレですがピノ様有能過ぎない?

77 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 16:26:39 ID:KFZyClDseO
おっつおっつ、ピノ様は偉大ですからね、有能でございましょう

78 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 20:27:57 ID:Av4LApCGnO
>>77
確かに! 双葉ちゃんも結構有能なので期待して下さい

それとvillsの歌ステージ良かった…………シロアカであの曲は反則ですよマジで

79 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:39:01 ID:fxUPWQt3gT
>>75
 長い通路を通り抜け、熱気と歓声に満ちた闘技場を通過し、四人は双葉の待つ入口へと辿り着く。

 日はすっかり傾いて街がみかん色に染まる中、桃色に染まった可愛らしい少女が四人を待っていた。

 桃色の髪と桃色の瞳に桃色の服、ツインテールをふんわりと纏める空色のリボンが良いアクセントになっている。北上双葉だ。

「ふたばんわー」

「双葉ちゃん!」

「双葉さん!」

『ふーたん!!』

『北上さん、お久しぶりですぅ』

「ふたふたっすよね?」

「みんなひさしぶり!!!双葉の名前は北上双葉、よろしくねうまぴー」

 双葉がにこりと笑い再会を喜ぶ。ふんわりとした声が耳に心地よく響く。

「みんなそろったことだし、ご飯でも食べながらおはなししよー。実はさ、驚かせようと思ってだまってたんだけど、あのめいてんクックパートナーの予約がとれちゃったんだよね」

「ほんとですか双葉お姉ちゃん!?あのクックパートナーですよね!?滅多に店を出さないと噂の!天然の高級食材を使った料理を出すあの!!」

「フフフ、、、、それは見てのお楽しみだよ、、、、、、」

 双葉の言葉をピノが聞き返す。ピノは目をキラリと輝かせ身を乗り出し、それを受け流す双葉も笑顔が抑えきれていない。

80 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:39:43 ID:fxUPWQt3gT
>>79
 ネオンが灯り始めた大通りを抜け、迷路のように入り組んだ商店街を双葉とピノが先導して歩く。

「一体どんなお店なんですかねハイハイ」

「妹ちゃんたちがあんなに興奮するんだよ、美味しいに決まってるじゃん馬!」

「そうですよ。クックパートナーの名前はグーグルシティの外ですら知られているくらいなんですから」

『ううううう、、、、、牛巻は羨ましくない!羨ましく無いぞ!!』

「アハハ、帰ったら手料理作るから許してほしいんじゃぁ」

『え!?よっしゃぁ!牛巻頑張っちゃうぞ!!』

『あずきの分もお願いしますぅ』

「あずきちゃんと、スタッフの分も勿論作るよ」

 画面越しにスタッフの歓声が聞こえてくる。ブイデアに帰ったら忙しくなりそうだ。



 そうこうしていると双葉とピノの足がとある店の前でピタリと止まる。

 その店は古き良き個人食堂と言った佇まいで、すりガラスの戸上には暖簾で『クックパ―トナー』と書かれている。

 田舎町によくあるその外観は、ネオンや派手な看板だらけのこの街では逆に目立っていた。

 ガラガラと戸を開けた途端心地良い匂いが出迎えてくる。炊いたお米の優しい匂いだ。

「いらっしゃいませ!クックパートナーのコック、お料理の妖精クックパッドたんです!」

「団体で予約してた双葉だよー」

「双葉さんと御一行ですね!お待ちしてました!」

 カウンター越しに店員の姿が見える。

 コック帽を被った元気そうな少女だ。その少女は見た目通りのハキハキとした声で手前のテーブルへ五人を案内する。

81 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:41:30 ID:fxUPWQt3gT
>>80
「ご注文決まりましたらお呼び下さい!」

「、、、、、、いやー、庶民的な店構えでちょっと安心したっすよハイ。メニューもぱっと見普通ですし」

「それがそうでも無いんですお馬さん。この世界で肉と言えば合成肉ですの。本物なんてお祝いの時くらいしか口にできませんわ。なんせ家畜の飼料が育つ場所が殆どありませんからね」

「そ、そうなんすか、、、、じゃあ屋台で売ってる食べ物なんかも、、、、、」

「ええ、あれはあれで美味しいですが本物の肉ではありませんわ」

「でもここの食材は全部天然なんすよね?」

「少し違いますわ。ここのは天然の『高級』食材、地鶏やプライム牛と言った食材を使っている、ですよね双葉お姉ちゃん」

「そう。ここは知る人ぞ知るめいてんなんだよ」

 グーグルシティの先輩として知識を披露するピノと双葉。

 二人の話す姿に無知を笑う様子は一切なく、純粋な嬉しさを湛えたむしろ喋り方は微笑ましい。

「それは凄いですね、、、、、じゃあオイラはこの『クックたんの気まぐれメニュー』で」

「シロもそれにしようかな」

「双葉もシロちゃんとおなじのがいい」

「じゃあ私も」

「わたくしもそれで」

「決まりっすね」

 ばあちゃるが店員に注文を伝えると、店員は勢い良く一礼して店の奥へ消える。

82 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:42:23 ID:fxUPWQt3gT
>>81
 料理が来るのを待っていると、ふとばあちゃるの腹がギュルリと嫌な音を奏でた。

 突然襲い掛かる便意に慌てて席を立ち、店の奥に有るトイレへと小走りで移動する。

 しかしトイレはたった一つしかなく、その一つのトイレは埋まっていた。

 早くも限界間近の馬男を扉がはばむ、薄く白いただの扉が今に限っては堅牢な防壁に見える。

 何度か躊躇した後、それでも我慢しきれずドアをコンコンとノックする。

「あ、ごめんねー。すぐ出るからちょっと待ってて」

「、、、、!!、、、、あ、ありがとうございます」

 防壁の向こうから綺麗な声が聞こえ、少しするとトイレから出て来た金髪の女性がこちらを通り過ぎる。

 その女性に対する綺麗だな、と言う感想は便意に塗りつぶされ、ばあちゃるは全速力でトイレへと駆け込んだ。

 しばらく後、スッキリとしたばあちゃるは念入りに手を洗い席に戻る。

 戻る最中それと無く店内を見渡せば、奥の方に見栄えの良い扉が見える。その扉の向こうからは先程の女性の声が聞こえた。



「遅いよ馬。もう少し遅かったら料理先に食べちゃうところだったよ」

「待っててくれたんすねシロちゃん。ありがとうっす」

「馬、待ってたのはシロだけじゃないんだからね。そこ大事」

「ありがとうっす皆」

「それでよし!じゃあ、、、、、」

「「「「「頂きます」」」」」

 皆が手を合わせ食事が始まる。

83 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:43:10 ID:fxUPWQt3gT
>>82
 皆が手を合わせ食事が始まる。

 五人の前に並ぶのは真っ白なご飯、黄金色のチキン、熱々の味噌汁。

 肉汁が溢れ出るチキンを丁寧に切り分け口に運ぶ、するとパリッパリの鳥皮と引き締まった鶏肉が力を合わせて顎を楽しませ、少し遅れて濃厚な鳥の旨味が広がる。

 ご飯を一口食べれば、お米のほのかな甘みと鳥の味が調和を奏でる。

 ワカメや豆腐の入った味噌汁をフゥ、フゥ、と吹きながらゆっくりと飲むと体がじんわりと温まっていく。

 チキンを食べ、米を食い、味噌汁を飲む。それを無心で繰り返す内に五人の皿はあっという間に空になっていた。

「「「「「ごちそうさまでした」」」」」

 米粒一粒までキッチリと食べきった五人。満足げな表情で立ち上がると会計を済ませ外へ出る。

「ありがとうございます双葉さん!美味しかったです!!」

「喜んでくれて双葉もうれしいよー。そう言えばすずちゃんも暫くグーグルシティにいられるんだよね?」

「ハイ!ニーコタウンの方は部下に任せて来たので。優秀なんですよ私の部下」

「やった!じゃあしばらくは皆でピノちゃんの屋敷におとまりだ」

「いいんですかピノさん!?」

「勿論ですわすずお姉ちゃん。シロお姉ちゃん、お馬さん、お二人も来てくれませんか?」

「勿論行くよ!妹ちゃんとお泊り会、、、、楽しみなんじゃぁ」

「あざっす!」

 眠らない街グーグルシティ。

 ネオンが、車のライトが、街灯が、ビルの照明がまばゆく照らす大通りを五人が歩いてゆく。

84 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:51:50 ID:fxUPWQt3gT
日常回&アカリちゃんとの顔合わせ回でした

食事ってその場所でとれる食材、文化、味覚、色んな物を内包してると思うんですよね、全世界共通の娯楽でもありますし。

今回の食事シーンで会話が無いのは、美味しすぎて無言で食べてたみたいなそんな感じです(言い訳)

85 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/26 08:14:39 ID:bu7nk2RPXH
おっつおっつ、黄金チキン食べたいなと思いました(コナミ)

86 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/26 12:33:44 ID:Nt.6lZ/cgP
>>85
黄金チキンはジョナサンで食べた地鶏のステーキがモデルですね

マジで美味いのでオススメです!

87 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 17:35:17 ID:AXiTFSVogf
>>83
 次の朝、五人は身支度を整え、ファイトクラブ『スパークリングチャット』の前に集まっていた。

 ピノの屋敷に戻った後は大きな浴場に仲良く入り(ばあちゃる以外)、寝室でお泊り会を楽しみ(ばあちゃる以外)、天国の雲の様に柔らかなベッドで快眠し、スッキリとした目覚めを迎えていた(すず以外)。

 シロにグデンと寄り掛かるすずを微笑ましく見守りながら、ピノは双葉に話しかける。

「双葉お姉ちゃん。仕事の方はどうなりましたか?」

「とりあえずエイレーンちゃんは条件つきで話きいてくれるって」

「条件の内容はなんでしたか?」

「ふたばが直接でむくこと、双葉以外に何人か付き添いを連れてきてもOKだって」

「なるほど、、、、想定より大分緩い条件ですね」

 話についていけずポカンとするばあちゃる、既にほとんど寝ているすずを置き去りにし二人は話を進めて行く。

 すずを起こさないように気を付けながら、シロが二人の間に割って入る。

88 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 17:36:34 ID:AXiTFSVogf
>>87
「ピノちゃん双葉ちゃん、何の話をしているの?」

「えっとねぇ、、、、街の設立50周年にあわせものすごい規模の大会をひらいて『楽園』にいく為のお金を一気に手にいれるっていう計画をたててたんだけど、邪魔がはいっちゃったんだよね」

「そうなんですわ。莫大な優勝賞金、名だたる選手、街の50周年と言う最高のタイミング、、、、、、後はわたくし達が優勝して賞金を回収すれば『楽園』に行けるだけの金がちょうど貯まる、はずでしたわ」

「どんな邪魔が入ったの?」

「金貸し連中に圧力が掛かり、大会の開催に必要な金を調達できなくなりましたの。金が足りなければ大会が開けませんし、開けないとなればかなりの損害が出ますわ」

「圧力をかけてきたのはむかしここら一帯をしきってたギャング『サンフラワーストリート』と『エルフC4』の連中。双葉たちをつぶす為に手をくんだみたい」

 浮かない表情を浮かべる双葉とピノ。
「前々から交流があり、圧力を跳ね除けるだけの力を持つエイレーン一家が唯一の活路。エイレーン一家から金を調達出来なければ『楽園』に乗り込むタイミングは大きく遅れ、遅れた分カカラの被害者が増えてしまいますわ」

「なるほどねぇ、、、、、話を聞く限り、今後すべきことは二つある感じかな?まずエイレーンちゃんとの交渉を成功させ大会を開くこと。もう一つはその大会でシロと妹ちゃん達の誰かが優勝すること。あってるよね?」

「うん、そのとおりだよシロちゃん。じゃあさっそくエイレーンちゃんのところに、、、、」

「あ、ちょっと待って下さい」

89 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 17:37:24 ID:AXiTFSVogf
>>88
 出発しようとした矢先、ピノが何かに気づいたのかパンと指を鳴らす。

「どうしたのピノちゃん?」

「あくまで想像なのですが、、、、、わたくしとすずお姉ちゃんはエイレーンさんの所に行かない方がいいかも知れません。『付き添い』を連れて来ても良い、と言うことは『付き添い』以外は連れてきてはいけないと言うこと」

「あ、そういうことか。双葉とピノちゃんはこの闘技場『スパークリングチャット』の共同経営者としてゆうめいだもんね。立場がたいとうな人が付き添い人だったらダメか。すずちゃんもニーコタウンのリーダーだしね」

「あくまで念の為ですけどね。ですがエイレーン一家との交渉が決裂すれば詰み、念には念を入れるべきですわ」

「わかった」

 シロの腕の中で熟睡しているすずをピノにそっと預け、三人はエイレーン一家との交渉へと出発する。

90 名前:ピノ、すず視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:38:42 ID:AXiTFSVogf
>>89
「すずお姉ちゃん、、、、起きてください、、、、すずお姉ちゃん、、、、」

「、、、、んん、、あ!?すいません!寝ちゃってました!!、、、て、ここは何処ですか?」

「ここは図書室でございますわ。ご友人様」

 すずが夢の世界から現実へと引き戻される。

 寝起きのぼんやりとした視界に無数の本棚が映る。

 本棚から視線を声の聞こえた方へと向ける、そこには可憐な少女、カルロピノと白髪の老メイドが居た。

「あなたは、、、、?」

「私はエミリー、婆やとお呼び下さい」

 そう言うとエミリーはすずに一礼し、図書室の机に何かを並べだす。DVDとテレビ、だろうか。

「すずお姉ちゃん。わたくし達がここに残った理由は聞いてましたか?」

「ハイ、念の為ですよね」

「その通りですわ。しかし何もせずに待つのは性に合わないので、その間すずお姉ちゃんと一緒に新たに手に入れた情報の精査をしておきたいなと」

「新たに手に入れた情報?」

「ええ、それも『楽園』のからくりを解き明かす糸口になり得る情報ですわ」

 そう言うとピノはやや自慢げな顔でDVDをすずに差し出す。ピノの動きに合わせてDVDの反射光がユラリキラリと揺れ光る。

91 名前:ピノ、すず視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:39:55 ID:AXiTFSVogf
>>90
「ありがとうございますピノさん。えーと、DVDのタイトルは『楽園の声』?すごそうなタイトルですね」

「『楽園の声』というのは『楽園』での生活やインタビューを記録した、所謂PR映像の事ですわ。これが毎月一度グーグルシティで広告として流されていますの」

「それって普通なんじゃ、、、、、あれ?カカラの大元は『楽園』に存在してるんですよね?」

「そうですわ。カカラの大元が存在すると思われる『楽園』からの映像、精査する価値があると思いませんか?」

「確かに」

 そう言うとすずはDVDをテレビに差し込み、再生ボタンを押す。



 再生されるのは住民の豪華な暮らしとありきたりなインタビュー。その映像は五分程で終わってしまう。

「うーん。何というか、、、、普通の映像ですね」

「それがそうでも無いんですわ。婆や、この映像を何処で手に入れたのか説明してくれますか?」

「ええ、喜んで、、、、この映像は放送局から奪取した『楽園の声』の元データ。当然実際に放送されている映像よりもずっと画質や音質も上質で御座います」

「へぇ、、、、、奪取したんですか、、、、奪取!?」

「誰にもバレて無いので問題は無いですよ、御友人さま」

「いや、そこじゃなくて、、、、、」

 老メイドがパチンと茶目っ気たっぷりのウインクを返す。

 すずは何度も目をこすり、婆やことエミリーをジッと観察する。

92 名前:ピノ、すず視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:40:31 ID:AXiTFSVogf
>>91
「婆やはこう見えてかなり強いですからね」

「そうなんですか!?」

「それはもう、婆やと爺やのコンビ『蜜蜂』と『蟷螂』と言えばそれはもう有名ですわ、、、、なにせ武勇伝が本になるくらいですから」

「もう随分昔の事で御座います、、、、、ですが昨日の事の様に思い出せます。ギャング、カカラ、サイボーグ、、、、セバスと共に風穴を空けてやったものですわ」

 老メイドは何かをなぞる様にそっと手の甲を撫でる。

「ま、この話は別の機会にゆっくりと…………今は『楽園の声』の検証に集中すべきですわ」

「そうですね」

「もう一度再生してみますか」

93 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:41:50 ID:AXiTFSVogf
>>92
 ピノ、すずと別れた三人は今、エイレーン一家の事務所の前にいた。

 数え切れない程のネオン看板は殆ど性的な言葉で満たされ、扇情的な服を着た娼婦や男娼が闊歩する場所。ここはグーグルシティ最大の風俗街、『ポルノハーバー』。

 その中央に位置する建物、多くの風俗店が入った一際大きなビル、その最上階に事務所は有った。

「ハロー、ミライアカリだよ。双葉ちゃんと、、、、そこの二人は付き添いかな?」

「そうだよぉ。名前はシロ、宜しくねアカリちゃん」

「オイラはばあちゃる。宜しくっすアカリさん」

 三人が事務所の前で待っていると、ミライアカリと名乗る金髪の美女が話しかけてくる。

 豊満な肢体を水色を基調とした服で包んだ彼女は、明るさと妖艶さの同居した不思議な雰囲気を放っている。

「早速エイレーンの所に、、、、ちょっと待って、ばあちゃるさんに何か見覚えが、、、、、そうだ!トイレにいた人だ!!」

「トイレ?、、、もしかして『クックパートナー』でトイレを開けてくれた人っすか!?」

「そう!」

94 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:42:31 ID:AXiTFSVogf
>>93
 ばあちゃるの頭に先日の記憶が蘇る。

 『クックパートナー』でトイレに行った時、トイレを譲ってくれた女性。その時に見た姿とミライアカリがピタリと重なる。

「アハハ!世間ってのはやっぱ狭いね!」

 カラカラと笑い、三人と握手をするアカリ。

 握手してもらったのが嬉しかったのかデレンとするばあちゃる。

「馬ぁ!握手くらいでデレデレしないの!!もう」

「すみませんシロちゃん」

「あはは。馬Pはやっぱり馬Pだね」

 ばあちゃるを咎めるシロは寧ろ嬉しそうな、何かを懐かしむような微笑みを浮かべていた。


 思わぬめぐり逢い。和気あいあいとした雰囲気。アカリに案内され事務所へと入る三人は確かな希望を感じていた。

95 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 18:08:56 ID:AXiTFSVogf
次辺りから最大トーナメント偏的な物に入ります

せっかくなので細々とした設定をば
『エイレーン一家』
リーダー エイレーン

風俗街の元締め。水商売に対する暴力や薬物などの違法な取引を取締り、その見返りで収入を得ている。
仁義に重きを置くそのやり方に反発する人間も多く、実際金回りは余り良くない

『サンフラワーストリート』
ピノ様と双葉ちゃんの話でチラッと出て来たグループ 
元ネタはひまわり動画(アニメの違法転載が異常に多い)

リーダーは鳴神裁
元々はラッパーやダンサーを始めとしたストリートパフォーマーの集まりだったのが徐々に拡大し、幾つかのショービジネスを取り仕切るようになった。

『エルフC4』
元ネタはfc2(個人撮影のアダルトビデオが多く販売されている。たまーにヤバそうなのが有る)

リーダー ケリン
エイレーン一家のやり方に反発し、離脱した人間達が前身となって出来たグループ。エイレーン一家が交渉の席についてくれたのも、ここら辺の事情が大きい。
主な収入源は違法物品の取引き。

『ニーコタウン』
元ネタ ニコニコ動画

リーダー 神楽すず
ボスが街の外で略奪行為を働いていた人間や住むところの無い難民をまとめ上げて作り上げた街。

カカラを間引いて肥料に変え、農産や畜産を営んでいる。

96 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 20:37:43 ID:QJL/p3s.6l
おっつおっつ、次回が楽しみだがヤバい奴らしかいねぇ!

97 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 21:07:38 ID:AXiTFSVogf
>>96
既存のVを無能化させる訳にはいかないので、バランスを取るため敵陣営も有能にしていった結果こうなりました(笑)

この特異点のラスボスは結構意外なバックグラウンドがあるので楽しみにして頂けると幸いです!!

98 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:33:25 ID:EWi0X.RYyR
>>94
「ようこそ来てくれました。私はエイレーン、ここの元締めやってマース」

「『スパークリングチャット』の代表としてきました。双葉です。よろしくおねがいします」

「付き添いのばあちゃるっす。よろしくお願いします」

「同じく付き添い人、シロです。よろしくお願いします」

「ミライアカリだよー。エイレーンの補佐をやってるんだ」

 三人はエイレーン一家の事務所へと通される。

 小洒落たガラスの机、それを挟む様に配置された二つの黒いソファー。部屋に掲げられた代紋がここが事務所であると主張している。

 そんな事務所のソファーに三人は座り、ミライアカリ、そしてエイレーンと机越しに向き合っていた。

 笑顔で三人を歓迎する赤髪赤目の女性、エイレーン。その若々しい姿とは裏腹にどこか老練な雰囲気を放っている。

「双葉サーン。大会を開く為に金を貸してほしい、とのことでしたよね」

「うん。もともと貸してくれるはずの所が『サンフラワーストリート』と『エルフC4』に脅されちゃったの」

「ええ、そこまでは聞いてマース。本当に災難でしたね。ただ言わなきゃいけないことがありマース。私たちのグループ『エイレーン一家』は余り金回りが良くありません。双葉さんの提示した額、それは私たちにとってかなり慎重にならざるを得ない額デース」

「、、、、わかった」

「それと一つ、気になることがありマース。何故、これ程のリスクを負ってまでこの大会を開こうとしたんですか?もっと小さな規模の大会なら借金などせずとも開けた筈デース。つまり、何かの目的の為に急いで金を集めようとしている、私にはそう見えます」

99 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:34:44 ID:EWi0X.RYyR
>>98
 エイレーンは笑顔から真剣な顔へと変わる。特に目が変わった。

 こちらをジッと見据えて、見定めるような目だ。

 穏やかな空気が徐々に薄れていく。

「もしこの大会が開けなければ貴方達は大損デース。短期間で『スパークリングチャット』をあそこまで育て上げた双葉さんが、そのリスクを見落とすはずが無いデース」

「、、、、、、」

「双葉さん、教えて下さい。何の為に金を集めているのか」

 そう言うとエイレーンは口を閉ざす。アカリも又、何も言わずにこちらを観察している。

 辺りがピンと張り詰めた緊張で満たされている。



「わかった。説明する」

 双葉の桃色の瞳が、エイレーンの見定める様な目をまっすぐ見返す。

「カカラの大元、それが『楽園』にそんざいする可能性がたかい。だから楽園に乗り込む為に金が必要なの」

「、、、、、、証拠はありマースか?」

「いちおう、有る」

 双葉は懐から図面を取り出し、机の上に広げる。ピノの屋敷で見た、あの図面だ。

100 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:36:00 ID:EWi0X.RYyR
>>99
「これは、、、、グーグルシティの地図ですかね。大分使い込まれていますが」

「うん。で、ここにかき込まれてる線、これはカカラのねっこの出現位置とむきをかきこんだ物なんだよね。そして根っこがさししめす中心、カカラの本体がいる可能性がたかいばしょ、そこと『楽園』のばしょが一致してるの」

「成程、、、、、確かに筋は通ってマース。ですが、これに&#22099;偽りが無いと証明出来ませんよね」

「それは、、、、うん」

 この図面はすずが調べ、ピノが書き上げ、双葉に託されたまごう事無き本物だ。&#22099;偽りなど勿論ありはしない。だが、それを証明する手段は確かに無い。

 双葉はソファーの角をギュッと無言で握り締める。

「、、、、」

「私の見る限り、双葉さんが&#22099;をついてる様には見えません。ですが、私は『エイレーン一家』の長です。万が一、貸した金が帰って来なかったり、悪い事に使われたりしたら私の部下に申し訳が立ちません。その『万が一』を消せない限り、無理です」

 そう、辛そうな声でエイレーンは言う。

「、、、、、、、、、、、、、、、、」

 何か打開策は無いか、必死に考えるが何も思いつかない。賭けに負けたことを悟り双葉はうなだれてしまう。

 そんな双葉の姿に罪悪感を感じるのだろうか、エイレーンはその赤い瞳を閉じ双葉を見ないようにしている。

 痛々しい沈黙が場を支配する。


https://vt-bbs.com/upl/1617960960-1.png


101 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:37:18 ID:EWi0X.RYyR
>>100
「、、、ふたふた、大会さえ開けば借りた金、絶対返せるんすよね」

 ソファーから立ち上がり、沈黙を破る男が一人居た。ばあちゃるだ。

「うん、もちろんかえせる」

「、、、、、それが、聞きたかったんですよねハイハイ」

 ばあちゃるは一度大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと喋りだす。

「エイレーンさん、臓器って売りさばけますかねハイ」

「、、、、、?まあ、やろうと思えばやれマース」

「だったら話は早いでふぅ。オイラを借金の担保にして下さいっす。健康な成人男性の臓器なら十分な金になるっすよね?」

「な、何いってるの馬P!?」

「、、、、、」

「ばあちゃる!?」

「正気デースか?」

 この場の全員がばあちゃるに注目している。

「ふたふたが本当の事を言ってると証明は出来ないっす。でもオイラはふたふたが&#22099;をついて無いと知ってるっす。だから何を賭けようとオイラにとっては実質ノーリスクなんですよねハイ」

 腕をパタパタとわざとらしく振り回し、震える声でばあちゃるは言い放つ。

 茶色い馬のマスクは汗で黒く染まり、足は小刻みに震えている。それでもばあちゃるは言葉を撤回しない。

102 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:38:37 ID:EWi0X.RYyR
>>101
「それにオイラが言うのもなんですけど、オイラなら人質としても使えますよハイ」

「馬P、、、、ダメだよ、、、馬Pにそんなことさせたくないよ」

「ふたふた、大丈夫っす」

 双葉は弱弱しい声で止めようとするが、ばあちゃるの決意が揺らぐ気配は無い。



 そんな最中、双葉の懐にある携帯が着信音を鳴らす。

 着信欄には『カルロピノ』の文字列が光っている。

「どうしたの?」

『こんな時にすみません。ですが今すぐ知らせるべき事がありまして、、、、、数日前に手に入れた『楽園の声』に映像を加工した痕跡が見つかりましたわ』

「どういうこと?」

『『楽園の声』のインタビュー映像、室内で録画した映像に別の背景を貼り付けていた様ですの。かなり巧妙に加工されていて、すずお姉ちゃんが『環境音に違和感がある』と指摘していなければ解りませんでしたね』

「証拠はあるかんじ?」

『ええ、有ります。そちらの携帯に送っておきますわ。エイレーンさんとの交渉に役立つかどうかは解りませんが、もし役立てば幸いです。では、御機嫌よう』

 ピノからの電話が切れる。その直後、双葉の携帯にファイルの添付されたメールが届く。

 立ったままのばあちゃるを他所に、双葉はファイルの中身を確認する。曇った顔にいつものフンワリとした笑顔が戻っていく。

103 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:40:26 ID:EWi0X.RYyR
>>102
「エイレーンさん。きいてたよね」

「勿論デース。ちょっと見せて下さい。、、、、、確かにこのインタビュー映像は私も見た事が有りマースね。加工の痕跡も、成程。間違いないデース」

「でしょー。これで『万が一』はきえたよね?ね?」

「ウビ?あ、これ」

「そうですね。室内で行ったインタビューをわざわざ外でやっている様に見せかける、、、、、どう考えても可笑しいデース」

 そう言うとエイレーンはアカリに目配せをし、書類を持ってこさせる。

 細々とした文字が書かれた何枚かの書類、双葉はそれを満面の笑みで受け取る。

「これが契約書類だよー」

「ありがとうアカリちゃん、、、、、うん、こっちのていじした額通り、利子も相場とおなじだね」

「勿論不備はありまセーン。あと、これは受けても受けなくてもいいのですが一つ提案が有りマース」

「なあに?」

「私たちの出場枠を二つ用意して下サーイ。もし用意してくれるなら利息を減らしマース」

「いいけど、、、、なんで?」

「金回りが良く無いせいで他のグループに舐められがちなんデース。なので双葉さんの大会で力を見せつけられればな、と」

「なるほど、ワルだねぇ」

「何言ってるんですか双葉サーン。私達は『エイレーン一家』、ここ『ポルノハーバー』を取り仕切る悪い組織ですよ」

 双葉のいじりにエイレーンが嬉しそうに答える。

 座る機会を失ったばあちゃるを置き去りにしてトントン拍子に話が進んで行き、双葉が書類にサインを書き込み契約が交わされた。

104 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:41:36 ID:EWi0X.RYyR
>>103
「いやー、なんとか上手くいったね」

「だねぇ」

「上手く行ったのは良いんでふけど、オイラは空回りしちゃってましたねハイ、、、、」

 真昼間の太陽が照りつける風俗街を歩く三つの人影が有った。シロ、双葉、ばあちゃるの三人だ。

 スキップしそうな程上機嫌な二人とは裏腹に、ばあちゃるは二人の後ろをトボトボと歩いている。

 ふと、シロは立ち止まり、そして振り返る。

「馬」

「ど、どうしたんすかシロちゃん」

「あの時、かっこよかったよ」

「、、、、、え?ホントっすか!?」

 それだけを言うと、シロはクルリと振り返りまた歩き出す。

 上機嫌な三人は吉報を手に、帰り道を歩く。

105 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/09 19:18:56 ID:EWi0X.RYyR
エイレーン一家との交渉はこれで終わり、間もなくトーナメント編です

今回の馬は何気に大活躍でした、あの時馬が提案をして無ければあのまま話が終わってた可能性が高いです。


ついでに細々とした設定と没キャラの紹介でもしようと思います。

『ポルノハーバー』
モデル Pornhub
工業地区と住宅街の中間に位置する風俗街。
かつては治安がかなり悪かったが、エイレーン一家が来てから大分マシになった

セバス(爺や) 67歳
虫さん、執事、中二病、この三つの要素が合体して生まれたキャラ。

『蟷螂』の異名を持つグーグルシティの英雄。グーグルシティが出来たばかりの不安定な頃、カカラや悪人から街を守ってきた。
異名の由来は両腕の義手から刃を生やす姿から。
武器は義手仕込みの刃、要はサイバーパンク2077のマンティスブレード。

若い頃はクール系のラノベ主人公見たいな感じだった。過去に言及されるのが割と恥ずかしい。

エミリー(婆や) 64歳

『蜜蜂』の異名を持つ英雄。
異名の由来は戦闘時に使用する武器から名付けられた。
武器は右腕に括り付けたパイルバンカー。

若い頃はラノベの暴力系ヒロイン見たいな感じだった。昔の事はいい思い出。


没キャラ
ラクア 15歳 女性

爺やと婆やの養子

通称『蜘蛛』、整形中毒ならぬ改造中毒。生身の部分が殆ど残っていない。

背中に取り付けた8本のサブアームを用いて戦闘する。

106 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/09 20:37:54 ID:0cIPZZumv3
おっつおっつ、トーナメント楽しみ

107 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/10 11:15:30 ID:C7I6wEq8jA
>>106
トーナメントはちょっとだけ捻った物にする予定です!

108 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:03:08 ID:qQzXRtc/NA
>>104
 シロ、双葉、ばあちゃるの三人は『ポルノハーバー』を通り抜け、大通りを歩き、『スパークリングチャット』の前に辿り着く。

 入り口の方に向かうと、そこには辺りをキョロキョロと見回しているすずとピノが居た。

「ピノちゃーん、すずちゃーん、かえったよー」

 双葉が声を掛けると二人は駆け足で近寄ってくる。

「お帰りなさい双葉お姉ちゃん!、、、、、、結果は、どうでしたか」

 ピノが質問をする。すずもピノもこくんと唾を飲んで答えを待っている。

「結果はね、、、、、せいこう!」

「ヤッター!」

「やりましたね!!」

 二人は天に両手を突き上げ全身で喜びを表す。その動きに合わせ薄紫と緑色の髪も揺れ踊る。

「後は大会で優勝するだけですね!シロさん、プロデューサー、双葉さん、ピノさん、りこさん、あずきさん、勝っちゃいましょう!!」

『『「「「「「おー!」」」」」』』

109 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:04:06 ID:qQzXRtc/NA
>>108
『お は く ず!名物司会と言えばこの俺、天開司だ!!!』

「「「「「おおおおおお!!!!!!」」」」

『今回はグーグルシティ設立50周年を記念したトーナメントォ!!名立たる強豪!大悪党!伝説!全てがここに集った、正に最大最凶だ!!!』

 資金を調達し、無事開催された大会の当日、会場は無数の観客と熱狂に満たされていた。



 そんな会場の選手控室、観客の声が微かに聞こえるそこに五人は居た。

「馬P、ルールはおぼえてるよね?」

「勿論っすよ。

 銃火器は使用禁止
 試合前の妨害、談合は禁止
 試合場から出た選手はその時点で敗北とする

ですよねハイ」

「馬P、大事な事をわすれてるね」

 双葉はニヤリと得意気に笑い、両手の指を二本づつ立てる。

「今大会は2対2。名付けて『コラボマッチ』双葉がかんがえたんだよー」

「あ、そうでしたねハイ…………あれ?でもオイラ達5人でふよね、一人余っちゃいますねハイハイ」

「そこは問題ないよ。双葉が助っ人をよんでおいたから」

「それって、、、、」

「みるまでのお楽しみ、だね」

「なるほど、、、、、、」

110 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:05:18 ID:qQzXRtc/NA
>>109
 ばあちゃると双葉が話し込んでいる最中、ふとシロが首をかしげ、ピノに話しかける。

「ねぇねぇピノちゃん。銃火器が使えないのは解ったけど銃火器以外の武器はどうなの?」

「あ、それ私も気になってたんですよね」

「全てOKですわ」

「それって危なくないの?」

 シロがそう言うと、ピノは何処か嬉しそうに首を横に振る。

「いいえ、安全ですわ。なにせわたくしの宝具『己が身こそ領地なれば(ザ・ドミニオン)』がありますから」

「、、、、、あ!成程ね、、、、考えたねぇピノちゃん」

 シロは納得がいったのかウンウンと頷いている。

 と、そこにいまいち納得の行ってないすずがピノに質問をする。

「ピノさんの宝具の効果って『自分の住む場所を自身の領地と見なし、領地の中においてのみ様々なルールを設定できる』ですよね?」

「すずお姉ちゃん。わたくしの住む屋敷、あそこに行こうと思ったら『スパークリングチャット』の内に有る通路を通らなければいけませんよね?あれ、明らかに不便だと思いませんか?」

 すずの脳裏に過去の光景が蘇る。爺やに案内され、通路を通り抜け、地下にある屋敷へと通されたことを。

111 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:05:38 ID:qQzXRtc/NA
>>110
「わたくしの屋敷を出てもそこは外ではなく『スパークリングチャット』の内部。つまり、わたくしは『スパークリングチャット』の中に住んでいると見なせるわけですわ。マンションの一室を借りている人間さんが『マンションに住んでいる』と言っても何の矛盾も無いのと同じですね」

「成程、、、、、つまりピノさんがルールを設定してるから安全なんですね」

「ええ、具体的には『如何なる攻撃に対しても怪我を負ってはいけない、但し本来受けるはずだった痛みは感じろ、そして一定以上の攻撃を受けたら気絶しろ』このルールを常に適用することで安全に大会を開ける、と言うことですわ」

「へー。凄いですねピノさ『さぁ!!イカシタ選手共の入場!だ!』

「時間みたいですねピノさん」

 すずはポンポンと膝の埃を払って立ち上がり、試合場へと向かう。

 後の四人も少し遅れて立ち上がり後に続く。大会が、始まる。

112 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:06:46 ID:qQzXRtc/NA
>>111
 数時間後

『さあさあさあ!!ここまで残ったベスト8を紹介するぜ!!!』

『歓楽街の王が騎士と共にやって来た!!ヨメミ&萌美とエイレーン&ミライアカリ!!!』

「応援よろしくねー」「がんばるぞ!」

「エイレーン行っきマース!」「やっちゃうぞ!」

「応援してるぜ銀髪の嬢ちゃん達!!」「『エイレーン一家』は伊達じゃねえな!」「金髪の姉ちゃん、色っぺえ、、、、」



『続いて我らが闘技場のスター!!ピーマン&パプリカ!!!!』

「優勝してやるっぴ!」

「その通りっぱ!」

「いつも通り渋い戦い見せてくれ!」「ベテランの強さ見せつけろ!!」「行け行け行け!!」



『更に更に!!当闘技場のオーナーまで参戦して来た!!!カルロピノ&北上双葉!!』

「御機嫌よう皆様方。優勝はわたくしの物ですわ」

「かつぞー!」

「マジかよ?!」「オーナーって強かったんだな、、、、、」「半端ねぇ!!」



『生きる伝説!老いてなお健在『蟷螂』と『蜜蜂』!!!セバス&エミリー!!』

「よろしくお願いいたします」

「お手柔らかにお願いしますね」

「すっげぇ、、、、」「まさか戦ってる所が見られるなんてなぁ!」「あれが『伝説』!」



『ニーコタウンの大ボス!そして経歴不明白髪の少女!!!神楽すず&シロ!!』

「勝つぞ私は!」

「いくぜいくぜ!!」

「今回女子率高いな、、、、、」「白髪のお嬢さん、かなり鍛錬を積んでいるネ」「おほほい!おほほい!」

113 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:07:25 ID:qQzXRtc/NA
>>112
『かの有名なギャング!エルフC4とサンフラワーストリートが手を組んだ!!!ケリン&鳴神!!』

「ぶっ飛ばしてやるぜぇ!!!」

「大会は開催されたが、それなら俺が優勝して面目をつぶしてやろう」

「帰れ!!」「阿漕な商売しやがって!」「サンフラワーストリートのショバ代高えんだよ!!」



『そして最後!!正にダークホース!!!ばあちゃる&馬越健太郎!!』

「なぜかここまで行けちゃいましたねハイハイ」

「ウマウマ馬越♪」

「ハハハハハ!」「馬頭に下半身馬、、、、凄い絵面だな」「馬頭の方は初めて見るな」



 準々決勝まで勝ち進んだ8チーム16人が試合場にそろい踏みする。

 誰が優勝してもおかしくない面々がお互いの顔を見詰める、今、本当の戦いが始まろうとしていた。

114 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:07:56 ID:qQzXRtc/NA
>>113
 双子の様に似通った二人の少女、萌美とヨメミ。地味な服を着たダークエルフの男ケリンと端麗な顔を滲み出る暗い性根でデコレートした男、鳴神。

 ヨメミと萌美は白鞘の短刀、所謂ドスを携えているが、鳴神とケリンは何も持っていない。

 この二組が試合場へと足を踏み入れる。

『じゃあ始めるぜ、、、、、萌美&ヨメミ対ケリン&鳴神、、、、ファイ!』

 司会が合図をした瞬間、ケリンはポケットから次々と小石を取り出しヨメミに投げつける。

「ぶっとべ!!」

「ちょ!?」

 ただの石にしか見えないそれは、ヨメミの足元に落ちた瞬間ボンと爆音を鳴らし破裂する。

 すんでの所で避け続けてはいる。しかし絶え間なく起こる爆発がヨメミをケリンに近づかせない。

『これは悪名高いケリンの能力!!触った無機物を爆弾に変える能力だ!ルールすれすれ正に無法!!』

「ヨメミちゃん!」

「おっと、この俺を忘れてもらっちゃ困るね!」

 ヨメミを助けに行こうとした萌美に鳴神が近寄り殴り掛かる。ただの拳では無い、その拳には炎が纏わりついていた。

115 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:08:22 ID:qQzXRtc/NA
>>114
「ほらほらほら!!どうしたエイレーン一家!!!」

 ひたすらに拳を振るい攻撃し、萌美にドスを抜く暇を与えない。

 赤く揺らめくその炎は掠るだけでもその熱でもって萌美の体力を奪う。

「うう、、、熱いよお、、、、」

『これまた悪名高い鳴神の能力!!人体発火パイロキネシス!!!!気に入らない奴はみんな丸焦げ、それがアイツ!!!』

「半分以上ルール違反してる奴らが勝ってもな、、、、」「いけ好かないエイレーン一家をぶっ潰せ!!」「強いのあいつらじゃ無くて能力だよな、、、、、」



 ヨメミはケリンに一方的に攻撃され、萌美は鳴神に押され気味。準々決勝で一方的な試合を見せられているからか、観客は何処か白けたような雰囲気を放っている。

「不味いよどうする?」

「どうしようどうしよう!?」

「ガハハハ!弱音か!?」

「ふん、、、、エイレーン一家もこんなもんか」

『流石のエイレーン一家の精鋭もギャングのリーダーには手が出ないか!?』

 不利な状況を覆せず徐々に追い詰められていく萌美とヨメミ。

116 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:08:48 ID:qQzXRtc/NA
>>115
 会場に居る殆どの人間が勝負の行方を確信したその時、おもむろにヨメミが大きく後ろに下がり、萌美に声を掛ける。

「しょーがない、しょーがないけど、、、、本気出すよ」

「そうだね、、、、次に当たる選手に対策されたく無いから出し惜しみしてたけど、、、、仕方ないね」

『おおっと!?まさかここでの舐めプ宣言!!!本当か!?それともホラか!?一体どっちだ!!!』

「糞が!ホラに決まってんだろ!」

 『今まで本気では無かった』と言われたのがイラついたのだろう。鳴神は額に青筋を浮かべ、拳の炎を巨大化させる。怒りと炎を載せた拳を萌美の顔面に向け振り下ろす。

「焼きつぶ、、、グゥ!?」

 振り下ろそうとした拳に激痛が走る。鳴神が萌美の方を見れば、そこにはドスを既に振り抜いた萌美の姿が有った。

『目にも止まらぬ居合切り!さっきのセリフはホラでは無くマジだったようだな!!!!』

「どお?萌美の本気、凄いでしょ」

「う、うるさいうるさい!!絶対に、、、、」

「下がれ鳴神!!」

「させない!」

「何が何でもしてやるよ!!」

 冷静さを失い始めた鳴神をケリンが後ろに下がらようとする。

 ヨメミもドスを振るいケリンを切ろうとするが、ケリンは自身の髪の毛を一房引きちぎると無数の爆弾に変えて投げつけ、爆発の壁を作ることで何とか逃げおおせる。

117 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:09:56 ID:qQzXRtc/NA
>>116
「鳴神!アレやるぞ!!」

「解った、、、宝具、真名開放『卑火色金』」

「ぶっ飛ばして行くぜ!!宝具、真名開放『北朝将軍凱旋火』」

 鳴神とケリンは何かを唱える。次の瞬間、鳴神の手には金ぴかのライターが、ケリンの手には赤いスイッチが一つだけ付いたリモコンが現れる。

 それを確認した二人はニタリと顔を歪める。

「これで勝利だ、さっき仕留めていればお前らの勝ちだったろうに」

「ガハハハ!!これで終わりだ!!!!!!!」

「何かする前に倒すよ」

「ヨメミもそうするね」

「もう遅い!」

 鳴神がライターに火を付ける、ケリンがリモコンを二人に向けスイッチを押す。

 鳴神の姿が突如消える、萌美とヨメミの居た場所が突如大爆発を起こす。

「な、なに?」

「どういう事?」

「見えないだろう、凄いだろう!」

「ガハハハ!この勝負貰ったぁ!!!」

『鳴神とケリンも切り札を持っていたようだ!!これは解らない!勝負の行方は正に不明!!!』

「これだよこれ!!」「どっち応援する?」「俺は銀髪の嬢ちゃんたちを応援するぜ!」「やれケリン!!」

 鳴神とケリンの発動した宝具、それによりわからなくなった勝敗、観客はさっきとは打って変わりここが決勝とでも言わんばかりの盛り上がりを見せる。

118 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:10:41 ID:qQzXRtc/NA
>>117
「どうだ、どうした、これで『本気』か?あぁ!?」

「結構根に持つんだね、、、、くっ、、、、」

 姿の見えない鳴神に苦戦する萌美、不可視の攻撃を殆どカンで捌き、時折反撃としてドスを振るってはいるもののまともに当たる気配は無い。

 打ち合う度、萌美の体力と集中力は大きくそがれていく。既に顔には大粒の汗がいくつも浮かんでいる。決壊は時間の問題だ。



「ガハハハッ!!とっとと爆発しろ!!!」

「ヨメミは爆発なんてしたく無いねっ」

 ケリンがリモコンをヨメミに向けスイッチを押す、するとヨメミの足元が爆発する。

 爆発すること自体はさっきまでの小石と同じだが、爆発の規模、威力が桁違いに大きい。そして爆発の起こせる頻度が段違いだ。

 さっきまでは『石を取り出し、狙いを定め、石を投げる』だったのが『相手にリモコンを向けボタンを押す』だけで爆発が起きる。この違いは余りにも大きい。

119 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:10:58 ID:qQzXRtc/NA
>>118
「、、、、よし、決めた、、、、ぐっ!?」

「よし!よし!遂に当たったぞ!!」

 遂に鳴神の拳が萌美を捉える。拳から噴き出る炎が萌美を包み、焼き尽くさんとする。

『これは勝負有ったか!?』

「んーん、狙い通り!ヨメミ、後は頼んだ、よ!!」

「な、何をする!?」

 萌美は燃えたまま鳴神の腕をがっしりと掴むと、そのままの体勢でケリンにドスを投げつける。

「糞っ!!」

 ケリンは投げつけられたドスを咄嗟に避けるが、避けた瞬間確かな隙が生まれる。

「ほいーっと」

「チックショー!!!」

 当然ヨメミがその隙を見逃す筈もなく、ケリンの急所を正確に切り裂く。そしてケリンは一定以上のダメージを受けた事で気絶する。

 その直後、遂にダメージが一定量を超えたのか萌美も気絶するが、気絶しても鳴神の腕を離す様子は無い。

「は、放せ、、、糞糞糞!!糞!!!!!!!」

「終わりだよ」

 ヨメミが動けない鳴神にトドメを刺す。

『お、おおおおお!!!!!!これはすげえ!!萌美&ヨメミの逆転勝利だ!!!』

「よっしゃー!!」

「カッコ良かったぜ!!」「これがエイレーン一家!」「凄いなんてもんじゃねぇ!!!!」

 闘技場に万雷の拍手が鳴り響く、勝者は勿論、健闘した敗者も称える、そんな拍手が闘技場全体を満たしていった。

120 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:21:06 ID:qQzXRtc/NA
準々決勝からです、、、、、流石に一回戦から書くのは色々と無理があったので断念しました

代わりに2対2の異能力バトル系トーナメントと言う、個人的には割かし凝ったものにしたつもりです。異能力系のお約束に漏れず先に能力を公開した方が不利な感じですね。

ただしこれはトーナメントなので、仮に準決勝で全ての手札を見せたりしたら、決勝の相手には最初から手の内が全て解ってしまうなど、実戦とは違う大会ならではの駆け引きを書けたらなと思っております。

121 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:27:19 ID:qQzXRtc/NA
ピノ様の宝具解説
『己が身こそ領地なれば(ザ ドミニオン)』
自分の住む場所を領地と見なして、そこを支配できる宝具。

強そうに見えて意外と使い所が限られる宝具。別の宝具もあるがそちらはかなり癖が強め

122 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 22:46:19 ID:6xCPiNTVZK
おっつおっつ、おほほい言ってる奴いて草

123 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/19 00:20:33 ID:NEhLkZC1y1
>>122
小ネタ見つけて貰えて結構嬉しいです!!

それはそうと、とりとらの体力テスト凄い良かった……スパイギアさんとすもも先生とシロちゃんのコラボも凄い面白かった、満足

124 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:25:59 ID:WLkkhD6zYY
>>119
「糞、糞が!!実戦なら俺が勝ってたのに!!!」

「落ち着けよ鳴神。火、出てるぞ」

 端正な顔を歪め壁にダンと拳を叩き付ける鳴神。負けたのが相当悔しかったのだろう、強く握りしめた拳の隙間から真っ赤な炎が漏れ出ている。

 感情を露わにする鳴神を横目に、ケリンはベッドに寝転がりながら鳴神をなだめている。


 ここは医務室。敗北した選手が念の為検査と治療を受ける場所。惜しくも敗北した二人は医務室に運び込まれていた。

「いやー惜しかったなオイ。これ次は勝てるんじゃねえの?」

「『次』?大勢の観客が見てる前で負けたんだぞ!?他所の兵隊に!!明日から俺は最強の悪党から笑いもんに格下げだよ!畜生」

「だから落ち着けって鳴神。今回であいつらの能力は解った。エイレーンとミライアカリの能力も次の試合で解る」

「、、、、つまり?」

「試合で勝って思い上がってる奴らに、俺たちの本当の強さを教えてやろうじゃないかってことだよ」

「、、、ああ、成程、良いね。乗ったぜケリン」

 二人の悪党が顔を合わせニンマリと笑う。

「計画は有るか?」

「ねえな。お前が考えてくれ鳴神」

「しょうがないな、、、、、あいつらがこの会場に居る隙に俺たちがエイレーン一家の事務所に乗り込む、、、、どうだ?」

「なるほど、最高のプランだ、、、、、ぶっ飛ばしてやるぜぇ!」

 ピョンと勢い良く飛び起きたケリン、いつも通りの嫌味な笑顔を浮かべる鳴神と共にエイレーン一家の事務所に乗り込む準備を始める。

 この後二人は事務所で留守番していたエトラ、ベイレーン、ベノの三人にぼろ負けすることになるが、それはまた別の御話。

125 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:28:39 ID:WLkkhD6zYY
>>124

『お次はこの方達!!我らがオーナー!双葉さん&ピノさん!!もっと休日下さい!!!それに対するは俺らのスター!!!ピーマン&パプリカァ!!!』

「欲望漏れてるぞ司会!!」「やってくれスター!」「いつも通り勝ってくれ!!!」

 ピノと双葉、ピーマンとパプリカ。計四人の選手が会場へと入る。

 ピノは槍を、双葉はナイフを携えている。槍は刃から柄に至るまで満遍なく上品な装飾が施されており、ナイフの方と言えばファンシーなピンクの柄に無骨な刃を取り付けた、何とも言えない見た目をしている。

 それに対するピーマンとパプリカ。緑黄色ピーマンの覆面男に赤色パプリカの覆面男。この二人は何の武器も持っていない。己の肉体こそが最高の武器だと言わんばかりのポージングでもって筋肉を誇示している。

「オーナーのお二方には恩があるっピ。でも、オイラ達は本気で行かせて貰うっピ」

「ここのスターとして温い試合は見せられないっパ」

 二人は真顔でポージングを決め、ピノと双葉に言い放つ。

「わかってる。良いからきなよ」

「当然ですわ」

 ピノと双葉も笑顔でそれらしいポーズを決め、ピーマンとパプリカに返事を返す。

『おおっと!?オーナーは本気をご要望だ!これは答えるしかない!!』

「解ってるじゃねえか!」「本気で行けスター!!」「頑張れ!!!」

『始めるぜ、、、レディー、ファイ!!』

 司会の天開が開始を告げる。

「速攻っパ!」

126 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:29:36 ID:WLkkhD6zYY
>>125
 真っ先にパプリカが動く。

 筋骨隆々の巨体からは想像もつかない程機敏な動作で双葉に駆け寄り、その勢いのまま飛び上がり頭部目掛けて飛び膝蹴りを放つ。

『早速来たぞパプリカッター!!シャープな蹴りは正に刃物!!!』

「へえ刃物、か!双葉のナイフとどっちがするどいかな」

 空を切り裂く膝蹴りを屈んで避け双葉は不敵に笑う。そして飛び膝を外し背中を向けた敵にナイフの斬撃をお返しとばかりに叩き込む。

「ッ!!、、、、」

「今行くっピ!」

 一拍遅れて駆けつけたピーマン。

 相方に負けず劣らずの巨体から繰り出されるのはただのパンチ。

「ピノちゃん、頼んだ」

「了解ですわ、、、ぐっ!?」

『出た!Punchマン!!強烈な拳の嵐が敵を襲うぜ!!!』

 ただのパンチがピノの繰り出した鋼の槍を押し返す。

「このまま押し切ってやるっピよ」

「、、、、!?拳の勢いが止まりませんわ、、くっ!」

 数多の試合で鍛え上げられたその拳は正に完成された暴力。

 数多の試合で鍛え上げられたその肉体は尽きることなき無限の体力を誇る。

 故に、ピーマンは完成された暴力を絶え間なく相手に浴びせ続ける事が出来る。

『緑の覆面野郎、その名はピーマン!こいつはパンチしか出来ねえ、、、だがパンチなら誰にも負けねえ!!』
「渋いぜ!」「勝てるぞ!!」「一点特化こそ至高だな」

 じりじり、じりじりとピノは押し込まれていく。オーロラの様な瞳が苦し気に歪む。

127 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:29:48 ID:WLkkhD6zYY
>>126

「ジリ貧ですわね、、、、」

「ピノちゃん、、、!」

 ピノの援護に向かおうとする双葉、そこにパプリカが立ちふさがる。

「shall we dance?っパよ」

「のー!とっとと倒してピノちゃんをたすけるの!」

「オイラはそう簡単に倒れないっパ!」

 そう言うと、パプリカはドンッと周囲が揺れるほど床を強く蹴り空高く飛び上がる。

「え?」

 筋骨隆々の巨体が空を飛ぶ。そんな現象を前に思わず惚けてしまう双葉。

「行くッパ!!」

 パプリカは下に見える桃色の頭、つまり双葉に向けて全体重を乗せた蹴りを叩き下ろす。
 
「、、、!!、、ぐぅっ!!」

 我に返った双葉がすんでの所で避けるも、側頭部を僅かに掠った蹴りが脳を揺らす。

『遂に来たパプリカの空中殺法!変幻自在蹴り技のデパート!!』

『パンチのピーマン!蹴りのパプリカ!スターコンビに押され気味のオーナー二人!!まだまだ勝負は解らない!!!さあどうなる!?』

128 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:34:53 ID:WLkkhD6zYY
久しぶりの投稿です。五人が引退する事が結構ショックで、暫く投稿期間が開いてしまいました

後、ピーマンとパプリカのキャラ付けにかなり苦労しました、、、、

129 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:47:02 ID:WLkkhD6zYY
ついでに紹介し忘れていた鳴神とケリンの宝具とかの紹介もしておきます

鳴神
卑火色金 元ネタ ヒヒイロカネ(和製オリハルコン的な奴)
効果 透明化

周囲の温度を操ることで光を屈折させ透明になる宝具

ケリン
北朝将軍凱旋火 元ネタ 某北の将軍
効果 爆撃

指定した場所を爆撃する宝具

130 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/07 10:05:10 ID:CkzNkwexxM
おっつおっつ、懲りない二人は解釈一致、引退はワイもきつかったがピノ様が悲しみは時間が解決してくれるって言ってたし頑張る

131 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/07 16:28:34 ID:n88uCLbyT0
>>130
ですね、、、ちょっとずつ受け入れていこうと思います

132 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:33:21 ID:ppRH1UvxMD
>>127
「流石スター!!」「オーナーも中々だったが流石にな、、、」「見ろよオーナー達の目、絶望してないぜ」

 ピーマンとパプリカに押され気味の二人、観客達の大半は既にピノと双葉の負けを確信し始めている。

「、、、しょうがないですね。奥の手を使います」

 ピノは苦々しい顔でそう言い放つ。

 大きく後ろに飛んでピーマンから距離を取ると槍を自分の方に向け、一瞬躊躇した後ギュッと目を閉じ槍を自身の手のひらに突き立てる。

 流れ出す真っ赤な血、穂先に垂れて青く染まる。青い血を浴びた槍は怪しげに輝く。

 流れ出た血が槍に染み込み、染み込む程に槍は存在感を増す。

『これは何だ!?何も判らねえがこれだけは解る!!これはヤバい!!!』

「ぐっ、、、、ふぅ。おや、ピーマンさん。待っててくれたんですね」

 痛みに顔をしかめながら瞼を開け、ピノがピーマンの方を見ると、そこには堂々と挑戦者を待ち構える緑の覆面男が居た。

 丸太の様に太い腕を組みピノを待つピーマン。ピノが声を掛ければピーマンはゆっくりと動き出す。

133 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:34:39 ID:ppRH1UvxMD
>>132
「相手の大技は甘んじて受けるのがオイラの流儀っピ」

「成程。では次の攻撃、勿論受けてくれますわよね?」

「無論、、、、拳で受けてやるっピ!」

 お互いがお互いに近付き距離を詰める。お互いがお互いの間合いに入る。

 ピノが槍を、ピーマンが拳を繰り出す。槍vs拳、ほんの少し前にも起きた勝負。違うのは結果のみ。

 つい先程までは拳に押し返されていた槍、今度こそ拳を貫き武器としての役割を果たす。

「どうです、わたくしの槍は」

「う、動けないっピ。束縛?違う。麻痺毒?、、、違う。これは、、、生命力を抜き取られているっ、、、ピ、、、」

134 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:36:22 ID:ppRH1UvxMD
>>133
 ピーマンの体から力が抜ける。ピノが槍を引き抜けば堪らず膝をついてしまう。

『ピーマンが膝をついた!?ど、どういうことだ?』

「この槍は生きているんですよ、、、、普段は眠りこけていますが、わたくしが血を与えると目覚めますの」

「、、、、、、、、、、」

『頑張れスター!!立てスター!!お前はこんなもんじゃ無い筈だ!!』

「そうだ!」「根性見せたれ!」「立ってくれぇ!!」

 ピーマンが立ち上がる気配は無い。観客の応援が虚しく響き渡る。

「効果は貴方が言った通り『生命力の吸収』。ついでに切れ味が上がったりしますね」

「、、、、、、ないっピ」

 ピーマンの体がピクンとほんの少しだけ動く。

「ただ、、、これデメリットもありましてね。槍の能力を発動すると、わたくしの生命力も少なからず吸い取られるんですの」

「オイラは、、ないっピ」

 足に力を籠めゆっくりと体を持ち上げていく。

「だから、、、今は立っているだけでも正直辛いんですけどね」

「オイラは負けないっピ!」

『、、、、、!!!立ったぁ!!』

 遂にピーマンが立ち上がる。

135 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:37:19 ID:ppRH1UvxMD
>>134
 足は生まれたての小鹿の様に震え、体は病人の様にフラフラとおぼつかない。しかし、それでもピーマンは立っている。戦意に満ちた瞳でピノを見つめ立っている。

「、、、、、倒したと思った敵が起き上がり、お互い疲労困憊、純粋な実力は敵が上。普通に考えれば顔をしかめて愚痴の一つでも吐きたい状況、、、、でも不思議ですわ。わたくし、今凄く楽しいんですよ」

「それが戦いって奴っピよ。オーナー」

「成程」

 額に浮かんだ汗を優雅に拭いピノは槍を構える。

 今にも倒れそうな体に喝を入れピーマンは拳を構える。

「うりゃあああああ!!!!」

「おらああああああ!!!!」

 槍と拳のぶつけ合い。通算三度目の勝負。一度目は拳が、二度目は槍が制したこの勝負。三度目の結果は果たしてーーーーーー

「グフッ、、、」

「ガッッ、、、、、」

 三度目の勝負。結果は引き分け。

『ピノ、ピーマン、ダブルノックアウトォ!!!両者一歩も引かず意地を魅せ切ったぜ!!』

 ピノとピーマン、二人は同時に地面に倒れ伏す。

136 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:38:34 ID:ppRH1UvxMD
>>135
「ピーマン!!」

「ピノちゃん!!」

 一方、双葉とパプリカ。

 パプリカ優勢で運んでいた戦い、そこに一瞬の停滞が生まれる。

「、、、、よくやったピーマン。後は任せろ」

 一瞬の停滞から双葉よりほんの少し早く復帰したパプリカ。グッと足に力を籠め、床を蹴り前に飛ぶ。

「これで倒すっパ!!」

『パプリカが決めに行ったぜ!!単純強力ドロップキック!!!』

 全体重を乗せた超速の蹴り、受け流し不可能、一撃必殺の大技は、、、、双葉に届かなかった。

「な、何だ、、、これ何っパ?」

『こ、これは!?パプリカの体から突然ツタが生えて来たぞ!?』

「、、、、、ふぅ。見てのとおり植物だよ。これが双葉のちから『ナイフで切りつけた所から植物をはやして動かす』」

 パプリカの体からヒュルヒュルとツタが生え、絡みついていく。

 ツタはあっという間にパプリカを動けなくしてしまう。

「ただねぇ、これ発動するまでにかなりたいむらぐが有るんだよねー。一歩間違ってたら双葉はまけてたね」

「、、、、」

137 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:39:34 ID:ppRH1UvxMD
>>136
 ツタがパプリカの全身をギリギリと締め上げていく。最早身じろぎ一つ出来ず、声すら出せない。

(オイラはこのままあっさりと負けるのか?ピーマンはあんなに見事な戦いを魅せたというのに?)

「、、、、、うん、卑怯な勝ち方なのはじかくしてる。でも双葉たちは負けるわけにいかないの」

 パプリカの余りにも無念な表情を見て、双葉は声に罪悪感をにじませながらナイフをパプリカの首筋に当てる。

(違う、違う!!卑怯なんかじゃ無いっパ!勝ちは勝ち、ルールに従っている以上それは全て正しい勝利っパ!)

「いくよ、、、ごめんね」

 双葉がナイフの刃先を首の中にそっと沈ませていく。

(違、、う。無念なのは、、、こんなあっさりと負ける、、、オイラ、、、、自身、、、、)

 ダメージが一定量を超え、ピノの宝具『己が身こそ領地なれば(ザ・ドミニオン)』の定めたルールに従いパプリカは気絶する。

『、、、勝者は!ピノ双葉チームだぜ!』

「少し、あっけなかったな」「こう言う日もあるさ」「無数の名勝負を見せてきたあいつも、毎回名勝負とはいかんさ」

「次はせいせいどうどう、やろうね」

 勝敗が決まった。





 双葉がピノを抱え会場から出ようとした瞬間、背後からブチブチと嫌な音が聞こえて来る。

「え?」

 双葉が振り返った先、そこには幾重にも巻き付いたツタを引きちぎり、立ち上がるパプリカの姿があった。

138 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:40:00 ID:ppRH1UvxMD
>>137
『な、何が起こっている?パプリカは既に気絶している筈だぜ?』

 ザワザワと観客席からも困惑の声が上がる。

「ぜったいに双葉がたおしたはずなのに」

 フラリユラリと初めて歩くの赤子の様な足取りで双葉に近づくパプリカ。

 パプリカに意識は無い、倒れる直前に抱いた『このままでは終われない』と言う感情、ただそれだけが今のパプリカを動かしている。

「もう意識がないのに、何でうごけるの?」

 双葉のすぐ側まで辿り着くと、パプリカは蹴りを繰り出す。

 鋭く、重い蹴り、普段よりも脱力した状態から繰り出された剃刀の様な蹴りは双葉の真ん前を掠め、通り過ぎていく。

 パプリカの蹴りが通り過ぎた直後、突然双葉の体に刃物で切られた様な痛みが走る。

「ぐっ!?、、、蹴りでカマイタチがおきたの!?」

「次は、、、、、勝つ、、、、、パ」

 突然の痛みに狼狽える双葉、それを見たパプリカはいたずら気な笑みを浮かべ、今度こそ倒れ伏す。

『、、、、流石パプリカ!!!こいつもやはり魅せて来るぜ!!!!ピーマンにパプリカ!!あいつらはやっぱりすげえ!!そしてそいつらに見事勝った双葉とピノ選手!!!両チームに喝采を送ろうぜ!!』

「凄いですピノさん!!」「やっぱスターは負けも様になるな!」「桃髪のカワイ子ちゃんがあんなに強いとはびっくりだぜ!」

 双葉はピノを丁寧に抱え直し、歓声鳴り止まぬ闘技場を後にする。

139 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:40:29 ID:ppRH1UvxMD
>>138
「オイラ、しばらく修行してくるッパ」

「突然何言ってるっピ?」

 ここは医務室。試合で負けた人間が暫くの間留まる部屋。

 そこにピーマンとパプリカは居た。

「だってオイラ、あんな情けない負け方したんだから、、、、てピーマンは知らないッパか」

「いや、直接見てはいないけど、パプリカは立派に戦っていたと聞いたっピよ」 

「そりゃ、優しい&#22099;って奴ッパ。オイラは情けない負け方をして、勝った人間に罪悪感まで抱かせてしまったパ」

 パプリカはくたびれた声でそう言うと、医務室のベッドに寝転がる。真っ白なシーツが歪んで大きなシワが幾つも生まれる。

 パプリカの記憶に残ってるのは、双葉が申し訳なさそうにとどめを刺す所まで。気絶してからの事は記憶に無い。

「正直、オイラの蹴り技には限界を感じてたっパ。巨体が空を飛んで、蹴りを叩き込む。派手で威力も有る。でもそれだけ、オイラの技は所詮無駄の多い見栄え重視のモノ。ピーマンの拳技よりもずっと弱いっパ」

「、、、、確かにオイラの拳技の方が完成度は高いっピ。だけど、パプリカの空中殺法は誰にも真似できないっピ。その並外れた身体能力と天性のバランス感覚があって始めて使える唯一無二の技っピ」

「でも強くは無いっパ。強く無いならスターを名乗る資格なんて無いっパ」

 そうパプリカはやけくそ気味に言い放ち、自分の顔を両手で覆う。

 と、酷く落ち込むパプリカを見たピーマンはおもむろに立ち上がり懐から何かを取り出す。

140 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:41:10 ID:ppRH1UvxMD
>>139
「これ、何か解るっピ?」

 パプリカはゆっくりと顔を上げ、ピーマンの取り出した物を見る。

 それは黄ばんだ紙。ザラザラの茶封筒に入った古い手紙。

「手紙、、、っパか?」

「その通り。でもただの手紙じゃないっピ。これはオイラが初めて貰ったファンレターっピ」

「ああ、ピーマンがいつも大切に持ち歩いてる奴ッパ、、、、」

「パプリカも初めて貰ったファンレターを持ち歩いてたピよね?」

「勿論」

 パプリカも懐から手紙を取り出す。

 濡れたり破れたりしないよう小さなケースの中に入れてある大切な手紙。

「これをもらった時、どんな気持ちになったピか?」

「本当に嬉しかった。それで、今でもファンレターや声援を貰うと嬉しくなるッパ」

 内容を空で言える程何度も読んだソレを一文字一文字なぞる様に読み返す。

 一行読むたび、パプリカの心は少しづつ軽くなる。

「オイラ達は、勝利の為に戦うんじゃない。ファンレターを書いてくれる、応援してくれる、見に来てくれる人達を楽しませる為に戦っているっピ、、、、だから、修行に行くなんてやめるっピ。修行に行ったら試合で観客を楽しませる事が出来無くなるっピ」

「、、、、、解った。でも情けない負け方をするのはもう嫌っパ。今度新技を開発してみるっパ」

「それは良いアイデアっピね」


 この後パプリカは紆余曲折の果てに、カマイタチを起こし相手を切り裂く新技『カミソリ蹴り』を生み出す事になるが、それはまた別のお話。

141 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:58:30 ID:ppRH1UvxMD
大学の勉強が徐々に忙しくなり、前回程では有りませんが投稿が開いてしまいました、、、、
でも戦闘シーンは結構キャラごとにらしさを出せたので満足です。今度は溜めを身に意識してみようと思います。

細々とした設定集
『スパークリングチャット』
元ネタ スパチャ
双葉ちゃんとピノ様が経営する闘技場。ピノ様の宝具のおかげで、有望な選手が怪我で引退する事がない為選手のレベルが高い。

元々野球場だった廃墟を改築した建物だったりする。

『ピーマンとパプリカ』
資料が殆ど存在せず、キャラ付けにかなり苦労した存在。
結果、『スパークリングチャット』のスターと言うキャラに。

『観客を楽しませる自分』に誇りを持っており、試合において勝敗よりも観客が楽しませる事を常に意識している。

ピーマンの技はひたすらに敵を殴りつける拳のみ、パプリカの技は空に飛びあがって敵を蹴りつける物、レパートリーが結構多い。

142 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/18 12:43:48 ID:cxtvfD.nhf
おっつおっつ、ピーマンパプリカかっけぇじゃねぇか、個人的にピノ様のうりゃああが半角カタカナで脳内再生される

143 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/18 23:43:40 ID:YmAsaQcPLk
>>142
半角カタカナで書こうか迷いましたが、あの場面だと茶化す様になってしまうかな、と思い辞めた経緯が有ったりします

ピーマンパプリカを始めとした一部のキャラは(ストーリー上の都合で)登場回数がどうしても少ないのですが、そう言うキャラが出る時は出来る限り焦点を当てるので気に入っていただけたら幸いです!

144 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:46:23 ID:SVf1Tdv7Wj
>>140
『準々決勝第三回戦!選手の入場だぜ!!』

 熱気に満ち満ちた闘技場、司会の声に従い四人の選手は会場へと歩を進める。

『ばあちゃる&馬越の馬コンビ!!それに対するはエイレーン一家の家長と若頭、エイレーン&ミライアカリだぁ!!!』

「岩本カンパニーのケンタウロス馬越、強いぜあいつは」「歓楽街の元締めエイレーン一家。弱い訳がねえ!」「行け馬マスク!」

 馬越とばあちゃる、ミライアカリとエイレーンの四人はそれぞれの獲物を携え相対する。
 馬越は飾り気の無い武骨なハルバードを、ばあちゃるはシロから渡された大振りのナイフを構えている。
 対するエイレーン一家、エイレーンは古びたサーベルを一振り持ち、ミライアカリの携える黒い革製の鞭は艶めかしく光っている。

『では!試合開始だぜ!!』

 司会の天開司が試合開始の合図を出す。始まると同時にミライアカリは後ろへと下がり、逆にエイレーンはアカリを庇うように前へと出る。

『早速出たぞ最強陣形!!エイレーンが戦いミライアカリが補助に徹する!!準々決勝第三回、今に至っても未だにこの陣形を崩せた者はいない!!』

「これは厄介そうっすね」

「馬越も全くもって同意ですよ、、、、おや?」

 アカリは鞭を『エイレーン』に向けて振るう。

「ちょっ、え?何やってるんすか?」

「もっと、もっとお願いしマース!」

「もう、、、、しょうがないなぁ」

145 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:47:34 ID:SVf1Tdv7Wj
>>144
 バシン、バシンと強烈な音を奏で、鞭がエイレーンの全身を叩き打つ。

 金色の髪を快活になびかせるミライアカリが革の鞭を振るう様はひたすらに倒錯的だ。
 恍惚の表情で鞭を受けるエイレーンは完全に変態的だ。

「なぜ、公衆の面前でこの様な事を?」

「オイラは何でSMプレイを見させられてるんですかね、、、、」

 ばあちゃるにとって、エイレーン一家というのは短い付き合いながらも印象深い存在だった。

 思慮深いエイレーンに快活なミライアカリ。その二人が、今自分の前でSMプレイを敢行している。意味が解らなかった。

「、、、、ふぅ。お待たせして申し訳ないデース」

「、、、、、、ああ、大丈夫っすよ」

 鞭の音が止む。
 エイレーンは服についた埃をはたくと、&#21854;然とする二人に向けて事もなげに話しかける。
 余りの事に脳が追い付かないのだろう、ばあちゃるは何処かズレた返事を返している。

「そうですか、それは良かったデース」

「ええ、オイラ女の子待つなら何時間でも、、、、え!?」

 ばあちゃるの視界から突如エイレーンが消える。

146 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:48:31 ID:SVf1Tdv7Wj
>>145
「アガッ!?!?」

「叩っ切られてくだサーイ」

『エイレーンが消える!その正体は残像すら残さない高速移動!!数多の対戦相手を翻弄した神速だぜ!!!』

「迅いな、、、」「あのスピードタネがありそうだが、さて」「凄ぇ!」

 次の瞬間ばあちゃるの真正面にエイレーンが現れる。現れたと思った頃にはもうエイレーンのサーベルが振り下ろされている。

 ばあちゃるは何の反応も出来ず後ろに吹き飛ばされる。

「やってくれますね貴方!!」

 突如現れたエイレーン。全くの想定外。その想定外に対し馬越は即座に反応する。
 茶色い瞳をスウと細め、ハルバードの鋭利な先端を真っ直ぐに突き下ろす。

『ケンタウルスの高い身長から繰り出される突きぃ!!厚さ9.5mmの鉄板すら貫通する馬越選手の得意技だぜ!!』

「ハァッ!!」

 マグナムの如き一撃をエイレーンは受け流し、返す刀で反撃する。やる事は単純、難易度は激高。それをエイレーンはいとも簡単にやってのける。
 とっさの一撃を受け流され、体勢を崩した馬越の腹にサーベルの一撃が入る。

「く、、、これで勝てる程甘くは無いですか」

「勿論デース。アカリさんお願いします」

「OK!」

「ウビッ!?」

 いつの間にか起き上がり、背後からエイレーンを襲おうとしていたばあちゃるをアカリの鞭が襲う。
 ばあちゃるの振り上げたナイフを鞭が器用に弾き飛ばす。

147 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:49:52 ID:SVf1Tdv7Wj
>>146
「ちょっ、マジっすか」

「ナイスですアカリさん!」

「えへへー、どういたしまして!」

『ミライアカリの華麗な鞭さばきが炸裂!!まるで鞭が生きているのかの様な精度!』

「鞭ってあんな風に動くのか!」「私も鞭使ってみようかな」「金髪なのにいぶし銀な活躍だねぇ!」

 弾き飛ばされたナイフはクルクルと回りながら山なりに飛んでいき、試合場の端に落っこちる。

 ばあちゃるはそのナイフをチラリと名残惜しげに一瞥した後、直ぐに視線をエイレーンへと戻し懐に忍ばせておいた予備の武器を取り出「させまセーンよ」

 取り出そうとした瞬間エイレーンがばあちゃるに例の高速移動で近寄り、首を引っ掴んで持ち上げる。

「ぐっ、、、ちょっと力強すぎじゃないですかねハイハイ」

「それはアカリさんのスキルデスね。『鞭で打った相手を強化する能力』特別に教えてあげマース」

「成程、、、最初のアレは、、、、そう言う事っすね、、、、所で、、、、そろそろ息が、、、苦し」

 ばあちゃるの首が締まり息ができない。徐々に視界が暗く、意識が遠くなっていく。

「ばあちゃるさん!!」

 馬越が助けに入る。馬の下半身から生み出される加速力、たゆまぬ鍛錬に支えられた技術、ハルバードの重量。それら全てを十二分に発揮する一撃。十分な助走をつけてからの振り下ろし。

 何もかもを両断出来る一撃がエイレーンの頭上に降りかかる。

「グルルルルァ!!!」

「ちょっとヤバいデスね!」

「ガハッ、ゴホッ、、、、、ハァハァ、、、フゥ。助かったっす馬越さん!!」

148 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:50:21 ID:SVf1Tdv7Wj
>>147

 どんな技量をもってしても受け流せないほどの斬撃、エイレーンはばあちゃるを手放しての回避を余儀なくされる。

『強烈な振り下ろしぃ!!ハルバードの刃が血を吸いてえと唸り立ってるぜ!!!』

「流石は岩本カンパニーの馬越、強いデースね」

「おや、馬越の事を知っているんですね。光栄ですよ」

「当たり前デース。この街に住んでいてあなたの事を知らなかったらモグリですよ、、、、、ただ、ばあちゃるさん。あなたの強さには納得が行きまセーン」

「オイラ?」

 ばあちゃるが聞き返すと、エイレーンは訝し気に目を細める。
 嫌な予感がする。ばあちゃるの首筋を生温い汗が流れ落ちる。

149 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 00:02:59 ID:SVf1Tdv7Wj
一応この戦いの最後まで書きあげたのですが、眠過ぎて推敲が出来る状態では無いので明日続きを上げます

ついでに紹介し忘れてた設定をば

蟲槍『無銘』
ピノ様の使ってた生きている槍。カルロ家に伝わる槍と言う裏設定が有る。普段は眠っているが持ち主の血を吸うと目を覚まし、能力を発揮する。由来すら失われる程古い槍。

『植物操作:C』
双葉ちゃんのスキル。切りつけた所から植物を生やして操る。

『馬越健太郎』
岩本芸能社所属のV。古参のVファンならかなりの確率で知っているV。
今作ではケンタウロス要素をかなり前面に押し出しているが、実際の馬越さんはそんなにケンタウロス要素なかったりする。(動画や配信では基本胸から上しか映らない為)

150 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 13:38:48 ID:j.r55idzkF
おっつおっつ、実際限られたスペースで戦うとして馬越の威圧感凄いだろうな

151 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:36:33 ID:M8WLtJj0g3
>>148
「ばあちゃるさん、あなた平和な場所で育った人ですよね?」

「まあ、、、、そうっすけど何で解るんですか?」

「それは所作や喋り方、動きの癖とかデースね。組織の長やってれば嫌でも解るようになりマース、、、、と、まあそれは良いんです。私が言いたいのは、何故平和な環境で育ちながらもそこまで戦えるのか?と言う事です」

 エイレーンが滔々と語り出す。
 エイレーンの放つ雰囲気に押され、闘技場全体が徐々に静かになっていく。

「私が最初にばあちゃるさんを切りつけた時、妙に硬かったんデースよ。あれは何ですか?」

「それは、、、シロちゃんやリコリコに初歩的な魔術を教えて貰ったんすよハイ」

「どんな?」

「えっと、、、、まあ『触れた物体を固くする』って言うごく初歩的な魔術でオイラの服を咄嗟に固くして防御したんですよハイハイ」

 ばあちゃるは必死にいつもの通りの口調を保ち、エイレーンの質問に答える。
 エイレーンは氷の様に冷ややかな声でばあちゃるを問い詰める。

「成程。ではあなたは覚えたばかりの魔術を咄嗟に使えたんデースね、あの一瞬で。しかもそのすぐ後には私の後ろを取ろうとした。戦場で育った人間でもそこまでやれるのはごく一部デースよ。凄いですね」

「、、、、」

 重い圧迫感がばあちゃるを締め上げる。
 エイレーンの赤い瞳が『お前は異常だ』と語りかけている。

152 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:39:03 ID:M8WLtJj0g3
>>151
 薄々、可笑しいと気付いていた。それを考える程の暇がなかったから、ソレを誰にも言われる事が無かったが故に無視出来ていた。その矛盾を今突き付けられた。
 ばあちゃるはもう、一歩たりとも動けなかった。

「、、、、、、、」

「エイレーンさん、ここは戦いの場です。討論の場では有りません」

「何が言いたいんデースか?」

 馬越がばあちゃるとエイレーンの間に割って入る。 

「戯言はお辞め下さいと言っているんです!」

 関節の駆動に体の捻りを加えた渾身の薙ぎ払い。

 しかしその一撃は意識の外から飛んできた鞭によって防がれる。
 ハルバードを一番上まで振り上げた瞬間。武器の勢いが死ぬほんの一瞬、その一瞬をアカリは狙っていた。結果は成功、アカリは見事鞭で馬越の武器を巻き取る事に成功する。

「何!?」

 馬越の手から武器が奪い取られる。
 床に落ちたハルバードがガランと大きな音を立てる。
 馬越は自らの獲物が回収できないと一瞬で判断し、馬の下半身による蹴りを繰り出そうとするが時すでに遅し。

 馬越の首にサーベルが突きつけられる。

「一度見せた手に引っ掛かるのを見るに、冷静さを失っている様デースね」

「当然ですよ、肩を並べて戦う仲間を侮辱されて憤慨しない戦士がおりましょうか」

「、、、それは、すみませんね」

「それに!馬越は貴女にもキレてるんですよ」

 ギリギリと音を鳴らさんばかりに歯を&#22169;み締め、忌々し気な顔で語気を荒げる。

153 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:40:58 ID:M8WLtJj0g3
>>152

「『エイレーン一家』、、、、歓楽街を縄張りにする一家。水商売の人間に対する暴力やヤクの取引を取り締まり、それの対価として店から金を貰い成り立っている一家だと聞いていました。住民曰く支払う金は然程高くなく、理由が有れば支払いを減らしてくれる。仁義の一家だと聞いてました」

「、、、、、、」

「だから馬越、今日戦うのを凄い楽しみにしていたんですよ。そんな一家の長は一体どれ程素晴らしい人間なのか、ワクワクしてたんですよ」

 エイレーンに顔を近づけ、吐き捨てるように馬越は語る。
 首筋に突き付けられたサーベルの刃が浅く食い込む、しかし馬越はそんなのお構いなしとばかりにズイと威嚇するように近付いていく。

「なのに蓋を開けてみたらどうです?口先で相手を揺さぶる、姑息な手段を取る浅ましい姿!勝手な失望だとは理解しています、、、、ですが!」

「馬越さん。この街で綺麗事を通す為には沢山の暴力と&#22099;が要るんデースよ。歓楽街は今の『エイレーン一家』が守り切るには余りにも大きい。私達がこの大会で優勝すれば名声が高まり、組織を拡大する事が出来るかも知れない。ですが、もし無様な結果を出せば完全に逆効果。ここで負ける可能性を作る訳にはいかないんデースよ」

 苦悩に満ちた顔でエイレーンは答える。額に刻まれた皺はより深くなり、瞳に込められた意思が悔し気に揺らぐ。

「己の品格を貶めようとも、目的は果たしマース」

154 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:42:55 ID:M8WLtJj0g3
>>153
 エイレーンは腕に力を籠め、馬越の首にサーベルの刃を押し込「ウビィ!!」
 エイレーンの顔面に何かが飛んでくる。白く、小さい、文字の書かれた長方形の紙。名刺だ。

「うわっ!だ、誰デースか!?」

「ばあちゃる君っすよ。エイレーンさん!魔術で硬化した名刺を喰らえハイハイ!!」

 エイレーンが咄嗟に避けた名刺が試合場の壁に突き刺さる。

「硬化させた名刺、硬度は鋼鉄、鋭さも十分!どうですかねハイ」

「な、何で、、、、?あそこまで言われて、なぜそんなに早く立ち直れるんデースか!?」

「、、、、、こんなに小さな紙を正確に投げるなんて以前は出来なかった。エイレーンさんの言う通り、オイラは何かが可笑しいんでしょうねハイ」

 ばあちゃるは背筋をシャンと伸ばし、エイレーンの顔を真っ向から見る。

「エイレーンさんに指摘されて、オイラは戦うのが怖くなった。以前のばあちゃる君と今のオイラの隔たりを認めてしまうようで、怖かったっす」

「でしょうね、誰でも怖いですよ、、、何でばあちゃるさんは克服出来たのデースか?」

「いやほら、エイレーンさん『己の品格を貶めようとも、目的は果たす』と言っていたじゃないっすか。あれを聞いた瞬間この言葉を閃いて、それで吹っ切れたんでふよハイ」

「『己が己でなかろうと、目的は果たす』、、、、だからオイラは戦う事を恐れないっす」

 堂々とした声でエイレーンに向かってそう言い放つ。

「アハハハハ!!エイレーンちゃん、心理戦はばあちゃる君の勝ちみたいだね!」

「アカリサーン、そこまで笑わなくてもいいじゃないデースか」

 アカリは頬を膨らませるエイレーンを指差し、端正な顔に満面の笑みを浮かべる。

155 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:44:05 ID:M8WLtJj0g3
>>154
「アハハ、ごめんごめん。でもエイレーンちゃん凄く良い顔してるよ」

「おや、そうデースか、、、」

 アカリの指摘した通り、エイレーンの顔には笑みが浮かんでいた。まるで口うるさい大人を悪戯に引っ掛かけた子供の様な笑顔だった。

「ハイハイ馬越さん、もう大丈夫です!第二フォーメーションお願いっす!」

「了解です、行きましょう!」

 ばあちゃるが馬越の背に勢い良く飛び乗る。

『これは何だ!?ばあちゃる選手が馬越選手に騎乗したぞ!!!!一体何をするつもりだ!?』

「司会が喋り出したぞ」「ちょっと嬉しそうだな」「さっきまで解説とか出来る雰囲気じゃなかったしなぁ、、、」

 司会が解説を再開し、観客の方にも徐々に熱気が戻り始める。

「馬越さん!考えがあるっす!!」

「どんな考えですか?」

「アカリさんのスキル『鞭で打った相手を強化する能力』によってエイレーンさんは強化されてるっす。だからアカリさんを倒せば、エイレーンさんは弱体化すると思うんですよハイハイ」

「成程!」

 馬越はばあちゃるを乗せ、アカリ目掛けて一直線に走る。

「させまセーン!」

「押し通らせて貰いますよハイハイ!!」

『空飛ぶ名刺の雨あられ!まともに受ければ血の雨が降るぜ!!』

「くっ、、、」

 馬越を止めようとするエイレーンに向け、懐から取り出した名刺を雑に何枚も投げつける。
 エイレーンに対し有効打にこそならないものの、何とか足を止めさせる事には成功する。

156 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:45:59 ID:M8WLtJj0g3
>>155
『遂に辿り着いたぞ馬コンビ!アカリ選手を倒し、勝利する事は果たして出来るのか!?』

 二人は遂にアカリを間合いの中に捉える。

 何かする隙は与えない。アカリが鞭を振るう前に、エイレーンが追いつく前に馬越はアカリに蹴りを「まだまだぁ!」
 何を思ったのか鞭を投げ捨て馬越に殴りかかるアカリ。

 速くは有るが軽い一撃。何の痛痒も与えない筈の攻撃は、どういう訳か馬越の体を制止させた。

「これで、、、、、、あ」

「ちょっ、馬越さん!?、、、うわっ!」

「アカリの能力がいつから一つだけだと、、、、あばっ!?」

 急停止した馬越の体、その上に乗っていたばあちゃるは慣性の法則によってアカリの方へ一直線に投げ飛ばされた。

『な、何と!?前に投げ出されたばあちゃる選手の膝がアカリ選手の顎にクリーンヒットォ!そしてKOだぜ!!』

 偶然にもばあちゃるの膝がアカリの顎を打ち抜く。
 勝利を確信した瞬間に予想外の一撃。それ程丈夫な訳では無いアカリはあっけなくやられてしまう。

「きゅぅ、、、、」

「え?マジっすか、やった!これで勝ちの芽が「ないデース」

「ウビバ!?」

 ばあちゃるの背後から叩きつけられる一閃。
 すんでの所で服を硬化させ致命傷は避けるが、エイレーンの圧倒的な腕力に吹き飛ばされる事は避けれない。

157 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:46:51 ID:M8WLtJj0g3
>>156
「あれ、、、?思ったより弱体化してないっすね」

「ええ、この強化はアカリさんが倒れても暫く続くんですよ」

 成すすべなく床に転がるばあちゃる。
 頼みの馬越も動く気配が無い。 

「つ、つまり?」

「まだバリバリ強化状態デース」

「そんなぁ、、、、じゃ、じゃあアカリさんのアレは何ですか?馬越さんを無力化した奴っす」

「秘密デース」

「えー、戦った仲じゃ、、、ふべっ」

 ばあちゃるのマスクとスーツの間、唯一肌が露出している場所にサーベルが差し込まれる。
 あっという間にダメージが一定量を超え、ばあちゃるは気絶することになる。

『勝者エイレーン一家!!!未だ底の知れぬこの二人!そして熱く、愉快な試合を魅せてくれた馬越とばあちゃる!この四名に喝采を送ってくれ!!!!』

「よくやった!!」「馬にしてはやるじゃん」「さっすがエイレーン一家!」「岩本カンパニーも負けてねぇ!!」

「楽しかったデース、、、、本当にいつぶりでしょうかね。こんなに楽しい戦いは」

 あらん限りの歓声、その中に一人立つエイレーンは楽しげにそう呟き、会場を後にする。

158 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:48:44 ID:M8WLtJj0g3
>>150
でしょうねぇ、、、、ケンタウロスって普通に幻獣なのでfate的に考えると相当ヤバいんですよね

159 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 23:00:21 ID:M8WLtJj0g3
ばあちゃる伏線回&(ちょびっとだけ)成長回でした

硬化の魔術は衛宮さんが初期から上位互換の強化魔術使えてたし、才能無い素人のばあちゃるでもこれ位は使えても問題ない、、、筈

それとちょっとしたお知らせです。pixivの方にも連載してみる事にしました、ユーザーネームはasdです。ここでの連載を辞める予定はありません。
理由は幾つかありまして

初期のガバを修正したい
どれだけの人が読んでくれたのか可視化したい
pixivで推しの布教をしたい
pixivは二次創作の規約が異常に緩い

の四つです。

それと重要な知らせです。シロちゃんのキャンパスアートとマグカップが明日届くようです!いやったぁ!!

160 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 23:57:07 ID:XtbDmfoGkM
おっつおっつ、プロデューサー足るもの名刺手裏剣位使えないとね
後キャンパスアート&マグカップおめでとう

161 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/25 18:51:01 ID:4MGu/x/GmD
>>160
まだ届いていませんが今から楽しみです!
馬は名刺手裏剣だけでなく、様々な技を使いこなして味方をサポートするカズマさん的ポジションになる予定です!!

162 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 20:29:02 ID:79Zlua7r9W
>>157
「フゥ、、、、」

 ばあちゃるは短くため息をついて空を見上げる。



 ここは医務室、では無く闘技場の外。
 馬越と共に闘技場の外壁にもたれ掛かり、太陽と人口の光に照らされたグーグルシティを眺めていた。

「ちょっと疲れたっす」

「そう、ですね」

 馬越は紙煙草を箱から取り出し咥え、ライターで火をつける。
 箱には鮮やかな青で描かれた孔雀と『PEACOCK』の文字列が描かれていた。

「『ピーコック』ですか、初めて見る銘柄ですねハイ」

「かなり珍しい銘柄ですからね、、、、いちいち取り寄せてもらってるんですよコレ。ばあちゃるさんも吸いますか?」

「うっす、有難く吸わせて頂くっす」

 いつも被っている馬のマスクを軽く持ち上げ、咥えた煙草に火をつけてもらう。
 久しぶりに吸う煙がばあちゃるに少々の懐かしさと独特の風味を運んで来る。

「これ結構旨いっすね」

「ですよね。マイナーなのが不思議なくらいですよ、、、、ま、味だけじゃダメって事でしょうね。正しいだけの理想と同じですよ」

 馬越は自嘲気味に笑いながらそんな事を呟く。
 吐き出した煙がビル風に吹かれ散り散りになって消える。

163 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 20:30:27 ID:79Zlua7r9W
>>162
「どうしたんすか馬越さん?」

「いや、ね。エイレーンさんの言っていた『綺麗事を通す為には沢山のウソと暴力が必要』と言うセリフ、馬越に刺さるなぁと思いましてね」

「悩みが有る感じっすか」

「ええ、少し愚痴を吐いても良いですか?」

「勿論。オイラで良ければ付き合いますよ」

 馬越は根本まで吸った煙草を灰皿に捨て、ポツリポツリと話し始める。

「馬越の所属している『岩本カンパニー』の目的は、『グーグルシティの外に点在する難民コミュニティの支援』です」

「素晴らしい目的じゃ無いですか」

「目的は、我ながら素晴らしいんですけどね。現実は中々上手く行かないですよ。何にしても金が足りない、やってる事は殆ど慈善事業なので収入なんか殆ど無いですから。本当なら汚い事やってでも金をひねり出すべきなんでしょうけどね」

「目指せる時点で凄いと思いますよハイ」

 ばあちゃるの慰めに馬越はゆるゆると首を横に振り否定する。

「ばあちゃるさん。結果は出てないけど頑張りました、で褒めて貰えるのは子供までですよ」

「そりゃ、そうっすけど」

 ばあちゃるは歯切れ悪く答えを返す。
 咥えたままの煙草が所在なげに揺れる。

「、、、すみません。今のは八つ当たりでしたね」

「そう言う時もあるっすよ」

「そう言ってもらえると有難いです。では、馬越はそろそろ」

「あ、ちょっと待って下さいっす」

 帰ろうとする馬越をばあちゃるが呼び止める。
 少しだけ面食らった顔の馬越に質問を投げかける。

164 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 20:32:52 ID:79Zlua7r9W
>>163

「一つ質問なんすけど、なんで馬越さんは岩本カンパニーに入ろうと思ったんですか?」

「なんで、、、ですか。そうですね、『理不尽な事を見ると腹が立つ』からでしょうね。許せない訳じゃないんですよ、ただ腹が立つんです」

「だから岩本カンパニーに入ったんですねハイ」

「そうです、街に入れずカカラの脅威に晒される難民が居る、と言う理不尽には昔からムカムカしてたんですよ。だから岩本カンパニーの仕事は馬越の天職でしたね」

 微かに熱を帯びた声で馬越は語る。
 理知的な茶色い瞳の奥に情熱の光が灯る。


「ま、理由はそんな所ですよ」

 馬越は二本目の煙草を取り出し火を付ける。

「おや、二本目行っちゃうんすか」

「普段は一本で終わりですけどね、今日は特別です」

 両の目を閉じ吸い込んだ煙をゆっくりと味わう。
 赤く静かに燃える火が、煙草の胴をジリジリと燃やし灰に変える。

「こんなに愚痴吐いといてなんですけど、馬越はやり方を変えるつもりは無いですね」

「そうなんすか?」

「理不尽が大嫌いな馬越が『正しい事をする為に汚い事をしなくちゃいけない』なんて理不尽、我慢出来る訳が無いですからね。例えエイレーンさんの言っていた事が事実でも、それが確定するまで馬越は過程にこだわり続けますよ。今日みたいに妥協したくなる日はありますけど、そこで妥協したら一生後悔すると思うので」

165 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 20:33:18 ID:79Zlua7r9W
>>164

「何というか、大変な生き方っすね」

「全くです。でもほら、馬鹿と煙は高い所へ、、、なんて良く言うじゃ無いですか。だから馬越も馬鹿の一員として高い理想を持ち続けてやりますよ」

「アハハ、じゃあ馬鹿仲間としてお願いがあるんすけど、二本目貰えますかハイ」

「勿論良いですよ」

 グーグルシティの片隅で二人分の煙が立ちのぼる。
 煙は高く、空高くのぼっていた。

166 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 21:01:00 ID:79Zlua7r9W
物理実験のレポートやらなんやらが重なり、結構忙しかったのでかなり短めです、、、、、


馬越さんとエイレーンさんは立場や考え方をかなり対照的にしてみました

目的に向かって邁進しつつも現実との兼ね合いに苦しんでいる、と言う点では同じでも、それぞれの向き合い方は違う感じですね

(この作品内においては)未だ大きな挫折を経験していない馬に対して、『今は良いけど、壁にぶち当たった時どうするの?』と言う問いかけを遠回しに投げかける役割も担って頂きました


細々とした設定
岩本カンパニー
元ネタ 岩本芸能社
グーグルシティの外に点在するコミュニティへの支援を目的として生まれた民間企業
民間企業と言いつつもやってる事はほぼボランティアであり、収入の殆どはパトロン頼り。
メタ的な話をすると味方サイドに金があると話があっという間に終わる為、味方サイドの組織は基本貧乏になる。

グーグルシティから遠くに行く事が多い岩本カンパニーと、『楔』の探索をする為遠方の情報も欲しいブイデアとで利害が一致しているため、緩やかな同盟関係を組んでいる。

167 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/31 10:07:15 ID:LoahYLeD14
おっつおっつ、ご無理はなさらぬよう……

168 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/31 18:29:06 ID:gbhVIh5Ybo
>>167
無理のない速度で書いてるので大丈夫です!
受験終わってからずっとダラダラしてたせいで大分鈍っているだけなので、感覚が戻れば問題なくなると思います

169 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:42:08 ID:kt/WmDD8N0
>>165
『準々決勝最終試合! 『グーグルシティ防壁構築戦線』『カカラ変異種異常発生』『マフィア連合によるクーデター』『同時多発サイボーグ狂化テロ』、、、様々な街の危機を救った英雄夫婦! 『蟷螂』のセバスさん&『蜜蜂』のメアリーさんVS謎の少女シロ&ニーコタウンの大ボス神楽すず!! 互いに劣らぬビックマッチだぜ!』

「ガキの頃に何度も本で読んだ英雄の戦いが見れるとは!」「ニーコタウンのボス、お手並み拝見だな」「シロ、、、、あんなに強い娘どこから来たのかしら」

 沸き立つ闘技場、戦いの始まりを待ちきれない観客達の前に四人の戦士が躍り出る。

「二つ名で呼ばれると恥ずかしいんですがね、、、」

「変な所でシャイなのは老いても変りませんわねアナタ」

「すずちゃん、作戦は覚えてるよね」

「勿論です、、、、えっと、真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす、でしたよね」

 真っ白な髪に髭を蓄えたセバス、フォーマルな執事服の袖は捲り上げられ、露わになった二本の腕からはそれぞれ大きな刃が飛び出しており正にカマキリと言った風体だ。
 古風なメイド服に身を包んだ老婆エミリー、メイドらしい上品な立ち姿の中で左腕に取り付けたパイルバンカーが凄まじい異彩を放っている。
 白髪の美少女シロが携えるのはハンドアックス。愛用している銃は大会のルール上使用出来ない為お休みだ。
 眼鏡がよく似合う緑髪の少女神楽すず、その手に持つは暴力の化身釘バット。愛用の火炎放射器はシロと同じくお休みとなっている。

170 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:43:28 ID:kt/WmDD8N0
>>169
『試合、、、、開始!』

「行くよすずちゃん! まずはセバスから倒そう!」

「ハイ! 絶対にた、、、うわぁ!?」

「急がば回れ、で御座いますよ」

 シロとすずは二人掛かりでセバスに近付き、襲い掛かろうとした瞬間すずの背後に現れる影、エミリー。

『相手の意識の隙間をすり抜ける移動方! 熟練の』

「いつ背後に!?」

「御二方はセバスに意識を向けている様子でしたので。それ」

「つっ、、、!」

 エミリーの左腕がゴウと唸り鉄杭を吐き出す。避けづらい胴体を狙って放たれたソレを、すずは身を屈める事で辛うじて避ける。
 真っ黒な鉄杭の先端がすずの背中に触れてそこで止まり、パイルバンカー本体に帰っていく。額に玉のような汗が幾つも浮かぶ。

『蜜蜂の針がすずを襲う! 誰もが恐れた必殺の一刺し!!』

「、、、、クソ! お返しだぁ!」

 振り返りざまのフルスイング。豪風を巻き起こし迫るスズ渾身の一撃はーーー間に割り込んだ二本の刃に防がれる。

「私を忘れては困ります」

「忘れてなんか居ないよぉ! おほほい!」

 シロがアホ毛をぴょこんと揺らし、すずの攻撃を防ぐため足を止めたセバスに手斧を叩き込む。

 素早さに重点を置いた一撃。武器を振り上げる、と言う動作を切り捨て、代わりに前方への踏み込みと体重移動でもって手斧を加速させ最小限の威力を確保した、叩き付け。

171 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:45:19 ID:kt/WmDD8N0
>>170
「くらえぇ!! おじいちゃん仕込みの斧術!」

「甘い! エミリー!」

「はいはい」

『おおッと!? エミリーさんのパイルバンカーがシロ選手を掠めた! セバスさん越しの正確な一撃だ!!』

「ちょっ、マジィ!?」

 シロは自身の直感に従って首を捻る。さっきまで首が存在していた場所を鉄杭が掠めていく。
 もし当たっていればシロはそこで終わっていただろう。

「シロさん!」

「シロは大丈夫。やっちゃって」

「ハイ! 行くぞ私は!!」

『すず選手の全身が緑色の光を帯びたぜ! 何か来る!』

「おっと、これは不味い」

 全身から緑色に光る魔力を放出するスズが、右足を力いっぱいにドンと踏み込む。次の刹那すずの右足を起点に魔力の爆発が巻き起こる。
 何が起こるのか知っていたシロはいち早く距離を取り、続いてエミリーを素早く抱き上げたセバスが後ろへと飛ぶ。

「ぐっ、、、少し重くなったんじゃないか、エミリー」

「アナタの足腰が老いたんですよ」

 結果として、相手から距離を取ることには成功したが、相対する二人にダメージを与える事は出来ていない。これでは振り出しに戻っただけだ。
 むしろすずちゃんの大技を使わされた事を考えるとマイナス。あれは何度でも使えるモノでは無い。蒼い瞳を悔し気に細め、シロはそんな事を考える。

172 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:46:48 ID:kt/WmDD8N0
>>171
 巧い。シロは二人をそう評価する。

 エイレーン一家の超人的な戦闘技術、ピーマンやパプリカの常識外れなパワー、馬越のような特別な種族の生まれ、鳴神やケリンみたいな強い能力、二人にそれらの強みは無い。いずれの要素においてもシロ達とそれほど差はない。
 強いて言うならばあちゃるが近い。自分に出来る事を把握し、適切なタイミングで適切な行動をする。ばあちゃると違うのはその完成度だ。
 数多の修羅場を潜り抜けた、数十年分の濃密な経験が二人の強さを強固に支えている。

 では、それらを踏まえた上でシロとすずちゃんが上回っているものは何か? それはきっとーーー

「すずちゃん、作戦変更するよ」

「解りました。どんな作戦ですか?」

「賢く行って、ぶっ飛ばす」

「了解です、、、けどどうしてですか?」

 ーーー若さだ。
 首を傾げるスズに、シロは指を二本立てて説明する。

「まず一つ、エミリーちゃんのパイルバンカーは当たればお終い、だから隙は少ない程良い。
二つ目、あの二人はとっても強いけど、それでも老いてるからね。タフネスやスタミナは少ない筈。なにか当てさえすれば勝利は近づく」

 そう言われたすずが相対する二人をよくよく観察してみれば、セバスの白く老いた髭の間からは既に乱れた息が漏れ、メアリーの立ち姿には僅かに疲れが見える。

173 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:48:28 ID:kt/WmDD8N0
>>172
「確かに。じゃあ、、、、下の方を、ちょっと破壊!」

 すずの獲物がゴルフクラブのような軌道を描き疾走する。背後から前方へ、闘技場の床を砕きながらバットを振り抜く。砕かれた床は無数の破片となってエミリーとセバスに襲い掛かる。

「いいねすずちゃん! シロも続くよ!!」

『すず選手の遠距離攻撃! 当たれば痛手は免れぬ破片の弾幕だぜ!』

「、、、ほう、面白い」

 破片の嵐、そのすぐ後ろから二人に迫るシロ。
 破片を避ければシロが手斧を叩き込み、シロに意識を割けば破片を食らう。敵に不利な二択を迫り判断能力を奪う、古典的かつ効果的な戦法はーー

「面白いが、まだ甘いですな」

「うっそでしょ?」

『破片を切り落とし、返す刀でシロ選手に切りかかったぁ! 一歩間違えれば敗北必至の所業を、顔色一つこなす! それがこの男!!』

「判断の早さだけは衰えませんわよねアナタ」

「衰えないよう毎朝シャドーボクシングしてるからでしょうな。知ってるだろエミリー」

「あれ五月蠅いから辞めて欲しいんですけどねぇ」

 破られた。
 急所に飛んできた破片だけを切り落とし、そのままの勢いで反撃したセバス。セバスの背後に移動し難を逃れたエミリーと軽口を叩き合いながらも、その目はシロを瞬き一つせずに観察している。

 しかし、まだ終わってはーーー

「おや? もう一人の御方が見当たりませんね。今見える範囲にはおらず、背後に気配も無い。上ですか」

174 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:49:58 ID:kt/WmDD8N0
>>173
 気付かれた。
 エミリーのパイルバンカーが上方向に炸裂し、空から襲い掛からんとしていたすずを捉える。

「づっ?!」

「すずちゃん!」

「今のは良い手でした。下手をすれば食らってましたわ」

「その鋭い観察眼、相変わらずだなエミリー」

「毎朝、新聞のクロスワードで鍛えてますからねぇ」

「新聞を読む前にクロスワードのページだけ引き抜くのだけは辞めて欲しいんだがな、、、、」

 シロが気を引き付けている間に、すずちゃんがエミリーに奇襲を仕掛け無力化する作戦。即興とは言えここまで見事に破られるとは。

 ギラリと銀色に光る二本の刃、セバスが持つその刃に切り裂かれた腕が今更痛みを訴えてくる。

「くっ、、、」

 強力なパイルバンカーの衝撃を逆に利用し、遠くに弾き飛ばされる事ですずは再度距離を取る事には成功している。しかしその代償が余りにも大きい。
 鉄杭に削られた足がジクジクと痛む。

 ピノの宝具『己が身こそ領地なれば(ザ・ドミニオン)』の効果に守られているこの闘技場で本物の怪我を負うことは無い、、、、無いが、その痛みは本物だ。
 痛みは動きから精彩を、人から戦意を奪う。

「ピノ様のご友人方、貴女達は本当に強い。同じ頃の私よりずっと強い」

「でも今の私達には僅かに届かないですわ。年とは取るものではなく重ねるモノ。昨日の私達より、今日の私達の方が強い」

「研鑽を怠らない人間の最盛期とは寿命を迎える、正にその日で御座います」

175 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:56:15 ID:kt/WmDD8N0
 かなり久しぶりの投稿です。再レポートと新しいレポートが重なってデスマーチ状態でした、、、、

 真っ赤に添削されたレポートを返された時は一周回ってちょっと笑っちゃいました

 今回のセバス&エミリーVSシロちゃん&ボス戦ですが、ちょっとセバスとエミリー強くし過ぎた気がします、、、、
 老人になっても前へと歩み続けられたらなぁ、と言う個人的な老いへの願望を込めたキャラなので、気がつくと贔屓しそうになるんですよね。

176 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/18 14:55:08 ID:houbH7A5EN
おっつおっつ、お疲れさまです。私は仕事で大ポカやらかしたので精神的に死んでます。進み続けることは難しい事なんじゃ……

177 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/18 18:56:00 ID:jb1FsSEiBw
>>176
ですよねホント、、、、

178 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:23:39 ID:8p42rBfdXh
>>174
 エミリーとセバスはそう言い放つ。その声からは己の強さへの信頼と誇りがにじみ出ている。

「『Mode shift Overload』御二方への敬意を表し、最高火力で葬らせて頂きたく」

「『Mode shift Bee sound』体への負担が甚大なので、まず使用しない奥の手でございますわ」

 セバスの全身から青白い火花が飛び散る、周囲が揺らめく程の膨大な熱が放出され、赤熱した刃がセバスを赤く照らす。

 エミリーの持つパイルバンカー、その中に収められた鉄杭。ソレがブゥゥンと蜂の羽音の様な異音をかき鳴らし猛然と回る。

『これはぁ!? もしかしなくても、あの有名な必殺技! マジの強者にしか使わないリーサルウェポンだぜ!!』

「爆発的に身体能力を上げるOverloadに!」「全てを削り取るBee sound!」「実際の迫力はやっぱり違うぜぇ!」

 二人の出した奥の手に観客が沸き立つ。

「私は、、、、シロ様を殺らせて頂きます!」

「すず様、御覚悟でございます!」

 真っ赤な残光を走らせ迫るセバス、すずの方にはエミリーが行く。

179 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:25:09 ID:8p42rBfdXh
>>178
 蒼い瞳をキョロキョロ回して勝機を探し、疲れた脳ミソをグルグル回して勝ち筋を考える。すずちゃんは今にもやられそうだ、宝具も間に合わない、周囲に利用出来るモノも無い、手斧を投げつけたとして何の意味もない。不可能が延々とループしてゆく。
 シロに迫る二人の姿がゆっくりに見える。走馬灯と言う奴だろうか、きっともう、本能が敗北を受け入れて「頑張れシロちゃん!」

 聞き慣れた声がシロの鼓膜を揺らす。

「、、、、!?」

 声のする方を見れば、そこにはばあちゃるが居た。いつものふざけた雰囲気など投げ捨てて、一生懸命に応援するばあちゃるが居た。
 シロの中から『諦め』と言う毒が消える、体に力が戻る。

 勝てるかどうかなどもう気にしない、全力を出し切ってやる。手斧を捨て、拳に魔力を集め、切り札を「後は任せましたシロさん!」

 エミリーのパイルバンカーがすずを貫く直前、すずの投げた釘バットがシロとセバスの間に割り込む。すずの残存魔力を全て流し込まれたソレは、床に接触した瞬間にはじけ飛ぶ。

「ぐっ、、、」

「よっ、しゃぁ!」

『すず選手が! 己を犠牲に隙を作り出したぜ! さあシロ選手、これを生かせるか!?』

 バットの破片をもろに受けたセバスの体が大きくよろめく。

 完璧な不意打ち。己の死を一切恐れず利用すると言う、戦場であれば有り得ない行動。この闘技場だからこそ迷い無く実行出来た不意打ち。
 数多の戦場をかいくぐって来た二人だからこそ引っ掛かった一手。

180 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:26:55 ID:8p42rBfdXh
>>179
「任されたよすずちゃん! 真名開放! 『唸れや砕け私の拳 ぱいーん砲』!!」

 そして、シロはこの不意打ちが行われる数舜前から宝具を放とうとしていた。故に、宝具の発動が辛うじて間に合う。

 宝具『ぱいーん砲』、魔力を注ぎこんだ量に応じて威力が跳ね上がる殴打。

「いっけええええ!!」

「ぐぅ、、、が、、、、」

 黄色い光を纏った拳がセバスを打ち抜く。

 如何に強かろうと体は老人、当たれば脆い。セバスの&#30246;せ細った体はくの字に折れ曲がり、吹き飛ばされ、闘技場の壁に叩きつけられ、動かなくなる。

『すず選手の作ったチャンスを生かし切った!! これで一対一! だが、まだ一対一! エミリーさんが残っているぜ!!』

「そうですわよ」

 すずの胴体から鉄杭を引き抜いたエミリーがシロの方へとやってくる。
 シロを倒す為、異音と共にやってくる。

「これで、終わりで御座います!」

「終わらないよ、もういっちょ開放! 『唸れや砕け私の拳 ぱいーん砲』」

 魔力が殆ど空の体で、宝具をもう一度発動する。

 宝具を十全に発動する事は叶わない。不安定な光を纏った拳と、回転するパイルバンカーが真っ向から衝突する。

「おりゃあああああ!!」

「勝ちを取らせて頂きます!」

 双方の大技がぶつかり合う。互いに爆発力に長けた一撃。

 シロの蒼い瞳は闘志に燃え、真っ白いアホ毛は戦意たっぷりに揺らめく。しかしーー

「くっ、、、」

 ーーーシロの宝具が徐々に押され始める。

181 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:30:27 ID:8p42rBfdXh
>>180
 かなりの無理をして放った為宝具が不完全であること、そしてエミリーのパイルバンカーが回転し、シロを削り取ろうとしているせいだ。

 もし、シロの魔力が十全ならば、エミリーが奥の手を出していなければ、シロが押し勝っていただろう。しかし現実は違う、シロが押されている。

『おおっと!? シロ選手が押され気味だぁ!』

「、、、、負ける訳にはいかないんだよぉ!」

「かなりの僅差ですが、これで終わ、、、、ゴフッ」

 シロの拳が完全に押し切られるその直前、エミリーの口が血を吐き出す。

「大丈夫!?」

「お気になさらず、ちょっとツケを払っただけで御座いますわ」

 口元を抑え、エミリーは後ろによろめく。

 パイルバンカーは強力ではあるものの、打つたびに強烈な反動が全身を襲う諸刃の剣でもある。内部の機構で反動を軽減し負担を軽減させているが、それでも無視できるモノでは無い。

 そして、『Mode shift Bee sound』パイルバンカーに内蔵された鉄杭を高速回転させる事で威力を上げる奥の手。しかし、鉄杭が回転する際に内部が過剰な熱を帯び、反動を軽減する為の機構が焼け付いき、反動をモロに受けてしまうのだ。

 すずに一撃、そして今一撃、計二撃。たったそれだけでエミリーの体は深く傷ついていた。

「この程度で血ィ吐くとは、鍛え方が甘かったですわ」

「ねえ、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫ですわ。ほら早く、お構え下さいな」

 心配した顔でこちらを見つめるシロに、エミリーは皺くちゃの顔に不敵な笑みを浮かべ啖呵を切る。

 衰えた足腰を、脆くなった骨を、細くなった筋線維を、そして未だ衰え無き意思を総動員し三撃目を狙いすます。

「、、、、、解った、真名、開放『唸れや砕け私の拳 ぱいーん砲』」

182 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:33:14 ID:8p42rBfdXh
>>181
 魔力が空っぽになったシロの体、奥底に残った魔力をこそげ落とし、己の存在を切り詰めて魔力を捻出する。

「これで、最後で御座います!」

「その通り!!」

 余力全てを使い何とか放った鉄杭と、消えかけの光を纏った拳の衝突。結果はーーーー

「ああ、、、、私の負けですか」

「シロの勝ちだよ」

 ーーー僅差でシロの拳が勝った。
 もう一度同じ事をすれば結果は解らない。それくらいの僅差だった。

「後数年若ければ、エミリーちゃんの勝ちだったよ」

「それは、、、、あり得ませんわ。私達は今もなお成長して、、、、おりますもの。数年前の私より今の私の方が強いですわ、、、、」

「そっか、そうだったね」

 エミリーは崩れる様に倒れこむ。

『、、、、!! 勝者! シロ選手&すず選手ペア!! 大方の予想を覆し勝利したペアに、盛大な喝采を頼むぜ!』

「マジかよ、、、」「新たな伝説の『誕生』だ」「おめでとうっす! シロちゃん、すずすず!!」

 歓喜と驚愕の混じった喝采を背に、シロはすずを抱えて闘技場を出る。

183 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/02 00:03:20 ID:8p42rBfdXh
仲間の応援がきっかけで勝利すると言う、ベタ過ぎて近年では逆に珍しい展開でした。王道は書いてて楽しいです。

細々とした設定、及び追加設定
宝具『ぱいーん砲』
ランク:C
魔力を注ぎこんだ量に応じて威力の上がる殴打。実のところ、これ単体ではそこまで強く無い。
ただし、とあるスキルと合わせて使うとかなりえげつない事になる。

セバス
 ピノ様の執事であり、全身の殆どを改造したサイボーグでもある。
 改造したのが50年も前である為、体内の機械部品の殆どが型落ち品。古くなりすぎて、スペアパーツが値上がりしているのが最近の悩み。
『Mode shift Orverload』
 全身のパーツにエネルギーを過剰供給し、性能を爆発的に上昇させる切り札。
 下手をしなくてもパーツがぶっ壊れるため、かなりのハイリスク技。

エミリー
 ピノ様のメイドにして、セバスの妻。
 生まれつき身体能力が人より高く、若い頃はパイルバンカーを実質ノーリスクでぶん回していた。
 若い頃は基本力任せかつ無駄打ちする癖が有ったが、老いてからはその癖が無くなり、力に頼らない技術も身につけた為、本当に年取ってからの方が強かったりする。

『Mode shift Bee sound』
 発動した時に発せられる異音が蜂の羽音に似ている為、こう名付けられた。
 アホ見たいな威力と引き換えに反動がヤバくなる。

184 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/02 05:58:28 ID:udAoC4OiOJ
おっつおっつ、熱い戦いでした。最近暑いし体調お気をつけて。

185 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/02 16:16:42 ID:EPjb7JXLCy
>>184
確かに暑いですよね、、、、気を付けていこうと思います。

186 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:49:23 ID:gQ6fWAkuhk
>>183
「、、、、私は、私達は負けたのか」

「そうですよアナタ。私達は負けたのですわ」

 真っ白いベッドから二人が体を起こす。ここは医務室、敗者が運び込まれる部屋。

「流石に老いたな、昔ほどにはキレが無い」

 骨ばった両手を確かめる様に何度も握り締める。握る度に手のシミが薄黒く伸び広がってゆく。

「何を言うんですかアナタ。体の殆どが機械で老化なんて殆ど無いでしょうに」

「それはそうだが、年のせいにでもしないと悔しいじゃないか。それにだ、失敗や負けを年のせいに出来るのは老人の特権だぞ、特権を使わなくてどうする」

「もう、、、、そういう所は変わらないですわね」

 拗ねるように寝っ転がるセバスを見て呆れたように微笑むエミリー。
 英雄『蟷螂』、グーグルシティで育った人間なら一度は憧れる男。そんなセバスだが時折子供っぽくなるのが玉に瑕であり、エミリーにとって愛おしい部分でもあった。

「きっと死ぬまで変わらないとも。この街と同じだよ、形は変わっても本質は変わらない」

「ええ、そうでしょうね」

 窓の外にグーグルシティが見える。行き来する無数の人や車、絶え間なくザワザワと奏でられる喧騒、暗い路地裏。
 生きる為に精一杯だった昔とは違う、富と活気と格差で出来た街。しかしそれでも、人々の眼は昔と変わらない。
 生きる為、のし上がる為、友の為、各々の夢を宿した眼。物乞いですらチャンスを探し眼をギラつかせている。

「、、、、この街を見ていると、守るために命を懸けて正解だったと思わされますの」

「全くですな、この街には命を懸ける価値がある」

 両腕に仕込んだ刃を取り外す、代わりに取り付けたのはやや細身の刃。
 波打つ刀文を持つ、古びたソレは丁寧に手入れされている。

187 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:49:53 ID:gQ6fWAkuhk
>>186
「懐かしいですわね。私たちの親友にして今は亡き名工『竈馬』。刀に恋したアイツが友に遺した名刀『忘時』ですか」

「そうだ、そうだとも。相応しい敵に使えと言われたこの刀、カカラの首領相手ならば不足は無いでしょう」

 ぼんやり光る刀身をじっと覗き込む。
 そこに映るセバスは歪んでいて、まるで誰かが隣にいるように見える。

「おやおや、気が早いのでは無くて? ピノ様と双葉様、シロ様とすず様、どちらかが優勝しなければなりませんのよ」

「エミリー、あの方たちが優勝出来ないと思うのですか?」

「、、、、確かにそうですね。私も、準備をしなければなりませんわ」

 二人の老兵は静かに牙を研ぐ。

188 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:50:36 ID:gQ6fWAkuhk
>>187

『さあさあ! お次は準決勝!! 、、、、と行きたいところだが、暫く時間を置かせてもらうぜ。消耗した選手の休息が要るからな』
「しょうがないな」「俺も少し休むか」「今の内にトイレ済ませねえと」

 熱気に満ちていた闘技場、『スパークリングチャット』の空気が暫し弛緩する。
 飲み物を買いに行く者、トイレを済ませに行く者、思い思いに動く観客達。では選手はどうか。

「いやぁ、、、、完敗っすよ」

「アハハ、でもお馬さん片方倒してたじゃないですか。ワタクシは見てましたよ」

「まぐれをカウントするのは、、、どうなんですかねハイ」

「カウントしてもいいんじゃないかな、て双葉はおもうよー」

 項垂れるばあちゃるを軽く慰めるピノと双葉。
 ネガティブな発言とは裏腹にばあちゃるの声は晴れ晴れとしている。

189 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:50:44 ID:gQ6fWAkuhk
>>188
「ねえ馬、馬越さんを止めた技、あれなんなの?」

「ああ、アカリさんに触れた途端動かなくなった奴ですね、、、、馬越さん『霧がかかったみたいに何も思い出せない』て言ってましたねハイ」

「なるほど、『思い出せない』て事はアカリちゃんの能力は精神に干渉する系ぽいなぁ」

「能力使う時アカリさん自信有り気な表情を浮かべてましたし、使い慣れてる感じですよね。多分」

「そうだねすずちゃん。エイレーンちゃんも未知数だし、底が見えないねぇ」

「楽しみですねシロさん」

 翡翠色をしたスズの眼が待ちきれないとばかりに輝く。

 シロ達五人はVIPルームに案内され、そこで休息をしていた。
 上品なシャンデリアにグレーのソファー、暖色系の明かりに照らされた部屋には穏やかな音楽が流れている。
 ホログラムで投影された熱帯魚達が色彩豊かな体をくゆらせて部屋の中を泳ぎ、壁の一面を占拠するモニターは闘技場を様々な角度から映し出している。

 紅茶を飲み談笑する五人の空気は穏やかだ。それはまるで、嵐の前の静けさ。

190 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:51:53 ID:gQ6fWAkuhk
>>189

 ファイトクラブ『スパークリングチャット』の選手用休憩室、VIPルーム程では無いが豪華な部屋。
 その部屋に用意されたテーブルを挟む様にエイレーンとアカリは座っていた。

「ねえ、エイレーン」

「どうかしましたか? アカリサーン」

「あの、さ。また不本意な手段で勝ちに行くつもりなのかな、て聞きたくてさ」

「、、、、」

 鮮やかな金髪をせわしなくいじり、アカリは問い掛ける。
 エイレーンは何も答えず黙している。

「エイレーンがそうする理由は知ってるし、アカリはその理由を軽いモノだと思わない。でも、、、そのせいでエイレーンは苦しんでるよ」

「、、、、」

 アカリの懸命な訴えにエイレーンは何の反応も返さない。
 瞼を閉じ、アカリの顔を見ない様にしている。
 懸命に聞こえない振りをしている。

「エイレーンはお人好しなのに、合理的であろうと無理してる」

「、、、、」

「ばあちゃるが折れなかった時、エイレーン笑ってたじゃん」

 尚も無反応を貫こうとするエイレーンに対し、アカリは顔を近づける。
 少しバサついた赤色の前髪を持ち上げ、エイレーンの瞼をそっと撫でるように開く。

「アカリはエイレーンに従うよ、部下だから。でもアカリはエイレーンが心配だよ、家族だから」

 縋るような表情を浮かべるアカリの顔が、エイレーンの瞳に映りこむ。

「、、、、今更私のやり方は変えられません。これ以外に皆を守る方法を知りまセーンから」

「エイレーン、、、、」

「でも、そうですね。ばあちゃるさんにしたみたいな、揺さぶりは止めにしマース。効果薄そうですから」

191 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:52:01 ID:gQ6fWAkuhk
>>190

 アカリを安心させる為に下手くそな笑顔を浮かべる。
 それを見たアカリは大きなため息をつく。

「ホント不器用だねエイレーンは、、、解った。今はそれで妥協しとく。ヨメミと萌実にもそう伝えとくね」

 呆れた表情に僅かな安堵をにじませ立ち上がり、アカリは部屋を出る。

「、、、不器用、デースか」

 エイレーンの独り言が壁にぶつかって消える。
 暫しの間、カチカチと時間を刻む時計の音が部屋を支配していた。

192 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 20:05:00 ID:gQ6fWAkuhk
お久しぶりです(n回目)
テストが近く、中々時間をとって書けませんでした。
もうじき夏休みに入るので投稿ペースが上がる、予定です。

それはそうと、月姫リメイクがもうじき発売です!!
.liveの娘達は勿論好きですけど、それと同じくらい型月も好きなんです。

細々とした(裏)設定

『忘時(わすれじ)』

名工『竈馬』が親友に遺した作品。

『忘れじ』いつまでもあなたへの愛は変わらない(あなたの事が好きでした)、と言う意味を込めたエミリーへの密かなラブレター。

『時』を『忘』れる位、お前と過ごした時間は楽しかったという、セバスへの密かな感謝状。

二つの意味が込められた、剣の形をした遺書。それが『忘時』の本質です。
無粋かなと思ったので、本編では敢えて触れませんでした。

193 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 21:02:28 ID:1QdC4NF7yM
おっつおっつ、休みを謳歌してくだせぇ、あと酷暑やばいのでお気を付けを

194 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 21:52:34 ID:gQ6fWAkuhk
>>193
なんか例年よりも暑く感じますよね、、、、
休みが謳歌出来るのはテスト終わってからですね、大学は夏の宿題無いので、そこは気が楽です

195 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:03:41 ID:1VEBPvBFol
>>191
『さあ! 今度こそ準決勝の始まりだぜ!』

『準決勝第一試合の選手を紹介するぜ! 大方の予想を覆し、見事伝説に勝利したダークホース、シロ&神楽すず!!』

『敵対するギャングのボスを下したこいつら! エイレーン一家は止まらない!! 萌実&ヨメミ!!』
「待ってたぜ!」「どっちが強いんだろうな」「早く始めてくれ!!」

 手斧を携えたシロと、釘バットを肩で担いだスズ。
 ギラリと獰猛に光るドスを構えた銀髪の二人、ヨメミと萌美。

 歓声鳴り響く闘技場に四人の選手が出揃う。

『試合開始!!』

「ヨメミちゃん! 出し惜しみは無しで行くよ!」

「解った、萌実ちゃん!」

 試合が始まるや否やヨメミと萌美の二人は後ろに下がり、互いの手を組んで見つめ合う。

 直感でヤバいと感じたシロは咄嗟に銃を取り出そうとするが

「あっ、銃はルールで使えないじゃん」

 ルールのせいでそれは叶わない。
 闘技場での経験が浅い故のミス、それはこの場において致命的であった。

「私が行きます。行くぞ私は!!」

「お願いすずちゃん!」

 翡翠色の瞳に焦りを浮かべ突撃するスズ。
 大声と共に背中から魔力を放出し、ジェット機じみた加速をみせるその走りは正に神速。
 しかし、それでも間に合わない。

『我ら二人で一つ』

『一人にして二つ』

『『真名開放 歪み映す双眸(ステアリーツインズ)』』

 ヨメミと萌美、二人の宝具が発動する。
 その直後、二人の元にスズが辿り着き、豪快にバットをーーー

「食らえ!!、、、、え?」

196 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:05:52 ID:1VEBPvBFol
>>195

 ーーー振り下ろせなかった。
 二人が四人に、四人が八人に。爆発的に増殖を始める二人。
 闘技場の一角が銀髪の美少女で満たされる。

 その余りにもな光景にスズはフリーズしてしまう。

『な、なんだこれは!? 萌実選手とヨメミ選手が増えた!!』
「絵面がすげえ、、、」「一人くらい持ち帰れないかな」「ストレートに強いですね、この能力」

「無数に分身を生み出す宝具、前の試合じゃ宝具を使ってもケリンに爆破されて終わりだから使えなかったけど」

「今回は思う存分使えるよ」

 分身は全て機械めいた無表情を浮かべており、武器も持っていない。
 戦闘力そのものはオリジナルに遠く及ばないだろう、とシロは蒼い目を細め推察する。
 だからといって脅威に成りえないかと言えば、それは違う。

 動きを止めたスズに無数のヨメミが纏わりつく。

「うわっ、ちょっ。嬉しいけど嬉しくないです!」

 スズが釘バットを振り回す度にその軌道上にいた分身は&#25620;き消え、消える度に分身が補充される。
 多勢に無勢、銀髪美少女の波にスズはズブズブと飲まれてゆく。

「すずちゃ、、、、、ヤバッ!?」

 スズを助けに行こうとしたシロに萌実の分身達が襲い掛かる。

「ちょ、ほちょちょ!?」

 シロを掴もうとする腕を僅かな動作で振り払い、飛び掛かってくる分身を誘導して他の分身にぶつける。
 囲まれないよう動き続け、脅威になりうる分身だけを倒し、最小限の消費で萌実の分身に対処してゆく。

「動きこそ雑だけどキリがない。不味いねぇ、、、、くっ!」

197 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:06:15 ID:1VEBPvBFol
>>196

 とは言え、多数の敵に対処する為の最小限は決して小さいものではない。
 萌実達の指がシロの真っ白なアホ毛を掠める。

 現状、シロは萌実達の攻撃を凌げてはいる。しかし、防戦一方のこのままでは敗北必至。


(強引に近付いた所で勝機薄そうなんだよね。あの二人の戦闘技術、結構えぐいし)

(でも奇妙だねぇ、すずちゃんは既に殆ど無力化されてるのに、ヨメミちゃんの分身は全てすずちゃんに掛かりっきり)

(分身ってシロの想像以上に融通利かないのかも?)

(二人の本体が攻撃する気配も無いし、、、、分身出してる間は無防備になっている可能性がありそう)

(検証の為、本体にちょっかい出してみるのもアリかもねぇ)

(なんにせよ、先ずはすずちゃんを助けないと)

 そんな危機的状況の中、シロは不思議な程冷静に考察を重ねる。
 老練な強さを誇った『蜜蜂』と『蟷螂』から勝利をもぎ取った経験、それがシロに確かな自信と冷静さを与えていた。

198 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:07:23 ID:1VEBPvBFol
>>197
「おほほい!おほほい! シロは負けないよ!!」

「え!?」

 やにわにシロは手斧を振り回してスズの元へ突貫を始める。
 分身の攻撃がシロを掠めて浅い傷を幾つも刻んで行く、がいずれも致命打には程遠い。

『シロ選手が動き出した! すず選手の救出に行くみたいだぜ!!』

「その通りぃ!!」

 無数の分身を&#25620;い潜り、スズの元へと辿り着く。

 スズを押さえつけていたヨメミの分身全てがシロに目標を変えて起き上がり、後ろからは萌実達が追いかけてきている。
 逃げ場の無い挟み撃ち、危機的状況ーーー

「ありがとうシロさん!!」

「いいって事よぉ! おほほい!」

 ーーー無論、すずが居なければの話だが。

 押さえつけられていた間バットに込め続けていた魔力を、そして全身のパワーをフルに使ったスイングと共に床に叩きつけ開放する。ガッゴォンという爆音と共に緑色の衝撃波が吹き荒れる。
 分身達が風に吹かれた&#34847;燭の様に揺らぎ、&#25620;き消える。

「ヤバッ!? どうしよう萌実ちゃん!」

「分身の制御はかなり大雑把みたいだねぇ!」

「弱点バレちゃったよヨメミちゃん、、、」

 ヨメミと萌美、二人の背中を汗が流れ落ちてゆく。
 シロの考察は当たっている。分身の中身は獣に近い。同じオリジナルを持つ分身同士で固まり、目に付いた獲物に見境なく襲い掛かる。

199 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:07:36 ID:1VEBPvBFol
>>198
 二人の宝具『歪み映す双眸(ステアリーツインズ)』は互いの瞳を重ねることで合わせ鏡とし、無数に映ったお互いの鏡像を分身として具現化する物。
 瞳の一つ一つに己の色があり、瞳が映し返す景色もまた己の色に染まっている。故に瞳を鏡として見た場合、その質は下の下と言えよう。
 鏡とは目の前に有る光景を有るがままに映すモノ。己の色に染めて映し返す鏡など論外。その様な鏡から産まれた分身の質も低いのは当然。

『これはヨメミ&萌実選手不利か!? しかし、まだ大勢は決していない! マジで目が離せないぜ!!』
「やっちまえ!!」「巻き返せ!!」「頑張れシロお姉ちゃん!」

200 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:12:46 ID:1VEBPvBFol
夏休みに入ったので大分執筆スピードが上がりました。

そんな事より、マジの大事件がありました! https://www.youtube.com/watch?v=R8Y2e8BdVrk&t=4089s配信の終盤、私の書き込んだコメントが読まれたんです!! イヤッフゥ!!

201 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:19:20 ID:1VEBPvBFol
細々とした設定集
『歪み映す双眸(ステアリーツインズ)』
ヨメミちゃん、萌実ちゃんの宝具。

相手の目に映った自分、相手の目に映った自分の目に映った相手、相手の目に映った自分の目に映った相手の目に映った自分、、、、、
といった要領で大量の分身を出す宝具。

強力では有るものの融通が利かず、また持ち主の戦闘スタイルと咬み合わせが悪いのが難点。

202 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:46:43 ID:WkA.8LuDTv
おっつおっつ、持ち帰ったらバレるやろ。コメント読まれると嬉しいよね〜、自分も何回かコメントとかお便りとか読まれたりしたことあるけどそのたびに小躍りしてる。

203 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 15:20:32 ID:1VEBPvBFol
>>202
沢山いるのでバレない可能性もあるっちゃ有りますね。まずバレて酷い目に合うでしょうけどw

やっぱ読まれると嬉しいですよね…………

204 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:43:37 ID:bKznsqmMqg
>>199

「いくよ!」

「ぶっ倒す!!」

「やってみなよ!」

 じりじりと下がりながら分身を生み出すヨメミと萌美、互いの隙間を埋めるように手斧とバットを振り回し突き進むシロとスズ。 

 魔力が続く限り分身は無限に生み出され、一体辺りのコストもさほど高く無い。時間さえあれば万単位の数を揃える事も可能だろう。時間さえあれば、だが。
 当然の事だが、一度に生み出される分身の量には限りが有る。

「これは、、、ちょっと辛いね!」

 一歩、二歩、シロとスズが確実に距離を詰めてゆく。
 三歩、四本、ヨメミと萌美、二人の背中が壁に当たる。これ以上は下がれない。
 五歩、六歩、もう少しで武器の届く間合いに入る。

『シロ選手とすず選手がついに辿り着いた! 絶体絶命ヨメミ&萌美ペア!!』

「喰らいなぁ!!」

「いっちゃえ!!」

 シロとスズが同時に武器を振り下ろす。
 金属特有の光沢が描く銀色の軌跡は目の前の二人へとーーー

「「え?」」

「引っ掛かったね、、、、」

 ーーー届くことは無かった。
 分身の壁を抜けた先にいたのはヨメミ一人。
 同時に振り下ろされた釘バットと手斧は、直撃した状態のままヨメミに押さえつけられ、動かすことが出来ない。

205 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:45:34 ID:bKznsqmMqg
>>204
『萌実選手が消えたぜ!? 一体何が起こったというのか!』

 ヨメミが攻撃を受けたことで『歪み映す双眸』が解除され分身が消える。消えずに残ったのはオリジナルだけ。
 シロとスズの攻撃を受け止めたヨメミと、そして分身に紛れ回り込んでいた萌実の二人。

 
 中身はともかく、萌実と分身の見た目に差異は無い。分身に紛れるのは容易な事だ。

「まさか!」

「ヤバッ」

 すぐさま逃げようとするシロとすず。しかしもう遅い。
 萌美による一閃が来る。勝機が来るまでジッと耐え続けた鬱憤を晴らすかのような鋭さで。

『萌実選手が背後にいる! 絶体絶命!!』
「いつの間に、、、」「マジかよ」「負けないでくれ!」

「獲った!」

 勝利を確信した萌実が獰猛に笑う。
 『宝具』と言う、分かり易い切り札を見せる事で本命から意識を逸らす。
 ありふれた、それでいて有効な作戦がシロとスズに牙をむく。

 見事に出し抜かれた二人は成すすべなく切り裂かれる、筈だった。

「えぇ、、、、?」

 音すら追い抜く一撃がシロに掴まれた。

 ヨメミに抑え込まれた武器から手を離し、高速で飛来するドスを掴み取る。物理的には可能だが、それが間に合うタイミングはとうに過ぎていた筈。
 呆然とする頭でそんな事を考える萌実。

206 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:46:32 ID:bKznsqmMqg
>>205
「シロのスキル『輝きの海』。効果は『シロへの応援を力に変える』」

「一杯食わされたね! こんな力を隠してたなんて」

「いや違うよ。このスキル、応援の量が一定に達しないと発動しないんだよ。
街の英雄を倒したダークホースVS有名な『エイレーン一家』の幹部と言う、誰もが興奮する好カード。そして決着の着く目の離せない瞬間。
ここまでの要因が揃って、やっと使える位には発動条件が厳しいんだよねぇ」

「そういう事、ですか。『使わなかった』のでは無く、『使えなかった』と」

「正解」

 シロの周囲には、水色の光が幾つも浮かんでいる。
 整然と並び、ユラユラ揺れる細長い光はさながらライブ会場に煌めくサイリウム。

 シロは掴んでいたドスを萌実から取り上げ、そのまま突きつける。
 磨き込んだ銀食器の様な色をした瞳がヨメミを見つめて、助けて欲しいとメッセージを送る。しかし、ヨメミがそれに答えることは無い。

「、、、、」

 二人の一撃をまともに受けてしまった時、その時からヨメミは気絶していた。
 その上、万が一ヨメミが復活しても対応出来る様にスズが備えている。

「くっ!」

 ヨメミがやられた事を認識した萌実は思わず顔をしかめる。
 萌実は頭が回る。回るがゆえに今の状況が詰みである事を理解出来てしまう。

(これ以上の抵抗は無駄だね。大会に出た目的が示威行為である以上、無駄にあがいて無様を晒す事は出来ない。
後の事はエイレーンとアカリちゃんに任せるべきだね)

「、、、、、降参するよ」

 眩しい程に白く淡麗な顔をホンの一瞬歪めた後、萌実は大人しく両手を挙げて降参を宣言する。

「良いの?」

「良いんですか?」

「良いんだよこれで。萌実の役目はもう果たしたからね」

207 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:46:48 ID:bKznsqmMqg
>>206

 スズとシロの問いに対し、萌実は返答する。
 萌実の言っている事に&#22099;は無い。『エルフC4』と『サンフラワーストリート』のリーダーであるケリンと鳴神を下した時点で萌実達の役目は十二分に果たされている。

 無論、最後まで戦い抜きたいという欲求はあった。
 しかし、萌実は『エイレーン一家』の一員として出場している。個人の欲求を優先する訳にはいかなかった。

『萌実選手、まさかの降参だ!! 勝者、シロ&すず選手!』
「マジか」「まあ、あそこから勝ち目はなかったしなぁ」「健闘した!」

 萌実はヨメミをそっと抱え会場を後にする。

208 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:47:22 ID:bKznsqmMqg
>>207
「、、、、ん、うん? ここは?」

「おはよー。ここは医務室だよ」

 ヨメミはやや乱暴に瞼をこすって重い体を持ち上げ、寝起きでゴロゴロする目をグルグルと動かす。
 周囲には真っ白なベットが幾つか並んでいて、その中の一つにヨメミは座っていた。
 はす向かいのベットには見慣れた顔、、、、、萌実の顔が見える。

「ねえ萌実ちゃん、結果はどうだった?」

「、、、、負けちゃった」

「そっかー、、、、、お疲れ様。後の事はエイレーンとアカリちゃんにお任せかな」

 医務室を照らす薄く埃を被った蛍光灯の下で、ヨメミと萌美は心穏やかに話し合っていた。

 二人は、アカリとエイレーンが大いに戦果を挙げ、大いに実力を示すと確信している。
 負けた事への悔しさはあるが、焦りはない。

 ヨメミは何度か大きな欠伸をし、ベットに倒れ込む。

「、、、ねぇ、エイレーンとアカリちゃんの事どう思う?」

「エイレーンは何でもかんでもしょい込む癖とセクハラ発言さえ無ければ完璧かな」

「エイレーンはある種の理想主義者だからね。本当は綺麗な手段を選びたい、でも大切な者を失う『可能性』が怖い。
だから自分の良心が許すギリギリの手段を用いて『可能性』を潰す。
理由は解るんだけどさ、損な生き方だよね」

「アカリちゃんはアカリちゃんで甘い所あるよね。実力の伴った楽観主義って感じ」

「決める時はビシッと決めるんだけどねぇ」

「まあ、完璧じゃないからこそ支え甲斐があると言うか、何て言うか」

「確かに。話変わるけど、、、、」

「、、、、」

「、、、、、、」

「、、、、、、、」

 寝っ転がりながら萌実と話をする内に、ヨメミはいつの間にか夢の世界へといざなわれていた。

209 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:49:21 ID:bKznsqmMqg
>>208
『、、、、ここはどこデースか?』

『、、、どこだろうね』

 ヨメミは夢を見ていた。グーグルシティに初めて来た、あの時の夢だ。
 ヨメミ、萌実、エイレーン、アカリ、べノ、エトラ、、、、、後にエイレーン一家を創設する事になる面々が、グーグルシティの路地裏で呆然と空を見上げていた。

 ヨメミ達の記憶はある日を境に断絶している。頭に残っている最古の記憶は『殆ど何の記憶もない状態でグーグルシティに居た』と言うもの。
 唯一覚えていたのは自分の名前だけ。

 あの時縋るように辺りを見渡す私達の前を、無関心に通り過ぎる人々がとても恐ろしく感じた。



 夢が揺らぎ、場面が飛ぶ。

『あ、有難うございます!』

『いいの、いいの。気にせず休んで』

 今は『エイレーン一家』が管理している風俗街『ポルノハーバー』の外れにある寂れた宿屋。
 風俗街の宿であるにも関わらずそう言うサービスはせず、売りは料理という少し変わった所だった。

 そこの主人であるエミヤさんは気のいいお爺さんで、身寄りの無い私達を雇ってくれた。記憶を失ってから初めて感じた人の温もりがとても嬉しかったのを覚えている。



 また場面が飛ぶ。

『おいジジイ! アガリが足りねえぞ!』

『、、、、、来月には耳揃えて払いますので』

『来月まで待てるかよ! 二週間後までに払え!』

『はい、、、、』

 エミヤさんの胸倉をガラの悪い男が掴んでいる。

 当時、ポルノハーバーは『I Want to be Radical』、通称『IWARA』と呼ばれるマフィアに支配されていた。
 延々と身内で権力争いをするそいつらは、住民から金を限界まで搾り取っていた。

210 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:51:46 ID:bKznsqmMqg
>>209
 場面が飛ぶ。

『畜生、、、』

 まだ日も出ていない早朝の厨房、その隅でエミヤさんが静かに啼いている。

 赤みがかった総白髪、エミヤさんらしいその髪が、あの時は酷く寂しい物に見えた。



 場面が飛ぶ。

『もう我慢出来ません。私達が立ち上がりましょう』

『立ち上がるってどうするのさ、エイレーン』

『そんなの決まってますよアカリサーン、カチコミですよ。一気呵成に攻め込むんデース』

 エイレーンが気炎を吐いている。

 今では考えられない事だが、当時のエイレーンは大胆不敵な性格だった。
 それはある意味当然の事だった、私達には不思議な能力があったのだから。

 『スキル』や『宝具』と呼んでいるソレらはどれも強力だった、私達に慢心を許す程度には。

 飛ぶ。

『ありがとう!』『あいつらが居なくなる!!』『この恩は一生忘れない』

 『IWARA』の元事務所、私達は感謝の喝采を浴びていた。
 権力闘争に明け暮れていたあいつらは脆かった。



 飛ぶ。

 赤く燃えている。
 『IWARA』の残党にエミヤさんが襲われて、宿は燃やされた。

 赤い血が流れている。
 エミヤさんの顔が蒼白になっていく、もうどうしようもない。

 微かに声が聞こえる。
 呼吸すらままならない喉を震わせ、エミヤさんが何かを言っている。

『■■■と■』



 あの日からエイレーンは変わった。

211 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:59:34 ID:bKznsqmMqg
『エミヤ』フェイトに精通しているなら、この名前でグーグルシティが元はどこだったのか大体見当がつくと思います。

グーグルシティは50年前に生まれた街です。
当然の事ですが、50年以上前までは別の何かであった訳ですね。

それと、作品にもよりますが、冬木と言う都市には基本的に『大聖杯』なるものが設置されております。
その大聖杯はいったいどこに行ったんでしょうね。


それはそうと、馬の配信ガチャ運良すぎてクッソ笑う。

212 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 22:11:10 ID:bKznsqmMqg
細々とした設定集
『IWARA』
元ネタ iwara(エロmmd特化サイト、サーバーが糞雑魚な事で有名)
回想特有の戦闘シーンすらないかませ集団。
作者が適当に10分くらいで生んだ可哀想な人達。

エイレーン

キャラコンセプト
トライガンのウルフウッド+動画のエイレーン

元はアカリちゃんにスポットを当てる予定だったのがいつの間にかエイレーンになった。
アカリちゃんの場合、辛いことあっても自力で解決出来ちゃいそうなのが一番の理由。

213 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/10 12:45:58 ID:jwScoId0DB
おっつおっつ、気になる過去だぁね、毎度楽しませて貰っております

214 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/10 16:27:35 ID:9RtFoWX0pG
>>213
過去話はカカラの正体にも関わるので楽しみにしていてください!

ちょっとだけヒントを出すと、『カカラは胸に露出しているコアさえ壊せば倒せる』というのがキモです。

215 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:27:10 ID:Tapcdl79X4
>>210
『さあさあ! お次は準決勝第二試合だぜ!!
エイレーン一家の二大トップにして最高戦力、エイレーン&アカリ選手! 対するは我らがオーナー、見た目は可憐だが強さは苛烈! 双葉&ピノ選手!』
「これは予想つかねえな!」「待ってました!」「来た来たぁ!!」

 名前を呼ばれた四人が闘技場へと足を踏み入れる。

 ピノは上品な装飾の施された槍を担ぎ、双葉はファンシーにデコレートされたナイフを構えていた。
 油断なく相手を見つめるエイレーンの手に握られているのは、古びたサーベル。アカリは黒く光る革鞭を腕に巻きつけて遊んでいる。

『試合、、、、開始!』

「ピノちゃん! じぜんの作戦通りにいくよ! まちがってもアカリちゃんには触れないように!」

「了解です、双葉お姉ちゃん!」

『おっと!? 双葉、ピノ選手がいきなり動き出した! 陣形を組ませないつもりか!』

 ピノと双葉の二人は、試合が始まると同時に動き出す。
 ピノはアカリに、双葉はエイレーンに襲い掛かる。

 司会の言う通り、二人の狙いは『陣形を組ませない事』。
 エイレーンが前衛、アカリが後衛となって動く陣形は原始的ながらも強力であり、事実ばあちゃると馬越はその陣形に終始苦しめられていた。しかし、初手で二人を分断してしまえば何の効果も発揮しない。
 その上アカリを抑えてしまえば、アカリの『鞭で打った相手を強化するスキル』を実質無力化することが出来る。

216 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:27:48 ID:Tapcdl79X4
>>215
「そりゃ対策されマースよね」

「大会用に編み出した付け焼き刃の戦法だからね。綻びが出来るのも多少は、、、、ねっ!」

「甘いですわ!」

 縦横無尽に振るわれるアカリの鞭をピノは危なげなく避け、お返しとばかりに槍を突き返す。
 熟練者の使う鞭は音速すら容易に超え、リーチも長大。しかしその威力は高いと言えず、近距離での取り回しも悪い。
 詰まる所、懐に入られると弱い武器なのだ。

「激しく突いてくるねえ!」

「まだまだ序の口ですよ! ほら!」

 突き、薙ぎ払い、叩き下し、回避、ピノの行うあらゆる動作の終わりが次の動作に繋がる。
 豪奢な槍から繰り出される攻撃は全てが重く鋭い。
 ピノの動きは流麗で無駄が無く、息を付かせる暇すら与えずアカリを責め立てる。

 優雅に、そして苛烈に相手を圧倒する。これこそがピノの戦闘スタイル。
 素の拳で鋼の刃を押し返す様な『規格外』でも無い限り、これを崩す事は困難と言えよう。

『止まらないぞピノ選手! 流れる水のような槍捌きだぜ!!』

「くっ! ちょっとキツイね!」

 ピノの放つ銀閃が掠め、アカリの金髪を何本か持ってゆく。

217 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:28:06 ID:Tapcdl79X4
>>216
「早く、倒れて、下さい!」

「いやいや、戦いはまだこれからだよ!」

 掠めた槍を潜り抜けるように距離を詰めてアカリは手を伸ばし、それに対してピノは大きく後ろに下がる。

「、、、っ!」

 現在の状況はピノが有利。しかし攻めきれない。何故なら、アカリのスキルが未知だからだ。
 少し前の戦いで、アカリは馬越に触れることで動きを止めた。
 触れることで発動する、と言うこと以外に何も解らない以上、慎重に対処せざるを得ない。

「ヘイヘイヘーイ、ピッチャービビってるぅ?」

 そして、アカリは『未知』である事のメリットを十分に活かしている。
 アカリは無理に触りに行こうとせず、要所要所で未知の手札をちらつかせる事でピノの動きを制限してゆく。
 ピノの胸中に焦りが蓄積する。玉肌の上を嫌な汗が流れ落ちる。

218 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:28:32 ID:Tapcdl79X4
>>217
 視点は変わり双葉対エイレーン。
 双葉も又、焦りを覚えていた。
 肉体のスペックでは勝っているにも関わらず、どうにも攻めきれない。

「はやく、たおれて!」

「そりゃ無理ですよ双葉サーン。ペロペロさせてくれるなら良いですけどね」

 変態親父の様な口ぶりとは裏腹に、エイレーンの戦い方は至極冷静だ。
 ノラリクラリと避け続け、確実に当てられる場面でのみ攻めに転じる。

「、、、くらえ!」

「遅い!」

 正面からナイフで切りかかると見せかけてから、背面に仕込んでおいた二本目を投擲。双葉渾身の不意打ち。
 弾丸の如き速度で飛ぶ細身の刃はスルリと受け流され、エイレーンの頬を掠めるにとどまる。

『刃で刃を受け流した! 1mmズレれば致命的な荒技を平然とこなす!!』

「ふふん、どうデ、、、、っ!」

 見る人が見ればため息を漏らすほどに研ぎ澄まされた剣技はしかし、力によって押し込まれる。

「、、、強引じゃないデースか双葉さん」

 双葉が、ナイフを受け流した直後のスキを突いて体当たりをかまし、エイレーンを吹き飛ばした。

「ふふふ、、、、甘いよエイレーンちゃん」

(、、、、甘いとは言うものの、どうしたもんかなこれ)

219 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:29:31 ID:Tapcdl79X4
>>218
 双葉には二つの疑念が有った。

 一つ目はエイレーンの身体能力が異様に低いこと。
 持ち前の技量でしぶとく凌いでこそいるが、受けるダメージを完全に0に出来ている訳ではない。
 宝具を使っている以上、ヨメミと萌美がサーヴァントであるのは確実。その二人のボスであるエイレーンもほぼ間違いなくサーヴァントだろう。
 にも関わらず、アカリの強化が無いエイレーンの肉体スペックはサーヴァントとは思えない程に低い。

 そして二つ目はエイレーンの態度が不可解なこと。
 エイレーンの体には徐々にダメージが蓄積している。このままではジリ貧なのだから何かしらの手を打とうとするのが当たり前、もし打つ手が無いのならば多少の焦りを見せたりする筈。
 しかし、エイレーンが何か手を打つ素振りも、焦る様子すらも無い。

 何かが可笑しい、何かを見落としているのだ。

「いたっ、、、」

「お返しデスよ」

 突如として走った痛みに双葉は桃色の瞳を鋭く尖らせる。

 吹き飛ばされる瞬間、エイレーンはとっさにサーベルで切り付けていたのだ。

220 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:30:21 ID:Tapcdl79X4
>>219
「さて、そろそろ『十分』デースかね」

「なんて?」

 双葉が聞き返した瞬間、エイレーンの姿が消える。

「、、、、!」

 双葉の背後に現れる気配。
 振り返り様に防御を固めた瞬間、襲い掛かる衝撃。
 双葉は成すすべなく床に転がる。

「ぐぅっ、、、」

「ここからは私のターンですよ。双葉サーン」

 双葉の背後に回り攻撃をした人物、それはエイレーンだった。

『ど、どういう事だエイレーン選手!? 人が変わったような強さだぞ!?』

「、、、実は私、ちょっとだけウソをついてました。
アカリさんの『鞭で打った相手を強化する』スキル。あれウソデース」

「でも、、、じっさいに強化されて、、、、いたはず、、、、だよ」

「ええ、私の『痛みを感じるほど強くなる』スキルによって、ね。
鞭で打たれて痛みを感じれば強くなりますから」

 ヨロヨロと立ち上がる双葉の前でタネ明かしを始めるエイレーン。

「さすがにサーヴァント、、、、一筋縄じゃいかないね」

「サーヴァント? 、、、、、ああ、『宝具持ち』の事をあなた方はそう言うんデースね」

221 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:41:08 ID:Tapcdl79X4
お久しぶりです。
夏休みの宿題を片付けるので忙しく、投稿が遅れました。

さて、今回は前々から貼ってた伏線を一つ回収出来ました。
異能バトルでの能力偽装、、、、ずっっと書きたかったシチュエーションでした。

『鞭で打った相手を強化する』と言う、アカリちゃんのイメージと微妙にズレた能力だった事、一度しか能力が使用されていない事、そしてやたらと印象的な使い方をしていたのが伏線です。

つまり、準々決勝でエイレーンさんとアカリちゃんが即興SNショーをしていたのは、ウソの情報を印象付けつつ自身の欲を満たす為のパフォーマンスだった訳ですね。

222 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/25 07:53:58 ID:IT7hJz8Tjo
おっつおっつ、ブラフかけつつ欲満たしてて草

223 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/25 13:36:22 ID:MwGRTvl55T
>>222
一石二鳥と言う奴ですねww
因みに、エイレーンとアカリちゃんは何気に宝具やスキルを準決勝まで全部隠し通してる唯一のペアだったりします、、、

224 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:31:30 ID:9c5VDgsMnz
>>220
「、、、?」

「ある時期を境に現れ始めた、過去の記憶を持たない異能力者達の総称、『宝具持ち』。
殆どの『宝具持ち』は幾つかの異能力を持ち、その中でも最も強力なモノを皆『宝具』と自称する。
故に付いた名前が『宝具持ち』、、、、、双葉さんの言う通り、私もその一人デース」

「、、、、なるほど、ね」

(時間かせぎのために質問したら、結構きょうみ深い事実がでてきた)

 完全に出し抜かれた、その事実を認識した双葉が取った行動は時間稼ぎ。
 質問を投げかけ、エイレーンが答えている間に勝ち筋を探ろうと言う算段だった。

(ここは特異点、なんでもアリだっていう先入観があった)

(でもよくよく考えてみれば、なんでサーヴァントが現界してるんだろう)

(双葉達と同じく、特異点を元に戻すために『抑止力』が呼び出した? それだと記憶がないことに説明がつかない。記憶をけすメリットがないもん)

 勝ち筋を探るために稼いだ筈の時間は、突如与えられた情報の処理に浪費された。

 その浪費は、致命的な浪費。
 しかし浪費を代償に双葉は核心へと迫っていた。特異点の絡繰りと黒幕、その核心へと。

「では双葉サーン。そろそろ続きと行きましょうか」

「、、、、」

(なんで今まできづけなかったの?)

(ーーーーそもそもなんで今、『楔』をみつける見通しがたったの?
シロちゃんが来るのにあわせた様なタイミングで、、、、そういえば、シロちゃん達がこのタイミングにきたのはブイデアの事故があったからだ)

「双葉サーン?」

「、、、、、、、、」

(もし、これらに誰かの意図があるとするなら、つまり黒幕がいるとすれば、ソレは『双葉選手動かない! エイレーン選手の能力によるものか!?』

225 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:32:45 ID:9c5VDgsMnz
>>224
 司会の声が鼓膜を打ち、双葉を現実へと引き戻す。
 桃色の瞳をぐるりと回せば、周囲には心配そうにする観客とエイレーンがいた。

「ごめん、、、、ボーとしてた」

「全く、心配したんですからね」

「うん、、、、にしても、双葉がボーとしてる間に攻撃しちゃえばよかったのに」

「ハハ、そう言う事はしないって、さっきアカリさんと約束しちゃったんですよ」

「そっか、じゃあいくよ!」

 頭の中を戦闘に切り替え双葉は駆ける。
 目の前に居るのは強者、今度こそ一分の隙も許されない。

「負けませんよ!」

「こっちこそ!」

 ナイフとサーベル、二本の刃物がギィンッ!と音を立てて衝突し競り合う。

「いけっ!」

 互いの動きが止まった瞬間、双葉の足元からツタが伸びてエイレーンの顔面に襲い掛かる。
 双葉の『ナイフで切りつけた場所から植物を生やし操作する能力』による奇襲はエイレーンの表情を驚きに変えた。

「くっ! 面倒デー「シッ!」

「!?」

 エイレーンが咄嗟にツタを切り払った直後、双葉の蹴りがエイレーンの足を掠める。

「痛っ、、、、」

 掠めた蹴りがエイレーンの足に鋭い痛みを残す。双葉の靴先にナイフが仕込まれていたのだ。

「、、、成程、クツに仕込んだナイフで床を切りつけておき、そこから植物を生やしたんデースね」

「大正解、流石にりかいが早いね」

 切りつけてから発動可能になるまでタイムラグがあるものの、ソレを差し引いても双葉の能力は強力無比。
 生やす場所にタイミングも自由自在、植物をどうにかする手段を持たぬ相手ならば封殺出来る。それが双葉の強さ。

226 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:33:52 ID:9c5VDgsMnz
>>225
「、、、しこみは終わった、時もみちた。ここからは双葉の時間だよ」

『双葉選手の挑発だ! 私の辞書に『敗北』の二文字は無い!! そう言わんばかりだぜ!!』

 片手両足、双葉の持つ計三本の刃がギラリと光る。
 笑みを浮かべる瞳は勝利を見据えている、様に見えた。

「、、、、、」

 しかし双葉の内心では焦りと弱音が渦巻いている。それはエイレーンの闘技場という場に対する相性の良さによるものだ。

(刃物で切られれば血がへる、殴打されれば呼吸がじゃまされる、それがふつう。
それらの障害を補って余りあるほどの強化、それがエイレーンちゃんのスキルだね。たぶん。

でも、この闘技場はピノちゃんの宝具の力で本物の傷をおうことはない、痛みさえ我慢できるならどんなこうげきを受けても動きはにぶらない。
エイレーンちゃんにとって最高のフィールド、それがここ)

「エイレーンちゃんがこれ以上強化されるまえに植物で拘束する。それが双葉のかちすじ、、、、よし」

 そう双葉は小声で呟き、拳と共に己の弱音をそっと握り込む。

(エイレーン一家との交渉、、、、あの時みたいな無様はにどと御免だね)

 もう二度と無様を晒すものか。それが双葉の密かな覚悟だった。
 痛む体に喝を入れ双葉は吠える。

「ここ『スパークリングチャット』は双葉とピノちゃんの二人できずきあげた城であり誇りっ!! だから双葉はかつ!」

 双葉がバンッと両手を叩き合わせば闘技場の方々からツタが吹き出し、闘技場の一角を緑一色に染める。

「いいデースね! 戦いはこうじゃないと!!」

 双葉の猛りに獰猛な笑みで返答するのはエイレーン。
 今、エイレーンの心は燃え上っていた。己の計画にズレが生じているのにも関わらず。

227 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:35:03 ID:9c5VDgsMnz
>>226
(この闘技場こそ私の能力を最大限以上に生かせる場所。実態以上の力を見せびらかすことが出来る。故に、能力を晒すだけの価値があると判断した)

「ほら! ほら! ほらほら!」

 スコールの如く降り注ぐツタを&#25620;い潜り、切り裂き、エイレーンは双葉の元へと近づく。

 双葉は追い詰められる。

(無論、ここで勝たなければ意味はない)

「つかまえたっ!」

「甘い!」

 背後から生え、足に巻き付いた強靭なツタを強引に引きちぎり前に進む。

 双葉は更に追い詰められる。しかし折れない。 

(押しきれない。『切り札』の切り方を間違えましたか)

 ブラフに引っ掛かったと言う事実に動揺している間に押し切る。それがエイレーンの計画。
 単純を通り越して杜撰とも言える計画、しかしエイレーンはソレが最適であると判断していた。
 それは何故か、以前見た双葉が未熟だったからだ。

 エイレーン一家と双葉の交渉。あの時の双葉は失敗しそうになれば動揺を見せ、ばあちゃるが犠牲に成ろうとした時は躊躇していた。
 良く言えば裏表のない心優しい性格。友人としては最高、リーダーにだって適している。しかし、戦いには向いていない。

 故にエイレーンは複雑な計画で失敗のリスクを背負うよりも、効果は小さくとも単純な計画を確実に遂行する事を選んだ。これがピノや他の者が相手なら別の方法を選んでいただろう。
 双葉専用にあつらえた計画は、しかし上手く行かなかった。
 それは何故か、今の双葉が成長しているからだ。

228 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:39:04 ID:9c5VDgsMnz
>>227
(驚くべきは双葉さんの成長。以前会った時の双葉さんは未熟でした、、、、しかし今は違う。
双葉さんの絶対に相手を倒すという覚悟を感じる!)

「らああああああ!!」

 エイレーンが後3歩進めばサーベルの間合いに入る、そんな距離。互いの姿が良く見える程度には近い距離。双葉は覚悟を決め、裂帛の気合と共にナイフを床に突き刺す。
 突き刺した所から桃色の光が漏れ出し、漏れ出す程にナイフは色褪せる。漏れ出した光は双葉の喉へと吸い込まれてゆく。
 青々と茂っていたツタ共は悉く枯れ落ち、淡い緑の光と成り果て、地を這いずり、双葉の下に集う。
 双葉の足元より立ちあがりしは緑光。桃色の光は喉元から四方に別れて延び広がる。
 そうして出来上がるのは光で出来た花。茎は緑、花弁は桃色。高さ2.8mの幻想的な花が双葉を飲み込む。

(ここまで近づかれたら、拘束による勝ちは無理。もう全力をぶつけるしかない!)

「行けるところまで、行ってやるよおら! 『宝具真名解放』言の葉唄えば現は揺れる。幻言回れ『言想切断(フタバーニーヤ)』」

『双葉選手は奥の手を使うつもりだ! オーナーの奥の手お披露目か!?』

「ハハ、、、良い、良いデースねぇ」

229 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:39:13 ID:9c5VDgsMnz
>>228
 双葉の奥の手、内容次第ではエイレーンは負ける。その事実を認識した途端エイレーンの手は震え出す。ソレは恐れと猛りから来る震え。
 敗北のリスクが有る勝負、可能な限り避けるべき局面。しかしエイレーンは現状をどこか楽しんでしまっていた。
 己よりも頭の良い者、狡猾な者は腐るほどいる。しかし、己と張り合える程に強い者は殆どいない。しかし双葉は、今の双葉はエイレーンが本気を出すべき相手だった。

 己の軽挙によって恩人を失ったエイレーン。その失態を二度と繰り返すまいと誓った女。
 エイレーンにとってリスクとは恐怖の対象であり、事実彼女の理性は現状を恐れている。しかし笑みが止まらない。理性の泣き言を歓喜と戦意が真っ赤に塗りつぶしてゆくのだ。

230 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:50:03 ID:9c5VDgsMnz
今度はテストで投稿が遅れました
夏休み直後にテストあるとか流石にサディスティックが過ぎませんかね、、、、、、

逆境をきっかけに成長する双葉ちゃんと、徐々に素が漏れ出るエイレーンさんの回でした。
何気に二人共過去の失敗から学び、各々の成長を遂げています。


それはそうと、ヒゲドライバーさんとのコラボ配信凄い楽しみ

231 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:52:16 ID:9c5VDgsMnz
>>229 228の微訂正
 双葉の奥の手、その内容次第でエイレーンは負ける。その事実を認識した途端エイレーンの手は震え出す。ソレは恐れと猛りから来る震え。
 敗北のリスクが有る勝負、可能な限り避けるべき局面。しかしエイレーンは現状をどこか楽しんでしまっていた。
 己よりも頭の良い者、狡猾な者は腐るほどいる。だが、己と張り合える程に強い者は殆どいない。そして双葉は、今の双葉はエイレーンが本気を出すべき相手だった。

 己の軽挙によって恩人を失ったエイレーン。その失態を二度と繰り返すまいと誓った女。
 エイレーンにとってリスクとは恐怖の対象であり、事実彼女の理性は現状を恐れている。しかし笑みが止まらない。理性の泣き言を歓喜と戦意が真っ赤に塗りつぶしてゆくのだ。

232 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 20:47:44 ID:WicsM/DPBL
おっつおっつ、お疲れ様です

233 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 21:01:20 ID:9c5VDgsMnz
>>232
有難うございます、、、

5日に一度位のペースでの更新を目指して頑張ろうと思います

234 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:28:39 ID:.hSPSfAscd
>>231
 視点は移りアカリ対ピノ、暫し硬直していた戦いに変化が訪れ始めていた。

「ハァッ、、、、ハァッ、、、、」

「流石のピノちゃんもそろそろガス欠だねーうん。あんだけ動いてれば当然だけどさ」

 ピノの振るう槍をアカリは軽々避ける。息は切れ気味、技の冴えも落ちた。

 試合が始まってからピノはずっと攻め続けていた。言い換えれば、戦いが始まってから休むことなく槍を振るい続けてきた、ということにもなる。
 槍という武器は非常に重く長く、扱いが難しい。そしてピノの体格は女子基準でもかなり華奢。もし一瞬でも手を止めれば槍の慣性に体を持っていかれ、大きな隙を晒すことになるだろう。だからこそ止まれない、動き続けるしかない。長期戦には向いていないのだ。
 流水の如くとめどない優雅な槍技。しかしソレは、苦々しい妥協の上に成り立っているのだ。

 疲労の汗が止まらない。

「やはりこうなりますか、、、、なっ!?」

 額を垂れ落ちた汗がピノの目に入り、ほんの少し長めの瞬きをした次の瞬間。アカリは目の前にいた。

「油断したねピノちゃん」

「まずっ」

 ピノにアカリの魔手が近付きーーー

「なんてね」

『遂にアカリ選手の手が届い、、、、てないぞ!? ピノ選手の槍に阻まれたぜ!』

 ーーー阻まれた。
 アカリの手とピノの狭間、そこに穂先が割り込んだのだ。
 無防備に突き出されたアカリの右手を槍が傷つける。

「ぐっ!」

 この戦い初めてのダメージにアカリは動揺を隠せない。ブルーの瞳がせわしなく揺れる。

「さっきの瞬きはブラフだったんだね、、、、一本取られたよ」

「その通りですわ。相手が勝利を確信した時こそ最大のチャンス、きっちり狙わせて頂きました」

235 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:29:35 ID:.hSPSfAscd
>>234
 そう言い放ち、悪戯めいた笑みを浮かべるピノ。

 ピノは長期戦向きではない。だからアカリを倒せない事に最初は焦っていた。しかしそこで終わらないのがピノと言うサーヴァント。
 直ぐに勝敗を付ける事は不可能と見切りをつけ、今度は機を待った。偶然の隙が己に生まれ、そこにアカリが飛びつくまで待ったのだ。

 明るい見た目とは裏腹にアカリの頭はよく切れる。扱いの難しい鞭を使いこなし、触れるだけで発動する(と思われる)強力なスキルを持ちつつも驕る事は無い。わざと作った隙なぞ秒で見抜くだろう。
 故にピノは賭けた、アカリが本物の隙を前に油断してくれるかに。ピノは勝利した、一瞬のチャンスを物にした。そして、命懸けの賭けには大きなリターンがあるのがお約束だ。

「でもピノちゃん、この程度じゃまだアカリの方が有利、、、だ、、、、」

 お返しに鞭を振るおうとしたアカリの体から力が抜けてゆく。

『こ、これはどういうことだ!? アカリ選手が突然ふらつきだしたぞ!』

「なん、、、で?」

「わたくしの槍は一定量血を浴びると、浴びた血の持ち主から精気を奪うのですわ。そして精気を糧にする事で短時間の間威力を増すんですの。
まあ、処女と童貞の精気しか吸わない偏食家の槍なんで使い勝手は良くないですけどね」

 ピノの持つ槍『無銘』。カルロ家の先祖が吸血鬼の長である『死徒27祖』の一人を打倒した際、その記念にと27祖の死体を加工して作らせた槍である。
 吸血鬼とは言え、人型の生き物を素材に使った武器と言うのは少々外聞が悪い。故にこの由来は隠され、『無銘』と言う質素な銘と共に代々当主の証として伝えられる事になった。

「そう、なのか」

 アカリが槍に目線をやれば、穂先についた返り血は蒼く染まっている。準々決勝で見せた光景と確かに同じだ。

236 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:30:39 ID:.hSPSfAscd
>>235
「勘違い、、、、してたよ。てっきり、自傷をトリガーに発動するもんかと」

「あれはあくまで裏技。デメリットを背負ってでも威力が欲しい時の切り札ですわ」

 全身から力と言う力が抜き去られる。立つことすらままならない。

『アカリ選手膝をついた! これはつまり、オーナー・ピノの勝利という事!!』

 歓声轟く闘技場の下、ピノは次撃を繰り出そうとしている。このまま行けばあと数秒でアカリに届くだろう。

「、、、、そっか、残念」

 動揺が過ぎ去ったアカリの胸中には、幾つもの感情が渦巻いていた。
 己が出し抜かれた事への悔しさ。相手への称賛。そして『己が勝利してしまう』事に対する、ある種のやるせなさ。その他諸々。

「では御機嫌よ「矢刺せ『愛天使(キューピッド)』」

 刺さる直前で槍が止まる。アカリが盾や魔術で防御したわけでは無い、ピノが静止したのだ。
 アカリの宝具、その効果によって止まった。

『、、、、え?』

「この宝具、ちょっと代償がヤバ目だから、、、、使いたく無かったんだけどね。
 アカリをここまで追い詰めた礼に、スキルと宝具を教えてあげる。

 アカリのスキルは『蠱惑の手(チャームハンド)』。手で触れた相手を魅了して動きを止めるんだ。同性の人や、種族が違う相手には若干通りが悪いのが欠点かな。
 そして宝具名は『愛天使』。目線の先に居る敵を強制的に魅了するんだよ。種族問わず誰にでも効くのが特徴。欠点はね、、、、秘密」

 アカリがゆっくりと立ち上がり、槍を奪い取り、止めを刺す。

「止めは刺させて貰うよ。ほっといたら、思わぬ方法で逆転されそうだし」

 ピノが自らの槍に貫かれてから地に伏すまでの刹那、薄紫色のセミロングだけがフワリ虚ろに揺れていた。

237 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:31:50 ID:.hSPSfAscd
>>236
 アカリ対ピノの決着が着くのと同じ頃、双葉とエイレーンの戦いも終わりが近づいていた。

「やー、まけちゃたかな。やっぱ力不足だったか」

「いえいえ双葉サーン。『言想切断』、放った言葉を現実にする宝具。実現できる内容に制限はあるものの、ソレを差し引いてもかなり強力でしたよ。
 『はじけろ』と言えば空間が破裂し、『もえろ』と言えば周囲が燃える。あらゆる攻撃を可能にする万能宝具、、、、でも、威力に少々難があったのが致命的でしたネ。

 それと、発動中は一歩も動けなくなる上、スキルも使えなくなるのも痛かったデスね。宝具の強さを考えれば妥当な代償デースけど」

 倒れ伏す双葉に、エイレーンがサーベルを突き付けていた。
 周囲のあちこちは焦げ、抉れ、断裂し、凍り付き、ここで激闘が有ったことを証明している。

「痛みを感じるほどに強くなる私と、相性が悪すぎましたね」

「ほんとそれ。でもまあ、収穫もあったしべつに良いかな」

「収穫?」

「そ、収穫。エイレーンちゃんの強化さ、上限あるでしょ。
 双葉と戦ってる時、途中から動きに変化がなくなってたもん。
 それまではダメージをうけるほど、はやくなってたのに」

「ありゃま、これは鋭い」

 最早立ち上がることすら出来ない双葉。字面にすれば無様なその姿は、どういう訳か尊厳に満ちていた。
 桃色の目に宿る闘志は衰えの欠片も見せず、遠くの勝利を見据えている。

 きっとそれは、双葉がシロとスズの勝利を確信しているからだろう。

238 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:32:50 ID:.hSPSfAscd
>>237
「エイレーンちゃん最大の武器はスキルでも宝具でもなく、情報。
 、、、、双葉がアカリちゃんに、ピノちゃんがエイレーンちゃんに対応していればまだ勝ち目はあった。
 でも、そうはならなかった。それは何故か、エイレーン達が情報をかくし通していたから。双葉たちは間違えたんじゃない、間違えさせられたの。

 だから双葉は全力をぶつけることで未知のベールをはいだ。エイレーンちゃんを守り、双葉達の視界をおおうベールを。
 双葉がはいだのは二枚、スキルの正体と欠点。のこりはあと何枚かな?」

 そこまで言い切ると、双葉はニコリと素敵な笑みを浮かべる。
 はて何をする気か、とエイレーンが身構えた次の瞬間。

「こうさん」

 双葉は降参を宣言した。

「、、、、え?」

『なんと!? 双葉選手まさかの降参!! この時点でアカリ・エイレーンペアの勝利となります!』
「マジか」「まあ、潔くはある」「ナイスファイト!」

 驚くエイレーンを他所に双葉は悠々と立ち上がり、ピノを優しく抱き上げて闘技場を後にする。

「さようなら。次の決勝戦はオーナー席からみさせて貰うよ」

「、、、、、、え、ええ。さようなら」

 我に返ったエイレーンが返事をした時双葉の姿は既に無く、ピノを落とさないよう慎重に歩を進める背中が遠くに見えているだけだった。

『さあ観客の皆様! 良き試合を見せた選手たちに喝采を!!』

「、、、ちょいとばかし、成長しすぎじゃないデースかね」

 余りにも堂々とした振る舞いを魅せる双葉にある種の敗北感を感じながらも、エイレーンは勝者としてアカリと共に闘技場を去る。

239 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:36:49 ID:.hSPSfAscd
>>238
「ん、、、うん? ここは?」

「医務室だよピノちゃん」

 真っ白なベットが立ち並ぶここは医務室。敗北した選手が送られる場所。
 ピノと双葉の二人は医務室にいた。

「ああ、やっぱり負けていましたか、、、、、おや? 誰か来ますよ」

 医務室のドアがコンコンコンと三回ノックされる。

「入っても良いですよ」

 ピノが返事をすれば、少し間を置いてからドアが横にスライドして客人の姿を露わにする。エイレーンだ。

「エイレーンちゃんじゃないか、どうしたの?」

「ええ、実は、一つ提案したい事があるんデースよ」

 そう、歯切れ悪く言うとエイレーンは一瞬言葉を切り、半口分の息を肺に補給して続きを話す。

「もしあなた方が良ければ、私達は棄権しようと思います」

「、、、、、理由はなんですか?」

「私達は示威行為を目的としてここに来ました。そしてその目的はもう達成されたんですよ。
 実力派揃いで知られる岩本カンパニーの精鋭、馬越健太郎。新進気鋭のギャングスタ、ケリンと鳴神裁。スパークリングチャットの名物、戦うオーナー、ピノ・双葉。これら全てをエイレーン一家は下した。
 『スクリーンガンナー』『You-Know-that』『バレットバンド』、、、街の外で名を轟かしたアウトロー、計25団体を傘下に収めるニーコタウンのボス、神楽すずは正直惜しいですが、まあ今の戦果で十分です。

 それにほら、あなた方は優勝しないと金が足りないんデースよね? 互いに損の無い話しだと思いますが」

240 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:38:27 ID:.hSPSfAscd
>>239
「優勝云々の話、一応は機密なんですけどね。ギャング共に融資の邪魔をされた時といい、今回といい、情報を漏らすおバカさんが多くて嫌になりますね。」

「酒と女と金、後は多少の知名度があれば大抵の情報は手に入りますからね。良ければ今度、ねっとりレクチャーしてあげましょうか?」

 エイレーンの提案を聞いたピノは、薄紫色の髪をクルクルといじりながら考え込む。

 確かに、エイレーンの言う通り優勝賞金1000万を回収しなければ『楽園』に行くことは出来ない。その条件を確実にクリアできる、まさに願ってもない申し出。だがーーー

「すみません。その申し出を断らさせて頂きますわ」

 ピノは断った。

「どうしてデースか?」

「実の所、今大会の目的は一つじゃないんですの。強者の戦いを観戦し、そして全力でぶつかる。そうすることで皆様の成長を促し、来るべきカカラとの闘いで負けるリスクを減らす。それが二つ目の目的。
 だからエイレーンさん、棄権されちゃうとそれはそれで困るんですよね」

「それにね、ここは戦いをみせて楽しませるばしょ。取引なんてしたら、観客や他の選手、それにパプリカとピーマンにだって申しわけが立たないよ」

「、、、、ま、そういう事ならしょうがないですね」

 そう言いながらエイレーンは赤い髪をポリポリと掻き、思わず苦笑いを浮かべてしまう。 

241 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:39:16 ID:.hSPSfAscd
>>240
 シロとスズが優勝し、もしカカラの根絶に成功したならばそのメリットは莫大。防壁外の開拓、交易の容易化、、、、、時間をかければ、50年以上の歳月で荒廃してしまった世界を元に戻すことだって可能だろう。

 それにピノ達の動向さえ見ておけば、根絶の始まる時期を予想できるものありがたい。カカラ共が居なくなれば、良くも悪くもこの世界は大きな変革期を迎えるだろう。そして、迎えるタイミングさえ解れば変革はチャンスへと姿を変えるのだ。優勝を捨てるメリットは十二分にある。

 故にエイレーンは、更なる譲歩をしてでも提案を通す気でいた。だがしかし、リスクを嫌い、義理人情を割と気にするエイレーンは『リスクを減らす』や『申しわけ』といった言葉に結構弱く、ソレを言われてしまった以上引き下がらざるを得なかったのだ。


 それに、エイレーンに戦う理由は無いものの、『戦いたい』理由はいくつもあった。

「そう、そうですか。それは、楽しみですね」

「ええ、楽しみにしてくださいね」

 軽く会釈をし、エイレーンは医務室を出る。

 扉を閉じればそこは廊下、静かな廊下。カツコツコツカツ、薄灰色の床が靴音鳴らす。

「、、、本当に楽しみですよ」

 静かな廊下、誰も居ないその場所で、そっと噛みしめる様に一人呟く。
 萌美とヨメミ、信頼する部下を負かした強敵。勝っても負けても問題の無い戦い。あらゆる要素がエイレーンを奮わせて行くのだ。

「、、、、フゥ」

 赤い瞳をピタリ閉じ、沸き立つ心を落ち着かせる。大きく深呼吸し、火照った体を冷ます。笑みは浮かべない、闘志も今は要らない。
 今はただ体を休ませ、心を休ませ、感覚を研ぎ澄ます。それだけでいい。

242 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:45:16 ID:.hSPSfAscd
やっと準決勝が終わりです、多分今までで最長の戦いだったと思います。

ただの大会かと思いきや、意外と色んな思惑が動いていました。
まあ、ぶっちゃけ金稼ぎの為だけに大会開く意義は薄いですしおすし。

各キャラのステータスは決勝戦が終わってから纏めて紹介するつもりです。

243 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 19:08:54 ID:.hSPSfAscd
細々とした裏設定

『スクリーンガンナー』
元ネタ:ニコニコのコメント機能(『画面』にコメントを『撃ち込む』ことから)

 比較的最近になって生まれたグループ。
 技術の発展で職を失った人たちが街の外に活路を求めたのが始まり。
 主な収入源は『書類偽造の代行』『身分証明書の偽造』等々


『You-Know-that』
元ネタ:例のアレ

 カカラを崇拝するカルト集団。歴史は結構古い。
 収入源は無し。基本自給自足。
 ニーコタウンのカカラを用いた堆肥や燃料の知識は、殆どここ由来だったりする。


『バレットバンド』
元ネタ:東方(弾幕+音楽=バレットミュージック→バレットバンド)

 ドストレートなアウトロー集団。同業者の中ではまあまあ長続きしている方だった。
 主な収入源は略奪、パイプガンの製造(取り敢えず弾は撃てる粗製銃の事)

244 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 21:26:24 ID:XyZMD4A.9T
おっつおっつ、決勝が楽しみじゃ。バレットバンドがアウトローなのは解釈一致(原作を見ながら)

245 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/24 12:36:03 ID:bXqHp0RNBA
>>244
ほぼ毎シーズンヤバい異変をしでかしてますからね、幻想郷の住人達

決勝戦は気合い入れて書くつもりです! 決勝が終わったら、幾つか日常回を挟んだ後、一章の終盤に突入する予定ですね

246 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:00:25 ID:9s2I0eJRR7
>>241
『さあさあ始まる決勝戦! 泣いても笑ってもこれが最後!!』

『決勝戦に出場する選手のご紹介! 白髪蒼目、彗星の如く現れた謎の美少女、シロ選手! ニーコタウンの大ボス、噂に恥じぬ武勇、神楽すず選手!
 エイレーン一家の長、知略も武力も一級品、エイレーン選手! エイレーン一家のナンバー2、綺麗な花には猛毒あり、アカリ選手! 以上四名だぜ!!』
「応援してるぜ白髪の嬢ちゃん!」「やっちまえボス!!」「頑張りなよエイレーン!」「負けんなよぉ! 金髪の姉ちゃん!」

「決勝戦か、緊張するねぇ」

「ですねシロさん」

 司会の煽り文句が闘技場の中に朗々と響き渡る。観客席を見ればそこに空席は一つもない。決勝を待ち望む観客達が一片の隙間もなくズラリと並んでいるのだ。
 シロとスズの二人が堂々とした足取りで会場に入った瞬間、観客のボルテージは一際上がる。

「勝ちますよアカリさん」

「勿論」

 対するはエイレーン一家の二人。
 二人の目はただ澄みきり、迷いを一欠片も感じさせない。


『試合、、、、開始!』

 司会の声と共に選手は動き出す。

247 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:00:49 ID:9s2I0eJRR7
>>246
「、、、、、」

「、、、、、、」

 先程の準決勝とは打って変わり、開始した瞬間動き出す様な事は無い。
 じりじり、じりじりと互いの間合いを図りながら近づいてゆく。


 まず間合いに入ったのはアカリ、弓や銃を除けば鞭のリーチは頭一つ抜けているのだから当然と言える。しかしアカリは動かない。エイレーンの補助に徹するつもりなのだろう。

「、、、、行きます!」

『すず選手が仕掛けた! 短期決戦狙いか!?』

 最初に動いたのはスズ。釘バットを振りかぶると、緑色の魔力を伴いながら凄まじいスピードでエイレーンに肉薄する。
 肉体の各部から魔力を噴射し、動きを補助する事で身体能力を底上げするスキル、それが魔力放出。

「ぶっ潰す!」

 真上から真下へ、小細工無しの振り下ろし。まともに当たれば必殺。そんな一撃がエイレーンに襲い掛かりーー

「潰されるのは御免デース」

「忘れて貰っちゃ困るね、と」

「やばっ!?」

 邪魔された。
 振り上げたバット、その柄頭をアカリの鞭が正確に打ち据えたのだ。そのせいでバットは滑り、軌道はブレる。
 一応当たりはしたが痛打にならず、エイレーンの能力を発動するのに丁度良い程度まで威力が減衰させられた。

248 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:01:22 ID:9s2I0eJRR7
>>247
「んー。刺激的で気持ち良い、素晴らしい痛みですよ」

「不味っ」

 額でバットを受け止めたエイレーンは笑顔でそう言った。浮かべた笑顔はやや恍惚気味で、顔を滴り落ちる血の赤も相まってエイレーンの不審者感を強く演出している。
 しかし、胡乱気な様相に反してその行動は的確。エイレーンはサーベルを逆手に持つと、スズの鳩尾に柄を叩きこんだのだ。スキルの条件を満たし身体能力が上がった状態で。

「カハッ、、、、!」

『急所に一撃! これはえげつないぜ!』
「ヒェッ、、、、」「痛みが想像しやすいのが生々しいな」「羨ましいぞ!」

 鳩尾を打たれたスズの呼吸は一時止まる。肺の中全てを絞り出されたような苦痛。酸欠から来る混乱。体はくの字に曲がり、まともに立つことなど不可能。握り締めていたバットがカランと音を立てて零れ落ちる。
 ぐらつく緑の瞳で何とかエイレーンを捉え、必死に拳を振るうも防がれてしまう。

「急所に打撃を受けても動けるとは流石デース。でも「やらせないよ」

 すぐさま止めを刺そうとしたエイレーンを妨害したのはシロ。
 スズの背後から飛び出したかと思えば、突然顔面にナイフを投げつけて視線を誘導し、シロ本人は微妙にタイミングをずらして突貫する。アカリが鞭を振るう隙など与えない。
 投擲物と疑似的な連携を取る厄介な戦法。しかしーーー

「なるほど、投てき武器を用いた視線誘導。タイミングも的確ですし、それを可能にするシロさんのスピードと技量も驚嘆に値しマース」

 通じない。
 蹴り上げたスズのバットでナイフを受け止め、シロに対してはサーベルによる切り払いで対処される。

249 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:02:19 ID:9s2I0eJRR7
>>248
「ですが、似たような手を準々決勝で見せたのが不味かったですね。もしこれが初見なら、正直痛手は免れませんでしたよ」

「それで良いんだよ、それで。シロの狙いはすずちゃんを助けることだけだからねぇ!」

 スズとエイレーンの間に体をねじ込む。振り下ろされたサーベルがシロを浅く切り裂く、がその程度気にも留めない。
 シロは右の手に持ったナイフでエイレーンを牽制しつつ、左の手でスズを押し退けて後ろに下がらせた。

「大丈夫すずちゃん?」

「有難う、、、ございます、、、シロさん。もう大丈夫です、、、、私、、、もう戦えます」

「強がりなのが見え見えだよ、ちゃんと息が整うまでは駄目」

 シロは演技臭い笑みを口元に浮かべてそう言い放ちつつ、思考を始める。

 イマイチ決定打に欠ける為シロはエイレーンと相性が悪い。スキルは発動しておらず、シロの宝具『唸れよ砕け私の拳(ぱいーん砲)』は予備動作が大きい。もう一つの宝具も今は効果薄。しかし、それでも持ちこたえることぐらいは出来る。
 無論、持ちこたえたところで勝機が無ければ、ソレはただの悪あがき。では、果たして勝機はあるのか?ある。神楽すずだ。すずちゃんの攻撃がまともに当たればエイレーンもアカリも一撃で倒せる。どんな手を用意してようと、使われる前に倒せば良いのだ。準々決勝、準決勝を見る限りではダメージを反射する様なスキルを持っているとも考え辛い。
 シロはそこまで考えたところで一旦思考に区切りをつけ、目の前の戦いへ意識を集中させる。

(宝具とかの不確定要素はあるけど、今それを考えたところで無意味。
 兎にも角にも時間を稼がないとね、、、、後40秒、いや30秒も稼げば、すずちゃんなら十分回復するかな?)

250 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:02:54 ID:9s2I0eJRR7
>>249
 エイレーンに対して半身になり、右手でナイフを構える。構える手はヘソの高さ、刃先は相手の首元へ。重心の位置を体の芯に合わせ、スムーズに動けるようにする。小指、薬指でナイフをしっかり握り、他の指は軽く添えるだけ。ごくありふれた基本の構え。様々な人間に使われてきた、即応性に優れる構え。

(30秒、、、、そこまでは持たせて見せる!)

 エイレーンを見据え、シロは時間稼ぎ(戦い)を始めた。

「シッ!」

 1秒目、鋭く息を吐いてナイフを突き出す。

「軽い!」

 3秒目、シロの一撃は叩き落される。
 5秒目、鞭の援護射撃。
 6秒目、肩に痛打。
 8秒目、エイレーンからの斬撃。

「、、、、っ!」

 10秒目、強引に受け流す。
 11秒目、蹴りで反撃を試み、アカリの鞭に邪魔される。

「二対一で此処まで捌けるのは流石デース」

「でもそろそろ限界じゃないかな。アカリはそう思うよ」

 15秒目、鞭とサーベルの同時攻撃が襲来。
 16秒目、ナイフが弾き飛ばされる。

「はぁっ、、、、はぁっ、、、、、!」

 17秒目、もうこれしか打つ手が無い。

「、、、、、『真名解放』
 芸術をもてあの灰色の労働を燃やせ
 ここには我ら不断の潔く愉しい創造がある
 皆人よ 来って我らに交じれ 世界よ 他意なき我らを受け入れよーーーー」

『シロ選手は二つ目の宝具を使うようだぜ! 逆転狙いか!?』
「正直厳しいな」「内容にもよるが、さて」「、、、、、ん? 待てよ」

 20秒目、最後の足掻きにと宝具を発動ーーーー

「なっ、、、」

「スミマセン、シロさん。遅くなっちゃいました」

251 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:03:24 ID:9s2I0eJRR7
>>250
 ーーーする必要はなくなった。
 良く通る声、真っすぐで力強い声がシロの鼓膜を震わせる。声のする方を見れば、そこにはやはり透き通るような緑目の美少女がいた。眼鏡の似合う、清楚で豪快な女。そう、神楽すずが復活したのだ。
 痛みは既になく、戦意も揚々。笑顔と怒り顔を足した様な表情は『やられた分はやり返してやる』とでも言わんばかり。

「いやいや、想定よりも大分早いよ」

「そう言ってもらえると、助かります!」

 スズは復活するや否やバットを拾い上げ、強烈豪快なフルスイングを放つ。エイレーン一家の二人も、まさかこれほどに早くスズが復帰してくるとは思わなかったのだろう。シロにばかり注意を払っていたせいで、モロに風圧を受けて吹き飛ばされてしまう。

「くっ!」

『神楽すず復活っ!! 反撃の狼煙に成り得るか!?』

 二人が吹き飛ばされた隙にシロはナイフを回収する。
 スズは復活し、互いの距離も開いた。これで仕切り直し、ここからが本番だ。

252 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:08:07 ID:9s2I0eJRR7
お久しぶりです。展開に悩んで若干スランプってました。
仕方ないのでスランプがてら後々登場させるモブキャラの設定を組んでました。

253 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:19:49 ID:9s2I0eJRR7
細々とした設定集

カカラ
特異点Yに蔓延る怪物、左胸のコアが弱点。一般人でも武装すればギリ倒せる位の強さ。
一つの母体から産まれるため遺伝子的には全て同じ。共食いして強力な個体に成る事がある。
 
■■の有り様を人為的に歪めて生み出された産物。祝福と共に産まれた怪物。人類の罪であり希望。

254 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/14 07:50:42 ID:KmN94TxnFw
おっつおっつ、自分のペースで大丈夫よ。後羨ましがってるモブ、死ぬぞ。

255 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/14 16:31:20 ID:lRshBsBn60
>>254
ありがとうございます。

確かに死にますね、、、、、人間とサーヴァントの壁は厚いですから。
セバスやピーマン(ピーマンとパプリカは一応人間設定、正直Vと言うよりかはマスコットの亜種なので)等々、その壁をぶち抜いてる人たちがいますが、、、、アレは、超人の域に片足突っ込んでるお方達なので例外です

256 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:22:42 ID:0RGjI3UHBL
>>251
「本気で叩き込んだんデースけどね。ここまでアッサリ復帰されると凹みマースよ」

「攻撃が当たる瞬間、魔力の放射で攻撃を相殺したんです。それでも大分喰らっちゃいましたけど」

 スズの全身より立ち昇るは魔力、ゴウゴウと噴き出て渦巻くそれらはさながら豪風。

 ブイデア所属の英霊、神楽すず。実のところ彼女はなんら特別なスキルを持っていないのだ。『魔力放出』『カリスマ』と言ったありきたりなスキルに、火傷や呪いへの耐性をもたらすスキル『普通』。いずれのスキルも他の英霊と比べればどうしても見劣りする。
 しかし弱いかと言われれればソレは否、何故ならばスズにはとびっきり特別な宝具があるからだ。

「BT君、魔力のバックアップをお願いします」

『要請を受諾。動力炉のエネルギーを魔力に変換、魔力のコネクションを補強、バックアップ開始』

 スズが小声で呟けば機械的な音声が答えを返し、数秒の後にはスズの体に魔力が流れ込み始める。

 そう、これこそがスズの宝具『人機の絆』。『BT』と呼ばれる、自立AIを搭載した巨大兵器を使役する事ができるのだ。魔力のバックアップを受ける、スズが直接乗り込んで戦う、遠方から支援砲撃を行って貰う等々、様々な使用方法を持つ宝具。
 今は大会のルール『銃火器の使用禁止』によって魔力のバックアップを受けるぐらいしか出来ない、がそれでも十二分に強力と言えよう。

「今度こそぶっ潰す!」

 裂帛の気合いと共に突撃するスズ。

「同じ事をやっても、同じ結果にしか、、、ぐっ!?」

 迎え撃とうとしたエイレーンの数歩手前、スズは突然右足を床に叩き込む。次の瞬間、闘技場の床が破裂する。

257 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:24:04 ID:0RGjI3UHBL
>>256
『床が破裂したぞ!?』

「、、、っ!」

 破裂した床は礫となってエイレーンに襲い掛かる、完全に想定外の攻撃にさしものエイレーンも対処に精一杯。

「決勝が始まって最初に突撃した時、床に魔力を叩き込んで脆くしといたんですよ。
 ホントは最初の一回目でやるつもりだったんですけど、想定以上に造りがしっかりしてて無理だったんですよね、ハハ」

「ナイスだよすずちゃん!」

 不意をつかれたエイレーン、その隙を逃さぬのはシロ。

「これで決める!」

 うろたえるエイレーンを飛び越し狙うはアカリの首。
 決勝戦での逆転劇。沸き立つ声援がシロのスキル『応援を力に変える能力』を発動させる。
 心身上々、闘志揚々。しかし相手はアカリ、魅了の力を使いこなす手練。万全のアカリならばこれしきの窮地は軽々凌ぐだろう、そう『万全』ならば。

「、、、くっ!」

「やっぱり! 今のアカリちゃんは『近接戦闘がほぼ出来ない』、そうだよねぇ!」

『攻める! 攻め立てているぜシロ選手!』

 シロの振るったナイフに対し、アカリは大げさな回避を余儀なくされる。それは何故か、宝具の代償で片目が見えず、遠近感覚が消失しているからだ。

「『触れただけで魅了出来る』のに『わざわざ鞭を使う』、ギリギリまで使い渋ってた宝具を使ったのになんの変化もない『様に見える』、ここの違和感がシロ的には凄いんだよねぇ。
 ピノちゃんの猛攻を凌いでたのを見るに、接近戦が不得手だとも思えない」

 積み上げた推論を披露しながらも、シロの追撃に淀みは無い。徐々に切り刻まれてゆくアカリ、端正な顔に大粒の汗が浮かぶ。

258 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:24:39 ID:0RGjI3UHBL
>>257
「アカリさん! 今助けに「行かせませんよ」

 礫を凌ぎ、アカリを助けにいかんとするエイレーンを阻むはスズ。

「おらぁ!」

「クッ!」

 スズの一撃、その余波がエイレーンの赤毛をブチリと数本持っていく。
 今すぐにでもアカリを助けに行きたい、しかし目の前のスズを無視できない。正に板挟み、紅がかったエイレーンの瞳が苦し気に窄まる。


 そんなエイレーンを他所に、シロとアカリの戦いは進む。

「、、、だからシロは『宝具の代償が接近戦を大きく阻害する物であり、それを誤魔化す為に鞭を使用している』と仮説を立ててみた。どう、合ってる?」

「、、、、」

 大きく後ろに飛び、なんとか窮地を脱するアカリ。しかしもう後ろは壁、後がない。
 必死に頭を回し勝機を探す。

「(シロちゃんの発言が多い、ブラフを警戒して私の反応を見てるのかな? チャンスかも)正解、だよシロちゃん。私の宝具『愛天使』は『美』と言う概念そのものを瞳から射出するモノ。
 放たれた『美』は、視線上に捉えた存在を書き換え、魅了する。解りやすく言うと『アカリを頂点にした美の価値観を相手に押し付けて、絶対に魅了する魔眼』。
 まあハッキリ言ってーーー人間が使うには過ぎた宝具でさ、そんなの使ったらどうなると思う?」

 僅かながらも勝機は見えた、後は実践するだけだ。下手に感情を見せてはいけない、バレてはいけない。迫りくるシロを見据え、心を決める。

259 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:25:28 ID:0RGjI3UHBL
>>258
「反動が来る、のかな?」

「その通り、反動で目が一つ潰れるんだ。数日で戻るとはいえ、そう簡単には使えない、、、と言うとでも!? 矢刺せ『愛天使(キューピット)』!!」

 会話で時間を稼ぎ、宝具の重いデメリットを提示し、まさか使わないだろうと思わせてからの即時使用。これが決まらなければ終わりーーーー

「来ると思った」

 ーーー決まらなかった。
 シロがアカリの眼前に突き出したのはナイフ、顔が写る程に磨かれたソレが魔眼を跳ね返したのだ。
 石化の魔眼を持つメデューサは鏡の如く磨かれた盾を用いて討伐された。魔眼に対しての鏡は、定番の対象法と言える。

「なん、で?」

 宝具を跳ね返されたアカリはもう動けない。自分の宝具で有るが故に多少の耐性があり、喋ることは出来るがそれだけ。仮に動けたとして宝具の反動で何も見えないのだから、どうしようも無くはあるが。

「そりゃ解るよ、アカリちゃんの目に諦めの色がなかったもの。キラキラでギラギラな、綺麗な目をしてた」

「なる、ほど。後は、頼んだよ、エイレーン。私は、ここでギブアップ」

 何も見えなくなった蒼い瞳を閉じ、顔には快活な笑みを浮かべる。そして眠るように、ゆっくりと床へ倒れ込む。

260 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:26:11 ID:0RGjI3UHBL
>>259
『アカリ選手、ここでリタイア! エイレーン一家大ピンチ!!』

「、、、アカリさんがやられましたか。困りましたね」

「降参しますかエイレーンさん? 2対1じゃ勝ち目は薄いですよ」

 スズの問いかけに対し、エイレーンはかぶりを振って否定する。

 アカリが窮地に立たされていた時は焦燥感を露わにしていたエイレーン、しかし今は落ち着いている。勿論、先ほどまでの態度が演技だった訳ではない、切り替えただけだ。
 最も信頼していた部下であるアカリは倒された。シロもスズも相応に消耗してはいるものの、戦えない程では無い。予測しうる限りで最悪の事態ーーーしかし想定内ではある。情報収集、組織の統制、交渉、当たり前の事を当たり前にこなしてこそのリーダー。そして、『当たり前』の中には『最悪の事態を想定し備える事』も含まれている。

「イエイエ、お気になさらず。見せる予定の無かった奥の手を見なきゃいけなくなって困ったなと、そう思っただけデース」

 そう言うと、エイレーンは大きく息を吸い込んで全身に力を入れる。

「不味い!」

「え?」

 ほぼ無限の魔力に圧倒的なパワー、スズは強者だ。故に危機察知能力が低い、そんなもの無くても大抵どうにかなるからだ。
 対して、シロは強者とは言い難い。発動条件の厳しいスキルに少々地味な宝具、しかしそれ故に危機察知能力は高水準。

「、、、、くっ!」

261 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:26:58 ID:0RGjI3UHBL
>>260
 しかし間に合わない。シロとエイレーン、二人の間を阻むようにアカリが倒れ込んでいたからだ。
 敗者の事など気にせずとっとと飛び越えてしまえば、エイレーンが何かする前にナイフで突き刺してしまえたかもしれない。しかしそんな事をすればアカリに砂埃が掛かる、そもそも人の上を跨ぐなど無礼千万。
 殺し合いの場ならともかくここは試合場、やや甘い所の有るシロが躊躇してしまうのはいささか仕方のない事であった。

「『真名解放』同胞を守るためならば
 畜生となりて汚泥を這いずり
 餓鬼となりて汚泥を喰らい
 亡者となりて万象の責め苦を受け
 修羅となりて万物を切り伏せよう
 『六道輪廻荒行道(りくどうりんねこうぎょうどう)』」

 エイレーンの宝具が発動する。肌はひび割れ、背は曲がり、肉は焦げて炭になり、全身から血が噴き出す。

「これが私の宝具、デース。でもまだ、終わりじゃないですよ」

「いいえ、終わりです!」

 ワンテンポ遅れて危険性を察知したスズがバットを振り下ろしーーーー

「ガハッ、、、、!」

「だから、まだ終わりじゃないですよって」

 吹き飛ばされた。
 エイレーンの手から衝撃波の様な物が放射されたのだ。

「一体、何を、、、」

「私の宝具は『スキル効果の増幅』、代償は見ての通り『継続的な自傷』デース。
 正直代償に見合わない効果ですよ。だから活かせるようにしたんです、肉体を改造して」

262 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:27:09 ID:0RGjI3UHBL
>>261

 エイレーンの左手から伸びる無機質な管。右手に持つ古風なサーベルやボロボロの肉体も相まって異様な雰囲気を放っている。

「改造?」

「エエ、改造です。セバスさんとかと同じような。でも、サーヴァントは体の構造が常人と違うので苦労したんですよ。
 宝具やスキルの動力源である魔力を使用する事でどうにかしたんデース。
 ま、効率が悪すぎて宝具で強化している時しか使えないんですけどね」

『これが、この姿こそが本当の本気だと言うのか!? あらゆる手を使い、ひたすらに強さを求めたその姿! もはやこれは剣、ただ一振りの剣がそこに在ります!!』
「すげえ、、、」「あの改造、ちょっと気になるネ」「シロちゃん大丈夫っすかね?」

「なんで、そうまでして強くなろうと、、、、」

「昔、色々あって恩人を失いましてね。繰り返したくないんですよ、二度と」

 ひび割れた顔に僅かな哀愁を浮かべてエイレーンは答える。
 今のエイレーンはお世辞にも美しいとは言えない。元がどんなに見目麗しかろうと血にまみれ、肉を焦がし、管まで生やしていては台無しだ。しかし醜いかと言われれば否、『強さ』と言う単一の分野に特化したが故の機能美が、威厳が、そして凄みがある。

263 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:35:17 ID:0RGjI3UHBL
(多分)次の投稿でトーナメント編は終了です
因みにエイレーンさんの『肉体改造』はぶっちゃけ腕に魔術的な加工をした筒ぶっ刺しただけです
筒の中に魔力流し込んで衝撃に変換するだけの簡単な仕組みですが、こんなんでも結構試行錯誤してます。記憶喪失で魔術の知識0状態からなので十分凄いですけどね
中世の時代に発電機作るようなもんですから

264 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:54:44 ID:0RGjI3UHBL
細々とした設定集
エイレーンさんの宝具
『六道輪廻荒行道(りくどうりんねこうぎょうどう)』
 自傷ダメージを負う代わりに、『痛みを感じるほど強くなる』スキルの効果を増強する宝具。

 やたらと代償が重い割に効果が微妙なのは仕様。
 メタ的な話をすると、エイレーンさんには作者が描けるほぼ限界スペックの頭脳(身内に弱い、やや頑固過ぎるきらいがある、等々のデバフを一応与えてる)とスーパーバイタリティを与えてるので、下手に強い宝具与えると無双しちゃうんです

265 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 09:00:24 ID:bjH5JPQ3m2
細々とした設定集 その2
アカリちゃんの宝具
『愛天使(キューピット)』
 片眼が数日潰れる代わりに『強制的な魅了』を行う宝具。
 代償が重すぎるけどこれでも十分強い。

 魅了ってぶっちゃけ美の価値観が違えば通じないよな→価値観を書き換えれば良いじゃん、と言う割とえげつない宝具。

266 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 16:27:43 ID:PXvL21aakQ
おっつおっつ、盛り上がってまいりました

267 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 20:38:29 ID:bjH5JPQ3m2
>>266
トーナメント編のラスボスですので、熱い展開をお届けする予定です!

268 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:46:52 ID:CCiAb1qDPe
>>262
「まさか奥の手を見せることになろうとは、、、まあ、薄々こうなる気はしてましたが、ねっ!」

「くっ!」

 エイレーンの背後から接近していたシロが吹き飛ばされた。
 宝具の発動を阻止できなかった時点で目標を不意打ちに切り替えていた、が察知されていたようだ。

「シロさん!! 、、、、っ!?」

「ほら目を逸らさない! 敵が目の前にいるんですよ!!」

 吹き飛ばされたシロを思わず目で追ってしまうスズ。明らかな油断、その代償はエイレーンからの猛攻。たった一歩でスズとの間合いを詰め、繰り出すは鋭い斬撃。
 宝具で得た身体能力と確かな技量に裏打ちされたサーベル捌きはひたすらに苛烈。さらに左手の管から繰り出される衝撃波が僅かな隙を潰している。打ち合う事なぞ以ての外、ただ避ける事しかできない。

「これは、キツイ、、、、けど負けない!」

「その通りだよすずちゃん! シロ達は負けない!!」

「、、、っ! やりますね!」

 エイレーンの背後を襲う投げナイフ、シロによるものだ。当然エイレーンは対処せざるを得ない。そして注意がナイフに割かれればスズの剛腕が猛威を振るう。
 アカリを倒したことにより生まれた人数差が優位を作っていた。

「オラァ!」

 魔力放出によって圧倒的な馬力を持つバットが、スズの一撃が────

「でも足りない───まだ足りない」

「押し、切れない!?」

『な、なんと! 今まで圧倒的な剛力を誇ってきたすず選手が押し返された!?』

 正面から押し返され、そして押し込まれる。サーベルの鋭い刃がスズの首元にジワジワと押し込まれてゆく。
 スキル『魔力放出』により圧倒的なパワーを持つスズ。しかしエイレーンの宝具はそれ以上の強化をもたらしている。

269 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:48:58 ID:CCiAb1qDPe
>>268
「不味い!」

 このままではスズがやられる。そう判断したシロが助けに行くが間に合う距離ではない。もう一度ナイフを投げたところで無視されるのがオチだろう。
 衝撃波を警戒し接近を避け、それ故にナイフでの支援に留めてしまった。『すずちゃんなら大丈夫だろうと考えた』『もう少し様子を見たかった』等いくらでも理由は挙げられるが判断ミスには違いない。そしてそのミスが致命的な事態を招いてしまったのも間違いない。

「くっ!」

 細い腕に全霊の力を籠めスズも押し返そうとしているがさして意味のある抵抗には成っていない。

「、、、、」

 冷え冷えとした刃が首に触れる、生暖かい汗が止まらない、息が上がって過呼吸に成りそうなのを必死にこらえる。

「これで一人、、、、、なっ!?」

 スズの首に刃が突き刺さるその直前、なんとエイレーンの足からツタが生えて来たのだ。生えたツタは絡みつき、エイレーンの足元をもつれさせる。

「全く訳が、いや、これは双葉サンのスキル? そんな筈は、何故!」

『すず選手を倒す直前に妨害が入った! エイレーン選手、絶好のチャンスを逃しました!!』
「何だあれ?」「、、、成程、やりますね双葉お姉ちゃん」「完全に不意を突かれてるネ」

 混乱するエイレーン。バラバラの単語が浮かんでは消え、浮かんでは消えを刹那の間に何度も繰り返される。

「────まさか!」

 莫大な試行の後、エイレーンの頭脳は一つの回答を導き出す。

270 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:49:38 ID:CCiAb1qDPe
>>269
(準決勝の序盤、、、、! あの時、双葉さんは私の膝をナイフで切りつけていた!! 双葉さんのスキルは『ナイフで切りつけた所から植物を生やし操る』モノ。
 そして発動のタイミングは任意、ひと試合越しにスキルを発動されたという事か!
 宝具のインパクトで完全に失念していた、、、いや、元からソレが狙いで宝具を発動したのか。完全に出し抜かれた!!)

 エイレーンの考察通りこれは双葉によるものだ。『自分では勝てない』と判断した双葉が仕掛けた遅効性の攻撃。
 捉えようによっては卑怯ともとれる攻撃。実のところ仕掛けた双葉自身もこの攻撃に結構罪悪感を感じている。とは言え、やられたエイレーンは出し抜かれた事に怒りを感じていないのだが。

「オラァ! やっちゃって下さいシロさん!!」

「OK! 真名解放『唸れや砕け私の拳(ぱいーん砲)』」

 足のもつれと混乱の隙を付かれ、エイレーンはスズに突き飛ばされる。そして背後からは宝具を発動させたシロが迫って来ている。絵に描いたような窮地。

 相手への称賛、悔しさ、高揚感、刹那の間に様々な感情がエイレーンの中で沸き上がり、混ざり合い、噴出する────笑いとなって。

「ハハハッ! ハハハハハハ!!!」

 肺腑に残る息を全て吐き出さんばかりの大爆笑。焼け焦げた、ひび割れた顔に浮かぶ満面の笑み。強烈で鮮烈な感情の爆発。思考が加速し体感時間は引き延ばされ、視界に映るすべての物がスローモーションを描き出す。

 足に絡みついたツタを即座に振りほどくのは不可能。衝撃波も宝具相手には分が悪い。ならばどうすべきか?答えはもう出した。

「なっ、、、!」

「勝負!」

271 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:50:47 ID:CCiAb1qDPe
>>270
 左手を自身の背後に向け全力の衝撃波を放ち続け、その反動でエイレーンはシロへと突撃。衝撃波でスズを遠ざけつつシロを刈り取りに行く心積もり。
 己が身を省みぬ加速、一秒と経たぬうちに音速を超え、大気との摩擦で体が灼熱する。剣の切っ先をシロに向け、紅く燃えながら疾走する様はさながら流星。

「乗った!!」

 対するシロ。凝縮された魔力によって蒼く輝く拳を振りかぶり、己が宝具で迎え撃つ構え。

「「────!」」

 紅と蒼、数瞬の後に二人の一撃がぶつかり合う。観客が一言も発さずに見入ってしまう程に鮮烈なせめぎ合い。必殺VS必殺の争い。優勢なのは────

「どうやら私が勝ちそうデースね!」

 エイレーンだった。
 エイレーンとシロ、宝具の代償が差を分けているのだろう。失うことで得た力は、やはり重い。

「いやいや、まだ解らないよぉ」

 だが、シロは諦めない。不敵な笑みを浮かべ、蒼い目でエイレーンを真っ向から見据える。特に勝算が有る訳ではない、だがそれでも諦める訳にはいかないのだ。
 敗退していった仲間達の残した情報が、そして攻撃がエイレーンをここまで追い詰めたのだから。故に諦めない、仲間達の努力を無駄にしない為にも。

 徐々に押される腕に全霊の力を籠め、『シロ』と言う英霊が持ちうる魔力全てをこの一撃に注ぎ込む。

「ああ、そう来なくっちゃ、、、、詰まらないですよね!」

 だがそれでも趨勢は覆らない。気合だけで勝てるほど戦いは優しくない。
 ────最も、気合以外の何かが一つ有れば勝てる、程度には拮抗しているが。

「シロさん!」

 エイレーンの背後から声が聞こえた、スズの物だ。
 背後から物も飛んできた、スズのバットだ。

272 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:52:16 ID:CCiAb1qDPe
>>271
(アレは確か、、、、準々決勝で使った手。自分の武器を投げつけ破裂させるんでしたか)

 通常ならば困惑するはずの場面。だがエイレーンの判断能力は群を抜いている、困惑する事もなく正確に分析を行う。
 ────最も、優れているからこそ間違えることもあるのだが。

(近づくのは困難だと判断して援護に周りましたか、成程いい考えデースね。でも、何が起こるか解っていれば別に無視しても、、、、なにっ!?)

「最っ高だよすずちゃん!!」

 放り投げられたバットはエイレーンでは無くシロの方へと飛んで行く。そしてバットに籠められた魔力、緑色に輝くスズの魔力がシロに流れ込む。流れ込んだ魔力はそのままシロの宝具に加わり威力を強める。
 自身の有り余る魔力を強引に譲渡する力業、最後の最後まで隠し通していたスズの牙。ソレが、今まさにエイレーンの首元に突き立った。

「いっけええええ!!」

「────」

 宝具の蒼い輝きに緑光が加わり、混ざり、螺旋を描く。先ほどまでとは比べ物にならない程に宝具の力が増す。シロとエイレーン、その力関係が逆転する。

「────お見事」

 シロの宝具がエイレーンを打ち抜くその瞬間、エイレーンは心からの称賛を、ポツリと悔し気に呟いた。

『ついに決ッ着! S級の猛者が集いし今大会を制したのは、、、、シロ&神楽すずペア!!』
「おめでとうっすシロちゃん!」「やったぜ!」「皆強かったネ」

「やりましたよ、、、、シロさ、、、ん、、、、」

273 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:52:28 ID:CCiAb1qDPe
>>272

 轟き渡る歓声、勝どきを挙げようとしたスズがパッタリと倒れる。
 闘技場内の人間はピノの宝具『己が身こそ領地なれば』によって怪我を負うこと事は基本無い、無いのだがどうしても限度はある。宝具相当の攻撃に対してはある程度の怪我を負ってしまうのだ。
 激戦に激戦を重ねたスズ。緊張が切れた拍子に倒れてしまうのも無理は無いと言える。

「全く、すずちゃんは、、、、締らない、、、、なぁ、、、、、」

 スズを抱きかかえようとしたシロもまた、倒れてしまう。こちらの方も疲労が限界に達していた様だ。

『おっと、、、、? 如何やら両選手とも疲労が限界に達していた様です』

 後に残されたのは、緑髪の少女と白髪の少女が晴れ晴れとした表情で倒れている、牧歌的で、少々締らない光景だった。

274 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:47:39 ID:CCiAb1qDPe
時間は掛かりましたが何とか書き上げられました!!
今の自分で作れる一番良い物を書けたような気がします

それはそうと、シロちゃんのサンリオライブ出演決定嬉しい!!
サンリオコラボのアクリルキーホルダー再販してくれないかなぁ(願望)


裏設定

『チャイナ被れお姉さん』
 ファイトクラブ『スパークリングチャット』の常連さん。語尾は『ネ』。
 中国人のステレオタイプまんまの喋り方するけど普通に純日本人。好きな食べ物は春雨、あんまカロリー気にせず食えるのが良いのだとか。


『スパークリングチャット』
 元の持ち主が寿命で死亡した際、ピノ様と双葉ちゃんがゴタゴタに乗じてオーナーの座に就いていたりする。

275 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:48:06 ID:CCiAb1qDPe
ものっそい大雑把な過去年表

2070年 エイレーン一家&アカリちゃんが特異点に召喚される。ほぼ同時期にケリンと鳴神も召喚された。

2071年 鳴神が『サンフラワーストリート』に入団。英霊なので当然腕っぷしは強く、あっという間に組織の地位を駆け上がる。
 同時期にケリンが『エルフC4』を結成。こちらも同様に名をはせて行く。


2072年 エイレーン一家がギャング『Iwara』を打倒、影響下にあった『ポルノハーバー』はエイレーン一家がそのまま引き継ぐも暫くの間混乱状態に。

 『Iwara』残党の殆どは猛スピードで勢力を拡大しつつあった『エルフC4』に合流。
 この際、合流した構成員は違法薬物の流通ルートに繋がりを持つ人間が多く(水商売の人間にそう言った薬物を使わせたり、売らせたりして稼ぐのが主収入だった為)これを機に『エルフC4』は違法物品の取引に重点を置くようになった。


2073年 混乱に乗じて『Iwara』の残党がエミヤを殺害。この後にエイレーン一家による残党狩りが行われ、『エルフC4』に逃げ込んだ構成員以外はほぼ排除される事に。


2074年 すずちゃん、ピノ様、双葉ちゃんが特異点にレイシフト。
 ピノ様と双葉ちゃんは『スパークリングチャット』に就職、すずちゃんはニーコタウン設立に奔走。

276 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:48:13 ID:CCiAb1qDPe
2075年 
 『スパークリングチャット』のオーナーが急病で死去。
 ファイトクラブの所有権を巡ってエルフC4とサンフラワーストリートで争いが勃発。
エルフC4が優位に争いを進め、サンフラワーストリートのボスは求心力が低下。
 その隙を付き鳴神がクーデターを実行。この時点で組織内の発言力はかなり大きく、割とあっさりクーデターは成功を納める。

 その後何やかんやあってケリンと鳴神は意気投合し、『スパークリングチャットはエルフC4優位で共同所有とする』辺りで落ち着きそうだったのだが・・・ゴタゴタやっている間にピノ様と双葉ちゃんがちゃっかり実権を掌握してしまっていた。

2077年 シロちゃん、ばあちゃるがレイシフト、現在に至る

277 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 22:26:22 ID:6rhvhfehCK
おっつおっつ、楽しませてもらったで

278 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 09:46:10 ID:aLavt8/v3p
>>277
楽しんでくれたなら嬉しいです!
この後は、幾つか日常回を挟んだ後に特異点解決へ向けて動き出す感じですね

章ボスはかなりfate色が濃くなる予定、、、、と言うより、そもそもこの特異点はfate/stay night から分岐した世界なので当然と言えば当然なんですけどね(匂わせ)

279 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 11:56:46 ID:RcbCE394xz
ただまぁ…スパチャの元主が寿命と病死で混ざっちゃってたのがちょい引っ掛かりますたまる

280 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 17:48:59 ID:aLavt8/v3p
>>279
あ、やべ。完全にミスですねコレ
最初は寿命だったんですが『寿命なら事前に引継ぎ出来ちゃうよな』と思い変更したんですが、どうも書き換えるのを忘れてたみたいです(汗)

281 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 17:57:24 ID:aLavt8/v3p
>>274
修正

『スパークリングチャット』
 元の持ち主が急病で死亡した際、ピノ様と双葉ちゃんがゴタゴタに乗じてオーナーの座に就いていたりする。

282 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:07:26 ID:Q1lZU9/OY/
>>273
「いやはや、負けちゃいましたよ・・・・痛っ」

「全力を出したうえでの敗北、こりゃ言い訳の隙はないね」

 ベットの上に座り足をプラプラと揺らすアカリ、全身の筋肉痛に苛まれながら寝っ転がるエイレーン。
 ここは医務室、ではなく選手待機室の脇に設けられた仮眠室。薄暗い照明、やたらと冷える石造りの床、埃を被った薬棚、ブルーシートを被った荷物たち。『仮眠室』とは言うものの、現在では事実上の物置部屋として扱われている。
 エイレーンとアカリは医務室で目覚めてすぐ、この仮眠室に移る事を希望したのだ。

「しかしまあ、手札全部晒しちゃうとはね」

 目が見えないからだろうか、アカリは微妙にずれた方向へ悪戯めいた笑みを向けている。

「実力は十二分に示せたので結果オーライデース。ここまでやって歯向かって来れるのは・・・サンフラワーストリートの鳴神と、エルフC4のケリン位ですよ」

「あー、あの二人は色々と特殊だもんね、うん。もしかしたら、もうポルノハーバーを襲撃しに行ってるかもよ?」

「ハハハ、流石に有り得ないですよ、きっと、多分、いや、一応事務所に連絡を入れておきマース」

「そーだね一応連絡入れとこっか。多分大丈夫だろうけど────あ、いつもの発作が来るかも」

 会話がふと止まる。突如訪れた沈黙の中アカリが手探りで取り出したのは手鏡。ただの手鏡では無い、アカリ自身の写真を貼り付けた手鏡だ。

283 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:09:49 ID:Q1lZU9/OY/
>>282
「─────」

 じっと、ただじっと見えない目で鏡を見つめる。写真の顔の、それこそ毛穴まで確かめるように。
 見つめ始めて数秒後、アカリに変化が現れ始める。透き通る青目は深い紫に、金を溶かした様な髪も紫へと変わり、スラリとした豊満な体躯は未成熟の少女を目指し縮む。

「アカリはアカリ、ほかの誰でもない」

 囁くように小さな声で、念じるように何度も唱える。エイレーンは何も言わず瞼を閉じて、一切の音を立てないようにしている。


 これは儀式。アカリの宝具、その真なる代償を抑える儀式。アカリの宝具『愛天使』は神の領域に片足を突っ込んだモノ、万物を魅了するという所業はただそれだけで凄まじい。
 自身を美しいと感じる相手に対する魅了はそれ程難しくない、相手の中にある感情を増幅させればよいのだから。だが『愛天使』は違う、知性さえあれば無生物や異種族ですら魅了する規格外。神霊でも無ければとても扱えたものではない。
 故に、宝具を使う度に器は変異を試みる、宝具を扱うに足る神霊へと。
 目が見えなくなるのはあくまで初期症状、変異の初期症状だ。


 50回以上は唱えた頃、アカリは鏡から視線を外し、僅かに上ずった声でエイレーンに問い掛ける。

「ねえ、エイレーン。私は大丈夫かな、ちゃんと戻ってる?」

「ええ、いつもの、そうですね、エロいアカリさんデース」

「ちょ、ちょっとエイレーン! アカリはエロくないよ、そう、ただの超エロだもん!」

 エイレーンがぎこちない冗談で返せば、アカリも歯切れ悪くソレに乗る。

284 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:12:38 ID:Q1lZU9/OY/
>>283
「・・・無理はしないで下さいね」

 別な話題を振ろうとしたエイレーンの口から思わず弱音が漏れてしまう。
 アカリはリスクを認識した上で宝具を使っている、その覚悟に口を挟むべきでないのは重々承知済みだと言うのに。

「ア、アノー、今のは言い間違いと言うか、「大丈夫」

 急いで訂正しようとしたエイレーンをアカリが手で制す。

「アカリは大丈夫」

 アカリは曖昧な笑みを浮かべ、優しい声で優しいウソを吐く。

 宝具の性質や変異中途の風貌を考えるに、変異した先の姿はきっと悪いモノではないのだろう。きっと万物を魅了するに相応しい姿に成れるのであろう。だがそれがどうした。己が己の意図しない方向に変化していくなぞ、ただひたすらに苦痛でしかない。

 故にアカリは宝具の使用を怖れる。代償を払う度に心は後悔と不安で満たされる。今回だってそうだ。『宝具を使用する必要はあったのか』『使わずに勝つ方法は無かったのか』『いつか元に戻れなくなるのではないか』そんな思いで一杯だが、それでもアカリは使う。

285 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:13:56 ID:Q1lZU9/OY/
>>284
(今大会における目標は示威行為、ひいてはエイレーン一家を『精鋭揃いの穏健派』と言う立ち位置に収めること。強者の元には人が集まるし、眠れる獅子を起こそうとする馬鹿はそういない。穏健派としての体裁を保ちつつ武名を轟かせるのに、この大会は適していた・・・そう、適しては居るんだけどね)

(確かに他の団体からエイレーン一家は軽く見られてる。金も碌に持ってないんだから当然っちゃ当然。だけどアカリ達の治めるシマは風俗街、外道な手段を使えば幾らでも金は湧いてくる。大会で実力を見せつけるなんて不確実な手段に頼る必要はなかった。
 結局、エイレーンはシビアであろうとしてるけどさ、やっぱ無理なんだよそれは、人だもん)

(だからこそ、エイレーンはアカリ達が支えないとダメ。割と感情的で、不完全で、優しいリーダー様のためなら多少の無理も致し方無しってね)

 己の友一人に無理を強いるクソに成り下がるなぞ御免だ。宝具で変異してしまった方が万倍マシだ。
 故にアカリは宝具を使う、後悔はすれども躊躇はしない。ベストを尽くす為なら躊躇しない。

「大丈夫だよエイレーン。ほら、ばあちゃるも『自分が何になろうと目的は果たす』見たいな事言ってたし」

「・・・・・ええ、言ってましたね。私も覚えてマース、色んな意味で大人なんでしょうね、強い人で『10分後に選手表彰を始めるぜ! 三位以内の選手は移動をお願いしま、ちょっ、誰だお前等!?』

286 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:15:07 ID:Q1lZU9/OY/
>>285
 突然流れた館内放送、内容がどうも穏やかではない。部屋の外が騒がしくなり始める。
 いったい何だろうかと思い、エイレーンが外を覗きに行くと

「ヒヤハハァッ! 『three day priest』のリーダー、利休・ザ・グレイト様が今日からここの支配者! 俺たちを止められる奴なんざいやしねえッ!」

「「「そこのけ そこのけ 俺らが通る! 平服 恭順 早くせい!」」」

 僧服を盛大に着崩した大柄な男を先頭に、意味不明な歌を歌いながら会場になだれ込む坊主集団がいた。
 最早ちんどん屋にしか見えない珍集団。法事の場にいれば多少様にもなるだろうがここは闘技場。絶望的に浮いている。

「・・・何だろう、目は見えないけど変な人たちがいるのがハッキリ解る」

「えー、新興の面白集団、もといギャングですね。企業の運送車から装備を奪って巨大化した・・・・・幸運な人達デース」

「企業から盗むとか命知らず過ぎない?」

「あの僧服は、カジュアルさを売りにしたボディアーマー『T-ラック』の派生商品。見た目と用途がミスマッチ過ぎてアホみたいに売れ残った商品デース。
 奪われたと言うより、わざと奪わせたんでしょうね。そうすれば在庫処分ついでに保険も下りますし」

「あー、でもなんでこんな所に────あ、戦いが始まった」

 部屋の外から響く怒号、絶え間なく響く銃声。しかし不思議な事に、銃弾が人の肉を貫く音が全く聞こえ無い。
 アカリもエイレーンも戦闘経験は十二分に積んでいる。メジャーな戦場の音を聞き分けるくらいは簡単に出来る筈なのだが。

 不思議に思ったエイレーンが再び会場を覗けば、セバスとエミリーが無双しているのが見える。

287 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:15:47 ID:Q1lZU9/OY/
>>286

「あ、当たらねえ!? 数十挺のアサルトライフルによる一斉掃射だぞ! 象が秒でミンチになる火力だぞ!?」

「目を閉じてから撃ってみてはいかがでしょうか? そっちの方がまだ当たるかと」

「整理運動にもなりませんわね。セバスはさておき私の体は生身。戦いの後には整理運動をしなければ明日に響いてしまいますわ」

 銃弾の雨を散歩でもするかの様に悠々と掻い潜り、萎びた腕を振るって敵を蹴散らす。ただ只管に突貫&蹂躙、シロやスズ相手に見せた巧みな立ち回りは一切使わない。と言うより、使う必要がないのだろう。

「な、南無三・・・・・」

 坊主集団を率いていた男が崩れ落ちる。銃声と怒号に満ちていた会場は一瞬静かになり、その直後に歓声と声援が沸き上がり騒がしさを戻す。

『瞬殺! 圧倒! 大勝利! 流石俺らの英雄!!
 そんな二人の英雄ですらベスト8止まりとなった今大会! 改めて表彰を始めるぜ!!』

「・・・・・そろそろ行かないとですね。私が二人分の表彰を受けて来るので、アカリさんは留守番頼みます」

「りょーかい。あ、そーだ、写真は撮っといてね」

「もちろんデース」

 節々痛む体に喝を入れ、疲れた背筋を直ぐ伸ばし、へたれた口角をキュッと持ち上げる。負けた己を卑下などしない、それが敗者の礼儀。『こんな奴に勝っても嬉しくない』などと思われては申し訳が立たない。
 赤髪なびかせ目指すは表彰台。足取り堂々、威風堂々。さあ、二位の栄誉を受け取りに行こう。

288 名前:閑話休題『もう一つの戦い』[age] 投稿日:2021/12/10 21:16:30 ID:Q1lZU9/OY/
>>287
「『消失』の被害状況はどうなんですか?」

「うーん、酷いね。ほんっと酷い」

 膨大な情報を移すモニター群、整然と並ぶエナドリの缶、座りすぎてぼろくなった椅子。ここは未来保証機関ブイデア。未来予測を始め、時空間への干渉を可能とする不可思議物体『KANGON』を用いて人類破滅の未来を事前に回避する為に設立された機関。

 そんなブイデアの管制室に牛巻りこと木曽あずきは居た。

 ギイギイ軋む背もたれにのしかかると、牛巻は不満げに頬を膨らませる。

「特に酷いのが『消失した事に基本気づけない』って所だね。
 鉄道の路線や道路はぐちゃぐちゃ、地形が変わりすぎて地図は役立たず。なのに、誰もソレに危機感を覚えられない。『昔からそうだった』としか認識できないから」

 数年前から起き出した(と推定される)現象『消失』。人間、施設、土地、消える対象は無差別。消えたモノは最初から無かったと記憶を改変されてしまう。
 今のブイデアはこの現象を食い止める為に奔走している。特異点の攻略もその一環。

「ま、悪い話は置いといてさ、シロピーとばあちゃる君の方はどうなん、あずきち?」

 ぴょこんと跳ねた金髪をいじり気の抜けた声で牛巻は問う。
 『消失』による被害止まぬ今は緊急事態、とはいえ常に気を張るのは不可能。適度に気を抜くのも仕事の内なのだ。

289 名前:閑話休題『もう一つの戦い』[age] 投稿日:2021/12/10 21:17:10 ID:Q1lZU9/OY/
>>288
「『楔』の奪取に向け、順調に進んでますぅ。
 ばあちゃるさんとシロさんの間にマスター契約が結ばれていない位が唯一の懸念事項。でもまあ、ブイデアからの供給だけで事足りてるので、無問題だと思います。
 それと、つい先ほど時計塔から協力声明が届きました」

「魔術師の学び舎にして探究の場『時計塔』。頼もしいね、信頼はできないけど。
 あずきち、相手方の交渉担当は誰?」

「現代魔術科の君主『ロードエルメロイ2世』が直々に来るそうですぅ」

「ロードエルメロイ2世、優秀だけどまだ若いんだっけ。軽視はされてないけど対等にも見られてない感じか・・・・・良し! スケ調整するか! 仕事だ仕事、イエイ!!」

 エナドリの缶を開け一気に飲み干す。やたら長い名称の健康物質とカフェインが細胞のすみずみに染みわたり、脳を強引に叩き起こし、仕事の始まりを体に告げる。
 ボキゴキ肩を鳴らし、さあ「待って下さい」

「───ん? どしたん?」

 仕事に取りかかろうとしたその時、あずきから待ったがかかる。

「外部と連絡が取れるようになった事、本当に言わなんですか?」

「・・・・うん。外部と連絡が取れると教える事は、外部の状況を把握出来ると教えるのと同義。
 正直、今の世界は見てて気持ちの良いもんじゃ無い。今の世界を見せると言う事は、不要なプレッシャーを掛けるのと同じだよ」

「それは解ります。ですが、仲間にウソをつくのは可能な限り避けたいです。ウソが露見した時に不要な軋轢を招いてしまう、と思いますぅ」

 あずきの瞳、掴みどころの無い紫の瞳が牛巻を見つめる。
 その瞳に詰問の色は無い、責め立てる意図も無い。ただの意思確認。だが、答えに詰まるようなら指針変更も止む無し、それくらいの意図は籠められていた。

290 名前:閑話休題『もう一つの戦い』[age] 投稿日:2021/12/10 21:17:51 ID:Q1lZU9/OY/
>>289
「シロちゃん達の戦いが『特異点を解決し、消失させられた世界のパーツを取り返す』モノなら、牛巻達の戦いは『被害を最小限に抑え、一秒でも早く対策を講じて、世界の消失や社会の崩壊を遅らせる』モノ。
 モニターは塹壕でキーボードが銃。この戦線だけは誰にも譲れない。僕たちの戦い、もう一つの戦いさ・・・・・って話でウソがバレた時に茶を濁そうと思うんだけど、どうかな?」

「・・・・まあ、バレた時の用意があるなら良いです」

 牛巻が調子のいい笑みを浮かべれば、あずきは僅かに呆れたような声で返答する。
 



「・・・・それが本音でしょうに。変な所で照れが入るのは相変わらず、ですぅ」

「ん? なんか言った?」

「・・・秘密です」

「ええー、ちょっと笑ってるじゃん。良い事があったなら牛巻と共有してよぉ。牛巻とあずきちの仲じゃないか」

「秘密です」

「むー!」

 ぬるま湯にインスタントコーヒーを溶かし、目分量で砂糖を入れる、豆は深煎り、量は少なめ。お気に入りのマグカップに注いだコーヒーをあずきはゆっくりと飲む。

 牛巻の事は好ましく思っているが、飲料の好みだけはどうにも相容れない。仕事前の一杯はコーヒーに限る。
 そんな他愛も無い事を考えながら一時の平穏を楽しむ あずき であった。

291 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/12/10 21:33:44 ID:Q1lZU9/OY/
ブイチューババトルロワイアルのアーカイブ、何度見てもマジで面白い

結構久しぶりの投稿です! もっとコンパクトにする予定でしたが、想像の五倍位の文量になりました。
後、ちょっとだけ書き方を見易くしました。


細々とした(裏)設定集
『three day priest』
元ネタ:三日坊主
 キリスト系のカルト信者の子供達、所謂二世信者が独立して立ち上げた新興のギャング。
 キリスト教の逆、、、仏教か! と言ういい加減な発想で仏教に帰依した結果、似非坊主の集団が爆誕した。

 役割的にはただの咬ませ&ギャグ要因だが、『力も頭脳も無い奴は運があろうが利用されて終わり』と言う社会のシビア(当たり前)な側面の被害者でもある。


アカリちゃんの変異先
fateのエウリュアレ。
ガチ神霊&視線で魅了する宝具持ちのお方。
ガウェインことカチカチ太陽ゴリラ攻略でお世話になった人は一定数いるはず。

292 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/12/10 21:51:16 ID:46oYS5V/ka
おっつおっつ、シリアス含めいろいろ接種できたわ、牛巻あずきちかわいい。バトロワはいろんな意味で感動した。

293 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/12/10 22:28:10 ID:Q1lZU9/OY/
>>292
刃牙の最大トーナメント編に、ジョジョのスタンド異能バトルとワンピースの人間ドラマぶち込んだら面白いだろうな、と言う発想の元産まれたモノなので感動してくれたなら嬉しいです!

牛巻あずきちのやり取りは昔から書きたかった部分なので、達成感半端ないです。

294 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:12:16 ID:LtNW6BfvmW
>>290

「色々あったけど取り敢えず目的を達成出来て良かったすよ」

「だね、そう言えばピノちゃん。『楽園』にはいつ乗り込むの?」

 暖かに光るランプ、趣味の良い調度品、革張りの椅子。ここは屋敷、ピノの屋敷、その応接間。
 調度品の数は最低限、見た目も落ち着いた物を使用。そんな居心地の良い応接間の中で、上品なマホガニー製の机を取り囲み座っているシロ、ピノ、双葉、スズ、ばあちゃるの五人。

 多少のトラブルは起きたものの、その後はつつがなく表彰式は終了した。今はひと段落ついて休憩中といった感じだ。


「四日後ですね。『楽園』への入居権を得るために金を集めていた訳ですが、その一環として屋敷の家財や宝飾品を相当数売り払ったんですよ。
 ただまあ、色々あって相当遅延しましてね」

「あー、もしかしてケリンと鳴神の妨害?」

「その通りですわ・・・鑑定士を脅して二束三文の査定を出させたようでして。撤回させるのが大変でしたよ。
 それはそうと、今晩から始まる祭りは知ってますか?」

 幼げな美貌に大人びた笑みを浮かべ、ピノはそんな事を言う。オーロラ色の瞳を細めて、心底楽しげに。
 シロが聞き返そうとするよりも早く双葉が身を乗り出して反応する。桃色の瞳を輝かせて、待ちきれないとばかりに。

「三日間に渡って開かれる、せいだいな祭り! ごちそう見せ物なんでもあり、街の50周年を祝う大宴!」

「へぇー! 何時ごろから始まるの?」

「後・・・・一時間後くらいかな。身支度とか移動とかかんがえると、そろそろ準備し始めたほうがいいかも」

「OK! 善は急げ、早速準備しよう!!」

295 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:13:01 ID:LtNW6BfvmW
>>294
 いつの間にか眠っていたスズを起こし、身支度を整え、外に出れば、そこには祭りを待つ人々が居た。

「わぁ・・・・・」

 空は夕焼け、楽し気な蜜柑色。ネオンやら広告やらの無粋な光は身を隠し、提灯やら屋台やらの光が取って代わる。
 浮足立った人々。小銭を握り締めて辺りを見回す子供、顔を綻ばせる大人に、楽しげに話し合う若者達。
 立ち並ぶ屋台。りんご飴、チョコバナナ、焼きそばと言ったお馴染みの屋台に混じる、『夢見保証 ドリームサンド』『天然肉配合 ハート焼き』『出張占い ルルンプイ』などの変わり種。とても気になる。

(縁日で光るヨーヨーとか親にねだってたけなぁ。んでその後、三日と持たずに電池と紐が切れて・・・懐かしいっすね)

「どこからまわろうかな」

「無駄遣いは禁物ですよ」

 バンッと景気のいい音を立てて、空に花火が上がる。赤白黄色、飛んで咲いてすぐ消える。毎夏ごとにみかける花火、幾度見てもやはり綺麗だ。
 空を見上げていると、どこか聞き慣れたアナウンスが聞こえて来る。

296 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:14:14 ID:LtNW6BfvmW
>>295

『よお! お は ク ズ、天開だ。スパークリングチャットの名物司会にして、今日の司会に抜擢された俺!!
 只今より始まるは祭り! グーグルシティ50周年祭! 開催会場は──街全域!! 無数の出し物! 無数の屋台! ド派手な神輿!! 存分に楽しめ!!』

『爪楊枝からミサイルまで、エブリカラーファクトリー! 法の天秤を格安でお届け、営利法廷 グロリアース ワンスモア! 只より安い物はない、実験病棟 ブラッドスクウェア!!
 お掃除、怪物退治にピザ配達、なんでもどうぞ、職業斡旋所 上島職安! 夢と希望の原産地、複合メディア カヴァ―カンパニー! 何でも預かり&#12348;、パイプホール トレーダーズ!! その他多くのスポンサー様!!!
 こんなに大規模な祭りを開けたのもスポンサー様のお陰! ちゃんと褒め称えるんだぞ!!』
「ぶち込んできたな」「スポンサーいないと興行は成り立たないからネ」「ギャラ掛かってるんだろうな」

『都合の悪い事は聞こえないぞ! ヨシ! 50周年祭開始だ!!』

 そこら中から上がる喝采、持ち上げられる神輿の群れ、準備万端の屋台達は営業を始めだす。夕暮れは夜へと移り、にも拘らず街は刻々と明るさを増して行く。


「シロ達も回ろっか」

「そうしましょうねハイハ・・・あれ、何か見覚えある人が神輿の上に」

 シロがばあちゃるの手を引き、祭りを回ろうとしたその時、ふと神輿の上に見えた人影。見間違いようもない。セバスとエミリーだ。
 右側にセバス、左側にエミリー、真ん中には黒い外套を被った人形が載っている。人間大の大きさを持つ木の人形だ。顔の付いたマネキン、と言った方が正確かも知れない。

「あの二人が担がれてるっす、やっぱ人気あるんすね。しかし、あの人形はなんですかねハイハイ」

297 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:14:57 ID:LtNW6BfvmW
>>296
「あの人形は『無尽の英雄』を模ったモノだねぇ。この街が設立される前に活躍していた英雄、エミリーちゃん達の一世代前にあたる人だね。
 無尽の英雄、尽きぬ刃を振るい、影を祓う者。誰もが憧れる正義の味方・・・って昨日読んだ歴史漫画に書いてあったよ」

 知識を披露できるのが嬉しいのだろう、シロの声は自慢げだ。知識の仕入先が漫画と言うのが何とも微笑ましいが。


「はえー、やっぱシロちゃんは物知りですねハイハイ・・・でもなんで『影を祓う者』なんすかね? カカラの事を影と表現するのはちょっと違和感があるような」

「それだけ恐ろしい、得体の知れない存在だったって事だよ。街設立前後の時期はねぇ、『影の時代』なんて言われてたぐらいで・・・ん?」

 シロの声がハタと止まり、辺りを見渡し始める。スズが居なくなっているのだ。
 前後左右、どちらを見てもスズの特徴的な緑長髪すら見えやしない。ついでにピノもいない、なんなら双葉もいない。

 そう、シロとばあちゃる、二人は話している間に置いてかれてしまったのだ。
 いつもの数倍は人通りの多い今、いつもの数倍は浮かれてる今。うっかり置いて行かれてしまうのも無理はない。

「ま、まさかシロちゃん・・・これ」

「みなまで言うな、わかってる・・・」

 二人は呆然として天を仰ぐ。ああ、花火が綺麗だ。

「どうしよっか」

「どうって、そりゃ、探すしかないっすよ」

 二人が選択した行動は捜索。周囲の人に迷惑を掛けない程度に走り、他の皆を探すと言う物。ド定番の行動ではあるのだが、これがとことん裏目に出た。

298 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:15:56 ID:LtNW6BfvmW
>>297
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「あれ? シロさんがいませんよ」

「ほんとうだ、探さないと」

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「いました!」

「え! どこ?」

「右のほう・・・いや、左かも。すみません、ちょっと確かめてくれませんか?」

「どこ!?」

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「人波になんか負けない・・・ウワー!」

「ピノさんが人波に呑まれたッ!?」

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「はふっ、はふっ、うま!」

「双葉お姉ちゃん、食べるのもいいけどまずは探さないと・・・もぐもぐ」

「ピノさんの言う通りです・・・熱ッ!?」

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「待て、そこの馬男! 俳優になる気は無いか!」

「え? オイラですか?」

「『馬と白衣──Love in cage──』と言う成人向け映画を構想していてな。頭部を馬にされた男と狂った科学者が愛を育むラブロマンスなんだよこれが!!
 まさにお前さんみたいな人が相応しいだろう!?」

「謹んでお断りさせて頂きます」

299 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:16:41 ID:LtNW6BfvmW
>>298
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「やっっと合流出来ました・・・て、アレ? すずお姉ちゃんがいない」

「まさか、はぐれた?」

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 すれ違い、二次遭難、その他大小トラブル、何やかんやあって数時間後。

「今度こそ全員揃った、よね?」

「ええ・・・今度こそ」

 大通りから少し離れた所、人通りの少ない路地裏に五人は集まっていた。
 室外機の唸り声と祭囃子が微かに聞こえる。

「迷惑かけてホント申し訳ないっす」

「気にしないで下さい、こういう日もありますよ。
 ・・・・・とは言え、ちょっと疲れましたね。目ぼしい所に寄りつつ、今日はもう帰りましょうか」

 紆余曲折の末に集まった五人、大会の疲労も未だ癒えていない。正直かなり疲れている、帰るべきだろう。

「まつりは明日も明後日もあるし、もんだいない」

「そうですね」

 凡その合意に至った所で、大通りに向けて足を「ん?」


 ────踏み出そうとした足の前に置かれていた、四角い包み。手のひらサイズのソレは茶色い紙に素っ気なく包装されていて、脇には手紙が添えられている。内容はこうだ。

『拝啓 残暑の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 以前の無礼をお詫びしたく、ささやかな贈り物をさせて頂きました。
 怪物退治に持ってゆけば多少の助けになるやもしれません。
 次回お目にかかる時の思い出話を楽しみにしております』

300 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:18:13 ID:LtNW6BfvmW
>>299
 書いた人の名前も宛先も書かれていない怪しい手紙。そして包みの中もこれまた奇怪。

「ナニコレ?」

 青い蝶の髪飾りと一枚の名刺。そして黒い箱。小さな立方体が組み合わさって出来た黒い箱だ。

 髪飾りと名刺はともかく、黒い箱はどう考えても怪しい。普通に考えれば捨てるべきだ。だが───

「貰っとこうかな」

「シロちゃん!? どう考えてもヤバいっすよ」

「大丈夫」

 よく考えれば捨てるべきでない事が解る。

 青い髪飾り、よく見ればアカリが付けていたものと同じだ。そして名刺、ここにはばあちゃるの名前が刻まれている。
 ばあちゃるとその身内以外で名刺を持つ人物、真っ先に候補として挙がるのはエイレーン。準々決勝の際ばあちゃるが武器としてエイレーン達に投げつけていたからだ。

 これらを総合して考えると、この手紙の送り主はエイレーンとアカリでほぼ間違いないと解る。凡そ『手助けをしたい、でも恩を売ったと思われたくない』と言った感じだろうか。名前を隠し、その上で『お詫び』なんて体裁を取ってるのもそう考えれば辻褄が合う。

「で、でもほら・・・・知らない人からのプレゼントは受け取っちゃ駄目っすよ」

「大丈夫ったら大丈夫」

「シロさんの言う通り大丈夫ですよ、多分」

「はやくいこー」

「誰が持ちましょうかソレ」

「ちょっ、え!? ばあちゃる君少数派ですか!?」

 ばあちゃる以外の皆もシロと似たような反応だ。同じ結論にたどり着いているに違いない。
 そんな思考をしつつ、シロは贈り物をポッケにしまって悪戯っぽい笑みを浮かべる。

301 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:23:30 ID:LtNW6BfvmW
>>300
 大丈夫な理由を教えても良いが、教え無いのもきっと楽しかろう。小さな秘密は女の秘訣、ともいうし。

「早く行こうよ! 置いてっちゃうよ!」

302 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:28:20 ID:LtNW6BfvmW
>>301
 ばあちゃるの脇を通り抜け、賑やかな大通りへと駆け出す。白いアホ毛を挑発的に揺らしながら。
 溜まりに溜まった疲労も今だけは感じない。ただ楽しい。

303 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:29:10 ID:LtNW6BfvmW
>>302
「追いついたらこの箱あげちゃおっかなー!」

「待って下さいよシロちゃん! なんで、そんな、速いんっすか・・・!!」

「はしゃいでますねー。シロお姉ちゃん」

「だねー」

「白馬良き・・・・・」

 既に息が上がり気味のばあちゃるが後ろを追いかける。その後ろをのんびり歩く三人。

 それはまるで、祭りではしゃぐ家族の様な光景だった。

304 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:30:12 ID:LtNW6BfvmW
実家に行ったり、大学の課題を片づけたりで投稿がだいぶ空いてしまいました。
.liveの福袋、どれを買うかが最近の悩みです。

ちょっとした裏設定 企業編

『エブリカラーファクトリー』
元ネタ:えにから(にじさんじの運営)
 グーグルシティにおける大手工業。怪物の出現によって色々とヤバくなった町工場達が結束して生み出した組織。虹の色をモチーフにした7部門に別れている。

レッドファクトリー:軍事用品 オレンジアーミー:試験運用部隊の管理 イエローファクトリー:大衆向けの日用品 グリーンファクトリー:医薬品の生産 ブルーファクトリー:富裕層向けのハイグレード品 インディゴ・ブレイン:経営陣 パープルゲイズ:監査部門

 7部門に別れているのは『そうした方が印象的で、お客さんに覚えてもらい易いから』と言う広告戦略によるもの。


『グロリアース ワンスモア』
元ネタ:フラッシュ世代(グロリアス→光輝く→フラッシュ)
 輝かしい地球をもう一度、と言う意味の社名。

 怪物の出現によって社会が崩壊した際、なんとかグーグルシティに逃げ延びた政府官僚達が創り上げた会社。『早く裁判所作らないと私刑が横行して治安終わる。どんな形でもいいから裁判所作らないと』と言う信念の元造られた。
 従来の裁判よりもお金がかかること以外は割とまとも。判決を守らない相手に私設軍隊送り付けるアグレッシブさも持ち合わせている。

305 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:30:21 ID:LtNW6BfvmW
『上島職安』
元ネタ:アップランド
 グーグルシティ創設期、街の外壁を作る計画を行った。上島土木(後の上島職安)はその計画のまとめ役だった。
 危険な計画を成し遂げた信用と、まとめ役をしていく中で得た人脈を利用して職業斡旋の副業を始めたのが上島職安の始まり。
 職業斡旋の方が儲かるようになってからは上島職安と名を変えた。

 斡旋の形態としては、なろうの冒険者ギルドin近未来といった感じ。

『カヴァーカンパニー』
元ネタ:カバー株式会社(ホロライブの運営会社)
 ネット、テレビ、新聞、色んなメディアが合体して出来てきた会社。現実のテレビ局と大体同じ。

『パイプホールトレーダーズ』
元ネタ:排水溝(アレな性癖の人達が集まる投稿サイト、調べる時はグロ注意)
 地下水道に会社を構える変った所。貸金庫と融資、資産運用が主な収入源。末端の社員に至るまで全員血のつながりがあったりする。一族経営(文字通り)。

 グーグルシティ以前の地下水道、グーグルシティになってから造られた地下水道、由来不明の地下通路・・・・・等々幾つもの通路が複雑に重なり合っており、そんな地下水道に金庫を分散して配置することで殆ど無敵のセキュリティを誇っている。

306 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:32:09 ID:LtNW6BfvmW
後、いつになるか解りませんが、今投稿しているssを基にRPGを作るつもりです。

307 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/12 17:13:00 ID:CcUkdOFzXY
おっつおっつ、いろいろあって見るの遅れちゃってたぜ……祭り行きたいなぁ

308 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/12 21:53:23 ID:L8wTNdZgxB
>>307
感想書いてくれるだけでかなり有難いです・・・・・誰にも見られないのは批判されるより怖いですから

今回は『駅前とかでやってる祭り』をイメージして見ました!
私服の人と浴衣の人が混ざって歩いて、仕事帰りのサラリーマンが焼きそばや焼き鳥を一つ二つ買って帰る。家の窓を開ければ花火の音が微かに聞こえる。
ちょくちょく変った名前の食べ物が売ってるけど、いざ食ってみると普通の味。でも美味しい。

そんな祭りが個人的に好きです

309 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:07:17 ID:dFaIPBrddF
>>303

 屋敷に戻り、眠りに付き、目を覚ませば外は楽しい祭り。一日目程では無いが、それでも充分賑やかな光景だ。

「今日こそ皆で英気を養いに、と言いたいところですが、わたくしは金の受け取りに行かないとなので」

「家財の売却費だよね。シロ達も付き合うよ?」

「ああ、いえ……大丈夫です」

「ホントにぃ?」

「……わたくしは英霊ですよ、大丈夫ですって。ただ、ばあちゃるさんとエミリーさんはついてきて下さると嬉しいです、帰り際に用事があるので」

 ピノは何処か歯切れの悪い返答をし屋敷を出る。メイドのエミリーとばあちゃる、二人を連れて。




 エミリーの運転する車に乗って暫く揺られ、辿り着いたのは酷く寂れた広場。『街全域が会場』と謳われた祭りの喧騒もここまでは届かない。

 街の外壁際に位置する寂れた広場。錆びたトタン屋根のあばら家が疎らに並んでいる。そこらで座ったままジッと動かない浮浪者達、動く気力も無いのだろう。灰色の空気が満ちている。
 その広場にただ一つ、店が建っていた。黄ばんだプラスチックの看板に擦れた字で『質屋』と書かれている店だ。中は薄暗く商品は殆ど無い。店員も青白く&#30246;せた男一人だけ。

 そんな店の中に三人は居た。

「……何をお求めで?」

「赤のスーツ、シミ抜き済み」

「あいよ」

 ピノがそう言えば、&#30246;せた男は億劫そうに腰を上げ、札束の詰まったスーツケースをエミリーに渡し、裏口のドアを開ける。
 今のやり取りは所謂『合言葉』。子供の秘密基地から悪人のアジトまで、秘密の場所を隠す常套手段だ。

「売却金全額だ。確認したらとっとと通りな」

「………問題ありません。行きましょうピノ様、ばあちゃる様」

 裏口のドアから伸びる道、長く暗い道を歩く。

310 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:07:53 ID:dFaIPBrddF
>>309
「それにしてもアクセス悪すぎですわ」

「アクセスの良い所は粗方潰し済で御座いますから」

「恨みとか買わないんですか?」

「物凄く買いますよ。報復で死に掛けた事も何回かあります。
 可燃物満載したトラックで突撃された時なんかは、本当に死ぬかと思いました」

「うわ、良く火傷跡とか残りませんでしたねハイ……と言うか何処を潰したんすか? 後、今どこに向かってるんでふかね」

「暗黒街ですよ、過去に潰したのも、これから向かうのも」

「暗黒街!?」

 そんな話をしながら歩き、辿り着いた暗黒街。人呼んで『ガイチュウ街』。グーグルシティ外壁の『中』に存在する場所。

 かつては外壁を作る為の拠点として作られた場所。カカラの脅威に晒されながらも壁を作る労働者たち、命を張る彼らに夜の安息を。そんな思いにより、労働者の住む場所でもあった拠点は真っ先に壁で囲われることになった。
 この拠点から徐々に壁を伸ばすことで街全体を囲み、最後は出入口を全て閉ざすことで外壁の一部となり、拠点は役目を終える事になる。だが、中の建物を壊さずに放置したのが問題だった。閉ざされた出入口は何時しか開かれ、放置された廃墟は悪の温床となったのだ。
 街の中にある街、そして人の善意を踏みにじる害虫の巣。二つの意味を込め人はこの街を『ガイチュウ街』と呼ぶ。


 壁に囲まれたここは日中でも薄暗い。襤褸切れを着た娼婦に男娼、趣味の悪い服に身を包んだ男、何処か遠くを見てニヤニヤ笑う狂人、その他ロクデナシ&チンピラ多数、何処を見ても殆ど碌な人間が居ない。どす黒い空気が満ちている。
 少し耳をそばだてれば、これまた碌でも無い会話ばかり聞こえる。

311 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:09:08 ID:dFaIPBrddF
>>310
「あの嬢ちゃん良いなァ、焼いて喰いてえよォ」「止めとけって、お前が狙おうとしてるの有名人だぞ。手練れの槍使いって噂だ」「そうか、じゃあ煮て食うかァ。隣りの婆と馬で出汁とりゃ旨そうだ」「そうじゃねえよ」

「今年もやるぜ、無法者が嫌いな奴ランキングゥ!! 主催者はこの俺! 新進気鋭の男───鳴神様だぁ!!」
「第一位『スパークリングチャット』、蜜蜂と蟷螂のクソッタレを抱え込んだウゼエ奴ら。どうやったのかは不明! ま、弱みでも握ったんだろうな! な! ・・・・・おいスパチャの奴ら、聞こえてんだろ無視するなよ、ちょっと傷つくだろ」
「まあいいか、第二位『サンフラワーストリート』! 俺の組織だな。何々、『新参者の癖に出しゃばるな』、既存の奴らが弱すぎるせいだろ。『強引過ぎるやり方が受け付けない』、無法者が何言ってんだ。『リーダーが強いだけで他は雑魚』、俺が強すぎるだけだ・・・・・あと、ここに投票した奴らは明日ボコしにいく」

「今日は街設立50周年! 奴隷50%オフだよ!!」「ウマ人間スレイブリィダービー50周年杯!! 飛び込み参加もOK!」「一つ食べれば天国! 二つ食べたら大天国!! 三つ食べれば本物の天国に行けるかも!? 『ヘブンハーブ スナックタイプ』各種フレーバー好評発売中!!」

「賭博で有り金全部スッちゃった。マジ矢場」「うける。人生オワオワリじゃん」「それがそうでもないんよ。カッコイイお兄さんから美味しい仕事貰えてさ」「なにそれ、うらやま」


「マジで物騒な場所っすねここ」

312 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:09:40 ID:dFaIPBrddF
>>311
 ばあちゃるは固唾を飲む。スーツの裏に隠してある武器、シロから貰った拳銃に手を伸ばし、コッソリと弾を充填して安全装置を外す。撃ちたくは無いが、何時でも撃てるようにする。
 周囲を警戒し始めたせいだろうか、胡散臭いケミカルやら血やらの匂いが今になって鼻をつく。靴越しに伝わる吐しゃ物や生ゴミの感触も不快だ。

「ピノ様、早く用事を終わらせて帰りましょう」

「用事?」

「着いたら教えますよ」

 ばあちゃるの質問を往なし、足早に向かう先はとある道具屋。
 腐敗臭漂う大通りを進み、何本か路地裏を抜け、そうしてやっと辿り着く店だ。

「ここが目的地っすか?」

「そうです」

 『Kessel des Leben』と看板には書かれている。ぱっと見ただの寂れた雑貨屋。閉じたシャッターに書かれた動物の落書きが何とも言えない味を出している。
 怖い場所にある割には何てことない見た目で気が抜けたな、なんて思いながら汗蒸れした首を袖で拭いていると───

『リズライヒの奇跡、第三の魔法をもう一度、終わりの終わりをもう一度』

「へ?」

 ───ピノが何かの文言を唱え、その直後にシャッターが揺らめき&#25620;き消える。

「早くしないと閉じちゃいますよ」

「何も怖い事は御座いません。早くおいで下さいませ」

「あ、はい」

 ピノとエミリーは既に店に入っている。ばあちゃるは平坦な声で返事をし、二人に続く。人間、理解を超える事象が起きすぎると逆に落ち着くものだ。

313 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:13:18 ID:dFaIPBrddF
>>312
「いらっしゃいませ〜。ご予約のピノ様ですね、お待ちしておりました」

「お世話になります。すみませんね、急に予約入れてしまって」

「この時期は大して客も来ませんから、気にしないで下さい」

314 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:13:43 ID:dFaIPBrddF
>>313
 店内に入り、まず気付くのは内装。考え抜かれた配置のショーウィンドウ、程よい明るさの照明、丁寧に磨き上げられた黒檀の床。並べられた商品に自然と目が留まる。高級店にだって見劣りしないだろう。

315 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:14:38 ID:dFaIPBrddF
>>314
 店員の見た目も中々凄い。上品な大人の女性で、髪は白く眼は赤い。紫紺の貴族服と白のロングスカートが貴族的な優雅さを醸し出している。

 それらを認識したばあちゃるは、馬のマスク越しに頭を掻きながら

「で、ここは何処なんすかねピノピノ……気になる事が多すぎてそろそろパンクしそうっすよ」

 と言った。

 外観と内装の差と言い、明らかに魔術由来の隠し方がされてる事と言い、どう考えても尋常の場所では無い。怪しさのバーゲンセール状態だ。感情は一周回って落ち着いているが、論理的に考えれば焦るべき状況なのは間違いない。

 冷静に困惑するばあちゃるに対し、ピノは悪戯っぽい笑みを浮かべて質問を返す。

「どこだと思います?」

「うーん……魔術師用の店、なんてどうですかねハイ」

「大正解、ここは魔道具屋です。ばあちゃるさん用の装備を見繕ろおうと思いましてね」

「なーるほど、そういう事でしたんすね。正直どこに連れてかれるか不安でしたよハイ。
 いやまあ、ピノピノを信頼していなかった訳じゃ無いんすけどね」

 ほっと胸をなでおろし銃の安全装置をかけ直しながら、ばあちゃるはそう言った。銃を使わずに済んでよかったと思いながら。

 ピノの事は仲間としてある程度信頼している。だが、それでも不安を感じずには居られなかった。
 ばあちゃるは弱い。ピノにとっては散歩に行くぐらいの気軽な場所でも、ばあちゃるにとってはそれなりの覚悟をすべき場所だったりする。今回の『ガイチュウ街』の様に。強者と弱者で見える風景は違う、それは動かしようの無い事実だ。

316 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:14:58 ID:dFaIPBrddF
>>315
 それにばあちゃるはピノと違い、自分の意思で特異点の戦いに参加した訳では無い。巻き込まれただけ。無論、ばあちゃるも戦う覚悟はある、だがそれとて。
 傷つくのは怖くないが、死ぬのは怖い。怪物相手なら殺しすら躊躇しないが、人を傷つけるのは嫌だ。一般人(ばあちゃる)の覚悟なんてこれでも上等な部類だろう。


 そんなばあちゃるを見てか、さっきまでの笑みに少し寂し気な色を足し、ピノは口を開く。

「別に良いですよ、知り合ってからまだ短いんですから。無条件に信頼されても困っちゃいますわ。
 ……ま、それは良いとして。エミリーさん、使える予算はどれ位になりますか?」

「今回の売却金から、楽園に行くための金額を引くと……ざっと200万ほどで御座いますね」

「200万、ですか。その金額だと質高いのを一つ買うのが良いですわね。
 店員さん、200万で買える物ってありますか?」

「そうですね……これなんかどうです?」

317 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:18:52 ID:dFaIPBrddF
期末テストがあり、だいぶ遅くなりました。
それはそうと、シロちゃんの占いで「シロちゃんが異世界転生する話が出るかも!?」と言われてて、ちょっとだけ驚きました

ちょっとした企画

ばあちゃるが手に入れる魔道具の投票を募集します。三個候補を提示するので気に入ったのを選んで下さい。
投票が無かった場合は自分で決めます。

魔術回路付き手袋:魔術師の肉体を色々()して作り上げた手袋。魔力を自己生産し貯蔵する性質があり、所有者の魔術を拳部分に限り強化する(ばあちゃるなら硬化)ことが出来る。

紅いハンカチ:無尽の英雄が身に着けていた聖骸布の切れ端、ソレをハンカチに仕立て直したモノ。魔力を流し込むことで、英雄の動きや身体能力を刹那の間再現することが出来る。強力だが燃費は悪い。

破邪の蹄鉄:
 メジャーな魔除けである蹄鉄に魔術的な補強を施した魔道具。聖ドゥンスタンが悪魔を打ち付けるのに使った蹄鉄……のレプリカを使用している。
 悪魔や異界の存在由来の力に対して耐性を得る。また、いざという時に幸運を授けてくれる。さらに交通安全の効果もある。
 メジャー過ぎるが故に神秘性が少なく、一つ一つの効能はそこまで強くない。だが、ばあちゃるの被ってる馬マスクとの相性がかなり良い為、それなりに効果が増強されている。

318 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 00:29:51 ID:dFaIPBrddF
(裏)設定集

ブラッドスクウェア
元ネタ:YouTubeの再生ボタン(赤い四角→血の四角)
 グーグルシティ最大の病院。治療費がタダになる代わり、治療後に人体実験を受けさせるサービスで有名。
 人体の機械化技術を確立させた病院でもあり、研究機関としての側面も持っている。

 実験を受けてる間は衣食住が保障される為、疑似的な生活保護としても利用される。
 ただし、一度の実験での死亡率が1割を超えることがザラにあり、倫 理観が緩いグーグルシティにおいてもヤバい場所扱いされている。

 グーグルシティの親が子供を躾ける常套句の一つとして、「悪い子はあの病院に入れるよ」と言うものがある。

319 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 14:59:29 ID:T.ytaER2U3
おっつおっつ、シロちゃんなら異世界でも大丈夫だろうなぁとか考えてた。個人的にはうい先生の占い結果は草。装備は紅いハンカチ気になるけどバグばあちゃるになったりしないかなと不安。

320 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 15:09:07 ID:QvDeu2L5wC
>>317
破邪の蹄鉄が良いっすね
他の二つと比べて完全に危機回避に特化してるけどそれがなんか馬っぽい

321 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 17:32:25 ID:j6kxhjkHTk
>>319
 一瞬とは言え他人の記憶、しかも英雄になるくらい我の強い人間のを頭にぶち込むので実際ヤバいです。
 下手すると桜ルートのエミヤさん見たくなります。

 なので、魔力を流し込んでも刹那の間しか発動しないよう、製作者がセーフティを掛けています。
 一瞬発動する位なら、多少夢見が悪くなったり頭痛がする程度で済んだり済まなかったり。

322 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/31 17:39:53 ID:j6kxhjkHTk
>>320
蹄鉄に関してはカッコ良さよりも馬らしさを重視したアイテムなので、そう言ってもらえると嬉しいです

因みに、
蹄鉄:本人らしさ重視 ハンカチ:ストーリー重視 手袋:カッコ良さ重視

となっております
後、投票で同数の物が有ったら、webサイトのサイコロでどっちにするか決めるつもりです

323 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/10 22:53:01 ID:viikVpJ9Nl
>>316
 そう言って白髪の店員が差し出して来たのは、古びた蹄鉄だった。
 赤錆の浮いた蹄鉄。ジッと目を凝らせば、槌に叩かれた無数の跡が見える。ルーンや聖句と言った魔道具感のある特徴は見受けられない。普通、そう表現する他に無い。だが普通な見た目が逆にリアリティを感じさせた。

「魔道具って意外と普通の見た目なんすね。まあ、使い易くて嬉しいですけど」

「普通な見た目の方が良いんですよ。下手に目立つ見た目にして、魔術の存在が露見したら事ですし」

「あー、バレたら騒がれそうですもんね……でもカカラとかの怪物が居るのに、わざわざ魔術だけ隠してもそんなに意味ない気が」

「魔術は知られ過ぎると効果がちょっと弱くなるんです。魔術ってのは神秘、解らないけど凄いって感じが大事ですから。
 そうでなきゃ───こんな場所に店なんて建てませんって。人通りが増える度に店の場所変えて、気が付いたら暗黒街の僻地ですよ、ビックリです」

 店員は紅い眼を嫋やかに細め、手を口に当てカラカラ笑う。やや砕けた口調が妙に似合う。個人経営店特有の距離感、とでも言えば良いのだろうか? とにかく居心地よい。


「ま、それはそうとして。魔道具の解説をさせて頂きますね。これは、聖ドゥンスタンが悪魔を扉に打ち付けた蹄鉄……のレプリカを魔術で本物に近づけた逸品です。
 悪魔由来の力への耐性、窮地での幸運、交通安全など様々な効果があります。お客様は馬の被り物を付けているようですし、蹄鉄との相性はかなり良いと思いますよ」

 そう言われてみると、この古びた蹄鉄も神秘的に見えてくる。店員に了承を得て蹄鉄を手に取れば、金属の確かな重みが手に伝わる。持った所で特に何も起こりはしない、だが妙にしっくりくる。これが『相性が良い』と言う事なのだろうか。

324 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/10 22:54:21 ID:viikVpJ9Nl
>>323
 正直な所、ばあちゃるはこの魔道具を気に入り始めていた。傷つけるためで無く、守るための力を持っている所に。
 非暴力を通せる程ばあちゃるは強くないし、自覚もしている。だが、それでも、暴力は出来るだけ振るいたくない。各々の矛盾から目を逸らして今日を過ごす凡人の一人、それがばあちゃるだ。
 そんな矛盾を僅かに解消してくれる魔道具、それがこの蹄鉄。少なくともばあちゃるにとってはそうだった。

 とは言え、ばあちゃるはもう一つ困った『矛盾』を抱えていた。こちらは些細な物ではあるが。

「……ピノピノ、『楽園』に行くために金が入り用なんですよね? 本当に買って貰って良いんですかねハイ」

 ばあちゃるはオドオドとした声でそんな事をピノに囁く。

 ……詰まる所、『自分より年下の人間に金出させるのは、人としてどうなの?』と言う矛盾である。散々お世話になっておいて今更ではあるが、目の前で金を出して買って貰うとなると流石に『矛盾』から目を逸らせなくなる。
 要は『大人の小さな意地』と言う奴だ。真に下らないが、本人からすれば大事である。


 それを察したピノが苦笑いして

「お金は足りてます。大人しく奢られて下さい」と言った。

「でもほら、オイラの保険金解約すれば200万くらい「ここ特異点ですよ、どうやって解約するんですか……もう」

「あ、言われてみればそうですねハイ」

 ピノの苦笑いに仕方ない物を見る様な、それでいて少し嬉しそうな目が加わる。

「過去でも相変わらずの……じゃなくて、シロお姉ちゃんとそっくりの天然具合ですわね」

「……? シロちゃんって天然ですかね? しっかりした子だと思うんすけど」

「似た者同士だから解らないだけですわ……それは良いとして、とにかくこれの代金はわたくしが出します」

325 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/10 22:55:20 ID:viikVpJ9Nl
>>324
 会話に一区切りを付けたピノが指を鳴らして、エミリーに札束を差し出させれば、店員はにこやかにそれを受け取り

「税込198万です……それと、他の商品もお買いになりませんか?」

 と答える。


 その後は『蹄鉄を取り付ける金具付きベルト』やら『英雄の動きを一瞬だけ再現できる魔道具』やらのセールストークを躱しつつ支払いを済ませ、三人は店を───

「お客様」

 ───出る直前に声を掛けられた。

「その被り物、魔道具で御座いますよね。被り物に違和感を抱かせない意識改変、魔道具であることを隠す隠蔽、夢見を制御する力、マスク越しに視界や聴覚を確保する力、記憶や精神への干渉を弾く力……戦闘向けの効果こそありませんが、かなり強固な概念が込められている、当たってますよね?
 もし宜しければ、製作者を教えては頂けないでしょうか。それ程の物を作れる人間とならば、有意義な語らいが出来そうです」

 紅い眼をルビーの様に煌かせて店員はそう言うが、ばあちゃるには製作者の心当たりなど無い。思わず怪訝な表情を浮かべてしまう。
 そもそも、これはいつの間にか癖で被るようになった物で……いつの間にか? いつの間にか、こんな印象的なモノを被り始めるだろうか。考える程違和感が止まらない、大会でエイレーンに異常を指摘された時と同じだ。だが狼狽える事は無い。

「スミマセン、言えないです、ハイ。色々と事情がありまして」

「……ああ、ごめんなさいね、変なこと聞いてしまって。お詫びと言っては何ですが、次回は一割引きしますね」

「おお、太っ腹かつ商売上手ですね」

326 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/10 22:55:51 ID:viikVpJ9Nl
>>325
 怪訝な表情をしまい込み、ばあちゃるは平然と答える。
 大会の時と違う反応、それも当然。あの時既に『自分が何になろうと目標に向かい歩く』と決めた。だから、ばあちゃるの半端な覚悟でもこの程度の異常なら受け入れられる。
 この被り物の来歴は解らない、それがどうした、害が無いなら使えばいいだけだ。思考停止かもしれないが、ただ恐れて避けるよりかはずっと良い。


「ピノ様、ばあちゃる様、そろそろ帰りましょう。折角の祭りを楽しむ時間が減ってしまいます」

「それもそうですわね。では御機嫌よう、お互いの健康を祈っておりますわ」

「またのご来店お待ちしております。祭り、楽しんできてくださいね」

 三人は屋敷へ歩を進める。

327 名前:幕間『車中問答』[age] 投稿日:2022/02/10 22:57:34 ID:viikVpJ9Nl
>>326
 車の中でのこと。


「いやー、景色が綺麗っすね。あっちなんか花火の音が絶え間なく響いて……あ、違うわ、デカい発砲音だコレ」

「……ばあちゃるさん」

「ん? どうしたんすかピノピノ」

「ばあちゃるさんは、突然この特異点に来た関係上、知らないことも多いですよね。
 唐突ですけど、知ったら得するライトな事実と、知らなくても良いヘビーな事実。どっち聞きたいですか?」

「ホントに唐突ですねハイ……」

「今のばあちゃるさんなら、多少重荷を背負っても大丈夫かと思いましてね」

「そう言う事なら、ライトな方でお願いします。ヘビーな事実を受け止める自信はまだないっす」

「成程、それならライトな重荷を背負わせるとしますわ。
 ……なぜ、特異点への移動が出来る人間を必要としたか。と言う話なのですが……おっと」


 車内がゴトンと揺れる。タイヤが小石でも踏んだのだろう。


「……早い話、最強戦力であるシロお姉ちゃんを最大限活かす為ですわ。
 条件さえ整えばシロお姉ちゃんはブイデア最強。
 しかしそれは『条件が整えば』の話。今はまだ最強と言い難い」

「なるほど、まだ最強じゃないんすね」

「そこで取った作戦が『各特異点に英霊を送り込み内情を探らせる。そしてシロお姉ちゃんは予め送り込んだ英霊のサポートを受けつつ、簡単と判断された特異点から順に解決し、最強の条件を満たす』と言うモノですわ。
 本来は、特異点に英霊だけ送り込むのは無理ですけど、今回は特別。
 この特異点の『一部』は、わたくし達の世界を切り取って改変したモノで構成されている。特異点と元の世界はある意味地続きで、強力な使い魔である英霊なら多少の無茶もきく。だから送り込める」

328 名前:幕間『車中問答』[age] 投稿日:2022/02/10 22:58:28 ID:viikVpJ9Nl
>>327
「……うん、なるほど?」

「ただ、英霊単体だと魔力供給が出来ないんですよね。英霊からしてみたら、魔力供給が無いのは食事無しみたいなもんです、正直ヤバい。
 ブイデアから魔力を供給してくれてますけど、正直十分とは言えません。そんな環境じゃシロお姉ちゃんを活かせません。
 そこで必要なのがマスター。令呪とか色々持ってますが、英霊に魔力を供給する存在て事だけ……ああ、いつものですか」


 外から爆音が聞こえる。ボンネットに何かの破片がぶつかる。何処かの馬鹿どもがドンパチでも始めたのだろう。こんな目出度い日にやらかすとは無粋な輩も居た物だ。


「いつもって、これが日常なんですか……何か怖いっすね」

「ええ、大体週二で遭遇しますわ。
 話の続きですが、ただのマスターじゃだめなんですよね。特異点に飛ぶ適性が要るので。
 それらの条件を満たしていたのがばあちゃるさん、と言う訳です。他にも理由はありますが、そっちはヘビーなのでまたの機会に」

「思ったより色んな事情があったんですねハイ。
 ……所で、シロちゃんが最強になる『条件』って何ですか? 教えられないならそれで良いですけど」

「うーん、秘密にする程のものでもないですけど───多分知らない方が良いと思いますよ。
 条件自体は大したことないと言うか、満たした人数に応じてシロお姉ちゃんが強くなる感じですわ」


 話がひと段落した所で車の速度がゆっくりと落ち始める。窓を覗けば『スパークリングチャット』が遠くに見えた。


「そろそろ到着で御座います。忘れ物にはお気をつけ下さいませ」

「運転お疲れ様です、いつもありがとうございますね」

「ありがとうございますエミリーさん」

「勿体無きお言葉」

329 名前:幕間『車中問答』[age] 投稿日:2022/02/10 22:58:42 ID:viikVpJ9Nl
>>328

 車が止まる。降りようとする直前のばあちゃるにピノが声を掛ける。小さな声で。


「……ばあちゃるさん、今日暗黒街に行った事は秘密でお願いしますね」

「ピノピノが秘密にしてほしいなら、オイラは良いですよ。でもなんで秘密にするんすか?」

「何と無く、お姉ちゃん方にダーティな面をあんまり見せたくないんですよ。
 正直今更だと自覚してますし、知られたところで何か有る訳でも無いんですが……それでも嫌なんです」

「あぁ、思春期ですねぇ。そう言う事ならオイラ大歓迎ですよハイ」

「そう言う事じゃないですよ……多分」


 車を降り、スパークリングチャットに近づくとシロ達が居た。ピノとばあちゃるを待っていたようだ。


「待ってたよピノちゃん!」

「近くの屋台をまわりながらだけどね」

「『1680万色ゲーミング焼きそば』、目がチカチカして疲れるけど美味しいですよコレ。一緒に食べましょうピノさん!」

「……ええ! もちろん食べますよすずお姉ちゃん!」

330 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/10 23:08:22 ID:viikVpJ9Nl
みりくるんの衣装どれも良かった、、、、三人の身長が予想以上にイメージ通りでビックリした


それはそうと、幕間の方はぶっちゃけ読み飛ばしても大丈夫です。ただの設定補完なので

長ったらしいので限界の向こう側まで地の文を削りましたが、それでも冗長です……でも書いとかないと矛盾しちゃう……設定だけ脳に直接流し込めれば良いんですけどね


裏設定

馬の被り物
 超絶重要なキーアイテムだが、これを掘り下げるのは第二特異点以降(の予定)。
  被り物と言う名の通り、頭にすっぽり被って覆うモノ。外から隔離された内部に強固な概念を構築している。

 あらゆる物を赤く染める夕暮れの概念を『意識改変』の力でもって定義し
 何もかもを暗い帳で覆い隠す夜の概念を『隠蔽』の力でもって定義し
 あまねく夢と眠りを打ち破る朝の概念を『夢見の制御』の力でもって定義し
 万物を照らし夜の帳を退ける昼の概念を『五感の確保』の力でもって定義する。

 これら四つの概念が内部で巡り「一日」の概念を編み上げ、『精神干渉耐性』とする。
 いついかなる時も、地球が生まれた時から変わらぬ概念。

 昼夜の長さは可変、だが「一日」の長さは常に24時間。そこが地球である限りソレは変わらない。
 それ故にこの概念は非常に強固だ。殆ど不滅ですらある。

331 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/10 23:08:40 ID:viikVpJ9Nl
ガイチュウ街

 治安激ヤバ暗黒街、由来は作中での説明通り。
 当初は「モノ地区」と言う名前にする予定だった。mono(一つの)から最初に街として成立した場所、一番最初に壁で囲まれた場所と言う意味。さらにYouTubeでよく不快な動画を上げている「モノ」申す系に引っかけてもいる。
 しかし、「ガイチュウ街」という名称が語呂良すぎて頭から離れず、こちらが採用となった。

 高い壁に囲まれているせいで大部分が昼でも暗い&アクセスが絶望的&都市計画も糞もない状態で作ったので普通に住みずらい→仮にここに巣食う悪党を全員追い払ったところで住もうとする人間が居ない→廃墟に悪党がまた住み着くだけ→無意味

 と言った感じで見逃されてたりする。


無尽の英雄

 グーグルシティが成立する数年前、初期の怪物が出現し始めた時期から戦い続けてる英雄、特異点の現地民で二番目に活躍した人物でもある。一番活躍した人物達は別にいる(未登場)。
 カンの良い人は正体に気づいてると思う。

 「無尽」の名の通り、何度壊されようと魔術で新しい剣を取り出して戦い続ける。双剣と弓矢がメインウエポン。街の人間は魔術を知らないので「カカラと人間のハーフじゃないのか」と心無い言葉を掛ける人も多かったが、ひたむきに人を守る姿勢に心を打たれ、そんな事を言う人間達も徐々に「よく解らないけど良い人」と認識を改めた。
 セバス&エミリーを始めとして、無尽の英雄に憧れて剣を取った人間が数多くいる。

 因みに、英霊が街の一員としてすんなり受け入れられてるのも、この英雄の存在がデカかったりする。
 強い人間が一番必要とされる時期に出てきて、期待される以上の働きを(ただ戦うだけでなく、後続を生み出したりなど)したお陰で、超常の力を使う人間に対しての好感度がクッソ上昇してる。

332 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/11 10:10:24 ID:bbzoc1B8Ba
おっつおっつ、みりくるん……良かったよね……。ハンカチか蹄鉄かで悩んでハンカチ選んだけど蹄鉄はそれはそれで見たかったからよし。個人的には蹄鉄のいざというときの幸運が凄いことになりそう(ウマ娘見ながら)

333 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/11 10:55:54 ID:tOTiPxWAUp
>>332
蹄鉄は「蹄鉄の耐性が発動する、、、詰まり悪魔由来の力持ってるな」的な感じに、相手の素性を見破る試薬としての効果も有ったりしますねぇ

因みにですが、破邪の蹄鉄の神秘の源となって頂いた聖ドゥンスタンには面白い話が結構ありまして、

・教会の床が抜けてドゥンスタンの政敵を叩き落とした(その場にいたドゥンスタンだけは無事)
・蹄鉄を用いて、悪魔の手足を扉に打ち付け「蹄鉄を扉に掲げた家には入らない」と約束させた
・政治も結構有能だった

等々、少ないながらも濃い逸話を持ってるお方です

334 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 18:53:32 ID:jPlus9d9M4
>>329
 夜が更け、幼子はとうに寝る時間。しかし今日は、この日ぐらいは幼子も起きることを許されるだろう。祭りの日ぐらいは。

「ねえ馬、寝る時もそのマスク着けてるの?」

「着けてるっすよ。風呂入る時以外は基本脱ぎませんねハイ」


「すずちゃんって、いがいと小食だよね」

「食べたいって気持ちはあるんですけど、胃がそれについて行かないんですよね。拒否するんですよ私の胃が」


『良いなぁ……牛巻達も美味しい物食べたいよぉ』

「日持ちする食べ物で良ければ持ち帰りますよ、牛巻お姉ちゃん」

『ありがとうピノちん! 最近はあずきちの魔術で呼び出した謎食材で食いつないでたから……ホントにありがたい。
 不味い訳じゃ無いんやけど、食べると変な夢を見るんだよね。食えるだけありがたいけどさ』

 ばあちゃる達五人は食べ歩きを楽しんでいた。
 他愛ない会話にチープな屋台飯。お祭りだから特別感があるだけでやってる事は大して特別でもない。だがそれで良い、それで十分楽しいのだから。


 そんな食べ歩きの最中、焼き鳥(タレ)を食べきったばあちゃるがゴミ箱でも無いかと辺りを見渡していると───

「ガハハハ!! ハレの日だってのに退屈な奴らめ!
 俺らが退屈をブチ飛ばしてやる!!」

「その通り! 『炎上駆動機構』始動! 空飛べ『ヴリトラ』!!」

335 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 18:54:13 ID:jPlus9d9M4
>>334
 強烈な見た目をした山車が大通りを突き進むのが見えた。いや、山車と言うのは不適切かもしれない。空を飛ぶ機械仕掛けの龍に対しては。

 中華的な風貌をしたその龍は優雅に空を泳ぎ、その姿はため息が出るほど雄大。
 唐紅の鱗は鮮やかに煌き、精悍な顔は見る者を惹きつける。枝分かれした鋭い角には歴戦の傷、大きく開いた口から断続的に火が吹き出す。太い胴から生えた二本の腕、右の腕に握られた宝玉は目も眩まんばかりの虹光を放っている。とにかく凄まじい。
 龍の背に乗って高笑いする鳴神とケリンが居なければ本物と見間違えていたかもしれない。

「「「うわ、何あれ凄い」」」

「すっっご」「何円かかってんだろうな」「中華風なのが好印象ネ」「ボラれたショバ代がこう言うのに使われてるのは、何か複雑だな」

「『サンフラワーストリート』と『エルフC4』の共同制作、ですかね。
 やること成すこと全部無茶苦茶ですけど、エンターテイナーとしては一流なんですね、悔しいけど」

「だね……細めにつくった体にホログラムを被せてるっぽい。やってる事はたんじゅんだけど発想がすごい。
 ホログラムは『サー・レイへット』に作らせたものかな? 流石のクオリティ」

 呆気にとられる三人と民衆、訳知り顔で話し合うピノと双葉。

 一足先に気を取り戻したシロがそんな二人に質問をする為口を開く。

336 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 18:55:19 ID:jPlus9d9M4
>>335
「え!? あれってホログラムなの?
 正直、にわかには信じ難いなぁ」

「マジもマジ、大マジですわ。通称『光の魔法使い』レイへット。
 『サンフラワーストリート』所属、一流のホログラムアーティスト。彼ならどんな光景でも作り出せます、それこそ魔法の様に」

「普通ギャングにこんな事できないけど、無理をとおす力があるから。
 というより、こういうデカい事を定期的にするから力を持ち続けられるというか何というか……」

 ふと、呆れと淡い羨望が同居した表情を浮かべ龍を見上げる双葉とピノ。

 鳴神とケリン、その性格は自分勝手で刹那的。だが誰よりも自由だ。どんなしがらみも気にせずやりたい事をやり、力でもって勝手を通す。多くの人が心の底で望みつつも実行しない、実行できない生き方。
 ピノも双葉もそんな生き方をするつもりは一切無い。だが『不都合を後先考えずパワーで解決したい』と言う願いが無いと言えば、それはウソになる。『楽園』のクソ分厚い壁を叩き割り、中に潜むカカラの元凶をプチリと潰す。そんな力が欲しいと思った事は何度かある。


「鳴神によるデザイン!」

「ケリンの野郎がした設計!」

「「渾身の共同制作、とくと見ていきやがれ!!」」

「高度もっと上げてくれ鳴神!」

「言われずともやるつもりだ! 『炎上駆動機構』出力上昇……あ、やべ。やりすぎた」

「あーあ、物凄い飛び方してるよ」「落ちて……は来ないな」「安全装置があるんでしょ」

337 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 18:56:28 ID:jPlus9d9M4
>>336
 あらぬ方向に飛び上がり始めた龍、どうやら何かトチった様で二人は慌てている。最も周囲は失敗含めて楽しんでいるが。
 龍の宝玉から放たれる光があちこちを出鱈目に照らす。ミラーボールの様に、カラフルに、賑やかに。妙な話だが、優雅に空を泳いでいた時よりも今の方が『グーグルシティ』らしくて様になっている。


「……フン、運用テストしないからそうなるんですわ」

「……らしいと言えば、らしいけどね」

 無意識に伸ばしていた手を戻し、二人はわざとらしく鼻で笑う。ガラにもない事をしている自覚はあるが、そうせずにはいられなかった。
 焼き鳥(塩)に被りついて一気に食べきり、串を捨てる場所を───

「「……なにアレ」」

 探していると、不穏なモノが目に入る。


「あの人影なんだ?」「出し物にしては不気味すぎるよな」「アレを見てると、何故か頭が痛くなるのう……」

 ピノと双葉の言葉に呼応するように静かな騒めきが広がる。賑やかだった空間にさざ波の如く沈黙が広がる。それも当然だ、明らかに異様な影がビルの間を飛び跳ねているのだから。
 人の形をした影、異常に長い右腕、全身黒の装い、顔には骸の仮面が縫い付けられている。全身が暗い靄に包まれていて只管に不気味だ。

 肉体を機械化した人間も多いこの街だが、それでもこの見た目は異様に過ぎる。


「……ん? なんだアレ凄いパルクールだな。鳴神、お前んとこのパフォーマーか?
 『サンフラワーストリート』がアーティストやらパフォーマーやら沢山抱えてんのは知ってたが、あんな奴もいたとは知らなかったぞ」

「今制御で忙しいんだが……あん? あの黒い奴か? 俺は知らんぞあんな奴。
 しかし何というか、パントマイムやマジックならともかく、パルクールに髑髏の仮面ってのはセンスねえな」

338 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 18:57:46 ID:jPlus9d9M4
>>337

 周囲が静かになる中、二人だけは相も変わらずのんきな会話を繰り広げる、龍の体勢を立て直しながら。
 何故そこまで余裕なのか? 己の強さを自覚しているからだ。例え襲われようとも普通の人間相手に遅れは取らない……そう、普通の人間相手なら。

「ガハハハハ! 確かにそうだ……ッ!?」

 余裕の笑いをしていたケリンの背後に例の人影が突如現れる。確かに油断していたが背後を取られる程では無かった筈。相当な手練れだ。
 そもそも空を飛ぶ龍の背に飛び乗れること自体可笑しい。英霊の二人ですら、足を縄で固定して振り落とされない様にしてると言うのに。

 背後に立った影はナイフでケリンの首を&#25620;っ切ろうとしている───最も、それを許す程ケリンは弱くないが。

「嘗めんなよオイ」

 咄嗟に取り出した拳銃を───撃たず背後に投げつける。スキルで爆弾に変えて。
 銃を撃つ、と言う行為には『狙いを付け引き金を引く』プロセスが必要だが、投げつけるだけなら速い。

 首を落とそうとしていた影にすんでの所で拳銃が接触し爆発する。手練れの影もこれには堪らずよろめく。

「これで……クソッ! あんま効いてねえな」

 顔に付いた煤を払い口の中に入った分は唾に溶かして吐き出す。今ので顔と手を一部火傷した、大して痛くは無いがムカつく。

339 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 18:58:08 ID:jPlus9d9M4
>>338
 至近距離で爆発した故ケリン自身もただでは済まなかったが、やらなければ殺されていた。それは仕方ない。
 それより問題なのは敵が予想以上に固い事だ。爆発をモロに喰らったのにも関わらずそれ程ダメージを受けた様子が無い。コアを叩けば死ぬカカラより化け物じみている。
 鳴神とケリンの二人、昨日行われた大会の後エイレーン一家の事務所にカチコミし撃退されたばかり。装備も体力もかなり消耗している。そんな状態で固い敵は正直キツイ。

「どけケリン、俺がやる」

「お前は龍の制御をしないとだろうが。墜落して地面とキスするのは御免だぜ」

 ケリンは軽口を叩きながら思考を回す、目の前の敵が体制を立て直す前に。

 鳴神は龍の制御で手を離せない。あいつのスキルで出した炎を動力源にするのは良いアイデアだっただが、まさかここで裏目に出るとはな。
 手榴弾が一つ手持ちに有るが無意味、威力が高すぎてこの距離じゃ使えん。
 俺のスキル『触れた物体を爆弾に変える能力』で爆破したい処だがアレは幾つか弱点がある。『爆弾に出来る物体の質量に上限がある』事と『爆発の威力は質量に依存し、調整出来ない』事の二つだ。普段は石や鉄くずをポッケに詰めて小回り効く様にしているが、昨日使い切ってからまだ補充してねえ。
 宝具を発動すれば……無理だな、発動する際に隙が出来ちまう。発動した瞬間に首を&#25620;っ切られるのがオチだ。
 フィールドも宜しくない。転落防止のため足を縄で結んでいるから自由に動けないし、爆弾に変えられるモノが見当たらん。
 兎にも角にも決定打が無い、どうしたもんか、戦いが長引いて龍が墜落しようもんならペシャンコに……それだ!!

 閃きを得たケリンは指を鳴らす、顔が歪むほど強烈な笑みを浮かべて。

340 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 18:59:11 ID:jPlus9d9M4
>>339
「おい鳴神ィ! 炎上駆動の出力MAXにしろ!!」

「あぁ!? な事して何の意味が「説明してる時間はねえ! 影野郎をぶっ飛ばす為だとっととやれ!」

「……チッ、しくったら許さんからな!」

 鳴神は舌打ちしながらも言われた通りに出力を上げる。機械仕掛けの龍のエンジンに過剰量の炎が行き渡り烈しく駆動させる。赤熱させる。煌々と。
 例え友人からの物であっても頭ごなしの命令に従うのは癪だが、盾突いてきた影野郎を潰す為なら仕方ない。ありったけの炎を供給してやろう。

「……!?」

 上下左右360度、龍は縦横無尽に飛び回り始める、ジェットコースターの様な速度で。そうなれば影はマトモに立っていられない、強烈なGに振り落とされてゆく。だがケリンと鳴神は縄で足を固定しているから振り落とされる事は無い。
 高い所から落ちればどんなに硬くても無事じゃすまない。あのしぶとさじゃ死にはしないだろうが。

「グゥぅあアア!!」

 ───だが敵もさる者。異様に長い右腕で龍の体にしがみ付き、左の手でナイフを投げつけようとしている。揺られる様は風に吹かれる枯れ葉の如く、遠心力によって肩は抜け、龍が方向転換する度に体が打ち付けられ、それでも手を離さない。

「チィッ! ……無傷で勝つのは無理か」

 ここに至って初めてケリンは完全な勝利を諦めた。強烈な笑顔はそのままに目だけが笑うのを辞めた。確実に『殺す』ために。

 自身の足を縛る縄に触れて爆弾に変え、即座に起爆させて縄を消し飛ばす。少なからぬ火傷を負う。
 直後、猛烈なGをモロに受け吹き飛ばされそうになる、吹き飛ばされる前に影の方へ飛ぶ。
 両足の靴を爆弾に変え、小爆発を伴った右足の蹴りで影を叩き落とす。右足から複雑骨折の痛み。

「コロス、コろス!」

341 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 19:00:14 ID:jPlus9d9M4
>>340
 影と共に下へ落ちる。落ちながらも手を伸ばして来る影に何処からか銃弾が飛来して邪魔をする。
 大地がすぐ下に見える、幸いにも人はいない、大半は既に退避している様だ。左靴の爆発でもって落下の衝撃を殺す。殺しきれなかった落下の衝撃、両足の複雑骨折。痛すぎてもう訳が解らない。

 痛む体、グシャグシャの足に力を入れて立ち、一緒に落ちた影の様子を確認する。動く様子は無い、死んだか。爆発の衝撃でかなりの落下スピードが出ていたのだ、これで生きている訳がない。

「流石に殺すつもりは無かったんだがな……まあいいか、最初に手ェ出してきたのはお前だし」

 ケリンの顔にホンの一瞬後悔が浮かぶ。仕事柄何人か殺してきたが、この後味の悪さだけはどうにも消えない。多分一生消えないのだろう。
 ケリンの顔から後悔が消える。どうせこれからの人生も血生臭いのだ、いちいち引き摺っていられない。

「オイオイ大丈夫かよケリン! ”俺のお陰で”勝ったとは言え、それじゃマトモに歩けねえだろ。迎え呼んで来るからそこで待ってろ!」

「おう……頼んだ!」

 上から聞こえてくる鳴神の大声に、こちらも大きな声を絞り出して答える。

「……流石に疲れたぜ」

 ポツリ呟く。火傷と骨折まみれの体を引き摺り壁に寄りかかる。遠巻きにこちらを見詰める民衆共を一瞥し、焦げ目の付いたマルボロを吹かす。
 空を仰ぎ見れば曇り夜空が見え、耳をすませば徐々に戻り始めた喧騒が聞こえる。口に滲む血の味と匂い。爛れた肌に夜風が染みる。

「そこの銀髪少女。さっき俺が落ちてる時、影野郎へ銃を撃ったのはお前だろ? ……受け取れ、礼だ。企業の研究所からパクった最新鋭のブツだぜ」

342 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 19:00:46 ID:jPlus9d9M4
>>341
 ポケットをまさぐり、ケリンはシロに向かって手榴弾を放る。勿論ピンは刺したままで。

「ちょ、あぶな!? ピンを刺したままとは言え危ないよ! ……ま、ありがと」
「おお! カッコイイ! 底に付いてる点滅する奴とか特に!」
「点滅……? ……、……、これ盗聴器ですわね」
「ガハハッ! 俺がタダでモノ渡すわきゃねえだろ! 因みにもう一個付いてるから探しとけよ!」

 シロ達のジットリとした目線の先で豪快に笑う。因みに盗聴器が二個付いていると言うのはウソだ、二つ目が見つからず慌てふためく姿が目に浮かぶ。

 しかし何というか、人を簡単に信じるあの有り様を少し眩しく感じる。成りたいとは思わないが。
 きっとこれからも心の底で人を信じて生きるのだろう。見知らぬ誰かを助け、見知らぬ誰かの無償の善意に助けられて生きるのだろう。だが悪の道を突き進むケリンは、金や権力を手に入れることは容易くても『無償の善意』だけは中々手に入らない。
 シロの善意にお礼の品を返したのは細やかな意趣返しだ。敵対関係である己にすら向けられた『無償の善意』に対しての。

「おお、早速迎えが来たか。あばよ! ありがとな!」

 早速来た迎えの車に颯爽と───とはいかないまでも、それなりにスムーズな動作で乗り込む。仮にも英霊、気合である程度はどうにかなる。
 乗り込んだ数秒の後に車が発進する。窓から見える景色がゆっくりと流れていく。

343 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 19:00:54 ID:jPlus9d9M4
>>342

「…………」

 街の景色を見ていると昔を思い出す。記憶喪失の状態で街に放り出されたあの頃を。
 あの頃は食う物も無く、仲間も頼れる人も誰一人おらず惨めだった。それが嫌で、奪う側に回りたくて悪の道を突っ走った。そこに後悔は無い───だが、自分が記憶喪失する前は何をしていたのだろうかと、そんな事を度々考えてしまう。

 ケリンを乗せた車はただ走る、目的地に向かって。

344 名前:閑話休題『born of your sword』[age] 投稿日:2022/02/21 19:02:06 ID:jPlus9d9M4
>>343
 深夜11時。あの後も遊びに遊んだシロ達五人は屋敷の大広間にいた。ビロードのカーテン、その隙間から夜空が見える。
 本来ならもう寝る時間なのだが、セバスとエミリーたっての願いで大広間に集められていた。

「……お時間を取って頂き、ありがとう御座います」

「この度は今すぐ話すべき事があり、この様な場を設けさせて頂きました。今日出現した影についての話です」

 セバスもエミリーも普段と違う顔を見せている。普段の柔和な顔では無い、戦う時の誇りに溢れた顔でも無い、只管にくたびれた顔だ。

「あの影は怪物、記憶と記録から抹消された旧い怪物です。『シャドウサーヴァント』とも呼ばれておりました」

「五十数年前、この街が出来る前の頃。まだカカラも怪物もおらず平和だった世界に突如現れ、既存の文明の大半を滅ぼした怪物で御座います。
 誰もが家族を失い影に怯えて暮らしておりました。影に立ち向かった、かの無尽の英雄がいなければもっと死んでいた」

「そして五十年前、無尽の英雄が影を根絶しました、方法は解りませんが。そして影と入れ替わるように出現し始めたのがカカラです……カカラも十分に怪物ですが影に比べればマシでした。少なくとも、人類がある程度再興出来る位には」

 そこまで語るとフゥと長く大きく息を吐く、一息つく。老いてなお強者であり続けた二人も今ばかりは年相応に衰えて見える。

345 名前:閑話休題『born of your sword』[age] 投稿日:2022/02/21 19:02:56 ID:jPlus9d9M4
>>344
「影の齎した被害を忘れる様に『冬木市』は『グーグルシティ』へ名を変え、あらゆる記録から影は抹消されました。そして……数十年前の事でしたかね。記憶を消す技術が生まれて、人々の記憶からも影は抹消されました」

「しかし、わたくし達を始めごく一部の人間は記憶を持ったままで御座います。万が一あの影共が復活した時、すぐさま対応できる様に」

「私もエミリーも無尽の英雄に憧れて剣を取った、肩を並べて戦った事もあります。その過程で戦う勇気や覚悟を学ばせて頂いた。ですが、ですが……それでもまだ恐ろしかった、皆様の目的を思えば万全を期す為にも語るべきだと解っていても、それでも躊躇してしまった。申し訳ございません」

 皺枯れた重い声でそう言うと、二人の老人は深く頭を下げ───「あやまらなくて良いよ」
 謝ろうとする二人を制す者がいた、双葉だ。

「いなくなった筈の存在がまた出てくるなんて想定できる訳ないんだから」

「ですが双葉お嬢様───」

「言わなかったことでおこった被害はなかった。だからこの話はおわり」

 穏やかな声、柔らかな笑顔。旧来の友人に接するかの様な雰囲気、それでいてある種の威厳も感じる。周囲の人間は誰一人として双葉に口を出さない、口を出さずに見守っている。

 確かに影の存在について語らなかったのは二人の失態だ。影の存在を知らないまま『楽園』に侵入し、そこで初めて出会おうものなら人間だと思って殺す事を躊躇していただろう。
 アレは人の形をしていた、怪物だと知らなければ人間に見えるだろう、明らかな異形であるカカラと違って。それに何より、あの影は片言ながらも「殺す」と人の言葉を発していた。

346 名前:閑話休題『born of your sword』[age] 投稿日:2022/02/21 19:03:23 ID:jPlus9d9M4
>>345

 では何故双葉は二人を咎めないのか。それは双葉のエゴだ。
 『楽園』に行くための段取りをここまでスムーズに整えられたのは二人の力が大きい(勿論スズ、ピノ、シロ、ばあちゃるの助力もあってこそだが)。エイレーン一家との交渉の決め手になった映像『楽園の声』を取って来たのはエミリーだし、セバスの名声が無ければ『スパークリングチャット』に出されるちょっかいはもっと多かっただろう。どれ程強かろうと自分等は余所者、大多数の人間は実績しか見ない。
 だからこそ双葉は、この程度の事で二人の頭を下げさせたくなかった。

 それは紛れもないエゴ、我儘だ。だが双葉は二人の主だ。だから我儘で良い。
 エゴも無くただ正しい判断を積み上げる君主がいたならば、それはそれは完璧な人間だろう。だが完璧な人間は孤独だ、他人の入る隙間が無いのだから。そして孤独な人間に君主は務まらない、他人に動いて貰うのが君主の役目だからだ。

「───承知致しました、双葉様。それでは影の弱点だけ申して今日はお開きにさせて頂きたく」

「影の弱点はズバリ心臓で御座います。貫けば即死、皮膚の上から衝撃を与えるだけでもそれなりに怯みます。やられる前にやる、それがコツです」

 いつもの柔和な表情を浮かべてそう言うと、二人は静かに引き下がる。


「いやはや敵いませんな、どうにも」
「ですねぇ……ところでアナタ、頼んでおいたベットメイキングは済ませた?」
「……ああ、最近は忘れっぽいですな、どうにも」

 遠くでセバスが頭を下げているのが見える。まあ、アレは止めなくても良いか。夫婦の話に口を挟むのは無粋だろうし。

347 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 19:07:58 ID:jPlus9d9M4
ガリベンガーのイベント良かった、空色デイズが特に。グレンラガンとキルラキル好き、プロメア一番好き。

それはそうと、シロちゃんと馬がちょっとだけ言及してた『影の時代』の名前はシャドウサーヴァントが跋扈していた時代の名残です。
・武器もった素人の馬でもカカラが倒せた(シロちゃんのサポートとは言え)、カカラはゾンビの様に感染して増えたりする訳でも無い
・グーグルシティに比べてニーコタウンの外壁が貧弱なのにも関わらず、十分カカラを防ぐ壁として成り立っている。
・カカラがいるのに街の外に進出する人間が一定数いる
・影の時代と言う名前
辺りが一応伏線のつもりでした。

因みにこの特異点は、FGOの炎上汚染都市冬木の別世界線をイメージしてます。どうにもならなかったのがFGO世界線、現地のfate勢が色々頑張ってどうにかしたのがこの世界線って感じです。
色々の部分はまだ隠しておきますが、「影と入れ替わるように出現し始めたのがカカラ」の発言を見れば何となく察せるかもです。

348 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 19:08:06 ID:jPlus9d9M4

細々とした裏設定

影の時代
量産型シャドウサーヴァントが人類ジェノサイドしてたヤバい時期。たった数年で文明が大体消えた。
歴史から消されるレベルでヤバい。

セバスとエミリーの名前
辛い過去と決別する為、仲間(結構前に言及した『竈馬』の事)につけて貰った名前。だから厳密に言うと本名じゃなかったりする。

魔道具屋
店名を日本訳すると「生命の巨釜」。
アインツベルン家が時代に適応した結果、店員の正体はあえて秘密。魔術で若さを保ったイリヤかもしれないし、その末裔かもしれない。


サー・レイへット
サンフラワーストリート所属のアーティスト。ホログラムの扱いを得意とし、マジックや簡単な大道芸もこなせる。
長身&#30246;躯を派手な服で包んだ、如何にもな見た目をしている。

浪費癖が酷く、借金をこさえまくった末にサンフラワーストリートへと転がり込んだ。

349 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 21:53:14 ID:IE8MywKyVs
おっつおっつ、シャドウきおったかわくわくが止まらねぇぜ

350 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/02/21 22:27:27 ID:jPlus9d9M4
>>349
第一特異点と言えばシャドウサーヴァントみたいなとこありますから、やっぱ外せないです

351 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/10 22:29:31 ID:EWiLd10NeI
>>346
 次の日、屋敷の中での事。

『祭りもはや三日目! 今日は一人楽団(ワンマンオーケストラ)ことビープ・B・ビート氏による演奏が……


「ね、ねえシロちゃん。このナイフ数おおいから手入れてつだってくれない?」

「え? ……あ、ナイフの手入れね。勿論良いよ! おけまる!」

 窓の外から賑やかな声が聞こえる。屋敷の中では小さな話し声が遠慮気味に反響している。日光を受けてチラチラ光る埃共が、朝の屋敷をフラフラゆらゆら気だるげに舞い落ちている。
 今日の屋敷はまるで別世界だ、隔絶されている。それは何故か? 明日の戦い、『楽園』の戦いへの準備をしているからだ。外ではお祭り、中では戦闘準備。隔絶されてしまうのも当然。
 双葉もシロも何処か緊張した雰囲気を漂わせている。表情が硬く、瞬きの数がいつもより多い。

「銃火器の手入れ苦手なんですよね私。分解すると毎回パーツが行方不明になるんですよ」

「あー、ちょっと解るかも。あとあれ、ちゃんと組み立てた筈なのにパーツが余る事も良くありますわ」

 シロ達と違い平然と雑談を交わすスズとピノ。会話の内容が色々残念な事を除けば、如何にも熟練の戦士と言った感じだ。とは言え、流石に普段よりかは多少口数が少ないが。

「……うう。オイラ役に立てますかね? そもそも生き残れるかどうかの問題が」

「大丈夫ですよ。足さえ止めなければ大抵生き残れます」

「な、なるほど……説得力が凄いっす」

 明日の事を考えて胃を痛くするばあちゃる。まあ、これが常識的な反応だろう。しかし『生き残れるか?』よりも『役に立てるか?』の疑問が先に出る辺り、非常識側へ傾き始めてるのは間違いない。
 対してエミリーは自然体そのもの。彼女にとって戦いは日常の一部、今更狼狽える訳もなし。

352 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/10 22:30:17 ID:EWiLd10NeI
>>351
「マイクテス、マイクテス、あずきちゃん、牛巻ちゃん、聞こえてる?」

『聞こえてるよ〜』『大丈夫ですぅ』

「明日はオペレーター頼むね」

『まっかせてよ! シロピーが惚れるぐらい頑張っちゃうぞ!』

『あずきもそれなり以上には、頑張るとしましょうか』


 何事も無く一日が過ぎていく。明日に向けて。




 次の日。

「ピーマン、パプリカ。留守をたのんだよ」

「任されたッパ! ……ご武運を、オーナー」

「オイラ達の生業は戦いを魅せるモノ。華の無い二流が何万人攻めてこようと追い返してやるっピ」

 屋敷から出るシロ達七人を見送る二人の巨漢。スパークリングチャットの覆面スター、ピーマンとパプリカだ。
 覆面に隠れて表情は見えない。だがその声色からは誇りと、押し殺した悔しさを感じる事ができる。留守を守る大役を任された誇りと、『楽園』への戦いに連れて貰えない悔しさだ。

 ピーマンとパプリカは強い。だがその強さはリング上でのみ最大限発揮されるモノ、実戦においての強さは他の実力者に数歩及ばない。二人はそれを自覚している。
 故に二人はその悔しさを表に出すような”ダサい”真似はしない。各々の思う”カッコイイ”振る舞いで手を振って見送る、闘技場のスターに相応しい振る舞いで。



 二人の見送りを背に外へ出れば、そこにあるのは昨日までと打って変わって静かな街並み。三日間も盛大に騒げばそりゃ誰だって精魂尽き果てよう。

353 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/10 22:30:54 ID:EWiLd10NeI
>>352
「…………」

 屋敷の前に止まっている二台の車、『楽園』からの御迎えだ。
 塗装は鏡面仕上げのパールホワイト。角張ったフォルムに角張った正面灯、フロントグリルとホイールカバーにウサギのエンブレム。マフラーなどの突起物は車体下に隠し、品の良いシンプルさを強調。
 黒の革張り内装、要所要所に飴色の木材をあしらいアクセントを加えている。シートカバーには虹を模った刺&#32353;。優雅かつ懐古的、誰が見ても高級だと解る。
 同乗している二人の運転手は何も話さない、顔すら見せない。早く乗れと言わんばかりの沈黙をたてている。そこらのタクシー運転手の方が100倍愛想良いだろう。高級な車に対して何とも不釣り合いな事だ。

「右の車にピノちゃん、双葉ちゃん、セバスさんとエミリーちゃん。左の車にシロ、すずちゃん、馬で良いかなぁ?」

「わたくしは良いと思います」「それでいいよ」「御意」「お心の召すままに」「ハイ!」「了解っす」

「OK! じゃ、そう言う事で。運転手さん、短い間ですがよろしくお願いお願いします」

「…………」

 シロの挨拶にも運転手達は沈黙で返す。余りの愛想の悪さに思わず苦笑が浮かぶ、白いアホ毛が気まずく揺れる。
 緊迫した空気感の中、シロ達は車へと乗り込む。

354 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/10 22:31:39 ID:EWiLd10NeI
>>353
(エブリカラーファクトリー製ハイエンドモデル『クレセントバニー』。押しも押されぬ最高級品ですわね。
 莫大な金を納めた者だけが入る事を許される『楽園』。VIP待遇の相手を運ぶ車としては最適な選択………ですが、色々と雑ですね)

 真っ先に車へと乗りこんだピノが内装を見れば、そこに在るのは座席に薄く積もった埃、そして乾いた泥のこびりついたフロアマット。後部座席に飲み物が幾つか置かれているが、その一部に開封された跡がある。隠そうとはしているが、隠蔽の度合いが素人の域を出ていない。
 『楽園』にはカカラの大元があるのだから妨害工作は当然。とは言え余りにも露骨かつ稚拙すぎる。

(あちら側も相当焦っているんでしょうね。工作を仕掛ける知恵があるのは警戒に値しますが…………ま、伝える必要はありませんか。お姉ちゃん方も気づいてるっぽいですし)

 それと無く周りを見れば、シロを始め幾人かが開封された跡の有る飲み物を見つめているのが解る。下手に言及して事を荒立てるメリットは無い、余計な動きは極力抑えるべきだろう。

 ピノがオーロラ色の瞳をスゥと細め、そんな事を考えている内に皆は乗車を済ませる。二台の車は静かに発進する、戦場へ向けて。



 凡そ一時間後。『楽園』の入り口に辿り着いた車が停車する。

「あれが……楽園の入り口っすか。想像以上に物々しいですね」

 ばあちゃる達の前に聳え立つ二重の壁、見上げても見切れぬ程に高い。過剰な程に重厚な門、厚さ5mの鉄筋コンクリートを鋼鉄で覆ったモノだ。一定間隔で存在する監視塔、小銃を携帯した警備員が常に二人以上在中している。世界中の何処を探してもこれ以上厳重な場所は存在しないだろう。

355 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/10 22:32:17 ID:EWiLd10NeI
>>354
 グーグルシティ中央区。幾つもの高速道路や公共交通機関が合流する交通の要所であり、大企業のビルが身を寄せ合うように乱立している場所だ。しかし、中央区に存在する『楽園』の入り口周辺だけは何の建物も存在しない。法律によって、許可された者以外は『楽園』の出入り口半径500m以内に侵入してはならないことになっているからだ。

「…………」

 二人の運転手が無言のまま車から降り、門の両脇に取り付けられた二つの認証装置にカードを通す。重厚な門が騒々しい音を立てて鈍重に開き始める。

 鼓膜がイカレそうな程の地響き、膨大な粉塵が舞い上がる。暫しの間フロントガラスが粉塵で塞がれる。それが終われば『楽園』の中が見え始める。『楽園』の中は、閑静な住宅地だった。
 似たような形の住宅が建ち並び、小さな庭には芝生や低木が植わっている。ばあちゃるが特異点に来る前の日常風景とまるで同じだ。

 この風景はきっと、怪物によって壊された日常の名残なのだろう。豪華な料理に舌鼓を打ち、高級品に囲まれて生活し、万人を傅かせようと忘れられぬ、強い郷愁の現れなのだろう。ジッと瞼を閉じれば、誰かの笑い声話し声が幻聴となって聞こえて来そうだ。
 莫大な金を払い手に入る生活がコレと言うのは、人によっては滑稽だと感じるかもしれない。だが、ばあちゃるはこの生活を求めた人達にむしろ共感せざるを得なかった。無かった事にされた過去を取り戻し、日常を取り戻す為に特異点へ挑むばあちゃるは、その郷愁に痛いほど共感出来てしまう。

「───」

356 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/10 22:32:28 ID:EWiLd10NeI
>>355
 昨日から収まらなかった緊張がウソの様に消える、いつの間にか戻ってきた運転手達が車を再度進め始める。

 車のガラス越しに見える風景に人は居ない、住宅もよく見れば人の気配が無いと解る。カカラの親玉が『楽園』に居るのを考えるに、恐らく殺されてしまったのだろう。
 無論100%そうと決まった訳ではない───だが、住民の生存に希望を持つのは難しい。外と隔絶された環境、人や情報の出入りが極めて少ないこの場所でわざわざ大人しくするメリットはほぼ無いのだから。
 静かな怒りを込め、拳銃の撃鉄をそっと起こす。吐き出した熱い息がマスクの中に滞留する。戦いの時はすぐそこに。

357 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/10 22:46:17 ID:EWiLd10NeI
.liveの全体ライブクッソ楽しみ

細々とした裏設定
『クレセントバニー』
名前の元ネタ:月ノ美兎
見た目の元ネタ:センチュリー(白)

VIP用のクッソ高級な車。後部座席にマッサージ機能とか付いてる。
怪物の被害から運よく生き残ったト〇タ幹部が頑張ってセンチュリーを再現したモノ。

ビープ・B・ビート
元ネタ:ビープ音+ビートボックス
日本人とアメリカ系黒人のハーフ。『一人楽団』の異名を持つ一流のミュージシャン。

体の一部を機械化しており、一人で様々な楽器を同時演奏可能。
音楽の腕もさることながらパフォーマンスも一流。

358 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/11 14:56:36 ID:Yo/lNVcpWJ
おっつおっつ、いよいよですな……ワイもライブ楽しみ

359 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/11 18:39:28 ID:2ryBZJJq8R
>>358
ずっと書きたかった所に突入出来るので、書いててかなり楽しいです
ライブマジで楽しみ、統一衣装とかワンチャン無いか期待してしまう

360 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:19:58 ID:xfjECyUnw.
>>356
 数十分後。

『…………』

「……おっと」

 突如車が二台とも停止する、それも道のど真ん中で。生気のない住宅街の、痛いほどの静寂が辺りに満ちる。本当に静かだ、呼吸音すら響く程に。
 風が吹く。辺りの庭に植えられた茂みやら低木やらがザワザワ揺れる。窓やシャッターがガタガタ震える。植物と人工物の合唱、そこに動物の音は無い。

「───アァ」

 運転手が静寂を破る、後ろを振り向く。後部座席から初めて見えるその顔は確かにヒトの顔だ───しかし生気が無い。
 何と言えば良いのだろうか───強いて言うならまるで良く出来た人形の様な、作り物の様な──そう作り物、紛い物の顔だ。

「─────コロス」

 運転手だった怪物共の被っていた人間のガワが&#21085;がれ落ちる。ガワの下より現われしは骸の仮面、ノッペリ黒い影の体。シャドウサーヴァント、例の影だ。
 流れるような動作でナイフを取り出し、今まさに襲い掛からんと───

「やっぱそうっすよね」

「そりゃあそうでしょ。それと馬、狙うなら心臓狙わないと。一昨日教えられたでしょ?」

 した影を押しとどめる二人の銃弾。ばあちゃるの拳銃弾は影の頭部に、シロの小銃弾は座席を貫通し影の心臓部に、二筋の連射がそれぞれ叩き込まれている。立ち込める硝煙と鉄の匂い、二挺の銃がけたたましく吠える。躊躇も困惑も無し、『運転手に変装した怪物』なんてありがちな策謀はとうに想定済みだ。

「グ……グゥッ!?」

「謀るな! 怪物風情が!!」

 一拍遅れて獲物を呼び出したスズの追撃。魔力放出にて加速したバットによる強烈な一撃。圧倒的な一撃は影の肉体を車のフロントガラスごと豪快に吹っ飛ばす。

361 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:20:40 ID:xfjECyUnw.
>>360
「グ、ウゥ…………」

 影が倒れ伏す。死んではいないが、動けもしないだろう。怪物にかける情けなぞないが、無理に殺す必要もあるまい。

 シロが横の車を見れば…………あちらも似たような感じだ。ピノの槍で心臓を一突きにされている、ああも鮮やかに貫かれては痛みを感じる間も無かったろう。エミリーとセバスは外の警戒、双葉はピノの背後を守っている。

 ひと先ず襲撃を凌ぎ、一息『後方から高速の飛来物! 高魔力反応!! 牛巻の探査をかいくぐる高度な隠蔽! 相当な手練れによる物と思われる!』───つこうとした瞬間に牛巻からの報告。
 シロの背後に迫りくる飛来物、ソレは捻じれた剣、蒼き光を纏い彗星の如く飛来する剣。なぜ剣なのか、どの様な性質の剣なのか、不明な事だらけ。だが一つ確かな事がある、アレはヤバイ。宝具に準する魔力をアレから感じる。
 運転手に化けた怪物、工作された跡の有る飲み物。どちらもブラフだったのだろう、車内に意識を向けさせる為の。そうまでして差し込んだ一撃、しかもその上でシロ一人を狙い撃ちにしてきたのだ。致命的な一撃に決まっている。

「不味ッ!」

『緊急防護術式起動……強度不足ですぅ! 分散型ダメージ転移呪術………推測生存率10%………!』

 油断した一瞬を完璧に狙い撃ちする一刺し。牛巻の警告が有った上でなお体が反応しない。そもそも車内だから逃げ場がない。オペレーターのあずきが手を尽くしているが焼け石に水と言った感じだ。

「お守りします!」

 だが味方もさる者。いち早く飛来物に気付いたセバスとエミリーが『ボンッ!』

「グッ!? ……クソッ!」

362 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:21:02 ID:xfjECyUnw.
>>361
 突如起こる爆発。車内にあった飲み物が爆発したのだ。爆弾を仕掛けられていたのだろう、それ自体は想定の範囲内。威力も大したことは無く、精々ガラスの破片が幾らか刺さる程度。だがタイミングが悪すぎた。爆発によるホンの僅かな動揺が致命的な遅れを招く。
 嫌になる程完璧なプラン。エミリーなどは柄にもない悪態を付いてしまう。

「───」

 爆風で軌道がズレるのを嫌ってか、シロ達の車にある爆弾は起爆されていない。だがなんのプラス要素にもならない。
 研ぎ澄まされた致命的な一刺しが「やらせねえっすよ!」

 ソレを防ぐ者がまだいた、ばあちゃるだ。シロの体を咄嗟に押し退け、全身に硬化魔術を発動させて剣を受け止める。

「馬…………ねえ馬!」

「大丈夫」

 シロは切実な声でばあちゃるに呼びかける。それに対してばあちゃるは、きっぱりと、清々しい声で『大丈夫』とただ答えた。

 案の定、受け止めた腕に剣が突き刺さり、貫通を始める。ばあちゃるの全身に激痛が走る。だが声は上げない、逆に笑顔なんかを浮かべて見せる。隣にいる女の子(シロ)を安心させる為に。
 ばあちゃるは多少魔術の才能に恵まれただけの一般人、ただ硬化魔術を発動させただけで受けきれる筈もない。相手が悪すぎるのだ。
 理性的に考えればこんな事すべきでない。だが体が勝手に動いてしまったのだからしょうがない。

 ───それに、己の強みと言えばこの中途半端な硬さくらいしかない。今シロを庇うのが一番効率的に己を活かせるだろう。そんな、後付けの自嘲的な考えでばあちゃるは激痛を誤魔化す。

363 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:22:18 ID:xfjECyUnw.
>>362
「お、うおおおオオオ!!」

 だがしかし、剣の威力が予想以上に高い、己の腕を犠牲にすれば流石に止まるだろうと高を括っていたのだが、一切止まる気配が無い。
 腕を貫通してそのまま臓器に突入しそうな感じだ。掘削機の如く回転してばあちゃるの肉体を削り進まんとしている。文字通り傷口をかき回されるような痛みだ。集中を乱され、ただでさえ未熟な硬化魔術がどうしようもなくほつれて行く。

「グゥ…………ゥアアア!!」

 遂に腕が貫通される。剣が細いため腕の傷自体は大した事無い。だが胴体まで貫通されては、流石にそうも言っていられなくなる。死ぬ覚悟もしておくべきか、いずれにせよ重傷は不可避。
 覚悟は決めているが、それでも痛い物は痛いし、死が怖いのは変わらない。どうしようもなく苦痛を浮かべる。

「………へ?」

 ───だがここで想定外の幸運が起きた。剣の軌道が不自然に逸れて、ばあちゃるの懐に入れておいた蹄鉄に弾かれた。誰のものともつかぬ間の抜けた声が小さく響く。
 魔道具屋で購入した蹄鉄の効能『持ち主に幸運を与える』が発動したのだ。

「何故か無事っすよオイラ…………ハハッ」

 膝から力が抜ける、変な笑いと脂汗が出る。腕がジクジクと痛む。

「馬…………ありがと」

「どういたしまして」

 青い瞳に浮かべた涙を隠し、シロは端的に礼を言う。馬に肩を貸して車内を出る。言いたいことは沢山あるが、それは後で言えば良い。今はするべきことをするだけだ。

 愛用の小銃を握りしめて心を切り替え、目の前の問題に対処を始める。

364 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:23:19 ID:xfjECyUnw.
>>363
「すずちゃん宝具お願い、アレで移動する。ピノちゃん、双葉ちゃんの二人は周囲の警戒。
 セバスさんとエミリーちゃんは、宝具発動まですずちゃんの護衛をお願い。あずきちゃんは馬の治療。治るまでシロが護衛しとく。牛巻は周囲状況の探査継続ね」

 取り敢えず周囲に指示を出す、いつもより低めの声で。周囲を満遍なく見渡す。今の己はリーダー、戦意も勇気も不要、必要なのは冷静さのみ。
 不意を突かれた時は醜態を晒した、ここからは名誉挽回といかせて貰おう。


「壮大なる鉄、堅牢なる巨人、雲上より降りて、牛飼いの蔦を伝い、来たれわが友、『人機の絆(タイタンフォール)』」

『召喚要請を受理、出撃します』

 スズによる宝具発動。巨大な二足歩行ロボットが空より堕ちる。轟音を立て道路のアスファルトを叩き割り、盛大に舞い上がる粉塵。壮大堅牢なる鉄巨人のお出まし。
 青く光るモノアイ、腕部に取り付けられたガトリング砲、近未来的なカッコ良さと機能美が同居した姿。これこそ宝具、ブイデア随一の汎用性を誇るスズの宝具だ。

「…………この剣は、やはりそう言う事なんでしょうかね」

「あの鋭さ、ニセモノって線も無いでしょう」

 スズを狙って剣が飛んで来るがセバスの手によって逸らされる。不意さえ突かれなければこんな物だろう。
 エミリーと共に意味深なセリフを吐いてるのが少々気になる。


『外なる者よ、祖となる物よ、骨肉へ変じさせ給う、かの者の欠落を埋めさせ賜う』

「…………」

365 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:24:34 ID:xfjECyUnw.
>>364

 あずきの魔術治癒。詠唱と共に半固形物質が湧き出し、瞼をプカプカと優しい方に開閉させ、規則的な胎児と共に反老人的骨肉が穴住まい、腰回りのキツイコートが結んだ肉屋とビーバーの友情を以ってクラゲの大鍋が…………ダメだ、マトモに認識出来ない。
 気にはなるが怖くて聞けた試しがない。そんな感想をシロ抱く。

 そんな事より、と気を取り直して次の指示を考える。
 今まで来た道にカカラらしき存在は無かった、ならば進むべきは前方。しかし後方に居るであろう狙撃手も無視できない。

『周囲にカカラの「根」らしき反応が地下より多数出現! 「根」より通常カカラ生産開始!! シャドウサーヴァントの反応多数接近! 30秒後に会敵するよ!!』

 動き出す戦況、考えてる時間は無い。今大事なのはスピード、正確性じゃ無い。決断の早さは時間的猶予を産み、時間的猶予は選択肢の幅を広げるのだから。

「すずちゃん、大雑把でいいから剣の飛んできた方向にミサイルお願い。発数は任せる。
 皆はすずちゃんの宝具にしがみついて、移動するよ。噴気孔付近は避けるように」

 一先ずの指示はこれで────「お待ち下さい」

 セバスが割り込む様に発言をしてきた。

「どうか───どうか、私とエミリーめに殿を命じて頂きたく」

 突拍子も無い発言。そもそもこんなタイミングでする話では無い。それはセバスも自覚しているのだろう、相当に申し訳なさそうな顔をしている。

 …………だが理にかなった提案ではある、宝具に乗る人数が減ればその分機動力は上がるし、例の狙撃手の抑えになるやもしれぬ。
 無論、殿を務めさせれば二人に大きな負担をかけることにもなる、最悪死ぬ。リターンは高いがリスクも高い。

366 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:24:55 ID:xfjECyUnw.
>>365
 提案を受けるか受けないか、難しい決断───

「解った、お願い。シロ達の為に命賭けて来て」

 だが迷いはしない。何がベストかなぞ解らない、しかし迷う時間は無い。きっぱりと即座に決断を下す。

 シロの返答を聞いた二人はうやうやしく首を垂れ、楽しげに息を吐く。
 セバスは腕より展開した仕込み刃をツウと撫で、噛みしめるように言葉を紡ぐ。

「ワガママを聞いて下さりありがとうございます。まさか『エミヤさん』に再会出来る日が来ようとは…………本当に信じられない」

「敵としてですけどね。わたくしも血が滾りますわ、頭の血管ブチ切れそうな位に」

 エミリーも似たような感じだ。両の手を強く握りしめ、その内に激しい喜びと戦意を凝集している。
 待ちきれないモノを待つ興奮。あのもどかしくも愉快な感覚。誰もが一度は経験する喜び。ソレを今、あの二人は滾らせている。

 きっと何か喜ぶ理由があるのだろう。わざわざ殿を務めてまでしたいことがあるのだろう。それが何なのかは解らない、解らなくて良い。
 人には人の物語が有り、そこに必要もなく踏み込むは無粋。それが長く生きた人の物語ならなおさらだ。

「お願いすずちゃん」

「ええ! 機関始動、全速前進!!」

『エネルギー上昇開始、5秒後に最高速度へ到達予定』

 二人を尻目にシロ達は前へと進む、スズの宝具に乗って。猛然とただ一直線に。

367 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:25:20 ID:xfjECyUnw.
>>366




「───さて、仕事をこなすといたしましょうか」

 遠くに消えゆくシロ達を見送ったセバス。機械の指をキシキシ鳴らす。
 周囲から近付く無数の影にノスタルジーな感傷すら覚える。

「おっと」

 影の手から放たれる、弾丸の如き速度のナイフを紙一重で避け続ける。

「懐かしいですわ影共め。今なお薄れぬ怒りと恐怖、恨み辛みってのはどうにも消えぬものですわね」

 数十年前は飽きるほど殺した化け物共。もう戦う事は無いと思っていたが、人生解らない物だ。
 セバスの前以外では決して見せぬ般若の面を浮かべ、エミリーは真っ先に近づいて来た影の心臓をブチ抜く。愛用のパイルバンカー、ついさっき装着したパイルバンカーで心臓をブチ抜いたのだ。
 ああ爽快だ。地獄に叩き込んでやるぞ影共。お前らが生きていたら、殺された家族が穏やかに眠れないじゃないか。

「…………そうだな、消えぬよな」

 一足先に敵へ突貫するエミリーを悲しげに見つめるセバス。
 影を目前にしてセバスも怒りを感じる。エミヤさんにこれから会える喜びもあるが、それと同時に怒りも感じる。そしてその事実に悲しみすらをも感じる、恨みを忘れられぬ己に対して。
 心の傷が治れども、傷を付けられた事実は変えられないのだ。結局のところ。

「殺してやる、セバス」

「私の名前を呼ぶな怪物」

「───カッ!?」

 こちらに襲い掛かって来た影。長い腕、髑髏の仮面。昔と何も変わらない。すれ違いざまに首を斬り落とす。

368 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:25:49 ID:xfjECyUnw.
>>367
 …………さて、進撃を始めよう。眼前の敵を滅ぼし、十重二十重の陣を切り潰し、この先にいるエミヤさんに会いに行こう。かつて『無尽の英雄』として影に立ち向かったエミヤさんに会いに行こう。
 死んだはずのエミヤさんが何故生き返ったのか、なぜ敵対してくるのか、何も解らない。解る事は『この先にエミヤさんが居る』ただそれだけ。

 あの時、シロを狙った剣は間違いなくあの人の手によるモノだった。それは間違いない、共に戦ってきたから本物だと解る。

 歓喜と怒り、二つの感情と共に戦い始める。

369 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 00:31:23 ID:xfjECyUnw.
今回ちょっと短めです
ルルンちゃんの犬っぽい口が結構好き

それはそうと、第二特異点の方で出そうと思ってたネクロマンサーのVtuberの方が色々あって出しづらくなっちゃったので
代案のアンケートを取ろうと思います。

1.他の有名なVを代わりに使う(ネクロマンサー設定の人で)
2.作者がオリキャラを生やす
3.キャラ募集

今回は募集キャラがあった場合に限り、基本そちらを採用させて頂きます

370 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 13:36:19 ID:jEVHSme.7q
おっつおっつ、馬ぁ!格好いいじゃねぇか!アンケだけど個人的にはバーチャルな訳だし1か3かな、バーチャルもキャラも詳しくないから他人任せだけどな!

371 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/03/23 14:03:12 ID:i/QOMwQE67
>>370
カッコイイムーブを自然と出させられるので、馬は書いててかなり楽しいですねぇ
取り敢えず、ネクロマンサー設定のVを色々調べておきます!

372 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/15 21:58:39 ID:NgWA5rxGwO
>>368
 時は少し巻き戻り、シロ達視点。

 ゴウと吹く排気口、理知的に光るモノアイ、高速で移動するスズの宝具だ。ソレに皆が掴まっている。
 体の側を通り抜ける風が酷く冷たい。人気の無い街並みが余計にそう感じさせる。

 影やカカラの姿は何処にも見えない、セバスとエミリーが後ろで押しとどめているのだろう。

『前方500m先に魔力反応、高密度の神秘を観測。魔力の反応より英霊と断定、敵主力と推察されるよ』

「……」

 無言の内に皆が身構える。ソゥと目を細める、瞬きをせぬように。聴覚を研ぎ澄ませる、どんな兆候も聞き逃さぬように。


『敵英霊行動を開始! 魔力の急激な上昇を確認! 何か来る!!』

 牛巻からの警告。警告が来て間もなく、前方遠くに立ち昇る黒色の光柱。遠近感覚が狂う程大きな光柱。
 それは禍々しく、神々しく、そして何より『死』を感じる。アレに触れたら死ぬ、問答無用で死ぬ、灰も残さず死ぬ。そんな事を確信させて来るのだ。

「………なんなんすかアレ」

「横に方向転換してすずちゃん! 今すぐ!」

 余りのスケールに思わず惚けるばあちゃる。叫ぶように指示を下すシロ。
 そうしている間に光柱が動き始めた、こちらに向かって倒れ始めた。遠目にはゆっくりと、近くから見れば凄まじい速度で。悍ましい程のスケールが産みだす錯覚、現実味に欠ける光景。

373 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/15 21:59:08 ID:NgWA5rxGwO
>>372
「ハ、ハイ!」

 突如現れた巨大な力に一瞬我を失ったスズ。だがシロの声で我に返り、宝具の進路を横に動かす。脇にある路地裏に機体をねじ込む。苔むしたブロック塀や民家の壁を削り爆走する。
 飛び散った破片がシロ達の身を打つが、そんな事気にしてはいられない。既に頭上近くへ死の光柱が迫っているのだから。

「全速全速、前進前進!! ヤバいヤバいよ本当にヤバい!!」

『了解、最高速度へ上昇を開始します。急激なGの増加にご注意ください』

 乗る人の安全を無視した全速力。無茶な加速で機体が不穏に揺れる。死から全力で逃げる、生きるために。

『ブースター出力低下。原因、放熱機構の不調』

「ちょ、BT君! 今それなるの!?」

『故障遠因、メンテナンス不足』

「そっか! ごめんねBT君…………って、うわああ!!」

 ついに光柱が大地へと触れる。
 鼓膜を焦がす重低音、破壊の音。黒い極光は触れたモノ全てを焼き潰し───だがシロ達には当たらなかった。


「───当たってたらマジでヤバかったすね」

 凄まじい熱量の余波が吹き付け、ばあちゃるの全身が汗ばむ。その汗はきっと熱さによるものだけではない。
 後ろを振り返り身を竦ませるばあちゃる。そんな彼にシロはハンカチを渡し、話しかける。

374 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/15 21:59:38 ID:NgWA5rxGwO
>>373

「とっさにシロを庇う度胸があるのに、こう言う時は普通の反応するんだねぇ」

「いやまあ、アレは度胸じゃどうにもならないっす。殺虫剤を前にした羽虫のような気分でしたよハイ」

「アハハ、例えの生活感凄いねぇ」

 顔の汗をぬぐいながら話す内、彼の緊張がほぐれて行く。シロはそれを確認して薄く笑みを浮かべる。
 過度な緊張はパフォーマンスの低下を招く。油断は禁物だが、張り詰めてばかりでは身が持たない。

「──────」

 蒼い瞳で周囲を見渡し、顎に手を当て、シロは状況の整理を始める。
 まずあの光柱について。
 威力は凄まじいが発動に時間がかかるようだ。牛巻曰く相手は英霊、宝具による攻撃とみて間違いない。

 次にカカラの大元が存在する場所について。
 あの凄まじい一撃を放てる英霊、恐らく伝説由来。
 カカラの大元が『楔』を所持しており、ソレの力を用いて怪物の生産を行っている、と言うのがピノの考察。
 そこから考えるに敵方の英霊への魔力供給も『楔』で行っているのだろう。
 魔力供給はマスターと英霊の距離が離れるほど難しくなる。あれ程の宝具だ、必要な魔力も尋常ではあるまい。カカラの大元は英霊の近くにいる可能性が高いだろう。

 …………ただ、どうやって英霊を従えたのか不明だし、牛巻の探査に未だ引っかからないのも気になる。油断はできない。

375 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/15 22:01:35 ID:NgWA5rxGwO
>>374
 思考を続けるシロの耳に、ふと会話が入ってくる。

「すずお姉ちゃん、宝具は大丈夫ですか?」

「ん〜、ちょっとヤバいかも。次同じの来たら…………気合で避けるしかないですね。ハハハ」

「もう、笑ってる場合ですかそれ」

「のんきだなぁすずちゃんは」

 呆気からんと笑うスズ。呆れ顔のピノに双葉。緊張も油断も見受けられない。
 ───宝具は不調だが、三人はさほど動揺していない。心さえ折れなければ大抵の窮地はどうになる、良い兆候だ。


「牛巻ちゃん、カカラの大元、若しくは『楔』らしき反応はある?」

『…………ないね。ここまで来て反応が無いとなると、自身に高度な隠蔽を施しているか、もしくは地中深くに潜んでるかのどっちかだと思うよ。
 ただ牛巻の見解を述べさせてもらうとね、後者の可能性は低いと思うんだ。地中と言う物理的に手出しされにくい安全圏にいて、こうまで躍起になって妨害する理由はないから』

「なるほどねぇ。近づかれたら困るから妨害を繰り返していると。ありがとう、参考になったよ牛巻ちゃん」


 こっちから手出しできる場所にカカラの大元が存在する可能性が高い。スズの宝具は不調、次避けるのは厳しい。士気はいまだ軒昂───打つべき手は決まった。

「──────」

376 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/15 22:02:39 ID:NgWA5rxGwO
>>375
 拳を胸に当て、シロは祈る。瞼を閉じ、思いつく限りの神を脳裏に浮かべる。そして短く、敬虔に、何度も祈る。上手く行きますようにと。
 過去を回想する。生活と復興の温かみに満ちたニーコタウン、発展しつつも何処か人間味に満ちたグーグルシティ───そして故郷。どこも命を賭して守るべき場所だ。

 祈りと回想を終え瞼を開く。カラカラになった唇を濡らし、小さく息を吸う。

「───すずちゃん。今出せる限りの速度でさっき光が出た場所、敵英霊へ向かって」

 幼げな顔を薄く薄く歪めて指示を出す。

 敵英霊への突貫、これは賭けだ。敵英霊が対処出来ない程強ければ終わり。正直分が悪い。
 だがそれ以外に打てる手がない。カカラの大元が敵英霊近くにいる可能性が高い以上、接近しなければ始まらない。今は高いリスクを背負ってでもリターンを取りに行くべき場面だ。


「……」

 僅かな沈黙、シロは上目遣い気味にスズの反応を伺う。
 きっと、知恵の回る者ならもっと素晴らしい作戦を立てられるのだろう。だがシロにはこれが精いっぱいだ。

 仲間の命を背負う覚悟はある。だがソレに相応しい能力まであるかと言うと…………正直自信がない。確かにシロは英霊だ、能力は高く条件さえ満たせば宝具も最強クラス。だがそれは条件を満たせばの話、安定感はない。

 英霊という強者達の内での凡人、それがシロの自己評価。
 リーダーを任されているけど、ぶっちゃけ他に適した人がいると思ってる。自分が命を賭ける分には良いが、仲間を巻き込んだ決断をする時は胃が痛む。
 シロはそう言う意味でばあちゃるに似ている。心の中に恐れを飼っている所が似ている。

「…………」

377 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/15 22:03:17 ID:NgWA5rxGwO
>>376

 スズの大きな背中はいつもと変わらない。彼女の背中は何も語らない。シロはだんだんと不安に──────『ガコン』、音が鳴る。何事かと思ったシロが周囲を見れば、スズの宝具が方向転換を始めているのが判る。

「もちろんですよ。とっとと近づいてぶっっ飛ばしてやりますよ、私の手で」

 不敵に答えるスズ、眼鏡越しに見える若緑色の瞳に宿るは──信頼。
 シロさんの命令なら大丈夫、この人になら命を預けられる。そういった信頼だ。

 ───シロは決して恐れを知らぬ勇者ではない。恐れを知ったうえで決断出来る、賢い勇者だ。だからこそスズも全幅の信頼を置いている。

「行きましょう」

 スズは眼鏡をクイと持ち上げ、光の襲ってきた方を見据える。

 先程まで静かな街並みだった場所に、破壊の溝が深く横たわっている。
 凄まじい熱量によって一部ガラス化したその溝は相当に通り易そうだ…………ここを通るのが良いだろう。


「よっっと…………あ、BT君のパーツ落ちた。まあいいや」

「ちょと、だいじょうぶなの?」

「大丈夫ですよ双葉さん。見た目は機械でも中身は宝具なので、余程ヤバい壊れ方しない限り走りはします」

『推奨、丁寧な走行』

378 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/15 22:03:39 ID:NgWA5rxGwO
>>377
 風をきりシロ達は進む。黒焦げた溝を進む。溝は緩く上へと傾斜を描く、どうやらこの先は丘になっている様だ。家屋は徐々に数を減らし、代わりに木々が増える。

 シロ達は進む。遠くに見え始める寺。寺には立派な門があり、その前にポツリと誰かが陣取っている。あれが敵英霊だろう。

 進む。点の様に小さかったそれは徐々に大きくなり、人の形を取り始める。

 進む。顔が見える、凛とした女性の顔だ。無機質に完成された美しい顔。鎧に包まれた肉体。騎士、あれは女騎士だ。

 近付く。騎士が手に持つ剣が見える。どす黒い剣、血管のような赤いラインが走った禍々しい剣。

 寺の門前で止まる。目の前の騎士が口を開く。


「私の名前はアルトリア・ペンドラゴン。先程の奇襲は申し訳なかった」

 アルトリアはそう言うと、剣を正眼に構える。

「そして重ねてお詫びしよう。私はあなた達を殺さなければならない、悪しき事の為に。申し訳ない」

 疲れた覇気のない声、諦めと苦痛に錆びついた声だ。剣を振り上げるそのぎこちない動きは、何かに抗っているかのよう。
 だが覇気が無かろうと、ぎこちなかろうと、それでもその華奢な肉体から悍ましい程の威圧感を感じる。

「…………行くぞ」

379 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/15 22:23:19 ID:NgWA5rxGwO
春休みが終わって大分バタバタしてました、、、、星物語良かった、馬のガチ歌って初めてな気がする


第一特異点はアルトリア&エミヤの原作勢が事実上のラスボスです
遠坂凛さんには第二特異点の方でちょっとだけ重要な立ち位置になる予定です

流石に万全の状態だと勝ち目ないので、操られ&やる気なし&微妙に反抗状態&風王結界なし、のナーフをしました

アルトリアの宝具、エクスカリバーは原作だと『剣を振る→レーザー出る』なのですが、色々な都合で『レーザー出る→剣を振る』に改変しちゃいました、、、、、何の予兆もなくブッパされたらどうあがいても無理ゲーなので



それと、ネクロマンサーの件ですが、fate作品の中でもかなり性格上位に入る獅子GOさんを代役にしようと思います

380 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/16 06:39:13 ID:abdJzGNCXi
おっつおっつ、ついにですなぁ……星物語、良いよね

381 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/04/16 11:47:50 ID:1Z2t.QI064
>>380
見れるのは今日までなので、何度も見て思い出に刻んでおく予定です

fate勢もV勢も互いに格を落とさない決着を考えてあるのでお楽しみください!

382 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:47:37 ID:RLDvqAMXE4
>>378
 人の手を離れた山寺。古びた寺門は閉じており中は見えない。朽ち果てた石段、参拝道であった頃の名残だろうか。寒々しくも美しい静謐、そんな光景を台無しにする破壊痕、痛々しい巨大な溝。
 ソレを作り上げたアルトリアが、剣を振るわんとしている。破壊の為に。

『…………』

「名は聞かぬ。聞く資格が私にないのでな」

 アルトリアの魔力が場を満たす。それは赤黒く、それは火のように荒れ狂って、それは──────「長々話して、随分余裕がありますわね」
 首を狙った槍がアルトリアに迫る。ピノによるものだ。己の小さい体躯と地形の傾斜を生かし、限界まで身を屈めて接近する事で実現せしめた、真正面からの不意打ち。

「ほぅ」

『………、………』

 だが敵もさるもの、鎧の肩で決死の一撃を逸ら「あなたは強い。だけど勝つ!」

 スズの豪快なスイングが胴体をぶっ叩く。だが、

「ッ!?」

「事を急いたな。踏み込みが甘い」

 アルトリアの鎧が攻撃を弾く。反動でスズの手が痺れる、その凄まじい硬さに。
 スズの瞳が驚愕に揺れる。無傷で受け止める硬さ、そして目の前の攻撃を即座に『効かない』と判断するその胆力に。

 だが、アルトリアがどれ程強かろうと数の利はシロ達にある。それに突破手段もないわけではない。

383 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:48:01 ID:RLDvqAMXE4
>>382
『………』

「カバーお願いします!」

「了解!」

 後ろに飛びのいたスズ。間髪入れず差し込まれるピノの連撃。止まることなく舞の如く振るわれる槍、その全てが敵の死に繋がる。優雅苛烈な槍技でもって相手を攻めに転じさせない。

「良い業だ…………!」

 対して、堅牢たるアルトリアの剣技、さながら要塞。緩急をつけて縦横無尽に繰り出される槍に最適解を返し続ける。そこに疲労や焦りは一切ない。
 ピノの僅かな隙を埋めて来る石礫、スズの投げた礫。当然それも敵を傷つけるに至らない。

(アルトリア・ペンドラゴン。アーサー王伝説の主人公、騎士王でしたっけ。そりゃ強い筈ですよ)

 ─────スズは思考を回す。
 英霊とは過去に名をはせた英雄の写し身、それを使い魔にして使役したものがサーヴァントだ。未来からの英霊である私達など例外はいるものの、それら例外は極小数と言える。
 ここで大事なのは、英霊の能力が元になった人物の逸話によって決まる、と言う事だ。そしてそれは弱点にもなり得る。英霊は、己の死因となったモノに対して極めて弱いのだ。
 今回敵として立ちはだかって来たアルトリア、彼女はカムランの戦いで生を終えた。その戦いの結末は『裏切者モードレッドと相打ち』と言うもの。

 早い話、アルトリアは裏切りに対して弱い。まあ、今は役に立ちそうもない弱点だ。
 だが死因だけが弱点になる訳ではない。伝説を紐解けば相手の思考回路、そして有効な騙し方も見えてくるのだから。
 アルトリアの性格は騎士そのもの。わざわざ名乗りを上げる程の筋金入りだ。この性格なら、シロさんの作戦もまず決るだろう。

384 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:49:04 ID:RLDvqAMXE4
>>383

『………作戦開始』

「了解」

 シロから合図が届く。作戦内容は既に伝達されている、密かに。
 ブイデア本部と現地を繋ぐ通信機能。アレを応用することでお互いの意志をテレパシーとして伝達出来るのだ。

 これはローカル通信の様なもので、少し距離が離れると出来なくなる上、やたらとノイズが入りやすい。
 だが相手から会話内容を隠せるのは大きなメリットだ。

「そうらっ!」

「……何だ、その動きは?」

 ピノの動きが変わる。今までの槍舞に、足技や柄による殴打が混ざり始めたのだ。アルトリアは眉をひそめて怪訝な困惑を示す。
 そこに術理はなく、一分と絶たず討ち取られるだろう─────だがそれで充分。相手を困惑されられれば。
 第一段階終了。

「よしっ! 今のうちに門をこじ開ける!!」

 アルトリアが困惑したのを見届け、スズは寺門へ走り出す。

「……そうか、気づいていたか」

「ここまで近づけば解りますよそりゃ! 門の先に居るんでしょ? カカラの大元」

 ───そもそも『カカラの根絶&カカラの大元が所持すると見られる楔の奪取』が目標なのだ、アルトリアの撃破は勝利に必要ない。

 シロの考察通り大元はアルトリアの傍に居た。
 高度な隠蔽を自身に施し、目の前の山寺に引きこもっている。それを牛巻が先ほど察知した。
 大元を潰せばそれで終わり───しかし、それを許す程アルトリアは弱くない。

385 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:49:51 ID:RLDvqAMXE4
>>384
「なるほど、良い………グッ!? 怪物め、無駄口すら咎めるか。つくづく余裕がありませんね」

 アルトリアは地面を蹴る。大地を割り轟音を立て彼女の体は前方へ飛ぶ。
 凄まじい速度、残像すら残さない。これでは、スズが寺門をこじ開ける前に追いついてしまうだろう。
 ───第二段階終了。


「気持ちいいですねぇ。ここまで決ると。BT君、三人をお願い」

 一秒と掛らずスズに肉迫したアルトリア、その背後より鳴り響くは重機械音。
 アルトリアが後ろを振り向けば、スズの宝具が誰かを山寺の中に投げ飛ばそうとしてるのが見えた。


(素晴らしい。私に仕掛けてきた二人はオトリ、残りの三人が本命か! ……これなら、これならきっと…………)

 振り返りざまの裏拳でスズを弾き飛ばし、全霊の魔力でもって身体能力をブーストし、駆ける。力強く、軽やかに駆ける。薄紅の頬に笑みを浮かべて。

 寸毫の後にアルトリアは、投げ飛ばされる直前のシロとばあちゃるに──────「なっ!? 二人しかいない? 残りの1人は─────!」

「事を急きましたね。踏み込みが甘いですよ」

 先ほど殴り飛ばしたスズの武器がこちらに飛んできた。
 破れかぶれの雑な投擲、とは言え鎧のない所に当たればタダじゃ済まない。飛んで来たソレを剣で弾く。
 第三段階完了。

「────ガハッ」

 アルトリアの背後より閃く白刃。今の今まで潜伏していた双葉による、首を狙ったナイフの一振り。
 飛来物を剣で弾いた一瞬の隙。無数の駆け引きを叩きつけて判断力を飽和させ、作り上げた一瞬の隙。シロ達の作戦は全てこの一瞬の為にあった。

 ───確かにアルトリアを倒す必要はない、だが放置も出来ない。放置するには余りにも強すぎる。

386 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:50:40 ID:RLDvqAMXE4
>>385
「作戦かんりょう」

 アルトリアの首より夥しい血が吹き出す。切断にまでは至らなかったが、これ程の出血なら5分と掛らず死に至る。
 だが──

「オオオオオァァァ!!!」

 アルトリアは止まらない。彼女は英雄、その名高きアーサー王伝説の主人公。首を切られた程度では止まれぬ。

「行くぞ!」

「ちょ、うわあああぁぁぁ!?」

 スズの宝具を両断し、シロとばあちゃるを山寺に投げ飛ばし送り込む。
 動揺の声を上げ飛んでゆく二人を見送る。

「…………やってくれましたわね」

 ピノが忌々しげに呟く。

 山寺に突入しようとする動きは全て欺瞞。ハナから、アルトリアの撃破に5人全員を宛てるつもりでいた。
 それに気付いたアルトリアは逆にブラフを利用。スズの宝具を壊した上で、シロ達を分断せしめた。
 致命傷を受けた彼女はもうじき死ぬ、それは確定事項。そして、そうなれば5人全員がカカラの大元と対峙することになる。ソレを避けるための行動だ。

「………ああ、そうだ。やってやった」

 ───と、言う風にアルトリアは己を騙した。普通に二人を叩き斬ればソレで済むところを、屁理屈付けて『投げ飛ばす』などと言う非合理的行動をやってのけたのだ。
 操られの身たるアルトリアは、常に自身の思う最適解しか取れない。だから自分を騙す必要があった、そしてソレをやってのけた。

387 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:51:23 ID:RLDvqAMXE4
>>386
 ほんの一時、瞼を閉じて過去を思い返す。

 ─────あの老醜、『蔵硯』の成れの果てに召喚され、長いこと経つ。
 契約で縛られ、門番として長いこと苦役に従事した。
 精神はそのままに体を操られる屈辱を受け続けた。
 いくら心が拒もうと、体に染み付いた絶人の剣技が侵入者を斬り裂いた。
 そうしてまた門番を続けた。

 繰り返し繰り返し、終わらぬ苦痛。ソレにやっと反抗をなした。些細な裏切り、きっと誰にも解らぬだろう。だがそれでよい、結果としてアレが死ねばそれでよい。
 ─────怪物よ、老醜なる怪物よ。お前の元に終りが来たぞ、震えて目せ。


 重い体に力を入れ、己を出し抜いた強者達に名乗りを上げる。

「改めて名乗ろう。我が名はアルトリア・ペンドラゴン」

 体から血と熱が抜けてゆく。死の気配を感じながら言葉を紡ぐ。

「そしてどうか、卿らの名を教えてはくれまいか」

 それは一度アルトリアが拒否した事だ。奇妙な申し出に三人は顔を見合わせ、僅かな逡巡の後に口を開く。

「…………カルロ・ピノ」「北上双葉」「神楽すず」

 三人の声は穏やかで、そして厳か──────これは、そうか。死する者への、手向けの声だ。
 なんと優しい者達だろう。今すぐにでも仲間を助けに行きたいだろうに、それでも敗者への情けを優先するとは。

 だが、それは酷い勘違いだ。決して、冥途の土産に名を聞いたわけでは無い。

「そうか、良い名だ…………我が魂に刻んでおこう」

388 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:52:14 ID:RLDvqAMXE4
>>387

 手を抜いたまま死ぬ事など出来ぬ。己が理性は『このまま死んで道を開けてやれ』と叫ぶが、そんな事は出来ぬ。我が身に沁みついた騎士の誇りがソレを許さないのだから。
 巨人殺し、龍殺し、聖剣の担い手、騎士王、ブリテンの救世主、円卓の主──────数々の勇名、その所以をしばし御覧あれ。


 アルトリアは短く息を吐き、己の意志で剣を構えた。肉体と意志が噛みあう感触、久方ぶりのソレに薄く笑みを浮かべる。

「──────ッ!」

 ピノ、双葉、スズ、三人の本能が同時に警鐘を鳴らす。
 命の刻限は刻一刻と減り行き、膨大であった魔力は今や矮小と化している。だがどうしてだろうか、三人の本能は目の前の半死人を、今までとは比べ物にならぬ強敵として認識している。

「オオアアア!!」

 最早言葉は要らない。裂帛の気合いを込めた踏み込みと共に剣を振るう。

「ぬっ、グッ!?」

 双葉は両手のナイフで持って応戦するが、完全に押されている。剣速は決して速くない、が何故か対応出来ないのだ。全ての攻撃に対して認識が一拍遅れる。

 技の起こり、人はこの瞬間攻撃に意識が集中し、無防備になる。視線、呼吸、重心のブレ、僅かな兆候からその瞬間を読み、狙う。アルトリアはこれを行っていた。

 ──────北上双葉。チャンスが来るまで一瞬たりとも殺気を漏らさぬその忍耐力、誠に素晴らしい。だが正面戦闘はやや不得手な様だ。
 大上段からの唐竹割りを受け止めて体勢が崩れた所に、蹴りを入れる。剣の対処で既に精いっぱいだった双葉はソレをあっさり喰らってしまう。

「シッ!」

 割り込む様に突き出されるピノの槍。彼女の動きは鋭く、そして堅実だ。何が有ってもこちらの間合いに入ろうとはせず、槍が得意とする中距離に徹している。

389 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:52:58 ID:RLDvqAMXE4
>>388
 槍の弱点である遠心力の過大さを動きを止めない事で克服。小柄な体躯と言う弱点に対し、間合いの長い槍を使うことで『的が小さい』と言う長所を強調してのけた。感嘆に値する。
 だが──────

「ハァ!」

 ────筋力が少々足りないのは頂けない。突き出された穂先を叩き落とす。
 剣を振るう腕を脱力させ、相手の獲物と接触する瞬間に力を込める。筋肉の収縮によって生まれる、ごく一瞬の加速。その加速を用いて武器を叩き落とす業だ。
 力の強い相手には通じないが、そうでなければ良く通る。

「やらせるかぁ!!」

 武器を落としたピノを掴んで引き下げ、スズが前に出てくる。
 岩すら砕くスズのフルスイング。一撃でも当たれば、今度こそアルトリアを倒せるだろう。

 ──────彼女も素晴らしい戦士だ。己の強さへの確固たる信頼、それ故全ての攻撃に躊躇いが無い。

「ハガッ!?」

 スズの懐に潜り込み、彼女自身の力を用いて投げ飛ばす。放り投げられたスズの体は、石段へと強かに打ち付けられる。

 ─────躊躇いが無いのは良いが、重心の移動が少々ぎこちない。闘争心が体を追い越してしまっている。これでは簡単に投げ飛ばせてしまう、こうやって。

 そのままスズに追撃を入れ「ゴフッ…………」
 ようとした瞬間、アルトリアの身体から突如力が抜ける。どす黒い血が口元から溢れだす。

「──────」

 4、5歩後ろに下がり、口を抑える。
 もう終わりなのか。嗚呼、これではダメだ──────こんな剣ではダメだ。黒く、禍々しい剣。門番を務めた長い年月、その間に多くの罪なき者の血を吸い、堕ちたこの剣では、あの強者達に相応しくない。
 嗚呼無念──────「!!」

390 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:54:06 ID:RLDvqAMXE4
>>389
 突如アルトリアに魔力が供給される。どうやら少しでも長く足止めさせる為、怪物の主様が魔力をくれた様だ──────これは何とも好都合。

 戦いへの衝動、騎士の衝動がやおら煌々と燃え上がる。

「ハアアアアア!!!!!」

 湧き上がる衝動のままに、己が剣をへし折る。折った剣を全霊の魔力で燃やし、溶かし、整形し、打ち直す。
 ソレは己が伝説の再現。折れたカリバーンを打ち直し、聖剣エクスカリバーを作り上げた、伝説の一幕。その再現を今ここで行ったのだ。

「…………これで最後だ」

 美しき蒼の柄、研ぎ澄まされた刃、全体にあしらわれた金細工は王権の現れ。これぞ聖剣エクスカリバー。
 ──────自身の霊基が崩壊を始めた。聖剣をその場で作り出す無茶、それが決め手になったようだ。

 己が消えゆく虚脱感の中アルトリアは聖剣を振るい、凛とした声で叫ぶ。

「───束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い!─────『エクスカリバー』!!」

 聖剣より放たれるはエネルギーの大奔流、星のエーテルそのもの。黄金の光を放つソレは、通過した遍くを破壊しながら三人に迫る。

「受けてやるもんか!」

 双葉はスキル『植物操作』でもって宝具の迎撃を試みる。四方八方から生え伸びたツタが奔流を阻み──────すぐさま消し飛んだ。

「うわっ、まじか」

「黒々煌々、千万億万の我が兵よ、我が元に集え、空裂く羽にて軍歌を鳴らせ、節持つ足にて軍靴を刻め『億万蟲軍 大黒津波』」

391 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:55:41 ID:RLDvqAMXE4
>>390
 続けてピノが宝具を発動する。
 何処からともなくハエがアリがシロアリが蟷螂がクモが蜂が蝶が虫が虫が虫が虫が虫が幾万の羽音を刻み重ね、幾億の節足を踏み鳴らして馳せ参ずる。膨大な数の群れ、大地を黒くガサガサと塗りつぶす黒津波。これぞピノが宝具『億万蟲軍 大黒津波』。

 ──────膨大な数の虫を操る強力な宝具。ピノはこれの使用を好まない。蟲の制御が非常に困難である上、宝具の使用にかなりの代償を必要とするからだ。
 だが、この状況で贅沢は言えない。

「行け、わたくしの虫さん達」

 膨大な数の虫が黒き濁流となって奔り、黄金の奔流へと身を投じる。奔流を止める為に、ピノの為に。
 甲殻が灰へ変じ、六本八本の脚が何本欠けようとその動きは止まらぬ。先頭の虫が死ねば、後続が先頭を踏み越えて先へと進む。

 ────しかし、徐々にだが、蟲の軍勢が、黄金の奔流に押され始める。相手の出力が高すぎるのだ。

「─────あぁ」

 これをどうにか打開できないか、ピノは思考を回し────直後『不可能』と言う結論に至る。手持ちの切り札は吐ききった。避ける余力もない。
 嗚呼、ここまで来て相打ちか。口惜しい、悔しいな──────だが、あんなに綺麗な光、黄金色の奔流に飲まれて死ぬなら中々悪くない。

 走馬灯が巡る脳内、遅延する体感時間。死を確信したピノは諸手を広げて光を迎え入れ「お願いBT君! 皆を守って!」『了解』


 スズの宝具──────大型二足歩行兵器、BTが前に出る。鉄の巨体から火花を散らしながら。
 ────────────有り得ない。スズの宝具は、アルトリアに両断された筈なのに。動くはずが無いのに。

392 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:56:19 ID:RLDvqAMXE4
>>391
「なんで…………」

「魔力供給による修理、宝具が持つ逸話の再現──────色々理屈は付けられますけど、要は気合と友情の賜物ですよ」

 スズの言葉を聞いてか、BTのモノアイが頷くように明滅し、その直後光に飲まれる。

『──────』

 鉄の巨体は紅く融解し、一部は蒸発した。もう原型は殆ど無い──────だが、守り切った。己が身を崩壊させても守り切った。

『損耗率95%、長期休暇を要請します』

 そしてちゃっかり生き残ってもいる。流石機械、コアさえ無事なら他がどうなっても問題は無い様だ。


「…………流石、だ。聖剣の一撃を、凌ぐか」

 そして、聖剣を打ち放ったアルトリア。全力を出し切った彼女は消える寸前、いや消える最中だ。
 足は既に消滅し、腰から上へと消滅が進行している。後十秒もすれば完全に消えるだろう。

 アルトリアは薄れゆく顔に称賛の笑みを浮かべ、擦れた声を張り上げる。

「強き者らよ…………これを、受け取れ。我が聖剣を託そう」

 聖剣に付いた血を拭きとり、鞘に納める。崩壊し、拡散し、消えゆく己が魔力を聖剣の中へ注ぎ込む。

393 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:57:08 ID:RLDvqAMXE4
>>392
「急造ゆえ、一度振るえば壊れる。賢く使うが良い」

 心地の良い風が頬を撫でる。山の木々が豊かに騒めいて、落ち葉が一枚こちらに─────────────────ああ士郎、貴方もそこに居るのですか。私もお供しましょう。

 アルトリアが最期に感じたモノ。それはひんやりと優しい若落ち葉の感触、愉快な満足感、そして古い思い人の姿だった。



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「まったく……勝った気がしませんわ」

「とちゅうから、物凄くつよかったもんね」

「まあ、聖剣なんか託してくれたぐらいだし、こちらの勝ちって事で良いと思いますよ」

 その場でへたり込む三人。シロ達を助けに行きたい気持ちはあるが、流石にもう戦えない。体力も魔力も全部出し切った。
 それにピノがまだ、宝具の代償を支払っていない。

「ほら、飲みなさい」

 ピノは己に槍を突き刺し、流れ出た血を虫達に与えた。虫は血に群がって我先にと啜り出す。

394 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 12:57:44 ID:RLDvqAMXE4
>>393

 ───武士が領地を求めるように、騎士が叙勲を求めるように、ピノの虫も献身に見返りを求める。
 主従関係とは、主から与えるモノがあって初めて成り立つ関係だ。故にピノは代償の存在に納得している。しかしそれはそれとして、代償が重いのは確かなのでピノは宝具の使用を好まない。

「…………さて、どうしましょうか」

「さすがにもう余力がないかなぁ」

「加勢するにしても、体力と魔力を回復させてから、ですかね」

 アルトリアが遺した聖剣を手に持ち、遠い空を眺める。今日の空は薄曇り、あの雲を抜ければきっと、さぞや綺麗な雲海が見える事だろう。
 死した人の魂は天へと帰るそうだが、英霊の魂に帰る場所はあるのだろうか──────そんな事を考えている内に瞼は閉じ、深い眠りへと誘われていった。

395 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/02 13:20:03 ID:RLDvqAMXE4
シロちゃんのメン限良かった、、、、


英雄が死の間際に自分を取り戻す系展開が好き

首切られてからの動きは、宝具周り以外は現実でもある程度再現可能だけど、ある程度の技巧が無いと出来ない動きだったりします

ちなみに、アルトリアが意識そのままなのはカカラ側にあんま余力が無いせいだったり

396 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/03 13:15:48 ID:eUR8In1ujv
おっつおっつ、熱い戦いでしたな!(ピノ様の宝具とオベロンの宝具同時にしたらヤバいだろうなとか考えてたのは内緒)最近までやってたイベの水怪クライシスのダゴンの間違った信仰により姿が変えられたって話でVにも通ずるものを感じてた。ようは偏見よね。

397 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/03 19:16:51 ID:W0xs61W2pI
>>396
そうですねぇ、、、、、『無辜の怪物』を始め、偏見由来のスキルは碌なもんじゃありませんし

この先、ちょこっと変わり種のストーリーテリングを予定しているので、お楽しみ頂けたら幸いです。

398 名前:閑話休題『徒然なる人々』[age] 投稿日:2022/05/25 21:56:36 ID:KxTGLbEYyC
>>394

[急募]蟷螂と蜜蜂の排除方法を考えるスレ


1:スレ主
 助けて、目を付けられた

2:名無しさん
 >>1
 諦めろ

4:名無しさん
 無慈悲で草

5:名無しさん
 でも実際そう
 あいつら割と脳筋だからハメるのは簡単だけど、何やっても生き延びてお礼参りに来るんだもの
 燃料満載したトラックで激突されても死なないって最早ギャグだろ

6:スレ主
 そんなこと言わずに助けて下され、、、、、
 既に幹部が何人も音信不通になってて士気ガタガタなんじゃ

7:名無しさん
 草

8:名無しさん
 もう終わりだよその組織

9:名無しさん
 >>1
 そもそもスレ主はどういう役職なん?
 それ次第で出来ること大分変わると思うが


10:スレ主
 >>8
 麻薬事業の部門長

11:名無しさん
 普通に上級幹部で麻生える

12:名無しさん
 あほくさ

13:名無しさん
 最近壊滅気味の組織、、、、『blue-faced』辺りか?
 裏ビデオと個人情報売買が主なシノギで、元はハッカー集団だったとこ。

15:スレ主
 そうそこ! まあ最近は落ち目なんですけどねww
 頭キレる幹部は早々にどっか行っちゃったよ
 ちなワイが部門長なのも、上級幹部が消えて繰り上がったからやで
 元は麻薬事業の警備責任者や

16:名無しさん
 クォレは麻薬部門にまるまる夜逃げされましたね、、、、
 スレ主は体の良いスケープゴートかな

399 名前:閑話休題『徒然なる人々』[age] 投稿日:2022/05/25 21:57:43 ID:KxTGLbEYyC
>>398
17:名無しさん
 もう終わりだよ(二度目)
 それはそうと(唐突)スレ主のスペック開示よろ

18:スレ主
 >>16
 イグザクトリー、正直泣きそう
 >>17
 ええで、ほい

 性別:男
 年齢:24
 改造済み部位:眼球(弾道補正モジュール)、脚部(強化義足、電磁式)、腕部(仕込みレールガン)
        脳(体感時間加速装置)、皮膚(アラミド繊維による防刃強化)
 愛用武器:レッドレンズ(装弾数12発、セミオート式ショットガン)

19:名無しさん
 元警備担当なだけあってほぼフル改造、殺意が凄E
 なお例のジジババ二人には通じん模様

20:名無しさん
 残酷な現実を押し付けるのは辞めろ

21:名無しさん
 蟷螂(セバス)
 性別:男
 年齢:60代
 改造済み部位:脳を除いた全身、武装は仕込み刃のみだと推察される
 愛用武器:上記の仕込み刃

 蜜蜂(エミリー)
 性別:女
 年齢:60代
 改造済み部位:(恐らく)無し
 愛用武器:パイルバンカー
 特記事項:老化による身体能力の低下が見られる

 うん(カタログスペックだけ見れば)普通だな!


22:名無しさん
 なおry

23:スレ主
 取り敢えず、策略or政治的圧力でどうにかする手段が欲しい

24:名無しさん
 策略なあ、、、、結局一時しのぎにしかならんのよなぁ
 そもそも何で目ぇ付けられたんや? ここ数年は異常に大人しくなっていた筈だが

400 名前:閑話休題『徒然なる人々』[age] 投稿日:2022/05/25 21:58:18 ID:KxTGLbEYyC
>>399

25:スレ主
 ウチのハッカーチームが先走って『スパークリングチャット』んとこに手出ししたせいや
 マジでふざけんな、何が『あそこは大きな計画を企てている、資金の流れがおかしい』だ

26:名無しさん
 全力で虎の尾踏みに行ってて笑えない
 蟷螂と蜜蜂の飼い主に手だしたらそりゃそうなるよ

27:名無しさん
 あそこのオーナーがそもそもヤバい

 先代オーナーの急死をきっかけに起こった実権争い
 最終的にエルフc4とサンフラワーストリートの一騎打ちになるも結果が付かず
 両者の共同所有で話が纏まりかけた所を、横から全部かっさらって行った戦巧者ぞ


28:スレ主
 それはそうと(軌道修正)
 例のジジババをどうにかする方法は無いんですか?

29:名無しさん
 全力で逃げろ

30:名無しさん
 前は政治圧力かければどうにかなる事も多かったけど
 今は半端に圧力掛けても、スパチャのオーナーが跳ね返しちゃうんよ

31:名無しさん
 ぶっちゃけエルフc4みたく腕力と影響力の両輪でゴリ押しするのが最適解まである
 出来ない場合? 逃げろ

32:スレ主
 OK、夜逃げするわ、、、、ん?

33:名無しさん
 どうした?

34:スレ主
 なんか外がうるさくせあふじこjp

35:名無しさん
 これは手遅れでしたね
 殺されはしないだろうし別に良いか

36:名無しさん
 大抵は獄中で謎の記憶喪失をする運命なんですけどね(記憶消去技術)
 幹部は大事な情報持ってるから特に

37:名無しさん
 死ぬよりはマシ

401 名前:閑話休題『徒然なる人々』[age] 投稿日:2022/05/25 21:58:54 ID:KxTGLbEYyC
>>400
38:名無しさん
 そうか? (社会復帰困難、前科持ち、積み重ねた技能も記憶ごと消し飛ぶ)

44:名無しさん
 組織壊滅状態だから案外無事に出所出来そう

47:名無しさん
 刑務所によっては賄賂の分割払い受け付けてる所もあるし解らんぞ
 月々の分は個人でも払える額だし

48:名無しさん
 賄賂の分割払いとかいうパワーワード
 刑務所民営化はさすがに駄目だろ(悪人感)

49:名無しさん
 つか政府がやってたこと殆ど民営化されてんのよな
 裁判所、刑務所、社会保障、、、、もろもろ
 政府運営なのって公共警備隊くらいか?

53:名無しさん
 あの警備隊も胡散臭いけどな。

 賄賂が通らなくなったのはまぁ良いとして、
 ここ数年の警備隊員の身辺状況が不明過ぎるのが怪しい。

54:名無しさん
 で、でたー 陰謀論唱える奴ー

55:名無しさん
 >>53
 なにそれ初耳
 少し前にデカい不祥事があって、上役が軒並み首切られたのは知ってるけど

56:名無しさん
 デマやろどうせ、、、

57:名無しさん
 いやさ、その不祥事以降に入隊した奴らの身元がマジで軒並み『不明』なのよ。
 元々『楽園』絡みの警備隊員は身元不明だったけど、あそこは特殊な場所だから別に不自然ではない、んだけど
 普通の隊員まで身元不明なのはガチで謎。

 不祥事の内容も入ってこんし。

58:名無しさん
 そもそもなんで警備隊の身元何か調べてんのさ

59:名無しさん
 >>58
 警備隊にウチの部下が捕えられる→賄賂送っても反応なし→脅しかける為に個人情報掘っても何も見つからない→不審に思って警備隊全員を本格的に調べる
 こんな感じ

402 名前:閑話休題『徒然なる人々』[age] 投稿日:2022/05/25 21:59:31 ID:KxTGLbEYyC
>>401
60:スレ主
 >>57何それ気になる

61:名無しさん
 >>60 生きてたんかワレ!

62:名無しさん
 やったんか!?

63:名無しさん
 !?

68:スレ主
 例のジジババじゃなくてただの刺客だった
 『お前を組織のボスに仕立てあげてスケープゴートにする』だってさ
 ま、余裕で撃退出来たんですけどね。こちとら腕っぷしと運だけで成りあがった身ぞ

 心配してくれた人たちはサンクス

71:名無しさん
 無事で何より
 つうか、その計画は無理あるだろ、、、、馬鹿すぎん?

72:スレ主
 有能はとっくに夜逃げしたからしょうがないね
 今残ってるのは状況も解らない下っ端と、ワイみたいな踏ん切りの付かない馬鹿だけや

 因みにボスもいつの間にか腹心と一緒に蒸発してたらしい。今刺客から聞き出した
 マジでいつ消えたか誰も解らんらしいね、やっぱ組織の長務める人は凄いなって(小並感)

73:スレ主
 とりま、刺客にそれっぽい記憶植え付けてワイに仕立てあげるわ
 記憶操作する器具は刺客が持ってたのでええやろ
 後は顔潰しときゃどうにかなる

 そんな事より、警備隊の件についてもっと詳しく頼んます
 これから夜逃げするんで通信器具は捨てなきゃだし、今のうちに少しでも情勢を知っときたいんや

78:名無しさん
 計画パクってて草

403 名前:閑話休題『徒然なる人々』[age] 投稿日:2022/05/25 22:00:06 ID:KxTGLbEYyC
>>402
80:名無しさん
 サラッと顔潰した上で記憶書き換えてて笑う
 幹部になりたきゃそう言う思い切りが必要なんやなって(下っ端並感)

88:>>57
 >>1
 情報屋だからホントはこう言う事しちゃダメだけど、スレ主の生還記念にぶちまけたる。
 調べてみたところ、不祥事以降の警備隊員の大多数は身長とかの身体的特徴が皆同じなんや。
 ブーツの厚みとかを変えて誤魔化してるから分かりにくいけど。
 それぞれの身長がミリ単位で一致しとるから偶然はあり得ん。
 装備越しに見える顔の特徴もほぼ一致しとるから100%クロ。

90:スレ主
 うわ、完全にやってるやん
 人員をアンドロイド的なナニカに置き換えてんのか

91:名無しさん
 やけに情報持ってんなと思ったら本職の人だったのか、、、、納得

95:>>57
 >>90
 身内でもその説が有力
 でもそれらしい工場の稼働記録も無いのよね。人に擬態できるアンドロイドとか、相当大きな工場動かさんと作れん筈なのに。
 結局確かな事は解らず終い。
 はっきりしてるのは『公共警備隊』に近付くなって事だけ。

 それはそうと、スレ主。ワイの元で働かんか?
 顔を変える為の裏医者も紹介するで。

100:スレ主
 マジで!?
 ありがたいわ、、、、でもええんか?

105:>>57
 有名所の元警備責任者なら用心棒として大歓迎や。
 スペックと近況を聞く感じ本人なのは間違いないし。
 メールで住所送っといたからそこで待ち合せな。

107:名無しさん
 『スペックと近況を聞く限り』、、、、サラッと個人情報把握してるよ、、、、

1

404 名前:閑話休題『徒然なる人々』[age] 投稿日:2022/05/25 22:00:18 ID:KxTGLbEYyC
>>403
109:名無しさん
 スレ主の個人情報バレバレで草も生えない
 そういや主のいるところ『blue-faced』って個人情報の売買もやってるんだっけか
 主の情報も売られてたりして(笑)

111:>>42
 組織の別派閥から安価でもらい受けたで。
 勿論渡される人数は限定されてたけど。

120:名無しさん
 えっ

124:名無しさん
 草

126:スレ主
 えっ

129:名無しさん
 もう終わりだよその組織(n回目)

131:スレ主
 ホントにメール来てる、、、、
 まあいいや、ありがとうなスレ民達
 おまいらのお陰で転職先ゲット出来たは


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405 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/25 22:09:15 ID:KxTGLbEYyC
レポート課題で忙しいので、今日は閑話休題だけ投稿して、本編は後日投稿します
世界観の補強&伏線の再確認回です、少し変わった形で本編にも絡んでくると思います

裏設定
『Blue-faced』
元ネタ:ミルダムのアイコン(顔のついた蒼いカメラ→顔を付けた蒼い物体→Blue-faced)

個人情報の売買から組織を大きくしたは良いものの、調子に乗って多角経営やって赤字出しまくった残念な組織
一度組織をスリム化してやり直す為に、わざとヤバい所に喧嘩売って組織内部が混乱している内に腹心つれて蒸発した

406 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/26 05:26:41 ID:ArfKjAvleX
おっつおっつ、閑話とかでその世界の裏事情とか見られるの好き、この世界怖ぇww

407 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/05/26 07:30:47 ID:KxTGLbEYyC
>>406
一回シャドウサーヴァント達に人間社会ぶっ壊されて、そこから無理くり再建してるので歪みも多いんですよねぇ

メタ的な事言うと、グーグルシティのモデルがサイバーパンク2077のナイトシティだったってのもあります

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