バーチャルグランドオーダー
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1 名前:名無しさん[age] 投稿日:2020/11/10 06:35:39 ID:e2ryl5IgSn
鯖化Vtuberを皆で妄想するスレ様から着想を頂いて書くSSの長い奴です

< 12345>
208 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:47:22 ID:bKznsqmMqg
>>207
「、、、、ん、うん? ここは?」

「おはよー。ここは医務室だよ」

 ヨメミはやや乱暴に瞼をこすって重い体を持ち上げ、寝起きでゴロゴロする目をグルグルと動かす。
 周囲には真っ白なベットが幾つか並んでいて、その中の一つにヨメミは座っていた。
 はす向かいのベットには見慣れた顔、、、、、萌実の顔が見える。

「ねえ萌実ちゃん、結果はどうだった?」

「、、、、負けちゃった」

「そっかー、、、、、お疲れ様。後の事はエイレーンとアカリちゃんにお任せかな」

 医務室を照らす薄く埃を被った蛍光灯の下で、ヨメミと萌美は心穏やかに話し合っていた。

 二人は、アカリとエイレーンが大いに戦果を挙げ、大いに実力を示すと確信している。
 負けた事への悔しさはあるが、焦りはない。

 ヨメミは何度か大きな欠伸をし、ベットに倒れ込む。

「、、、ねぇ、エイレーンとアカリちゃんの事どう思う?」

「エイレーンは何でもかんでもしょい込む癖とセクハラ発言さえ無ければ完璧かな」

「エイレーンはある種の理想主義者だからね。本当は綺麗な手段を選びたい、でも大切な者を失う『可能性』が怖い。
だから自分の良心が許すギリギリの手段を用いて『可能性』を潰す。
理由は解るんだけどさ、損な生き方だよね」

「アカリちゃんはアカリちゃんで甘い所あるよね。実力の伴った楽観主義って感じ」

「決める時はビシッと決めるんだけどねぇ」

「まあ、完璧じゃないからこそ支え甲斐があると言うか、何て言うか」

「確かに。話変わるけど、、、、」

「、、、、」

「、、、、、、」

「、、、、、、、」

 寝っ転がりながら萌実と話をする内に、ヨメミはいつの間にか夢の世界へといざなわれていた。

209 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:49:21 ID:bKznsqmMqg
>>208
『、、、、ここはどこデースか?』

『、、、どこだろうね』

 ヨメミは夢を見ていた。グーグルシティに初めて来た、あの時の夢だ。
 ヨメミ、萌実、エイレーン、アカリ、べノ、エトラ、、、、、後にエイレーン一家を創設する事になる面々が、グーグルシティの路地裏で呆然と空を見上げていた。

 ヨメミ達の記憶はある日を境に断絶している。頭に残っている最古の記憶は『殆ど何の記憶もない状態でグーグルシティに居た』と言うもの。
 唯一覚えていたのは自分の名前だけ。

 あの時縋るように辺りを見渡す私達の前を、無関心に通り過ぎる人々がとても恐ろしく感じた。



 夢が揺らぎ、場面が飛ぶ。

『あ、有難うございます!』

『いいの、いいの。気にせず休んで』

 今は『エイレーン一家』が管理している風俗街『ポルノハーバー』の外れにある寂れた宿屋。
 風俗街の宿であるにも関わらずそう言うサービスはせず、売りは料理という少し変わった所だった。

 そこの主人であるエミヤさんは気のいいお爺さんで、身寄りの無い私達を雇ってくれた。記憶を失ってから初めて感じた人の温もりがとても嬉しかったのを覚えている。



 また場面が飛ぶ。

『おいジジイ! アガリが足りねえぞ!』

『、、、、、来月には耳揃えて払いますので』

『来月まで待てるかよ! 二週間後までに払え!』

『はい、、、、』

 エミヤさんの胸倉をガラの悪い男が掴んでいる。

 当時、ポルノハーバーは『I Want to be Radical』、通称『IWARA』と呼ばれるマフィアに支配されていた。
 延々と身内で権力争いをするそいつらは、住民から金を限界まで搾り取っていた。

210 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:51:46 ID:bKznsqmMqg
>>209
 場面が飛ぶ。

『畜生、、、』

 まだ日も出ていない早朝の厨房、その隅でエミヤさんが静かに啼いている。

 赤みがかった総白髪、エミヤさんらしいその髪が、あの時は酷く寂しい物に見えた。



 場面が飛ぶ。

『もう我慢出来ません。私達が立ち上がりましょう』

『立ち上がるってどうするのさ、エイレーン』

『そんなの決まってますよアカリサーン、カチコミですよ。一気呵成に攻め込むんデース』

 エイレーンが気炎を吐いている。

 今では考えられない事だが、当時のエイレーンは大胆不敵な性格だった。
 それはある意味当然の事だった、私達には不思議な能力があったのだから。

 『スキル』や『宝具』と呼んでいるソレらはどれも強力だった、私達に慢心を許す程度には。

 飛ぶ。

『ありがとう!』『あいつらが居なくなる!!』『この恩は一生忘れない』

 『IWARA』の元事務所、私達は感謝の喝采を浴びていた。
 権力闘争に明け暮れていたあいつらは脆かった。



 飛ぶ。

 赤く燃えている。
 『IWARA』の残党にエミヤさんが襲われて、宿は燃やされた。

 赤い血が流れている。
 エミヤさんの顔が蒼白になっていく、もうどうしようもない。

 微かに声が聞こえる。
 呼吸すらままならない喉を震わせ、エミヤさんが何かを言っている。

『■■■と■』



 あの日からエイレーンは変わった。

211 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 21:59:34 ID:bKznsqmMqg
『エミヤ』フェイトに精通しているなら、この名前でグーグルシティが元はどこだったのか大体見当がつくと思います。

グーグルシティは50年前に生まれた街です。
当然の事ですが、50年以上前までは別の何かであった訳ですね。

それと、作品にもよりますが、冬木と言う都市には基本的に『大聖杯』なるものが設置されております。
その大聖杯はいったいどこに行ったんでしょうね。


それはそうと、馬の配信ガチャ運良すぎてクッソ笑う。

212 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/09 22:11:10 ID:bKznsqmMqg
細々とした設定集
『IWARA』
元ネタ iwara(エロmmd特化サイト、サーバーが糞雑魚な事で有名)
回想特有の戦闘シーンすらないかませ集団。
作者が適当に10分くらいで生んだ可哀想な人達。

エイレーン

キャラコンセプト
トライガンのウルフウッド+動画のエイレーン

元はアカリちゃんにスポットを当てる予定だったのがいつの間にかエイレーンになった。
アカリちゃんの場合、辛いことあっても自力で解決出来ちゃいそうなのが一番の理由。

213 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/10 12:45:58 ID:jwScoId0DB
おっつおっつ、気になる過去だぁね、毎度楽しませて貰っております

214 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/10 16:27:35 ID:9RtFoWX0pG
>>213
過去話はカカラの正体にも関わるので楽しみにしていてください!

ちょっとだけヒントを出すと、『カカラは胸に露出しているコアさえ壊せば倒せる』というのがキモです。

215 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:27:10 ID:Tapcdl79X4
>>210
『さあさあ! お次は準決勝第二試合だぜ!!
エイレーン一家の二大トップにして最高戦力、エイレーン&アカリ選手! 対するは我らがオーナー、見た目は可憐だが強さは苛烈! 双葉&ピノ選手!』
「これは予想つかねえな!」「待ってました!」「来た来たぁ!!」

 名前を呼ばれた四人が闘技場へと足を踏み入れる。

 ピノは上品な装飾の施された槍を担ぎ、双葉はファンシーにデコレートされたナイフを構えていた。
 油断なく相手を見つめるエイレーンの手に握られているのは、古びたサーベル。アカリは黒く光る革鞭を腕に巻きつけて遊んでいる。

『試合、、、、開始!』

「ピノちゃん! じぜんの作戦通りにいくよ! まちがってもアカリちゃんには触れないように!」

「了解です、双葉お姉ちゃん!」

『おっと!? 双葉、ピノ選手がいきなり動き出した! 陣形を組ませないつもりか!』

 ピノと双葉の二人は、試合が始まると同時に動き出す。
 ピノはアカリに、双葉はエイレーンに襲い掛かる。

 司会の言う通り、二人の狙いは『陣形を組ませない事』。
 エイレーンが前衛、アカリが後衛となって動く陣形は原始的ながらも強力であり、事実ばあちゃると馬越はその陣形に終始苦しめられていた。しかし、初手で二人を分断してしまえば何の効果も発揮しない。
 その上アカリを抑えてしまえば、アカリの『鞭で打った相手を強化するスキル』を実質無力化することが出来る。

216 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:27:48 ID:Tapcdl79X4
>>215
「そりゃ対策されマースよね」

「大会用に編み出した付け焼き刃の戦法だからね。綻びが出来るのも多少は、、、、ねっ!」

「甘いですわ!」

 縦横無尽に振るわれるアカリの鞭をピノは危なげなく避け、お返しとばかりに槍を突き返す。
 熟練者の使う鞭は音速すら容易に超え、リーチも長大。しかしその威力は高いと言えず、近距離での取り回しも悪い。
 詰まる所、懐に入られると弱い武器なのだ。

「激しく突いてくるねえ!」

「まだまだ序の口ですよ! ほら!」

 突き、薙ぎ払い、叩き下し、回避、ピノの行うあらゆる動作の終わりが次の動作に繋がる。
 豪奢な槍から繰り出される攻撃は全てが重く鋭い。
 ピノの動きは流麗で無駄が無く、息を付かせる暇すら与えずアカリを責め立てる。

 優雅に、そして苛烈に相手を圧倒する。これこそがピノの戦闘スタイル。
 素の拳で鋼の刃を押し返す様な『規格外』でも無い限り、これを崩す事は困難と言えよう。

『止まらないぞピノ選手! 流れる水のような槍捌きだぜ!!』

「くっ! ちょっとキツイね!」

 ピノの放つ銀閃が掠め、アカリの金髪を何本か持ってゆく。

217 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:28:06 ID:Tapcdl79X4
>>216
「早く、倒れて、下さい!」

「いやいや、戦いはまだこれからだよ!」

 掠めた槍を潜り抜けるように距離を詰めてアカリは手を伸ばし、それに対してピノは大きく後ろに下がる。

「、、、っ!」

 現在の状況はピノが有利。しかし攻めきれない。何故なら、アカリのスキルが未知だからだ。
 少し前の戦いで、アカリは馬越に触れることで動きを止めた。
 触れることで発動する、と言うこと以外に何も解らない以上、慎重に対処せざるを得ない。

「ヘイヘイヘーイ、ピッチャービビってるぅ?」

 そして、アカリは『未知』である事のメリットを十分に活かしている。
 アカリは無理に触りに行こうとせず、要所要所で未知の手札をちらつかせる事でピノの動きを制限してゆく。
 ピノの胸中に焦りが蓄積する。玉肌の上を嫌な汗が流れ落ちる。

218 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:28:32 ID:Tapcdl79X4
>>217
 視点は変わり双葉対エイレーン。
 双葉も又、焦りを覚えていた。
 肉体のスペックでは勝っているにも関わらず、どうにも攻めきれない。

「はやく、たおれて!」

「そりゃ無理ですよ双葉サーン。ペロペロさせてくれるなら良いですけどね」

 変態親父の様な口ぶりとは裏腹に、エイレーンの戦い方は至極冷静だ。
 ノラリクラリと避け続け、確実に当てられる場面でのみ攻めに転じる。

「、、、くらえ!」

「遅い!」

 正面からナイフで切りかかると見せかけてから、背面に仕込んでおいた二本目を投擲。双葉渾身の不意打ち。
 弾丸の如き速度で飛ぶ細身の刃はスルリと受け流され、エイレーンの頬を掠めるにとどまる。

『刃で刃を受け流した! 1mmズレれば致命的な荒技を平然とこなす!!』

「ふふん、どうデ、、、、っ!」

 見る人が見ればため息を漏らすほどに研ぎ澄まされた剣技はしかし、力によって押し込まれる。

「、、、強引じゃないデースか双葉さん」

 双葉が、ナイフを受け流した直後のスキを突いて体当たりをかまし、エイレーンを吹き飛ばした。

「ふふふ、、、、甘いよエイレーンちゃん」

(、、、、甘いとは言うものの、どうしたもんかなこれ)

219 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:29:31 ID:Tapcdl79X4
>>218
 双葉には二つの疑念が有った。

 一つ目はエイレーンの身体能力が異様に低いこと。
 持ち前の技量でしぶとく凌いでこそいるが、受けるダメージを完全に0に出来ている訳ではない。
 宝具を使っている以上、ヨメミと萌美がサーヴァントであるのは確実。その二人のボスであるエイレーンもほぼ間違いなくサーヴァントだろう。
 にも関わらず、アカリの強化が無いエイレーンの肉体スペックはサーヴァントとは思えない程に低い。

 そして二つ目はエイレーンの態度が不可解なこと。
 エイレーンの体には徐々にダメージが蓄積している。このままではジリ貧なのだから何かしらの手を打とうとするのが当たり前、もし打つ手が無いのならば多少の焦りを見せたりする筈。
 しかし、エイレーンが何か手を打つ素振りも、焦る様子すらも無い。

 何かが可笑しい、何かを見落としているのだ。

「いたっ、、、」

「お返しデスよ」

 突如として走った痛みに双葉は桃色の瞳を鋭く尖らせる。

 吹き飛ばされる瞬間、エイレーンはとっさにサーベルで切り付けていたのだ。

220 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:30:21 ID:Tapcdl79X4
>>219
「さて、そろそろ『十分』デースかね」

「なんて?」

 双葉が聞き返した瞬間、エイレーンの姿が消える。

「、、、、!」

 双葉の背後に現れる気配。
 振り返り様に防御を固めた瞬間、襲い掛かる衝撃。
 双葉は成すすべなく床に転がる。

「ぐぅっ、、、」

「ここからは私のターンですよ。双葉サーン」

 双葉の背後に回り攻撃をした人物、それはエイレーンだった。

『ど、どういう事だエイレーン選手!? 人が変わったような強さだぞ!?』

「、、、実は私、ちょっとだけウソをついてました。
アカリさんの『鞭で打った相手を強化する』スキル。あれウソデース」

「でも、、、じっさいに強化されて、、、、いたはず、、、、だよ」

「ええ、私の『痛みを感じるほど強くなる』スキルによって、ね。
鞭で打たれて痛みを感じれば強くなりますから」

 ヨロヨロと立ち上がる双葉の前でタネ明かしを始めるエイレーン。

「さすがにサーヴァント、、、、一筋縄じゃいかないね」

「サーヴァント? 、、、、、ああ、『宝具持ち』の事をあなた方はそう言うんデースね」

221 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/24 22:41:08 ID:Tapcdl79X4
お久しぶりです。
夏休みの宿題を片付けるので忙しく、投稿が遅れました。

さて、今回は前々から貼ってた伏線を一つ回収出来ました。
異能バトルでの能力偽装、、、、ずっっと書きたかったシチュエーションでした。

『鞭で打った相手を強化する』と言う、アカリちゃんのイメージと微妙にズレた能力だった事、一度しか能力が使用されていない事、そしてやたらと印象的な使い方をしていたのが伏線です。

つまり、準々決勝でエイレーンさんとアカリちゃんが即興SNショーをしていたのは、ウソの情報を印象付けつつ自身の欲を満たす為のパフォーマンスだった訳ですね。

222 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/25 07:53:58 ID:IT7hJz8Tjo
おっつおっつ、ブラフかけつつ欲満たしてて草

223 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/08/25 13:36:22 ID:MwGRTvl55T
>>222
一石二鳥と言う奴ですねww
因みに、エイレーンとアカリちゃんは何気に宝具やスキルを準決勝まで全部隠し通してる唯一のペアだったりします、、、

224 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:31:30 ID:9c5VDgsMnz
>>220
「、、、?」

「ある時期を境に現れ始めた、過去の記憶を持たない異能力者達の総称、『宝具持ち』。
殆どの『宝具持ち』は幾つかの異能力を持ち、その中でも最も強力なモノを皆『宝具』と自称する。
故に付いた名前が『宝具持ち』、、、、、双葉さんの言う通り、私もその一人デース」

「、、、、なるほど、ね」

(時間かせぎのために質問したら、結構きょうみ深い事実がでてきた)

 完全に出し抜かれた、その事実を認識した双葉が取った行動は時間稼ぎ。
 質問を投げかけ、エイレーンが答えている間に勝ち筋を探ろうと言う算段だった。

(ここは特異点、なんでもアリだっていう先入観があった)

(でもよくよく考えてみれば、なんでサーヴァントが現界してるんだろう)

(双葉達と同じく、特異点を元に戻すために『抑止力』が呼び出した? それだと記憶がないことに説明がつかない。記憶をけすメリットがないもん)

 勝ち筋を探るために稼いだ筈の時間は、突如与えられた情報の処理に浪費された。

 その浪費は、致命的な浪費。
 しかし浪費を代償に双葉は核心へと迫っていた。特異点の絡繰りと黒幕、その核心へと。

「では双葉サーン。そろそろ続きと行きましょうか」

「、、、、」

(なんで今まできづけなかったの?)

(ーーーーそもそもなんで今、『楔』をみつける見通しがたったの?
シロちゃんが来るのにあわせた様なタイミングで、、、、そういえば、シロちゃん達がこのタイミングにきたのはブイデアの事故があったからだ)

「双葉サーン?」

「、、、、、、、、」

(もし、これらに誰かの意図があるとするなら、つまり黒幕がいるとすれば、ソレは『双葉選手動かない! エイレーン選手の能力によるものか!?』

225 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:32:45 ID:9c5VDgsMnz
>>224
 司会の声が鼓膜を打ち、双葉を現実へと引き戻す。
 桃色の瞳をぐるりと回せば、周囲には心配そうにする観客とエイレーンがいた。

「ごめん、、、、ボーとしてた」

「全く、心配したんですからね」

「うん、、、、にしても、双葉がボーとしてる間に攻撃しちゃえばよかったのに」

「ハハ、そう言う事はしないって、さっきアカリさんと約束しちゃったんですよ」

「そっか、じゃあいくよ!」

 頭の中を戦闘に切り替え双葉は駆ける。
 目の前に居るのは強者、今度こそ一分の隙も許されない。

「負けませんよ!」

「こっちこそ!」

 ナイフとサーベル、二本の刃物がギィンッ!と音を立てて衝突し競り合う。

「いけっ!」

 互いの動きが止まった瞬間、双葉の足元からツタが伸びてエイレーンの顔面に襲い掛かる。
 双葉の『ナイフで切りつけた場所から植物を生やし操作する能力』による奇襲はエイレーンの表情を驚きに変えた。

「くっ! 面倒デー「シッ!」

「!?」

 エイレーンが咄嗟にツタを切り払った直後、双葉の蹴りがエイレーンの足を掠める。

「痛っ、、、、」

 掠めた蹴りがエイレーンの足に鋭い痛みを残す。双葉の靴先にナイフが仕込まれていたのだ。

「、、、成程、クツに仕込んだナイフで床を切りつけておき、そこから植物を生やしたんデースね」

「大正解、流石にりかいが早いね」

 切りつけてから発動可能になるまでタイムラグがあるものの、ソレを差し引いても双葉の能力は強力無比。
 生やす場所にタイミングも自由自在、植物をどうにかする手段を持たぬ相手ならば封殺出来る。それが双葉の強さ。

226 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:33:52 ID:9c5VDgsMnz
>>225
「、、、しこみは終わった、時もみちた。ここからは双葉の時間だよ」

『双葉選手の挑発だ! 私の辞書に『敗北』の二文字は無い!! そう言わんばかりだぜ!!』

 片手両足、双葉の持つ計三本の刃がギラリと光る。
 笑みを浮かべる瞳は勝利を見据えている、様に見えた。

「、、、、、」

 しかし双葉の内心では焦りと弱音が渦巻いている。それはエイレーンの闘技場という場に対する相性の良さによるものだ。

(刃物で切られれば血がへる、殴打されれば呼吸がじゃまされる、それがふつう。
それらの障害を補って余りあるほどの強化、それがエイレーンちゃんのスキルだね。たぶん。

でも、この闘技場はピノちゃんの宝具の力で本物の傷をおうことはない、痛みさえ我慢できるならどんなこうげきを受けても動きはにぶらない。
エイレーンちゃんにとって最高のフィールド、それがここ)

「エイレーンちゃんがこれ以上強化されるまえに植物で拘束する。それが双葉のかちすじ、、、、よし」

 そう双葉は小声で呟き、拳と共に己の弱音をそっと握り込む。

(エイレーン一家との交渉、、、、あの時みたいな無様はにどと御免だね)

 もう二度と無様を晒すものか。それが双葉の密かな覚悟だった。
 痛む体に喝を入れ双葉は吠える。

「ここ『スパークリングチャット』は双葉とピノちゃんの二人できずきあげた城であり誇りっ!! だから双葉はかつ!」

 双葉がバンッと両手を叩き合わせば闘技場の方々からツタが吹き出し、闘技場の一角を緑一色に染める。

「いいデースね! 戦いはこうじゃないと!!」

 双葉の猛りに獰猛な笑みで返答するのはエイレーン。
 今、エイレーンの心は燃え上っていた。己の計画にズレが生じているのにも関わらず。

227 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:35:03 ID:9c5VDgsMnz
>>226
(この闘技場こそ私の能力を最大限以上に生かせる場所。実態以上の力を見せびらかすことが出来る。故に、能力を晒すだけの価値があると判断した)

「ほら! ほら! ほらほら!」

 スコールの如く降り注ぐツタを&#25620;い潜り、切り裂き、エイレーンは双葉の元へと近づく。

 双葉は追い詰められる。

(無論、ここで勝たなければ意味はない)

「つかまえたっ!」

「甘い!」

 背後から生え、足に巻き付いた強靭なツタを強引に引きちぎり前に進む。

 双葉は更に追い詰められる。しかし折れない。 

(押しきれない。『切り札』の切り方を間違えましたか)

 ブラフに引っ掛かったと言う事実に動揺している間に押し切る。それがエイレーンの計画。
 単純を通り越して杜撰とも言える計画、しかしエイレーンはソレが最適であると判断していた。
 それは何故か、以前見た双葉が未熟だったからだ。

 エイレーン一家と双葉の交渉。あの時の双葉は失敗しそうになれば動揺を見せ、ばあちゃるが犠牲に成ろうとした時は躊躇していた。
 良く言えば裏表のない心優しい性格。友人としては最高、リーダーにだって適している。しかし、戦いには向いていない。

 故にエイレーンは複雑な計画で失敗のリスクを背負うよりも、効果は小さくとも単純な計画を確実に遂行する事を選んだ。これがピノや他の者が相手なら別の方法を選んでいただろう。
 双葉専用にあつらえた計画は、しかし上手く行かなかった。
 それは何故か、今の双葉が成長しているからだ。

228 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:39:04 ID:9c5VDgsMnz
>>227
(驚くべきは双葉さんの成長。以前会った時の双葉さんは未熟でした、、、、しかし今は違う。
双葉さんの絶対に相手を倒すという覚悟を感じる!)

「らああああああ!!」

 エイレーンが後3歩進めばサーベルの間合いに入る、そんな距離。互いの姿が良く見える程度には近い距離。双葉は覚悟を決め、裂帛の気合と共にナイフを床に突き刺す。
 突き刺した所から桃色の光が漏れ出し、漏れ出す程にナイフは色褪せる。漏れ出した光は双葉の喉へと吸い込まれてゆく。
 青々と茂っていたツタ共は悉く枯れ落ち、淡い緑の光と成り果て、地を這いずり、双葉の下に集う。
 双葉の足元より立ちあがりしは緑光。桃色の光は喉元から四方に別れて延び広がる。
 そうして出来上がるのは光で出来た花。茎は緑、花弁は桃色。高さ2.8mの幻想的な花が双葉を飲み込む。

(ここまで近づかれたら、拘束による勝ちは無理。もう全力をぶつけるしかない!)

「行けるところまで、行ってやるよおら! 『宝具真名解放』言の葉唄えば現は揺れる。幻言回れ『言想切断(フタバーニーヤ)』」

『双葉選手は奥の手を使うつもりだ! オーナーの奥の手お披露目か!?』

「ハハ、、、良い、良いデースねぇ」

229 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:39:13 ID:9c5VDgsMnz
>>228
 双葉の奥の手、内容次第ではエイレーンは負ける。その事実を認識した途端エイレーンの手は震え出す。ソレは恐れと猛りから来る震え。
 敗北のリスクが有る勝負、可能な限り避けるべき局面。しかしエイレーンは現状をどこか楽しんでしまっていた。
 己よりも頭の良い者、狡猾な者は腐るほどいる。しかし、己と張り合える程に強い者は殆どいない。しかし双葉は、今の双葉はエイレーンが本気を出すべき相手だった。

 己の軽挙によって恩人を失ったエイレーン。その失態を二度と繰り返すまいと誓った女。
 エイレーンにとってリスクとは恐怖の対象であり、事実彼女の理性は現状を恐れている。しかし笑みが止まらない。理性の泣き言を歓喜と戦意が真っ赤に塗りつぶしてゆくのだ。

230 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:50:03 ID:9c5VDgsMnz
今度はテストで投稿が遅れました
夏休み直後にテストあるとか流石にサディスティックが過ぎませんかね、、、、、、

逆境をきっかけに成長する双葉ちゃんと、徐々に素が漏れ出るエイレーンさんの回でした。
何気に二人共過去の失敗から学び、各々の成長を遂げています。


それはそうと、ヒゲドライバーさんとのコラボ配信凄い楽しみ

231 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 18:52:16 ID:9c5VDgsMnz
>>229 228の微訂正
 双葉の奥の手、その内容次第でエイレーンは負ける。その事実を認識した途端エイレーンの手は震え出す。ソレは恐れと猛りから来る震え。
 敗北のリスクが有る勝負、可能な限り避けるべき局面。しかしエイレーンは現状をどこか楽しんでしまっていた。
 己よりも頭の良い者、狡猾な者は腐るほどいる。だが、己と張り合える程に強い者は殆どいない。そして双葉は、今の双葉はエイレーンが本気を出すべき相手だった。

 己の軽挙によって恩人を失ったエイレーン。その失態を二度と繰り返すまいと誓った女。
 エイレーンにとってリスクとは恐怖の対象であり、事実彼女の理性は現状を恐れている。しかし笑みが止まらない。理性の泣き言を歓喜と戦意が真っ赤に塗りつぶしてゆくのだ。

232 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 20:47:44 ID:WicsM/DPBL
おっつおっつ、お疲れ様です

233 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/11 21:01:20 ID:9c5VDgsMnz
>>232
有難うございます、、、

5日に一度位のペースでの更新を目指して頑張ろうと思います

234 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:28:39 ID:.hSPSfAscd
>>231
 視点は移りアカリ対ピノ、暫し硬直していた戦いに変化が訪れ始めていた。

「ハァッ、、、、ハァッ、、、、」

「流石のピノちゃんもそろそろガス欠だねーうん。あんだけ動いてれば当然だけどさ」

 ピノの振るう槍をアカリは軽々避ける。息は切れ気味、技の冴えも落ちた。

 試合が始まってからピノはずっと攻め続けていた。言い換えれば、戦いが始まってから休むことなく槍を振るい続けてきた、ということにもなる。
 槍という武器は非常に重く長く、扱いが難しい。そしてピノの体格は女子基準でもかなり華奢。もし一瞬でも手を止めれば槍の慣性に体を持っていかれ、大きな隙を晒すことになるだろう。だからこそ止まれない、動き続けるしかない。長期戦には向いていないのだ。
 流水の如くとめどない優雅な槍技。しかしソレは、苦々しい妥協の上に成り立っているのだ。

 疲労の汗が止まらない。

「やはりこうなりますか、、、、なっ!?」

 額を垂れ落ちた汗がピノの目に入り、ほんの少し長めの瞬きをした次の瞬間。アカリは目の前にいた。

「油断したねピノちゃん」

「まずっ」

 ピノにアカリの魔手が近付きーーー

「なんてね」

『遂にアカリ選手の手が届い、、、、てないぞ!? ピノ選手の槍に阻まれたぜ!』

 ーーー阻まれた。
 アカリの手とピノの狭間、そこに穂先が割り込んだのだ。
 無防備に突き出されたアカリの右手を槍が傷つける。

「ぐっ!」

 この戦い初めてのダメージにアカリは動揺を隠せない。ブルーの瞳がせわしなく揺れる。

「さっきの瞬きはブラフだったんだね、、、、一本取られたよ」

「その通りですわ。相手が勝利を確信した時こそ最大のチャンス、きっちり狙わせて頂きました」

235 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:29:35 ID:.hSPSfAscd
>>234
 そう言い放ち、悪戯めいた笑みを浮かべるピノ。

 ピノは長期戦向きではない。だからアカリを倒せない事に最初は焦っていた。しかしそこで終わらないのがピノと言うサーヴァント。
 直ぐに勝敗を付ける事は不可能と見切りをつけ、今度は機を待った。偶然の隙が己に生まれ、そこにアカリが飛びつくまで待ったのだ。

 明るい見た目とは裏腹にアカリの頭はよく切れる。扱いの難しい鞭を使いこなし、触れるだけで発動する(と思われる)強力なスキルを持ちつつも驕る事は無い。わざと作った隙なぞ秒で見抜くだろう。
 故にピノは賭けた、アカリが本物の隙を前に油断してくれるかに。ピノは勝利した、一瞬のチャンスを物にした。そして、命懸けの賭けには大きなリターンがあるのがお約束だ。

「でもピノちゃん、この程度じゃまだアカリの方が有利、、、だ、、、、」

 お返しに鞭を振るおうとしたアカリの体から力が抜けてゆく。

『こ、これはどういうことだ!? アカリ選手が突然ふらつきだしたぞ!』

「なん、、、で?」

「わたくしの槍は一定量血を浴びると、浴びた血の持ち主から精気を奪うのですわ。そして精気を糧にする事で短時間の間威力を増すんですの。
まあ、処女と童貞の精気しか吸わない偏食家の槍なんで使い勝手は良くないですけどね」

 ピノの持つ槍『無銘』。カルロ家の先祖が吸血鬼の長である『死徒27祖』の一人を打倒した際、その記念にと27祖の死体を加工して作らせた槍である。
 吸血鬼とは言え、人型の生き物を素材に使った武器と言うのは少々外聞が悪い。故にこの由来は隠され、『無銘』と言う質素な銘と共に代々当主の証として伝えられる事になった。

「そう、なのか」

 アカリが槍に目線をやれば、穂先についた返り血は蒼く染まっている。準々決勝で見せた光景と確かに同じだ。

236 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:30:39 ID:.hSPSfAscd
>>235
「勘違い、、、、してたよ。てっきり、自傷をトリガーに発動するもんかと」

「あれはあくまで裏技。デメリットを背負ってでも威力が欲しい時の切り札ですわ」

 全身から力と言う力が抜き去られる。立つことすらままならない。

『アカリ選手膝をついた! これはつまり、オーナー・ピノの勝利という事!!』

 歓声轟く闘技場の下、ピノは次撃を繰り出そうとしている。このまま行けばあと数秒でアカリに届くだろう。

「、、、、そっか、残念」

 動揺が過ぎ去ったアカリの胸中には、幾つもの感情が渦巻いていた。
 己が出し抜かれた事への悔しさ。相手への称賛。そして『己が勝利してしまう』事に対する、ある種のやるせなさ。その他諸々。

「では御機嫌よ「矢刺せ『愛天使(キューピッド)』」

 刺さる直前で槍が止まる。アカリが盾や魔術で防御したわけでは無い、ピノが静止したのだ。
 アカリの宝具、その効果によって止まった。

『、、、、え?』

「この宝具、ちょっと代償がヤバ目だから、、、、使いたく無かったんだけどね。
 アカリをここまで追い詰めた礼に、スキルと宝具を教えてあげる。

 アカリのスキルは『蠱惑の手(チャームハンド)』。手で触れた相手を魅了して動きを止めるんだ。同性の人や、種族が違う相手には若干通りが悪いのが欠点かな。
 そして宝具名は『愛天使』。目線の先に居る敵を強制的に魅了するんだよ。種族問わず誰にでも効くのが特徴。欠点はね、、、、秘密」

 アカリがゆっくりと立ち上がり、槍を奪い取り、止めを刺す。

「止めは刺させて貰うよ。ほっといたら、思わぬ方法で逆転されそうだし」

 ピノが自らの槍に貫かれてから地に伏すまでの刹那、薄紫色のセミロングだけがフワリ虚ろに揺れていた。

237 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:31:50 ID:.hSPSfAscd
>>236
 アカリ対ピノの決着が着くのと同じ頃、双葉とエイレーンの戦いも終わりが近づいていた。

「やー、まけちゃたかな。やっぱ力不足だったか」

「いえいえ双葉サーン。『言想切断』、放った言葉を現実にする宝具。実現できる内容に制限はあるものの、ソレを差し引いてもかなり強力でしたよ。
 『はじけろ』と言えば空間が破裂し、『もえろ』と言えば周囲が燃える。あらゆる攻撃を可能にする万能宝具、、、、でも、威力に少々難があったのが致命的でしたネ。

 それと、発動中は一歩も動けなくなる上、スキルも使えなくなるのも痛かったデスね。宝具の強さを考えれば妥当な代償デースけど」

 倒れ伏す双葉に、エイレーンがサーベルを突き付けていた。
 周囲のあちこちは焦げ、抉れ、断裂し、凍り付き、ここで激闘が有ったことを証明している。

「痛みを感じるほどに強くなる私と、相性が悪すぎましたね」

「ほんとそれ。でもまあ、収穫もあったしべつに良いかな」

「収穫?」

「そ、収穫。エイレーンちゃんの強化さ、上限あるでしょ。
 双葉と戦ってる時、途中から動きに変化がなくなってたもん。
 それまではダメージをうけるほど、はやくなってたのに」

「ありゃま、これは鋭い」

 最早立ち上がることすら出来ない双葉。字面にすれば無様なその姿は、どういう訳か尊厳に満ちていた。
 桃色の目に宿る闘志は衰えの欠片も見せず、遠くの勝利を見据えている。

 きっとそれは、双葉がシロとスズの勝利を確信しているからだろう。

238 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:32:50 ID:.hSPSfAscd
>>237
「エイレーンちゃん最大の武器はスキルでも宝具でもなく、情報。
 、、、、双葉がアカリちゃんに、ピノちゃんがエイレーンちゃんに対応していればまだ勝ち目はあった。
 でも、そうはならなかった。それは何故か、エイレーン達が情報をかくし通していたから。双葉たちは間違えたんじゃない、間違えさせられたの。

 だから双葉は全力をぶつけることで未知のベールをはいだ。エイレーンちゃんを守り、双葉達の視界をおおうベールを。
 双葉がはいだのは二枚、スキルの正体と欠点。のこりはあと何枚かな?」

 そこまで言い切ると、双葉はニコリと素敵な笑みを浮かべる。
 はて何をする気か、とエイレーンが身構えた次の瞬間。

「こうさん」

 双葉は降参を宣言した。

「、、、、え?」

『なんと!? 双葉選手まさかの降参!! この時点でアカリ・エイレーンペアの勝利となります!』
「マジか」「まあ、潔くはある」「ナイスファイト!」

 驚くエイレーンを他所に双葉は悠々と立ち上がり、ピノを優しく抱き上げて闘技場を後にする。

「さようなら。次の決勝戦はオーナー席からみさせて貰うよ」

「、、、、、、え、ええ。さようなら」

 我に返ったエイレーンが返事をした時双葉の姿は既に無く、ピノを落とさないよう慎重に歩を進める背中が遠くに見えているだけだった。

『さあ観客の皆様! 良き試合を見せた選手たちに喝采を!!』

「、、、ちょいとばかし、成長しすぎじゃないデースかね」

 余りにも堂々とした振る舞いを魅せる双葉にある種の敗北感を感じながらも、エイレーンは勝者としてアカリと共に闘技場を去る。

239 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:36:49 ID:.hSPSfAscd
>>238
「ん、、、うん? ここは?」

「医務室だよピノちゃん」

 真っ白なベットが立ち並ぶここは医務室。敗北した選手が送られる場所。
 ピノと双葉の二人は医務室にいた。

「ああ、やっぱり負けていましたか、、、、、おや? 誰か来ますよ」

 医務室のドアがコンコンコンと三回ノックされる。

「入っても良いですよ」

 ピノが返事をすれば、少し間を置いてからドアが横にスライドして客人の姿を露わにする。エイレーンだ。

「エイレーンちゃんじゃないか、どうしたの?」

「ええ、実は、一つ提案したい事があるんデースよ」

 そう、歯切れ悪く言うとエイレーンは一瞬言葉を切り、半口分の息を肺に補給して続きを話す。

「もしあなた方が良ければ、私達は棄権しようと思います」

「、、、、、理由はなんですか?」

「私達は示威行為を目的としてここに来ました。そしてその目的はもう達成されたんですよ。
 実力派揃いで知られる岩本カンパニーの精鋭、馬越健太郎。新進気鋭のギャングスタ、ケリンと鳴神裁。スパークリングチャットの名物、戦うオーナー、ピノ・双葉。これら全てをエイレーン一家は下した。
 『スクリーンガンナー』『You-Know-that』『バレットバンド』、、、街の外で名を轟かしたアウトロー、計25団体を傘下に収めるニーコタウンのボス、神楽すずは正直惜しいですが、まあ今の戦果で十分です。

 それにほら、あなた方は優勝しないと金が足りないんデースよね? 互いに損の無い話しだと思いますが」

240 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:38:27 ID:.hSPSfAscd
>>239
「優勝云々の話、一応は機密なんですけどね。ギャング共に融資の邪魔をされた時といい、今回といい、情報を漏らすおバカさんが多くて嫌になりますね。」

「酒と女と金、後は多少の知名度があれば大抵の情報は手に入りますからね。良ければ今度、ねっとりレクチャーしてあげましょうか?」

 エイレーンの提案を聞いたピノは、薄紫色の髪をクルクルといじりながら考え込む。

 確かに、エイレーンの言う通り優勝賞金1000万を回収しなければ『楽園』に行くことは出来ない。その条件を確実にクリアできる、まさに願ってもない申し出。だがーーー

「すみません。その申し出を断らさせて頂きますわ」

 ピノは断った。

「どうしてデースか?」

「実の所、今大会の目的は一つじゃないんですの。強者の戦いを観戦し、そして全力でぶつかる。そうすることで皆様の成長を促し、来るべきカカラとの闘いで負けるリスクを減らす。それが二つ目の目的。
 だからエイレーンさん、棄権されちゃうとそれはそれで困るんですよね」

「それにね、ここは戦いをみせて楽しませるばしょ。取引なんてしたら、観客や他の選手、それにパプリカとピーマンにだって申しわけが立たないよ」

「、、、、ま、そういう事ならしょうがないですね」

 そう言いながらエイレーンは赤い髪をポリポリと掻き、思わず苦笑いを浮かべてしまう。 

241 名前:幕間『舞台裏の小劇場』[age] 投稿日:2021/09/23 18:39:16 ID:.hSPSfAscd
>>240
 シロとスズが優勝し、もしカカラの根絶に成功したならばそのメリットは莫大。防壁外の開拓、交易の容易化、、、、、時間をかければ、50年以上の歳月で荒廃してしまった世界を元に戻すことだって可能だろう。

 それにピノ達の動向さえ見ておけば、根絶の始まる時期を予想できるものありがたい。カカラ共が居なくなれば、良くも悪くもこの世界は大きな変革期を迎えるだろう。そして、迎えるタイミングさえ解れば変革はチャンスへと姿を変えるのだ。優勝を捨てるメリットは十二分にある。

 故にエイレーンは、更なる譲歩をしてでも提案を通す気でいた。だがしかし、リスクを嫌い、義理人情を割と気にするエイレーンは『リスクを減らす』や『申しわけ』といった言葉に結構弱く、ソレを言われてしまった以上引き下がらざるを得なかったのだ。


 それに、エイレーンに戦う理由は無いものの、『戦いたい』理由はいくつもあった。

「そう、そうですか。それは、楽しみですね」

「ええ、楽しみにしてくださいね」

 軽く会釈をし、エイレーンは医務室を出る。

 扉を閉じればそこは廊下、静かな廊下。カツコツコツカツ、薄灰色の床が靴音鳴らす。

「、、、本当に楽しみですよ」

 静かな廊下、誰も居ないその場所で、そっと噛みしめる様に一人呟く。
 萌美とヨメミ、信頼する部下を負かした強敵。勝っても負けても問題の無い戦い。あらゆる要素がエイレーンを奮わせて行くのだ。

「、、、、フゥ」

 赤い瞳をピタリ閉じ、沸き立つ心を落ち着かせる。大きく深呼吸し、火照った体を冷ます。笑みは浮かべない、闘志も今は要らない。
 今はただ体を休ませ、心を休ませ、感覚を研ぎ澄ます。それだけでいい。

242 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 18:45:16 ID:.hSPSfAscd
やっと準決勝が終わりです、多分今までで最長の戦いだったと思います。

ただの大会かと思いきや、意外と色んな思惑が動いていました。
まあ、ぶっちゃけ金稼ぎの為だけに大会開く意義は薄いですしおすし。

各キャラのステータスは決勝戦が終わってから纏めて紹介するつもりです。

243 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 19:08:54 ID:.hSPSfAscd
細々とした裏設定

『スクリーンガンナー』
元ネタ:ニコニコのコメント機能(『画面』にコメントを『撃ち込む』ことから)

 比較的最近になって生まれたグループ。
 技術の発展で職を失った人たちが街の外に活路を求めたのが始まり。
 主な収入源は『書類偽造の代行』『身分証明書の偽造』等々


『You-Know-that』
元ネタ:例のアレ

 カカラを崇拝するカルト集団。歴史は結構古い。
 収入源は無し。基本自給自足。
 ニーコタウンのカカラを用いた堆肥や燃料の知識は、殆どここ由来だったりする。


『バレットバンド』
元ネタ:東方(弾幕+音楽=バレットミュージック→バレットバンド)

 ドストレートなアウトロー集団。同業者の中ではまあまあ長続きしている方だった。
 主な収入源は略奪、パイプガンの製造(取り敢えず弾は撃てる粗製銃の事)

244 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/23 21:26:24 ID:XyZMD4A.9T
おっつおっつ、決勝が楽しみじゃ。バレットバンドがアウトローなのは解釈一致(原作を見ながら)

245 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/09/24 12:36:03 ID:bXqHp0RNBA
>>244
ほぼ毎シーズンヤバい異変をしでかしてますからね、幻想郷の住人達

決勝戦は気合い入れて書くつもりです! 決勝が終わったら、幾つか日常回を挟んだ後、一章の終盤に突入する予定ですね

246 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:00:25 ID:9s2I0eJRR7
>>241
『さあさあ始まる決勝戦! 泣いても笑ってもこれが最後!!』

『決勝戦に出場する選手のご紹介! 白髪蒼目、彗星の如く現れた謎の美少女、シロ選手! ニーコタウンの大ボス、噂に恥じぬ武勇、神楽すず選手!
 エイレーン一家の長、知略も武力も一級品、エイレーン選手! エイレーン一家のナンバー2、綺麗な花には猛毒あり、アカリ選手! 以上四名だぜ!!』
「応援してるぜ白髪の嬢ちゃん!」「やっちまえボス!!」「頑張りなよエイレーン!」「負けんなよぉ! 金髪の姉ちゃん!」

「決勝戦か、緊張するねぇ」

「ですねシロさん」

 司会の煽り文句が闘技場の中に朗々と響き渡る。観客席を見ればそこに空席は一つもない。決勝を待ち望む観客達が一片の隙間もなくズラリと並んでいるのだ。
 シロとスズの二人が堂々とした足取りで会場に入った瞬間、観客のボルテージは一際上がる。

「勝ちますよアカリさん」

「勿論」

 対するはエイレーン一家の二人。
 二人の目はただ澄みきり、迷いを一欠片も感じさせない。


『試合、、、、開始!』

 司会の声と共に選手は動き出す。

247 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:00:49 ID:9s2I0eJRR7
>>246
「、、、、、」

「、、、、、、」

 先程の準決勝とは打って変わり、開始した瞬間動き出す様な事は無い。
 じりじり、じりじりと互いの間合いを図りながら近づいてゆく。


 まず間合いに入ったのはアカリ、弓や銃を除けば鞭のリーチは頭一つ抜けているのだから当然と言える。しかしアカリは動かない。エイレーンの補助に徹するつもりなのだろう。

「、、、、行きます!」

『すず選手が仕掛けた! 短期決戦狙いか!?』

 最初に動いたのはスズ。釘バットを振りかぶると、緑色の魔力を伴いながら凄まじいスピードでエイレーンに肉薄する。
 肉体の各部から魔力を噴射し、動きを補助する事で身体能力を底上げするスキル、それが魔力放出。

「ぶっ潰す!」

 真上から真下へ、小細工無しの振り下ろし。まともに当たれば必殺。そんな一撃がエイレーンに襲い掛かりーー

「潰されるのは御免デース」

「忘れて貰っちゃ困るね、と」

「やばっ!?」

 邪魔された。
 振り上げたバット、その柄頭をアカリの鞭が正確に打ち据えたのだ。そのせいでバットは滑り、軌道はブレる。
 一応当たりはしたが痛打にならず、エイレーンの能力を発動するのに丁度良い程度まで威力が減衰させられた。

248 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:01:22 ID:9s2I0eJRR7
>>247
「んー。刺激的で気持ち良い、素晴らしい痛みですよ」

「不味っ」

 額でバットを受け止めたエイレーンは笑顔でそう言った。浮かべた笑顔はやや恍惚気味で、顔を滴り落ちる血の赤も相まってエイレーンの不審者感を強く演出している。
 しかし、胡乱気な様相に反してその行動は的確。エイレーンはサーベルを逆手に持つと、スズの鳩尾に柄を叩きこんだのだ。スキルの条件を満たし身体能力が上がった状態で。

「カハッ、、、、!」

『急所に一撃! これはえげつないぜ!』
「ヒェッ、、、、」「痛みが想像しやすいのが生々しいな」「羨ましいぞ!」

 鳩尾を打たれたスズの呼吸は一時止まる。肺の中全てを絞り出されたような苦痛。酸欠から来る混乱。体はくの字に曲がり、まともに立つことなど不可能。握り締めていたバットがカランと音を立てて零れ落ちる。
 ぐらつく緑の瞳で何とかエイレーンを捉え、必死に拳を振るうも防がれてしまう。

「急所に打撃を受けても動けるとは流石デース。でも「やらせないよ」

 すぐさま止めを刺そうとしたエイレーンを妨害したのはシロ。
 スズの背後から飛び出したかと思えば、突然顔面にナイフを投げつけて視線を誘導し、シロ本人は微妙にタイミングをずらして突貫する。アカリが鞭を振るう隙など与えない。
 投擲物と疑似的な連携を取る厄介な戦法。しかしーーー

「なるほど、投てき武器を用いた視線誘導。タイミングも的確ですし、それを可能にするシロさんのスピードと技量も驚嘆に値しマース」

 通じない。
 蹴り上げたスズのバットでナイフを受け止め、シロに対してはサーベルによる切り払いで対処される。

249 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:02:19 ID:9s2I0eJRR7
>>248
「ですが、似たような手を準々決勝で見せたのが不味かったですね。もしこれが初見なら、正直痛手は免れませんでしたよ」

「それで良いんだよ、それで。シロの狙いはすずちゃんを助けることだけだからねぇ!」

 スズとエイレーンの間に体をねじ込む。振り下ろされたサーベルがシロを浅く切り裂く、がその程度気にも留めない。
 シロは右の手に持ったナイフでエイレーンを牽制しつつ、左の手でスズを押し退けて後ろに下がらせた。

「大丈夫すずちゃん?」

「有難う、、、ございます、、、シロさん。もう大丈夫です、、、、私、、、もう戦えます」

「強がりなのが見え見えだよ、ちゃんと息が整うまでは駄目」

 シロは演技臭い笑みを口元に浮かべてそう言い放ちつつ、思考を始める。

 イマイチ決定打に欠ける為シロはエイレーンと相性が悪い。スキルは発動しておらず、シロの宝具『唸れよ砕け私の拳(ぱいーん砲)』は予備動作が大きい。もう一つの宝具も今は効果薄。しかし、それでも持ちこたえることぐらいは出来る。
 無論、持ちこたえたところで勝機が無ければ、ソレはただの悪あがき。では、果たして勝機はあるのか?ある。神楽すずだ。すずちゃんの攻撃がまともに当たればエイレーンもアカリも一撃で倒せる。どんな手を用意してようと、使われる前に倒せば良いのだ。準々決勝、準決勝を見る限りではダメージを反射する様なスキルを持っているとも考え辛い。
 シロはそこまで考えたところで一旦思考に区切りをつけ、目の前の戦いへ意識を集中させる。

(宝具とかの不確定要素はあるけど、今それを考えたところで無意味。
 兎にも角にも時間を稼がないとね、、、、後40秒、いや30秒も稼げば、すずちゃんなら十分回復するかな?)

250 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:02:54 ID:9s2I0eJRR7
>>249
 エイレーンに対して半身になり、右手でナイフを構える。構える手はヘソの高さ、刃先は相手の首元へ。重心の位置を体の芯に合わせ、スムーズに動けるようにする。小指、薬指でナイフをしっかり握り、他の指は軽く添えるだけ。ごくありふれた基本の構え。様々な人間に使われてきた、即応性に優れる構え。

(30秒、、、、そこまでは持たせて見せる!)

 エイレーンを見据え、シロは時間稼ぎ(戦い)を始めた。

「シッ!」

 1秒目、鋭く息を吐いてナイフを突き出す。

「軽い!」

 3秒目、シロの一撃は叩き落される。
 5秒目、鞭の援護射撃。
 6秒目、肩に痛打。
 8秒目、エイレーンからの斬撃。

「、、、、っ!」

 10秒目、強引に受け流す。
 11秒目、蹴りで反撃を試み、アカリの鞭に邪魔される。

「二対一で此処まで捌けるのは流石デース」

「でもそろそろ限界じゃないかな。アカリはそう思うよ」

 15秒目、鞭とサーベルの同時攻撃が襲来。
 16秒目、ナイフが弾き飛ばされる。

「はぁっ、、、、はぁっ、、、、、!」

 17秒目、もうこれしか打つ手が無い。

「、、、、、『真名解放』
 芸術をもてあの灰色の労働を燃やせ
 ここには我ら不断の潔く愉しい創造がある
 皆人よ 来って我らに交じれ 世界よ 他意なき我らを受け入れよーーーー」

『シロ選手は二つ目の宝具を使うようだぜ! 逆転狙いか!?』
「正直厳しいな」「内容にもよるが、さて」「、、、、、ん? 待てよ」

 20秒目、最後の足掻きにと宝具を発動ーーーー

「なっ、、、」

「スミマセン、シロさん。遅くなっちゃいました」

251 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:03:24 ID:9s2I0eJRR7
>>250
 ーーーする必要はなくなった。
 良く通る声、真っすぐで力強い声がシロの鼓膜を震わせる。声のする方を見れば、そこにはやはり透き通るような緑目の美少女がいた。眼鏡の似合う、清楚で豪快な女。そう、神楽すずが復活したのだ。
 痛みは既になく、戦意も揚々。笑顔と怒り顔を足した様な表情は『やられた分はやり返してやる』とでも言わんばかり。

「いやいや、想定よりも大分早いよ」

「そう言ってもらえると、助かります!」

 スズは復活するや否やバットを拾い上げ、強烈豪快なフルスイングを放つ。エイレーン一家の二人も、まさかこれほどに早くスズが復帰してくるとは思わなかったのだろう。シロにばかり注意を払っていたせいで、モロに風圧を受けて吹き飛ばされてしまう。

「くっ!」

『神楽すず復活っ!! 反撃の狼煙に成り得るか!?』

 二人が吹き飛ばされた隙にシロはナイフを回収する。
 スズは復活し、互いの距離も開いた。これで仕切り直し、ここからが本番だ。

252 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:08:07 ID:9s2I0eJRR7
お久しぶりです。展開に悩んで若干スランプってました。
仕方ないのでスランプがてら後々登場させるモブキャラの設定を組んでました。

253 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/13 23:19:49 ID:9s2I0eJRR7
細々とした設定集

カカラ
特異点Yに蔓延る怪物、左胸のコアが弱点。一般人でも武装すればギリ倒せる位の強さ。
一つの母体から産まれるため遺伝子的には全て同じ。共食いして強力な個体に成る事がある。
 
■■の有り様を人為的に歪めて生み出された産物。祝福と共に産まれた怪物。人類の罪であり希望。

254 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/14 07:50:42 ID:KmN94TxnFw
おっつおっつ、自分のペースで大丈夫よ。後羨ましがってるモブ、死ぬぞ。

255 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/14 16:31:20 ID:lRshBsBn60
>>254
ありがとうございます。

確かに死にますね、、、、、人間とサーヴァントの壁は厚いですから。
セバスやピーマン(ピーマンとパプリカは一応人間設定、正直Vと言うよりかはマスコットの亜種なので)等々、その壁をぶち抜いてる人たちがいますが、、、、アレは、超人の域に片足突っ込んでるお方達なので例外です

256 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:22:42 ID:0RGjI3UHBL
>>251
「本気で叩き込んだんデースけどね。ここまでアッサリ復帰されると凹みマースよ」

「攻撃が当たる瞬間、魔力の放射で攻撃を相殺したんです。それでも大分喰らっちゃいましたけど」

 スズの全身より立ち昇るは魔力、ゴウゴウと噴き出て渦巻くそれらはさながら豪風。

 ブイデア所属の英霊、神楽すず。実のところ彼女はなんら特別なスキルを持っていないのだ。『魔力放出』『カリスマ』と言ったありきたりなスキルに、火傷や呪いへの耐性をもたらすスキル『普通』。いずれのスキルも他の英霊と比べればどうしても見劣りする。
 しかし弱いかと言われれればソレは否、何故ならばスズにはとびっきり特別な宝具があるからだ。

「BT君、魔力のバックアップをお願いします」

『要請を受諾。動力炉のエネルギーを魔力に変換、魔力のコネクションを補強、バックアップ開始』

 スズが小声で呟けば機械的な音声が答えを返し、数秒の後にはスズの体に魔力が流れ込み始める。

 そう、これこそがスズの宝具『人機の絆』。『BT』と呼ばれる、自立AIを搭載した巨大兵器を使役する事ができるのだ。魔力のバックアップを受ける、スズが直接乗り込んで戦う、遠方から支援砲撃を行って貰う等々、様々な使用方法を持つ宝具。
 今は大会のルール『銃火器の使用禁止』によって魔力のバックアップを受けるぐらいしか出来ない、がそれでも十二分に強力と言えよう。

「今度こそぶっ潰す!」

 裂帛の気合いと共に突撃するスズ。

「同じ事をやっても、同じ結果にしか、、、ぐっ!?」

 迎え撃とうとしたエイレーンの数歩手前、スズは突然右足を床に叩き込む。次の瞬間、闘技場の床が破裂する。

257 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:24:04 ID:0RGjI3UHBL
>>256
『床が破裂したぞ!?』

「、、、っ!」

 破裂した床は礫となってエイレーンに襲い掛かる、完全に想定外の攻撃にさしものエイレーンも対処に精一杯。

「決勝が始まって最初に突撃した時、床に魔力を叩き込んで脆くしといたんですよ。
 ホントは最初の一回目でやるつもりだったんですけど、想定以上に造りがしっかりしてて無理だったんですよね、ハハ」

「ナイスだよすずちゃん!」

 不意をつかれたエイレーン、その隙を逃さぬのはシロ。

「これで決める!」

 うろたえるエイレーンを飛び越し狙うはアカリの首。
 決勝戦での逆転劇。沸き立つ声援がシロのスキル『応援を力に変える能力』を発動させる。
 心身上々、闘志揚々。しかし相手はアカリ、魅了の力を使いこなす手練。万全のアカリならばこれしきの窮地は軽々凌ぐだろう、そう『万全』ならば。

「、、、くっ!」

「やっぱり! 今のアカリちゃんは『近接戦闘がほぼ出来ない』、そうだよねぇ!」

『攻める! 攻め立てているぜシロ選手!』

 シロの振るったナイフに対し、アカリは大げさな回避を余儀なくされる。それは何故か、宝具の代償で片目が見えず、遠近感覚が消失しているからだ。

「『触れただけで魅了出来る』のに『わざわざ鞭を使う』、ギリギリまで使い渋ってた宝具を使ったのになんの変化もない『様に見える』、ここの違和感がシロ的には凄いんだよねぇ。
 ピノちゃんの猛攻を凌いでたのを見るに、接近戦が不得手だとも思えない」

 積み上げた推論を披露しながらも、シロの追撃に淀みは無い。徐々に切り刻まれてゆくアカリ、端正な顔に大粒の汗が浮かぶ。

258 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:24:39 ID:0RGjI3UHBL
>>257
「アカリさん! 今助けに「行かせませんよ」

 礫を凌ぎ、アカリを助けにいかんとするエイレーンを阻むはスズ。

「おらぁ!」

「クッ!」

 スズの一撃、その余波がエイレーンの赤毛をブチリと数本持っていく。
 今すぐにでもアカリを助けに行きたい、しかし目の前のスズを無視できない。正に板挟み、紅がかったエイレーンの瞳が苦し気に窄まる。


 そんなエイレーンを他所に、シロとアカリの戦いは進む。

「、、、だからシロは『宝具の代償が接近戦を大きく阻害する物であり、それを誤魔化す為に鞭を使用している』と仮説を立ててみた。どう、合ってる?」

「、、、、」

 大きく後ろに飛び、なんとか窮地を脱するアカリ。しかしもう後ろは壁、後がない。
 必死に頭を回し勝機を探す。

「(シロちゃんの発言が多い、ブラフを警戒して私の反応を見てるのかな? チャンスかも)正解、だよシロちゃん。私の宝具『愛天使』は『美』と言う概念そのものを瞳から射出するモノ。
 放たれた『美』は、視線上に捉えた存在を書き換え、魅了する。解りやすく言うと『アカリを頂点にした美の価値観を相手に押し付けて、絶対に魅了する魔眼』。
 まあハッキリ言ってーーー人間が使うには過ぎた宝具でさ、そんなの使ったらどうなると思う?」

 僅かながらも勝機は見えた、後は実践するだけだ。下手に感情を見せてはいけない、バレてはいけない。迫りくるシロを見据え、心を決める。

259 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:25:28 ID:0RGjI3UHBL
>>258
「反動が来る、のかな?」

「その通り、反動で目が一つ潰れるんだ。数日で戻るとはいえ、そう簡単には使えない、、、と言うとでも!? 矢刺せ『愛天使(キューピット)』!!」

 会話で時間を稼ぎ、宝具の重いデメリットを提示し、まさか使わないだろうと思わせてからの即時使用。これが決まらなければ終わりーーーー

「来ると思った」

 ーーー決まらなかった。
 シロがアカリの眼前に突き出したのはナイフ、顔が写る程に磨かれたソレが魔眼を跳ね返したのだ。
 石化の魔眼を持つメデューサは鏡の如く磨かれた盾を用いて討伐された。魔眼に対しての鏡は、定番の対象法と言える。

「なん、で?」

 宝具を跳ね返されたアカリはもう動けない。自分の宝具で有るが故に多少の耐性があり、喋ることは出来るがそれだけ。仮に動けたとして宝具の反動で何も見えないのだから、どうしようも無くはあるが。

「そりゃ解るよ、アカリちゃんの目に諦めの色がなかったもの。キラキラでギラギラな、綺麗な目をしてた」

「なる、ほど。後は、頼んだよ、エイレーン。私は、ここでギブアップ」

 何も見えなくなった蒼い瞳を閉じ、顔には快活な笑みを浮かべる。そして眠るように、ゆっくりと床へ倒れ込む。

260 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:26:11 ID:0RGjI3UHBL
>>259
『アカリ選手、ここでリタイア! エイレーン一家大ピンチ!!』

「、、、アカリさんがやられましたか。困りましたね」

「降参しますかエイレーンさん? 2対1じゃ勝ち目は薄いですよ」

 スズの問いかけに対し、エイレーンはかぶりを振って否定する。

 アカリが窮地に立たされていた時は焦燥感を露わにしていたエイレーン、しかし今は落ち着いている。勿論、先ほどまでの態度が演技だった訳ではない、切り替えただけだ。
 最も信頼していた部下であるアカリは倒された。シロもスズも相応に消耗してはいるものの、戦えない程では無い。予測しうる限りで最悪の事態ーーーしかし想定内ではある。情報収集、組織の統制、交渉、当たり前の事を当たり前にこなしてこそのリーダー。そして、『当たり前』の中には『最悪の事態を想定し備える事』も含まれている。

「イエイエ、お気になさらず。見せる予定の無かった奥の手を見なきゃいけなくなって困ったなと、そう思っただけデース」

 そう言うと、エイレーンは大きく息を吸い込んで全身に力を入れる。

「不味い!」

「え?」

 ほぼ無限の魔力に圧倒的なパワー、スズは強者だ。故に危機察知能力が低い、そんなもの無くても大抵どうにかなるからだ。
 対して、シロは強者とは言い難い。発動条件の厳しいスキルに少々地味な宝具、しかしそれ故に危機察知能力は高水準。

「、、、、くっ!」

261 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:26:58 ID:0RGjI3UHBL
>>260
 しかし間に合わない。シロとエイレーン、二人の間を阻むようにアカリが倒れ込んでいたからだ。
 敗者の事など気にせずとっとと飛び越えてしまえば、エイレーンが何かする前にナイフで突き刺してしまえたかもしれない。しかしそんな事をすればアカリに砂埃が掛かる、そもそも人の上を跨ぐなど無礼千万。
 殺し合いの場ならともかくここは試合場、やや甘い所の有るシロが躊躇してしまうのはいささか仕方のない事であった。

「『真名解放』同胞を守るためならば
 畜生となりて汚泥を這いずり
 餓鬼となりて汚泥を喰らい
 亡者となりて万象の責め苦を受け
 修羅となりて万物を切り伏せよう
 『六道輪廻荒行道(りくどうりんねこうぎょうどう)』」

 エイレーンの宝具が発動する。肌はひび割れ、背は曲がり、肉は焦げて炭になり、全身から血が噴き出す。

「これが私の宝具、デース。でもまだ、終わりじゃないですよ」

「いいえ、終わりです!」

 ワンテンポ遅れて危険性を察知したスズがバットを振り下ろしーーーー

「ガハッ、、、、!」

「だから、まだ終わりじゃないですよって」

 吹き飛ばされた。
 エイレーンの手から衝撃波の様な物が放射されたのだ。

「一体、何を、、、」

「私の宝具は『スキル効果の増幅』、代償は見ての通り『継続的な自傷』デース。
 正直代償に見合わない効果ですよ。だから活かせるようにしたんです、肉体を改造して」

262 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:27:09 ID:0RGjI3UHBL
>>261

 エイレーンの左手から伸びる無機質な管。右手に持つ古風なサーベルやボロボロの肉体も相まって異様な雰囲気を放っている。

「改造?」

「エエ、改造です。セバスさんとかと同じような。でも、サーヴァントは体の構造が常人と違うので苦労したんですよ。
 宝具やスキルの動力源である魔力を使用する事でどうにかしたんデース。
 ま、効率が悪すぎて宝具で強化している時しか使えないんですけどね」

『これが、この姿こそが本当の本気だと言うのか!? あらゆる手を使い、ひたすらに強さを求めたその姿! もはやこれは剣、ただ一振りの剣がそこに在ります!!』
「すげえ、、、」「あの改造、ちょっと気になるネ」「シロちゃん大丈夫っすかね?」

「なんで、そうまでして強くなろうと、、、、」

「昔、色々あって恩人を失いましてね。繰り返したくないんですよ、二度と」

 ひび割れた顔に僅かな哀愁を浮かべてエイレーンは答える。
 今のエイレーンはお世辞にも美しいとは言えない。元がどんなに見目麗しかろうと血にまみれ、肉を焦がし、管まで生やしていては台無しだ。しかし醜いかと言われれば否、『強さ』と言う単一の分野に特化したが故の機能美が、威厳が、そして凄みがある。

263 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:35:17 ID:0RGjI3UHBL
(多分)次の投稿でトーナメント編は終了です
因みにエイレーンさんの『肉体改造』はぶっちゃけ腕に魔術的な加工をした筒ぶっ刺しただけです
筒の中に魔力流し込んで衝撃に変換するだけの簡単な仕組みですが、こんなんでも結構試行錯誤してます。記憶喪失で魔術の知識0状態からなので十分凄いですけどね
中世の時代に発電機作るようなもんですから

264 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/29 22:54:44 ID:0RGjI3UHBL
細々とした設定集
エイレーンさんの宝具
『六道輪廻荒行道(りくどうりんねこうぎょうどう)』
 自傷ダメージを負う代わりに、『痛みを感じるほど強くなる』スキルの効果を増強する宝具。

 やたらと代償が重い割に効果が微妙なのは仕様。
 メタ的な話をすると、エイレーンさんには作者が描けるほぼ限界スペックの頭脳(身内に弱い、やや頑固過ぎるきらいがある、等々のデバフを一応与えてる)とスーパーバイタリティを与えてるので、下手に強い宝具与えると無双しちゃうんです

265 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 09:00:24 ID:bjH5JPQ3m2
細々とした設定集 その2
アカリちゃんの宝具
『愛天使(キューピット)』
 片眼が数日潰れる代わりに『強制的な魅了』を行う宝具。
 代償が重すぎるけどこれでも十分強い。

 魅了ってぶっちゃけ美の価値観が違えば通じないよな→価値観を書き換えれば良いじゃん、と言う割とえげつない宝具。

266 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 16:27:43 ID:PXvL21aakQ
おっつおっつ、盛り上がってまいりました

267 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/10/30 20:38:29 ID:bjH5JPQ3m2
>>266
トーナメント編のラスボスですので、熱い展開をお届けする予定です!

268 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:46:52 ID:CCiAb1qDPe
>>262
「まさか奥の手を見せることになろうとは、、、まあ、薄々こうなる気はしてましたが、ねっ!」

「くっ!」

 エイレーンの背後から接近していたシロが吹き飛ばされた。
 宝具の発動を阻止できなかった時点で目標を不意打ちに切り替えていた、が察知されていたようだ。

「シロさん!! 、、、、っ!?」

「ほら目を逸らさない! 敵が目の前にいるんですよ!!」

 吹き飛ばされたシロを思わず目で追ってしまうスズ。明らかな油断、その代償はエイレーンからの猛攻。たった一歩でスズとの間合いを詰め、繰り出すは鋭い斬撃。
 宝具で得た身体能力と確かな技量に裏打ちされたサーベル捌きはひたすらに苛烈。さらに左手の管から繰り出される衝撃波が僅かな隙を潰している。打ち合う事なぞ以ての外、ただ避ける事しかできない。

「これは、キツイ、、、、けど負けない!」

「その通りだよすずちゃん! シロ達は負けない!!」

「、、、っ! やりますね!」

 エイレーンの背後を襲う投げナイフ、シロによるものだ。当然エイレーンは対処せざるを得ない。そして注意がナイフに割かれればスズの剛腕が猛威を振るう。
 アカリを倒したことにより生まれた人数差が優位を作っていた。

「オラァ!」

 魔力放出によって圧倒的な馬力を持つバットが、スズの一撃が────

「でも足りない───まだ足りない」

「押し、切れない!?」

『な、なんと! 今まで圧倒的な剛力を誇ってきたすず選手が押し返された!?』

 正面から押し返され、そして押し込まれる。サーベルの鋭い刃がスズの首元にジワジワと押し込まれてゆく。
 スキル『魔力放出』により圧倒的なパワーを持つスズ。しかしエイレーンの宝具はそれ以上の強化をもたらしている。

269 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:48:58 ID:CCiAb1qDPe
>>268
「不味い!」

 このままではスズがやられる。そう判断したシロが助けに行くが間に合う距離ではない。もう一度ナイフを投げたところで無視されるのがオチだろう。
 衝撃波を警戒し接近を避け、それ故にナイフでの支援に留めてしまった。『すずちゃんなら大丈夫だろうと考えた』『もう少し様子を見たかった』等いくらでも理由は挙げられるが判断ミスには違いない。そしてそのミスが致命的な事態を招いてしまったのも間違いない。

「くっ!」

 細い腕に全霊の力を籠めスズも押し返そうとしているがさして意味のある抵抗には成っていない。

「、、、、」

 冷え冷えとした刃が首に触れる、生暖かい汗が止まらない、息が上がって過呼吸に成りそうなのを必死にこらえる。

「これで一人、、、、、なっ!?」

 スズの首に刃が突き刺さるその直前、なんとエイレーンの足からツタが生えて来たのだ。生えたツタは絡みつき、エイレーンの足元をもつれさせる。

「全く訳が、いや、これは双葉サンのスキル? そんな筈は、何故!」

『すず選手を倒す直前に妨害が入った! エイレーン選手、絶好のチャンスを逃しました!!』
「何だあれ?」「、、、成程、やりますね双葉お姉ちゃん」「完全に不意を突かれてるネ」

 混乱するエイレーン。バラバラの単語が浮かんでは消え、浮かんでは消えを刹那の間に何度も繰り返される。

「────まさか!」

 莫大な試行の後、エイレーンの頭脳は一つの回答を導き出す。

270 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:49:38 ID:CCiAb1qDPe
>>269
(準決勝の序盤、、、、! あの時、双葉さんは私の膝をナイフで切りつけていた!! 双葉さんのスキルは『ナイフで切りつけた所から植物を生やし操る』モノ。
 そして発動のタイミングは任意、ひと試合越しにスキルを発動されたという事か!
 宝具のインパクトで完全に失念していた、、、いや、元からソレが狙いで宝具を発動したのか。完全に出し抜かれた!!)

 エイレーンの考察通りこれは双葉によるものだ。『自分では勝てない』と判断した双葉が仕掛けた遅効性の攻撃。
 捉えようによっては卑怯ともとれる攻撃。実のところ仕掛けた双葉自身もこの攻撃に結構罪悪感を感じている。とは言え、やられたエイレーンは出し抜かれた事に怒りを感じていないのだが。

「オラァ! やっちゃって下さいシロさん!!」

「OK! 真名解放『唸れや砕け私の拳(ぱいーん砲)』」

 足のもつれと混乱の隙を付かれ、エイレーンはスズに突き飛ばされる。そして背後からは宝具を発動させたシロが迫って来ている。絵に描いたような窮地。

 相手への称賛、悔しさ、高揚感、刹那の間に様々な感情がエイレーンの中で沸き上がり、混ざり合い、噴出する────笑いとなって。

「ハハハッ! ハハハハハハ!!!」

 肺腑に残る息を全て吐き出さんばかりの大爆笑。焼け焦げた、ひび割れた顔に浮かぶ満面の笑み。強烈で鮮烈な感情の爆発。思考が加速し体感時間は引き延ばされ、視界に映るすべての物がスローモーションを描き出す。

 足に絡みついたツタを即座に振りほどくのは不可能。衝撃波も宝具相手には分が悪い。ならばどうすべきか?答えはもう出した。

「なっ、、、!」

「勝負!」

271 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:50:47 ID:CCiAb1qDPe
>>270
 左手を自身の背後に向け全力の衝撃波を放ち続け、その反動でエイレーンはシロへと突撃。衝撃波でスズを遠ざけつつシロを刈り取りに行く心積もり。
 己が身を省みぬ加速、一秒と経たぬうちに音速を超え、大気との摩擦で体が灼熱する。剣の切っ先をシロに向け、紅く燃えながら疾走する様はさながら流星。

「乗った!!」

 対するシロ。凝縮された魔力によって蒼く輝く拳を振りかぶり、己が宝具で迎え撃つ構え。

「「────!」」

 紅と蒼、数瞬の後に二人の一撃がぶつかり合う。観客が一言も発さずに見入ってしまう程に鮮烈なせめぎ合い。必殺VS必殺の争い。優勢なのは────

「どうやら私が勝ちそうデースね!」

 エイレーンだった。
 エイレーンとシロ、宝具の代償が差を分けているのだろう。失うことで得た力は、やはり重い。

「いやいや、まだ解らないよぉ」

 だが、シロは諦めない。不敵な笑みを浮かべ、蒼い目でエイレーンを真っ向から見据える。特に勝算が有る訳ではない、だがそれでも諦める訳にはいかないのだ。
 敗退していった仲間達の残した情報が、そして攻撃がエイレーンをここまで追い詰めたのだから。故に諦めない、仲間達の努力を無駄にしない為にも。

 徐々に押される腕に全霊の力を籠め、『シロ』と言う英霊が持ちうる魔力全てをこの一撃に注ぎ込む。

「ああ、そう来なくっちゃ、、、、詰まらないですよね!」

 だがそれでも趨勢は覆らない。気合だけで勝てるほど戦いは優しくない。
 ────最も、気合以外の何かが一つ有れば勝てる、程度には拮抗しているが。

「シロさん!」

 エイレーンの背後から声が聞こえた、スズの物だ。
 背後から物も飛んできた、スズのバットだ。

272 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:52:16 ID:CCiAb1qDPe
>>271
(アレは確か、、、、準々決勝で使った手。自分の武器を投げつけ破裂させるんでしたか)

 通常ならば困惑するはずの場面。だがエイレーンの判断能力は群を抜いている、困惑する事もなく正確に分析を行う。
 ────最も、優れているからこそ間違えることもあるのだが。

(近づくのは困難だと判断して援護に周りましたか、成程いい考えデースね。でも、何が起こるか解っていれば別に無視しても、、、、なにっ!?)

「最っ高だよすずちゃん!!」

 放り投げられたバットはエイレーンでは無くシロの方へと飛んで行く。そしてバットに籠められた魔力、緑色に輝くスズの魔力がシロに流れ込む。流れ込んだ魔力はそのままシロの宝具に加わり威力を強める。
 自身の有り余る魔力を強引に譲渡する力業、最後の最後まで隠し通していたスズの牙。ソレが、今まさにエイレーンの首元に突き立った。

「いっけええええ!!」

「────」

 宝具の蒼い輝きに緑光が加わり、混ざり、螺旋を描く。先ほどまでとは比べ物にならない程に宝具の力が増す。シロとエイレーン、その力関係が逆転する。

「────お見事」

 シロの宝具がエイレーンを打ち抜くその瞬間、エイレーンは心からの称賛を、ポツリと悔し気に呟いた。

『ついに決ッ着! S級の猛者が集いし今大会を制したのは、、、、シロ&神楽すずペア!!』
「おめでとうっすシロちゃん!」「やったぜ!」「皆強かったネ」

「やりましたよ、、、、シロさ、、、ん、、、、」

273 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/18 23:52:28 ID:CCiAb1qDPe
>>272

 轟き渡る歓声、勝どきを挙げようとしたスズがパッタリと倒れる。
 闘技場内の人間はピノの宝具『己が身こそ領地なれば』によって怪我を負うこと事は基本無い、無いのだがどうしても限度はある。宝具相当の攻撃に対してはある程度の怪我を負ってしまうのだ。
 激戦に激戦を重ねたスズ。緊張が切れた拍子に倒れてしまうのも無理は無いと言える。

「全く、すずちゃんは、、、、締らない、、、、なぁ、、、、、」

 スズを抱きかかえようとしたシロもまた、倒れてしまう。こちらの方も疲労が限界に達していた様だ。

『おっと、、、、? 如何やら両選手とも疲労が限界に達していた様です』

 後に残されたのは、緑髪の少女と白髪の少女が晴れ晴れとした表情で倒れている、牧歌的で、少々締らない光景だった。

274 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:47:39 ID:CCiAb1qDPe
時間は掛かりましたが何とか書き上げられました!!
今の自分で作れる一番良い物を書けたような気がします

それはそうと、シロちゃんのサンリオライブ出演決定嬉しい!!
サンリオコラボのアクリルキーホルダー再販してくれないかなぁ(願望)


裏設定

『チャイナ被れお姉さん』
 ファイトクラブ『スパークリングチャット』の常連さん。語尾は『ネ』。
 中国人のステレオタイプまんまの喋り方するけど普通に純日本人。好きな食べ物は春雨、あんまカロリー気にせず食えるのが良いのだとか。


『スパークリングチャット』
 元の持ち主が寿命で死亡した際、ピノ様と双葉ちゃんがゴタゴタに乗じてオーナーの座に就いていたりする。

275 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:48:06 ID:CCiAb1qDPe
ものっそい大雑把な過去年表

2070年 エイレーン一家&アカリちゃんが特異点に召喚される。ほぼ同時期にケリンと鳴神も召喚された。

2071年 鳴神が『サンフラワーストリート』に入団。英霊なので当然腕っぷしは強く、あっという間に組織の地位を駆け上がる。
 同時期にケリンが『エルフC4』を結成。こちらも同様に名をはせて行く。


2072年 エイレーン一家がギャング『Iwara』を打倒、影響下にあった『ポルノハーバー』はエイレーン一家がそのまま引き継ぐも暫くの間混乱状態に。

 『Iwara』残党の殆どは猛スピードで勢力を拡大しつつあった『エルフC4』に合流。
 この際、合流した構成員は違法薬物の流通ルートに繋がりを持つ人間が多く(水商売の人間にそう言った薬物を使わせたり、売らせたりして稼ぐのが主収入だった為)これを機に『エルフC4』は違法物品の取引に重点を置くようになった。


2073年 混乱に乗じて『Iwara』の残党がエミヤを殺害。この後にエイレーン一家による残党狩りが行われ、『エルフC4』に逃げ込んだ構成員以外はほぼ排除される事に。


2074年 すずちゃん、ピノ様、双葉ちゃんが特異点にレイシフト。
 ピノ様と双葉ちゃんは『スパークリングチャット』に就職、すずちゃんはニーコタウン設立に奔走。

276 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 00:48:13 ID:CCiAb1qDPe
2075年 
 『スパークリングチャット』のオーナーが急病で死去。
 ファイトクラブの所有権を巡ってエルフC4とサンフラワーストリートで争いが勃発。
エルフC4が優位に争いを進め、サンフラワーストリートのボスは求心力が低下。
 その隙を付き鳴神がクーデターを実行。この時点で組織内の発言力はかなり大きく、割とあっさりクーデターは成功を納める。

 その後何やかんやあってケリンと鳴神は意気投合し、『スパークリングチャットはエルフC4優位で共同所有とする』辺りで落ち着きそうだったのだが・・・ゴタゴタやっている間にピノ様と双葉ちゃんがちゃっかり実権を掌握してしまっていた。

2077年 シロちゃん、ばあちゃるがレイシフト、現在に至る

277 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/19 22:26:22 ID:6rhvhfehCK
おっつおっつ、楽しませてもらったで

278 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 09:46:10 ID:aLavt8/v3p
>>277
楽しんでくれたなら嬉しいです!
この後は、幾つか日常回を挟んだ後に特異点解決へ向けて動き出す感じですね

章ボスはかなりfate色が濃くなる予定、、、、と言うより、そもそもこの特異点はfate/stay night から分岐した世界なので当然と言えば当然なんですけどね(匂わせ)

279 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 11:56:46 ID:RcbCE394xz
ただまぁ…スパチャの元主が寿命と病死で混ざっちゃってたのがちょい引っ掛かりますたまる

280 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 17:48:59 ID:aLavt8/v3p
>>279
あ、やべ。完全にミスですねコレ
最初は寿命だったんですが『寿命なら事前に引継ぎ出来ちゃうよな』と思い変更したんですが、どうも書き換えるのを忘れてたみたいです(汗)

281 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/11/20 17:57:24 ID:aLavt8/v3p
>>274
修正

『スパークリングチャット』
 元の持ち主が急病で死亡した際、ピノ様と双葉ちゃんがゴタゴタに乗じてオーナーの座に就いていたりする。

282 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:07:26 ID:Q1lZU9/OY/
>>273
「いやはや、負けちゃいましたよ・・・・痛っ」

「全力を出したうえでの敗北、こりゃ言い訳の隙はないね」

 ベットの上に座り足をプラプラと揺らすアカリ、全身の筋肉痛に苛まれながら寝っ転がるエイレーン。
 ここは医務室、ではなく選手待機室の脇に設けられた仮眠室。薄暗い照明、やたらと冷える石造りの床、埃を被った薬棚、ブルーシートを被った荷物たち。『仮眠室』とは言うものの、現在では事実上の物置部屋として扱われている。
 エイレーンとアカリは医務室で目覚めてすぐ、この仮眠室に移る事を希望したのだ。

「しかしまあ、手札全部晒しちゃうとはね」

 目が見えないからだろうか、アカリは微妙にずれた方向へ悪戯めいた笑みを向けている。

「実力は十二分に示せたので結果オーライデース。ここまでやって歯向かって来れるのは・・・サンフラワーストリートの鳴神と、エルフC4のケリン位ですよ」

「あー、あの二人は色々と特殊だもんね、うん。もしかしたら、もうポルノハーバーを襲撃しに行ってるかもよ?」

「ハハハ、流石に有り得ないですよ、きっと、多分、いや、一応事務所に連絡を入れておきマース」

「そーだね一応連絡入れとこっか。多分大丈夫だろうけど────あ、いつもの発作が来るかも」

 会話がふと止まる。突如訪れた沈黙の中アカリが手探りで取り出したのは手鏡。ただの手鏡では無い、アカリ自身の写真を貼り付けた手鏡だ。

283 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:09:49 ID:Q1lZU9/OY/
>>282
「─────」

 じっと、ただじっと見えない目で鏡を見つめる。写真の顔の、それこそ毛穴まで確かめるように。
 見つめ始めて数秒後、アカリに変化が現れ始める。透き通る青目は深い紫に、金を溶かした様な髪も紫へと変わり、スラリとした豊満な体躯は未成熟の少女を目指し縮む。

「アカリはアカリ、ほかの誰でもない」

 囁くように小さな声で、念じるように何度も唱える。エイレーンは何も言わず瞼を閉じて、一切の音を立てないようにしている。


 これは儀式。アカリの宝具、その真なる代償を抑える儀式。アカリの宝具『愛天使』は神の領域に片足を突っ込んだモノ、万物を魅了するという所業はただそれだけで凄まじい。
 自身を美しいと感じる相手に対する魅了はそれ程難しくない、相手の中にある感情を増幅させればよいのだから。だが『愛天使』は違う、知性さえあれば無生物や異種族ですら魅了する規格外。神霊でも無ければとても扱えたものではない。
 故に、宝具を使う度に器は変異を試みる、宝具を扱うに足る神霊へと。
 目が見えなくなるのはあくまで初期症状、変異の初期症状だ。


 50回以上は唱えた頃、アカリは鏡から視線を外し、僅かに上ずった声でエイレーンに問い掛ける。

「ねえ、エイレーン。私は大丈夫かな、ちゃんと戻ってる?」

「ええ、いつもの、そうですね、エロいアカリさんデース」

「ちょ、ちょっとエイレーン! アカリはエロくないよ、そう、ただの超エロだもん!」

 エイレーンがぎこちない冗談で返せば、アカリも歯切れ悪くソレに乗る。

284 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:12:38 ID:Q1lZU9/OY/
>>283
「・・・無理はしないで下さいね」

 別な話題を振ろうとしたエイレーンの口から思わず弱音が漏れてしまう。
 アカリはリスクを認識した上で宝具を使っている、その覚悟に口を挟むべきでないのは重々承知済みだと言うのに。

「ア、アノー、今のは言い間違いと言うか、「大丈夫」

 急いで訂正しようとしたエイレーンをアカリが手で制す。

「アカリは大丈夫」

 アカリは曖昧な笑みを浮かべ、優しい声で優しいウソを吐く。

 宝具の性質や変異中途の風貌を考えるに、変異した先の姿はきっと悪いモノではないのだろう。きっと万物を魅了するに相応しい姿に成れるのであろう。だがそれがどうした。己が己の意図しない方向に変化していくなぞ、ただひたすらに苦痛でしかない。

 故にアカリは宝具の使用を怖れる。代償を払う度に心は後悔と不安で満たされる。今回だってそうだ。『宝具を使用する必要はあったのか』『使わずに勝つ方法は無かったのか』『いつか元に戻れなくなるのではないか』そんな思いで一杯だが、それでもアカリは使う。

285 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:13:56 ID:Q1lZU9/OY/
>>284
(今大会における目標は示威行為、ひいてはエイレーン一家を『精鋭揃いの穏健派』と言う立ち位置に収めること。強者の元には人が集まるし、眠れる獅子を起こそうとする馬鹿はそういない。穏健派としての体裁を保ちつつ武名を轟かせるのに、この大会は適していた・・・そう、適しては居るんだけどね)

(確かに他の団体からエイレーン一家は軽く見られてる。金も碌に持ってないんだから当然っちゃ当然。だけどアカリ達の治めるシマは風俗街、外道な手段を使えば幾らでも金は湧いてくる。大会で実力を見せつけるなんて不確実な手段に頼る必要はなかった。
 結局、エイレーンはシビアであろうとしてるけどさ、やっぱ無理なんだよそれは、人だもん)

(だからこそ、エイレーンはアカリ達が支えないとダメ。割と感情的で、不完全で、優しいリーダー様のためなら多少の無理も致し方無しってね)

 己の友一人に無理を強いるクソに成り下がるなぞ御免だ。宝具で変異してしまった方が万倍マシだ。
 故にアカリは宝具を使う、後悔はすれども躊躇はしない。ベストを尽くす為なら躊躇しない。

「大丈夫だよエイレーン。ほら、ばあちゃるも『自分が何になろうと目的は果たす』見たいな事言ってたし」

「・・・・・ええ、言ってましたね。私も覚えてマース、色んな意味で大人なんでしょうね、強い人で『10分後に選手表彰を始めるぜ! 三位以内の選手は移動をお願いしま、ちょっ、誰だお前等!?』

286 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:15:07 ID:Q1lZU9/OY/
>>285
 突然流れた館内放送、内容がどうも穏やかではない。部屋の外が騒がしくなり始める。
 いったい何だろうかと思い、エイレーンが外を覗きに行くと

「ヒヤハハァッ! 『three day priest』のリーダー、利休・ザ・グレイト様が今日からここの支配者! 俺たちを止められる奴なんざいやしねえッ!」

「「「そこのけ そこのけ 俺らが通る! 平服 恭順 早くせい!」」」

 僧服を盛大に着崩した大柄な男を先頭に、意味不明な歌を歌いながら会場になだれ込む坊主集団がいた。
 最早ちんどん屋にしか見えない珍集団。法事の場にいれば多少様にもなるだろうがここは闘技場。絶望的に浮いている。

「・・・何だろう、目は見えないけど変な人たちがいるのがハッキリ解る」

「えー、新興の面白集団、もといギャングですね。企業の運送車から装備を奪って巨大化した・・・・・幸運な人達デース」

「企業から盗むとか命知らず過ぎない?」

「あの僧服は、カジュアルさを売りにしたボディアーマー『T-ラック』の派生商品。見た目と用途がミスマッチ過ぎてアホみたいに売れ残った商品デース。
 奪われたと言うより、わざと奪わせたんでしょうね。そうすれば在庫処分ついでに保険も下りますし」

「あー、でもなんでこんな所に────あ、戦いが始まった」

 部屋の外から響く怒号、絶え間なく響く銃声。しかし不思議な事に、銃弾が人の肉を貫く音が全く聞こえ無い。
 アカリもエイレーンも戦闘経験は十二分に積んでいる。メジャーな戦場の音を聞き分けるくらいは簡単に出来る筈なのだが。

 不思議に思ったエイレーンが再び会場を覗けば、セバスとエミリーが無双しているのが見える。

287 名前:閑話休題『ブルー&レッドアイ』[age] 投稿日:2021/12/10 21:15:47 ID:Q1lZU9/OY/
>>286

「あ、当たらねえ!? 数十挺のアサルトライフルによる一斉掃射だぞ! 象が秒でミンチになる火力だぞ!?」

「目を閉じてから撃ってみてはいかがでしょうか? そっちの方がまだ当たるかと」

「整理運動にもなりませんわね。セバスはさておき私の体は生身。戦いの後には整理運動をしなければ明日に響いてしまいますわ」

 銃弾の雨を散歩でもするかの様に悠々と掻い潜り、萎びた腕を振るって敵を蹴散らす。ただ只管に突貫&蹂躙、シロやスズ相手に見せた巧みな立ち回りは一切使わない。と言うより、使う必要がないのだろう。

「な、南無三・・・・・」

 坊主集団を率いていた男が崩れ落ちる。銃声と怒号に満ちていた会場は一瞬静かになり、その直後に歓声と声援が沸き上がり騒がしさを戻す。

『瞬殺! 圧倒! 大勝利! 流石俺らの英雄!!
 そんな二人の英雄ですらベスト8止まりとなった今大会! 改めて表彰を始めるぜ!!』

「・・・・・そろそろ行かないとですね。私が二人分の表彰を受けて来るので、アカリさんは留守番頼みます」

「りょーかい。あ、そーだ、写真は撮っといてね」

「もちろんデース」

 節々痛む体に喝を入れ、疲れた背筋を直ぐ伸ばし、へたれた口角をキュッと持ち上げる。負けた己を卑下などしない、それが敗者の礼儀。『こんな奴に勝っても嬉しくない』などと思われては申し訳が立たない。
 赤髪なびかせ目指すは表彰台。足取り堂々、威風堂々。さあ、二位の栄誉を受け取りに行こう。

288 名前:閑話休題『もう一つの戦い』[age] 投稿日:2021/12/10 21:16:30 ID:Q1lZU9/OY/
>>287
「『消失』の被害状況はどうなんですか?」

「うーん、酷いね。ほんっと酷い」

 膨大な情報を移すモニター群、整然と並ぶエナドリの缶、座りすぎてぼろくなった椅子。ここは未来保証機関ブイデア。未来予測を始め、時空間への干渉を可能とする不可思議物体『KANGON』を用いて人類破滅の未来を事前に回避する為に設立された機関。

 そんなブイデアの管制室に牛巻りこと木曽あずきは居た。

 ギイギイ軋む背もたれにのしかかると、牛巻は不満げに頬を膨らませる。

「特に酷いのが『消失した事に基本気づけない』って所だね。
 鉄道の路線や道路はぐちゃぐちゃ、地形が変わりすぎて地図は役立たず。なのに、誰もソレに危機感を覚えられない。『昔からそうだった』としか認識できないから」

 数年前から起き出した(と推定される)現象『消失』。人間、施設、土地、消える対象は無差別。消えたモノは最初から無かったと記憶を改変されてしまう。
 今のブイデアはこの現象を食い止める為に奔走している。特異点の攻略もその一環。

「ま、悪い話は置いといてさ、シロピーとばあちゃる君の方はどうなん、あずきち?」

 ぴょこんと跳ねた金髪をいじり気の抜けた声で牛巻は問う。
 『消失』による被害止まぬ今は緊急事態、とはいえ常に気を張るのは不可能。適度に気を抜くのも仕事の内なのだ。

289 名前:閑話休題『もう一つの戦い』[age] 投稿日:2021/12/10 21:17:10 ID:Q1lZU9/OY/
>>288
「『楔』の奪取に向け、順調に進んでますぅ。
 ばあちゃるさんとシロさんの間にマスター契約が結ばれていない位が唯一の懸念事項。でもまあ、ブイデアからの供給だけで事足りてるので、無問題だと思います。
 それと、つい先ほど時計塔から協力声明が届きました」

「魔術師の学び舎にして探究の場『時計塔』。頼もしいね、信頼はできないけど。
 あずきち、相手方の交渉担当は誰?」

「現代魔術科の君主『ロードエルメロイ2世』が直々に来るそうですぅ」

「ロードエルメロイ2世、優秀だけどまだ若いんだっけ。軽視はされてないけど対等にも見られてない感じか・・・・・良し! スケ調整するか! 仕事だ仕事、イエイ!!」

 エナドリの缶を開け一気に飲み干す。やたら長い名称の健康物質とカフェインが細胞のすみずみに染みわたり、脳を強引に叩き起こし、仕事の始まりを体に告げる。
 ボキゴキ肩を鳴らし、さあ「待って下さい」

「───ん? どしたん?」

 仕事に取りかかろうとしたその時、あずきから待ったがかかる。

「外部と連絡が取れるようになった事、本当に言わなんですか?」

「・・・・うん。外部と連絡が取れると教える事は、外部の状況を把握出来ると教えるのと同義。
 正直、今の世界は見てて気持ちの良いもんじゃ無い。今の世界を見せると言う事は、不要なプレッシャーを掛けるのと同じだよ」

「それは解ります。ですが、仲間にウソをつくのは可能な限り避けたいです。ウソが露見した時に不要な軋轢を招いてしまう、と思いますぅ」

 あずきの瞳、掴みどころの無い紫の瞳が牛巻を見つめる。
 その瞳に詰問の色は無い、責め立てる意図も無い。ただの意思確認。だが、答えに詰まるようなら指針変更も止む無し、それくらいの意図は籠められていた。

290 名前:閑話休題『もう一つの戦い』[age] 投稿日:2021/12/10 21:17:51 ID:Q1lZU9/OY/
>>289
「シロちゃん達の戦いが『特異点を解決し、消失させられた世界のパーツを取り返す』モノなら、牛巻達の戦いは『被害を最小限に抑え、一秒でも早く対策を講じて、世界の消失や社会の崩壊を遅らせる』モノ。
 モニターは塹壕でキーボードが銃。この戦線だけは誰にも譲れない。僕たちの戦い、もう一つの戦いさ・・・・・って話でウソがバレた時に茶を濁そうと思うんだけど、どうかな?」

「・・・・まあ、バレた時の用意があるなら良いです」

 牛巻が調子のいい笑みを浮かべれば、あずきは僅かに呆れたような声で返答する。
 



「・・・・それが本音でしょうに。変な所で照れが入るのは相変わらず、ですぅ」

「ん? なんか言った?」

「・・・秘密です」

「ええー、ちょっと笑ってるじゃん。良い事があったなら牛巻と共有してよぉ。牛巻とあずきちの仲じゃないか」

「秘密です」

「むー!」

 ぬるま湯にインスタントコーヒーを溶かし、目分量で砂糖を入れる、豆は深煎り、量は少なめ。お気に入りのマグカップに注いだコーヒーをあずきはゆっくりと飲む。

 牛巻の事は好ましく思っているが、飲料の好みだけはどうにも相容れない。仕事前の一杯はコーヒーに限る。
 そんな他愛も無い事を考えながら一時の平穏を楽しむ あずき であった。

291 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/12/10 21:33:44 ID:Q1lZU9/OY/
ブイチューババトルロワイアルのアーカイブ、何度見てもマジで面白い

結構久しぶりの投稿です! もっとコンパクトにする予定でしたが、想像の五倍位の文量になりました。
後、ちょっとだけ書き方を見易くしました。


細々とした(裏)設定集
『three day priest』
元ネタ:三日坊主
 キリスト系のカルト信者の子供達、所謂二世信者が独立して立ち上げた新興のギャング。
 キリスト教の逆、、、仏教か! と言ういい加減な発想で仏教に帰依した結果、似非坊主の集団が爆誕した。

 役割的にはただの咬ませ&ギャグ要因だが、『力も頭脳も無い奴は運があろうが利用されて終わり』と言う社会のシビア(当たり前)な側面の被害者でもある。


アカリちゃんの変異先
fateのエウリュアレ。
ガチ神霊&視線で魅了する宝具持ちのお方。
ガウェインことカチカチ太陽ゴリラ攻略でお世話になった人は一定数いるはず。

292 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/12/10 21:51:16 ID:46oYS5V/ka
おっつおっつ、シリアス含めいろいろ接種できたわ、牛巻あずきちかわいい。バトロワはいろんな意味で感動した。

293 名前:名無しさん[age] 投稿日:2021/12/10 22:28:10 ID:Q1lZU9/OY/
>>292
刃牙の最大トーナメント編に、ジョジョのスタンド異能バトルとワンピースの人間ドラマぶち込んだら面白いだろうな、と言う発想の元産まれたモノなので感動してくれたなら嬉しいです!

牛巻あずきちのやり取りは昔から書きたかった部分なので、達成感半端ないです。

294 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:12:16 ID:LtNW6BfvmW
>>290

「色々あったけど取り敢えず目的を達成出来て良かったすよ」

「だね、そう言えばピノちゃん。『楽園』にはいつ乗り込むの?」

 暖かに光るランプ、趣味の良い調度品、革張りの椅子。ここは屋敷、ピノの屋敷、その応接間。
 調度品の数は最低限、見た目も落ち着いた物を使用。そんな居心地の良い応接間の中で、上品なマホガニー製の机を取り囲み座っているシロ、ピノ、双葉、スズ、ばあちゃるの五人。

 多少のトラブルは起きたものの、その後はつつがなく表彰式は終了した。今はひと段落ついて休憩中といった感じだ。


「四日後ですね。『楽園』への入居権を得るために金を集めていた訳ですが、その一環として屋敷の家財や宝飾品を相当数売り払ったんですよ。
 ただまあ、色々あって相当遅延しましてね」

「あー、もしかしてケリンと鳴神の妨害?」

「その通りですわ・・・鑑定士を脅して二束三文の査定を出させたようでして。撤回させるのが大変でしたよ。
 それはそうと、今晩から始まる祭りは知ってますか?」

 幼げな美貌に大人びた笑みを浮かべ、ピノはそんな事を言う。オーロラ色の瞳を細めて、心底楽しげに。
 シロが聞き返そうとするよりも早く双葉が身を乗り出して反応する。桃色の瞳を輝かせて、待ちきれないとばかりに。

「三日間に渡って開かれる、せいだいな祭り! ごちそう見せ物なんでもあり、街の50周年を祝う大宴!」

「へぇー! 何時ごろから始まるの?」

「後・・・・一時間後くらいかな。身支度とか移動とかかんがえると、そろそろ準備し始めたほうがいいかも」

「OK! 善は急げ、早速準備しよう!!」

295 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:13:01 ID:LtNW6BfvmW
>>294
 いつの間にか眠っていたスズを起こし、身支度を整え、外に出れば、そこには祭りを待つ人々が居た。

「わぁ・・・・・」

 空は夕焼け、楽し気な蜜柑色。ネオンやら広告やらの無粋な光は身を隠し、提灯やら屋台やらの光が取って代わる。
 浮足立った人々。小銭を握り締めて辺りを見回す子供、顔を綻ばせる大人に、楽しげに話し合う若者達。
 立ち並ぶ屋台。りんご飴、チョコバナナ、焼きそばと言ったお馴染みの屋台に混じる、『夢見保証 ドリームサンド』『天然肉配合 ハート焼き』『出張占い ルルンプイ』などの変わり種。とても気になる。

(縁日で光るヨーヨーとか親にねだってたけなぁ。んでその後、三日と持たずに電池と紐が切れて・・・懐かしいっすね)

「どこからまわろうかな」

「無駄遣いは禁物ですよ」

 バンッと景気のいい音を立てて、空に花火が上がる。赤白黄色、飛んで咲いてすぐ消える。毎夏ごとにみかける花火、幾度見てもやはり綺麗だ。
 空を見上げていると、どこか聞き慣れたアナウンスが聞こえて来る。

296 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:14:14 ID:LtNW6BfvmW
>>295

『よお! お は ク ズ、天開だ。スパークリングチャットの名物司会にして、今日の司会に抜擢された俺!!
 只今より始まるは祭り! グーグルシティ50周年祭! 開催会場は──街全域!! 無数の出し物! 無数の屋台! ド派手な神輿!! 存分に楽しめ!!』

『爪楊枝からミサイルまで、エブリカラーファクトリー! 法の天秤を格安でお届け、営利法廷 グロリアース ワンスモア! 只より安い物はない、実験病棟 ブラッドスクウェア!!
 お掃除、怪物退治にピザ配達、なんでもどうぞ、職業斡旋所 上島職安! 夢と希望の原産地、複合メディア カヴァ―カンパニー! 何でも預かり&#12348;、パイプホール トレーダーズ!! その他多くのスポンサー様!!!
 こんなに大規模な祭りを開けたのもスポンサー様のお陰! ちゃんと褒め称えるんだぞ!!』
「ぶち込んできたな」「スポンサーいないと興行は成り立たないからネ」「ギャラ掛かってるんだろうな」

『都合の悪い事は聞こえないぞ! ヨシ! 50周年祭開始だ!!』

 そこら中から上がる喝采、持ち上げられる神輿の群れ、準備万端の屋台達は営業を始めだす。夕暮れは夜へと移り、にも拘らず街は刻々と明るさを増して行く。


「シロ達も回ろっか」

「そうしましょうねハイハ・・・あれ、何か見覚えある人が神輿の上に」

 シロがばあちゃるの手を引き、祭りを回ろうとしたその時、ふと神輿の上に見えた人影。見間違いようもない。セバスとエミリーだ。
 右側にセバス、左側にエミリー、真ん中には黒い外套を被った人形が載っている。人間大の大きさを持つ木の人形だ。顔の付いたマネキン、と言った方が正確かも知れない。

「あの二人が担がれてるっす、やっぱ人気あるんすね。しかし、あの人形はなんですかねハイハイ」

297 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:14:57 ID:LtNW6BfvmW
>>296
「あの人形は『無尽の英雄』を模ったモノだねぇ。この街が設立される前に活躍していた英雄、エミリーちゃん達の一世代前にあたる人だね。
 無尽の英雄、尽きぬ刃を振るい、影を祓う者。誰もが憧れる正義の味方・・・って昨日読んだ歴史漫画に書いてあったよ」

 知識を披露できるのが嬉しいのだろう、シロの声は自慢げだ。知識の仕入先が漫画と言うのが何とも微笑ましいが。


「はえー、やっぱシロちゃんは物知りですねハイハイ・・・でもなんで『影を祓う者』なんすかね? カカラの事を影と表現するのはちょっと違和感があるような」

「それだけ恐ろしい、得体の知れない存在だったって事だよ。街設立前後の時期はねぇ、『影の時代』なんて言われてたぐらいで・・・ん?」

 シロの声がハタと止まり、辺りを見渡し始める。スズが居なくなっているのだ。
 前後左右、どちらを見てもスズの特徴的な緑長髪すら見えやしない。ついでにピノもいない、なんなら双葉もいない。

 そう、シロとばあちゃる、二人は話している間に置いてかれてしまったのだ。
 いつもの数倍は人通りの多い今、いつもの数倍は浮かれてる今。うっかり置いて行かれてしまうのも無理はない。

「ま、まさかシロちゃん・・・これ」

「みなまで言うな、わかってる・・・」

 二人は呆然として天を仰ぐ。ああ、花火が綺麗だ。

「どうしよっか」

「どうって、そりゃ、探すしかないっすよ」

 二人が選択した行動は捜索。周囲の人に迷惑を掛けない程度に走り、他の皆を探すと言う物。ド定番の行動ではあるのだが、これがとことん裏目に出た。

298 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:15:56 ID:LtNW6BfvmW
>>297
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あれ? シロさんがいませんよ」

「ほんとうだ、探さないと」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いました!」

「え! どこ?」

「右のほう・・・いや、左かも。すみません、ちょっと確かめてくれませんか?」

「どこ!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「人波になんか負けない・・・ウワー!」

「ピノさんが人波に呑まれたッ!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はふっ、はふっ、うま!」

「双葉お姉ちゃん、食べるのもいいけどまずは探さないと・・・もぐもぐ」

「ピノさんの言う通りです・・・熱ッ!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「待て、そこの馬男! 俳優になる気は無いか!」

「え? オイラですか?」

「『馬と白衣──Love in cage──』と言う成人向け映画を構想していてな。頭部を馬にされた男と狂った科学者が愛を育むラブロマンスなんだよこれが!!
 まさにお前さんみたいな人が相応しいだろう!?」

「謹んでお断りさせて頂きます」

299 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:16:41 ID:LtNW6BfvmW
>>298
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「やっっと合流出来ました・・・て、アレ? すずお姉ちゃんがいない」

「まさか、はぐれた?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 すれ違い、二次遭難、その他大小トラブル、何やかんやあって数時間後。

「今度こそ全員揃った、よね?」

「ええ・・・今度こそ」

 大通りから少し離れた所、人通りの少ない路地裏に五人は集まっていた。
 室外機の唸り声と祭囃子が微かに聞こえる。

「迷惑かけてホント申し訳ないっす」

「気にしないで下さい、こういう日もありますよ。
 ・・・・・とは言え、ちょっと疲れましたね。目ぼしい所に寄りつつ、今日はもう帰りましょうか」

 紆余曲折の末に集まった五人、大会の疲労も未だ癒えていない。正直かなり疲れている、帰るべきだろう。

「まつりは明日も明後日もあるし、もんだいない」

「そうですね」

 凡その合意に至った所で、大通りに向けて足を「ん?」


 ────踏み出そうとした足の前に置かれていた、四角い包み。手のひらサイズのソレは茶色い紙に素っ気なく包装されていて、脇には手紙が添えられている。内容はこうだ。

『拝啓 残暑の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 以前の無礼をお詫びしたく、ささやかな贈り物をさせて頂きました。
 怪物退治に持ってゆけば多少の助けになるやもしれません。
 次回お目にかかる時の思い出話を楽しみにしております』

300 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:18:13 ID:LtNW6BfvmW
>>299
 書いた人の名前も宛先も書かれていない怪しい手紙。そして包みの中もこれまた奇怪。

「ナニコレ?」

 青い蝶の髪飾りと一枚の名刺。そして黒い箱。小さな立方体が組み合わさって出来た黒い箱だ。

 髪飾りと名刺はともかく、黒い箱はどう考えても怪しい。普通に考えれば捨てるべきだ。だが───

「貰っとこうかな」

「シロちゃん!? どう考えてもヤバいっすよ」

「大丈夫」

 よく考えれば捨てるべきでない事が解る。

 青い髪飾り、よく見ればアカリが付けていたものと同じだ。そして名刺、ここにはばあちゃるの名前が刻まれている。
 ばあちゃるとその身内以外で名刺を持つ人物、真っ先に候補として挙がるのはエイレーン。準々決勝の際ばあちゃるが武器としてエイレーン達に投げつけていたからだ。

 これらを総合して考えると、この手紙の送り主はエイレーンとアカリでほぼ間違いないと解る。凡そ『手助けをしたい、でも恩を売ったと思われたくない』と言った感じだろうか。名前を隠し、その上で『お詫び』なんて体裁を取ってるのもそう考えれば辻褄が合う。

「で、でもほら・・・・知らない人からのプレゼントは受け取っちゃ駄目っすよ」

「大丈夫ったら大丈夫」

「シロさんの言う通り大丈夫ですよ、多分」

「はやくいこー」

「誰が持ちましょうかソレ」

「ちょっ、え!? ばあちゃる君少数派ですか!?」

 ばあちゃる以外の皆もシロと似たような反応だ。同じ結論にたどり着いているに違いない。
 そんな思考をしつつ、シロは贈り物をポッケにしまって悪戯っぽい笑みを浮かべる。

301 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:23:30 ID:LtNW6BfvmW
>>300
 大丈夫な理由を教えても良いが、教え無いのもきっと楽しかろう。小さな秘密は女の秘訣、ともいうし。

「早く行こうよ! 置いてっちゃうよ!」

302 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:28:20 ID:LtNW6BfvmW
>>301
 ばあちゃるの脇を通り抜け、賑やかな大通りへと駆け出す。白いアホ毛を挑発的に揺らしながら。
 溜まりに溜まった疲労も今だけは感じない。ただ楽しい。

303 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:29:10 ID:LtNW6BfvmW
>>302
「追いついたらこの箱あげちゃおっかなー!」

「待って下さいよシロちゃん! なんで、そんな、速いんっすか・・・!!」

「はしゃいでますねー。シロお姉ちゃん」

「だねー」

「白馬良き・・・・・」

 既に息が上がり気味のばあちゃるが後ろを追いかける。その後ろをのんびり歩く三人。

 それはまるで、祭りではしゃぐ家族の様な光景だった。

304 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:30:12 ID:LtNW6BfvmW
実家に行ったり、大学の課題を片づけたりで投稿がだいぶ空いてしまいました。
.liveの福袋、どれを買うかが最近の悩みです。

ちょっとした裏設定 企業編

『エブリカラーファクトリー』
元ネタ:えにから(にじさんじの運営)
 グーグルシティにおける大手工業。怪物の出現によって色々とヤバくなった町工場達が結束して生み出した組織。虹の色をモチーフにした7部門に別れている。

レッドファクトリー:軍事用品 オレンジアーミー:試験運用部隊の管理 イエローファクトリー:大衆向けの日用品 グリーンファクトリー:医薬品の生産 ブルーファクトリー:富裕層向けのハイグレード品 インディゴ・ブレイン:経営陣 パープルゲイズ:監査部門

 7部門に別れているのは『そうした方が印象的で、お客さんに覚えてもらい易いから』と言う広告戦略によるもの。


『グロリアース ワンスモア』
元ネタ:フラッシュ世代(グロリアス→光輝く→フラッシュ)
 輝かしい地球をもう一度、と言う意味の社名。

 怪物の出現によって社会が崩壊した際、なんとかグーグルシティに逃げ延びた政府官僚達が創り上げた会社。『早く裁判所作らないと私刑が横行して治安終わる。どんな形でもいいから裁判所作らないと』と言う信念の元造られた。
 従来の裁判よりもお金がかかること以外は割とまとも。判決を守らない相手に私設軍隊送り付けるアグレッシブさも持ち合わせている。

305 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:30:21 ID:LtNW6BfvmW
『上島職安』
元ネタ:アップランド
 グーグルシティ創設期、街の外壁を作る計画を行った。上島土木(後の上島職安)はその計画のまとめ役だった。
 危険な計画を成し遂げた信用と、まとめ役をしていく中で得た人脈を利用して職業斡旋の副業を始めたのが上島職安の始まり。
 職業斡旋の方が儲かるようになってからは上島職安と名を変えた。

 斡旋の形態としては、なろうの冒険者ギルドin近未来といった感じ。

『カヴァーカンパニー』
元ネタ:カバー株式会社(ホロライブの運営会社)
 ネット、テレビ、新聞、色んなメディアが合体して出来てきた会社。現実のテレビ局と大体同じ。

『パイプホールトレーダーズ』
元ネタ:排水溝(アレな性癖の人達が集まる投稿サイト、調べる時はグロ注意)
 地下水道に会社を構える変った所。貸金庫と融資、資産運用が主な収入源。末端の社員に至るまで全員血のつながりがあったりする。一族経営(文字通り)。

 グーグルシティ以前の地下水道、グーグルシティになってから造られた地下水道、由来不明の地下通路・・・・・等々幾つもの通路が複雑に重なり合っており、そんな地下水道に金庫を分散して配置することで殆ど無敵のセキュリティを誇っている。

306 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/04 00:32:09 ID:LtNW6BfvmW
後、いつになるか解りませんが、今投稿しているssを基にRPGを作るつもりです。

307 名前:名無しさん[age] 投稿日:2022/01/12 17:13:00 ID:CcUkdOFzXY
おっつおっつ、いろいろあって見るの遅れちゃってたぜ……祭り行きたいなぁ

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