バーチャルグランドオーダー
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1 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/10 06:35:39 ID:e2ryl5IgSn
鯖化Vtuberを皆で妄想するスレ様から着想を頂いて書くSSの長い奴です

< 123
2 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:37:21 ID:e2ryl5IgSn
『第一特異点 炎上汚染界隈youtube』

「……どうしたもんですかね……これ」

 馬の覆面を被った奇人、もといばあちゃるは冬の青空を見上げ一人語散る。

「ねえ馬!しっかりして、ぼんやりしてたらシロ、置いていっちゃうよ?」
「はーいはいはいはいシロちゃん、今しっかりしましたから置いて行かないで下さいね」

 今ばあちゃるに楽しげに話しかけているのは白髪青目の幼びた美少女、電脳少女シロだ。

「いやぁ、でもこの状況何なんですかね、ヤバーしですよヤバーし」

 ばあちゃるは困惑していた。
 会社の健康診断の結果を受け取りに行っただけの筈が突然連れ去られ、気が付けばシロと名乗る美少女とともに雪山を連行されている。
 シロが友好的なこととばあちゃるの馬のマスクがシロに受けたのもあり和気藹々とした雰囲気ではあるものの、現在進行形で誘拐されているのは紛れもない事実である。
 そうこう思い悩みながら真白な雪をギュウと踏み固め雪山を登っていると、ポツリと小さく建物が見えてくる。

「シロちゃんに質問していいっすかね」
「ん&#12316;&#12316;良いよ!どんな質問?」
「オイラが連れていかれるであろうあそこの建物が何なのか教えて欲しいんですよハイハイハイハイ」
「そういう事ね、おけまる!あそこはねぇ、未来の観測所、それ以外の役割もあるけど、まぁいくらでも説明する時間は有りますし&#12316;」
「未来の観測所?何かヤバーシーっすね」

3 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:37:52 ID:e2ryl5IgSn
>>2
 ポツリとだけ見えていた建物は近づく程にグングンと存在感を増し、十分も歩かない内に到着した。
 シロが扉を開けばそこには巨大な大広間が広がっている。
 如何にも近未来チックな内装と、不可思議な紋様で埋め尽くされた床。そしてその中央に浮かぶ金髪の女性の似顔絵に立体感を足したようなもの、それが大広間の中央にズンと鎮座している。
「アレは……なんすか?」
「アレこそが、この未来観測所ブイデアの要、未来演算及び時間跳躍装置、KANGONだよ。凄いでしょ」
 

4 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:39:07 ID:e2ryl5IgSn
>>3
「KANGON?随分変わった名前っすね、と言うかサラッとヤバーし気な単語が」
「そーだねぇ、今の事情含めて説明出来る子がいるんだけど、、、いた!あずきちゃん!」
「ハァイ」

 背後から突然返事が聞こえたことに驚き、その弾みで前にバタンと倒れてしまう。咄嗟に手を突いたおかげで怪我は無いが、馬のマスクが90度程回転し古代エジプトの壁画のような珍妙な姿になってしまう。

「キュアアアッッwww、ごめん、ちょっと待って、笑っちゃうwww人の不幸を笑っちゃ駄目っておじいちゃんに言われてるのにwww」
「ハイハイハイハイ、ばあちゃる君はね全然不幸になって無いので笑ってもね問題無いですよ」
「www…………ふぅ、ありがとう。じゃあ改めて紹介するね、この子は木曽あずきちゃん。このブイデアの主席研究員でKANGONを実用化した凄い子なんじゃぁ」
「それは凄いっすね、そんな子がオイラに説明してくれるなんてばあちゃる君感激ですよ」
「ハァイ、あずきですぅ。さっきは驚かせてすみませんでした。呼び名なんですけど、あずき、あずきち、どんな風に呼んでもらっても構いません。でも、出来れば強そうな名前でお願いしますぅ」

 紫髪隠れ目の大人しそうな見た目、しかし内面はいい意味で掴みどころが無い。それがばあちゃるの受けた木曽あずきの印象だった。

5 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:40:55 ID:e2ryl5IgSn
>>4
 あずきはスタスタとKANGONの前まで歩くとばあちゃる達を手招きする。

「ハイハイハイハイ、これがKANGONでいいんすよね?改めて見るとなかなかヤバーしな見た目っすね」
「ハァイ、これこそ未来観測器KANGONですぅ。元々は神道の家の家宝だとか、色んな逸話があるんですけど、、、まぁ良いや。未来観測やはたまた未来から物を持ってこれたりと時間に関してなら一見万能なんですけど、、、とりあえず触れて見てください。」

 そう言われ、ばあちゃるは恐る恐るKANGONに手を触れる。そしてその瞬間流れ込む強烈なイメージ。
 燃え盛る室内、崩落する天井、瓦礫が四肢を砕き潰す音。
 その余りの内容とリアリティに打ちのめされ、思わず床に座り込む。

「フゥ……フゥ……」
「馬、大丈夫?息が相当荒いよ……」
「多分、嫌な未来が見えたんだと思いますぅ。でも安心してください、半年前からKANGONの未来観測は当たたっていません。」
「……え?そ、そうなんすか。それは良かったーーーそれヤバく無いっすか!?」
「ハァイ、かなりヤバいです。半年前までですら未来観測の精度は3割程度だったのに、今じゃ0割。2つ目の能力しか機能していないですぅ。」

 ばあちゃるは会話をしながら考えを整える。
 あずきの言葉をそのまま受け取るなら、あの流れ込んできたイメージが現実になる事は無いと言うことだろう。あってまだ数分だが、あずきが嘘をつくようには見えない。だから、あの光景が現実になる事は無い、無いのだ。強く自分に言い聞かせた。

6 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:42:57 ID:e2ryl5IgSn
>>5
「………えーっと、2つ目の能力と言うと時間跳躍、であってるすよね」
「そうです。時間跳躍ですぅ。未来や過去から物を取り寄せたり、こちらから未来や過去に行くことも可能です。ちなみに、私やシロさんはKANGONを用いて未来から呼び出された英霊なんですけどね」
「そう!そうなの!シロ達は英霊なんだ!あとあずきちゃんは恥ずかしがって言わないけど……任意の未来や過去に行く方法を確立したのはあずきちゃんなんじゃぁ」
「恐縮ですぅ」

 ポウと頬を染めるあずきとばあちゃるの驚く顔を見て得意げなシロ。
 英霊、英霊なら知っている。新入りとの話題づくりの為に見たfateで聞いた言葉だ。嘗て世界に名を刻んだ英雄達、それらが仮初の命を得た存在。

「まだまだこれからの事とか話すべき事は沢山あるんですけどぉ、それは明日説明しますね。」
「……そうっすね。そろそろばあちゃる君頭がパンクしそうなんで嬉しいっす」

7 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:45:41 ID:e2ryl5IgSn
>>6
 あずきとシロに別れを告げた後、寝泊まりする部屋へと案内される。
 近未来的な扉を開けると、部屋の中は温もりを感じる木張りの内装、趣味の良い家具、それと先客がいた。それは死にそうな雰囲気を出しながら書類と格闘していた。
 机にかじり付くその先客は小麦畑のような金髪にアホ毛をぴょこんと生やした、中性的な少女だった。
 
「あのー」
「あっ、ごめん。すぐ片付けるからちょっと待っててね」
「ハイハイハイハイ、終わるまでやっちゃっても全然大丈夫っすよ。オイラこれからお風呂入るんでねハイ」
「うん、ありがとう。でも大丈夫、仕事が丁度一段落したところだから。あと、僕の名前は牛巻りこ、君の名前は?」
「オイラの名前はばあちゃるでフゥ。大分疲れてる様に見えるっすけど大丈夫なんすか?」
「全然大丈夫だよ!平気平気!もう慣れっこだしね」
「それ大丈夫なんすかね……」

 牛巻と駄弁っていると、牛巻の目見麗しい姿と強い個性、そこからシロとあずきを連想する。

「そう言えば、りこりこも英霊、なんすか?」
「そうだよ。牛巻達は13人の英霊なんだ。シロちゃん、あずきちゃん、めめめちゃん、すずちゃん、いろは、ふたばちゃん、イオリン、なとりちゃん、ピノちん、ちえりちゃん、牛巻、もちにゃん、夜桜ちゃん。しめて13、凄く多いでしょ」
「いやー思ったより多いっすね。顔写真とかもあるっすかね。顔と名前一致させときたいんでねハイ」
「もちろんあるよ。なんたって牛巻はブイデア全員の健康の管理をになっているからね!」
「それって……まあ無理はしないで下さいね、、、おお!どの子もかわいいっすね」

8 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:48:12 ID:e2ryl5IgSn
>>7
 渡された写真に写る13人の子達。どの子も百人いれば百万人が振り返るような美少女だった。これからこの子達と仕事をするのが楽しみだ、と思った時。ふとばあちゃる自身の日常を思い出す。
 部下を笑わせようとしてよく滑る上司、生意気だが根はまっすぐな部下、先月結婚したばかりの同僚、さんざん自慢されたのを覚えている。両親とは年に数度しか会え無いが、それでも大切な家族だと間違いなく言える。そんな思い出が堰を切ったようにどんどんと溢れ出てくる。
 堪えきれずソファーに座り込む。馬のマスク内部の湿度がほんの少し上昇する。

「大丈夫?」
「大丈夫っす……いや、少しだけ大丈夫じゃ無いですね。なんで俺は攫われたんですかね……いつになったら俺は帰れるんですかね」
「それは……そうだね。少しくらい早く教えてあげても大丈夫だよね、うん。難しい事は省いて説明するね。ここ一年程、世界はあちこちが切り取られて無かったことにされているんだ。牛巻達もKANGONを使って過去の世界と見比べて初めて気づいたんだよ」
「世界が切り取られる?」
「そう、そして無かったことになる。家族や友人、恋人が切り取られた場所にいれば、その人達は居なかった事になる」
「なんすかそれ。そんなのどう仕様もないじゃ無いっすか……」

 ばあちゃるは更に姿勢を低くして座る。
 これからは大切な人や思い出を失ったことにすら気づけない恐怖に気づき、更に気分が沈む。

9 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:49:46 ID:e2ryl5IgSn
>>8
「いや、どうにかする方法はある。切り取られた世界は寄せ集められて、3個の世界を作っているの。そして各世界には、切り取られた世界のパーツを繋ぎ止める楔の様なものがあると見てる。だから牛巻達が楔を壊せば世界はもとに戻る筈なんだよ」
「なるほど、突飛な話ですがばあちゃる君は信じまフゥ。でも、なんでオイラなんすかね。ばあちゃる君魔術とかわからないっすよ」
「それはね、ばあちゃる含めて十人程しかその3つの世界に行けないからなんだ。その世界はただの時間跳躍じゃ辿り着けないifの時間軸に位置してるの、牛巻達はKANGONの雑さを利用して無理矢理行かないと行けないから本当に適正のある人間は少ないの。」

 ばあちゃるは背筋を伸ばし、さっきよりも明朗な声を作る。

「そうっすね、確かにばあちゃる君には頑張る理由があるみたいですねハイハイハイ」
「酷い事を言ってるのはわかってる。でも今は、今だけはお願いします」
「いやいやいやいや、全然大丈夫っすよ、りこりこ。ばあちゃる君は大人なんでねハイハイ」
「うん、ありがとう」

 会話がひと仕切り終わると牛巻は書類を持ち部屋を退出する。
 ばあちゃるはそれを見届けると、着替える事も忘れ、ベットに倒れ込み、眠りにおちる。

10 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:50:37 ID:e2ryl5IgSn
>>9
 深夜、ばあちゃるは赤い光とサイレンに突然叩き起こされる。
 慌てて部屋の外に出ればそこに見えるのは赤く燃え盛る廊下、罅割れてコンクリートを剥き出しにした青白い床、歯抜けの天井から覗く満天の星空。
 
「ちょいちょいちょい!何なんすかこれ!?ばあちゃる君まだ夢でも見てるんすかね!?」
「いーや馬、これは夢じゃ無いよ。現実だよ」
「あ!シロちゃんじゃないすか!と、とりあえず他の人達は?他の人達は無事なんすか!?」
「そうだよー、シロだおー。ブイデアの人達に関しては安心して、今管理室にいるリコちゃんとあずきちゃんがスタッフの保護をしてるから。シロが思うに、あの二人がいればここの人達は大丈夫。だから馬、今は馬が一番危ないの、早く行こ?」
「エグーー!ばあちゃる君が一番危ないんすか!?ばあちゃる君も怪我するのは嫌ですから速攻で行きますよハイ」

 ばあちゃるのもとに駆けつけたシロ。一見すれば日中の時と同じ落ち着きを保っている様に見えるが、やはり節々に焦りが見える。
 今の状況について走りながら聞こうとも考えたが、今にも崩れそうな壁や天井、そしてばあちゃるの手をクイと引いて走るシロを見てそんな暇は無いと思い直させられる。

 シロに連れられてばあちゃる達は牛巻とあずきのいる管理室へと向う。しかし管理室へと向う途中、不幸な事に瓦礫が道を塞ぎ大広間に立ち往生してしまう。
 そして不幸は続く。

「シロちゃん危ない!」
「え?」

 

11 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:52:06 ID:e2ryl5IgSn
>>10
 ばあちゃるがシロを突き飛ばす。そうやってばあちゃるはシロの上に落ちてきた瓦礫を代わりに受け止めた。
 次の瞬間ばあちゃるの四肢はグシャリと潰れ、その音にばあちゃるはデジャヴを感じると、不思議と冷めた頭でそう考える。
 掠れた視界でも辛うじて見える黄色い物体、それを認識したばあちゃるはデジャヴの正体に思い至る。
(ああそうだ、これはKANGONに触れた時見た、、あの光景だ、、、)
 当たらない筈の予言が当たった、その事に可笑しさを覚え、思い出した記憶と同じ風景の中で思わず笑ってしまう。

「馬!……ねえ馬!!しっかりしてよ!」
「アハハ、すんません……シロちゃん。もう駄目そうですね……世界を救う……やってみたかっんすけどね……」
「ねぇ、シロは英霊なんだよ!?馬より強いの!シロが瓦礫に当っても無事な可能性のほうが高いんだよ!?それに今のは瓦礫に気付かなかったシロの責任なの!シロが怪我するべきだったのに何で!?」
「シロ……ちゃん、ばあちゃる君はね……誰かが悲しんだり……怪我してる姿は……苦手なんですよ……だから……つい……」
「…………そうだったね、馬はいつもそうだもんね、バカだよ、ほんとにバカ」
「アハハ……返す言葉も無いっす」

12 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:54:15 ID:e2ryl5IgSn
>>11
 どんどんと体から命が抜けていく、眠る直前のように瞼が落ちていく。冷えていく。
 シロがばあちゃるの前にかがみ込みマスクを取り去る。吐息の音すら聴こえる距離でシロは問い掛ける。

「ねえ馬、まだ生きたい?」
「ーーーーーーーーー」
「わかった、、、宝具『ーーーー

 大広間は加速度的に崩壊を速めるが、シロはそれを気にも掛けずKANGONのそばまで行くと宝具を使い始める。
 少しするとシロとばあちゃるは白い光に包まれだす。それと同時にシロはKANGONに触れ魔力を流し込む。
 次の瞬間、大広間からシロとばあちゃるは消滅した。

13 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:54:48 ID:e2ryl5IgSn
>>12
■月■■日ーーー私は生まれた時から毎晩不思議な夢を見ている。人間、小人、鳥、はたまた怪物。様々な者が様々に登場し退場し、その中に私はいる。そして目が覚めると、時折物を夢から持ち帰っているのだ。


しかしこの頃は以前にも増して変な夢ばかり見る、、何か意味がある様に思えるので、内容を書き記して置こうと思う。


廃墟と化したコンクリートジャングルを闊歩する人の様なナニカとそれに怯えて暮す人々。唯一繁栄した場所、そこは人気者が全てを決める街、名はグーグルシティ。金に暴力、あらゆる手段でもって自分を誇示し『天国』を目指す醜悪な街。


しかし目を引くものはあった、自由を求め街を抜け出した者達、そしてーーー

ーー日記より抜粋ーーー

14 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 06:58:03 ID:e2ryl5IgSn
>>13
 朝日が眼球を焼き、ばあちゃるを目覚めさせる。

 二度寝しようとする体に活を入れて起こし、辺りを観察する。

 真っ先に目に入るのは崩れかけの室内と、ダイナミックに跳ね回る真白なアホ毛に真夏の湖畔の様に澄み光る蒼い目。シロだ。

「あれ……ここは?」
「おはよう、馬。ここはねぇーー切り取られた世界を改変して作られた3つ箱庭その1つ。シロ達は特異的Yと呼んでるかな」
特異的Y、、、りこりこの言ってた開放すべき世界の事っすね。………?でもばあちゃる君は何でここにいるんですかね?実はばあちゃる君昨日寝てから記憶が曖昧何すよねハイ」

「それは、、うん。実はね、馬が寝てる間にブイデアで火災が起きてね、シロが馬を担いでも間に合いそうになかったからね、取り敢えずKANGONを使って避難の為にここに跳んだの」

 シロは会話を区切ると、鍋を持ってくる。
 立ち昇る匂いが鼻をくすぐる。堪らず鍋を覗きこめば蜜を溶かしたようなスープに蜜柑色のニンジン、柔く透き通るタマネギ、そして湯気立つジャガイモが顔を見せる。暖かな野菜のスープだ。 

「もう朝だしお腹空いてるでしょ?野菜スープ、お上がりよぉ!!」

 シロは威勢よく叫ぶと2つ皿を並べスープをよそう。

「「いただきます」」

 ばあちゃるとシロは手を合わせると少しの間無言で朝ご飯を味わう。

15 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 07:00:39 ID:e2ryl5IgSn
>>14
「…………フゥ。これ美味しいっすね。不思議と懐かしい味ですねハイ。これシロちゃんが作ったんすか?」

「もちろん!この家から調味料と調理器具、あと家庭菜園から野菜をちょっとだけね、ちょっとだけ拝借したの、まぁここ廃墟だしぃ?問題無い問題無い」

「それ大丈夫なんすかね……あと今更何ですけど、ここは特異的Yの何処なんすか?」

「ごめんね、実はシロもここが何処なのか判らないの。KANGONはとにかく大雑把だからね。あずきちゃんの補助が無いと何処に出るかわからないんじゃぁ」

「そうなんすか、あの時ブイデアに残っていたりこりことあずあずは大丈夫だといいっすけどねハイ」

「大丈夫だよ。守る戦いで牛巻とあずきちゃんにかなう存在はいないからね、例えシロと他の子が束になってもあの二人の守りは抜けないからねぇ」

「じゃあ安心っすね……ごちそうさまです」

「ごちそうさま」

 朝食を食べ終わると二人は最低限身嗜みを整え外に出る。

 外から今まで滞在していた場所を見れば、やはりそこは廃墟と化した一軒家だった。そして外の景色はと言えば、ただ広がる荒廃し切ったビル群と住宅街、そしてーーー

「シロちゃん危な、「大丈夫だよ」

 さっきまで滞在していた廃墟の屋根から人影がシロに襲いかかる。しかしシロは最初から上を警戒してたのだろう。いつの間にか手に持っている自動小銃の照準を合わせ、余裕を持って頭を撃ち抜く。

「&#12316;&#12316;&#8814;‰%」

 しかし頭を撃ち抜かれた筈の人影は、奇怪な叫び声を上げながら四足で着地し、そのままの体制で今度はばあちゃるへ猛然と走り出す。

「うわ!ヤバーしですよヤバーし」

「馬、もう少し緊張感持って」

16 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 07:03:27 ID:e2ryl5IgSn
>>15
 慌てふためくばあちゃるを脇目に、シロはナイフを4、5本取り出し投げつけ、地面に縫い止める。

 トドメを刺そうと近づくが、頭を撃ち抜かれても平然としていたソレは既にピクリとも動かない。

「あるぅぇぇ?何で動かないの?死んだふり?」

「今死んだふりをしても意味ないんでねハイ、死んでると思いますよシロちゃん」

「凄い落ち着いてるね馬、もしかして強がりぃ?」

「ばあちゃる君はもう決意固めですからねハイ。それにしてもシロちゃん、これ人間じゃ無いのはわかるんすけど、何なんですかね?」

「シロも見た事無いかな……ほんとに何なんだろこれ。殆ど植物で構成されてる事と、さっきナイフの刺さった胸にコアみたいなのがあるのは解るけど、それぐらいかな。」

「そこまで解れば十分だと思いますよハイ。じゃあ出発しちゃいましょうか」

「そうだね」

 シロとばあちゃるは立ち上がり、ビル群へと向かい歩き出す。

17 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/10 07:11:37 ID:e2ryl5IgSn
続く

取り敢えず移行と一部表現の変更をしました。本筋にはなんの影響も無いです。

あとなんで原作の様に歴史の焼却にしなかったかと言いますと、まだVの歴史が短いからです。原作がウン千年単位で燃やしてやっとなのに、その百分の一未満では流石に足りないかなと思いました。

ちなみに現時点ではほぼ黒幕の思惑通りの状況です。

18 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/12 17:48:04 ID:.aMSgFpdSZ
好きだったのでうれしいです、気長に待ちます

19 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:12:12 ID:7NieBZAstA
>>16
 2人はひび割れた道路を歩く。ばあちゃるが前を、シロが後ろを警戒して歩いているが先の化物はあれ以降姿を見せない。

「あの化物全然見掛けないですねハイ。そういえばシロちゃん、今オイラ達は何処に向かってるんですかねハイハイ」
「今向かってるのは霊脈だねぇー。霊脈に行けばあずきちゃんと牛巻と連絡が取れるかもだから」
「霊脈って便利なんすね……」
「まあそうだね、この特異的の霊脈はシロ達の世界から切り取ったものだからねぇ。元の世界と魔術的な繋がりが残ってるんだよね」
「ハイハイハイ、なるほど、勉強になりますよシロちゃ、、ん、、、、!?」

 微かに聴こえるペタペタと言う足音。ばあちゃるが遠く前方に化け物を見つける、それも1、2体では無い、2桁は確実に居る。
 シロとばあちゃるは咄嗟に身構えるが、化け物達は一心不乱に霊脈の方へ向かっている。

「一体何が起こってるんですかね……?」
「わからないねぇ、でも嫌な予感がする。急ぐよ、馬」
「了解っす」

 化け物達の向かう方、霊脈へと2人は急ぐ。

 辿り着いた霊脈の周囲に辿り着いた2人は化け物達を警戒し、ビルの中から様を見る。
 そこには予想外の光景が広がっていた。

20 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:16:58 ID:7NieBZAstA
>>19
      「「うわぁ……」」

 2人がドン引きするのも無理はない。霊脈に辿り着いた化け物達は仲間割れを起こしていた。
 切り裂き、傷付け、喰らい合う。化け物が血も流さず緑色の中身をこぼし戦う様は何処かシュールですらあった。

「何やってるんですかねアイツら。ばあちゃる君もドン引きですよはい」
「シロもほちょにドン引きだよ……なんで霊脈まで来てやってるんだろうねぇ」
「さあ……あの化け物達は孤独が好きなんじゃないっすかね?」
「ウフフ、もしそうならパリピ嫌いのシロと気が合うねwwwん?まって、馬今なんて言った?」
「ハイハイ、あの化け物達は孤独が好きって言ったんすよシロちゃん」
「孤独、、、こどく、、蠱毒。馬、護身用にこれ持ってて、少しマズイかも」

 シロは手早く武器を渡す。ズシリと重い拳銃に軍用の真っ黒なハンドアックス。
 渡し終わるとシロは間髪入れずナイフを呼び出し、一人残る化け物のコアへ投げつける。ナイフは狙い通りの所へサクリと突き刺さる。
 しかし化け物は凄まじい速度で膨張をし、ナイフはコアまで届かない。

「遅かった!本格的にマズイねぇ……」
「化け物が進化しましたよシロちゃん!ばあちゃる君もびっくりですよ」
「馬、あれはーー蠱毒の法かな。毒虫に共食いをさせて人を殺せる毒虫を作り出す儀式だけど、毒虫を化け物に変えて行ってるね……」


     「グルオオオオオオ!!!!」

 化け物の膨張が終わる。身長は3メートル程まで巨大化し、体の色も返り血を思わせるくすんだ朱へと変わる。
 元々あった鉤爪は無くなったが、代わりに2本新しく生えた4本の長く強靭な腕。戦車を想起させる重厚な体躯。左胸に刺さるナイフすらこの化け物の脅威を表す装飾品に成り下がる。

 しかしシロは、そしてばあちゃるも臆しはしない。

21 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:19:48 ID:7NieBZAstA
>>20
「おほほい!おほほい!シロちゃんはー!アイドルになるんだからー!こんなやつー!屁でもないんだコラー!!」

「ばあちゃる君はどうすれば良いっすかね!?」

「周囲を警戒してて!!」

「了解!!」

 シロは先端にナイフを括り付けた自動小銃、いわゆる銃剣を取り出し銃弾を何発も叩き込みながら朱い化け物に突撃する。
 殆どの弾は表面を削るに留まり効いてる様子は無く、避ける様子も無い。が、胸に刺さるナイフに当たりそうな弾だけは大げさに避ける。

      「グルルルゥゥ……」

「!?、シロちゃん!押し込んじゃいましょうアレ!」

「解ってるよ馬!」

 化け物は4本の腕をブンと素早く振り回しシロを叩き潰そうとする。しかしシロはそれらを軽々避け続ける。

「頑張れシロちゃん!」

「もちろん!」

 ばあちゃるはせめてものの加勢としてシロを応援する。応援しか出来ない自分を密かに恥じながら。
 渡された武器を持つ手に自然と力がこもる。体の血がうるさく鳴る。

      「グ、グルオオオオオオ!!」

       「まだまだ行くよぅ!」  

 化け物の動きは徐々に精彩を欠いていくが、シロの動きに陰りは無い。

 そして決着の時が来る。
 化け物が4本全ての腕を振りかぶった瞬間、シロは銃剣の先端を地面に叩きつけ飛び上がり化け物の左胸に強烈な蹴りを叩き込み胸のナイフを深々と押し込む。


      「グルアアア……」 

 ナイフがコアまで辿り着いた化け物はついに倒れ伏す。

22 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:22:14 ID:7NieBZAstA
>>21
「凄い、凄いですよシロちゃん!こんなでっかい化け物倒しちゃうなんて、ばあちゃる君驚き桃の木さんしょの木ですよハイ」
「んふふー。もっと褒めても良いんだよー」
「もちろんですよハイハイ。シロちゃんがいたからばあちゃる君は助かったんですからねハイ」

 ばあちゃるからの感謝を聞いたシロはふと顔をうつむかせる。

「助ける、か…………馬。褒めてくれたのは嬉しいけど、シロ達のこと恨まないの?シロ達が馬を巻き込んだんだよ?」
「逆ですよシロちゃん。ばあちゃる君は感謝してるんです。確かにばあちゃる君は日常から無理やり引き離されちゃいましたよ。そこはちょっとだけ恨んでます」

「…………うん」
「でもねシロちゃん、あの時ばあちゃる君は立ち向かう権利を得たんですよ。ばあちゃる君ぐらいの年になるとね、もう会えない人、忘れたくない思い出、今の自分を作り上げる記憶、本当にたくさんあるんです。大人を支える柱は過去を土台にしてるんですよ。だからねシロちゃん、俺は世界を切り取って無かったことにする、過去を踏みにじる所業を許せない。ばあちゃる君はばあちゃる君が望んでここにいるんです」

「だから恨まないの……?」
「違いますよ、恨みでなく感謝してるんです」
「うん、、、解った。ありがとう」

 シロは顔を上げると頬を叩く。ほんのり赤くなった頬を携え明るい笑顔を浮かべる。

「よし!早速牛巻とあずきちゃんに通信しよう!!」
「そういえばその目的で霊脈に来たんでしたね……ばあちゃる君すっかり忘れてましたよハイ」

23 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 13:34:29 ID:7NieBZAstA
続く

今回は中ボス戦でした。最初は腕から伸縮性のある蔦を出したり、コアが2つあったり、死んだふりをする悪知恵が働くやつになる予定でしたが流石に長くなりすぎるなと思い大幅にナーフしました。結果予定していたばあちゃるの覚醒イベントが先送りになりました。

戦闘シーンが、戦闘シーンが書きにくいのが悪い……!!

あとついでにいくつか質問です。
「おほほい!」
「おほほい!」



「おほほい!」

「おほほい!」

のかどちらが読みやすいでしょうか

もう一つです、この化け物の名前を決めたいのですがいい名前が思いつきません。思いついた方は教えてくれると嬉しいです。(人と植物の)ハーフで趣味は鉤爪の手入れ、待ち伏せが出来る程度には頭の回るいい子達です。

24 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/15 18:54:44 ID:H6L99ygUQP
>>23
間開けてくれると個人的には読みやすいです
あと名前なのですが自分ネーミングセンスないので単純に
植物から名前を持って来たのですが「カカラ」はどうでしょう?
サルトリイバラという鉤爪状の棘を持った植物の別名で
秋ごろになると赤い実をつけます
…花言葉が不屈の精神、屈強、元気で化け物っぽくないけど

25 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/15 22:36:04 ID:7NieBZAstA
>>24
解りました!これからはカギカッコは間を開けます。

カカラ、凄くいいネーミングセンスだと思います!ありがたく使わせて頂きます

現地民の口からカカラの名前を聞く、見たいな形で出す予定です!

26 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/19 17:17:06 ID:tk0iUiz5fG
乙乙!
無理せずゆっくり書いてください!楽しみにしてますね!

27 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 07:57:06 ID:8AwobubcMH
>>22
 シロは霊脈の上に黒い布を敷き、宝石を並べ、宝石の間を絹糸で繋いでいく。

「星空見たいでキレイですねハイ。ばあちゃる君魔術見るの始めてなんで感激ですよハイハイ」

「んふふー。馬にしては鋭いねぇ?馬の言う通りこれは星空の模倣。近しい星空に近しい霊脈、これだけ揃えればブイデアとパスを繋げられるんだよねぇ」

「魔術って意外と大変なんすね……」

「魔術も根本は科学と同じだよ……っと。よし!出来た!!」

 星を宝石で、星座の繋がりを絹糸で表した星空の中央、北極星に当たる場所にシロは立つと魔力を流し込む。
 周囲の風景がユラリと揺らぎ、世界の境目が曖昧になっていく。灰色のビルはかつての姿を取り戻し、薄く重なる影の雑踏が地面を満たす。
 そしてブイデアへとパスが繋がる。

『ヤッホヤッホー!ハウディー!牛巻りこだよー』

『木曽、あずきですぅ。いやぁばあちゃるさんもシロさんも元気そうで何より』

「牛巻ぃ!それにあずきちゃん!大丈夫だった?」

『牛巻達は大丈夫だよ、ただ……ね』

『ブイデアは半壊。スタッフと食料、重要な機材以外は全滅ですぅ』

 ひとまず繋がりホット一息つくシロとばあちゃる。しかし牛巻とあずきの後ろに見える壁には亀裂が見える。

「そういえば、ブイデアの外はどんな感じ何ですかねハイ」

『それね、吹雪がキツくて外に出られないしネットも電話もなーんも繋がんないの、まさに『陸の孤島ですぅ』

『あずきち!?それ牛巻の決めゼリフゥ!』

 とは言え、牛巻達に現状を悲観する様子も、思考停止する様子も無い。
 まるでトラブル慣れしたプログラマーの様だ、とばあちゃるが考えているとシロにツンと脇腹を突かれ本題を思い出す。

28 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 07:59:49 ID:8AwobubcMH
>>27
「何はともあれケガが無くてばあちゃる君嬉しいですよハイハイ。それはそうと『楔』の場所って解りますかねハイ」

『もちろんわかるよー。ここから東に真っ直ぐ進めば辿り着ける筈だよ』

『あずき達がナビゲートするので安心してください』

「ありがとうね!牛巻、あずきちゃん。あの2人のナビがあればこの先も安心だよ」

「ガァララララ!!!」

「カカラは轢殺だヒャッハー!!」

「そうっすね!行きましょうか!」



『『「「ん?」」』』

 突然現れた例の化け物と、そしてゴトゴトと地面を鳴らし爆走するトラック。車体には神楽運送と書かれている。

「待て待て待て!逃げんじゃねえ!!」

「ガ、ガガガガ!!」

    グシャア

 化け物を轢殺し停止するトラック。
 中にはモヒカンの男が乗っているのが見える。鋼鉄の肩パットはピカピカと光を反射し、厳つい顔はニンマリと笑顔を浮かべている。

29 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 08:08:09 ID:8AwobubcMH
>>28
「ヒャッハー!仕事完了!!……ん?そこのお嬢ちゃんと馬男!見ない顔だな!何処のモンだ?!」

「えっとね、外から来た旅人見たいな感じかな」

「ボスと同じか!なら来てくれ!そんでボスの話し相手になってくれねえか!?寝床もあるからよ!」

 恐ろしげな男の怪しい提案。何故かシロはそれに即答する。

「良いよ」

「ちょっ、シロちゃん!?知らない人に付いていったら駄目ですよ!」

「大丈夫。シロの予想が正しいなら、あの人のボスはシロの後輩だからね」

「本当に大丈夫ですかね……人攫いじゃ無いかばあちゃる君心配ですよハイ」

『あずきの考えはシロさんと同じですぅ。殆ど人のいない荒野で人攫いをする意味は無い、とあずきは思います』

『牛巻も同じかなー。あのモヒカンの人ね、化け物を追ってここまで来ただけみたいだよ』

「確かに……それもそうっすね。怪しいとか言ってすみません!ばあちゃる君たちを乗らせて貰えますか?!」

「ヒャッハー!!気にしちゃいねえよ!乗りな!」

 結局、ばあちゃるは説得されモヒカンの男の提案に乗ることになった。

30 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 08:10:10 ID:8AwobubcMH
>>29
ひとまずトラックの助手席にシロが、荷台にはばあちゃるが乗り込む。

 転ばないようにソロソロと乗り込み、モヒカンの男から渡された明りを灯すばあちゃる。

 しかし光の照らす先、そこにあの化け物がいた。

「ウビイイイイイイ!!」

「馬!どうしたの!」

「た、助けて!」

「あ、いけね。荷台にカカラの死体乗せてるんだった」

「馬!それただの死体だって!」

「ウビビビビビ…………え?あー確かに、これ死体っすね」

「すまねえ!後で埋め合わせするから許してくれ」

「全然大丈夫っす。それよりもカカラってこの化け物の名前なんすかねハイハイ」

「おうともよ!コイツラはカカラって言うんだよ。誰がつけたか判らんがこのプラントモンスター共には勿体ない良い名前だせヒャッハー!!」

「それにしても何でカカラの死体なんかわざわざ運んでるんすかね?」

「あ、それシロも気になるかも」

「こいつらは家畜の飼料、畑の肥料に使えるんだぜ。こんな環境じゃ使えるモン全部使わねえと生き残れねえからな」

「へー。為になるなぁ」

 シロとばあちゃるはトラックに乗りモヒカンの男の住む街へと向かう。

 今までいた場所からドンドン離れ、数時間もすれば街が見えてくる。

「ようこそ。ここは俺らはみ出しものの街。ニーコタウンだぜ」

「ここが……」

「この世界の街……」

31 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 08:11:20 ID:8AwobubcMH
>>30
 瓦礫を積み上げて作りあげたねずみ色の防壁に設けられた錆びた鉄の門。

 キイキイと煩い門を通り抜けて目に入るのは廃墟のビルにペンキを塗り、木の板で穴を塞いだだけの粗末な住居。しかし廃墟では無い。

 人が歩き、人の営みがあり、人の温度を感じる街。ニーコタウン。

「悪くない街だろ?」

「もちろんっす」

「当たり前だよぉ」

「ヒャッハー!!照れるぜ!この街はボスと俺らで築き上げものだからな!この街は俺らの誇りそのものなんだよ」

「それは凄いっすね……そういえば、『楔』……じゃ無くて何か物凄く凄そうなモノとか見たこと無いっすかね?ばあちゃる君たち探しものしてるんすよハイハイ」

「何か凄そうなモノ……すまねえ。判らん。ただボスなら何か知ってるかも知れねぇな!」

「あずきちゃん、何かわかる?」

『ハァイ。ここらへんにはそれらしいモノは無さそうですぅ』

「だって。取り敢えずボスのところに行っちゃおう!」

「本当に大丈夫すかね……あんまりにも怖い人だったらばあちゃる君泣きますよ……」

 街の一番状態の良いビル、その最上階の部屋へと案内される。

 バイオリンと書棚の並ぶ部屋は程よく明るく、トラックが顔を突っ込んでいる事を除けば趣味の良い部屋と言えるだろう。

「ボス!客人を連れて来ましたぜ!」

「ありがとうございますヒャハオさん。………あ、ああ、あああ!!シロさん!プロデューサー!会えて良かった!!」

「すずちゃん!」

『すずちん!』

『すずさん』

「りこさんにあずきさん!お二人も無事で本当に良かった!」

 緑色の髪に透き通る声、清楚な言葉遣いの眼鏡で綺麗な娘。それがばあちゃるの神楽すずに対する『最初』の印象だった。

32 名前:炎上汚染界隈youtube[age] 投稿日:2020/11/23 08:15:05 ID:8AwobubcMH
続く

最近忙しくて余り書けなかった……

トラックを乗り回してる人たちは運送族と言い、主な構成員はモヒオ、ヒャハオ、ノリスケ、ゴリラなどです

33 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 18:18:53 ID:hDlG2gopSS
>>31
神楽すずは二人をソファに座らせると緑茶を振る舞う。縞柄の湯呑みに緑の色がよく映える。

「心配でしたよ…………ここに飛んでからずっと通信の調子が悪かったけど、昨日から完全に音信不通になっちゃうんですもん」

「すずちゃん、心配させてごめんねぇ」

『現状ブイデアの施設は先日の大火事により半壊状態ですぅ。あずきの見立てによると、復旧に一月はかかるかなぁ、と』

「火事!?大丈夫でしたか!?そして何が原因なんです?」

 すずがテーブルに身を乗り出してシロ達に尋ねる。グリーンの髪がフワリと揺れる。

『それがね、解らないの。牛巻が何度調べてもボンヤリとした結果しか出ないの。複数の箇所から同時に出火してたから人為的な火災なのは確かなんだけどね』

「私たちがいない間にそんな事が…………スタッフさん達は無事ですか?」

『幸いな事に、みんな大怪我も無く生きてますぅ。完全に無傷とは言えないですけどね』

「そうですか…………それなら良かった。本当に良かったです」

 すずはホッとした表情になりソファに体を戻すと、茶をグイと勢い良く飲み干す。

 それに釣られてシロとばあちゃるも茶に口を付ける。仄かな甘みと爽やかな苦味が心地よく広がる。

34 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 18:21:30 ID:hDlG2gopSS
>>33
アッツ…………そう言えば『楔』の有る場所が解りましたよ」

「へぇ、そうなんすかハイハ………………え!?解ったんすか?」

「ハイ」

『『「「えぇ!?」」』』

「す、すずちゃん。本当なの?いやすずちゃんを疑う訳じゃないんだけどね」

「ハイ、本当です」

 サラリと爆弾発言をするスズ、驚く四人。

「グーグルシティ。この世界で唯一栄えた街。それが『楔』のある場所です」

「グーグルシティ…………どうしてそこにあるって解ったんすか?」

「それは…………知りません」

 頬をかいて照れるスズ、ずっこける四人。

「え、じゃ、じゃあ何で解ったの?」

「アハハ、すみません。双葉さんとピノさんから教えられた話なので詳しい事は知らないんです」

「あー、なるほ

 シロがスズの答えに返そうとした瞬間、シロのお腹がクゥと鳴る。
 顔をぽっと赤く染めるシロを見ない様にしながらばあちゃるが窓際に行き、外を見ると青空はすでに夜空へと変わっていた。

「シ、シロじゃ無いよ?」

「知ってますよシロちゃん。なにせ今のお腹の音は間違い無くばあちゃる君のですからねハイハイハイ」

「…………シロが言うのもアレだけど、かばい方不器用過ぎない?馬らしいと言えばらしいけどさ」

 咎めるような、それでいてどこか照れるような口ぶりでシロは答える。

 それを見てスズがボソリと呟く。

「白馬てぇてぇ…………」

「え?」

「な、何でも無いです!ハイ!えっと、そうだ。シロさんとプロデューサーを歓迎する宴を開くんですよ。来てくれますか?」

「シロにお誘い?もちろん行くよ!」

「オイラももちろん行くっす」

35 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 18:25:17 ID:hDlG2gopSS
ウルトラスーパーお久しぶりです。大学受験で手一杯でしたがやっとこさ終わりました。

ですが勉強に専念したおかげで理科大の理工学部に合格しました…………イヤッフーッ!!!!!

今回はリハビリがてらなので短めです

36 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 18:31:43 ID:hDlG2gopSS
久しぶりなのであらすじをば

ばあちゃる誘拐→世界を救う為と説明受ける→不服だったけどなんやかんやあって決意→火事が起きる→シロと一緒に逃げる→体がグシャァ→シロが治す→やむなくレイシフト→通信を回復させる→神楽すずと合流→歓迎を受ける(イマココ)

37 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/02/28 20:57:18 ID:F4mFArwlev
おめでてぇ!ゆっくりでいいでぇ・・・

38 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2021/03/02 01:50:40 ID:BXNhFkfmaY
おつおつ!
おかえりなさい!

39 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:09:00 ID:q/i5TjwP63
>>34
 ニーコタウンの中心にある広場、そこには薪を組んで作られた茶色い構造物が鎮座していた。
 大人も子供も老人も、この街に住む全員がこの広場にズラリと揃う。
 全員が何も喋らずに座っている。全員が宴を待ち望み、まだ火の付いていないソレを取り囲んでじっと見つめている。

 無言の緊張が頂点に達した瞬間、緑髪の少女が火の付いたマッチを薪の中に投げ入れる。
 炎が薪の上で踊りだす。茶色い薪を赤く彩りながら徐々に黒く染めていく。

「おはようございます、神楽すずです。まあ今は夜ですけどね。それはそうとして、ニーコタウンの皆さん、これから何をするか解りますよね」

「宴かなぁ」「宴っすね」「宴」「宴ですよね」「宴だぜ!」「宴じゃい!」「ウホ!!」

 ユラユラ揺れる火に顔を照らされた民衆達が我先にと返事を返す。

「皆さん正解です!シロさんとプロデューサーさん歓迎の宴…………開始です!!!」

「「「「ウオオオオオ!!!!!」」」」

 歓喜の声が大地を揺らす。宴の始まりだ。

 肉汁が今にもこぼれそうな肉、みずみずしいキャベツにレタス、ジューシーなトウモロコシ、ピーマン、マシュマロ、オニオン、キノコ、あらゆる食べ物が盛大に振る舞われる。

40 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:09:50 ID:q/i5TjwP63
>>39
「想像の100倍位は宴してるねぇ。シロびっくりだぁ……」

「オイラも同感ですねハイ。ばあちゃる君こう言うの大好きなんで心が踊りますよ」

「良いことがあった時は宴でお祝い。それがここニーコタウンの習慣なんですよ」

「そいつぁすげぇや!」

 串に刺した食材にかぶりつきながら会話をする3人。宴の雰囲気にあてられたのかいつもよりテンションが高い。

『なんか牛巻たちもお腹減ってきちゃったな。あずきち、確かバーベキューセットって無事だったよね?』

『全くの無傷ですね。ついでに言えば、スタッフ達がもう準備を済ませていますぅ』

『マジ!?早く行かないと!ごめん、シロピー、馬P。牛巻たちもバーベキュー行って来る!!』

「いってらっしゃーい」

「あ、スイマセン。私食べきっちゃったんで新しい肉取ってきます」

「私も行こうかなすずちゃん」

「二人ともいってらっしゃい。ばあちゃる君はここで待ってるんでねハイ」

 二人を見送り、久しぶりに一人だけになるばあちゃる。

「…………ふぅ。2人が帰ってくるまで何しましょうかね」

 シロとすずが遠くに行ったのを確認してから大きく大きく息を吐き、空をボウと見上げるばあちゃる。遮るもののない夜空の中で星がイキイキと自由に輝いている。

41 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:11:56 ID:q/i5TjwP63
>>40
「馬頭のニイチャン。こんなところでボーとしてどうしたんだい?」

「ウビッ!?あなたは誰……ってああ、昼間の人ですか。確か名前は」

「モヒオだ。ボスの下で運送族を名乗って働いてる。宜しくな」

「こちらこそヨロシクっす。オイラの名前はばあちゃる。ボスってすずすずの事っすよね?」

「もちろん、俺らのボスは神楽すず。俺が神楽さん以外の下につくなんてあり得ねえぜヒャッハー!」

 フラリとばあちゃるに近づいてきた強面の男。それは昼間にも出会ったモヒオと言う男だった。

 酒をたくさん飲んで来たのだろう、真っ赤な顔で足元はフラフラとして覚束ない。

「でもなんですずすずの事をボスって呼ぶんすか?」

「ああ…………それか…………少し長い話になる。隣、いいか?」

「良いっすよ」

 モヒオはばあちゃるの隣に座り込み、ポツリポツリと思い出話を語りだす。

「俺達、ボスの部下には俺みたく運送族って名乗る奴らが居る。んでもってそいつらはみんな昔、バカやって生きてた奴らだ」

「バカ、っすか」

「ああ、バカだ。略奪、傭兵紛い、密売、密輸。そんな馬鹿みてぇなことして生計立ててたんだよ。カカラ共に怯えながらな」

「それは、でもこんな化物のうろつく環境じゃ仕方が」

「仕方無く無いぜ。どんな理由が有ろうと、人傷つけて仕方無いじゃ済まされねえよ」

 酒が入ってるとは思えないほど厳しい顔を浮かべるモヒオ。
 自分自身を戒めるように、しかしほんの少し嬉しそうな口調で男は話しを続ける。

42 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:12:54 ID:q/i5TjwP63
>>41
「だけどよ、そんなある日ボスが現れた。ボスはすんげぇ力で俺達を蹴散らした。俺はあの時、ついに俺の悪運が尽きたんだな、と思った」

「……………」

「でもボスは俺達を縛り上げ、集めるとこう言ったんだ『わたしはここに住む人達を、怪物に怯える人達を見逃せない。わたしはここに誰もが住める、安心して過ごせる町を創りたい。その為にあなた達の力が必要なんです』てな」

「なんか凄い話っすね。でも、グーグルシティじゃ駄目なんすか?」

 男はゆっくりと首を横に振る。

「あそこに移住したかったら、まずグーグルシティに住んでる身元保証人がいるのさ。更に、その身元保証人が受け入れに必要な金を全部払わなきゃいけねえのさ」

「それは、あんまりですねハイ」

 ばあちゃるが同意を返せば、男はそれに頷きを返す。

「だからこそボスのした事は偉大なんだよ。俺達はボスの下でニーコタウンを創り上げた。その過程で感謝される嬉しさ、創り上げる達成感、そして、俺達が今までして来た事の罪深さに気が付いた」

「だから俺達はせめてもの償いとしてカカラ共と戦い続ける。運送族と名乗って過去を晒し続ける。そうやって俺のして来た事の1%位は償ってみせる」

 そう言い切ると酒瓶をグイと傾け、中身を飲み干す。

「すまねぇな。長々話しちまって」

「いやいや、実りある話でしたよハイ」

「そうか、そう言ってくれると嬉しいぜ。ニイチャンの連れも来たことだし俺は帰るぜ、またな馬のニイチャン…………ヒャッハー!!」

 モヒオはフラリと立ち上がり人混みの中へと消える。

43 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:13:29 ID:q/i5TjwP63
>>42
 ばあちゃるがモヒオの消えた方を何と無く見てると、目の前に串に刺さった肉や野菜がヒョイと割り込んでくる。

「せっかくだから馬の分も取ってきてあげたよ、ほら食べて」

「シロちゃんあざっす!シロちゃんに持ってきて貰えるなんてオイラ感謝感激ですよハイ」

「ちょ、ちょっと馬!」

 シロが持ったままの串に躊躇なくかぶりつくばあちゃる。

 後ろから驚かせようとしたばあちゃるの思わぬ対応にシロは慌てふためき硬直してしまう。

「ごちそうさまですシロちゃん」

「もう…………本当に馬は馬なんだから」

 あっと言う間に一串食べ切ると律儀に手を合わせるばあちゃる。シロはヤレヤレと言わんばかりに首を振りそれに答える。

「アハハハ、宴はまだまだ続くので楽しんでいってくださいね」

「もちろんだよすずちゃん!」

「見てくださいよシロちゃん、すずすず、キャンプファイヤーの周りで踊りをするみたいですよ」

「ホントだ、行こう行こう!」

 宴の夜はまだ続く。

44 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/02 21:20:47 ID:q/i5TjwP63
世界観の説明回&祭り回でした

出来ればこう言うシロちゃんやアイドル部があんまり出ない回は極力避けたいのですが、現地民じゃないと世界観の説明がマジでただの説明になっちゃうんですよね、、、、、

45 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:25:23 ID:U3.psekqZp
>>43
 次の日、すずとシロ、ばあちゃるは昼になってもまだ眠っていた。町の人間も殆どが眠っていた。

 昨日の宴は今日の朝方まで続いた。朝日が昇ると参加者はみな目にクマと満足げな笑顔を浮かべ、家へフラフラと帰って行った。

 結局シロたちが起きたのはお昼過ぎ、太陽がてっぺんを少し通り過ぎた頃だった。

「少し、、、、頭が痛いっす」

「シロも、、、ちょっと」

「アハハ、、、宴の後は寝不足になる、これもニーコタウンの習慣みたいなもんですから、、、、zzz」

 馬マスクの鼻がへんにょりと曲がったままのばあちゃる。アホ毛がしおれているシロ。

 すずは慣れた様子でしゃべりながら、うつらうつらと舟をこいでいる。

「うん、と、そうだ。『楔』の場所も分かったことだしグーグルシティに行かないとね」

「場所は知っているんで私がトラックで送りますね」

「ありがとう。あとすずちゃん、水面台どこ?」

「あ、ハイ、建物を出て右に行くと井戸があるのでそこでお願いします」

「OK。行ってくるね」

「ふわぁ、ああ、、、ばあちゃる君もいくっすよ」

 目をこすりながらも三人は身支度を進めていく。

46 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:26:39 ID:U3.psekqZp
>>45

 数時間後、そこにはトラックに乗り込み町の見送りを受ける三人の姿があった。

 『神楽すず』とプリントされたこのトラックには大小様々な傷があり、その大きさも相まって独特な迫力を醸し出している。

「ボス行ってらっしゃい!」「お元気で!」「ウホホホ!!」「行ってらっしゃい!」「三人ともお元気で!」「、、、!」「、、、、!」「、、、、!」

「行ってきます!!」

「んふふー。愛されてるねぇすずちゃん」

「アハハ、、、そう言われるとちょっと恥ずかしいですね」

 そう嬉しそうに言うとすずはシートベルトを締め、アクセルをダンと踏みしめる。トラックが勢い良く走り出す。

「うわっと」

「あ、すいません。急でしたか?」

「いやいや、大丈夫っすよハイ。むしろもっと飛ばしても良いっすよ」

「え、ほんとですか!?」

 何故か目をキラキラさせて聞き返すすず。

「ハイハイ、もちのロンですよ。ばあちゃる君嘘つきませんから」

「ちょっと待「やったあ!!じゃあつかまっててください!!行くぞ私は!!!!」

 ばあちゃるは当然同意を返す。何も知らぬがゆえに。
 シロはすぐに止めようとした。しかし、ほんの少しだけ遅かった。

47 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:27:34 ID:U3.psekqZp
>>46

 すずはハンドルから片手を離すと運転席の右端にあるボタン、『ニトロ』と書かれた赤いボタンをガチリ、と深く押し込む。
 直後、トラックの後部が開く。露わになった荷台の中にはジェットエンジンが三基見える。

 キュィィィとジェットエンジン特有の音が車内に鳴り響く。

 シロもばあちゃるも声を出して必死に止めようとするが、エンジンの音にかき消されすずに届かない。
 ほんの一瞬、エンジンの音がやむ。次の刹那、三基のジェットエンジンが同時に火を噴く。強烈なGが三人を襲う。

「「ああああああああ!!!」」

「アハハ!!行け!行くんだ!私のトラック!!!」

 ウキウキの少女、顔をひきつらせた少女、気絶した馬男を乗せたトラックはグーグルシティへ向け最高速で突っ走る

48 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:38:11 ID:IOHH5pb8iw
ボスが楽しそうで何より

49 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 12:40:46 ID:U3.psekqZp
ここからちょっとだけすずちゃん回挟んでグーグルシティ入る予定です

因みに悪役は基本オリキャラだけで作り上げてるので、そこはご容赦ください

ただ、fateファンの方ならニヤリとするかもしれないです

50 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/08 13:10:56 ID:U3.psekqZp
>>48
ありがとうございます!!特異点エンジョイ勢のボスですが何気にブイデアとしての役割もちゃんと果たしてたりします

コメントしていただいたのに返信しないのも失礼だと気づいたので、これからは出来る限り返信していこうと思います!!

51 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:03:31 ID:geMZ/3fDOc
>>47
しばらく後、三人は立ち往生していた。

「すみません、、、テンション上がっちゃって燃料の事考えていませんでした」

「うっぷ、、、、別にいいんすよ、、スピード出してと言ったのはオイラですし、、、、」

「そうそう、送ってくれるだけでも十分ありがたいんだから、、、、」

 スピードを出しすぎた為予定以上に燃料を消費し、トラックは燃料切れとなっていた。

「ねぇあずきちゃん、ここから徒歩でグーグルシティに行くとどれくらいかかる?」

『あずきの計測が正しければ、、、おおよそ3時間ですかね』

「まぁ、歩いて行けない距離では無いっすね」

『ただ、一つ問題が』

「どうしたの?」

『リコさん曰く、進行方向にカカラが集まっている場所がある様ですぅ』

『そうなの、これを見て』

 リコが手馴れた様子で何かの機械を操作し、レーダーの様な画面を表示させる。
 その中央には緑色の点がポツリと3つ、上部には赤い点がビッシリと浮かび上がっている。

「緑色の点がシロ達で…………この赤い点がカカラ、かな?」

『その通りだよシロピー、この20個以上有る点がカカラなんだよね』

「この数だと、戦うよりかは迂回した方が楽かなぁ」

「そうっすね」

 助手席側の扉を開け、トラックの外に出ようとするシロとばあちゃる。
 しかしすずは何かを思い出したのかパンと手をたたき、慌てて2人の肩に手をかけ引き止める。

52 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:04:59 ID:geMZ/3fDOc
>>51
「あ、すみません、ちょっと待ってください。そのカカラの集まっている場所でトラックの燃料が補給出来るかもしれないです」

「マジっすか?」

「ハイ、マジです」

「燃料に集まる習性がカカラにあるってことなの?」

「そういう訳ではないんですけど、、、、うーん、説明が難しいので実際に見てもらった方が早いと思います」

「分かったよすずちゃん。じゃあカカラ狩りに行こうか」

 そう言うとシロは今度こそトラックから降りる。その直後にすずが勢い良く、少し間を置いてばあちゃるが慎重にコンクリと雑草の大地へと足を下す。
 灰色と緑で構成された大地に色が加わる。ビュウと吹くビル風が3人の背中を押している。

「リコちゃん。カカラの場所は?」

『真北700メートル先、すぐそこだよ』

「オッケー、ありがとうね。馬、シロの渡した武器はまだ持ってる?」

「勿論っすよシロちゃん」

「すずちゃんも魔力は大丈夫?」

「大丈夫ですシロさん」

 シロはナイフ付きの自動小銃を手元に呼びだし、ばあちゃるも拳銃とナイフを懐から取り出す。
 すずはサングラスを装着し、足をドンと踏み鳴らす。すると腕の周りにノイズが走り巨大な火炎放射器が現れる。レモンのステッカーが貼りつけられたソレは強い魔力と神秘をまとっている。

「行きましょう!」

「うん!」

「うっす」

 3人はうなずくとカカラの方へと歩き始める。

53 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:05:37 ID:geMZ/3fDOc
>>52

「カカラいるねぇ」

「え、どこっすか」

「馬、あの校舎の中見てみなよ」

 10分も歩かないうちにカカラの集団が視界に入る。

 元は高校だったと思わしき廃墟、その中を歩き回っているカカラ達が割れた窓越しにチラチラ見える。

「行きましょう、私が正面玄関から突入するのでシロさんとプロデューサーは、、、、いい感じにお願いします」

「いい感じって大分アバウトっすねハイ、というかすずすずはそんな危険なことして大丈夫なんですか?」

「トラックの燃料切れは私のせいなんですからこれくらいはしないと。それに私、雑魚狩り得意なんですよ。ほら、こんな感じで焼き払うんです」

 火炎放射器を使うフリをしながらそう言うと、すずはスゥと大きく息を吸い込み叫び、前へ走り出す。

「かかってこい!有象無象がぁ!!!」

 すずの体から緑色の魔力が噴き出る。走るスピードが明らかに早くなる。

「馬、シロたちは裏口からいくよ」

「了解っす、、、、でも大丈夫ですかねハイ」

「馬、すずちゃんはね、無理なことはちゃんと無理だって言える子なの。そんなに心配しなくても大丈夫」

 シロは両手を腰に当て、優し気な表情で言い放つ。

 ばあちゃるがすずの向かった方に目をやれば、ここからでも真っ赤な火炎がハッキリ見える。

「、、、、確かにそうっすね」

「でしょ?」

54 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:06:45 ID:geMZ/3fDOc
>>53
 シロとばあちゃるは静かに歩き、校舎の裏手に回る。
 二人が裏口の扉をほんの少しだけ開けると、カカラ達がすずに気を取られていているのが見える。

「、、、馬、321で行くからね、、、」

「、、、うっす、、、」

 シロはフラッシュグレネードを扉の隙間からコロンと投げ入れ、直ぐに扉を閉じる。

「3、2、1、今!」

 グレネードが炸裂し、扉の隙間や窓から真っ白な光が漏れ出す。
 その直後シロが扉を蹴破り校舎に突入する。

「シロ魔法、、、発動!」

「ガッララッ、、、!!」

 シロが銃を横に倒し引き金を引く、反動で銃を横に動かし薙ぎ払う。
 強烈な光に視界を奪われた化け物たち、そのコアへ恐ろしいほどの精度で銃弾が襲い掛かる。

「ガララララララ!!!!!」

「やらせないっすよハイハイ!!」

 それでも生き残った化け物共の内、一番シロの近くにいた個体にばあちゃるが組み付き、逆手に持ったナイフでコアのある左胸を何度も刺す。

「ハイ!ハイ!ハイハイ!!」

「ガ、、ガラ、、、」

 ぐったりとしたカカラをそのまま盾にして、ばあちゃるはシロに弾をあてないことだけを意識して拳銃をでたらめに打つ。
 ほとんどは明後日の方向へと飛ぶが、いくつかは運良く命中する。
 ばあちゃるがそうしてカカラを牽制している間にシロはリロードを済ませる。

 シロが二度目に弾を打ち切った時、カカラは全て倒れていた。

55 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 20:11:16 ID:geMZ/3fDOc
この先まで書き終わっていますが長過ぎるので一度切りました

シロちゃんが五分休憩している間に投稿したかったけどさすがに無理があった(小並感)

56 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 21:44:22 ID:yz3T8UOek4
おっつおっつ、ボスはいつもどうりだなぁ・・・
さっすがシロちゃん、馬もなかなかやるやんけ

57 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/10 22:23:06 ID:geMZ/3fDOc
>>56
コメントありがとうございます!

今のばあちゃるは自分の能力でできる限りのことをしている感じですね、今後もシロちゃんのサイドキックとして成長して行く予定です

58 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:37:38 ID:aNzeUcfTP9
>>54

「フゥ、、フゥ、、、やりましたよシロちゃん」

「中々やるじゃん、馬」

「へへ、、、あ、ちょっ」

 もう敵がいないことを確認したシロはばあちゃるの正面に立ち、馬のマスクを目の出ないギリギリまで持ち上げる。
 驚くばあちゃるを他所にシロはハンカチでばあちゃるの顔を拭くとニコリと笑い、マスクから手を放し歩き始める。

「戦うとき緊張してたでしょ馬、汗ダラダラだよ。ほら、すずちゃんも待っているから早く行くよ」

「う、うっす」



 すずの突入した正面玄関に行くと、そこは凄まじい有様だった。
 辺り一面は黒く焦げ、カカラは炭となって転がっている。

「あ、シロさん、プロデューサー、こっちも終わりましたよ」

「割とエグーな感じですねハイハイ」

「ハハ、ちょっとやりすぎちゃいました。もう魔力がすっからかんです」

 すずはサングラスを外し懐にしまう。火炎放射器がノイズと共に消える。

「じゃあ帰りましょうか」

「そうだね、、、、て、ちょっと待って。ここには燃料を取りに来たんでしょすずちゃん」

「あ、そうでした。燃料ですよね燃料。えっと、あずきさん。ここの近くに地面から飛び出た不自然な突起物ありませんか?」

『突起物ですか、、、、地下一階の技工室にそれらしいものがあるかな、とあずきは思いますぅ』

「突起物?」

「見ればわかりますよ」

 そう言うとすずはどこからか持って来た赤いポリタンクを携え、二人と共に地下への階段を下りる。

59 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:38:42 ID:aNzeUcfTP9
>>58
「やっぱりありました」

「なにこれ、、、、」

『なんじゃこれ』

「大きな花、ですかねハイ」

『動く気配はないですけど、、、あずきもこれが何なのか解らないですぅ』

 技工室にたどり着いた三人の前に現れたのは、地面から斜めに突き出した巨大な根。そしてそこから生える巨大な花だった。

 電柱の様に太い茎からは、人の大きさほどもある薄黄色の花がいくつか垂れ下がっている。
 それらの花は時折ブラリと不自然に揺れている。

「シロさん、刃物貸して下さい」

「あ、うん」

 余りにも大きな植物から目を離せない二人をよそに、すずは手慣れた様子で茎に傷を付けポリタンクの口を押し付ける。
 茎から黒い液体がドロリと流れ出す。液体が流れ出す程に花はしおれていく。
 タンクが満タンになる頃には花は萎れ切っていた。

「え、これが燃料なの?と言うそもそも何?」

「これが燃料です。何故かガソリンとして使えます」

「それと、この植物はカカラの母体みたいなものですね。時々どこかに生えてはカカラを生み出すんですよ。いつの間にか枯れて消えますけど、こうすると直ぐに枯れてくれるんです」

「何というか、良く燃料として使えるってわかりましたねハイ」

「町の人がたまたま見つけたんです。この発見のおかげで電気や車が使えるようになったんですよ」

60 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:40:35 ID:aNzeUcfTP9
>>59
 重くなったポリタンクを三人でゆっくりと運び、トラックに燃料を補給する。

 ガソリンのメーターが満タンになる、すずがキーを回せばエンジンがドウと息を吐く。

「よし、今度は安全運転で行きますね」

「アハハ、お願いするっす」

 時速60キロ、今度は普通の速度でトラックはグーグルシティへと向かう。



「お二人とも見てください。あの先がグーグルシティですよ」

「ホントだ、、、、でっかいねぇ」

「話は聞いてましたけど、実際に見ると凄いですねハイ」

 すずが指さす先にあるのは、コンクリートの巨大な壁だった。壁の上から顔を出す高層ビルが、そこに街があることを示している。

 壁の周囲では、黒いボディアーマーと奇妙なゴーグルを付けた兵士が絶えず監視をしている。

 三人の乗るトラックがNo1と大きく書かれた門に辿り着く。

 門の近くにいた兵士が無言でトラックに近づいてくる。

61 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:41:14 ID:aNzeUcfTP9
>>60
「、、、、、」

「ん、ああ。どうぞ」

 すずが何かの書類を渡すと、兵士は無機質な動きで踵を返し書類をどこかに持っていく。

「ねえすずちゃん、あの人たち何なの」

「この街の警備兵です。ただ、昔はもっと人間味のある人たちが警備をやっていたんですけど、突然あの人たちに変わったんですよね、、、、今じゃ入るのも一苦労です」

「昔と違うの?」

「ハイ、今は街に住んでる人が身元の保証をしないと絶対に入れないんです」

「なるほどねぇ、世知辛いんじゃぁ、、、、ん?」

 シロがはたと首を傾げる。

「じゃあさ、シロたちの身元は誰が保証してくれたの?」

「ピノさんと双葉さんが保証してくれたんです。昔は大金を払っても一応入れたので、ピノさんと双葉さんはグーグルシティで、私は外で。といった感じで手分けして『楔』を探してたんですよ」

「なるほどねぇ」

「シロちゃん、すずすず。書類の確認が終わったみたいっすよ。ほら、門が開き始めてますよハイハイ」

 声を掛けられた二人が門を見ると、ばあちゃるの言った通り門がゆっくりと動き始めている。

「あ、ホントだ。遂にグーグルシティに入れますね。実は私も初めて来るので楽しみです」

「ふふ、じゃあシロとおそろいだね」

「ハイ!」

 すずはウキウキでペダルを踏み、開ききった門を通過する。
 入った瞬間、街の風景が目に入る。

62 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:42:12 ID:aNzeUcfTP9
>>61
 胡乱気な看板やネオンがズラリと立ち並び、見慣れた建物と現代アートの様な建物が不思議な調和を保ちそれぞれ乱立している。

 街の中心を見れば、遠近感がおかしくなりそうな程巨大なビル群が見える。

「いやー、凄いっすね、、、、、」

「だね、、、、」

「ですね、、、、、」

 しばし呆然として街を眺める三人。眺めている間にも無数の車と人が通り過ぎていく。

 一足早く我に返ったばあちゃるがすずに話しかける。

「そういえばすずすず、ピノピノとふたふたはどこにいるんすかね?」

「えーと、二人は入口から入ってしばらく真っすぐに行った所にいて、建物は見ればわかると聞いてますね」

「この街で見れば解るってどんな建物なんですかねハイ、、、、」

 ばあちゃるが改めて街を見渡す。

 屋台の提灯はカラフルに光り、路地裏には光る入れ墨を入れたヤクザがたむろしている。

「ま、多分大丈夫っすね」

「真っすぐ行けば良いのは確かですしね。行きましょう!」



「確かにこれは、見ればわかるねぇ」

「ですね、、、、りこさん、お二人はこの建物にいますよね?」

『ちょっと待ってね、、、、、、うん、確かにその中にいるよ。でもほんまごっついなぁこの建物』

 ピノと双葉のいる建物、そこはチョウをモチーフにした紋章と双葉の生えた植木鉢、二つのシンボルが掲げられたスタジアムだった。

 『ファイトクラブ スパークリングチャット』と入口に掲げられていた。

63 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 20:44:59 ID:aNzeUcfTP9
次回ピノ様と双葉ちゃんが登場します、後でボスのステータス出すかもしれません(宝具以外)

それはそうと、ガリベンガー放送枠上がったのうれしすぎる

64 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 21:56:35 ID:zW.Mj9fQ1k
おっつおっつ、毎回楽しませてもらってますです

65 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 22:36:04 ID:aNzeUcfTP9
>>64
楽しんでくれるなら本当に嬉しいです!!

ちなみにですが、馬のハーレムルートは残念ながらありません。書き方が分かりません。

好意的に接して来るシロちゃんにやや困惑しているものの、そんなシロちゃんの前でカッコイイ所を見せようとあがいてるのが馬です

シロちゃんの馬に対する思いは、、、、かなり複雑です。
ただし、英霊として召喚され世界を救う役目を背負い、同じ役目を持つアイドル部たちの前では、頼れる先輩として振る舞うこの世界のシロちゃんにとって馬は数少ない弱音を吐ける存在なのは間違いないです

66 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/12 23:19:04 ID:aNzeUcfTP9
【Vtuber名】神楽すず
【CLASS】ライダー
【所属】.live
【性別】女性
【種族】人
【年齢】17
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
 筋力B 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具B

【保有スキル】
『魔力放出(大声):C+』
大声とともに魔力放出を放出し、爆発的に身体能力を上げるもの。
効果は絶大だが隠密行動には向いていない。

『カリスマ(王道):B+』
人を引き付ける力。他人とともに道を開く、これこそ王道。

『普通:A』
常に普通であり続けるスキル。怪我、呪い、如何なる要因があっても通常通りに行動可能。
常にいつも通りであり続ける事は案外難しいものだ。

【宝具】
『????(未開示)』
【Weapon】
『火炎放射器』
注ぎ込んだ魔力に応じて火力の上がる火炎放射器。最大まで注ぐとレーザービームのようになる。

67 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 15:57:35 ID:pY7WdODbEh
>>62
『お は く ず!スパークリングチャットの名物司会、天開司だ!!』

「「「オオオオオ!!!!」」」

『今日の対戦者を紹介するぜ!!』

『赤コーナーに立つは我らがスター!パプリカの赤は返り血の赤!!!園芸部所属パプリカァ!!!!』

『緑コーナーも特A級!神話の住人ケンタウロス!!!岩本カンパニー所属馬越健太郎!!!!』

「やっちまえパプリカ!」「蹴り倒せ馬越!!」「負けんな!!!」「…………!」「……!」「…………!!」「!!!!…………

 入場料を払いスタジアムに入ると、そこは闘技場だった。

 熱気と野次が場を満たし、そのど真ん中を司会の煽り文句が朗々と響き渡る。

 真っ赤なパプリカの被り物をした大男が助走を付けてドンと床を蹴り、飛び膝蹴りを繰り出す。馬の下半身を持つ男はその蹴りを掴み受け流し、床に叩きつける。

「スタジアムの中に入りましたけど…………見た目以上に広いっすねハイ」

「だねぇ、ピノちゃんと双葉ちゃんはどこにいるのかな?」

「そこなんですよね…………」

68 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 15:58:36 ID:pY7WdODbEh
>>67
 3人が辺りを見渡していると、近くにいた老人がこちらにゆっくりと近づいて来る。

 その男は執事の様な装いをしており、それはこの場所でひどく浮いていた。

「そこのお客様、どうかお名前を教えて頂けませんか」

「ハイハイハイ、オイラ達はちょっと忙「シロです」

「私はセバスと申します。お嬢様方がお待ちです。どうぞこちらに」

 セバスはそう言うと懐からカギを取り出し『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉を開き、三人を招き入れる。

「ちょ、シロちゃん。あんな怪しい人について行ったらダメっすよ」

「大丈夫、あの人から敵意は感じないし。それに『お嬢様方』にも心当たりがあるしね」

 小声で訴えかけるばあちゃるをシロが軽く流す。

 徐々に小さくなる闘技場のざわめきを背にし、三人は下に緩く傾斜した通路を黙々と進んでいく。

「つきましたよ」

「おお、、、、」

「こいつぁすげえや、、、、」

「凄いですね、、、、、」

 長い長い通路を下った先、そこにあったのは上品な屋敷だった。

 洋風の庭は丁寧に整えられており、地下であるにも関わらず何故か空が見える。



 セバスの案内で応接室に通される。

「そう言えば、ピノピノとふたふたはどんな子なんですかねハイ?」

「えっと、ピノさんはザ、お嬢様って感じで、双葉さんはのんびりした感じの人ですね。どっちも良い人ですよ」

「そうだよ、アイドル部の子たちはみんないい子たちなんじゃぁ」

「そっすかぁ、、、、、そりゃ楽しみですねハイ」

 豪華なソファに座りあれこれと話し合っていると、応接室の扉がコン コンコンと三回ノックされ、一拍置いて扉が開く。

69 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 15:59:40 ID:pY7WdODbEh
>>68
 開いた先にいたのは、淡い紫色の長髪をサラリとなびかせる、黒を基調とした衣装に身を包む幼い少女だった。

「皆様御機嫌よう。カルロピノですわ」

「ピノちゃん!」

「ピノさん!」

「ピノピノ、っすよね?」

『ピノちー!』

『ピノさん!』

「シロお姉ちゃん、すずお姉ちゃん、お馬さん、りこお姉ちゃん、あずきお姉ちゃん!皆さんご無事で良かったです!!」

 大人びた様子で挨拶をする少女、もといピノ。

 しかし仲間の無事がわかると途端に相好を崩し、見た目相応の口調で喜びを表す。見開いたパステルカラーの瞳がキラリと光る。

「あれ、、、双葉さんは?」

「ごめんなさいすずお姉ちゃん。双葉お姉ちゃんは試合の運営で今忙しくて。しばらくしないと会えませんわ」

「なるほど、忙しいなら仕方ないですよね、、、、」

「ふふふ、すずちゃん。楽しみは後に取っておくのも乙なもんだよぉ」

「それとさ、ピノちゃん。試合の運営って上でやってる試合の事?」

 残念そうにするすずの頭をなでながら、シロはピノに質問をする。

 質問を受けたピノは満面の笑みでグッと胸を張り、心底誇らしげに語りだす。

「そうですわ。ここスパークリングチャットはわたくしと双葉お姉ちゃんで築き上げた最高のファイトクラブ!!宝具を用いることで実現したクリーンさと熱狂を両立したまさに至高の、、、、、」

「、、、、」

「、、、、、おほん。少しはしゃぎすぎましたわ。爺や、皆様にお茶を」

「ただいまお持ちします」

 周りの生暖かい視線に気づくとピノはわざとらしく咳ばらいをすると、指をパチンと打ち鳴らし執事を呼びつける。

70 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 16:01:42 ID:pY7WdODbEh
>>69
 呼び出された執事、セバスは返事をすると数分もしないうちに人数分の紅茶を持って来る。

 薄い湯気の立ち昇る紅茶は琥珀色。それをカップに口を付けゆっくり飲む、すると上品な香りが口の中にフワリと広がる。

「いやー、凄く美味しいですよハイハイハイ。もう一杯お願いできるっすか」

「勿論でございます」

「ありがとうございま、、、、ちょっと待ってくださいっす。セバスさん、あなた怪我してますよハイ」

「おや、本当ですか?」

「本当っすよハイ。ほら腕のとこ大きく切れてるっすよ、、、、アレ?血が出てない?」

 ばあちゃるがセバスの腕を指さす。
 その指さした先には大きな切れ込みが確かに走っていた。

 しかしその切れ込みから血が出る気配は一切ない。

「アレ?どうして、、、、?」

「うふふ、お馬さん。実はですね、爺やの腕は特殊な義手なんですの。爺や、お願い」

「仰せのままに」

 セバスは2、3歩後ろに下がると袖を捲り上げ、ほんの少し腕を力ませる。

 すると両腕から大きな刃が飛び出す。銀色の刃は綺麗に磨かれており、誰が見ても鋭いと解る。
 両腕から刃を生やしたその姿はどこかカマキリを連想させる。

「ね、ほら、すごいでしょう。ここだけの話、昔の爺やはイケイケで、、、」

「お嬢様、どうかお辞めくだされ、、、、恥ずかしゅうございます」

「だめですよ爺や、ここから先が面白いんですから」

「お、おやめください、お嬢様!ほ、ほら、例の話をしなければいけませぬぞ」

「しょーがないですねぇ爺やは。まあ今回は許してあげましょう」

71 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 16:02:34 ID:pY7WdODbEh
>>70
 シャンと音を鳴らし刃を納め、慌ててピノを止めようとするセバス。
 ピノはそんなセバスをひとしきりからかうと、机の上に大きな図面を広げる。

 定規とコンパスで描かれたその図には無数の消し跡があり、それが手書きであることをうかがわせる。


https://vt-bbs.com/upl/1615878154-1.png


72 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 16:06:41 ID:pY7WdODbEh
>>71
「ピノちゃん。これ何の図なの?」

「シロお姉ちゃん。カカラの母体、て何のことかわかりますか?」

「えっと、あの大きな花の生えた根っこの事だよね?」

「その通りです。そしてこの図はカカラの母体の出現位置と根っこの向きを、すずお姉ちゃんに頼んで調査して貰った物ですわ」

「こんなに調べたのか、、、、、凄いねぇすずちゃん」

「そうですよ。すずお姉ちゃんのデータは本当にサンプル量が多くて正確ですわ」

「いやぁ、、、アハハニーコタウンの皆さんで手分けしてやったのでそれほどでも、、、、」

「フフフ、照れるすずちゃんは可愛いなぁ、、、、、」

「と、ピノちゃん。じゃあさ、根っこはこの図の真ん中を中心にして生えてるけどさ、この真ん中はどこなのかな?」

 シロがその質問をした途端、スンと真面目な顔になるピノ。
 頭を掻き照れくさそうにしていたすずも、紅茶をコッソリ何倍もお代わりしていたばあちゃるもそれを見て姿勢を正す。

「この図の中心、それはここ、グーグルシティですわ。更に正確に言うならグーグルシティの中心部、『楽園』と呼ばれる部分ですの」

 そう、ピノは苦々しく言い切った。

73 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/16 16:15:27 ID:pY7WdODbEh
ここから徐々に話が進みだします。

実のところ、初期とはプロットがほぼ別物になっております

例を一つ上げると、初期ではアイドル部一人に付きマスターが一人つく予定だったのですが、恐ろしいほど登場キャラが増えることに気づき断念しました

74 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 14:33:12 ID:Av4LApCGnO
>>72
「ちょ、ちょいちょい!ピノピノ、それってもしかして、、、、」

「そうですお馬さん。カカラの大本はこの街にある可能性が非常に高いんですの」

 シンと静まり返る応接間、張り詰めた空気の中ピノは淡々と話を進めていく。

「この世界全体に根を張り、時折地上に根を出しては化け物を生み出す。出すのは常に根だけ、その大元を見た人間は誰もいませんの。根っこを辿ろうにも数日で腐るから不可能、だから考え方を変えたんですの」

「その成果がこの図面ということっすか?」

「そうですわ。もしも一つの場所から根が伸ばされているなら、伸ばされてきた根はきっとその場所を中心にして生えるだろう。そう思ってすずお姉ちゃんに調査を依頼したところ、結果は大当たりですわ」

「なるほどっすね、、、、、ん?」

 ふと首をかしげるばあちゃる。馬の茶色い被り物が首に合わせてへにょんと折れる。

「この街の楽園?とか言う場所にカカラの大元がいるなら気付かないはずがないと思うんですよねハイハイハイ」

「それは『楽園』の特異性のせいですの」

「特異性?」

「『楽園』はグーグルシティの特権階級が住む場所です。高い壁に守られたそこは、法外な量の献金をして初めて中に入ることが許されますわ」

「でも『楽園』にはカカラの大元がいるんすよね?」

「ええ、この街の人間さんが夢見る『楽園』ではない、と言う事でしょうね」

 ピノはそこまで言い切ると上品な所作で紅茶を飲み干す。冷めた紅茶のギュッと締め付ける苦みが顔を歪ませる。

75 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 14:34:22 ID:Av4LApCGnO
>>74

「そしてもう一つ。『楔』も同じ場所にある可能性がありますわ」

「ど、どういうことっすか?」

「人殺しの化け物を生む植物。それも生きるために殺すのではなく、殺す為に生きる化け物。あんな生き物さんはあり得ませんわ。どう考えてもエネルギーが足りませんから」

「でもカカラは存在してるっすよ」

「そうです、生きれないはずの生き物さんが生きている。ならば何か特別な物がカカラのエネルギー源となっている、そう考えるのが自然ですわ」

「それが『楔』ということっすか」

「その可能性は十分に有る。わたくしはそう考えていますわ」

「ハイハイハイ確かにあり得るっすね、、、、」

「そうですわ。まぁ、説明すべきなのはそれくらいです」

 真面目な話が終わり、ピンと張りつめた空気が徐々にほどけていく。

 緊張が解けたせいか、今日の疲れがどっと溢れ出すばあちゃる。

 背もたれに体重を乗せ横を見れば、シロとすずも同じ様にぐったりとしているのが見える。



 そんな三人を微笑ましい顔で眺めるピノにセバスが何か耳打ちをする。

「、、、、、ありがとう爺や。どうやら双葉お姉ちゃんの仕事が終わったようですわ。闘技場の入り口で待っているそうです」

「マジィ!?待たせちゃ悪いし早く行こう!」

「ですね!双葉さんとも久しぶりに会うから楽しみですよ」

「どんな子か、ばあちゃる君も楽しみですねハイ」

 さっきまでの疲れた様子が&#22099;のようにワクワクとした顔で立ち上がる二人。

 それを見たばあちゃるも飴色の机に手をグッと押し当て、体を持ち上げる。

 シロ、すず、ピノ、ばあちゃるの四人はセバスの見送りを背にし、屋敷の外へと歩き出した。

76 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 14:41:31 ID:Av4LApCGnO
villsのバラエティステージを買いそびれました、、、、

自分で書いておいてアレですがピノ様有能過ぎない?

77 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 16:26:39 ID:KFZyClDseO
おっつおっつ、ピノ様は偉大ですからね、有能でございましょう

78 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/21 20:27:57 ID:Av4LApCGnO
>>77
確かに! 双葉ちゃんも結構有能なので期待して下さい

それとvillsの歌ステージ良かった…………シロアカであの曲は反則ですよマジで

79 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:39:01 ID:fxUPWQt3gT
>>75
 長い通路を通り抜け、熱気と歓声に満ちた闘技場を通過し、四人は双葉の待つ入口へと辿り着く。

 日はすっかり傾いて街がみかん色に染まる中、桃色に染まった可愛らしい少女が四人を待っていた。

 桃色の髪と桃色の瞳に桃色の服、ツインテールをふんわりと纏める空色のリボンが良いアクセントになっている。北上双葉だ。

「ふたばんわー」

「双葉ちゃん!」

「双葉さん!」

『ふーたん!!』

『北上さん、お久しぶりですぅ』

「ふたふたっすよね?」

「みんなひさしぶり!!!双葉の名前は北上双葉、よろしくねうまぴー」

 双葉がにこりと笑い再会を喜ぶ。ふんわりとした声が耳に心地よく響く。

「みんなそろったことだし、ご飯でも食べながらおはなししよー。実はさ、驚かせようと思ってだまってたんだけど、あのめいてんクックパートナーの予約がとれちゃったんだよね」

「ほんとですか双葉お姉ちゃん!?あのクックパートナーですよね!?滅多に店を出さないと噂の!天然の高級食材を使った料理を出すあの!!」

「フフフ、、、、それは見てのお楽しみだよ、、、、、、」

 双葉の言葉をピノが聞き返す。ピノは目をキラリと輝かせ身を乗り出し、それを受け流す双葉も笑顔が抑えきれていない。

80 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:39:43 ID:fxUPWQt3gT
>>79
 ネオンが灯り始めた大通りを抜け、迷路のように入り組んだ商店街を双葉とピノが先導して歩く。

「一体どんなお店なんですかねハイハイ」

「妹ちゃんたちがあんなに興奮するんだよ、美味しいに決まってるじゃん馬!」

「そうですよ。クックパートナーの名前はグーグルシティの外ですら知られているくらいなんですから」

『ううううう、、、、、牛巻は羨ましくない!羨ましく無いぞ!!』

「アハハ、帰ったら手料理作るから許してほしいんじゃぁ」

『え!?よっしゃぁ!牛巻頑張っちゃうぞ!!』

『あずきの分もお願いしますぅ』

「あずきちゃんと、スタッフの分も勿論作るよ」

 画面越しにスタッフの歓声が聞こえてくる。ブイデアに帰ったら忙しくなりそうだ。



 そうこうしていると双葉とピノの足がとある店の前でピタリと止まる。

 その店は古き良き個人食堂と言った佇まいで、すりガラスの戸上には暖簾で『クックパ―トナー』と書かれている。

 田舎町によくあるその外観は、ネオンや派手な看板だらけのこの街では逆に目立っていた。

 ガラガラと戸を開けた途端心地良い匂いが出迎えてくる。炊いたお米の優しい匂いだ。

「いらっしゃいませ!クックパートナーのコック、お料理の妖精クックパッドたんです!」

「団体で予約してた双葉だよー」

「双葉さんと御一行ですね!お待ちしてました!」

 カウンター越しに店員の姿が見える。

 コック帽を被った元気そうな少女だ。その少女は見た目通りのハキハキとした声で手前のテーブルへ五人を案内する。

81 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:41:30 ID:fxUPWQt3gT
>>80
「ご注文決まりましたらお呼び下さい!」

「、、、、、、いやー、庶民的な店構えでちょっと安心したっすよハイ。メニューもぱっと見普通ですし」

「それがそうでも無いんですお馬さん。この世界で肉と言えば合成肉ですの。本物なんてお祝いの時くらいしか口にできませんわ。なんせ家畜の飼料が育つ場所が殆どありませんからね」

「そ、そうなんすか、、、、じゃあ屋台で売ってる食べ物なんかも、、、、、」

「ええ、あれはあれで美味しいですが本物の肉ではありませんわ」

「でもここの食材は全部天然なんすよね?」

「少し違いますわ。ここのは天然の『高級』食材、地鶏やプライム牛と言った食材を使っている、ですよね双葉お姉ちゃん」

「そう。ここは知る人ぞ知るめいてんなんだよ」

 グーグルシティの先輩として知識を披露するピノと双葉。

 二人の話す姿に無知を笑う様子は一切なく、純粋な嬉しさを湛えたむしろ喋り方は微笑ましい。

「それは凄いですね、、、、、じゃあオイラはこの『クックたんの気まぐれメニュー』で」

「シロもそれにしようかな」

「双葉もシロちゃんとおなじのがいい」

「じゃあ私も」

「わたくしもそれで」

「決まりっすね」

 ばあちゃるが店員に注文を伝えると、店員は勢い良く一礼して店の奥へ消える。

82 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:42:23 ID:fxUPWQt3gT
>>81
 料理が来るのを待っていると、ふとばあちゃるの腹がギュルリと嫌な音を奏でた。

 突然襲い掛かる便意に慌てて席を立ち、店の奥に有るトイレへと小走りで移動する。

 しかしトイレはたった一つしかなく、その一つのトイレは埋まっていた。

 早くも限界間近の馬男を扉がはばむ、薄く白いただの扉が今に限っては堅牢な防壁に見える。

 何度か躊躇した後、それでも我慢しきれずドアをコンコンとノックする。

「あ、ごめんねー。すぐ出るからちょっと待ってて」

「、、、、!!、、、、あ、ありがとうございます」

 防壁の向こうから綺麗な声が聞こえ、少しするとトイレから出て来た金髪の女性がこちらを通り過ぎる。

 その女性に対する綺麗だな、と言う感想は便意に塗りつぶされ、ばあちゃるは全速力でトイレへと駆け込んだ。

 しばらく後、スッキリとしたばあちゃるは念入りに手を洗い席に戻る。

 戻る最中それと無く店内を見渡せば、奥の方に見栄えの良い扉が見える。その扉の向こうからは先程の女性の声が聞こえた。



「遅いよ馬。もう少し遅かったら料理先に食べちゃうところだったよ」

「待っててくれたんすねシロちゃん。ありがとうっす」

「馬、待ってたのはシロだけじゃないんだからね。そこ大事」

「ありがとうっす皆」

「それでよし!じゃあ、、、、、」

「「「「「頂きます」」」」」

 皆が手を合わせ食事が始まる。

83 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:43:10 ID:fxUPWQt3gT
>>82
 皆が手を合わせ食事が始まる。

 五人の前に並ぶのは真っ白なご飯、黄金色のチキン、熱々の味噌汁。

 肉汁が溢れ出るチキンを丁寧に切り分け口に運ぶ、するとパリッパリの鳥皮と引き締まった鶏肉が力を合わせて顎を楽しませ、少し遅れて濃厚な鳥の旨味が広がる。

 ご飯を一口食べれば、お米のほのかな甘みと鳥の味が調和を奏でる。

 ワカメや豆腐の入った味噌汁をフゥ、フゥ、と吹きながらゆっくりと飲むと体がじんわりと温まっていく。

 チキンを食べ、米を食い、味噌汁を飲む。それを無心で繰り返す内に五人の皿はあっという間に空になっていた。

「「「「「ごちそうさまでした」」」」」

 米粒一粒までキッチリと食べきった五人。満足げな表情で立ち上がると会計を済ませ外へ出る。

「ありがとうございます双葉さん!美味しかったです!!」

「喜んでくれて双葉もうれしいよー。そう言えばすずちゃんも暫くグーグルシティにいられるんだよね?」

「ハイ!ニーコタウンの方は部下に任せて来たので。優秀なんですよ私の部下」

「やった!じゃあしばらくは皆でピノちゃんの屋敷におとまりだ」

「いいんですかピノさん!?」

「勿論ですわすずお姉ちゃん。シロお姉ちゃん、お馬さん、お二人も来てくれませんか?」

「勿論行くよ!妹ちゃんとお泊り会、、、、楽しみなんじゃぁ」

「あざっす!」

 眠らない街グーグルシティ。

 ネオンが、車のライトが、街灯が、ビルの照明がまばゆく照らす大通りを五人が歩いてゆく。

84 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/25 13:51:50 ID:fxUPWQt3gT
日常回&アカリちゃんとの顔合わせ回でした

食事ってその場所でとれる食材、文化、味覚、色んな物を内包してると思うんですよね、全世界共通の娯楽でもありますし。

今回の食事シーンで会話が無いのは、美味しすぎて無言で食べてたみたいなそんな感じです(言い訳)

85 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/26 08:14:39 ID:bu7nk2RPXH
おっつおっつ、黄金チキン食べたいなと思いました(コナミ)

86 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/03/26 12:33:44 ID:Nt.6lZ/cgP
>>85
黄金チキンはジョナサンで食べた地鶏のステーキがモデルですね

マジで美味いのでオススメです!

87 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 17:35:17 ID:AXiTFSVogf
>>83
 次の朝、五人は身支度を整え、ファイトクラブ『スパークリングチャット』の前に集まっていた。

 ピノの屋敷に戻った後は大きな浴場に仲良く入り(ばあちゃる以外)、寝室でお泊り会を楽しみ(ばあちゃる以外)、天国の雲の様に柔らかなベッドで快眠し、スッキリとした目覚めを迎えていた(すず以外)。

 シロにグデンと寄り掛かるすずを微笑ましく見守りながら、ピノは双葉に話しかける。

「双葉お姉ちゃん。仕事の方はどうなりましたか?」

「とりあえずエイレーンちゃんは条件つきで話きいてくれるって」

「条件の内容はなんでしたか?」

「ふたばが直接でむくこと、双葉以外に何人か付き添いを連れてきてもOKだって」

「なるほど、、、、想定より大分緩い条件ですね」

 話についていけずポカンとするばあちゃる、既にほとんど寝ているすずを置き去りにし二人は話を進めて行く。

 すずを起こさないように気を付けながら、シロが二人の間に割って入る。

88 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 17:36:34 ID:AXiTFSVogf
>>87
「ピノちゃん双葉ちゃん、何の話をしているの?」

「えっとねぇ、、、、街の設立50周年にあわせものすごい規模の大会をひらいて『楽園』にいく為のお金を一気に手にいれるっていう計画をたててたんだけど、邪魔がはいっちゃったんだよね」

「そうなんですわ。莫大な優勝賞金、名だたる選手、街の50周年と言う最高のタイミング、、、、、、後はわたくし達が優勝して賞金を回収すれば『楽園』に行けるだけの金がちょうど貯まる、はずでしたわ」

「どんな邪魔が入ったの?」

「金貸し連中に圧力が掛かり、大会の開催に必要な金を調達できなくなりましたの。金が足りなければ大会が開けませんし、開けないとなればかなりの損害が出ますわ」

「圧力をかけてきたのはむかしここら一帯をしきってたギャング『サンフラワーストリート』と『エルフC4』の連中。双葉たちをつぶす為に手をくんだみたい」

 浮かない表情を浮かべる双葉とピノ。
「前々から交流があり、圧力を跳ね除けるだけの力を持つエイレーン一家が唯一の活路。エイレーン一家から金を調達出来なければ『楽園』に乗り込むタイミングは大きく遅れ、遅れた分カカラの被害者が増えてしまいますわ」

「なるほどねぇ、、、、、話を聞く限り、今後すべきことは二つある感じかな?まずエイレーンちゃんとの交渉を成功させ大会を開くこと。もう一つはその大会でシロと妹ちゃん達の誰かが優勝すること。あってるよね?」

「うん、そのとおりだよシロちゃん。じゃあさっそくエイレーンちゃんのところに、、、、」

「あ、ちょっと待って下さい」

89 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 17:37:24 ID:AXiTFSVogf
>>88
 出発しようとした矢先、ピノが何かに気づいたのかパンと指を鳴らす。

「どうしたのピノちゃん?」

「あくまで想像なのですが、、、、、わたくしとすずお姉ちゃんはエイレーンさんの所に行かない方がいいかも知れません。『付き添い』を連れて来ても良い、と言うことは『付き添い』以外は連れてきてはいけないと言うこと」

「あ、そういうことか。双葉とピノちゃんはこの闘技場『スパークリングチャット』の共同経営者としてゆうめいだもんね。立場がたいとうな人が付き添い人だったらダメか。すずちゃんもニーコタウンのリーダーだしね」

「あくまで念の為ですけどね。ですがエイレーン一家との交渉が決裂すれば詰み、念には念を入れるべきですわ」

「わかった」

 シロの腕の中で熟睡しているすずをピノにそっと預け、三人はエイレーン一家との交渉へと出発する。

90 名前:ピノ、すず視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:38:42 ID:AXiTFSVogf
>>89
「すずお姉ちゃん、、、、起きてください、、、、すずお姉ちゃん、、、、」

「、、、、んん、、あ!?すいません!寝ちゃってました!!、、、て、ここは何処ですか?」

「ここは図書室でございますわ。ご友人様」

 すずが夢の世界から現実へと引き戻される。

 寝起きのぼんやりとした視界に無数の本棚が映る。

 本棚から視線を声の聞こえた方へと向ける、そこには可憐な少女、カルロピノと白髪の老メイドが居た。

「あなたは、、、、?」

「私はエミリー、婆やとお呼び下さい」

 そう言うとエミリーはすずに一礼し、図書室の机に何かを並べだす。DVDとテレビ、だろうか。

「すずお姉ちゃん。わたくし達がここに残った理由は聞いてましたか?」

「ハイ、念の為ですよね」

「その通りですわ。しかし何もせずに待つのは性に合わないので、その間すずお姉ちゃんと一緒に新たに手に入れた情報の精査をしておきたいなと」

「新たに手に入れた情報?」

「ええ、それも『楽園』のからくりを解き明かす糸口になり得る情報ですわ」

 そう言うとピノはやや自慢げな顔でDVDをすずに差し出す。ピノの動きに合わせてDVDの反射光がユラリキラリと揺れ光る。

91 名前:ピノ、すず視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:39:55 ID:AXiTFSVogf
>>90
「ありがとうございますピノさん。えーと、DVDのタイトルは『楽園の声』?すごそうなタイトルですね」

「『楽園の声』というのは『楽園』での生活やインタビューを記録した、所謂PR映像の事ですわ。これが毎月一度グーグルシティで広告として流されていますの」

「それって普通なんじゃ、、、、、あれ?カカラの大元は『楽園』に存在してるんですよね?」

「そうですわ。カカラの大元が存在すると思われる『楽園』からの映像、精査する価値があると思いませんか?」

「確かに」

 そう言うとすずはDVDをテレビに差し込み、再生ボタンを押す。



 再生されるのは住民の豪華な暮らしとありきたりなインタビュー。その映像は五分程で終わってしまう。

「うーん。何というか、、、、普通の映像ですね」

「それがそうでも無いんですわ。婆や、この映像を何処で手に入れたのか説明してくれますか?」

「ええ、喜んで、、、、この映像は放送局から奪取した『楽園の声』の元データ。当然実際に放送されている映像よりもずっと画質や音質も上質で御座います」

「へぇ、、、、、奪取したんですか、、、、奪取!?」

「誰にもバレて無いので問題は無いですよ、御友人さま」

「いや、そこじゃなくて、、、、、」

 老メイドがパチンと茶目っ気たっぷりのウインクを返す。

 すずは何度も目をこすり、婆やことエミリーをジッと観察する。

92 名前:ピノ、すず視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:40:31 ID:AXiTFSVogf
>>91
「婆やはこう見えてかなり強いですからね」

「そうなんですか!?」

「それはもう、婆やと爺やのコンビ『蜜蜂』と『蟷螂』と言えばそれはもう有名ですわ、、、、なにせ武勇伝が本になるくらいですから」

「もう随分昔の事で御座います、、、、、ですが昨日の事の様に思い出せます。ギャング、カカラ、サイボーグ、、、、セバスと共に風穴を空けてやったものですわ」

 老メイドは何かをなぞる様にそっと手の甲を撫でる。

「ま、この話は別の機会にゆっくりと…………今は『楽園の声』の検証に集中すべきですわ」

「そうですね」

「もう一度再生してみますか」

93 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:41:50 ID:AXiTFSVogf
>>92
 ピノ、すずと別れた三人は今、エイレーン一家の事務所の前にいた。

 数え切れない程のネオン看板は殆ど性的な言葉で満たされ、扇情的な服を着た娼婦や男娼が闊歩する場所。ここはグーグルシティ最大の風俗街、『ポルノハーバー』。

 その中央に位置する建物、多くの風俗店が入った一際大きなビル、その最上階に事務所は有った。

「ハロー、ミライアカリだよ。双葉ちゃんと、、、、そこの二人は付き添いかな?」

「そうだよぉ。名前はシロ、宜しくねアカリちゃん」

「オイラはばあちゃる。宜しくっすアカリさん」

 三人が事務所の前で待っていると、ミライアカリと名乗る金髪の美女が話しかけてくる。

 豊満な肢体を水色を基調とした服で包んだ彼女は、明るさと妖艶さの同居した不思議な雰囲気を放っている。

「早速エイレーンの所に、、、、ちょっと待って、ばあちゃるさんに何か見覚えが、、、、、そうだ!トイレにいた人だ!!」

「トイレ?、、、もしかして『クックパートナー』でトイレを開けてくれた人っすか!?」

「そう!」

94 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/03 17:42:31 ID:AXiTFSVogf
>>93
 ばあちゃるの頭に先日の記憶が蘇る。

 『クックパートナー』でトイレに行った時、トイレを譲ってくれた女性。その時に見た姿とミライアカリがピタリと重なる。

「アハハ!世間ってのはやっぱ狭いね!」

 カラカラと笑い、三人と握手をするアカリ。

 握手してもらったのが嬉しかったのかデレンとするばあちゃる。

「馬ぁ!握手くらいでデレデレしないの!!もう」

「すみませんシロちゃん」

「あはは。馬Pはやっぱり馬Pだね」

 ばあちゃるを咎めるシロは寧ろ嬉しそうな、何かを懐かしむような微笑みを浮かべていた。


 思わぬめぐり逢い。和気あいあいとした雰囲気。アカリに案内され事務所へと入る三人は確かな希望を感じていた。

95 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 18:08:56 ID:AXiTFSVogf
次辺りから最大トーナメント偏的な物に入ります

せっかくなので細々とした設定をば
『エイレーン一家』
リーダー エイレーン

風俗街の元締め。水商売に対する暴力や薬物などの違法な取引を取締り、その見返りで収入を得ている。
仁義に重きを置くそのやり方に反発する人間も多く、実際金回りは余り良くない

『サンフラワーストリート』
ピノ様と双葉ちゃんの話でチラッと出て来たグループ 
元ネタはひまわり動画(アニメの違法転載が異常に多い)

リーダーは鳴神裁
元々はラッパーやダンサーを始めとしたストリートパフォーマーの集まりだったのが徐々に拡大し、幾つかのショービジネスを取り仕切るようになった。

『エルフC4』
元ネタはfc2(個人撮影のアダルトビデオが多く販売されている。たまーにヤバそうなのが有る)

リーダー ケリン
エイレーン一家のやり方に反発し、離脱した人間達が前身となって出来たグループ。エイレーン一家が交渉の席についてくれたのも、ここら辺の事情が大きい。
主な収入源は違法物品の取引き。

『ニーコタウン』
元ネタ ニコニコ動画

リーダー 神楽すず
ボスが街の外で略奪行為を働いていた人間や住むところの無い難民をまとめ上げて作り上げた街。

カカラを間引いて肥料に変え、農産や畜産を営んでいる。

96 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 20:37:43 ID:QJL/p3s.6l
おっつおっつ、次回が楽しみだがヤバい奴らしかいねぇ!

97 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/03 21:07:38 ID:AXiTFSVogf
>>96
既存のVを無能化させる訳にはいかないので、バランスを取るため敵陣営も有能にしていった結果こうなりました(笑)

この特異点のラスボスは結構意外なバックグラウンドがあるので楽しみにして頂けると幸いです!!

98 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:33:25 ID:EWi0X.RYyR
>>94
「ようこそ来てくれました。私はエイレーン、ここの元締めやってマース」

「『スパークリングチャット』の代表としてきました。双葉です。よろしくおねがいします」

「付き添いのばあちゃるっす。よろしくお願いします」

「同じく付き添い人、シロです。よろしくお願いします」

「ミライアカリだよー。エイレーンの補佐をやってるんだ」

 三人はエイレーン一家の事務所へと通される。

 小洒落たガラスの机、それを挟む様に配置された二つの黒いソファー。部屋に掲げられた代紋がここが事務所であると主張している。

 そんな事務所のソファーに三人は座り、ミライアカリ、そしてエイレーンと机越しに向き合っていた。

 笑顔で三人を歓迎する赤髪赤目の女性、エイレーン。その若々しい姿とは裏腹にどこか老練な雰囲気を放っている。

「双葉サーン。大会を開く為に金を貸してほしい、とのことでしたよね」

「うん。もともと貸してくれるはずの所が『サンフラワーストリート』と『エルフC4』に脅されちゃったの」

「ええ、そこまでは聞いてマース。本当に災難でしたね。ただ言わなきゃいけないことがありマース。私たちのグループ『エイレーン一家』は余り金回りが良くありません。双葉さんの提示した額、それは私たちにとってかなり慎重にならざるを得ない額デース」

「、、、、わかった」

「それと一つ、気になることがありマース。何故、これ程のリスクを負ってまでこの大会を開こうとしたんですか?もっと小さな規模の大会なら借金などせずとも開けた筈デース。つまり、何かの目的の為に急いで金を集めようとしている、私にはそう見えます」

99 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:34:44 ID:EWi0X.RYyR
>>98
 エイレーンは笑顔から真剣な顔へと変わる。特に目が変わった。

 こちらをジッと見据えて、見定めるような目だ。

 穏やかな空気が徐々に薄れていく。

「もしこの大会が開けなければ貴方達は大損デース。短期間で『スパークリングチャット』をあそこまで育て上げた双葉さんが、そのリスクを見落とすはずが無いデース」

「、、、、、、」

「双葉さん、教えて下さい。何の為に金を集めているのか」

 そう言うとエイレーンは口を閉ざす。アカリも又、何も言わずにこちらを観察している。

 辺りがピンと張り詰めた緊張で満たされている。



「わかった。説明する」

 双葉の桃色の瞳が、エイレーンの見定める様な目をまっすぐ見返す。

「カカラの大元、それが『楽園』にそんざいする可能性がたかい。だから楽園に乗り込む為に金が必要なの」

「、、、、、、証拠はありマースか?」

「いちおう、有る」

 双葉は懐から図面を取り出し、机の上に広げる。ピノの屋敷で見た、あの図面だ。

100 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:36:00 ID:EWi0X.RYyR
>>99
「これは、、、、グーグルシティの地図ですかね。大分使い込まれていますが」

「うん。で、ここにかき込まれてる線、これはカカラのねっこの出現位置とむきをかきこんだ物なんだよね。そして根っこがさししめす中心、カカラの本体がいる可能性がたかいばしょ、そこと『楽園』のばしょが一致してるの」

「成程、、、、、確かに筋は通ってマース。ですが、これに&#22099;偽りが無いと証明出来ませんよね」

「それは、、、、うん」

 この図面はすずが調べ、ピノが書き上げ、双葉に託されたまごう事無き本物だ。&#22099;偽りなど勿論ありはしない。だが、それを証明する手段は確かに無い。

 双葉はソファーの角をギュッと無言で握り締める。

「、、、、」

「私の見る限り、双葉さんが&#22099;をついてる様には見えません。ですが、私は『エイレーン一家』の長です。万が一、貸した金が帰って来なかったり、悪い事に使われたりしたら私の部下に申し訳が立ちません。その『万が一』を消せない限り、無理です」

 そう、辛そうな声でエイレーンは言う。

「、、、、、、、、、、、、、、、、」

 何か打開策は無いか、必死に考えるが何も思いつかない。賭けに負けたことを悟り双葉はうなだれてしまう。

 そんな双葉の姿に罪悪感を感じるのだろうか、エイレーンはその赤い瞳を閉じ双葉を見ないようにしている。

 痛々しい沈黙が場を支配する。


https://vt-bbs.com/upl/1617960960-1.png


101 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:37:18 ID:EWi0X.RYyR
>>100
「、、、ふたふた、大会さえ開けば借りた金、絶対返せるんすよね」

 ソファーから立ち上がり、沈黙を破る男が一人居た。ばあちゃるだ。

「うん、もちろんかえせる」

「、、、、、それが、聞きたかったんですよねハイハイ」

 ばあちゃるは一度大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと喋りだす。

「エイレーンさん、臓器って売りさばけますかねハイ」

「、、、、、?まあ、やろうと思えばやれマース」

「だったら話は早いでふぅ。オイラを借金の担保にして下さいっす。健康な成人男性の臓器なら十分な金になるっすよね?」

「な、何いってるの馬P!?」

「、、、、、」

「ばあちゃる!?」

「正気デースか?」

 この場の全員がばあちゃるに注目している。

「ふたふたが本当の事を言ってると証明は出来ないっす。でもオイラはふたふたが&#22099;をついて無いと知ってるっす。だから何を賭けようとオイラにとっては実質ノーリスクなんですよねハイ」

 腕をパタパタとわざとらしく振り回し、震える声でばあちゃるは言い放つ。

 茶色い馬のマスクは汗で黒く染まり、足は小刻みに震えている。それでもばあちゃるは言葉を撤回しない。

102 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:38:37 ID:EWi0X.RYyR
>>101
「それにオイラが言うのもなんですけど、オイラなら人質としても使えますよハイ」

「馬P、、、、ダメだよ、、、馬Pにそんなことさせたくないよ」

「ふたふた、大丈夫っす」

 双葉は弱弱しい声で止めようとするが、ばあちゃるの決意が揺らぐ気配は無い。



 そんな最中、双葉の懐にある携帯が着信音を鳴らす。

 着信欄には『カルロピノ』の文字列が光っている。

「どうしたの?」

『こんな時にすみません。ですが今すぐ知らせるべき事がありまして、、、、、数日前に手に入れた『楽園の声』に映像を加工した痕跡が見つかりましたわ』

「どういうこと?」

『『楽園の声』のインタビュー映像、室内で録画した映像に別の背景を貼り付けていた様ですの。かなり巧妙に加工されていて、すずお姉ちゃんが『環境音に違和感がある』と指摘していなければ解りませんでしたね』

「証拠はあるかんじ?」

『ええ、有ります。そちらの携帯に送っておきますわ。エイレーンさんとの交渉に役立つかどうかは解りませんが、もし役立てば幸いです。では、御機嫌よう』

 ピノからの電話が切れる。その直後、双葉の携帯にファイルの添付されたメールが届く。

 立ったままのばあちゃるを他所に、双葉はファイルの中身を確認する。曇った顔にいつものフンワリとした笑顔が戻っていく。

103 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:40:26 ID:EWi0X.RYyR
>>102
「エイレーンさん。きいてたよね」

「勿論デース。ちょっと見せて下さい。、、、、、確かにこのインタビュー映像は私も見た事が有りマースね。加工の痕跡も、成程。間違いないデース」

「でしょー。これで『万が一』はきえたよね?ね?」

「ウビ?あ、これ」

「そうですね。室内で行ったインタビューをわざわざ外でやっている様に見せかける、、、、、どう考えても可笑しいデース」

 そう言うとエイレーンはアカリに目配せをし、書類を持ってこさせる。

 細々とした文字が書かれた何枚かの書類、双葉はそれを満面の笑みで受け取る。

「これが契約書類だよー」

「ありがとうアカリちゃん、、、、、うん、こっちのていじした額通り、利子も相場とおなじだね」

「勿論不備はありまセーン。あと、これは受けても受けなくてもいいのですが一つ提案が有りマース」

「なあに?」

「私たちの出場枠を二つ用意して下サーイ。もし用意してくれるなら利息を減らしマース」

「いいけど、、、、なんで?」

「金回りが良く無いせいで他のグループに舐められがちなんデース。なので双葉さんの大会で力を見せつけられればな、と」

「なるほど、ワルだねぇ」

「何言ってるんですか双葉サーン。私達は『エイレーン一家』、ここ『ポルノハーバー』を取り仕切る悪い組織ですよ」

 双葉のいじりにエイレーンが嬉しそうに答える。

 座る機会を失ったばあちゃるを置き去りにしてトントン拍子に話が進んで行き、双葉が書類にサインを書き込み契約が交わされた。

104 名前:シロ、ばあちゃる、双葉視点[age] 投稿日:2021/04/09 18:41:36 ID:EWi0X.RYyR
>>103
「いやー、なんとか上手くいったね」

「だねぇ」

「上手く行ったのは良いんでふけど、オイラは空回りしちゃってましたねハイ、、、、」

 真昼間の太陽が照りつける風俗街を歩く三つの人影が有った。シロ、双葉、ばあちゃるの三人だ。

 スキップしそうな程上機嫌な二人とは裏腹に、ばあちゃるは二人の後ろをトボトボと歩いている。

 ふと、シロは立ち止まり、そして振り返る。

「馬」

「ど、どうしたんすかシロちゃん」

「あの時、かっこよかったよ」

「、、、、、え?ホントっすか!?」

 それだけを言うと、シロはクルリと振り返りまた歩き出す。

 上機嫌な三人は吉報を手に、帰り道を歩く。

105 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/09 19:18:56 ID:EWi0X.RYyR
エイレーン一家との交渉はこれで終わり、間もなくトーナメント編です

今回の馬は何気に大活躍でした、あの時馬が提案をして無ければあのまま話が終わってた可能性が高いです。


ついでに細々とした設定と没キャラの紹介でもしようと思います。

『ポルノハーバー』
モデル Pornhub
工業地区と住宅街の中間に位置する風俗街。
かつては治安がかなり悪かったが、エイレーン一家が来てから大分マシになった

セバス(爺や) 67歳
虫さん、執事、中二病、この三つの要素が合体して生まれたキャラ。

『蟷螂』の異名を持つグーグルシティの英雄。グーグルシティが出来たばかりの不安定な頃、カカラや悪人から街を守ってきた。
異名の由来は両腕の義手から刃を生やす姿から。
武器は義手仕込みの刃、要はサイバーパンク2077のマンティスブレード。

若い頃はクール系のラノベ主人公見たいな感じだった。過去に言及されるのが割と恥ずかしい。

エミリー(婆や) 64歳

『蜜蜂』の異名を持つ英雄。
異名の由来は戦闘時に使用する武器から名付けられた。
武器は右腕に括り付けたパイルバンカー。

若い頃はラノベの暴力系ヒロイン見たいな感じだった。昔の事はいい思い出。


没キャラ
ラクア 15歳 女性

爺やと婆やの養子

通称『蜘蛛』、整形中毒ならぬ改造中毒。生身の部分が殆ど残っていない。

背中に取り付けた8本のサブアームを用いて戦闘する。

106 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/09 20:37:54 ID:0cIPZZumv3
おっつおっつ、トーナメント楽しみ

107 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/10 11:15:30 ID:C7I6wEq8jA
>>106
トーナメントはちょっとだけ捻った物にする予定です!

108 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:03:08 ID:qQzXRtc/NA
>>104
 シロ、双葉、ばあちゃるの三人は『ポルノハーバー』を通り抜け、大通りを歩き、『スパークリングチャット』の前に辿り着く。

 入り口の方に向かうと、そこには辺りをキョロキョロと見回しているすずとピノが居た。

「ピノちゃーん、すずちゃーん、かえったよー」

 双葉が声を掛けると二人は駆け足で近寄ってくる。

「お帰りなさい双葉お姉ちゃん!、、、、、、結果は、どうでしたか」

 ピノが質問をする。すずもピノもこくんと唾を飲んで答えを待っている。

「結果はね、、、、、せいこう!」

「ヤッター!」

「やりましたね!!」

 二人は天に両手を突き上げ全身で喜びを表す。その動きに合わせ薄紫と緑色の髪も揺れ踊る。

「後は大会で優勝するだけですね!シロさん、プロデューサー、双葉さん、ピノさん、りこさん、あずきさん、勝っちゃいましょう!!」

『『「「「「「おー!」」」」」』』

109 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:04:06 ID:qQzXRtc/NA
>>108
『お は く ず!名物司会と言えばこの俺、天開司だ!!!』

「「「「「おおおおおお!!!!!!」」」」

『今回はグーグルシティ設立50周年を記念したトーナメントォ!!名立たる強豪!大悪党!伝説!全てがここに集った、正に最大最凶だ!!!』

 資金を調達し、無事開催された大会の当日、会場は無数の観客と熱狂に満たされていた。



 そんな会場の選手控室、観客の声が微かに聞こえるそこに五人は居た。

「馬P、ルールはおぼえてるよね?」

「勿論っすよ。

 銃火器は使用禁止
 試合前の妨害、談合は禁止
 試合場から出た選手はその時点で敗北とする

ですよねハイ」

「馬P、大事な事をわすれてるね」

 双葉はニヤリと得意気に笑い、両手の指を二本づつ立てる。

「今大会は2対2。名付けて『コラボマッチ』双葉がかんがえたんだよー」

「あ、そうでしたねハイ…………あれ?でもオイラ達5人でふよね、一人余っちゃいますねハイハイ」

「そこは問題ないよ。双葉が助っ人をよんでおいたから」

「それって、、、、」

「みるまでのお楽しみ、だね」

「なるほど、、、、、、」

110 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:05:18 ID:qQzXRtc/NA
>>109
 ばあちゃると双葉が話し込んでいる最中、ふとシロが首をかしげ、ピノに話しかける。

「ねぇねぇピノちゃん。銃火器が使えないのは解ったけど銃火器以外の武器はどうなの?」

「あ、それ私も気になってたんですよね」

「全てOKですわ」

「それって危なくないの?」

 シロがそう言うと、ピノは何処か嬉しそうに首を横に振る。

「いいえ、安全ですわ。なにせわたくしの宝具『己が身こそ領地なれば(ザ・ドミニオン)』がありますから」

「、、、、、あ!成程ね、、、、考えたねぇピノちゃん」

 シロは納得がいったのかウンウンと頷いている。

 と、そこにいまいち納得の行ってないすずがピノに質問をする。

「ピノさんの宝具の効果って『自分の住む場所を自身の領地と見なし、領地の中においてのみ様々なルールを設定できる』ですよね?」

「すずお姉ちゃん。わたくしの住む屋敷、あそこに行こうと思ったら『スパークリングチャット』の内に有る通路を通らなければいけませんよね?あれ、明らかに不便だと思いませんか?」

 すずの脳裏に過去の光景が蘇る。爺やに案内され、通路を通り抜け、地下にある屋敷へと通されたことを。

111 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:05:38 ID:qQzXRtc/NA
>>110
「わたくしの屋敷を出てもそこは外ではなく『スパークリングチャット』の内部。つまり、わたくしは『スパークリングチャット』の中に住んでいると見なせるわけですわ。マンションの一室を借りている人間さんが『マンションに住んでいる』と言っても何の矛盾も無いのと同じですね」

「成程、、、、、つまりピノさんがルールを設定してるから安全なんですね」

「ええ、具体的には『如何なる攻撃に対しても怪我を負ってはいけない、但し本来受けるはずだった痛みは感じろ、そして一定以上の攻撃を受けたら気絶しろ』このルールを常に適用することで安全に大会を開ける、と言うことですわ」

「へー。凄いですねピノさ『さぁ!!イカシタ選手共の入場!だ!』

「時間みたいですねピノさん」

 すずはポンポンと膝の埃を払って立ち上がり、試合場へと向かう。

 後の四人も少し遅れて立ち上がり後に続く。大会が、始まる。

112 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:06:46 ID:qQzXRtc/NA
>>111
 数時間後

『さあさあさあ!!ここまで残ったベスト8を紹介するぜ!!!』

『歓楽街の王が騎士と共にやって来た!!ヨメミ&萌美とエイレーン&ミライアカリ!!!』

「応援よろしくねー」「がんばるぞ!」

「エイレーン行っきマース!」「やっちゃうぞ!」

「応援してるぜ銀髪の嬢ちゃん達!!」「『エイレーン一家』は伊達じゃねえな!」「金髪の姉ちゃん、色っぺえ、、、、」



『続いて我らが闘技場のスター!!ピーマン&パプリカ!!!!』

「優勝してやるっぴ!」

「その通りっぱ!」

「いつも通り渋い戦い見せてくれ!」「ベテランの強さ見せつけろ!!」「行け行け行け!!」



『更に更に!!当闘技場のオーナーまで参戦して来た!!!カルロピノ&北上双葉!!』

「御機嫌よう皆様方。優勝はわたくしの物ですわ」

「かつぞー!」

「マジかよ?!」「オーナーって強かったんだな、、、、、」「半端ねぇ!!」



『生きる伝説!老いてなお健在『蟷螂』と『蜜蜂』!!!セバス&エミリー!!』

「よろしくお願いいたします」

「お手柔らかにお願いしますね」

「すっげぇ、、、、」「まさか戦ってる所が見られるなんてなぁ!」「あれが『伝説』!」



『ニーコタウンの大ボス!そして経歴不明白髪の少女!!!神楽すず&シロ!!』

「勝つぞ私は!」

「いくぜいくぜ!!」

「今回女子率高いな、、、、、」「白髪のお嬢さん、かなり鍛錬を積んでいるネ」「おほほい!おほほい!」

113 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:07:25 ID:qQzXRtc/NA
>>112
『かの有名なギャング!エルフC4とサンフラワーストリートが手を組んだ!!!ケリン&鳴神!!』

「ぶっ飛ばしてやるぜぇ!!!」

「大会は開催されたが、それなら俺が優勝して面目をつぶしてやろう」

「帰れ!!」「阿漕な商売しやがって!」「サンフラワーストリートのショバ代高えんだよ!!」



『そして最後!!正にダークホース!!!ばあちゃる&馬越健太郎!!』

「なぜかここまで行けちゃいましたねハイハイ」

「ウマウマ馬越♪」

「ハハハハハ!」「馬頭に下半身馬、、、、凄い絵面だな」「馬頭の方は初めて見るな」



 準々決勝まで勝ち進んだ8チーム16人が試合場にそろい踏みする。

 誰が優勝してもおかしくない面々がお互いの顔を見詰める、今、本当の戦いが始まろうとしていた。

114 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:07:56 ID:qQzXRtc/NA
>>113
 双子の様に似通った二人の少女、萌美とヨメミ。地味な服を着たダークエルフの男ケリンと端麗な顔を滲み出る暗い性根でデコレートした男、鳴神。

 ヨメミと萌美は白鞘の短刀、所謂ドスを携えているが、鳴神とケリンは何も持っていない。

 この二組が試合場へと足を踏み入れる。

『じゃあ始めるぜ、、、、、萌美&ヨメミ対ケリン&鳴神、、、、ファイ!』

 司会が合図をした瞬間、ケリンはポケットから次々と小石を取り出しヨメミに投げつける。

「ぶっとべ!!」

「ちょ!?」

 ただの石にしか見えないそれは、ヨメミの足元に落ちた瞬間ボンと爆音を鳴らし破裂する。

 すんでの所で避け続けてはいる。しかし絶え間なく起こる爆発がヨメミをケリンに近づかせない。

『これは悪名高いケリンの能力!!触った無機物を爆弾に変える能力だ!ルールすれすれ正に無法!!』

「ヨメミちゃん!」

「おっと、この俺を忘れてもらっちゃ困るね!」

 ヨメミを助けに行こうとした萌美に鳴神が近寄り殴り掛かる。ただの拳では無い、その拳には炎が纏わりついていた。

115 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:08:22 ID:qQzXRtc/NA
>>114
「ほらほらほら!!どうしたエイレーン一家!!!」

 ひたすらに拳を振るい攻撃し、萌美にドスを抜く暇を与えない。

 赤く揺らめくその炎は掠るだけでもその熱でもって萌美の体力を奪う。

「うう、、、熱いよお、、、、」

『これまた悪名高い鳴神の能力!!人体発火パイロキネシス!!!!気に入らない奴はみんな丸焦げ、それがアイツ!!!』

「半分以上ルール違反してる奴らが勝ってもな、、、、」「いけ好かないエイレーン一家をぶっ潰せ!!」「強いのあいつらじゃ無くて能力だよな、、、、、」



 ヨメミはケリンに一方的に攻撃され、萌美は鳴神に押され気味。準々決勝で一方的な試合を見せられているからか、観客は何処か白けたような雰囲気を放っている。

「不味いよどうする?」

「どうしようどうしよう!?」

「ガハハハ!弱音か!?」

「ふん、、、、エイレーン一家もこんなもんか」

『流石のエイレーン一家の精鋭もギャングのリーダーには手が出ないか!?』

 不利な状況を覆せず徐々に追い詰められていく萌美とヨメミ。

116 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:08:48 ID:qQzXRtc/NA
>>115
 会場に居る殆どの人間が勝負の行方を確信したその時、おもむろにヨメミが大きく後ろに下がり、萌美に声を掛ける。

「しょーがない、しょーがないけど、、、、本気出すよ」

「そうだね、、、、次に当たる選手に対策されたく無いから出し惜しみしてたけど、、、、仕方ないね」

『おおっと!?まさかここでの舐めプ宣言!!!本当か!?それともホラか!?一体どっちだ!!!』

「糞が!ホラに決まってんだろ!」

 『今まで本気では無かった』と言われたのがイラついたのだろう。鳴神は額に青筋を浮かべ、拳の炎を巨大化させる。怒りと炎を載せた拳を萌美の顔面に向け振り下ろす。

「焼きつぶ、、、グゥ!?」

 振り下ろそうとした拳に激痛が走る。鳴神が萌美の方を見れば、そこにはドスを既に振り抜いた萌美の姿が有った。

『目にも止まらぬ居合切り!さっきのセリフはホラでは無くマジだったようだな!!!!』

「どお?萌美の本気、凄いでしょ」

「う、うるさいうるさい!!絶対に、、、、」

「下がれ鳴神!!」

「させない!」

「何が何でもしてやるよ!!」

 冷静さを失い始めた鳴神をケリンが後ろに下がらようとする。

 ヨメミもドスを振るいケリンを切ろうとするが、ケリンは自身の髪の毛を一房引きちぎると無数の爆弾に変えて投げつけ、爆発の壁を作ることで何とか逃げおおせる。

117 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:09:56 ID:qQzXRtc/NA
>>116
「鳴神!アレやるぞ!!」

「解った、、、宝具、真名開放『卑火色金』」

「ぶっ飛ばして行くぜ!!宝具、真名開放『北朝将軍凱旋火』」

 鳴神とケリンは何かを唱える。次の瞬間、鳴神の手には金ぴかのライターが、ケリンの手には赤いスイッチが一つだけ付いたリモコンが現れる。

 それを確認した二人はニタリと顔を歪める。

「これで勝利だ、さっき仕留めていればお前らの勝ちだったろうに」

「ガハハハ!!これで終わりだ!!!!!!!」

「何かする前に倒すよ」

「ヨメミもそうするね」

「もう遅い!」

 鳴神がライターに火を付ける、ケリンがリモコンを二人に向けスイッチを押す。

 鳴神の姿が突如消える、萌美とヨメミの居た場所が突如大爆発を起こす。

「な、なに?」

「どういう事?」

「見えないだろう、凄いだろう!」

「ガハハハ!この勝負貰ったぁ!!!」

『鳴神とケリンも切り札を持っていたようだ!!これは解らない!勝負の行方は正に不明!!!』

「これだよこれ!!」「どっち応援する?」「俺は銀髪の嬢ちゃんたちを応援するぜ!」「やれケリン!!」

 鳴神とケリンの発動した宝具、それによりわからなくなった勝敗、観客はさっきとは打って変わりここが決勝とでも言わんばかりの盛り上がりを見せる。

118 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:10:41 ID:qQzXRtc/NA
>>117
「どうだ、どうした、これで『本気』か?あぁ!?」

「結構根に持つんだね、、、、くっ、、、、」

 姿の見えない鳴神に苦戦する萌美、不可視の攻撃を殆どカンで捌き、時折反撃としてドスを振るってはいるもののまともに当たる気配は無い。

 打ち合う度、萌美の体力と集中力は大きくそがれていく。既に顔には大粒の汗がいくつも浮かんでいる。決壊は時間の問題だ。



「ガハハハッ!!とっとと爆発しろ!!!」

「ヨメミは爆発なんてしたく無いねっ」

 ケリンがリモコンをヨメミに向けスイッチを押す、するとヨメミの足元が爆発する。

 爆発すること自体はさっきまでの小石と同じだが、爆発の規模、威力が桁違いに大きい。そして爆発の起こせる頻度が段違いだ。

 さっきまでは『石を取り出し、狙いを定め、石を投げる』だったのが『相手にリモコンを向けボタンを押す』だけで爆発が起きる。この違いは余りにも大きい。

119 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:10:58 ID:qQzXRtc/NA
>>118
「、、、、よし、決めた、、、、ぐっ!?」

「よし!よし!遂に当たったぞ!!」

 遂に鳴神の拳が萌美を捉える。拳から噴き出る炎が萌美を包み、焼き尽くさんとする。

『これは勝負有ったか!?』

「んーん、狙い通り!ヨメミ、後は頼んだ、よ!!」

「な、何をする!?」

 萌美は燃えたまま鳴神の腕をがっしりと掴むと、そのままの体勢でケリンにドスを投げつける。

「糞っ!!」

 ケリンは投げつけられたドスを咄嗟に避けるが、避けた瞬間確かな隙が生まれる。

「ほいーっと」

「チックショー!!!」

 当然ヨメミがその隙を見逃す筈もなく、ケリンの急所を正確に切り裂く。そしてケリンは一定以上のダメージを受けた事で気絶する。

 その直後、遂にダメージが一定量を超えたのか萌美も気絶するが、気絶しても鳴神の腕を離す様子は無い。

「は、放せ、、、糞糞糞!!糞!!!!!!!」

「終わりだよ」

 ヨメミが動けない鳴神にトドメを刺す。

『お、おおおおお!!!!!!これはすげえ!!萌美&ヨメミの逆転勝利だ!!!』

「よっしゃー!!」

「カッコ良かったぜ!!」「これがエイレーン一家!」「凄いなんてもんじゃねぇ!!!!」

 闘技場に万雷の拍手が鳴り響く、勝者は勿論、健闘した敗者も称える、そんな拍手が闘技場全体を満たしていった。

120 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:21:06 ID:qQzXRtc/NA
準々決勝からです、、、、、流石に一回戦から書くのは色々と無理があったので断念しました

代わりに2対2の異能力バトル系トーナメントと言う、個人的には割かし凝ったものにしたつもりです。異能力系のお約束に漏れず先に能力を公開した方が不利な感じですね。

ただしこれはトーナメントなので、仮に準決勝で全ての手札を見せたりしたら、決勝の相手には最初から手の内が全て解ってしまうなど、実戦とは違う大会ならではの駆け引きを書けたらなと思っております。

121 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 00:27:19 ID:qQzXRtc/NA
ピノ様の宝具解説
『己が身こそ領地なれば(ザ ドミニオン)』
自分の住む場所を領地と見なして、そこを支配できる宝具。

強そうに見えて意外と使い所が限られる宝具。別の宝具もあるがそちらはかなり癖が強め

122 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/18 22:46:19 ID:6xCPiNTVZK
おっつおっつ、おほほい言ってる奴いて草

123 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/04/19 00:20:33 ID:NEhLkZC1y1
>>122
小ネタ見つけて貰えて結構嬉しいです!!

それはそうと、とりとらの体力テスト凄い良かった……スパイギアさんとすもも先生とシロちゃんのコラボも凄い面白かった、満足

124 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:25:59 ID:WLkkhD6zYY
>>119
「糞、糞が!!実戦なら俺が勝ってたのに!!!」

「落ち着けよ鳴神。火、出てるぞ」

 端正な顔を歪め壁にダンと拳を叩き付ける鳴神。負けたのが相当悔しかったのだろう、強く握りしめた拳の隙間から真っ赤な炎が漏れ出ている。

 感情を露わにする鳴神を横目に、ケリンはベッドに寝転がりながら鳴神をなだめている。


 ここは医務室。敗北した選手が念の為検査と治療を受ける場所。惜しくも敗北した二人は医務室に運び込まれていた。

「いやー惜しかったなオイ。これ次は勝てるんじゃねえの?」

「『次』?大勢の観客が見てる前で負けたんだぞ!?他所の兵隊に!!明日から俺は最強の悪党から笑いもんに格下げだよ!畜生」

「だから落ち着けって鳴神。今回であいつらの能力は解った。エイレーンとミライアカリの能力も次の試合で解る」

「、、、、つまり?」

「試合で勝って思い上がってる奴らに、俺たちの本当の強さを教えてやろうじゃないかってことだよ」

「、、、ああ、成程、良いね。乗ったぜケリン」

 二人の悪党が顔を合わせニンマリと笑う。

「計画は有るか?」

「ねえな。お前が考えてくれ鳴神」

「しょうがないな、、、、、あいつらがこの会場に居る隙に俺たちがエイレーン一家の事務所に乗り込む、、、、どうだ?」

「なるほど、最高のプランだ、、、、、ぶっ飛ばしてやるぜぇ!」

 ピョンと勢い良く飛び起きたケリン、いつも通りの嫌味な笑顔を浮かべる鳴神と共にエイレーン一家の事務所に乗り込む準備を始める。

 この後二人は事務所で留守番していたエトラ、ベイレーン、ベノの三人にぼろ負けすることになるが、それはまた別の御話。

125 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:28:39 ID:WLkkhD6zYY
>>124

『お次はこの方達!!我らがオーナー!双葉さん&ピノさん!!もっと休日下さい!!!それに対するは俺らのスター!!!ピーマン&パプリカァ!!!』

「欲望漏れてるぞ司会!!」「やってくれスター!」「いつも通り勝ってくれ!!!」

 ピノと双葉、ピーマンとパプリカ。計四人の選手が会場へと入る。

 ピノは槍を、双葉はナイフを携えている。槍は刃から柄に至るまで満遍なく上品な装飾が施されており、ナイフの方と言えばファンシーなピンクの柄に無骨な刃を取り付けた、何とも言えない見た目をしている。

 それに対するピーマンとパプリカ。緑黄色ピーマンの覆面男に赤色パプリカの覆面男。この二人は何の武器も持っていない。己の肉体こそが最高の武器だと言わんばかりのポージングでもって筋肉を誇示している。

「オーナーのお二方には恩があるっピ。でも、オイラ達は本気で行かせて貰うっピ」

「ここのスターとして温い試合は見せられないっパ」

 二人は真顔でポージングを決め、ピノと双葉に言い放つ。

「わかってる。良いからきなよ」

「当然ですわ」

 ピノと双葉も笑顔でそれらしいポーズを決め、ピーマンとパプリカに返事を返す。

『おおっと!?オーナーは本気をご要望だ!これは答えるしかない!!』

「解ってるじゃねえか!」「本気で行けスター!!」「頑張れ!!!」

『始めるぜ、、、レディー、ファイ!!』

 司会の天開が開始を告げる。

「速攻っパ!」

126 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:29:36 ID:WLkkhD6zYY
>>125
 真っ先にパプリカが動く。

 筋骨隆々の巨体からは想像もつかない程機敏な動作で双葉に駆け寄り、その勢いのまま飛び上がり頭部目掛けて飛び膝蹴りを放つ。

『早速来たぞパプリカッター!!シャープな蹴りは正に刃物!!!』

「へえ刃物、か!双葉のナイフとどっちがするどいかな」

 空を切り裂く膝蹴りを屈んで避け双葉は不敵に笑う。そして飛び膝を外し背中を向けた敵にナイフの斬撃をお返しとばかりに叩き込む。

「ッ!!、、、、」

「今行くっピ!」

 一拍遅れて駆けつけたピーマン。

 相方に負けず劣らずの巨体から繰り出されるのはただのパンチ。

「ピノちゃん、頼んだ」

「了解ですわ、、、ぐっ!?」

『出た!Punchマン!!強烈な拳の嵐が敵を襲うぜ!!!』

 ただのパンチがピノの繰り出した鋼の槍を押し返す。

「このまま押し切ってやるっピよ」

「、、、、!?拳の勢いが止まりませんわ、、くっ!」

 数多の試合で鍛え上げられたその拳は正に完成された暴力。

 数多の試合で鍛え上げられたその肉体は尽きることなき無限の体力を誇る。

 故に、ピーマンは完成された暴力を絶え間なく相手に浴びせ続ける事が出来る。

『緑の覆面野郎、その名はピーマン!こいつはパンチしか出来ねえ、、、だがパンチなら誰にも負けねえ!!』
「渋いぜ!」「勝てるぞ!!」「一点特化こそ至高だな」

 じりじり、じりじりとピノは押し込まれていく。オーロラの様な瞳が苦し気に歪む。

127 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:29:48 ID:WLkkhD6zYY
>>126

「ジリ貧ですわね、、、、」

「ピノちゃん、、、!」

 ピノの援護に向かおうとする双葉、そこにパプリカが立ちふさがる。

「shall we dance?っパよ」

「のー!とっとと倒してピノちゃんをたすけるの!」

「オイラはそう簡単に倒れないっパ!」

 そう言うと、パプリカはドンッと周囲が揺れるほど床を強く蹴り空高く飛び上がる。

「え?」

 筋骨隆々の巨体が空を飛ぶ。そんな現象を前に思わず惚けてしまう双葉。

「行くッパ!!」

 パプリカは下に見える桃色の頭、つまり双葉に向けて全体重を乗せた蹴りを叩き下ろす。
 
「、、、!!、、ぐぅっ!!」

 我に返った双葉がすんでの所で避けるも、側頭部を僅かに掠った蹴りが脳を揺らす。

『遂に来たパプリカの空中殺法!変幻自在蹴り技のデパート!!』

『パンチのピーマン!蹴りのパプリカ!スターコンビに押され気味のオーナー二人!!まだまだ勝負は解らない!!!さあどうなる!?』

128 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:34:53 ID:WLkkhD6zYY
久しぶりの投稿です。五人が引退する事が結構ショックで、暫く投稿期間が開いてしまいました

後、ピーマンとパプリカのキャラ付けにかなり苦労しました、、、、

129 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/06 23:47:02 ID:WLkkhD6zYY
ついでに紹介し忘れていた鳴神とケリンの宝具とかの紹介もしておきます

鳴神
卑火色金 元ネタ ヒヒイロカネ(和製オリハルコン的な奴)
効果 透明化

周囲の温度を操ることで光を屈折させ透明になる宝具

ケリン
北朝将軍凱旋火 元ネタ 某北の将軍
効果 爆撃

指定した場所を爆撃する宝具

130 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/07 10:05:10 ID:CkzNkwexxM
おっつおっつ、懲りない二人は解釈一致、引退はワイもきつかったがピノ様が悲しみは時間が解決してくれるって言ってたし頑張る

131 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/07 16:28:34 ID:n88uCLbyT0
>>130
ですね、、、ちょっとずつ受け入れていこうと思います

132 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:33:21 ID:ppRH1UvxMD
>>127
「流石スター!!」「オーナーも中々だったが流石にな、、、」「見ろよオーナー達の目、絶望してないぜ」

 ピーマンとパプリカに押され気味の二人、観客達の大半は既にピノと双葉の負けを確信し始めている。

「、、、しょうがないですね。奥の手を使います」

 ピノは苦々しい顔でそう言い放つ。

 大きく後ろに飛んでピーマンから距離を取ると槍を自分の方に向け、一瞬躊躇した後ギュッと目を閉じ槍を自身の手のひらに突き立てる。

 流れ出す真っ赤な血、穂先に垂れて青く染まる。青い血を浴びた槍は怪しげに輝く。

 流れ出た血が槍に染み込み、染み込む程に槍は存在感を増す。

『これは何だ!?何も判らねえがこれだけは解る!!これはヤバい!!!』

「ぐっ、、、、ふぅ。おや、ピーマンさん。待っててくれたんですね」

 痛みに顔をしかめながら瞼を開け、ピノがピーマンの方を見ると、そこには堂々と挑戦者を待ち構える緑の覆面男が居た。

 丸太の様に太い腕を組みピノを待つピーマン。ピノが声を掛ければピーマンはゆっくりと動き出す。

133 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:34:39 ID:ppRH1UvxMD
>>132
「相手の大技は甘んじて受けるのがオイラの流儀っピ」

「成程。では次の攻撃、勿論受けてくれますわよね?」

「無論、、、、拳で受けてやるっピ!」

 お互いがお互いに近付き距離を詰める。お互いがお互いの間合いに入る。

 ピノが槍を、ピーマンが拳を繰り出す。槍vs拳、ほんの少し前にも起きた勝負。違うのは結果のみ。

 つい先程までは拳に押し返されていた槍、今度こそ拳を貫き武器としての役割を果たす。

「どうです、わたくしの槍は」

「う、動けないっピ。束縛?違う。麻痺毒?、、、違う。これは、、、生命力を抜き取られているっ、、、ピ、、、」

134 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:36:22 ID:ppRH1UvxMD
>>133
 ピーマンの体から力が抜ける。ピノが槍を引き抜けば堪らず膝をついてしまう。

『ピーマンが膝をついた!?ど、どういうことだ?』

「この槍は生きているんですよ、、、、普段は眠りこけていますが、わたくしが血を与えると目覚めますの」

「、、、、、、、、、、」

『頑張れスター!!立てスター!!お前はこんなもんじゃ無い筈だ!!』

「そうだ!」「根性見せたれ!」「立ってくれぇ!!」

 ピーマンが立ち上がる気配は無い。観客の応援が虚しく響き渡る。

「効果は貴方が言った通り『生命力の吸収』。ついでに切れ味が上がったりしますね」

「、、、、、、ないっピ」

 ピーマンの体がピクンとほんの少しだけ動く。

「ただ、、、これデメリットもありましてね。槍の能力を発動すると、わたくしの生命力も少なからず吸い取られるんですの」

「オイラは、、ないっピ」

 足に力を籠めゆっくりと体を持ち上げていく。

「だから、、、今は立っているだけでも正直辛いんですけどね」

「オイラは負けないっピ!」

『、、、、、!!!立ったぁ!!』

 遂にピーマンが立ち上がる。

135 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:37:19 ID:ppRH1UvxMD
>>134
 足は生まれたての小鹿の様に震え、体は病人の様にフラフラとおぼつかない。しかし、それでもピーマンは立っている。戦意に満ちた瞳でピノを見つめ立っている。

「、、、、、倒したと思った敵が起き上がり、お互い疲労困憊、純粋な実力は敵が上。普通に考えれば顔をしかめて愚痴の一つでも吐きたい状況、、、、でも不思議ですわ。わたくし、今凄く楽しいんですよ」

「それが戦いって奴っピよ。オーナー」

「成程」

 額に浮かんだ汗を優雅に拭いピノは槍を構える。

 今にも倒れそうな体に喝を入れピーマンは拳を構える。

「うりゃあああああ!!!!」

「おらああああああ!!!!」

 槍と拳のぶつけ合い。通算三度目の勝負。一度目は拳が、二度目は槍が制したこの勝負。三度目の結果は果たしてーーーーーー

「グフッ、、、」

「ガッッ、、、、、」

 三度目の勝負。結果は引き分け。

『ピノ、ピーマン、ダブルノックアウトォ!!!両者一歩も引かず意地を魅せ切ったぜ!!』

 ピノとピーマン、二人は同時に地面に倒れ伏す。

136 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:38:34 ID:ppRH1UvxMD
>>135
「ピーマン!!」

「ピノちゃん!!」

 一方、双葉とパプリカ。

 パプリカ優勢で運んでいた戦い、そこに一瞬の停滞が生まれる。

「、、、、よくやったピーマン。後は任せろ」

 一瞬の停滞から双葉よりほんの少し早く復帰したパプリカ。グッと足に力を籠め、床を蹴り前に飛ぶ。

「これで倒すっパ!!」

『パプリカが決めに行ったぜ!!単純強力ドロップキック!!!』

 全体重を乗せた超速の蹴り、受け流し不可能、一撃必殺の大技は、、、、双葉に届かなかった。

「な、何だ、、、これ何っパ?」

『こ、これは!?パプリカの体から突然ツタが生えて来たぞ!?』

「、、、、、ふぅ。見てのとおり植物だよ。これが双葉のちから『ナイフで切りつけた所から植物をはやして動かす』」

 パプリカの体からヒュルヒュルとツタが生え、絡みついていく。

 ツタはあっという間にパプリカを動けなくしてしまう。

「ただねぇ、これ発動するまでにかなりたいむらぐが有るんだよねー。一歩間違ってたら双葉はまけてたね」

「、、、、」

137 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:39:34 ID:ppRH1UvxMD
>>136
 ツタがパプリカの全身をギリギリと締め上げていく。最早身じろぎ一つ出来ず、声すら出せない。

(オイラはこのままあっさりと負けるのか?ピーマンはあんなに見事な戦いを魅せたというのに?)

「、、、、、うん、卑怯な勝ち方なのはじかくしてる。でも双葉たちは負けるわけにいかないの」

 パプリカの余りにも無念な表情を見て、双葉は声に罪悪感をにじませながらナイフをパプリカの首筋に当てる。

(違う、違う!!卑怯なんかじゃ無いっパ!勝ちは勝ち、ルールに従っている以上それは全て正しい勝利っパ!)

「いくよ、、、ごめんね」

 双葉がナイフの刃先を首の中にそっと沈ませていく。

(違、、う。無念なのは、、、こんなあっさりと負ける、、、オイラ、、、、自身、、、、)

 ダメージが一定量を超え、ピノの宝具『己が身こそ領地なれば(ザ・ドミニオン)』の定めたルールに従いパプリカは気絶する。

『、、、勝者は!ピノ双葉チームだぜ!』

「少し、あっけなかったな」「こう言う日もあるさ」「無数の名勝負を見せてきたあいつも、毎回名勝負とはいかんさ」

「次はせいせいどうどう、やろうね」

 勝敗が決まった。





 双葉がピノを抱え会場から出ようとした瞬間、背後からブチブチと嫌な音が聞こえて来る。

「え?」

 双葉が振り返った先、そこには幾重にも巻き付いたツタを引きちぎり、立ち上がるパプリカの姿があった。

138 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:40:00 ID:ppRH1UvxMD
>>137
『な、何が起こっている?パプリカは既に気絶している筈だぜ?』

 ザワザワと観客席からも困惑の声が上がる。

「ぜったいに双葉がたおしたはずなのに」

 フラリユラリと初めて歩くの赤子の様な足取りで双葉に近づくパプリカ。

 パプリカに意識は無い、倒れる直前に抱いた『このままでは終われない』と言う感情、ただそれだけが今のパプリカを動かしている。

「もう意識がないのに、何でうごけるの?」

 双葉のすぐ側まで辿り着くと、パプリカは蹴りを繰り出す。

 鋭く、重い蹴り、普段よりも脱力した状態から繰り出された剃刀の様な蹴りは双葉の真ん前を掠め、通り過ぎていく。

 パプリカの蹴りが通り過ぎた直後、突然双葉の体に刃物で切られた様な痛みが走る。

「ぐっ!?、、、蹴りでカマイタチがおきたの!?」

「次は、、、、、勝つ、、、、、パ」

 突然の痛みに狼狽える双葉、それを見たパプリカはいたずら気な笑みを浮かべ、今度こそ倒れ伏す。

『、、、、流石パプリカ!!!こいつもやはり魅せて来るぜ!!!!ピーマンにパプリカ!!あいつらはやっぱりすげえ!!そしてそいつらに見事勝った双葉とピノ選手!!!両チームに喝采を送ろうぜ!!』

「凄いですピノさん!!」「やっぱスターは負けも様になるな!」「桃髪のカワイ子ちゃんがあんなに強いとはびっくりだぜ!」

 双葉はピノを丁寧に抱え直し、歓声鳴り止まぬ闘技場を後にする。

139 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:40:29 ID:ppRH1UvxMD
>>138
「オイラ、しばらく修行してくるッパ」

「突然何言ってるっピ?」

 ここは医務室。試合で負けた人間が暫くの間留まる部屋。

 そこにピーマンとパプリカは居た。

「だってオイラ、あんな情けない負け方したんだから、、、、てピーマンは知らないッパか」

「いや、直接見てはいないけど、パプリカは立派に戦っていたと聞いたっピよ」 

「そりゃ、優しい&#22099;って奴ッパ。オイラは情けない負け方をして、勝った人間に罪悪感まで抱かせてしまったパ」

 パプリカはくたびれた声でそう言うと、医務室のベッドに寝転がる。真っ白なシーツが歪んで大きなシワが幾つも生まれる。

 パプリカの記憶に残ってるのは、双葉が申し訳なさそうにとどめを刺す所まで。気絶してからの事は記憶に無い。

「正直、オイラの蹴り技には限界を感じてたっパ。巨体が空を飛んで、蹴りを叩き込む。派手で威力も有る。でもそれだけ、オイラの技は所詮無駄の多い見栄え重視のモノ。ピーマンの拳技よりもずっと弱いっパ」

「、、、、確かにオイラの拳技の方が完成度は高いっピ。だけど、パプリカの空中殺法は誰にも真似できないっピ。その並外れた身体能力と天性のバランス感覚があって始めて使える唯一無二の技っピ」

「でも強くは無いっパ。強く無いならスターを名乗る資格なんて無いっパ」

 そうパプリカはやけくそ気味に言い放ち、自分の顔を両手で覆う。

 と、酷く落ち込むパプリカを見たピーマンはおもむろに立ち上がり懐から何かを取り出す。

140 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:41:10 ID:ppRH1UvxMD
>>139
「これ、何か解るっピ?」

 パプリカはゆっくりと顔を上げ、ピーマンの取り出した物を見る。

 それは黄ばんだ紙。ザラザラの茶封筒に入った古い手紙。

「手紙、、、っパか?」

「その通り。でもただの手紙じゃないっピ。これはオイラが初めて貰ったファンレターっピ」

「ああ、ピーマンがいつも大切に持ち歩いてる奴ッパ、、、、」

「パプリカも初めて貰ったファンレターを持ち歩いてたピよね?」

「勿論」

 パプリカも懐から手紙を取り出す。

 濡れたり破れたりしないよう小さなケースの中に入れてある大切な手紙。

「これをもらった時、どんな気持ちになったピか?」

「本当に嬉しかった。それで、今でもファンレターや声援を貰うと嬉しくなるッパ」

 内容を空で言える程何度も読んだソレを一文字一文字なぞる様に読み返す。

 一行読むたび、パプリカの心は少しづつ軽くなる。

「オイラ達は、勝利の為に戦うんじゃない。ファンレターを書いてくれる、応援してくれる、見に来てくれる人達を楽しませる為に戦っているっピ、、、、だから、修行に行くなんてやめるっピ。修行に行ったら試合で観客を楽しませる事が出来無くなるっピ」

「、、、、、解った。でも情けない負け方をするのはもう嫌っパ。今度新技を開発してみるっパ」

「それは良いアイデアっピね」


 この後パプリカは紆余曲折の果てに、カマイタチを起こし相手を切り裂く新技『カミソリ蹴り』を生み出す事になるが、それはまた別のお話。

141 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/16 19:58:30 ID:ppRH1UvxMD
大学の勉強が徐々に忙しくなり、前回程では有りませんが投稿が開いてしまいました、、、、
でも戦闘シーンは結構キャラごとにらしさを出せたので満足です。今度は溜めを身に意識してみようと思います。

細々とした設定集
『スパークリングチャット』
元ネタ スパチャ
双葉ちゃんとピノ様が経営する闘技場。ピノ様の宝具のおかげで、有望な選手が怪我で引退する事がない為選手のレベルが高い。

元々野球場だった廃墟を改築した建物だったりする。

『ピーマンとパプリカ』
資料が殆ど存在せず、キャラ付けにかなり苦労した存在。
結果、『スパークリングチャット』のスターと言うキャラに。

『観客を楽しませる自分』に誇りを持っており、試合において勝敗よりも観客が楽しませる事を常に意識している。

ピーマンの技はひたすらに敵を殴りつける拳のみ、パプリカの技は空に飛びあがって敵を蹴りつける物、レパートリーが結構多い。

142 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/18 12:43:48 ID:cxtvfD.nhf
おっつおっつ、ピーマンパプリカかっけぇじゃねぇか、個人的にピノ様のうりゃああが半角カタカナで脳内再生される

143 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/18 23:43:40 ID:YmAsaQcPLk
>>142
半角カタカナで書こうか迷いましたが、あの場面だと茶化す様になってしまうかな、と思い辞めた経緯が有ったりします

ピーマンパプリカを始めとした一部のキャラは(ストーリー上の都合で)登場回数がどうしても少ないのですが、そう言うキャラが出る時は出来る限り焦点を当てるので気に入っていただけたら幸いです!

144 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:46:23 ID:SVf1Tdv7Wj
>>140
『準々決勝第三回戦!選手の入場だぜ!!』

 熱気に満ち満ちた闘技場、司会の声に従い四人の選手は会場へと歩を進める。

『ばあちゃる&馬越の馬コンビ!!それに対するはエイレーン一家の家長と若頭、エイレーン&ミライアカリだぁ!!!』

「岩本カンパニーのケンタウロス馬越、強いぜあいつは」「歓楽街の元締めエイレーン一家。弱い訳がねえ!」「行け馬マスク!」

 馬越とばあちゃる、ミライアカリとエイレーンの四人はそれぞれの獲物を携え相対する。
 馬越は飾り気の無い武骨なハルバードを、ばあちゃるはシロから渡された大振りのナイフを構えている。
 対するエイレーン一家、エイレーンは古びたサーベルを一振り持ち、ミライアカリの携える黒い革製の鞭は艶めかしく光っている。

『では!試合開始だぜ!!』

 司会の天開司が試合開始の合図を出す。始まると同時にミライアカリは後ろへと下がり、逆にエイレーンはアカリを庇うように前へと出る。

『早速出たぞ最強陣形!!エイレーンが戦いミライアカリが補助に徹する!!準々決勝第三回、今に至っても未だにこの陣形を崩せた者はいない!!』

「これは厄介そうっすね」

「馬越も全くもって同意ですよ、、、、おや?」

 アカリは鞭を『エイレーン』に向けて振るう。

「ちょっ、え?何やってるんすか?」

「もっと、もっとお願いしマース!」

「もう、、、、しょうがないなぁ」

145 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:47:34 ID:SVf1Tdv7Wj
>>144
 バシン、バシンと強烈な音を奏で、鞭がエイレーンの全身を叩き打つ。

 金色の髪を快活になびかせるミライアカリが革の鞭を振るう様はひたすらに倒錯的だ。
 恍惚の表情で鞭を受けるエイレーンは完全に変態的だ。

「なぜ、公衆の面前でこの様な事を?」

「オイラは何でSMプレイを見させられてるんですかね、、、、」

 ばあちゃるにとって、エイレーン一家というのは短い付き合いながらも印象深い存在だった。

 思慮深いエイレーンに快活なミライアカリ。その二人が、今自分の前でSMプレイを敢行している。意味が解らなかった。

「、、、、ふぅ。お待たせして申し訳ないデース」

「、、、、、、ああ、大丈夫っすよ」

 鞭の音が止む。
 エイレーンは服についた埃をはたくと、&#21854;然とする二人に向けて事もなげに話しかける。
 余りの事に脳が追い付かないのだろう、ばあちゃるは何処かズレた返事を返している。

「そうですか、それは良かったデース」

「ええ、オイラ女の子待つなら何時間でも、、、、え!?」

 ばあちゃるの視界から突如エイレーンが消える。

146 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:48:31 ID:SVf1Tdv7Wj
>>145
「アガッ!?!?」

「叩っ切られてくだサーイ」

『エイレーンが消える!その正体は残像すら残さない高速移動!!数多の対戦相手を翻弄した神速だぜ!!!』

「迅いな、、、」「あのスピードタネがありそうだが、さて」「凄ぇ!」

 次の瞬間ばあちゃるの真正面にエイレーンが現れる。現れたと思った頃にはもうエイレーンのサーベルが振り下ろされている。

 ばあちゃるは何の反応も出来ず後ろに吹き飛ばされる。

「やってくれますね貴方!!」

 突如現れたエイレーン。全くの想定外。その想定外に対し馬越は即座に反応する。
 茶色い瞳をスウと細め、ハルバードの鋭利な先端を真っ直ぐに突き下ろす。

『ケンタウルスの高い身長から繰り出される突きぃ!!厚さ9.5mmの鉄板すら貫通する馬越選手の得意技だぜ!!』

「ハァッ!!」

 マグナムの如き一撃をエイレーンは受け流し、返す刀で反撃する。やる事は単純、難易度は激高。それをエイレーンはいとも簡単にやってのける。
 とっさの一撃を受け流され、体勢を崩した馬越の腹にサーベルの一撃が入る。

「く、、、これで勝てる程甘くは無いですか」

「勿論デース。アカリさんお願いします」

「OK!」

「ウビッ!?」

 いつの間にか起き上がり、背後からエイレーンを襲おうとしていたばあちゃるをアカリの鞭が襲う。
 ばあちゃるの振り上げたナイフを鞭が器用に弾き飛ばす。

147 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:49:52 ID:SVf1Tdv7Wj
>>146
「ちょっ、マジっすか」

「ナイスですアカリさん!」

「えへへー、どういたしまして!」

『ミライアカリの華麗な鞭さばきが炸裂!!まるで鞭が生きているのかの様な精度!』

「鞭ってあんな風に動くのか!」「私も鞭使ってみようかな」「金髪なのにいぶし銀な活躍だねぇ!」

 弾き飛ばされたナイフはクルクルと回りながら山なりに飛んでいき、試合場の端に落っこちる。

 ばあちゃるはそのナイフをチラリと名残惜しげに一瞥した後、直ぐに視線をエイレーンへと戻し懐に忍ばせておいた予備の武器を取り出「させまセーンよ」

 取り出そうとした瞬間エイレーンがばあちゃるに例の高速移動で近寄り、首を引っ掴んで持ち上げる。

「ぐっ、、、ちょっと力強すぎじゃないですかねハイハイ」

「それはアカリさんのスキルデスね。『鞭で打った相手を強化する能力』特別に教えてあげマース」

「成程、、、最初のアレは、、、、そう言う事っすね、、、、所で、、、、そろそろ息が、、、苦し」

 ばあちゃるの首が締まり息ができない。徐々に視界が暗く、意識が遠くなっていく。

「ばあちゃるさん!!」

 馬越が助けに入る。馬の下半身から生み出される加速力、たゆまぬ鍛錬に支えられた技術、ハルバードの重量。それら全てを十二分に発揮する一撃。十分な助走をつけてからの振り下ろし。

 何もかもを両断出来る一撃がエイレーンの頭上に降りかかる。

「グルルルルァ!!!」

「ちょっとヤバいデスね!」

「ガハッ、ゴホッ、、、、、ハァハァ、、、フゥ。助かったっす馬越さん!!」

148 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/23 23:50:21 ID:SVf1Tdv7Wj
>>147

 どんな技量をもってしても受け流せないほどの斬撃、エイレーンはばあちゃるを手放しての回避を余儀なくされる。

『強烈な振り下ろしぃ!!ハルバードの刃が血を吸いてえと唸り立ってるぜ!!!』

「流石は岩本カンパニーの馬越、強いデースね」

「おや、馬越の事を知っているんですね。光栄ですよ」

「当たり前デース。この街に住んでいてあなたの事を知らなかったらモグリですよ、、、、、ただ、ばあちゃるさん。あなたの強さには納得が行きまセーン」

「オイラ?」

 ばあちゃるが聞き返すと、エイレーンは訝し気に目を細める。
 嫌な予感がする。ばあちゃるの首筋を生温い汗が流れ落ちる。

149 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 00:02:59 ID:SVf1Tdv7Wj
一応この戦いの最後まで書きあげたのですが、眠過ぎて推敲が出来る状態では無いので明日続きを上げます

ついでに紹介し忘れてた設定をば

蟲槍『無銘』
ピノ様の使ってた生きている槍。カルロ家に伝わる槍と言う裏設定が有る。普段は眠っているが持ち主の血を吸うと目を覚まし、能力を発揮する。由来すら失われる程古い槍。

『植物操作:C』
双葉ちゃんのスキル。切りつけた所から植物を生やして操る。

『馬越健太郎』
岩本芸能社所属のV。古参のVファンならかなりの確率で知っているV。
今作ではケンタウロス要素をかなり前面に押し出しているが、実際の馬越さんはそんなにケンタウロス要素なかったりする。(動画や配信では基本胸から上しか映らない為)

150 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 13:38:48 ID:j.r55idzkF
おっつおっつ、実際限られたスペースで戦うとして馬越の威圧感凄いだろうな

151 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:36:33 ID:M8WLtJj0g3
>>148
「ばあちゃるさん、あなた平和な場所で育った人ですよね?」

「まあ、、、、そうっすけど何で解るんですか?」

「それは所作や喋り方、動きの癖とかデースね。組織の長やってれば嫌でも解るようになりマース、、、、と、まあそれは良いんです。私が言いたいのは、何故平和な環境で育ちながらもそこまで戦えるのか?と言う事です」

 エイレーンが滔々と語り出す。
 エイレーンの放つ雰囲気に押され、闘技場全体が徐々に静かになっていく。

「私が最初にばあちゃるさんを切りつけた時、妙に硬かったんデースよ。あれは何ですか?」

「それは、、、シロちゃんやリコリコに初歩的な魔術を教えて貰ったんすよハイ」

「どんな?」

「えっと、、、、まあ『触れた物体を固くする』って言うごく初歩的な魔術でオイラの服を咄嗟に固くして防御したんですよハイハイ」

 ばあちゃるは必死にいつもの通りの口調を保ち、エイレーンの質問に答える。
 エイレーンは氷の様に冷ややかな声でばあちゃるを問い詰める。

「成程。ではあなたは覚えたばかりの魔術を咄嗟に使えたんデースね、あの一瞬で。しかもそのすぐ後には私の後ろを取ろうとした。戦場で育った人間でもそこまでやれるのはごく一部デースよ。凄いですね」

「、、、、」

 重い圧迫感がばあちゃるを締め上げる。
 エイレーンの赤い瞳が『お前は異常だ』と語りかけている。

152 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:39:03 ID:M8WLtJj0g3
>>151
 薄々、可笑しいと気付いていた。それを考える程の暇がなかったから、ソレを誰にも言われる事が無かったが故に無視出来ていた。その矛盾を今突き付けられた。
 ばあちゃるはもう、一歩たりとも動けなかった。

「、、、、、、、」

「エイレーンさん、ここは戦いの場です。討論の場では有りません」

「何が言いたいんデースか?」

 馬越がばあちゃるとエイレーンの間に割って入る。 

「戯言はお辞め下さいと言っているんです!」

 関節の駆動に体の捻りを加えた渾身の薙ぎ払い。

 しかしその一撃は意識の外から飛んできた鞭によって防がれる。
 ハルバードを一番上まで振り上げた瞬間。武器の勢いが死ぬほんの一瞬、その一瞬をアカリは狙っていた。結果は成功、アカリは見事鞭で馬越の武器を巻き取る事に成功する。

「何!?」

 馬越の手から武器が奪い取られる。
 床に落ちたハルバードがガランと大きな音を立てる。
 馬越は自らの獲物が回収できないと一瞬で判断し、馬の下半身による蹴りを繰り出そうとするが時すでに遅し。

 馬越の首にサーベルが突きつけられる。

「一度見せた手に引っ掛かるのを見るに、冷静さを失っている様デースね」

「当然ですよ、肩を並べて戦う仲間を侮辱されて憤慨しない戦士がおりましょうか」

「、、、それは、すみませんね」

「それに!馬越は貴女にもキレてるんですよ」

 ギリギリと音を鳴らさんばかりに歯を&#22169;み締め、忌々し気な顔で語気を荒げる。

153 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:40:58 ID:M8WLtJj0g3
>>152

「『エイレーン一家』、、、、歓楽街を縄張りにする一家。水商売の人間に対する暴力やヤクの取引を取り締まり、それの対価として店から金を貰い成り立っている一家だと聞いていました。住民曰く支払う金は然程高くなく、理由が有れば支払いを減らしてくれる。仁義の一家だと聞いてました」

「、、、、、、」

「だから馬越、今日戦うのを凄い楽しみにしていたんですよ。そんな一家の長は一体どれ程素晴らしい人間なのか、ワクワクしてたんですよ」

 エイレーンに顔を近づけ、吐き捨てるように馬越は語る。
 首筋に突き付けられたサーベルの刃が浅く食い込む、しかし馬越はそんなのお構いなしとばかりにズイと威嚇するように近付いていく。

「なのに蓋を開けてみたらどうです?口先で相手を揺さぶる、姑息な手段を取る浅ましい姿!勝手な失望だとは理解しています、、、、ですが!」

「馬越さん。この街で綺麗事を通す為には沢山の暴力と&#22099;が要るんデースよ。歓楽街は今の『エイレーン一家』が守り切るには余りにも大きい。私達がこの大会で優勝すれば名声が高まり、組織を拡大する事が出来るかも知れない。ですが、もし無様な結果を出せば完全に逆効果。ここで負ける可能性を作る訳にはいかないんデースよ」

 苦悩に満ちた顔でエイレーンは答える。額に刻まれた皺はより深くなり、瞳に込められた意思が悔し気に揺らぐ。

「己の品格を貶めようとも、目的は果たしマース」

154 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:42:55 ID:M8WLtJj0g3
>>153
 エイレーンは腕に力を籠め、馬越の首にサーベルの刃を押し込「ウビィ!!」
 エイレーンの顔面に何かが飛んでくる。白く、小さい、文字の書かれた長方形の紙。名刺だ。

「うわっ!だ、誰デースか!?」

「ばあちゃる君っすよ。エイレーンさん!魔術で硬化した名刺を喰らえハイハイ!!」

 エイレーンが咄嗟に避けた名刺が試合場の壁に突き刺さる。

「硬化させた名刺、硬度は鋼鉄、鋭さも十分!どうですかねハイ」

「な、何で、、、、?あそこまで言われて、なぜそんなに早く立ち直れるんデースか!?」

「、、、、、こんなに小さな紙を正確に投げるなんて以前は出来なかった。エイレーンさんの言う通り、オイラは何かが可笑しいんでしょうねハイ」

 ばあちゃるは背筋をシャンと伸ばし、エイレーンの顔を真っ向から見る。

「エイレーンさんに指摘されて、オイラは戦うのが怖くなった。以前のばあちゃる君と今のオイラの隔たりを認めてしまうようで、怖かったっす」

「でしょうね、誰でも怖いですよ、、、何でばあちゃるさんは克服出来たのデースか?」

「いやほら、エイレーンさん『己の品格を貶めようとも、目的は果たす』と言っていたじゃないっすか。あれを聞いた瞬間この言葉を閃いて、それで吹っ切れたんでふよハイ」

「『己が己でなかろうと、目的は果たす』、、、、だからオイラは戦う事を恐れないっす」

 堂々とした声でエイレーンに向かってそう言い放つ。

「アハハハハ!!エイレーンちゃん、心理戦はばあちゃる君の勝ちみたいだね!」

「アカリサーン、そこまで笑わなくてもいいじゃないデースか」

 アカリは頬を膨らませるエイレーンを指差し、端正な顔に満面の笑みを浮かべる。

155 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:44:05 ID:M8WLtJj0g3
>>154
「アハハ、ごめんごめん。でもエイレーンちゃん凄く良い顔してるよ」

「おや、そうデースか、、、」

 アカリの指摘した通り、エイレーンの顔には笑みが浮かんでいた。まるで口うるさい大人を悪戯に引っ掛かけた子供の様な笑顔だった。

「ハイハイ馬越さん、もう大丈夫です!第二フォーメーションお願いっす!」

「了解です、行きましょう!」

 ばあちゃるが馬越の背に勢い良く飛び乗る。

『これは何だ!?ばあちゃる選手が馬越選手に騎乗したぞ!!!!一体何をするつもりだ!?』

「司会が喋り出したぞ」「ちょっと嬉しそうだな」「さっきまで解説とか出来る雰囲気じゃなかったしなぁ、、、」

 司会が解説を再開し、観客の方にも徐々に熱気が戻り始める。

「馬越さん!考えがあるっす!!」

「どんな考えですか?」

「アカリさんのスキル『鞭で打った相手を強化する能力』によってエイレーンさんは強化されてるっす。だからアカリさんを倒せば、エイレーンさんは弱体化すると思うんですよハイハイ」

「成程!」

 馬越はばあちゃるを乗せ、アカリ目掛けて一直線に走る。

「させまセーン!」

「押し通らせて貰いますよハイハイ!!」

『空飛ぶ名刺の雨あられ!まともに受ければ血の雨が降るぜ!!』

「くっ、、、」

 馬越を止めようとするエイレーンに向け、懐から取り出した名刺を雑に何枚も投げつける。
 エイレーンに対し有効打にこそならないものの、何とか足を止めさせる事には成功する。

156 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:45:59 ID:M8WLtJj0g3
>>155
『遂に辿り着いたぞ馬コンビ!アカリ選手を倒し、勝利する事は果たして出来るのか!?』

 二人は遂にアカリを間合いの中に捉える。

 何かする隙は与えない。アカリが鞭を振るう前に、エイレーンが追いつく前に馬越はアカリに蹴りを「まだまだぁ!」
 何を思ったのか鞭を投げ捨て馬越に殴りかかるアカリ。

 速くは有るが軽い一撃。何の痛痒も与えない筈の攻撃は、どういう訳か馬越の体を制止させた。

「これで、、、、、、あ」

「ちょっ、馬越さん!?、、、うわっ!」

「アカリの能力がいつから一つだけだと、、、、あばっ!?」

 急停止した馬越の体、その上に乗っていたばあちゃるは慣性の法則によってアカリの方へ一直線に投げ飛ばされた。

『な、何と!?前に投げ出されたばあちゃる選手の膝がアカリ選手の顎にクリーンヒットォ!そしてKOだぜ!!』

 偶然にもばあちゃるの膝がアカリの顎を打ち抜く。
 勝利を確信した瞬間に予想外の一撃。それ程丈夫な訳では無いアカリはあっけなくやられてしまう。

「きゅぅ、、、、」

「え?マジっすか、やった!これで勝ちの芽が「ないデース」

「ウビバ!?」

 ばあちゃるの背後から叩きつけられる一閃。
 すんでの所で服を硬化させ致命傷は避けるが、エイレーンの圧倒的な腕力に吹き飛ばされる事は避けれない。

157 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:46:51 ID:M8WLtJj0g3
>>156
「あれ、、、?思ったより弱体化してないっすね」

「ええ、この強化はアカリさんが倒れても暫く続くんですよ」

 成すすべなく床に転がるばあちゃる。
 頼みの馬越も動く気配が無い。 

「つ、つまり?」

「まだバリバリ強化状態デース」

「そんなぁ、、、、じゃ、じゃあアカリさんのアレは何ですか?馬越さんを無力化した奴っす」

「秘密デース」

「えー、戦った仲じゃ、、、ふべっ」

 ばあちゃるのマスクとスーツの間、唯一肌が露出している場所にサーベルが差し込まれる。
 あっという間にダメージが一定量を超え、ばあちゃるは気絶することになる。

『勝者エイレーン一家!!!未だ底の知れぬこの二人!そして熱く、愉快な試合を魅せてくれた馬越とばあちゃる!この四名に喝采を送ってくれ!!!!』

「よくやった!!」「馬にしてはやるじゃん」「さっすがエイレーン一家!」「岩本カンパニーも負けてねぇ!!」

「楽しかったデース、、、、本当にいつぶりでしょうかね。こんなに楽しい戦いは」

 あらん限りの歓声、その中に一人立つエイレーンは楽しげにそう呟き、会場を後にする。

158 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 22:48:44 ID:M8WLtJj0g3
>>150
でしょうねぇ、、、、ケンタウロスって普通に幻獣なのでfate的に考えると相当ヤバいんですよね

159 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 23:00:21 ID:M8WLtJj0g3
ばあちゃる伏線回&(ちょびっとだけ)成長回でした

硬化の魔術は衛宮さんが初期から上位互換の強化魔術使えてたし、才能無い素人のばあちゃるでもこれ位は使えても問題ない、、、筈

それとちょっとしたお知らせです。pixivの方にも連載してみる事にしました、ユーザーネームはasdです。ここでの連載を辞める予定はありません。
理由は幾つかありまして

初期のガバを修正したい
どれだけの人が読んでくれたのか可視化したい
pixivで推しの布教をしたい
pixivは二次創作の規約が異常に緩い

の四つです。

それと重要な知らせです。シロちゃんのキャンパスアートとマグカップが明日届くようです!いやったぁ!!

160 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/24 23:57:07 ID:XtbDmfoGkM
おっつおっつ、プロデューサー足るもの名刺手裏剣位使えないとね
後キャンパスアート&マグカップおめでとう

161 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/25 18:51:01 ID:4MGu/x/GmD
>>160
まだ届いていませんが今から楽しみです!
馬は名刺手裏剣だけでなく、様々な技を使いこなして味方をサポートするカズマさん的ポジションになる予定です!!

162 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 20:29:02 ID:79Zlua7r9W
>>157
「フゥ、、、、」

 ばあちゃるは短くため息をついて空を見上げる。



 ここは医務室、では無く闘技場の外。
 馬越と共に闘技場の外壁にもたれ掛かり、太陽と人口の光に照らされたグーグルシティを眺めていた。

「ちょっと疲れたっす」

「そう、ですね」

 馬越は紙煙草を箱から取り出し咥え、ライターで火をつける。
 箱には鮮やかな青で描かれた孔雀と『PEACOCK』の文字列が描かれていた。

「『ピーコック』ですか、初めて見る銘柄ですねハイ」

「かなり珍しい銘柄ですからね、、、、いちいち取り寄せてもらってるんですよコレ。ばあちゃるさんも吸いますか?」

「うっす、有難く吸わせて頂くっす」

 いつも被っている馬のマスクを軽く持ち上げ、咥えた煙草に火をつけてもらう。
 久しぶりに吸う煙がばあちゃるに少々の懐かしさと独特の風味を運んで来る。

「これ結構旨いっすね」

「ですよね。マイナーなのが不思議なくらいですよ、、、、ま、味だけじゃダメって事でしょうね。正しいだけの理想と同じですよ」

 馬越は自嘲気味に笑いながらそんな事を呟く。
 吐き出した煙がビル風に吹かれ散り散りになって消える。

163 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 20:30:27 ID:79Zlua7r9W
>>162
「どうしたんすか馬越さん?」

「いや、ね。エイレーンさんの言っていた『綺麗事を通す為には沢山のウソと暴力が必要』と言うセリフ、馬越に刺さるなぁと思いましてね」

「悩みが有る感じっすか」

「ええ、少し愚痴を吐いても良いですか?」

「勿論。オイラで良ければ付き合いますよ」

 馬越は根本まで吸った煙草を灰皿に捨て、ポツリポツリと話し始める。

「馬越の所属している『岩本カンパニー』の目的は、『グーグルシティの外に点在する難民コミュニティの支援』です」

「素晴らしい目的じゃ無いですか」

「目的は、我ながら素晴らしいんですけどね。現実は中々上手く行かないですよ。何にしても金が足りない、やってる事は殆ど慈善事業なので収入なんか殆ど無いですから。本当なら汚い事やってでも金をひねり出すべきなんでしょうけどね」

「目指せる時点で凄いと思いますよハイ」

 ばあちゃるの慰めに馬越はゆるゆると首を横に振り否定する。

「ばあちゃるさん。結果は出てないけど頑張りました、で褒めて貰えるのは子供までですよ」

「そりゃ、そうっすけど」

 ばあちゃるは歯切れ悪く答えを返す。
 咥えたままの煙草が所在なげに揺れる。

「、、、すみません。今のは八つ当たりでしたね」

「そう言う時もあるっすよ」

「そう言ってもらえると有難いです。では、馬越はそろそろ」

「あ、ちょっと待って下さいっす」

 帰ろうとする馬越をばあちゃるが呼び止める。
 少しだけ面食らった顔の馬越に質問を投げかける。

164 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 20:32:52 ID:79Zlua7r9W
>>163

「一つ質問なんすけど、なんで馬越さんは岩本カンパニーに入ろうと思ったんですか?」

「なんで、、、ですか。そうですね、『理不尽な事を見ると腹が立つ』からでしょうね。許せない訳じゃないんですよ、ただ腹が立つんです」

「だから岩本カンパニーに入ったんですねハイ」

「そうです、街に入れずカカラの脅威に晒される難民が居る、と言う理不尽には昔からムカムカしてたんですよ。だから岩本カンパニーの仕事は馬越の天職でしたね」

 微かに熱を帯びた声で馬越は語る。
 理知的な茶色い瞳の奥に情熱の光が灯る。


「ま、理由はそんな所ですよ」

 馬越は二本目の煙草を取り出し火を付ける。

「おや、二本目行っちゃうんすか」

「普段は一本で終わりですけどね、今日は特別です」

 両の目を閉じ吸い込んだ煙をゆっくりと味わう。
 赤く静かに燃える火が、煙草の胴をジリジリと燃やし灰に変える。

「こんなに愚痴吐いといてなんですけど、馬越はやり方を変えるつもりは無いですね」

「そうなんすか?」

「理不尽が大嫌いな馬越が『正しい事をする為に汚い事をしなくちゃいけない』なんて理不尽、我慢出来る訳が無いですからね。例えエイレーンさんの言っていた事が事実でも、それが確定するまで馬越は過程にこだわり続けますよ。今日みたいに妥協したくなる日はありますけど、そこで妥協したら一生後悔すると思うので」

165 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 20:33:18 ID:79Zlua7r9W
>>164

「何というか、大変な生き方っすね」

「全くです。でもほら、馬鹿と煙は高い所へ、、、なんて良く言うじゃ無いですか。だから馬越も馬鹿の一員として高い理想を持ち続けてやりますよ」

「アハハ、じゃあ馬鹿仲間としてお願いがあるんすけど、二本目貰えますかハイ」

「勿論良いですよ」

 グーグルシティの片隅で二人分の煙が立ちのぼる。
 煙は高く、空高くのぼっていた。

166 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/30 21:01:00 ID:79Zlua7r9W
物理実験のレポートやらなんやらが重なり、結構忙しかったのでかなり短めです、、、、、


馬越さんとエイレーンさんは立場や考え方をかなり対照的にしてみました

目的に向かって邁進しつつも現実との兼ね合いに苦しんでいる、と言う点では同じでも、それぞれの向き合い方は違う感じですね

(この作品内においては)未だ大きな挫折を経験していない馬に対して、『今は良いけど、壁にぶち当たった時どうするの?』と言う問いかけを遠回しに投げかける役割も担って頂きました


細々とした設定
岩本カンパニー
元ネタ 岩本芸能社
グーグルシティの外に点在するコミュニティへの支援を目的として生まれた民間企業
民間企業と言いつつもやってる事はほぼボランティアであり、収入の殆どはパトロン頼り。
メタ的な話をすると味方サイドに金があると話があっという間に終わる為、味方サイドの組織は基本貧乏になる。

グーグルシティから遠くに行く事が多い岩本カンパニーと、『楔』の探索をする為遠方の情報も欲しいブイデアとで利害が一致しているため、緩やかな同盟関係を組んでいる。

167 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/31 10:07:15 ID:LoahYLeD14
おっつおっつ、ご無理はなさらぬよう……

168 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/05/31 18:29:06 ID:gbhVIh5Ybo
>>167
無理のない速度で書いてるので大丈夫です!
受験終わってからずっとダラダラしてたせいで大分鈍っているだけなので、感覚が戻れば問題なくなると思います

169 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:42:08 ID:kt/WmDD8N0
>>165
『準々決勝最終試合! 『グーグルシティ防壁構築戦線』『カカラ変異種異常発生』『マフィア連合によるクーデター』『同時多発サイボーグ狂化テロ』、、、様々な街の危機を救った英雄夫婦! 『蟷螂』のセバスさん&『蜜蜂』のメアリーさんVS謎の少女シロ&ニーコタウンの大ボス神楽すず!! 互いに劣らぬビックマッチだぜ!』

「ガキの頃に何度も本で読んだ英雄の戦いが見れるとは!」「ニーコタウンのボス、お手並み拝見だな」「シロ、、、、あんなに強い娘どこから来たのかしら」

 沸き立つ闘技場、戦いの始まりを待ちきれない観客達の前に四人の戦士が躍り出る。

「二つ名で呼ばれると恥ずかしいんですがね、、、」

「変な所でシャイなのは老いても変りませんわねアナタ」

「すずちゃん、作戦は覚えてるよね」

「勿論です、、、、えっと、真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす、でしたよね」

 真っ白な髪に髭を蓄えたセバス、フォーマルな執事服の袖は捲り上げられ、露わになった二本の腕からはそれぞれ大きな刃が飛び出しており正にカマキリと言った風体だ。
 古風なメイド服に身を包んだ老婆エミリー、メイドらしい上品な立ち姿の中で左腕に取り付けたパイルバンカーが凄まじい異彩を放っている。
 白髪の美少女シロが携えるのはハンドアックス。愛用している銃は大会のルール上使用出来ない為お休みだ。
 眼鏡がよく似合う緑髪の少女神楽すず、その手に持つは暴力の化身釘バット。愛用の火炎放射器はシロと同じくお休みとなっている。

170 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:43:28 ID:kt/WmDD8N0
>>169
『試合、、、、開始!』

「行くよすずちゃん! まずはセバスから倒そう!」

「ハイ! 絶対にた、、、うわぁ!?」

「急がば回れ、で御座いますよ」

 シロとすずは二人掛かりでセバスに近付き、襲い掛かろうとした瞬間すずの背後に現れる影、エミリー。

『相手の意識の隙間をすり抜ける移動方! 熟練の』

「いつ背後に!?」

「御二方はセバスに意識を向けている様子でしたので。それ」

「つっ、、、!」

 エミリーの左腕がゴウと唸り鉄杭を吐き出す。避けづらい胴体を狙って放たれたソレを、すずは身を屈める事で辛うじて避ける。
 真っ黒な鉄杭の先端がすずの背中に触れてそこで止まり、パイルバンカー本体に帰っていく。額に玉のような汗が幾つも浮かぶ。

『蜜蜂の針がすずを襲う! 誰もが恐れた必殺の一刺し!!』

「、、、、クソ! お返しだぁ!」

 振り返りざまのフルスイング。豪風を巻き起こし迫るスズ渾身の一撃はーーー間に割り込んだ二本の刃に防がれる。

「私を忘れては困ります」

「忘れてなんか居ないよぉ! おほほい!」

 シロがアホ毛をぴょこんと揺らし、すずの攻撃を防ぐため足を止めたセバスに手斧を叩き込む。

 素早さに重点を置いた一撃。武器を振り上げる、と言う動作を切り捨て、代わりに前方への踏み込みと体重移動でもって手斧を加速させ最小限の威力を確保した、叩き付け。

171 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:45:19 ID:kt/WmDD8N0
>>170
「くらえぇ!! おじいちゃん仕込みの斧術!」

「甘い! エミリー!」

「はいはい」

『おおッと!? エミリーさんのパイルバンカーがシロ選手を掠めた! セバスさん越しの正確な一撃だ!!』

「ちょっ、マジィ!?」

 シロは自身の直感に従って首を捻る。さっきまで首が存在していた場所を鉄杭が掠めていく。
 もし当たっていればシロはそこで終わっていただろう。

「シロさん!」

「シロは大丈夫。やっちゃって」

「ハイ! 行くぞ私は!!」

『すず選手の全身が緑色の光を帯びたぜ! 何か来る!』

「おっと、これは不味い」

 全身から緑色に光る魔力を放出するスズが、右足を力いっぱいにドンと踏み込む。次の刹那すずの右足を起点に魔力の爆発が巻き起こる。
 何が起こるのか知っていたシロはいち早く距離を取り、続いてエミリーを素早く抱き上げたセバスが後ろへと飛ぶ。

「ぐっ、、、少し重くなったんじゃないか、エミリー」

「アナタの足腰が老いたんですよ」

 結果として、相手から距離を取ることには成功したが、相対する二人にダメージを与える事は出来ていない。これでは振り出しに戻っただけだ。
 むしろすずちゃんの大技を使わされた事を考えるとマイナス。あれは何度でも使えるモノでは無い。蒼い瞳を悔し気に細め、シロはそんな事を考える。

172 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:46:48 ID:kt/WmDD8N0
>>171
 巧い。シロは二人をそう評価する。

 エイレーン一家の超人的な戦闘技術、ピーマンやパプリカの常識外れなパワー、馬越のような特別な種族の生まれ、鳴神やケリンみたいな強い能力、二人にそれらの強みは無い。いずれの要素においてもシロ達とそれほど差はない。
 強いて言うならばあちゃるが近い。自分に出来る事を把握し、適切なタイミングで適切な行動をする。ばあちゃると違うのはその完成度だ。
 数多の修羅場を潜り抜けた、数十年分の濃密な経験が二人の強さを強固に支えている。

 では、それらを踏まえた上でシロとすずちゃんが上回っているものは何か? それはきっとーーー

「すずちゃん、作戦変更するよ」

「解りました。どんな作戦ですか?」

「賢く行って、ぶっ飛ばす」

「了解です、、、けどどうしてですか?」

 ーーー若さだ。
 首を傾げるスズに、シロは指を二本立てて説明する。

「まず一つ、エミリーちゃんのパイルバンカーは当たればお終い、だから隙は少ない程良い。
二つ目、あの二人はとっても強いけど、それでも老いてるからね。タフネスやスタミナは少ない筈。なにか当てさえすれば勝利は近づく」

 そう言われたすずが相対する二人をよくよく観察してみれば、セバスの白く老いた髭の間からは既に乱れた息が漏れ、メアリーの立ち姿には僅かに疲れが見える。

173 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:48:28 ID:kt/WmDD8N0
>>172
「確かに。じゃあ、、、、下の方を、ちょっと破壊!」

 すずの獲物がゴルフクラブのような軌道を描き疾走する。背後から前方へ、闘技場の床を砕きながらバットを振り抜く。砕かれた床は無数の破片となってエミリーとセバスに襲い掛かる。

「いいねすずちゃん! シロも続くよ!!」

『すず選手の遠距離攻撃! 当たれば痛手は免れぬ破片の弾幕だぜ!』

「、、、ほう、面白い」

 破片の嵐、そのすぐ後ろから二人に迫るシロ。
 破片を避ければシロが手斧を叩き込み、シロに意識を割けば破片を食らう。敵に不利な二択を迫り判断能力を奪う、古典的かつ効果的な戦法はーー

「面白いが、まだ甘いですな」

「うっそでしょ?」

『破片を切り落とし、返す刀でシロ選手に切りかかったぁ! 一歩間違えれば敗北必至の所業を、顔色一つこなす! それがこの男!!』

「判断の早さだけは衰えませんわよねアナタ」

「衰えないよう毎朝シャドーボクシングしてるからでしょうな。知ってるだろエミリー」

「あれ五月蠅いから辞めて欲しいんですけどねぇ」

 破られた。
 急所に飛んできた破片だけを切り落とし、そのままの勢いで反撃したセバス。セバスの背後に移動し難を逃れたエミリーと軽口を叩き合いながらも、その目はシロを瞬き一つせずに観察している。

 しかし、まだ終わってはーーー

「おや? もう一人の御方が見当たりませんね。今見える範囲にはおらず、背後に気配も無い。上ですか」

174 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:49:58 ID:kt/WmDD8N0
>>173
 気付かれた。
 エミリーのパイルバンカーが上方向に炸裂し、空から襲い掛からんとしていたすずを捉える。

「づっ?!」

「すずちゃん!」

「今のは良い手でした。下手をすれば食らってましたわ」

「その鋭い観察眼、相変わらずだなエミリー」

「毎朝、新聞のクロスワードで鍛えてますからねぇ」

「新聞を読む前にクロスワードのページだけ引き抜くのだけは辞めて欲しいんだがな、、、、」

 シロが気を引き付けている間に、すずちゃんがエミリーに奇襲を仕掛け無力化する作戦。即興とは言えここまで見事に破られるとは。

 ギラリと銀色に光る二本の刃、セバスが持つその刃に切り裂かれた腕が今更痛みを訴えてくる。

「くっ、、、」

 強力なパイルバンカーの衝撃を逆に利用し、遠くに弾き飛ばされる事ですずは再度距離を取る事には成功している。しかしその代償が余りにも大きい。
 鉄杭に削られた足がジクジクと痛む。

 ピノの宝具『己が身こそ領地なれば(ザ・ドミニオン)』の効果に守られているこの闘技場で本物の怪我を負うことは無い、、、、無いが、その痛みは本物だ。
 痛みは動きから精彩を、人から戦意を奪う。

「ピノ様のご友人方、貴女達は本当に強い。同じ頃の私よりずっと強い」

「でも今の私達には僅かに届かないですわ。年とは取るものではなく重ねるモノ。昨日の私達より、今日の私達の方が強い」

「研鑽を怠らない人間の最盛期とは寿命を迎える、正にその日で御座います」

175 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/17 23:56:15 ID:kt/WmDD8N0
 かなり久しぶりの投稿です。再レポートと新しいレポートが重なってデスマーチ状態でした、、、、

 真っ赤に添削されたレポートを返された時は一周回ってちょっと笑っちゃいました

 今回のセバス&エミリーVSシロちゃん&ボス戦ですが、ちょっとセバスとエミリー強くし過ぎた気がします、、、、
 老人になっても前へと歩み続けられたらなぁ、と言う個人的な老いへの願望を込めたキャラなので、気がつくと贔屓しそうになるんですよね。

176 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/18 14:55:08 ID:houbH7A5EN
おっつおっつ、お疲れさまです。私は仕事で大ポカやらかしたので精神的に死んでます。進み続けることは難しい事なんじゃ……

177 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/06/18 18:56:00 ID:jb1FsSEiBw
>>176
ですよねホント、、、、

178 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:23:39 ID:8p42rBfdXh
>>174
 エミリーとセバスはそう言い放つ。その声からは己の強さへの信頼と誇りがにじみ出ている。

「『Mode shift Overload』御二方への敬意を表し、最高火力で葬らせて頂きたく」

「『Mode shift Bee sound』体への負担が甚大なので、まず使用しない奥の手でございますわ」

 セバスの全身から青白い火花が飛び散る、周囲が揺らめく程の膨大な熱が放出され、赤熱した刃がセバスを赤く照らす。

 エミリーの持つパイルバンカー、その中に収められた鉄杭。ソレがブゥゥンと蜂の羽音の様な異音をかき鳴らし猛然と回る。

『これはぁ!? もしかしなくても、あの有名な必殺技! マジの強者にしか使わないリーサルウェポンだぜ!!』

「爆発的に身体能力を上げるOverloadに!」「全てを削り取るBee sound!」「実際の迫力はやっぱり違うぜぇ!」

 二人の出した奥の手に観客が沸き立つ。

「私は、、、、シロ様を殺らせて頂きます!」

「すず様、御覚悟でございます!」

 真っ赤な残光を走らせ迫るセバス、すずの方にはエミリーが行く。

179 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:25:09 ID:8p42rBfdXh
>>178
 蒼い瞳をキョロキョロ回して勝機を探し、疲れた脳ミソをグルグル回して勝ち筋を考える。すずちゃんは今にもやられそうだ、宝具も間に合わない、周囲に利用出来るモノも無い、手斧を投げつけたとして何の意味もない。不可能が延々とループしてゆく。
 シロに迫る二人の姿がゆっくりに見える。走馬灯と言う奴だろうか、きっともう、本能が敗北を受け入れて「頑張れシロちゃん!」

 聞き慣れた声がシロの鼓膜を揺らす。

「、、、、!?」

 声のする方を見れば、そこにはばあちゃるが居た。いつものふざけた雰囲気など投げ捨てて、一生懸命に応援するばあちゃるが居た。
 シロの中から『諦め』と言う毒が消える、体に力が戻る。

 勝てるかどうかなどもう気にしない、全力を出し切ってやる。手斧を捨て、拳に魔力を集め、切り札を「後は任せましたシロさん!」

 エミリーのパイルバンカーがすずを貫く直前、すずの投げた釘バットがシロとセバスの間に割り込む。すずの残存魔力を全て流し込まれたソレは、床に接触した瞬間にはじけ飛ぶ。

「ぐっ、、、」

「よっ、しゃぁ!」

『すず選手が! 己を犠牲に隙を作り出したぜ! さあシロ選手、これを生かせるか!?』

 バットの破片をもろに受けたセバスの体が大きくよろめく。

 完璧な不意打ち。己の死を一切恐れず利用すると言う、戦場であれば有り得ない行動。この闘技場だからこそ迷い無く実行出来た不意打ち。
 数多の戦場をかいくぐって来た二人だからこそ引っ掛かった一手。

180 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:26:55 ID:8p42rBfdXh
>>179
「任されたよすずちゃん! 真名開放! 『唸れや砕け私の拳 ぱいーん砲』!!」

 そして、シロはこの不意打ちが行われる数舜前から宝具を放とうとしていた。故に、宝具の発動が辛うじて間に合う。

 宝具『ぱいーん砲』、魔力を注ぎこんだ量に応じて威力が跳ね上がる殴打。

「いっけええええ!!」

「ぐぅ、、、が、、、、」

 黄色い光を纏った拳がセバスを打ち抜く。

 如何に強かろうと体は老人、当たれば脆い。セバスの&#30246;せ細った体はくの字に折れ曲がり、吹き飛ばされ、闘技場の壁に叩きつけられ、動かなくなる。

『すず選手の作ったチャンスを生かし切った!! これで一対一! だが、まだ一対一! エミリーさんが残っているぜ!!』

「そうですわよ」

 すずの胴体から鉄杭を引き抜いたエミリーがシロの方へとやってくる。
 シロを倒す為、異音と共にやってくる。

「これで、終わりで御座います!」

「終わらないよ、もういっちょ開放! 『唸れや砕け私の拳 ぱいーん砲』」

 魔力が殆ど空の体で、宝具をもう一度発動する。

 宝具を十全に発動する事は叶わない。不安定な光を纏った拳と、回転するパイルバンカーが真っ向から衝突する。

「おりゃあああああ!!」

「勝ちを取らせて頂きます!」

 双方の大技がぶつかり合う。互いに爆発力に長けた一撃。

 シロの蒼い瞳は闘志に燃え、真っ白いアホ毛は戦意たっぷりに揺らめく。しかしーー

「くっ、、、」

 ーーーシロの宝具が徐々に押され始める。

181 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:30:27 ID:8p42rBfdXh
>>180
 かなりの無理をして放った為宝具が不完全であること、そしてエミリーのパイルバンカーが回転し、シロを削り取ろうとしているせいだ。

 もし、シロの魔力が十全ならば、エミリーが奥の手を出していなければ、シロが押し勝っていただろう。しかし現実は違う、シロが押されている。

『おおっと!? シロ選手が押され気味だぁ!』

「、、、、負ける訳にはいかないんだよぉ!」

「かなりの僅差ですが、これで終わ、、、、ゴフッ」

 シロの拳が完全に押し切られるその直前、エミリーの口が血を吐き出す。

「大丈夫!?」

「お気になさらず、ちょっとツケを払っただけで御座いますわ」

 口元を抑え、エミリーは後ろによろめく。

 パイルバンカーは強力ではあるものの、打つたびに強烈な反動が全身を襲う諸刃の剣でもある。内部の機構で反動を軽減し負担を軽減させているが、それでも無視できるモノでは無い。

 そして、『Mode shift Bee sound』パイルバンカーに内蔵された鉄杭を高速回転させる事で威力を上げる奥の手。しかし、鉄杭が回転する際に内部が過剰な熱を帯び、反動を軽減する為の機構が焼け付いき、反動をモロに受けてしまうのだ。

 すずに一撃、そして今一撃、計二撃。たったそれだけでエミリーの体は深く傷ついていた。

「この程度で血ィ吐くとは、鍛え方が甘かったですわ」

「ねえ、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫ですわ。ほら早く、お構え下さいな」

 心配した顔でこちらを見つめるシロに、エミリーは皺くちゃの顔に不敵な笑みを浮かべ啖呵を切る。

 衰えた足腰を、脆くなった骨を、細くなった筋線維を、そして未だ衰え無き意思を総動員し三撃目を狙いすます。

「、、、、、解った、真名、開放『唸れや砕け私の拳 ぱいーん砲』」

182 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/01 23:33:14 ID:8p42rBfdXh
>>181
 魔力が空っぽになったシロの体、奥底に残った魔力をこそげ落とし、己の存在を切り詰めて魔力を捻出する。

「これで、最後で御座います!」

「その通り!!」

 余力全てを使い何とか放った鉄杭と、消えかけの光を纏った拳の衝突。結果はーーーー

「ああ、、、、私の負けですか」

「シロの勝ちだよ」

 ーーー僅差でシロの拳が勝った。
 もう一度同じ事をすれば結果は解らない。それくらいの僅差だった。

「後数年若ければ、エミリーちゃんの勝ちだったよ」

「それは、、、、あり得ませんわ。私達は今もなお成長して、、、、おりますもの。数年前の私より今の私の方が強いですわ、、、、」

「そっか、そうだったね」

 エミリーは崩れる様に倒れこむ。

『、、、、!! 勝者! シロ選手&すず選手ペア!! 大方の予想を覆し勝利したペアに、盛大な喝采を頼むぜ!』

「マジかよ、、、」「新たな伝説の『誕生』だ」「おめでとうっす! シロちゃん、すずすず!!」

 歓喜と驚愕の混じった喝采を背に、シロはすずを抱えて闘技場を出る。

183 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/02 00:03:20 ID:8p42rBfdXh
仲間の応援がきっかけで勝利すると言う、ベタ過ぎて近年では逆に珍しい展開でした。王道は書いてて楽しいです。

細々とした設定、及び追加設定
宝具『ぱいーん砲』
ランク:C
魔力を注ぎこんだ量に応じて威力の上がる殴打。実のところ、これ単体ではそこまで強く無い。
ただし、とあるスキルと合わせて使うとかなりえげつない事になる。

セバス
 ピノ様の執事であり、全身の殆どを改造したサイボーグでもある。
 改造したのが50年も前である為、体内の機械部品の殆どが型落ち品。古くなりすぎて、スペアパーツが値上がりしているのが最近の悩み。
『Mode shift Orverload』
 全身のパーツにエネルギーを過剰供給し、性能を爆発的に上昇させる切り札。
 下手をしなくてもパーツがぶっ壊れるため、かなりのハイリスク技。

エミリー
 ピノ様のメイドにして、セバスの妻。
 生まれつき身体能力が人より高く、若い頃はパイルバンカーを実質ノーリスクでぶん回していた。
 若い頃は基本力任せかつ無駄打ちする癖が有ったが、老いてからはその癖が無くなり、力に頼らない技術も身につけた為、本当に年取ってからの方が強かったりする。

『Mode shift Bee sound』
 発動した時に発せられる異音が蜂の羽音に似ている為、こう名付けられた。
 アホ見たいな威力と引き換えに反動がヤバくなる。

184 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/02 05:58:28 ID:udAoC4OiOJ
おっつおっつ、熱い戦いでした。最近暑いし体調お気をつけて。

185 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/02 16:16:42 ID:EPjb7JXLCy
>>184
確かに暑いですよね、、、、気を付けていこうと思います。

186 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:49:23 ID:gQ6fWAkuhk
>>183
「、、、、私は、私達は負けたのか」

「そうですよアナタ。私達は負けたのですわ」

 真っ白いベッドから二人が体を起こす。ここは医務室、敗者が運び込まれる部屋。

「流石に老いたな、昔ほどにはキレが無い」

 骨ばった両手を確かめる様に何度も握り締める。握る度に手のシミが薄黒く伸び広がってゆく。

「何を言うんですかアナタ。体の殆どが機械で老化なんて殆ど無いでしょうに」

「それはそうだが、年のせいにでもしないと悔しいじゃないか。それにだ、失敗や負けを年のせいに出来るのは老人の特権だぞ、特権を使わなくてどうする」

「もう、、、、そういう所は変わらないですわね」

 拗ねるように寝っ転がるセバスを見て呆れたように微笑むエミリー。
 英雄『蟷螂』、グーグルシティで育った人間なら一度は憧れる男。そんなセバスだが時折子供っぽくなるのが玉に瑕であり、エミリーにとって愛おしい部分でもあった。

「きっと死ぬまで変わらないとも。この街と同じだよ、形は変わっても本質は変わらない」

「ええ、そうでしょうね」

 窓の外にグーグルシティが見える。行き来する無数の人や車、絶え間なくザワザワと奏でられる喧騒、暗い路地裏。
 生きる為に精一杯だった昔とは違う、富と活気と格差で出来た街。しかしそれでも、人々の眼は昔と変わらない。
 生きる為、のし上がる為、友の為、各々の夢を宿した眼。物乞いですらチャンスを探し眼をギラつかせている。

「、、、、この街を見ていると、守るために命を懸けて正解だったと思わされますの」

「全くですな、この街には命を懸ける価値がある」

 両腕に仕込んだ刃を取り外す、代わりに取り付けたのはやや細身の刃。
 波打つ刀文を持つ、古びたソレは丁寧に手入れされている。

187 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:49:53 ID:gQ6fWAkuhk
>>186
「懐かしいですわね。私たちの親友にして今は亡き名工『竈馬』。刀に恋したアイツが友に遺した名刀『忘時』ですか」

「そうだ、そうだとも。相応しい敵に使えと言われたこの刀、カカラの首領相手ならば不足は無いでしょう」

 ぼんやり光る刀身をじっと覗き込む。
 そこに映るセバスは歪んでいて、まるで誰かが隣にいるように見える。

「おやおや、気が早いのでは無くて? ピノ様と双葉様、シロ様とすず様、どちらかが優勝しなければなりませんのよ」

「エミリー、あの方たちが優勝出来ないと思うのですか?」

「、、、、確かにそうですね。私も、準備をしなければなりませんわ」

 二人の老兵は静かに牙を研ぐ。

188 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:50:36 ID:gQ6fWAkuhk
>>187

『さあさあ! お次は準決勝!! 、、、、と行きたいところだが、暫く時間を置かせてもらうぜ。消耗した選手の休息が要るからな』
「しょうがないな」「俺も少し休むか」「今の内にトイレ済ませねえと」

 熱気に満ちていた闘技場、『スパークリングチャット』の空気が暫し弛緩する。
 飲み物を買いに行く者、トイレを済ませに行く者、思い思いに動く観客達。では選手はどうか。

「いやぁ、、、、完敗っすよ」

「アハハ、でもお馬さん片方倒してたじゃないですか。ワタクシは見てましたよ」

「まぐれをカウントするのは、、、どうなんですかねハイ」

「カウントしてもいいんじゃないかな、て双葉はおもうよー」

 項垂れるばあちゃるを軽く慰めるピノと双葉。
 ネガティブな発言とは裏腹にばあちゃるの声は晴れ晴れとしている。

189 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:50:44 ID:gQ6fWAkuhk
>>188
「ねえ馬、馬越さんを止めた技、あれなんなの?」

「ああ、アカリさんに触れた途端動かなくなった奴ですね、、、、馬越さん『霧がかかったみたいに何も思い出せない』て言ってましたねハイ」

「なるほど、『思い出せない』て事はアカリちゃんの能力は精神に干渉する系ぽいなぁ」

「能力使う時アカリさん自信有り気な表情を浮かべてましたし、使い慣れてる感じですよね。多分」

「そうだねすずちゃん。エイレーンちゃんも未知数だし、底が見えないねぇ」

「楽しみですねシロさん」

 翡翠色をしたスズの眼が待ちきれないとばかりに輝く。

 シロ達五人はVIPルームに案内され、そこで休息をしていた。
 上品なシャンデリアにグレーのソファー、暖色系の明かりに照らされた部屋には穏やかな音楽が流れている。
 ホログラムで投影された熱帯魚達が色彩豊かな体をくゆらせて部屋の中を泳ぎ、壁の一面を占拠するモニターは闘技場を様々な角度から映し出している。

 紅茶を飲み談笑する五人の空気は穏やかだ。それはまるで、嵐の前の静けさ。

190 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:51:53 ID:gQ6fWAkuhk
>>189

 ファイトクラブ『スパークリングチャット』の選手用休憩室、VIPルーム程では無いが豪華な部屋。
 その部屋に用意されたテーブルを挟む様にエイレーンとアカリは座っていた。

「ねえ、エイレーン」

「どうかしましたか? アカリサーン」

「あの、さ。また不本意な手段で勝ちに行くつもりなのかな、て聞きたくてさ」

「、、、、」

 鮮やかな金髪をせわしなくいじり、アカリは問い掛ける。
 エイレーンは何も答えず黙している。

「エイレーンがそうする理由は知ってるし、アカリはその理由を軽いモノだと思わない。でも、、、そのせいでエイレーンは苦しんでるよ」

「、、、、」

 アカリの懸命な訴えにエイレーンは何の反応も返さない。
 瞼を閉じ、アカリの顔を見ない様にしている。
 懸命に聞こえない振りをしている。

「エイレーンはお人好しなのに、合理的であろうと無理してる」

「、、、、」

「ばあちゃるが折れなかった時、エイレーン笑ってたじゃん」

 尚も無反応を貫こうとするエイレーンに対し、アカリは顔を近づける。
 少しバサついた赤色の前髪を持ち上げ、エイレーンの瞼をそっと撫でるように開く。

「アカリはエイレーンに従うよ、部下だから。でもアカリはエイレーンが心配だよ、家族だから」

 縋るような表情を浮かべるアカリの顔が、エイレーンの瞳に映りこむ。

「、、、、今更私のやり方は変えられません。これ以外に皆を守る方法を知りまセーンから」

「エイレーン、、、、」

「でも、そうですね。ばあちゃるさんにしたみたいな、揺さぶりは止めにしマース。効果薄そうですから」

191 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 19:52:01 ID:gQ6fWAkuhk
>>190

 アカリを安心させる為に下手くそな笑顔を浮かべる。
 それを見たアカリは大きなため息をつく。

「ホント不器用だねエイレーンは、、、解った。今はそれで妥協しとく。ヨメミと萌実にもそう伝えとくね」

 呆れた表情に僅かな安堵をにじませ立ち上がり、アカリは部屋を出る。

「、、、不器用、デースか」

 エイレーンの独り言が壁にぶつかって消える。
 暫しの間、カチカチと時間を刻む時計の音が部屋を支配していた。

192 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 20:05:00 ID:gQ6fWAkuhk
お久しぶりです(n回目)
テストが近く、中々時間をとって書けませんでした。
もうじき夏休みに入るので投稿ペースが上がる、予定です。

それはそうと、月姫リメイクがもうじき発売です!!
.liveの娘達は勿論好きですけど、それと同じくらい型月も好きなんです。

細々とした(裏)設定

『忘時(わすれじ)』

名工『竈馬』が親友に遺した作品。

『忘れじ』いつまでもあなたへの愛は変わらない(あなたの事が好きでした)、と言う意味を込めたエミリーへの密かなラブレター。

『時』を『忘』れる位、お前と過ごした時間は楽しかったという、セバスへの密かな感謝状。

二つの意味が込められた、剣の形をした遺書。それが『忘時』の本質です。
無粋かなと思ったので、本編では敢えて触れませんでした。

193 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 21:02:28 ID:1QdC4NF7yM
おっつおっつ、休みを謳歌してくだせぇ、あと酷暑やばいのでお気を付けを

194 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/18 21:52:34 ID:gQ6fWAkuhk
>>193
なんか例年よりも暑く感じますよね、、、、
休みが謳歌出来るのはテスト終わってからですね、大学は夏の宿題無いので、そこは気が楽です

195 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:03:41 ID:1VEBPvBFol
>>191
『さあ! 今度こそ準決勝の始まりだぜ!』

『準決勝第一試合の選手を紹介するぜ! 大方の予想を覆し、見事伝説に勝利したダークホース、シロ&神楽すず!!』

『敵対するギャングのボスを下したこいつら! エイレーン一家は止まらない!! 萌実&ヨメミ!!』
「待ってたぜ!」「どっちが強いんだろうな」「早く始めてくれ!!」

 手斧を携えたシロと、釘バットを肩で担いだスズ。
 ギラリと獰猛に光るドスを構えた銀髪の二人、ヨメミと萌美。

 歓声鳴り響く闘技場に四人の選手が出揃う。

『試合開始!!』

「ヨメミちゃん! 出し惜しみは無しで行くよ!」

「解った、萌実ちゃん!」

 試合が始まるや否やヨメミと萌美の二人は後ろに下がり、互いの手を組んで見つめ合う。

 直感でヤバいと感じたシロは咄嗟に銃を取り出そうとするが

「あっ、銃はルールで使えないじゃん」

 ルールのせいでそれは叶わない。
 闘技場での経験が浅い故のミス、それはこの場において致命的であった。

「私が行きます。行くぞ私は!!」

「お願いすずちゃん!」

 翡翠色の瞳に焦りを浮かべ突撃するスズ。
 大声と共に背中から魔力を放出し、ジェット機じみた加速をみせるその走りは正に神速。
 しかし、それでも間に合わない。

『我ら二人で一つ』

『一人にして二つ』

『『真名開放 歪み映す双眸(ステアリーツインズ)』』

 ヨメミと萌美、二人の宝具が発動する。
 その直後、二人の元にスズが辿り着き、豪快にバットをーーー

「食らえ!!、、、、え?」

196 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:05:52 ID:1VEBPvBFol
>>195

 ーーー振り下ろせなかった。
 二人が四人に、四人が八人に。爆発的に増殖を始める二人。
 闘技場の一角が銀髪の美少女で満たされる。

 その余りにもな光景にスズはフリーズしてしまう。

『な、なんだこれは!? 萌実選手とヨメミ選手が増えた!!』
「絵面がすげえ、、、」「一人くらい持ち帰れないかな」「ストレートに強いですね、この能力」

「無数に分身を生み出す宝具、前の試合じゃ宝具を使ってもケリンに爆破されて終わりだから使えなかったけど」

「今回は思う存分使えるよ」

 分身は全て機械めいた無表情を浮かべており、武器も持っていない。
 戦闘力そのものはオリジナルに遠く及ばないだろう、とシロは蒼い目を細め推察する。
 だからといって脅威に成りえないかと言えば、それは違う。

 動きを止めたスズに無数のヨメミが纏わりつく。

「うわっ、ちょっ。嬉しいけど嬉しくないです!」

 スズが釘バットを振り回す度にその軌道上にいた分身は&#25620;き消え、消える度に分身が補充される。
 多勢に無勢、銀髪美少女の波にスズはズブズブと飲まれてゆく。

「すずちゃ、、、、、ヤバッ!?」

 スズを助けに行こうとしたシロに萌実の分身達が襲い掛かる。

「ちょ、ほちょちょ!?」

 シロを掴もうとする腕を僅かな動作で振り払い、飛び掛かってくる分身を誘導して他の分身にぶつける。
 囲まれないよう動き続け、脅威になりうる分身だけを倒し、最小限の消費で萌実の分身に対処してゆく。

「動きこそ雑だけどキリがない。不味いねぇ、、、、くっ!」

197 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:06:15 ID:1VEBPvBFol
>>196

 とは言え、多数の敵に対処する為の最小限は決して小さいものではない。
 萌実達の指がシロの真っ白なアホ毛を掠める。

 現状、シロは萌実達の攻撃を凌げてはいる。しかし、防戦一方のこのままでは敗北必至。


(強引に近付いた所で勝機薄そうなんだよね。あの二人の戦闘技術、結構えぐいし)

(でも奇妙だねぇ、すずちゃんは既に殆ど無力化されてるのに、ヨメミちゃんの分身は全てすずちゃんに掛かりっきり)

(分身ってシロの想像以上に融通利かないのかも?)

(二人の本体が攻撃する気配も無いし、、、、分身出してる間は無防備になっている可能性がありそう)

(検証の為、本体にちょっかい出してみるのもアリかもねぇ)

(なんにせよ、先ずはすずちゃんを助けないと)

 そんな危機的状況の中、シロは不思議な程冷静に考察を重ねる。
 老練な強さを誇った『蜜蜂』と『蟷螂』から勝利をもぎ取った経験、それがシロに確かな自信と冷静さを与えていた。

198 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:07:23 ID:1VEBPvBFol
>>197
「おほほい!おほほい! シロは負けないよ!!」

「え!?」

 やにわにシロは手斧を振り回してスズの元へ突貫を始める。
 分身の攻撃がシロを掠めて浅い傷を幾つも刻んで行く、がいずれも致命打には程遠い。

『シロ選手が動き出した! すず選手の救出に行くみたいだぜ!!』

「その通りぃ!!」

 無数の分身を&#25620;い潜り、スズの元へと辿り着く。

 スズを押さえつけていたヨメミの分身全てがシロに目標を変えて起き上がり、後ろからは萌実達が追いかけてきている。
 逃げ場の無い挟み撃ち、危機的状況ーーー

「ありがとうシロさん!!」

「いいって事よぉ! おほほい!」

 ーーー無論、すずが居なければの話だが。

 押さえつけられていた間バットに込め続けていた魔力を、そして全身のパワーをフルに使ったスイングと共に床に叩きつけ開放する。ガッゴォンという爆音と共に緑色の衝撃波が吹き荒れる。
 分身達が風に吹かれた&#34847;燭の様に揺らぎ、&#25620;き消える。

「ヤバッ!? どうしよう萌実ちゃん!」

「分身の制御はかなり大雑把みたいだねぇ!」

「弱点バレちゃったよヨメミちゃん、、、」

 ヨメミと萌美、二人の背中を汗が流れ落ちてゆく。
 シロの考察は当たっている。分身の中身は獣に近い。同じオリジナルを持つ分身同士で固まり、目に付いた獲物に見境なく襲い掛かる。

199 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:07:36 ID:1VEBPvBFol
>>198
 二人の宝具『歪み映す双眸(ステアリーツインズ)』は互いの瞳を重ねることで合わせ鏡とし、無数に映ったお互いの鏡像を分身として具現化する物。
 瞳の一つ一つに己の色があり、瞳が映し返す景色もまた己の色に染まっている。故に瞳を鏡として見た場合、その質は下の下と言えよう。
 鏡とは目の前に有る光景を有るがままに映すモノ。己の色に染めて映し返す鏡など論外。その様な鏡から産まれた分身の質も低いのは当然。

『これはヨメミ&萌実選手不利か!? しかし、まだ大勢は決していない! マジで目が離せないぜ!!』
「やっちまえ!!」「巻き返せ!!」「頑張れシロお姉ちゃん!」

200 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:12:46 ID:1VEBPvBFol
夏休みに入ったので大分執筆スピードが上がりました。

そんな事より、マジの大事件がありました! https://www.youtube.com/watch?v=R8Y2e8BdVrk&t=4089s配信の終盤、私の書き込んだコメントが読まれたんです!! イヤッフゥ!!

201 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:19:20 ID:1VEBPvBFol
細々とした設定集
『歪み映す双眸(ステアリーツインズ)』
ヨメミちゃん、萌実ちゃんの宝具。

相手の目に映った自分、相手の目に映った自分の目に映った相手、相手の目に映った自分の目に映った相手の目に映った自分、、、、、
といった要領で大量の分身を出す宝具。

強力では有るものの融通が利かず、また持ち主の戦闘スタイルと咬み合わせが悪いのが難点。

202 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 12:46:43 ID:WkA.8LuDTv
おっつおっつ、持ち帰ったらバレるやろ。コメント読まれると嬉しいよね〜、自分も何回かコメントとかお便りとか読まれたりしたことあるけどそのたびに小躍りしてる。

203 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/07/28 15:20:32 ID:1VEBPvBFol
>>202
沢山いるのでバレない可能性もあるっちゃ有りますね。まずバレて酷い目に合うでしょうけどw

やっぱ読まれると嬉しいですよね…………

204 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:43:37 ID:bKznsqmMqg
>>199

「いくよ!」

「ぶっ倒す!!」

「やってみなよ!」

 じりじりと下がりながら分身を生み出すヨメミと萌美、互いの隙間を埋めるように手斧とバットを振り回し突き進むシロとスズ。 

 魔力が続く限り分身は無限に生み出され、一体辺りのコストもさほど高く無い。時間さえあれば万単位の数を揃える事も可能だろう。時間さえあれば、だが。
 当然の事だが、一度に生み出される分身の量には限りが有る。

「これは、、、ちょっと辛いね!」

 一歩、二歩、シロとスズが確実に距離を詰めてゆく。
 三歩、四本、ヨメミと萌美、二人の背中が壁に当たる。これ以上は下がれない。
 五歩、六歩、もう少しで武器の届く間合いに入る。

『シロ選手とすず選手がついに辿り着いた! 絶体絶命ヨメミ&萌美ペア!!』

「喰らいなぁ!!」

「いっちゃえ!!」

 シロとスズが同時に武器を振り下ろす。
 金属特有の光沢が描く銀色の軌跡は目の前の二人へとーーー

「「え?」」

「引っ掛かったね、、、、」

 ーーー届くことは無かった。
 分身の壁を抜けた先にいたのはヨメミ一人。
 同時に振り下ろされた釘バットと手斧は、直撃した状態のままヨメミに押さえつけられ、動かすことが出来ない。

205 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:45:34 ID:bKznsqmMqg
>>204
『萌実選手が消えたぜ!? 一体何が起こったというのか!』

 ヨメミが攻撃を受けたことで『歪み映す双眸』が解除され分身が消える。消えずに残ったのはオリジナルだけ。
 シロとスズの攻撃を受け止めたヨメミと、そして分身に紛れ回り込んでいた萌実の二人。

 
 中身はともかく、萌実と分身の見た目に差異は無い。分身に紛れるのは容易な事だ。

「まさか!」

「ヤバッ」

 すぐさま逃げようとするシロとすず。しかしもう遅い。
 萌美による一閃が来る。勝機が来るまでジッと耐え続けた鬱憤を晴らすかのような鋭さで。

『萌実選手が背後にいる! 絶体絶命!!』
「いつの間に、、、」「マジかよ」「負けないでくれ!」

「獲った!」

 勝利を確信した萌実が獰猛に笑う。
 『宝具』と言う、分かり易い切り札を見せる事で本命から意識を逸らす。
 ありふれた、それでいて有効な作戦がシロとスズに牙をむく。

 見事に出し抜かれた二人は成すすべなく切り裂かれる、筈だった。

「えぇ、、、、?」

 音すら追い抜く一撃がシロに掴まれた。

 ヨメミに抑え込まれた武器から手を離し、高速で飛来するドスを掴み取る。物理的には可能だが、それが間に合うタイミングはとうに過ぎていた筈。
 呆然とする頭でそんな事を考える萌実。

206 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:46:32 ID:bKznsqmMqg
>>205
「シロのスキル『輝きの海』。効果は『シロへの応援を力に変える』」

「一杯食わされたね! こんな力を隠してたなんて」

「いや違うよ。このスキル、応援の量が一定に達しないと発動しないんだよ。
街の英雄を倒したダークホースVS有名な『エイレーン一家』の幹部と言う、誰もが興奮する好カード。そして決着の着く目の離せない瞬間。
ここまでの要因が揃って、やっと使える位には発動条件が厳しいんだよねぇ」

「そういう事、ですか。『使わなかった』のでは無く、『使えなかった』と」

「正解」

 シロの周囲には、水色の光が幾つも浮かんでいる。
 整然と並び、ユラユラ揺れる細長い光はさながらライブ会場に煌めくサイリウム。

 シロは掴んでいたドスを萌実から取り上げ、そのまま突きつける。
 磨き込んだ銀食器の様な色をした瞳がヨメミを見つめて、助けて欲しいとメッセージを送る。しかし、ヨメミがそれに答えることは無い。

「、、、、」

 二人の一撃をまともに受けてしまった時、その時からヨメミは気絶していた。
 その上、万が一ヨメミが復活しても対応出来る様にスズが備えている。

「くっ!」

 ヨメミがやられた事を認識した萌実は思わず顔をしかめる。
 萌実は頭が回る。回るがゆえに今の状況が詰みである事を理解出来てしまう。

(これ以上の抵抗は無駄だね。大会に出た目的が示威行為である以上、無駄にあがいて無様を晒す事は出来ない。
後の事はエイレーンとアカリちゃんに任せるべきだね)

「、、、、、降参するよ」

 眩しい程に白く淡麗な顔をホンの一瞬歪めた後、萌実は大人しく両手を挙げて降参を宣言する。

「良いの?」

「良いんですか?」

「良いんだよこれで。萌実の役目はもう果たしたからね」

207 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:46:48 ID:bKznsqmMqg
>>206

 スズとシロの問いに対し、萌実は返答する。
 萌実の言っている事に&#22099;は無い。『エルフC4』と『サンフラワーストリート』のリーダーであるケリンと鳴神を下した時点で萌実達の役目は十二分に果たされている。

 無論、最後まで戦い抜きたいという欲求はあった。
 しかし、萌実は『エイレーン一家』の一員として出場している。個人の欲求を優先する訳にはいかなかった。

『萌実選手、まさかの降参だ!! 勝者、シロ&すず選手!』
「マジか」「まあ、あそこから勝ち目はなかったしなぁ」「健闘した!」

 萌実はヨメミをそっと抱え会場を後にする。

208 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:47:22 ID:bKznsqmMqg
>>207
「、、、、ん、うん? ここは?」

「おはよー。ここは医務室だよ」

 ヨメミはやや乱暴に瞼をこすって重い体を持ち上げ、寝起きでゴロゴロする目をグルグルと動かす。
 周囲には真っ白なベットが幾つか並んでいて、その中の一つにヨメミは座っていた。
 はす向かいのベットには見慣れた顔、、、、、萌実の顔が見える。

「ねえ萌実ちゃん、結果はどうだった?」

「、、、、負けちゃった」

「そっかー、、、、、お疲れ様。後の事はエイレーンとアカリちゃんにお任せかな」

 医務室を照らす薄く埃を被った蛍光灯の下で、ヨメミと萌美は心穏やかに話し合っていた。

 二人は、アカリとエイレーンが大いに戦果を挙げ、大いに実力を示すと確信している。
 負けた事への悔しさはあるが、焦りはない。

 ヨメミは何度か大きな欠伸をし、ベットに倒れ込む。

「、、、ねぇ、エイレーンとアカリちゃんの事どう思う?」

「エイレーンは何でもかんでもしょい込む癖とセクハラ発言さえ無ければ完璧かな」

「エイレーンはある種の理想主義者だからね。本当は綺麗な手段を選びたい、でも大切な者を失う『可能性』が怖い。
だから自分の良心が許すギリギリの手段を用いて『可能性』を潰す。
理由は解るんだけどさ、損な生き方だよね」

「アカリちゃんはアカリちゃんで甘い所あるよね。実力の伴った楽観主義って感じ」

「決める時はビシッと決めるんだけどねぇ」

「まあ、完璧じゃないからこそ支え甲斐があると言うか、何て言うか」

「確かに。話変わるけど、、、、」

「、、、、」

「、、、、、、」

「、、、、、、、」

 寝っ転がりながら萌実と話をする内に、ヨメミはいつの間にか夢の世界へといざなわれていた。

209 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:49:21 ID:bKznsqmMqg
>>208
『、、、、ここはどこデースか?』

『、、、どこだろうね』

 ヨメミは夢を見ていた。グーグルシティに初めて来た、あの時の夢だ。
 ヨメミ、萌実、エイレーン、アカリ、べノ、エトラ、、、、、後にエイレーン一家を創設する事になる面々が、グーグルシティの路地裏で呆然と空を見上げていた。

 ヨメミ達の記憶はある日を境に断絶している。頭に残っている最古の記憶は『殆ど何の記憶もない状態でグーグルシティに居た』と言うもの。
 唯一覚えていたのは自分の名前だけ。

 あの時縋るように辺りを見渡す私達の前を、無関心に通り過ぎる人々がとても恐ろしく感じた。



 夢が揺らぎ、場面が飛ぶ。

『あ、有難うございます!』

『いいの、いいの。気にせず休んで』

 今は『エイレーン一家』が管理している風俗街『ポルノハーバー』の外れにある寂れた宿屋。
 風俗街の宿であるにも関わらずそう言うサービスはせず、売りは料理という少し変わった所だった。

 そこの主人であるエミヤさんは気のいいお爺さんで、身寄りの無い私達を雇ってくれた。記憶を失ってから初めて感じた人の温もりがとても嬉しかったのを覚えている。



 また場面が飛ぶ。

『おいジジイ! アガリが足りねえぞ!』

『、、、、、来月には耳揃えて払いますので』

『来月まで待てるかよ! 二週間後までに払え!』

『はい、、、、』

 エミヤさんの胸倉をガラの悪い男が掴んでいる。

 当時、ポルノハーバーは『I Want to be Radical』、通称『IWARA』と呼ばれるマフィアに支配されていた。
 延々と身内で権力争いをするそいつらは、住民から金を限界まで搾り取っていた。

210 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:51:46 ID:bKznsqmMqg
>>209
 場面が飛ぶ。

『畜生、、、』

 まだ日も出ていない早朝の厨房、その隅でエミヤさんが静かに啼いている。

 赤みがかった総白髪、エミヤさんらしいその髪が、あの時は酷く寂しい物に見えた。



 場面が飛ぶ。

『もう我慢出来ません。私達が立ち上がりましょう』

『立ち上がるってどうするのさ、エイレーン』

『そんなの決まってますよアカリサーン、カチコミですよ。一気呵成に攻め込むんデース』

 エイレーンが気炎を吐いている。

 今では考えられない事だが、当時のエイレーンは大胆不敵な性格だった。
 それはある意味当然の事だった、私達には不思議な能力があったのだから。

 『スキル』や『宝具』と呼んでいるソレらはどれも強力だった、私達に慢心を許す程度には。

 飛ぶ。

『ありがとう!』『あいつらが居なくなる!!』『この恩は一生忘れない』

 『IWARA』の元事務所、私達は感謝の喝采を浴びていた。
 権力闘争に明け暮れていたあいつらは脆かった。



 飛ぶ。

 赤く燃えている。
 『IWARA』の残党にエミヤさんが襲われて、宿は燃やされた。

 赤い血が流れている。
 エミヤさんの顔が蒼白になっていく、もうどうしようもない。

 微かに声が聞こえる。
 呼吸すらままならない喉を震わせ、エミヤさんが何かを言っている。

『■■■と■』



 あの日からエイレーンは変わった。

211 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:59:34 ID:bKznsqmMqg
『エミヤ』フェイトに精通しているなら、この名前でグーグルシティが元はどこだったのか大体見当がつくと思います。

グーグルシティは50年前に生まれた街です。
当然の事ですが、50年以上前までは別の何かであった訳ですね。

それと、作品にもよりますが、冬木と言う都市には基本的に『大聖杯』なるものが設置されております。
その大聖杯はいったいどこに行ったんでしょうね。


それはそうと、馬の配信ガチャ運良すぎてクッソ笑う。

212 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 22:11:10 ID:bKznsqmMqg
細々とした設定集
『IWARA』
元ネタ iwara(エロmmd特化サイト、サーバーが糞雑魚な事で有名)
回想特有の戦闘シーンすらないかませ集団。
作者が適当に10分くらいで生んだ可哀想な人達。

エイレーン

キャラコンセプト
トライガンのウルフウッド+動画のエイレーン

元はアカリちゃんにスポットを当てる予定だったのがいつの間にかエイレーンになった。
アカリちゃんの場合、辛いことあっても自力で解決出来ちゃいそうなのが一番の理由。

213 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/10 12:45:58 ID:jwScoId0DB
おっつおっつ、気になる過去だぁね、毎度楽しませて貰っております

214 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/10 16:27:35 ID:9RtFoWX0pG
>>213
過去話はカカラの正体にも関わるので楽しみにしていてください!

ちょっとだけヒントを出すと、『カカラは胸に露出しているコアさえ壊せば倒せる』というのがキモです。

215 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:27:10 ID:Tapcdl79X4
>>210
『さあさあ! お次は準決勝第二試合だぜ!!
エイレーン一家の二大トップにして最高戦力、エイレーン&アカリ選手! 対するは我らがオーナー、見た目は可憐だが強さは苛烈! 双葉&ピノ選手!』
「これは予想つかねえな!」「待ってました!」「来た来たぁ!!」

 名前を呼ばれた四人が闘技場へと足を踏み入れる。

 ピノは上品な装飾の施された槍を担ぎ、双葉はファンシーにデコレートされたナイフを構えていた。
 油断なく相手を見つめるエイレーンの手に握られているのは、古びたサーベル。アカリは黒く光る革鞭を腕に巻きつけて遊んでいる。

『試合、、、、開始!』

「ピノちゃん! じぜんの作戦通りにいくよ! まちがってもアカリちゃんには触れないように!」

「了解です、双葉お姉ちゃん!」

『おっと!? 双葉、ピノ選手がいきなり動き出した! 陣形を組ませないつもりか!』

 ピノと双葉の二人は、試合が始まると同時に動き出す。
 ピノはアカリに、双葉はエイレーンに襲い掛かる。

 司会の言う通り、二人の狙いは『陣形を組ませない事』。
 エイレーンが前衛、アカリが後衛となって動く陣形は原始的ながらも強力であり、事実ばあちゃると馬越はその陣形に終始苦しめられていた。しかし、初手で二人を分断してしまえば何の効果も発揮しない。
 その上アカリを抑えてしまえば、アカリの『鞭で打った相手を強化するスキル』を実質無力化することが出来る。

216 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:27:48 ID:Tapcdl79X4
>>215
「そりゃ対策されマースよね」

「大会用に編み出した付け焼き刃の戦法だからね。綻びが出来るのも多少は、、、、ねっ!」

「甘いですわ!」

 縦横無尽に振るわれるアカリの鞭をピノは危なげなく避け、お返しとばかりに槍を突き返す。
 熟練者の使う鞭は音速すら容易に超え、リーチも長大。しかしその威力は高いと言えず、近距離での取り回しも悪い。
 詰まる所、懐に入られると弱い武器なのだ。

「激しく突いてくるねえ!」

「まだまだ序の口ですよ! ほら!」

 突き、薙ぎ払い、叩き下し、回避、ピノの行うあらゆる動作の終わりが次の動作に繋がる。
 豪奢な槍から繰り出される攻撃は全てが重く鋭い。
 ピノの動きは流麗で無駄が無く、息を付かせる暇すら与えずアカリを責め立てる。

 優雅に、そして苛烈に相手を圧倒する。これこそがピノの戦闘スタイル。
 素の拳で鋼の刃を押し返す様な『規格外』でも無い限り、これを崩す事は困難と言えよう。

『止まらないぞピノ選手! 流れる水のような槍捌きだぜ!!』

「くっ! ちょっとキツイね!」

 ピノの放つ銀閃が掠め、アカリの金髪を何本か持ってゆく。

217 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:28:06 ID:Tapcdl79X4
>>216
「早く、倒れて、下さい!」

「いやいや、戦いはまだこれからだよ!」

 掠めた槍を潜り抜けるように距離を詰めてアカリは手を伸ばし、それに対してピノは大きく後ろに下がる。

「、、、っ!」

 現在の状況はピノが有利。しかし攻めきれない。何故なら、アカリのスキルが未知だからだ。
 少し前の戦いで、アカリは馬越に触れることで動きを止めた。
 触れることで発動する、と言うこと以外に何も解らない以上、慎重に対処せざるを得ない。

「ヘイヘイヘーイ、ピッチャービビってるぅ?」

 そして、アカリは『未知』である事のメリットを十分に活かしている。
 アカリは無理に触りに行こうとせず、要所要所で未知の手札をちらつかせる事でピノの動きを制限してゆく。
 ピノの胸中に焦りが蓄積する。玉肌の上を嫌な汗が流れ落ちる。

218 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:28:32 ID:Tapcdl79X4
>>217
 視点は変わり双葉対エイレーン。
 双葉も又、焦りを覚えていた。
 肉体のスペックでは勝っているにも関わらず、どうにも攻めきれない。

「はやく、たおれて!」

「そりゃ無理ですよ双葉サーン。ペロペロさせてくれるなら良いですけどね」

 変態親父の様な口ぶりとは裏腹に、エイレーンの戦い方は至極冷静だ。
 ノラリクラリと避け続け、確実に当てられる場面でのみ攻めに転じる。

「、、、くらえ!」

「遅い!」

 正面からナイフで切りかかると見せかけてから、背面に仕込んでおいた二本目を投擲。双葉渾身の不意打ち。
 弾丸の如き速度で飛ぶ細身の刃はスルリと受け流され、エイレーンの頬を掠めるにとどまる。

『刃で刃を受け流した! 1mmズレれば致命的な荒技を平然とこなす!!』

「ふふん、どうデ、、、、っ!」

 見る人が見ればため息を漏らすほどに研ぎ澄まされた剣技はしかし、力によって押し込まれる。

「、、、強引じゃないデースか双葉さん」

 双葉が、ナイフを受け流した直後のスキを突いて体当たりをかまし、エイレーンを吹き飛ばした。

「ふふふ、、、、甘いよエイレーンちゃん」

(、、、、甘いとは言うものの、どうしたもんかなこれ)

219 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:29:31 ID:Tapcdl79X4
>>218
 双葉には二つの疑念が有った。

 一つ目はエイレーンの身体能力が異様に低いこと。
 持ち前の技量でしぶとく凌いでこそいるが、受けるダメージを完全に0に出来ている訳ではない。
 宝具を使っている以上、ヨメミと萌美がサーヴァントであるのは確実。その二人のボスであるエイレーンもほぼ間違いなくサーヴァントだろう。
 にも関わらず、アカリの強化が無いエイレーンの肉体スペックはサーヴァントとは思えない程に低い。

 そして二つ目はエイレーンの態度が不可解なこと。
 エイレーンの体には徐々にダメージが蓄積している。このままではジリ貧なのだから何かしらの手を打とうとするのが当たり前、もし打つ手が無いのならば多少の焦りを見せたりする筈。
 しかし、エイレーンが何か手を打つ素振りも、焦る様子すらも無い。

 何かが可笑しい、何かを見落としているのだ。

「いたっ、、、」

「お返しデスよ」

 突如として走った痛みに双葉は桃色の瞳を鋭く尖らせる。

 吹き飛ばされる瞬間、エイレーンはとっさにサーベルで切り付けていたのだ。

220 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:30:21 ID:Tapcdl79X4
>>219
「さて、そろそろ『十分』デースかね」

「なんて?」

 双葉が聞き返した瞬間、エイレーンの姿が消える。

「、、、、!」

 双葉の背後に現れる気配。
 振り返り様に防御を固めた瞬間、襲い掛かる衝撃。
 双葉は成すすべなく床に転がる。

「ぐぅっ、、、」

「ここからは私のターンですよ。双葉サーン」

 双葉の背後に回り攻撃をした人物、それはエイレーンだった。

『ど、どういう事だエイレーン選手!? 人が変わったような強さだぞ!?』

「、、、実は私、ちょっとだけウソをついてました。
アカリさんの『鞭で打った相手を強化する』スキル。あれウソデース」

「でも、、、じっさいに強化されて、、、、いたはず、、、、だよ」

「ええ、私の『痛みを感じるほど強くなる』スキルによって、ね。
鞭で打たれて痛みを感じれば強くなりますから」

 ヨロヨロと立ち上がる双葉の前でタネ明かしを始めるエイレーン。

「さすがにサーヴァント、、、、一筋縄じゃいかないね」

「サーヴァント? 、、、、、ああ、『宝具持ち』の事をあなた方はそう言うんデースね」

221 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:41:08 ID:Tapcdl79X4
お久しぶりです。
夏休みの宿題を片付けるので忙しく、投稿が遅れました。

さて、今回は前々から貼ってた伏線を一つ回収出来ました。
異能バトルでの能力偽装、、、、ずっっと書きたかったシチュエーションでした。

『鞭で打った相手を強化する』と言う、アカリちゃんのイメージと微妙にズレた能力だった事、一度しか能力が使用されていない事、そしてやたらと印象的な使い方をしていたのが伏線です。

つまり、準々決勝でエイレーンさんとアカリちゃんが即興SNショーをしていたのは、ウソの情報を印象付けつつ自身の欲を満たす為のパフォーマンスだった訳ですね。

222 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/25 07:53:58 ID:IT7hJz8Tjo
おっつおっつ、ブラフかけつつ欲満たしてて草

223 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/25 13:36:22 ID:MwGRTvl55T
>>222
一石二鳥と言う奴ですねww
因みに、エイレーンとアカリちゃんは何気に宝具やスキルを準決勝まで全部隠し通してる唯一のペアだったりします、、、

224 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:31:30 ID:9c5VDgsMnz
>>220
「、、、?」

「ある時期を境に現れ始めた、過去の記憶を持たない異能力者達の総称、『宝具持ち』。
殆どの『宝具持ち』は幾つかの異能力を持ち、その中でも最も強力なモノを皆『宝具』と自称する。
故に付いた名前が『宝具持ち』、、、、、双葉さんの言う通り、私もその一人デース」

「、、、、なるほど、ね」

(時間かせぎのために質問したら、結構きょうみ深い事実がでてきた)

 完全に出し抜かれた、その事実を認識した双葉が取った行動は時間稼ぎ。
 質問を投げかけ、エイレーンが答えている間に勝ち筋を探ろうと言う算段だった。

(ここは特異点、なんでもアリだっていう先入観があった)

(でもよくよく考えてみれば、なんでサーヴァントが現界してるんだろう)

(双葉達と同じく、特異点を元に戻すために『抑止力』が呼び出した? それだと記憶がないことに説明がつかない。記憶をけすメリットがないもん)

 勝ち筋を探るために稼いだ筈の時間は、突如与えられた情報の処理に浪費された。

 その浪費は、致命的な浪費。
 しかし浪費を代償に双葉は核心へと迫っていた。特異点の絡繰りと黒幕、その核心へと。

「では双葉サーン。そろそろ続きと行きましょうか」

「、、、、」

(なんで今まできづけなかったの?)

(ーーーーそもそもなんで今、『楔』をみつける見通しがたったの?
シロちゃんが来るのにあわせた様なタイミングで、、、、そういえば、シロちゃん達がこのタイミングにきたのはブイデアの事故があったからだ)

「双葉サーン?」

「、、、、、、、、」

(もし、これらに誰かの意図があるとするなら、つまり黒幕がいるとすれば、ソレは『双葉選手動かない! エイレーン選手の能力によるものか!?』

225 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:32:45 ID:9c5VDgsMnz
>>224
 司会の声が鼓膜を打ち、双葉を現実へと引き戻す。
 桃色の瞳をぐるりと回せば、周囲には心配そうにする観客とエイレーンがいた。

「ごめん、、、、ボーとしてた」

「全く、心配したんですからね」

「うん、、、、にしても、双葉がボーとしてる間に攻撃しちゃえばよかったのに」

「ハハ、そう言う事はしないって、さっきアカリさんと約束しちゃったんですよ」

「そっか、じゃあいくよ!」

 頭の中を戦闘に切り替え双葉は駆ける。
 目の前に居るのは強者、今度こそ一分の隙も許されない。

「負けませんよ!」

「こっちこそ!」

 ナイフとサーベル、二本の刃物がギィンッ!と音を立てて衝突し競り合う。

「いけっ!」

 互いの動きが止まった瞬間、双葉の足元からツタが伸びてエイレーンの顔面に襲い掛かる。
 双葉の『ナイフで切りつけた場所から植物を生やし操作する能力』による奇襲はエイレーンの表情を驚きに変えた。

「くっ! 面倒デー「シッ!」

「!?」

 エイレーンが咄嗟にツタを切り払った直後、双葉の蹴りがエイレーンの足を掠める。

「痛っ、、、、」

 掠めた蹴りがエイレーンの足に鋭い痛みを残す。双葉の靴先にナイフが仕込まれていたのだ。

「、、、成程、クツに仕込んだナイフで床を切りつけておき、そこから植物を生やしたんデースね」

「大正解、流石にりかいが早いね」

 切りつけてから発動可能になるまでタイムラグがあるものの、ソレを差し引いても双葉の能力は強力無比。
 生やす場所にタイミングも自由自在、植物をどうにかする手段を持たぬ相手ならば封殺出来る。それが双葉の強さ。

226 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:33:52 ID:9c5VDgsMnz
>>225
「、、、しこみは終わった、時もみちた。ここからは双葉の時間だよ」

『双葉選手の挑発だ! 私の辞書に『敗北』の二文字は無い!! そう言わんばかりだぜ!!』

 片手両足、双葉の持つ計三本の刃がギラリと光る。
 笑みを浮かべる瞳は勝利を見据えている、様に見えた。

「、、、、、」

 しかし双葉の内心では焦りと弱音が渦巻いている。それはエイレーンの闘技場という場に対する相性の良さによるものだ。

(刃物で切られれば血がへる、殴打されれば呼吸がじゃまされる、それがふつう。
それらの障害を補って余りあるほどの強化、それがエイレーンちゃんのスキルだね。たぶん。

でも、この闘技場はピノちゃんの宝具の力で本物の傷をおうことはない、痛みさえ我慢できるならどんなこうげきを受けても動きはにぶらない。
エイレーンちゃんにとって最高のフィールド、それがここ)

「エイレーンちゃんがこれ以上強化されるまえに植物で拘束する。それが双葉のかちすじ、、、、よし」

 そう双葉は小声で呟き、拳と共に己の弱音をそっと握り込む。

(エイレーン一家との交渉、、、、あの時みたいな無様はにどと御免だね)

 もう二度と無様を晒すものか。それが双葉の密かな覚悟だった。
 痛む体に喝を入れ双葉は吠える。

「ここ『スパークリングチャット』は双葉とピノちゃんの二人できずきあげた城であり誇りっ!! だから双葉はかつ!」

 双葉がバンッと両手を叩き合わせば闘技場の方々からツタが吹き出し、闘技場の一角を緑一色に染める。

「いいデースね! 戦いはこうじゃないと!!」

 双葉の猛りに獰猛な笑みで返答するのはエイレーン。
 今、エイレーンの心は燃え上っていた。己の計画にズレが生じているのにも関わらず。

227 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:35:03 ID:9c5VDgsMnz
>>226
(この闘技場こそ私の能力を最大限以上に生かせる場所。実態以上の力を見せびらかすことが出来る。故に、能力を晒すだけの価値があると判断した)

「ほら! ほら! ほらほら!」

 スコールの如く降り注ぐツタを&#25620;い潜り、切り裂き、エイレーンは双葉の元へと近づく。

 双葉は追い詰められる。

(無論、ここで勝たなければ意味はない)

「つかまえたっ!」

「甘い!」

 背後から生え、足に巻き付いた強靭なツタを強引に引きちぎり前に進む。

 双葉は更に追い詰められる。しかし折れない。 

(押しきれない。『切り札』の切り方を間違えましたか)

 ブラフに引っ掛かったと言う事実に動揺している間に押し切る。それがエイレーンの計画。
 単純を通り越して杜撰とも言える計画、しかしエイレーンはソレが最適であると判断していた。
 それは何故か、以前見た双葉が未熟だったからだ。

 エイレーン一家と双葉の交渉。あの時の双葉は失敗しそうになれば動揺を見せ、ばあちゃるが犠牲に成ろうとした時は躊躇していた。
 良く言えば裏表のない心優しい性格。友人としては最高、リーダーにだって適している。しかし、戦いには向いていない。

 故にエイレーンは複雑な計画で失敗のリスクを背負うよりも、効果は小さくとも単純な計画を確実に遂行する事を選んだ。これがピノや他の者が相手なら別の方法を選んでいただろう。
 双葉専用にあつらえた計画は、しかし上手く行かなかった。
 それは何故か、今の双葉が成長しているからだ。

228 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:39:04 ID:9c5VDgsMnz
>>227
(驚くべきは双葉さんの成長。以前会った時の双葉さんは未熟でした、、、、しかし今は違う。
双葉さんの絶対に相手を倒すという覚悟を感じる!)

「らああああああ!!」

 エイレーンが後3歩進めばサーベルの間合いに入る、そんな距離。互いの姿が良く見える程度には近い距離。双葉は覚悟を決め、裂帛の気合と共にナイフを床に突き刺す。
 突き刺した所から桃色の光が漏れ出し、漏れ出す程にナイフは色褪せる。漏れ出した光は双葉の喉へと吸い込まれてゆく。
 青々と茂っていたツタ共は悉く枯れ落ち、淡い緑の光と成り果て、地を這いずり、双葉の下に集う。
 双葉の足元より立ちあがりしは緑光。桃色の光は喉元から四方に別れて延び広がる。
 そうして出来上がるのは光で出来た花。茎は緑、花弁は桃色。高さ2.8mの幻想的な花が双葉を飲み込む。

(ここまで近づかれたら、拘束による勝ちは無理。もう全力をぶつけるしかない!)

「行けるところまで、行ってやるよおら! 『宝具真名解放』言の葉唄えば現は揺れる。幻言回れ『言想切断(フタバーニーヤ)』」

『双葉選手は奥の手を使うつもりだ! オーナーの奥の手お披露目か!?』

「ハハ、、、良い、良いデースねぇ」

229 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:39:13 ID:9c5VDgsMnz
>>228
 双葉の奥の手、内容次第ではエイレーンは負ける。その事実を認識した途端エイレーンの手は震え出す。ソレは恐れと猛りから来る震え。
 敗北のリスクが有る勝負、可能な限り避けるべき局面。しかしエイレーンは現状をどこか楽しんでしまっていた。
 己よりも頭の良い者、狡猾な者は腐るほどいる。しかし、己と張り合える程に強い者は殆どいない。しかし双葉は、今の双葉はエイレーンが本気を出すべき相手だった。

 己の軽挙によって恩人を失ったエイレーン。その失態を二度と繰り返すまいと誓った女。
 エイレーンにとってリスクとは恐怖の対象であり、事実彼女の理性は現状を恐れている。しかし笑みが止まらない。理性の泣き言を歓喜と戦意が真っ赤に塗りつぶしてゆくのだ。

230 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:50:03 ID:9c5VDgsMnz
今度はテストで投稿が遅れました
夏休み直後にテストあるとか流石にサディスティックが過ぎませんかね、、、、、、

逆境をきっかけに成長する双葉ちゃんと、徐々に素が漏れ出るエイレーンさんの回でした。
何気に二人共過去の失敗から学び、各々の成長を遂げています。


それはそうと、ヒゲドライバーさんとのコラボ配信凄い楽しみ

231 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:52:16 ID:9c5VDgsMnz
>>229 228の微訂正
 双葉の奥の手、その内容次第でエイレーンは負ける。その事実を認識した途端エイレーンの手は震え出す。ソレは恐れと猛りから来る震え。
 敗北のリスクが有る勝負、可能な限り避けるべき局面。しかしエイレーンは現状をどこか楽しんでしまっていた。
 己よりも頭の良い者、狡猾な者は腐るほどいる。だが、己と張り合える程に強い者は殆どいない。そして双葉は、今の双葉はエイレーンが本気を出すべき相手だった。

 己の軽挙によって恩人を失ったエイレーン。その失態を二度と繰り返すまいと誓った女。
 エイレーンにとってリスクとは恐怖の対象であり、事実彼女の理性は現状を恐れている。しかし笑みが止まらない。理性の泣き言を歓喜と戦意が真っ赤に塗りつぶしてゆくのだ。

232 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 20:47:44 ID:WicsM/DPBL
おっつおっつ、お疲れ様です

233 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 21:01:20 ID:9c5VDgsMnz
>>232
有難うございます、、、

5日に一度位のペースでの更新を目指して頑張ろうと思います

234 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:28:39 ID:.hSPSfAscd
>>231
 視点は移りアカリ対ピノ、暫し硬直していた戦いに変化が訪れ始めていた。

「ハァッ、、、、ハァッ、、、、」

「流石のピノちゃんもそろそろガス欠だねーうん。あんだけ動いてれば当然だけどさ」

 ピノの振るう槍をアカリは軽々避ける。息は切れ気味、技の冴えも落ちた。

 試合が始まってからピノはずっと攻め続けていた。言い換えれば、戦いが始まってから休むことなく槍を振るい続けてきた、ということにもなる。
 槍という武器は非常に重く長く、扱いが難しい。そしてピノの体格は女子基準でもかなり華奢。もし一瞬でも手を止めれば槍の慣性に体を持っていかれ、大きな隙を晒すことになるだろう。だからこそ止まれない、動き続けるしかない。長期戦には向いていないのだ。
 流水の如くとめどない優雅な槍技。しかしソレは、苦々しい妥協の上に成り立っているのだ。

 疲労の汗が止まらない。

「やはりこうなりますか、、、、なっ!?」

 額を垂れ落ちた汗がピノの目に入り、ほんの少し長めの瞬きをした次の瞬間。アカリは目の前にいた。

「油断したねピノちゃん」

「まずっ」

 ピノにアカリの魔手が近付きーーー

「なんてね」

『遂にアカリ選手の手が届い、、、、てないぞ!? ピノ選手の槍に阻まれたぜ!』

 ーーー阻まれた。
 アカリの手とピノの狭間、そこに穂先が割り込んだのだ。
 無防備に突き出されたアカリの右手を槍が傷つける。

「ぐっ!」

 この戦い初めてのダメージにアカリは動揺を隠せない。ブルーの瞳がせわしなく揺れる。

「さっきの瞬きはブラフだったんだね、、、、一本取られたよ」

「その通りですわ。相手が勝利を確信した時こそ最大のチャンス、きっちり狙わせて頂きました」

235 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:29:35 ID:.hSPSfAscd
>>234
 そう言い放ち、悪戯めいた笑みを浮かべるピノ。

 ピノは長期戦向きではない。だからアカリを倒せない事に最初は焦っていた。しかしそこで終わらないのがピノと言うサーヴァント。
 直ぐに勝敗を付ける事は不可能と見切りをつけ、今度は機を待った。偶然の隙が己に生まれ、そこにアカリが飛びつくまで待ったのだ。

 明るい見た目とは裏腹にアカリの頭はよく切れる。扱いの難しい鞭を使いこなし、触れるだけで発動する(と思われる)強力なスキルを持ちつつも驕る事は無い。わざと作った隙なぞ秒で見抜くだろう。
 故にピノは賭けた、アカリが本物の隙を前に油断してくれるかに。ピノは勝利した、一瞬のチャンスを物にした。そして、命懸けの賭けには大きなリターンがあるのがお約束だ。

「でもピノちゃん、この程度じゃまだアカリの方が有利、、、だ、、、、」

 お返しに鞭を振るおうとしたアカリの体から力が抜けてゆく。

『こ、これはどういうことだ!? アカリ選手が突然ふらつきだしたぞ!』

「なん、、、で?」

「わたくしの槍は一定量血を浴びると、浴びた血の持ち主から精気を奪うのですわ。そして精気を糧にする事で短時間の間威力を増すんですの。
まあ、処女と童貞の精気しか吸わない偏食家の槍なんで使い勝手は良くないですけどね」

 ピノの持つ槍『無銘』。カルロ家の先祖が吸血鬼の長である『死徒27祖』の一人を打倒した際、その記念にと27祖の死体を加工して作らせた槍である。
 吸血鬼とは言え、人型の生き物を素材に使った武器と言うのは少々外聞が悪い。故にこの由来は隠され、『無銘』と言う質素な銘と共に代々当主の証として伝えられる事になった。

「そう、なのか」

 アカリが槍に目線をやれば、穂先についた返り血は蒼く染まっている。準々決勝で見せた光景と確かに同じだ。

236 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:30:39 ID:.hSPSfAscd
>>235
「勘違い、、、、してたよ。てっきり、自傷をトリガーに発動するもんかと」

「あれはあくまで裏技。デメリットを背負ってでも威力が欲しい時の切り札ですわ」

 全身から力と言う力が抜き去られる。立つことすらままならない。

『アカリ選手膝をついた! これはつまり、オーナー・ピノの勝利という事!!』

 歓声轟く闘技場の下、ピノは次撃を繰り出そうとしている。このまま行けばあと数秒でアカリに届くだろう。

「、、、、そっか、残念」

 動揺が過ぎ去ったアカリの胸中には、幾つもの感情が渦巻いていた。
 己が出し抜かれた事への悔しさ。相手への称賛。そして『己が勝利してしまう』事に対する、ある種のやるせなさ。その他諸々。

「では御機嫌よ「矢刺せ『愛天使(キューピッド)』」

 刺さる直前で槍が止まる。アカリが盾や魔術で防御したわけでは無い、ピノが静止したのだ。
 アカリの宝具、その効果によって止まった。

『、、、、え?』

「この宝具、ちょっと代償がヤバ目だから、、、、使いたく無かったんだけどね。
 アカリをここまで追い詰めた礼に、スキルと宝具を教えてあげる。

 アカリのスキルは『蠱惑の手(チャームハンド)』。手で触れた相手を魅了して動きを止めるんだ。同性の人や、種族が違う相手には若干通りが悪いのが欠点かな。
 そして宝具名は『愛天使』。目線の先に居る敵を強制的に魅了するんだよ。種族問わず誰にでも効くのが特徴。欠点はね、、、、秘密」

 アカリがゆっくりと立ち上がり、槍を奪い取り、止めを刺す。

「止めは刺させて貰うよ。ほっといたら、思わぬ方法で逆転されそうだし」

 ピノが自らの槍に貫かれてから地に伏すまでの刹那、薄紫色のセミロングだけがフワリ虚ろに揺れていた。

237 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:31:50 ID:.hSPSfAscd
>>236
 アカリ対ピノの決着が着くのと同じ頃、双葉とエイレーンの戦いも終わりが近づいていた。

「やー、まけちゃたかな。やっぱ力不足だったか」

「いえいえ双葉サーン。『言想切断』、放った言葉を現実にする宝具。実現できる内容に制限はあるものの、ソレを差し引いてもかなり強力でしたよ。
 『はじけろ』と言えば空間が破裂し、『もえろ』と言えば周囲が燃える。あらゆる攻撃を可能にする万能宝具、、、、でも、威力に少々難があったのが致命的でしたネ。

 それと、発動中は一歩も動けなくなる上、スキルも使えなくなるのも痛かったデスね。宝具の強さを考えれば妥当な代償デースけど」

 倒れ伏す双葉に、エイレーンがサーベルを突き付けていた。
 周囲のあちこちは焦げ、抉れ、断裂し、凍り付き、ここで激闘が有ったことを証明している。

「痛みを感じるほどに強くなる私と、相性が悪すぎましたね」

「ほんとそれ。でもまあ、収穫もあったしべつに良いかな」

「収穫?」

「そ、収穫。エイレーンちゃんの強化さ、上限あるでしょ。
 双葉と戦ってる時、途中から動きに変化がなくなってたもん。
 それまではダメージをうけるほど、はやくなってたのに」

「ありゃま、これは鋭い」

 最早立ち上がることすら出来ない双葉。字面にすれば無様なその姿は、どういう訳か尊厳に満ちていた。
 桃色の目に宿る闘志は衰えの欠片も見せず、遠くの勝利を見据えている。

 きっとそれは、双葉がシロとスズの勝利を確信しているからだろう。

238 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:32:50 ID:.hSPSfAscd
>>237
「エイレーンちゃん最大の武器はスキルでも宝具でもなく、情報。
 、、、、双葉がアカリちゃんに、ピノちゃんがエイレーンちゃんに対応していればまだ勝ち目はあった。
 でも、そうはならなかった。それは何故か、エイレーン達が情報をかくし通していたから。双葉たちは間違えたんじゃない、間違えさせられたの。

 だから双葉は全力をぶつけることで未知のベールをはいだ。エイレーンちゃんを守り、双葉達の視界をおおうベールを。
 双葉がはいだのは二枚、スキルの正体と欠点。のこりはあと何枚かな?」

 そこまで言い切ると、双葉はニコリと素敵な笑みを浮かべる。
 はて何をする気か、とエイレーンが身構えた次の瞬間。

「こうさん」

 双葉は降参を宣言した。

「、、、、え?」

『なんと!? 双葉選手まさかの降参!! この時点でアカリ・エイレーンペアの勝利となります!』
「マジか」「まあ、潔くはある」「ナイスファイト!」

 驚くエイレーンを他所に双葉は悠々と立ち上がり、ピノを優しく抱き上げて闘技場を後にする。

「さようなら。次の決勝戦はオーナー席からみさせて貰うよ」

「、、、、、、え、ええ。さようなら」

 我に返ったエイレーンが返事をした時双葉の姿は既に無く、ピノを落とさないよう慎重に歩を進める背中が遠くに見えているだけだった。

『さあ観客の皆様! 良き試合を見せた選手たちに喝采を!!』

「、、、ちょいとばかし、成長しすぎじゃないデースかね」

 余りにも堂々とした振る舞いを魅せる双葉にある種の敗北感を感じながらも、エイレーンは勝者としてアカリと共に闘技場を去る。

239 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:36:49 ID:.hSPSfAscd
>>238
「ん、、、うん? ここは?」

「医務室だよピノちゃん」

 真っ白なベットが立ち並ぶここは医務室。敗北した選手が送られる場所。
 ピノと双葉の二人は医務室にいた。

「ああ、やっぱり負けていましたか、、、、、おや? 誰か来ますよ」

 医務室のドアがコンコンコンと三回ノックされる。

「入っても良いですよ」

 ピノが返事をすれば、少し間を置いてからドアが横にスライドして客人の姿を露わにする。エイレーンだ。

「エイレーンちゃんじゃないか、どうしたの?」

「ええ、実は、一つ提案したい事があるんデースよ」

 そう、歯切れ悪く言うとエイレーンは一瞬言葉を切り、半口分の息を肺に補給して続きを話す。

「もしあなた方が良ければ、私達は棄権しようと思います」

「、、、、、理由はなんですか?」

「私達は示威行為を目的としてここに来ました。そしてその目的はもう達成されたんですよ。
 実力派揃いで知られる岩本カンパニーの精鋭、馬越健太郎。新進気鋭のギャングスタ、ケリンと鳴神裁。スパークリングチャットの名物、戦うオーナー、ピノ・双葉。これら全てをエイレーン一家は下した。
 『スクリーンガンナー』『You-Know-that』『バレットバンド』、、、街の外で名を轟かしたアウトロー、計25団体を傘下に収めるニーコタウンのボス、神楽すずは正直惜しいですが、まあ今の戦果で十分です。

 それにほら、あなた方は優勝しないと金が足りないんデースよね? 互いに損の無い話しだと思いますが」

240 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:38:27 ID:.hSPSfAscd
>>239
「優勝云々の話、一応は機密なんですけどね。ギャング共に融資の邪魔をされた時といい、今回といい、情報を漏らすおバカさんが多くて嫌になりますね。」

「酒と女と金、後は多少の知名度があれば大抵の情報は手に入りますからね。良ければ今度、ねっとりレクチャーしてあげましょうか?」

 エイレーンの提案を聞いたピノは、薄紫色の髪をクルクルといじりながら考え込む。

 確かに、エイレーンの言う通り優勝賞金1000万を回収しなければ『楽園』に行くことは出来ない。その条件を確実にクリアできる、まさに願ってもない申し出。だがーーー

「すみません。その申し出を断らさせて頂きますわ」

 ピノは断った。

「どうしてデースか?」

「実の所、今大会の目的は一つじゃないんですの。強者の戦いを観戦し、そして全力でぶつかる。そうすることで皆様の成長を促し、来るべきカカラとの闘いで負けるリスクを減らす。それが二つ目の目的。
 だからエイレーンさん、棄権されちゃうとそれはそれで困るんですよね」

「それにね、ここは戦いをみせて楽しませるばしょ。取引なんてしたら、観客や他の選手、それにパプリカとピーマンにだって申しわけが立たないよ」

「、、、、ま、そういう事ならしょうがないですね」

 そう言いながらエイレーンは赤い髪をポリポリと掻き、思わず苦笑いを浮かべてしまう。 

241 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:39:16 ID:.hSPSfAscd
>>240
 シロとスズが優勝し、もしカカラの根絶に成功したならばそのメリットは莫大。防壁外の開拓、交易の容易化、、、、、時間をかければ、50年以上の歳月で荒廃してしまった世界を元に戻すことだって可能だろう。

 それにピノ達の動向さえ見ておけば、根絶の始まる時期を予想できるものありがたい。カカラ共が居なくなれば、良くも悪くもこの世界は大きな変革期を迎えるだろう。そして、迎えるタイミングさえ解れば変革はチャンスへと姿を変えるのだ。優勝を捨てるメリットは十二分にある。

 故にエイレーンは、更なる譲歩をしてでも提案を通す気でいた。だがしかし、リスクを嫌い、義理人情を割と気にするエイレーンは『リスクを減らす』や『申しわけ』といった言葉に結構弱く、ソレを言われてしまった以上引き下がらざるを得なかったのだ。


 それに、エイレーンに戦う理由は無いものの、『戦いたい』理由はいくつもあった。

「そう、そうですか。それは、楽しみですね」

「ええ、楽しみにしてくださいね」

 軽く会釈をし、エイレーンは医務室を出る。

 扉を閉じればそこは廊下、静かな廊下。カツコツコツカツ、薄灰色の床が靴音鳴らす。

「、、、本当に楽しみですよ」

 静かな廊下、誰も居ないその場所で、そっと噛みしめる様に一人呟く。
 萌美とヨメミ、信頼する部下を負かした強敵。勝っても負けても問題の無い戦い。あらゆる要素がエイレーンを奮わせて行くのだ。

「、、、、フゥ」

 赤い瞳をピタリ閉じ、沸き立つ心を落ち着かせる。大きく深呼吸し、火照った体を冷ます。笑みは浮かべない、闘志も今は要らない。
 今はただ体を休ませ、心を休ませ、感覚を研ぎ澄ます。それだけでいい。

242 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:45:16 ID:.hSPSfAscd
やっと準決勝が終わりです、多分今までで最長の戦いだったと思います。

ただの大会かと思いきや、意外と色んな思惑が動いていました。
まあ、ぶっちゃけ金稼ぎの為だけに大会開く意義は薄いですしおすし。

各キャラのステータスは決勝戦が終わってから纏めて紹介するつもりです。

243 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 19:08:54 ID:.hSPSfAscd
細々とした裏設定

『スクリーンガンナー』
元ネタ:ニコニコのコメント機能(『画面』にコメントを『撃ち込む』ことから)

 比較的最近になって生まれたグループ。
 技術の発展で職を失った人たちが街の外に活路を求めたのが始まり。
 主な収入源は『書類偽造の代行』『身分証明書の偽造』等々


『You-Know-that』
元ネタ:例のアレ

 カカラを崇拝するカルト集団。歴史は結構古い。
 収入源は無し。基本自給自足。
 ニーコタウンのカカラを用いた堆肥や燃料の知識は、殆どここ由来だったりする。


『バレットバンド』
元ネタ:東方(弾幕+音楽=バレットミュージック→バレットバンド)

 ドストレートなアウトロー集団。同業者の中ではまあまあ長続きしている方だった。
 主な収入源は略奪、パイプガンの製造(取り敢えず弾は撃てる粗製銃の事)

244 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 21:26:24 ID:XyZMD4A.9T
おっつおっつ、決勝が楽しみじゃ。バレットバンドがアウトローなのは解釈一致(原作を見ながら)

245 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/24 12:36:03 ID:bXqHp0RNBA
>>244
ほぼ毎シーズンヤバい異変をしでかしてますからね、幻想郷の住人達

決勝戦は気合い入れて書くつもりです! 決勝が終わったら、幾つか日常回を挟んだ後、一章の終盤に突入する予定ですね

246 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:00:25 ID:9s2I0eJRR7
>>241
『さあさあ始まる決勝戦! 泣いても笑ってもこれが最後!!』

『決勝戦に出場する選手のご紹介! 白髪蒼目、彗星の如く現れた謎の美少女、シロ選手! ニーコタウンの大ボス、噂に恥じぬ武勇、神楽すず選手!
 エイレーン一家の長、知略も武力も一級品、エイレーン選手! エイレーン一家のナンバー2、綺麗な花には猛毒あり、アカリ選手! 以上四名だぜ!!』
「応援してるぜ白髪の嬢ちゃん!」「やっちまえボス!!」「頑張りなよエイレーン!」「負けんなよぉ! 金髪の姉ちゃん!」

「決勝戦か、緊張するねぇ」

「ですねシロさん」

 司会の煽り文句が闘技場の中に朗々と響き渡る。観客席を見ればそこに空席は一つもない。決勝を待ち望む観客達が一片の隙間もなくズラリと並んでいるのだ。
 シロとスズの二人が堂々とした足取りで会場に入った瞬間、観客のボルテージは一際上がる。

「勝ちますよアカリさん」

「勿論」

 対するはエイレーン一家の二人。
 二人の目はただ澄みきり、迷いを一欠片も感じさせない。


『試合、、、、開始!』

 司会の声と共に選手は動き出す。

247 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:00:49 ID:9s2I0eJRR7
>>246
「、、、、、」

「、、、、、、」

 先程の準決勝とは打って変わり、開始した瞬間動き出す様な事は無い。
 じりじり、じりじりと互いの間合いを図りながら近づいてゆく。


 まず間合いに入ったのはアカリ、弓や銃を除けば鞭のリーチは頭一つ抜けているのだから当然と言える。しかしアカリは動かない。エイレーンの補助に徹するつもりなのだろう。

「、、、、行きます!」

『すず選手が仕掛けた! 短期決戦狙いか!?』

 最初に動いたのはスズ。釘バットを振りかぶると、緑色の魔力を伴いながら凄まじいスピードでエイレーンに肉薄する。
 肉体の各部から魔力を噴射し、動きを補助する事で身体能力を底上げするスキル、それが魔力放出。

「ぶっ潰す!」

 真上から真下へ、小細工無しの振り下ろし。まともに当たれば必殺。そんな一撃がエイレーンに襲い掛かりーー

「潰されるのは御免デース」

「忘れて貰っちゃ困るね、と」

「やばっ!?」

 邪魔された。
 振り上げたバット、その柄頭をアカリの鞭が正確に打ち据えたのだ。そのせいでバットは滑り、軌道はブレる。
 一応当たりはしたが痛打にならず、エイレーンの能力を発動するのに丁度良い程度まで威力が減衰させられた。

248 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:01:22 ID:9s2I0eJRR7
>>247
「んー。刺激的で気持ち良い、素晴らしい痛みですよ」

「不味っ」

 額でバットを受け止めたエイレーンは笑顔でそう言った。浮かべた笑顔はやや恍惚気味で、顔を滴り落ちる血の赤も相まってエイレーンの不審者感を強く演出している。
 しかし、胡乱気な様相に反してその行動は的確。エイレーンはサーベルを逆手に持つと、スズの鳩尾に柄を叩きこんだのだ。スキルの条件を満たし身体能力が上がった状態で。

「カハッ、、、、!」

『急所に一撃! これはえげつないぜ!』
「ヒェッ、、、、」「痛みが想像しやすいのが生々しいな」「羨ましいぞ!」

 鳩尾を打たれたスズの呼吸は一時止まる。肺の中全てを絞り出されたような苦痛。酸欠から来る混乱。体はくの字に曲がり、まともに立つことなど不可能。握り締めていたバットがカランと音を立てて零れ落ちる。
 ぐらつく緑の瞳で何とかエイレーンを捉え、必死に拳を振るうも防がれてしまう。

「急所に打撃を受けても動けるとは流石デース。でも「やらせないよ」

 すぐさま止めを刺そうとしたエイレーンを妨害したのはシロ。
 スズの背後から飛び出したかと思えば、突然顔面にナイフを投げつけて視線を誘導し、シロ本人は微妙にタイミングをずらして突貫する。アカリが鞭を振るう隙など与えない。
 投擲物と疑似的な連携を取る厄介な戦法。しかしーーー

「なるほど、投てき武器を用いた視線誘導。タイミングも的確ですし、それを可能にするシロさんのスピードと技量も驚嘆に値しマース」

 通じない。
 蹴り上げたスズのバットでナイフを受け止め、シロに対してはサーベルによる切り払いで対処される。

249 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:02:19 ID:9s2I0eJRR7
>>248
「ですが、似たような手を準々決勝で見せたのが不味かったですね。もしこれが初見なら、正直痛手は免れませんでしたよ」

「それで良いんだよ、それで。シロの狙いはすずちゃんを助けることだけだからねぇ!」

 スズとエイレーンの間に体をねじ込む。振り下ろされたサーベルがシロを浅く切り裂く、がその程度気にも留めない。
 シロは右の手に持ったナイフでエイレーンを牽制しつつ、左の手でスズを押し退けて後ろに下がらせた。

「大丈夫すずちゃん?」

「有難う、、、ございます、、、シロさん。もう大丈夫です、、、、私、、、もう戦えます」

「強がりなのが見え見えだよ、ちゃんと息が整うまでは駄目」

 シロは演技臭い笑みを口元に浮かべてそう言い放ちつつ、思考を始める。

 イマイチ決定打に欠ける為シロはエイレーンと相性が悪い。スキルは発動しておらず、シロの宝具『唸れよ砕け私の拳(ぱいーん砲)』は予備動作が大きい。もう一つの宝具も今は効果薄。しかし、それでも持ちこたえることぐらいは出来る。
 無論、持ちこたえたところで勝機が無ければ、ソレはただの悪あがき。では、果たして勝機はあるのか?ある。神楽すずだ。すずちゃんの攻撃がまともに当たればエイレーンもアカリも一撃で倒せる。どんな手を用意してようと、使われる前に倒せば良いのだ。準々決勝、準決勝を見る限りではダメージを反射する様なスキルを持っているとも考え辛い。
 シロはそこまで考えたところで一旦思考に区切りをつけ、目の前の戦いへ意識を集中させる。

(宝具とかの不確定要素はあるけど、今それを考えたところで無意味。
 兎にも角にも時間を稼がないとね、、、、後40秒、いや30秒も稼げば、すずちゃんなら十分回復するかな?)

250 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:02:54 ID:9s2I0eJRR7
>>249
 エイレーンに対して半身になり、右手でナイフを構える。構える手はヘソの高さ、刃先は相手の首元へ。重心の位置を体の芯に合わせ、スムーズに動けるようにする。小指、薬指でナイフをしっかり握り、他の指は軽く添えるだけ。ごくありふれた基本の構え。様々な人間に使われてきた、即応性に優れる構え。

(30秒、、、、そこまでは持たせて見せる!)

 エイレーンを見据え、シロは時間稼ぎ(戦い)を始めた。

「シッ!」

 1秒目、鋭く息を吐いてナイフを突き出す。

「軽い!」

 3秒目、シロの一撃は叩き落される。
 5秒目、鞭の援護射撃。
 6秒目、肩に痛打。
 8秒目、エイレーンからの斬撃。

「、、、、っ!」

 10秒目、強引に受け流す。
 11秒目、蹴りで反撃を試み、アカリの鞭に邪魔される。

「二対一で此処まで捌けるのは流石デース」

「でもそろそろ限界じゃないかな。アカリはそう思うよ」

 15秒目、鞭とサーベルの同時攻撃が襲来。
 16秒目、ナイフが弾き飛ばされる。

「はぁっ、、、、はぁっ、、、、、!」

 17秒目、もうこれしか打つ手が無い。

「、、、、、『真名解放』
 芸術をもてあの灰色の労働を燃やせ
 ここには我ら不断の潔く愉しい創造がある
 皆人よ 来って我らに交じれ 世界よ 他意なき我らを受け入れよーーーー」

『シロ選手は二つ目の宝具を使うようだぜ! 逆転狙いか!?』
「正直厳しいな」「内容にもよるが、さて」「、、、、、ん? 待てよ」

 20秒目、最後の足掻きにと宝具を発動ーーーー

「なっ、、、」

「スミマセン、シロさん。遅くなっちゃいました」

251 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:03:24 ID:9s2I0eJRR7
>>250
 ーーーする必要はなくなった。
 良く通る声、真っすぐで力強い声がシロの鼓膜を震わせる。声のする方を見れば、そこにはやはり透き通るような緑目の美少女がいた。眼鏡の似合う、清楚で豪快な女。そう、神楽すずが復活したのだ。
 痛みは既になく、戦意も揚々。笑顔と怒り顔を足した様な表情は『やられた分はやり返してやる』とでも言わんばかり。

「いやいや、想定よりも大分早いよ」

「そう言ってもらえると、助かります!」

 スズは復活するや否やバットを拾い上げ、強烈豪快なフルスイングを放つ。エイレーン一家の二人も、まさかこれほどに早くスズが復帰してくるとは思わなかったのだろう。シロにばかり注意を払っていたせいで、モロに風圧を受けて吹き飛ばされてしまう。

「くっ!」

『神楽すず復活っ!! 反撃の狼煙に成り得るか!?』

 二人が吹き飛ばされた隙にシロはナイフを回収する。
 スズは復活し、互いの距離も開いた。これで仕切り直し、ここからが本番だ。

252 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:08:07 ID:9s2I0eJRR7
お久しぶりです。展開に悩んで若干スランプってました。
仕方ないのでスランプがてら後々登場させるモブキャラの設定を組んでました。

253 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:19:49 ID:9s2I0eJRR7
細々とした設定集

カカラ
特異点Yに蔓延る怪物、左胸のコアが弱点。一般人でも武装すればギリ倒せる位の強さ。
一つの母体から産まれるため遺伝子的には全て同じ。共食いして強力な個体に成る事がある。
 
■■の有り様を人為的に歪めて生み出された産物。祝福と共に産まれた怪物。人類の罪であり希望。

254 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/14 07:50:42 ID:KmN94TxnFw
おっつおっつ、自分のペースで大丈夫よ。後羨ましがってるモブ、死ぬぞ。

255 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/14 16:31:20 ID:lRshBsBn60
>>254
ありがとうございます。

確かに死にますね、、、、、人間とサーヴァントの壁は厚いですから。
セバスやピーマン(ピーマンとパプリカは一応人間設定、正直Vと言うよりかはマスコットの亜種なので)等々、その壁をぶち抜いてる人たちがいますが、、、、アレは、超人の域に片足突っ込んでるお方達なので例外です

256 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:22:42 ID:0RGjI3UHBL
>>251
「本気で叩き込んだんデースけどね。ここまでアッサリ復帰されると凹みマースよ」

「攻撃が当たる瞬間、魔力の放射で攻撃を相殺したんです。それでも大分喰らっちゃいましたけど」

 スズの全身より立ち昇るは魔力、ゴウゴウと噴き出て渦巻くそれらはさながら豪風。

 ブイデア所属の英霊、神楽すず。実のところ彼女はなんら特別なスキルを持っていないのだ。『魔力放出』『カリスマ』と言ったありきたりなスキルに、火傷や呪いへの耐性をもたらすスキル『普通』。いずれのスキルも他の英霊と比べればどうしても見劣りする。
 しかし弱いかと言われれればソレは否、何故ならばスズにはとびっきり特別な宝具があるからだ。

「BT君、魔力のバックアップをお願いします」

『要請を受諾。動力炉のエネルギーを魔力に変換、魔力のコネクションを補強、バックアップ開始』

 スズが小声で呟けば機械的な音声が答えを返し、数秒の後にはスズの体に魔力が流れ込み始める。

 そう、これこそがスズの宝具『人機の絆』。『BT』と呼ばれる、自立AIを搭載した巨大兵器を使役する事ができるのだ。魔力のバックアップを受ける、スズが直接乗り込んで戦う、遠方から支援砲撃を行って貰う等々、様々な使用方法を持つ宝具。
 今は大会のルール『銃火器の使用禁止』によって魔力のバックアップを受けるぐらいしか出来ない、がそれでも十二分に強力と言えよう。

「今度こそぶっ潰す!」

 裂帛の気合いと共に突撃するスズ。

「同じ事をやっても、同じ結果にしか、、、ぐっ!?」

 迎え撃とうとしたエイレーンの数歩手前、スズは突然右足を床に叩き込む。次の瞬間、闘技場の床が破裂する。

257 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:24:04 ID:0RGjI3UHBL
>>256
『床が破裂したぞ!?』

「、、、っ!」

 破裂した床は礫となってエイレーンに襲い掛かる、完全に想定外の攻撃にさしものエイレーンも対処に精一杯。

「決勝が始まって最初に突撃した時、床に魔力を叩き込んで脆くしといたんですよ。
 ホントは最初の一回目でやるつもりだったんですけど、想定以上に造りがしっかりしてて無理だったんですよね、ハハ」

「ナイスだよすずちゃん!」

 不意をつかれたエイレーン、その隙を逃さぬのはシロ。

「これで決める!」

 うろたえるエイレーンを飛び越し狙うはアカリの首。
 決勝戦での逆転劇。沸き立つ声援がシロのスキル『応援を力に変える能力』を発動させる。
 心身上々、闘志揚々。しかし相手はアカリ、魅了の力を使いこなす手練。万全のアカリならばこれしきの窮地は軽々凌ぐだろう、そう『万全』ならば。

「、、、くっ!」

「やっぱり! 今のアカリちゃんは『近接戦闘がほぼ出来ない』、そうだよねぇ!」

『攻める! 攻め立てているぜシロ選手!』

 シロの振るったナイフに対し、アカリは大げさな回避を余儀なくされる。それは何故か、宝具の代償で片目が見えず、遠近感覚が消失しているからだ。

「『触れただけで魅了出来る』のに『わざわざ鞭を使う』、ギリギリまで使い渋ってた宝具を使ったのになんの変化もない『様に見える』、ここの違和感がシロ的には凄いんだよねぇ。
 ピノちゃんの猛攻を凌いでたのを見るに、接近戦が不得手だとも思えない」

 積み上げた推論を披露しながらも、シロの追撃に淀みは無い。徐々に切り刻まれてゆくアカリ、端正な顔に大粒の汗が浮かぶ。

258 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:24:39 ID:0RGjI3UHBL
>>257
「アカリさん! 今助けに「行かせませんよ」

 礫を凌ぎ、アカリを助けにいかんとするエイレーンを阻むはスズ。

「おらぁ!」

「クッ!」

 スズの一撃、その余波がエイレーンの赤毛をブチリと数本持っていく。
 今すぐにでもアカリを助けに行きたい、しかし目の前のスズを無視できない。正に板挟み、紅がかったエイレーンの瞳が苦し気に窄まる。


 そんなエイレーンを他所に、シロとアカリの戦いは進む。

「、、、だからシロは『宝具の代償が接近戦を大きく阻害する物であり、それを誤魔化す為に鞭を使用している』と仮説を立ててみた。どう、合ってる?」

「、、、、」

 大きく後ろに飛び、なんとか窮地を脱するアカリ。しかしもう後ろは壁、後がない。
 必死に頭を回し勝機を探す。

「(シロちゃんの発言が多い、ブラフを警戒して私の反応を見てるのかな? チャンスかも)正解、だよシロちゃん。私の宝具『愛天使』は『美』と言う概念そのものを瞳から射出するモノ。
 放たれた『美』は、視線上に捉えた存在を書き換え、魅了する。解りやすく言うと『アカリを頂点にした美の価値観を相手に押し付けて、絶対に魅了する魔眼』。
 まあハッキリ言ってーーー人間が使うには過ぎた宝具でさ、そんなの使ったらどうなると思う?」

 僅かながらも勝機は見えた、後は実践するだけだ。下手に感情を見せてはいけない、バレてはいけない。迫りくるシロを見据え、心を決める。

259 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:25:28 ID:0RGjI3UHBL
>>258
「反動が来る、のかな?」

「その通り、反動で目が一つ潰れるんだ。数日で戻るとはいえ、そう簡単には使えない、、、と言うとでも!? 矢刺せ『愛天使(キューピット)』!!」

 会話で時間を稼ぎ、宝具の重いデメリットを提示し、まさか使わないだろうと思わせてからの即時使用。これが決まらなければ終わりーーーー

「来ると思った」

 ーーー決まらなかった。
 シロがアカリの眼前に突き出したのはナイフ、顔が写る程に磨かれたソレが魔眼を跳ね返したのだ。
 石化の魔眼を持つメデューサは鏡の如く磨かれた盾を用いて討伐された。魔眼に対しての鏡は、定番の対象法と言える。

「なん、で?」

 宝具を跳ね返されたアカリはもう動けない。自分の宝具で有るが故に多少の耐性があり、喋ることは出来るがそれだけ。仮に動けたとして宝具の反動で何も見えないのだから、どうしようも無くはあるが。

「そりゃ解るよ、アカリちゃんの目に諦めの色がなかったもの。キラキラでギラギラな、綺麗な目をしてた」

「なる、ほど。後は、頼んだよ、エイレーン。私は、ここでギブアップ」

 何も見えなくなった蒼い瞳を閉じ、顔には快活な笑みを浮かべる。そして眠るように、ゆっくりと床へ倒れ込む。

260 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:26:11 ID:0RGjI3UHBL
>>259
『アカリ選手、ここでリタイア! エイレーン一家大ピンチ!!』

「、、、アカリさんがやられましたか。困りましたね」

「降参しますかエイレーンさん? 2対1じゃ勝ち目は薄いですよ」

 スズの問いかけに対し、エイレーンはかぶりを振って否定する。

 アカリが窮地に立たされていた時は焦燥感を露わにしていたエイレーン、しかし今は落ち着いている。勿論、先ほどまでの態度が演技だった訳ではない、切り替えただけだ。
 最も信頼していた部下であるアカリは倒された。シロもスズも相応に消耗してはいるものの、戦えない程では無い。予測しうる限りで最悪の事態ーーーしかし想定内ではある。情報収集、組織の統制、交渉、当たり前の事を当たり前にこなしてこそのリーダー。そして、『当たり前』の中には『最悪の事態を想定し備える事』も含まれている。

「イエイエ、お気になさらず。見せる予定の無かった奥の手を見なきゃいけなくなって困ったなと、そう思っただけデース」

 そう言うと、エイレーンは大きく息を吸い込んで全身に力を入れる。

「不味い!」

「え?」

 ほぼ無限の魔力に圧倒的なパワー、スズは強者だ。故に危機察知能力が低い、そんなもの無くても大抵どうにかなるからだ。
 対して、シロは強者とは言い難い。発動条件の厳しいスキルに少々地味な宝具、しかしそれ故に危機察知能力は高水準。

「、、、、くっ!」

261 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:26:58 ID:0RGjI3UHBL
>>260
 しかし間に合わない。シロとエイレーン、二人の間を阻むようにアカリが倒れ込んでいたからだ。
 敗者の事など気にせずとっとと飛び越えてしまえば、エイレーンが何かする前にナイフで突き刺してしまえたかもしれない。しかしそんな事をすればアカリに砂埃が掛かる、そもそも人の上を跨ぐなど無礼千万。
 殺し合いの場ならともかくここは試合場、やや甘い所の有るシロが躊躇してしまうのはいささか仕方のない事であった。

「『真名解放』同胞を守るためならば
 畜生となりて汚泥を這いずり
 餓鬼となりて汚泥を喰らい
 亡者となりて万象の責め苦を受け
 修羅となりて万物を切り伏せよう
 『六道輪廻荒行道(りくどうりんねこうぎょうどう)』」

 エイレーンの宝具が発動する。肌はひび割れ、背は曲がり、肉は焦げて炭になり、全身から血が噴き出す。

「これが私の宝具、デース。でもまだ、終わりじゃないですよ」

「いいえ、終わりです!」

 ワンテンポ遅れて危険性を察知したスズがバットを振り下ろしーーーー

「ガハッ、、、、!」

「だから、まだ終わりじゃないですよって」

 吹き飛ばされた。
 エイレーンの手から衝撃波の様な物が放射されたのだ。

「一体、何を、、、」

「私の宝具は『スキル効果の増幅』、代償は見ての通り『継続的な自傷』デース。
 正直代償に見合わない効果ですよ。だから活かせるようにしたんです、肉体を改造して」

262 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:27:09 ID:0RGjI3UHBL
>>261

 エイレーンの左手から伸びる無機質な管。右手に持つ古風なサーベルやボロボロの肉体も相まって異様な雰囲気を放っている。

「改造?」

「エエ、改造です。セバスさんとかと同じような。でも、サーヴァントは体の構造が常人と違うので苦労したんですよ。
 宝具やスキルの動力源である魔力を使用する事でどうにかしたんデース。
 ま、効率が悪すぎて宝具で強化している時しか使えないんですけどね」

『これが、この姿こそが本当の本気だと言うのか!? あらゆる手を使い、ひたすらに強さを求めたその姿! もはやこれは剣、ただ一振りの剣がそこに在ります!!』
「すげえ、、、」「あの改造、ちょっと気になるネ」「シロちゃん大丈夫っすかね?」

「なんで、そうまでして強くなろうと、、、、」

「昔、色々あって恩人を失いましてね。繰り返したくないんですよ、二度と」

 ひび割れた顔に僅かな哀愁を浮かべてエイレーンは答える。
 今のエイレーンはお世辞にも美しいとは言えない。元がどんなに見目麗しかろうと血にまみれ、肉を焦がし、管まで生やしていては台無しだ。しかし醜いかと言われれば否、『強さ』と言う単一の分野に特化したが故の機能美が、威厳が、そして凄みがある。

263 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:35:17 ID:0RGjI3UHBL
(多分)次の投稿でトーナメント編は終了です
因みにエイレーンさんの『肉体改造』はぶっちゃけ腕に魔術的な加工をした筒ぶっ刺しただけです
筒の中に魔力流し込んで衝撃に変換するだけの簡単な仕組みですが、こんなんでも結構試行錯誤してます。記憶喪失で魔術の知識0状態からなので十分凄いですけどね
中世の時代に発電機作るようなもんですから

264 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:54:44 ID:0RGjI3UHBL
細々とした設定集
エイレーンさんの宝具
『六道輪廻荒行道(りくどうりんねこうぎょうどう)』
 自傷ダメージを負う代わりに、『痛みを感じるほど強くなる』スキルの効果を増強する宝具。

 やたらと代償が重い割に効果が微妙なのは仕様。
 メタ的な話をすると、エイレーンさんには作者が描けるほぼ限界スペックの頭脳(身内に弱い、やや頑固過ぎるきらいがある、等々のデバフを一応与えてる)とスーパーバイタリティを与えてるので、下手に強い宝具与えると無双しちゃうんです

265 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 09:00:24 ID:bjH5JPQ3m2
細々とした設定集 その2
アカリちゃんの宝具
『愛天使(キューピット)』
 片眼が数日潰れる代わりに『強制的な魅了』を行う宝具。
 代償が重すぎるけどこれでも十分強い。

 魅了ってぶっちゃけ美の価値観が違えば通じないよな→価値観を書き換えれば良いじゃん、と言う割とえげつない宝具。

266 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 16:27:43 ID:PXvL21aakQ
おっつおっつ、盛り上がってまいりました

267 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 20:38:29 ID:bjH5JPQ3m2
>>266
トーナメント編のラスボスですので、熱い展開をお届けする予定です!

268 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:46:52 ID:CCiAb1qDPe
>>262
「まさか奥の手を見せることになろうとは、、、まあ、薄々こうなる気はしてましたが、ねっ!」

「くっ!」

 エイレーンの背後から接近していたシロが吹き飛ばされた。
 宝具の発動を阻止できなかった時点で目標を不意打ちに切り替えていた、が察知されていたようだ。

「シロさん!! 、、、、っ!?」

「ほら目を逸らさない! 敵が目の前にいるんですよ!!」

 吹き飛ばされたシロを思わず目で追ってしまうスズ。明らかな油断、その代償はエイレーンからの猛攻。たった一歩でスズとの間合いを詰め、繰り出すは鋭い斬撃。
 宝具で得た身体能力と確かな技量に裏打ちされたサーベル捌きはひたすらに苛烈。さらに左手の管から繰り出される衝撃波が僅かな隙を潰している。打ち合う事なぞ以ての外、ただ避ける事しかできない。

「これは、キツイ、、、、けど負けない!」

「その通りだよすずちゃん! シロ達は負けない!!」

「、、、っ! やりますね!」

 エイレーンの背後を襲う投げナイフ、シロによるものだ。当然エイレーンは対処せざるを得ない。そして注意がナイフに割かれればスズの剛腕が猛威を振るう。
 アカリを倒したことにより生まれた人数差が優位を作っていた。

「オラァ!」

 魔力放出によって圧倒的な馬力を持つバットが、スズの一撃が────

「でも足りない───まだ足りない」

「押し、切れない!?」

『な、なんと! 今まで圧倒的な剛力を誇ってきたすず選手が押し返された!?』

 正面から押し返され、そして押し込まれる。サーベルの鋭い刃がスズの首元にジワジワと押し込まれてゆく。
 スキル『魔力放出』により圧倒的なパワーを持つスズ。しかしエイレーンの宝具はそれ以上の強化をもたらしている。

269 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:48:58 ID:CCiAb1qDPe
>>268
「不味い!」

 このままではスズがやられる。そう判断したシロが助けに行くが間に合う距離ではない。もう一度ナイフを投げたところで無視されるのがオチだろう。
 衝撃波を警戒し接近を避け、それ故にナイフでの支援に留めてしまった。『すずちゃんなら大丈夫だろうと考えた』『もう少し様子を見たかった』等いくらでも理由は挙げられるが判断ミスには違いない。そしてそのミスが致命的な事態を招いてしまったのも間違いない。

「くっ!」

 細い腕に全霊の力を籠めスズも押し返そうとしているがさして意味のある抵抗には成っていない。

「、、、、」

 冷え冷えとした刃が首に触れる、生暖かい汗が止まらない、息が上がって過呼吸に成りそうなのを必死にこらえる。

「これで一人、、、、、なっ!?」

 スズの首に刃が突き刺さるその直前、なんとエイレーンの足からツタが生えて来たのだ。生えたツタは絡みつき、エイレーンの足元をもつれさせる。

「全く訳が、いや、これは双葉サンのスキル? そんな筈は、何故!」

『すず選手を倒す直前に妨害が入った! エイレーン選手、絶好のチャンスを逃しました!!』
「何だあれ?」「、、、成程、やりますね双葉お姉ちゃん」「完全に不意を突かれてるネ」

 混乱するエイレーン。バラバラの単語が浮かんでは消え、浮かんでは消えを刹那の間に何度も繰り返される。

「────まさか!」

 莫大な試行の後、エイレーンの頭脳は一つの回答を導き出す。

270 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:49:38 ID:CCiAb1qDPe
>>269
(準決勝の序盤、、、、! あの時、双葉さんは私の膝をナイフで切りつけていた!! 双葉さんのスキルは『ナイフで切りつけた所から植物を生やし操る』モノ。
 そして発動のタイミングは任意、ひと試合越しにスキルを発動されたという事か!
 宝具のインパクトで完全に失念していた、、、いや、元からソレが狙いで宝具を発動したのか。完全に出し抜かれた!!)

 エイレーンの考察通りこれは双葉によるものだ。『自分では勝てない』と判断した双葉が仕掛けた遅効性の攻撃。
 捉えようによっては卑怯ともとれる攻撃。実のところ仕掛けた双葉自身もこの攻撃に結構罪悪感を感じている。とは言え、やられたエイレーンは出し抜かれた事に怒りを感じていないのだが。

「オラァ! やっちゃって下さいシロさん!!」

「OK! 真名解放『唸れや砕け私の拳(ぱいーん砲)』」

 足のもつれと混乱の隙を付かれ、エイレーンはスズに突き飛ばされる。そして背後からは宝具を発動させたシロが迫って来ている。絵に描いたような窮地。

 相手への称賛、悔しさ、高揚感、刹那の間に様々な感情がエイレーンの中で沸き上がり、混ざり合い、噴出する────笑いとなって。

「ハハハッ! ハハハハハハ!!!」

 肺腑に残る息を全て吐き出さんばかりの大爆笑。焼け焦げた、ひび割れた顔に浮かぶ満面の笑み。強烈で鮮烈な感情の爆発。思考が加速し体感時間は引き延ばされ、視界に映るすべての物がスローモーションを描き出す。

 足に絡みついたツタを即座に振りほどくのは不可能。衝撃波も宝具相手には分が悪い。ならばどうすべきか?答えはもう出した。

「なっ、、、!」

「勝負!」

271 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:50:47 ID:CCiAb1qDPe
>>270
 左手を自身の背後に向け全力の衝撃波を放ち続け、その反動でエイレーンはシロへと突撃。衝撃波でスズを遠ざけつつシロを刈り取りに行く心積もり。
 己が身を省みぬ加速、一秒と経たぬうちに音速を超え、大気との摩擦で体が灼熱する。剣の切っ先をシロに向け、紅く燃えながら疾走する様はさながら流星。

「乗った!!」

 対するシロ。凝縮された魔力によって蒼く輝く拳を振りかぶり、己が宝具で迎え撃つ構え。

「「────!」」

 紅と蒼、数瞬の後に二人の一撃がぶつかり合う。観客が一言も発さずに見入ってしまう程に鮮烈なせめぎ合い。必殺VS必殺の争い。優勢なのは────

「どうやら私が勝ちそうデースね!」

 エイレーンだった。
 エイレーンとシロ、宝具の代償が差を分けているのだろう。失うことで得た力は、やはり重い。

「いやいや、まだ解らないよぉ」

 だが、シロは諦めない。不敵な笑みを浮かべ、蒼い目でエイレーンを真っ向から見据える。特に勝算が有る訳ではない、だがそれでも諦める訳にはいかないのだ。
 敗退していった仲間達の残した情報が、そして攻撃がエイレーンをここまで追い詰めたのだから。故に諦めない、仲間達の努力を無駄にしない為にも。

 徐々に押される腕に全霊の力を籠め、『シロ』と言う英霊が持ちうる魔力全てをこの一撃に注ぎ込む。

「ああ、そう来なくっちゃ、、、、詰まらないですよね!」

 だがそれでも趨勢は覆らない。気合だけで勝てるほど戦いは優しくない。
 ────最も、気合以外の何かが一つ有れば勝てる、程度には拮抗しているが。

「シロさん!」

 エイレーンの背後から声が聞こえた、スズの物だ。
 背後から物も飛んできた、スズのバットだ。

272 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:52:16 ID:CCiAb1qDPe
>>271
(アレは確か、、、、準々決勝で使った手。自分の武器を投げつけ破裂させるんでしたか)

 通常ならば困惑するはずの場面。だがエイレーンの判断能力は群を抜いている、困惑する事もなく正確に分析を行う。
 ────最も、優れているからこそ間違えることもあるのだが。

(近づくのは困難だと判断して援護に周りましたか、成程いい考えデースね。でも、何が起こるか解っていれば別に無視しても、、、、なにっ!?)

「最っ高だよすずちゃん!!」

 放り投げられたバットはエイレーンでは無くシロの方へと飛んで行く。そしてバットに籠められた魔力、緑色に輝くスズの魔力がシロに流れ込む。流れ込んだ魔力はそのままシロの宝具に加わり威力を強める。
 自身の有り余る魔力を強引に譲渡する力業、最後の最後まで隠し通していたスズの牙。ソレが、今まさにエイレーンの首元に突き立った。

「いっけええええ!!」

「────」

 宝具の蒼い輝きに緑光が加わり、混ざり、螺旋を描く。先ほどまでとは比べ物にならない程に宝具の力が増す。シロとエイレーン、その力関係が逆転する。

「────お見事」

 シロの宝具がエイレーンを打ち抜くその瞬間、エイレーンは心からの称賛を、ポツリと悔し気に呟いた。

『ついに決ッ着! S級の猛者が集いし今大会を制したのは、、、、シロ&神楽すずペア!!』
「おめでとうっすシロちゃん!」「やったぜ!」「皆強かったネ」

「やりましたよ、、、、シロさ、、、ん、、、、」

273 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:52:28 ID:CCiAb1qDPe
>>272

 轟き渡る歓声、勝どきを挙げようとしたスズがパッタリと倒れる。
 闘技場内の人間はピノの宝具『己が身こそ領地なれば』によって怪我を負うこと事は基本無い、無いのだがどうしても限度はある。宝具相当の攻撃に対してはある程度の怪我を負ってしまうのだ。
 激戦に激戦を重ねたスズ。緊張が切れた拍子に倒れてしまうのも無理は無いと言える。

「全く、すずちゃんは、、、、締らない、、、、なぁ、、、、、」

 スズを抱きかかえようとしたシロもまた、倒れてしまう。こちらの方も疲労が限界に達していた様だ。

『おっと、、、、? 如何やら両選手とも疲労が限界に達していた様です』

 後に残されたのは、緑髪の少女と白髪の少女が晴れ晴れとした表情で倒れている、牧歌的で、少々締らない光景だった。

274 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:47:39 ID:CCiAb1qDPe
時間は掛かりましたが何とか書き上げられました!!
今の自分で作れる一番良い物を書けたような気がします

それはそうと、シロちゃんのサンリオライブ出演決定嬉しい!!
サンリオコラボのアクリルキーホルダー再販してくれないかなぁ(願望)


裏設定

『チャイナ被れお姉さん』
 ファイトクラブ『スパークリングチャット』の常連さん。語尾は『ネ』。
 中国人のステレオタイプまんまの喋り方するけど普通に純日本人。好きな食べ物は春雨、あんまカロリー気にせず食えるのが良いのだとか。


『スパークリングチャット』
 元の持ち主が寿命で死亡した際、ピノ様と双葉ちゃんがゴタゴタに乗じてオーナーの座に就いていたりする。

275 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:48:06 ID:CCiAb1qDPe
ものっそい大雑把な過去年表

2070年 エイレーン一家&アカリちゃんが特異点に召喚される。ほぼ同時期にケリンと鳴神も召喚された。

2071年 鳴神が『サンフラワーストリート』に入団。英霊なので当然腕っぷしは強く、あっという間に組織の地位を駆け上がる。
 同時期にケリンが『エルフC4』を結成。こちらも同様に名をはせて行く。


2072年 エイレーン一家がギャング『Iwara』を打倒、影響下にあった『ポルノハーバー』はエイレーン一家がそのまま引き継ぐも暫くの間混乱状態に。

 『Iwara』残党の殆どは猛スピードで勢力を拡大しつつあった『エルフC4』に合流。
 この際、合流した構成員は違法薬物の流通ルートに繋がりを持つ人間が多く(水商売の人間にそう言った薬物を使わせたり、売らせたりして稼ぐのが主収入だった為)これを機に『エルフC4』は違法物品の取引に重点を置くようになった。


2073年 混乱に乗じて『Iwara』の残党がエミヤを殺害。この後にエイレーン一家による残党狩りが行われ、『エルフC4』に逃げ込んだ構成員以外はほぼ排除される事に。


2074年 すずちゃん、ピノ様、双葉ちゃんが特異点にレイシフト。
 ピノ様と双葉ちゃんは『スパークリングチャット』に就職、すずちゃんはニーコタウン設立に奔走。

276 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:48:13 ID:CCiAb1qDPe
2075年 
 『スパークリングチャット』のオーナーが急病で死去。
 ファイトクラブの所有権を巡ってエルフC4とサンフラワーストリートで争いが勃発。
エルフC4が優位に争いを進め、サンフラワーストリートのボスは求心力が低下。
 その隙を付き鳴神がクーデターを実行。この時点で組織内の発言力はかなり大きく、割とあっさりクーデターは成功を納める。

 その後何やかんやあってケリンと鳴神は意気投合し、『スパークリングチャットはエルフC4優位で共同所有とする』辺りで落ち着きそうだったのだが・・・ゴタゴタやっている間にピノ様と双葉ちゃんがちゃっかり実権を掌握してしまっていた。

2077年 シロちゃん、ばあちゃるがレイシフト、現在に至る

277 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 22:26:22 ID:6rhvhfehCK
おっつおっつ、楽しませてもらったで

278 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 09:46:10 ID:aLavt8/v3p
>>277
楽しんでくれたなら嬉しいです!
この後は、幾つか日常回を挟んだ後に特異点解決へ向けて動き出す感じですね

章ボスはかなりfate色が濃くなる予定、、、、と言うより、そもそもこの特異点はfate/stay night から分岐した世界なので当然と言えば当然なんですけどね(匂わせ)

279 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 11:56:46 ID:RcbCE394xz
ただまぁ…スパチャの元主が寿命と病死で混ざっちゃってたのがちょい引っ掛かりますたまる

280 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 17:48:59 ID:aLavt8/v3p
>>279
あ、やべ。完全にミスですねコレ
最初は寿命だったんですが『寿命なら事前に引継ぎ出来ちゃうよな』と思い変更したんですが、どうも書き換えるのを忘れてたみたいです(汗)

281 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 17:57:24 ID:aLavt8/v3p
>>274
修正

『スパークリングチャット』
 元の持ち主が急病で死亡した際、ピノ様と双葉ちゃんがゴタゴタに乗じてオーナーの座に就いていたりする。

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