>>47
しばらく後、三人は立ち往生していた。
「すみません、、、テンション上がっちゃって燃料の事考えていませんでした」
「うっぷ、、、、別にいいんすよ、、スピード出してと言ったのはオイラですし、、、、」
「そうそう、送ってくれるだけでも十分ありがたいんだから、、、、」
スピードを出しすぎた為予定以上に燃料を消費し、トラックは燃料切れとなっていた。
「ねぇあずきちゃん、ここから徒歩でグーグルシティに行くとどれくらいかかる?」
『あずきの計測が正しければ、、、おおよそ3時間ですかね』
「まぁ、歩いて行けない距離では無いっすね」
『ただ、一つ問題が』
「どうしたの?」
『リコさん曰く、進行方向にカカラが集まっている場所がある様ですぅ』
『そうなの、これを見て』
リコが手馴れた様子で何かの機械を操作し、レーダーの様な画面を表示させる。
その中央には緑色の点がポツリと3つ、上部には赤い点がビッシリと浮かび上がっている。
「緑色の点がシロ達で…………この赤い点がカカラ、かな?」
『その通りだよシロピー、この20個以上有る点がカカラなんだよね』
「この数だと、戦うよりかは迂回した方が楽かなぁ」
「そうっすね」
助手席側の扉を開け、トラックの外に出ようとするシロとばあちゃる。
しかしすずは何かを思い出したのかパンと手をたたき、慌てて2人の肩に手をかけ引き止める。
>>51
「あ、すみません、ちょっと待ってください。そのカカラの集まっている場所でトラックの燃料が補給出来るかもしれないです」
「マジっすか?」
「ハイ、マジです」
「燃料に集まる習性がカカラにあるってことなの?」
「そういう訳ではないんですけど、、、、うーん、説明が難しいので実際に見てもらった方が早いと思います」
「分かったよすずちゃん。じゃあカカラ狩りに行こうか」
そう言うとシロは今度こそトラックから降りる。その直後にすずが勢い良く、少し間を置いてばあちゃるが慎重にコンクリと雑草の大地へと足を下す。
灰色と緑で構成された大地に色が加わる。ビュウと吹くビル風が3人の背中を押している。
「リコちゃん。カカラの場所は?」
『真北700メートル先、すぐそこだよ』
「オッケー、ありがとうね。馬、シロの渡した武器はまだ持ってる?」
「勿論っすよシロちゃん」
「すずちゃんも魔力は大丈夫?」
「大丈夫ですシロさん」
シロはナイフ付きの自動小銃を手元に呼びだし、ばあちゃるも拳銃とナイフを懐から取り出す。
すずはサングラスを装着し、足をドンと踏み鳴らす。すると腕の周りにノイズが走り巨大な火炎放射器が現れる。レモンのステッカーが貼りつけられたソレは強い魔力と神秘をまとっている。
「行きましょう!」
「うん!」
「うっす」
3人はうなずくとカカラの方へと歩き始める。
>>52
「カカラいるねぇ」
「え、どこっすか」
「馬、あの校舎の中見てみなよ」
10分も歩かないうちにカカラの集団が視界に入る。
元は高校だったと思わしき廃墟、その中を歩き回っているカカラ達が割れた窓越しにチラチラ見える。
「行きましょう、私が正面玄関から突入するのでシロさんとプロデューサーは、、、、いい感じにお願いします」
「いい感じって大分アバウトっすねハイ、というかすずすずはそんな危険なことして大丈夫なんですか?」
「トラックの燃料切れは私のせいなんですからこれくらいはしないと。それに私、雑魚狩り得意なんですよ。ほら、こんな感じで焼き払うんです」
火炎放射器を使うフリをしながらそう言うと、すずはスゥと大きく息を吸い込み叫び、前へ走り出す。
「かかってこい!有象無象がぁ!!!」
すずの体から緑色の魔力が噴き出る。走るスピードが明らかに早くなる。
「馬、シロたちは裏口からいくよ」
「了解っす、、、、でも大丈夫ですかねハイ」
「馬、すずちゃんはね、無理なことはちゃんと無理だって言える子なの。そんなに心配しなくても大丈夫」
シロは両手を腰に当て、優し気な表情で言い放つ。
ばあちゃるがすずの向かった方に目をやれば、ここからでも真っ赤な火炎がハッキリ見える。
「、、、、確かにそうっすね」
「でしょ?」
>>53
シロとばあちゃるは静かに歩き、校舎の裏手に回る。
二人が裏口の扉をほんの少しだけ開けると、カカラ達がすずに気を取られていているのが見える。
「、、、馬、321で行くからね、、、」
「、、、うっす、、、」
シロはフラッシュグレネードを扉の隙間からコロンと投げ入れ、直ぐに扉を閉じる。
「3、2、1、今!」
グレネードが炸裂し、扉の隙間や窓から真っ白な光が漏れ出す。
その直後シロが扉を蹴破り校舎に突入する。
「シロ魔法、、、発動!」
「ガッララッ、、、!!」
シロが銃を横に倒し引き金を引く、反動で銃を横に動かし薙ぎ払う。
強烈な光に視界を奪われた化け物たち、そのコアへ恐ろしいほどの精度で銃弾が襲い掛かる。
「ガララララララ!!!!!」
「やらせないっすよハイハイ!!」
それでも生き残った化け物共の内、一番シロの近くにいた個体にばあちゃるが組み付き、逆手に持ったナイフでコアのある左胸を何度も刺す。
「ハイ!ハイ!ハイハイ!!」
「ガ、、ガラ、、、」
ぐったりとしたカカラをそのまま盾にして、ばあちゃるはシロに弾をあてないことだけを意識して拳銃をでたらめに打つ。
ほとんどは明後日の方向へと飛ぶが、いくつかは運良く命中する。
ばあちゃるがそうしてカカラを牽制している間にシロはリロードを済ませる。
シロが二度目に弾を打ち切った時、カカラは全て倒れていた。
この先まで書き終わっていますが長過ぎるので一度切りました
シロちゃんが五分休憩している間に投稿したかったけどさすがに無理があった(小並感)
>>56
コメントありがとうございます!
今のばあちゃるは自分の能力でできる限りのことをしている感じですね、今後もシロちゃんのサイドキックとして成長して行く予定です
>>54
「フゥ、、フゥ、、、やりましたよシロちゃん」
「中々やるじゃん、馬」
「へへ、、、あ、ちょっ」
もう敵がいないことを確認したシロはばあちゃるの正面に立ち、馬のマスクを目の出ないギリギリまで持ち上げる。
驚くばあちゃるを他所にシロはハンカチでばあちゃるの顔を拭くとニコリと笑い、マスクから手を放し歩き始める。
「戦うとき緊張してたでしょ馬、汗ダラダラだよ。ほら、すずちゃんも待っているから早く行くよ」
「う、うっす」
すずの突入した正面玄関に行くと、そこは凄まじい有様だった。
辺り一面は黒く焦げ、カカラは炭となって転がっている。
「あ、シロさん、プロデューサー、こっちも終わりましたよ」
「割とエグーな感じですねハイハイ」
「ハハ、ちょっとやりすぎちゃいました。もう魔力がすっからかんです」
すずはサングラスを外し懐にしまう。火炎放射器がノイズと共に消える。
「じゃあ帰りましょうか」
「そうだね、、、、て、ちょっと待って。ここには燃料を取りに来たんでしょすずちゃん」
「あ、そうでした。燃料ですよね燃料。えっと、あずきさん。ここの近くに地面から飛び出た不自然な突起物ありませんか?」
『突起物ですか、、、、地下一階の技工室にそれらしいものがあるかな、とあずきは思いますぅ』
「突起物?」
「見ればわかりますよ」
そう言うとすずはどこからか持って来た赤いポリタンクを携え、二人と共に地下への階段を下りる。
>>58
「やっぱりありました」
「なにこれ、、、、」
『なんじゃこれ』
「大きな花、ですかねハイ」
『動く気配はないですけど、、、あずきもこれが何なのか解らないですぅ』
技工室にたどり着いた三人の前に現れたのは、地面から斜めに突き出した巨大な根。そしてそこから生える巨大な花だった。
電柱の様に太い茎からは、人の大きさほどもある薄黄色の花がいくつか垂れ下がっている。
それらの花は時折ブラリと不自然に揺れている。
「シロさん、刃物貸して下さい」
「あ、うん」
余りにも大きな植物から目を離せない二人をよそに、すずは手慣れた様子で茎に傷を付けポリタンクの口を押し付ける。
茎から黒い液体がドロリと流れ出す。液体が流れ出す程に花はしおれていく。
タンクが満タンになる頃には花は萎れ切っていた。
「え、これが燃料なの?と言うそもそも何?」
「これが燃料です。何故かガソリンとして使えます」
「それと、この植物はカカラの母体みたいなものですね。時々どこかに生えてはカカラを生み出すんですよ。いつの間にか枯れて消えますけど、こうすると直ぐに枯れてくれるんです」
「何というか、良く燃料として使えるってわかりましたねハイ」
「町の人がたまたま見つけたんです。この発見のおかげで電気や車が使えるようになったんですよ」
>>59
重くなったポリタンクを三人でゆっくりと運び、トラックに燃料を補給する。
ガソリンのメーターが満タンになる、すずがキーを回せばエンジンがドウと息を吐く。
「よし、今度は安全運転で行きますね」
「アハハ、お願いするっす」
時速60キロ、今度は普通の速度でトラックはグーグルシティへと向かう。
「お二人とも見てください。あの先がグーグルシティですよ」
「ホントだ、、、、でっかいねぇ」
「話は聞いてましたけど、実際に見ると凄いですねハイ」
すずが指さす先にあるのは、コンクリートの巨大な壁だった。壁の上から顔を出す高層ビルが、そこに街があることを示している。
壁の周囲では、黒いボディアーマーと奇妙なゴーグルを付けた兵士が絶えず監視をしている。
三人の乗るトラックがNo1と大きく書かれた門に辿り着く。
門の近くにいた兵士が無言でトラックに近づいてくる。
>>60
「、、、、、」
「ん、ああ。どうぞ」
すずが何かの書類を渡すと、兵士は無機質な動きで踵を返し書類をどこかに持っていく。
「ねえすずちゃん、あの人たち何なの」
「この街の警備兵です。ただ、昔はもっと人間味のある人たちが警備をやっていたんですけど、突然あの人たちに変わったんですよね、、、、今じゃ入るのも一苦労です」
「昔と違うの?」
「ハイ、今は街に住んでる人が身元の保証をしないと絶対に入れないんです」
「なるほどねぇ、世知辛いんじゃぁ、、、、ん?」
シロがはたと首を傾げる。
「じゃあさ、シロたちの身元は誰が保証してくれたの?」
「ピノさんと双葉さんが保証してくれたんです。昔は大金を払っても一応入れたので、ピノさんと双葉さんはグーグルシティで、私は外で。といった感じで手分けして『楔』を探してたんですよ」
「なるほどねぇ」
「シロちゃん、すずすず。書類の確認が終わったみたいっすよ。ほら、門が開き始めてますよハイハイ」
声を掛けられた二人が門を見ると、ばあちゃるの言った通り門がゆっくりと動き始めている。
「あ、ホントだ。遂にグーグルシティに入れますね。実は私も初めて来るので楽しみです」
「ふふ、じゃあシロとおそろいだね」
「ハイ!」
すずはウキウキでペダルを踏み、開ききった門を通過する。
入った瞬間、街の風景が目に入る。
>>61
胡乱気な看板やネオンがズラリと立ち並び、見慣れた建物と現代アートの様な建物が不思議な調和を保ちそれぞれ乱立している。
街の中心を見れば、遠近感がおかしくなりそうな程巨大なビル群が見える。
「いやー、凄いっすね、、、、、」
「だね、、、、」
「ですね、、、、、」
しばし呆然として街を眺める三人。眺めている間にも無数の車と人が通り過ぎていく。
一足早く我に返ったばあちゃるがすずに話しかける。
「そういえばすずすず、ピノピノとふたふたはどこにいるんすかね?」
「えーと、二人は入口から入ってしばらく真っすぐに行った所にいて、建物は見ればわかると聞いてますね」
「この街で見れば解るってどんな建物なんですかねハイ、、、、」
ばあちゃるが改めて街を見渡す。
屋台の提灯はカラフルに光り、路地裏には光る入れ墨を入れたヤクザがたむろしている。
「ま、多分大丈夫っすね」
「真っすぐ行けば良いのは確かですしね。行きましょう!」
「確かにこれは、見ればわかるねぇ」
「ですね、、、、りこさん、お二人はこの建物にいますよね?」
『ちょっと待ってね、、、、、、うん、確かにその中にいるよ。でもほんまごっついなぁこの建物』
ピノと双葉のいる建物、そこはチョウをモチーフにした紋章と双葉の生えた植木鉢、二つのシンボルが掲げられたスタジアムだった。
『ファイトクラブ スパークリングチャット』と入口に掲げられていた。
次回ピノ様と双葉ちゃんが登場します、後でボスのステータス出すかもしれません(宝具以外)
それはそうと、ガリベンガー放送枠上がったのうれしすぎる
>>64
楽しんでくれるなら本当に嬉しいです!!
ちなみにですが、馬のハーレムルートは残念ながらありません。書き方が分かりません。
好意的に接して来るシロちゃんにやや困惑しているものの、そんなシロちゃんの前でカッコイイ所を見せようとあがいてるのが馬です
シロちゃんの馬に対する思いは、、、、かなり複雑です。
ただし、英霊として召喚され世界を救う役目を背負い、同じ役目を持つアイドル部たちの前では、頼れる先輩として振る舞うこの世界のシロちゃんにとって馬は数少ない弱音を吐ける存在なのは間違いないです
【Vtuber名】神楽すず
【CLASS】ライダー
【所属】.live
【性別】女性
【種族】人
【年齢】17
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
筋力B 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具B
【保有スキル】
『魔力放出(大声):C+』
大声とともに魔力放出を放出し、爆発的に身体能力を上げるもの。
効果は絶大だが隠密行動には向いていない。
『カリスマ(王道):B+』
人を引き付ける力。他人とともに道を開く、これこそ王道。
『普通:A』
常に普通であり続けるスキル。怪我、呪い、如何なる要因があっても通常通りに行動可能。
常にいつも通りであり続ける事は案外難しいものだ。
【宝具】
『????(未開示)』
【Weapon】
『火炎放射器』
注ぎ込んだ魔力に応じて火力の上がる火炎放射器。最大まで注ぐとレーザービームのようになる。
>>62
『お は く ず!スパークリングチャットの名物司会、天開司だ!!』
「「「オオオオオ!!!!」」」
『今日の対戦者を紹介するぜ!!』
『赤コーナーに立つは我らがスター!パプリカの赤は返り血の赤!!!園芸部所属パプリカァ!!!!』
『緑コーナーも特A級!神話の住人ケンタウロス!!!岩本カンパニー所属馬越健太郎!!!!』
「やっちまえパプリカ!」「蹴り倒せ馬越!!」「負けんな!!!」「…………!」「……!」「…………!!」「!!!!…………
入場料を払いスタジアムに入ると、そこは闘技場だった。
熱気と野次が場を満たし、そのど真ん中を司会の煽り文句が朗々と響き渡る。
真っ赤なパプリカの被り物をした大男が助走を付けてドンと床を蹴り、飛び膝蹴りを繰り出す。馬の下半身を持つ男はその蹴りを掴み受け流し、床に叩きつける。
「スタジアムの中に入りましたけど…………見た目以上に広いっすねハイ」
「だねぇ、ピノちゃんと双葉ちゃんはどこにいるのかな?」
「そこなんですよね…………」
>>67
3人が辺りを見渡していると、近くにいた老人がこちらにゆっくりと近づいて来る。
その男は執事の様な装いをしており、それはこの場所でひどく浮いていた。
「そこのお客様、どうかお名前を教えて頂けませんか」
「ハイハイハイ、オイラ達はちょっと忙「シロです」
「私はセバスと申します。お嬢様方がお待ちです。どうぞこちらに」
セバスはそう言うと懐からカギを取り出し『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉を開き、三人を招き入れる。
「ちょ、シロちゃん。あんな怪しい人について行ったらダメっすよ」
「大丈夫、あの人から敵意は感じないし。それに『お嬢様方』にも心当たりがあるしね」
小声で訴えかけるばあちゃるをシロが軽く流す。
徐々に小さくなる闘技場のざわめきを背にし、三人は下に緩く傾斜した通路を黙々と進んでいく。
「つきましたよ」
「おお、、、、」
「こいつぁすげえや、、、、」
「凄いですね、、、、、」
長い長い通路を下った先、そこにあったのは上品な屋敷だった。
洋風の庭は丁寧に整えられており、地下であるにも関わらず何故か空が見える。
セバスの案内で応接室に通される。
「そう言えば、ピノピノとふたふたはどんな子なんですかねハイ?」
「えっと、ピノさんはザ、お嬢様って感じで、双葉さんはのんびりした感じの人ですね。どっちも良い人ですよ」
「そうだよ、アイドル部の子たちはみんないい子たちなんじゃぁ」
「そっすかぁ、、、、、そりゃ楽しみですねハイ」
豪華なソファに座りあれこれと話し合っていると、応接室の扉がコン コンコンと三回ノックされ、一拍置いて扉が開く。
>>68
開いた先にいたのは、淡い紫色の長髪をサラリとなびかせる、黒を基調とした衣装に身を包む幼い少女だった。
「皆様御機嫌よう。カルロピノですわ」
「ピノちゃん!」
「ピノさん!」
「ピノピノ、っすよね?」
『ピノちー!』
『ピノさん!』
「シロお姉ちゃん、すずお姉ちゃん、お馬さん、りこお姉ちゃん、あずきお姉ちゃん!皆さんご無事で良かったです!!」
大人びた様子で挨拶をする少女、もといピノ。
しかし仲間の無事がわかると途端に相好を崩し、見た目相応の口調で喜びを表す。見開いたパステルカラーの瞳がキラリと光る。
「あれ、、、双葉さんは?」
「ごめんなさいすずお姉ちゃん。双葉お姉ちゃんは試合の運営で今忙しくて。しばらくしないと会えませんわ」
「なるほど、忙しいなら仕方ないですよね、、、、」
「ふふふ、すずちゃん。楽しみは後に取っておくのも乙なもんだよぉ」
「それとさ、ピノちゃん。試合の運営って上でやってる試合の事?」
残念そうにするすずの頭をなでながら、シロはピノに質問をする。
質問を受けたピノは満面の笑みでグッと胸を張り、心底誇らしげに語りだす。
「そうですわ。ここスパークリングチャットはわたくしと双葉お姉ちゃんで築き上げた最高のファイトクラブ!!宝具を用いることで実現したクリーンさと熱狂を両立したまさに至高の、、、、、」
「、、、、」
「、、、、、おほん。少しはしゃぎすぎましたわ。爺や、皆様にお茶を」
「ただいまお持ちします」
周りの生暖かい視線に気づくとピノはわざとらしく咳ばらいをすると、指をパチンと打ち鳴らし執事を呼びつける。
>>69
呼び出された執事、セバスは返事をすると数分もしないうちに人数分の紅茶を持って来る。
薄い湯気の立ち昇る紅茶は琥珀色。それをカップに口を付けゆっくり飲む、すると上品な香りが口の中にフワリと広がる。
「いやー、凄く美味しいですよハイハイハイ。もう一杯お願いできるっすか」
「勿論でございます」
「ありがとうございま、、、、ちょっと待ってくださいっす。セバスさん、あなた怪我してますよハイ」
「おや、本当ですか?」
「本当っすよハイ。ほら腕のとこ大きく切れてるっすよ、、、、アレ?血が出てない?」
ばあちゃるがセバスの腕を指さす。
その指さした先には大きな切れ込みが確かに走っていた。
しかしその切れ込みから血が出る気配は一切ない。
「アレ?どうして、、、、?」
「うふふ、お馬さん。実はですね、爺やの腕は特殊な義手なんですの。爺や、お願い」
「仰せのままに」
セバスは2、3歩後ろに下がると袖を捲り上げ、ほんの少し腕を力ませる。
すると両腕から大きな刃が飛び出す。銀色の刃は綺麗に磨かれており、誰が見ても鋭いと解る。
両腕から刃を生やしたその姿はどこかカマキリを連想させる。
「ね、ほら、すごいでしょう。ここだけの話、昔の爺やはイケイケで、、、」
「お嬢様、どうかお辞めくだされ、、、、恥ずかしゅうございます」
「だめですよ爺や、ここから先が面白いんですから」
「お、おやめください、お嬢様!ほ、ほら、例の話をしなければいけませぬぞ」
「しょーがないですねぇ爺やは。まあ今回は許してあげましょう」
>>70
シャンと音を鳴らし刃を納め、慌ててピノを止めようとするセバス。
ピノはそんなセバスをひとしきりからかうと、机の上に大きな図面を広げる。
定規とコンパスで描かれたその図には無数の消し跡があり、それが手書きであることをうかがわせる。
>>71
「ピノちゃん。これ何の図なの?」
「シロお姉ちゃん。カカラの母体、て何のことかわかりますか?」
「えっと、あの大きな花の生えた根っこの事だよね?」
「その通りです。そしてこの図はカカラの母体の出現位置と根っこの向きを、すずお姉ちゃんに頼んで調査して貰った物ですわ」
「こんなに調べたのか、、、、、凄いねぇすずちゃん」
「そうですよ。すずお姉ちゃんのデータは本当にサンプル量が多くて正確ですわ」
「いやぁ、、、アハハニーコタウンの皆さんで手分けしてやったのでそれほどでも、、、、」
「フフフ、照れるすずちゃんは可愛いなぁ、、、、、」
「と、ピノちゃん。じゃあさ、根っこはこの図の真ん中を中心にして生えてるけどさ、この真ん中はどこなのかな?」
シロがその質問をした途端、スンと真面目な顔になるピノ。
頭を掻き照れくさそうにしていたすずも、紅茶をコッソリ何倍もお代わりしていたばあちゃるもそれを見て姿勢を正す。
「この図の中心、それはここ、グーグルシティですわ。更に正確に言うならグーグルシティの中心部、『楽園』と呼ばれる部分ですの」
そう、ピノは苦々しく言い切った。
ここから徐々に話が進みだします。
実のところ、初期とはプロットがほぼ別物になっております
例を一つ上げると、初期ではアイドル部一人に付きマスターが一人つく予定だったのですが、恐ろしいほど登場キャラが増えることに気づき断念しました
>>72
「ちょ、ちょいちょい!ピノピノ、それってもしかして、、、、」
「そうですお馬さん。カカラの大本はこの街にある可能性が非常に高いんですの」
シンと静まり返る応接間、張り詰めた空気の中ピノは淡々と話を進めていく。
「この世界全体に根を張り、時折地上に根を出しては化け物を生み出す。出すのは常に根だけ、その大元を見た人間は誰もいませんの。根っこを辿ろうにも数日で腐るから不可能、だから考え方を変えたんですの」
「その成果がこの図面ということっすか?」
「そうですわ。もしも一つの場所から根が伸ばされているなら、伸ばされてきた根はきっとその場所を中心にして生えるだろう。そう思ってすずお姉ちゃんに調査を依頼したところ、結果は大当たりですわ」
「なるほどっすね、、、、、ん?」
ふと首をかしげるばあちゃる。馬の茶色い被り物が首に合わせてへにょんと折れる。
「この街の楽園?とか言う場所にカカラの大元がいるなら気付かないはずがないと思うんですよねハイハイハイ」
「それは『楽園』の特異性のせいですの」
「特異性?」
「『楽園』はグーグルシティの特権階級が住む場所です。高い壁に守られたそこは、法外な量の献金をして初めて中に入ることが許されますわ」
「でも『楽園』にはカカラの大元がいるんすよね?」
「ええ、この街の人間さんが夢見る『楽園』ではない、と言う事でしょうね」
ピノはそこまで言い切ると上品な所作で紅茶を飲み干す。冷めた紅茶のギュッと締め付ける苦みが顔を歪ませる。
>>74
「そしてもう一つ。『楔』も同じ場所にある可能性がありますわ」
「ど、どういうことっすか?」
「人殺しの化け物を生む植物。それも生きるために殺すのではなく、殺す為に生きる化け物。あんな生き物さんはあり得ませんわ。どう考えてもエネルギーが足りませんから」
「でもカカラは存在してるっすよ」
「そうです、生きれないはずの生き物さんが生きている。ならば何か特別な物がカカラのエネルギー源となっている、そう考えるのが自然ですわ」
「それが『楔』ということっすか」
「その可能性は十分に有る。わたくしはそう考えていますわ」
「ハイハイハイ確かにあり得るっすね、、、、」
「そうですわ。まぁ、説明すべきなのはそれくらいです」
真面目な話が終わり、ピンと張りつめた空気が徐々にほどけていく。
緊張が解けたせいか、今日の疲れがどっと溢れ出すばあちゃる。
背もたれに体重を乗せ横を見れば、シロとすずも同じ様にぐったりとしているのが見える。
そんな三人を微笑ましい顔で眺めるピノにセバスが何か耳打ちをする。
「、、、、、ありがとう爺や。どうやら双葉お姉ちゃんの仕事が終わったようですわ。闘技場の入り口で待っているそうです」
「マジィ!?待たせちゃ悪いし早く行こう!」
「ですね!双葉さんとも久しぶりに会うから楽しみですよ」
「どんな子か、ばあちゃる君も楽しみですねハイ」
さっきまでの疲れた様子が噓のようにワクワクとした顔で立ち上がる二人。
それを見たばあちゃるも飴色の机に手をグッと押し当て、体を持ち上げる。
シロ、すず、ピノ、ばあちゃるの四人はセバスの見送りを背にし、屋敷の外へと歩き出した。
villsのバラエティステージを買いそびれました、、、、
自分で書いておいてアレですがピノ様有能過ぎない?
>>77
確かに! 双葉ちゃんも結構有能なので期待して下さい
それとvillsの歌ステージ良かった…………シロアカであの曲は反則ですよマジで
>>75
長い通路を通り抜け、熱気と歓声に満ちた闘技場を通過し、四人は双葉の待つ入口へと辿り着く。
日はすっかり傾いて街がみかん色に染まる中、桃色に染まった可愛らしい少女が四人を待っていた。
桃色の髪と桃色の瞳に桃色の服、ツインテールをふんわりと纏める空色のリボンが良いアクセントになっている。北上双葉だ。
「ふたばんわー」
「双葉ちゃん!」
「双葉さん!」
『ふーたん!!』
『北上さん、お久しぶりですぅ』
「ふたふたっすよね?」
「みんなひさしぶり!!!双葉の名前は北上双葉、よろしくねうまぴー」
双葉がにこりと笑い再会を喜ぶ。ふんわりとした声が耳に心地よく響く。
「みんなそろったことだし、ご飯でも食べながらおはなししよー。実はさ、驚かせようと思ってだまってたんだけど、あのめいてんクックパートナーの予約がとれちゃったんだよね」
「ほんとですか双葉お姉ちゃん!?あのクックパートナーですよね!?滅多に店を出さないと噂の!天然の高級食材を使った料理を出すあの!!」
「フフフ、、、、それは見てのお楽しみだよ、、、、、、」
双葉の言葉をピノが聞き返す。ピノは目をキラリと輝かせ身を乗り出し、それを受け流す双葉も笑顔が抑えきれていない。
>>79
ネオンが灯り始めた大通りを抜け、迷路のように入り組んだ商店街を双葉とピノが先導して歩く。
「一体どんなお店なんですかねハイハイ」
「妹ちゃんたちがあんなに興奮するんだよ、美味しいに決まってるじゃん馬!」
「そうですよ。クックパートナーの名前はグーグルシティの外ですら知られているくらいなんですから」
『ううううう、、、、、牛巻は羨ましくない!羨ましく無いぞ!!』
「アハハ、帰ったら手料理作るから許してほしいんじゃぁ」
『え!?よっしゃぁ!牛巻頑張っちゃうぞ!!』
『あずきの分もお願いしますぅ』
「あずきちゃんと、スタッフの分も勿論作るよ」
画面越しにスタッフの歓声が聞こえてくる。ブイデアに帰ったら忙しくなりそうだ。
そうこうしていると双葉とピノの足がとある店の前でピタリと止まる。
その店は古き良き個人食堂と言った佇まいで、すりガラスの戸上には暖簾で『クックパ―トナー』と書かれている。
田舎町によくあるその外観は、ネオンや派手な看板だらけのこの街では逆に目立っていた。
ガラガラと戸を開けた途端心地良い匂いが出迎えてくる。炊いたお米の優しい匂いだ。
「いらっしゃいませ!クックパートナーのコック、お料理の妖精クックパッドたんです!」
「団体で予約してた双葉だよー」
「双葉さんと御一行ですね!お待ちしてました!」
カウンター越しに店員の姿が見える。
コック帽を被った元気そうな少女だ。その少女は見た目通りのハキハキとした声で手前のテーブルへ五人を案内する。
>>80
「ご注文決まりましたらお呼び下さい!」
「、、、、、、いやー、庶民的な店構えでちょっと安心したっすよハイ。メニューもぱっと見普通ですし」
「それがそうでも無いんですお馬さん。この世界で肉と言えば合成肉ですの。本物なんてお祝いの時くらいしか口にできませんわ。なんせ家畜の飼料が育つ場所が殆どありませんからね」
「そ、そうなんすか、、、、じゃあ屋台で売ってる食べ物なんかも、、、、、」
「ええ、あれはあれで美味しいですが本物の肉ではありませんわ」
「でもここの食材は全部天然なんすよね?」
「少し違いますわ。ここのは天然の『高級』食材、地鶏やプライム牛と言った食材を使っている、ですよね双葉お姉ちゃん」
「そう。ここは知る人ぞ知るめいてんなんだよ」
グーグルシティの先輩として知識を披露するピノと双葉。
二人の話す姿に無知を笑う様子は一切なく、純粋な嬉しさを湛えたむしろ喋り方は微笑ましい。
「それは凄いですね、、、、、じゃあオイラはこの『クックたんの気まぐれメニュー』で」
「シロもそれにしようかな」
「双葉もシロちゃんとおなじのがいい」
「じゃあ私も」
「わたくしもそれで」
「決まりっすね」
ばあちゃるが店員に注文を伝えると、店員は勢い良く一礼して店の奥へ消える。
>>81
料理が来るのを待っていると、ふとばあちゃるの腹がギュルリと嫌な音を奏でた。
突然襲い掛かる便意に慌てて席を立ち、店の奥に有るトイレへと小走りで移動する。
しかしトイレはたった一つしかなく、その一つのトイレは埋まっていた。
早くも限界間近の馬男を扉がはばむ、薄く白いただの扉が今に限っては堅牢な防壁に見える。
何度か躊躇した後、それでも我慢しきれずドアをコンコンとノックする。
「あ、ごめんねー。すぐ出るからちょっと待ってて」
「、、、、!!、、、、あ、ありがとうございます」
防壁の向こうから綺麗な声が聞こえ、少しするとトイレから出て来た金髪の女性がこちらを通り過ぎる。
その女性に対する綺麗だな、と言う感想は便意に塗りつぶされ、ばあちゃるは全速力でトイレへと駆け込んだ。
しばらく後、スッキリとしたばあちゃるは念入りに手を洗い席に戻る。
戻る最中それと無く店内を見渡せば、奥の方に見栄えの良い扉が見える。その扉の向こうからは先程の女性の声が聞こえた。
「遅いよ馬。もう少し遅かったら料理先に食べちゃうところだったよ」
「待っててくれたんすねシロちゃん。ありがとうっす」
「馬、待ってたのはシロだけじゃないんだからね。そこ大事」
「ありがとうっす皆」
「それでよし!じゃあ、、、、、」
「「「「「頂きます」」」」」
皆が手を合わせ食事が始まる。
>>82
皆が手を合わせ食事が始まる。
五人の前に並ぶのは真っ白なご飯、黄金色のチキン、熱々の味噌汁。
肉汁が溢れ出るチキンを丁寧に切り分け口に運ぶ、するとパリッパリの鳥皮と引き締まった鶏肉が力を合わせて顎を楽しませ、少し遅れて濃厚な鳥の旨味が広がる。
ご飯を一口食べれば、お米のほのかな甘みと鳥の味が調和を奏でる。
ワカメや豆腐の入った味噌汁をフゥ、フゥ、と吹きながらゆっくりと飲むと体がじんわりと温まっていく。
チキンを食べ、米を食い、味噌汁を飲む。それを無心で繰り返す内に五人の皿はあっという間に空になっていた。
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
米粒一粒までキッチリと食べきった五人。満足げな表情で立ち上がると会計を済ませ外へ出る。
「ありがとうございます双葉さん!美味しかったです!!」
「喜んでくれて双葉もうれしいよー。そう言えばすずちゃんも暫くグーグルシティにいられるんだよね?」
「ハイ!ニーコタウンの方は部下に任せて来たので。優秀なんですよ私の部下」
「やった!じゃあしばらくは皆でピノちゃんの屋敷におとまりだ」
「いいんですかピノさん!?」
「勿論ですわすずお姉ちゃん。シロお姉ちゃん、お馬さん、お二人も来てくれませんか?」
「勿論行くよ!妹ちゃんとお泊り会、、、、楽しみなんじゃぁ」
「あざっす!」
眠らない街グーグルシティ。
ネオンが、車のライトが、街灯が、ビルの照明がまばゆく照らす大通りを五人が歩いてゆく。
日常回&アカリちゃんとの顔合わせ回でした
食事ってその場所でとれる食材、文化、味覚、色んな物を内包してると思うんですよね、全世界共通の娯楽でもありますし。
今回の食事シーンで会話が無いのは、美味しすぎて無言で食べてたみたいなそんな感じです(言い訳)
>>85
黄金チキンはジョナサンで食べた地鶏のステーキがモデルですね
マジで美味いのでオススメです!
>>83
次の朝、五人は身支度を整え、ファイトクラブ『スパークリングチャット』の前に集まっていた。
ピノの屋敷に戻った後は大きな浴場に仲良く入り(ばあちゃる以外)、寝室でお泊り会を楽しみ(ばあちゃる以外)、天国の雲の様に柔らかなベッドで快眠し、スッキリとした目覚めを迎えていた(すず以外)。
シロにグデンと寄り掛かるすずを微笑ましく見守りながら、ピノは双葉に話しかける。
「双葉お姉ちゃん。仕事の方はどうなりましたか?」
「とりあえずエイレーンちゃんは条件つきで話きいてくれるって」
「条件の内容はなんでしたか?」
「ふたばが直接でむくこと、双葉以外に何人か付き添いを連れてきてもOKだって」
「なるほど、、、、想定より大分緩い条件ですね」
話についていけずポカンとするばあちゃる、既にほとんど寝ているすずを置き去りにし二人は話を進めて行く。
すずを起こさないように気を付けながら、シロが二人の間に割って入る。
>>87
「ピノちゃん双葉ちゃん、何の話をしているの?」
「えっとねぇ、、、、街の設立50周年にあわせものすごい規模の大会をひらいて『楽園』にいく為のお金を一気に手にいれるっていう計画をたててたんだけど、邪魔がはいっちゃったんだよね」
「そうなんですわ。莫大な優勝賞金、名だたる選手、街の50周年と言う最高のタイミング、、、、、、後はわたくし達が優勝して賞金を回収すれば『楽園』に行けるだけの金がちょうど貯まる、はずでしたわ」
「どんな邪魔が入ったの?」
「金貸し連中に圧力が掛かり、大会の開催に必要な金を調達できなくなりましたの。金が足りなければ大会が開けませんし、開けないとなればかなりの損害が出ますわ」
「圧力をかけてきたのはむかしここら一帯をしきってたギャング『サンフラワーストリート』と『エルフC4』の連中。双葉たちをつぶす為に手をくんだみたい」
浮かない表情を浮かべる双葉とピノ。
「前々から交流があり、圧力を跳ね除けるだけの力を持つエイレーン一家が唯一の活路。エイレーン一家から金を調達出来なければ『楽園』に乗り込むタイミングは大きく遅れ、遅れた分カカラの被害者が増えてしまいますわ」
「なるほどねぇ、、、、、話を聞く限り、今後すべきことは二つある感じかな?まずエイレーンちゃんとの交渉を成功させ大会を開くこと。もう一つはその大会でシロと妹ちゃん達の誰かが優勝すること。あってるよね?」
「うん、そのとおりだよシロちゃん。じゃあさっそくエイレーンちゃんのところに、、、、」
「あ、ちょっと待って下さい」
>>88
出発しようとした矢先、ピノが何かに気づいたのかパンと指を鳴らす。
「どうしたのピノちゃん?」
「あくまで想像なのですが、、、、、わたくしとすずお姉ちゃんはエイレーンさんの所に行かない方がいいかも知れません。『付き添い』を連れて来ても良い、と言うことは『付き添い』以外は連れてきてはいけないと言うこと」
「あ、そういうことか。双葉とピノちゃんはこの闘技場『スパークリングチャット』の共同経営者としてゆうめいだもんね。立場がたいとうな人が付き添い人だったらダメか。すずちゃんもニーコタウンのリーダーだしね」
「あくまで念の為ですけどね。ですがエイレーン一家との交渉が決裂すれば詰み、念には念を入れるべきですわ」
「わかった」
シロの腕の中で熟睡しているすずをピノにそっと預け、三人はエイレーン一家との交渉へと出発する。
>>89
「すずお姉ちゃん、、、、起きてください、、、、すずお姉ちゃん、、、、」
「、、、、んん、、あ!?すいません!寝ちゃってました!!、、、て、ここは何処ですか?」
「ここは図書室でございますわ。ご友人様」
すずが夢の世界から現実へと引き戻される。
寝起きのぼんやりとした視界に無数の本棚が映る。
本棚から視線を声の聞こえた方へと向ける、そこには可憐な少女、カルロピノと白髪の老メイドが居た。
「あなたは、、、、?」
「私はエミリー、婆やとお呼び下さい」
そう言うとエミリーはすずに一礼し、図書室の机に何かを並べだす。DVDとテレビ、だろうか。
「すずお姉ちゃん。わたくし達がここに残った理由は聞いてましたか?」
「ハイ、念の為ですよね」
「その通りですわ。しかし何もせずに待つのは性に合わないので、その間すずお姉ちゃんと一緒に新たに手に入れた情報の精査をしておきたいなと」
「新たに手に入れた情報?」
「ええ、それも『楽園』のからくりを解き明かす糸口になり得る情報ですわ」
そう言うとピノはやや自慢げな顔でDVDをすずに差し出す。ピノの動きに合わせてDVDの反射光がユラリキラリと揺れ光る。
>>90
「ありがとうございますピノさん。えーと、DVDのタイトルは『楽園の声』?すごそうなタイトルですね」
「『楽園の声』というのは『楽園』での生活やインタビューを記録した、所謂PR映像の事ですわ。これが毎月一度グーグルシティで広告として流されていますの」
「それって普通なんじゃ、、、、、あれ?カカラの大元は『楽園』に存在してるんですよね?」
「そうですわ。カカラの大元が存在すると思われる『楽園』からの映像、精査する価値があると思いませんか?」
「確かに」
そう言うとすずはDVDをテレビに差し込み、再生ボタンを押す。
再生されるのは住民の豪華な暮らしとありきたりなインタビュー。その映像は五分程で終わってしまう。
「うーん。何というか、、、、普通の映像ですね」
「それがそうでも無いんですわ。婆や、この映像を何処で手に入れたのか説明してくれますか?」
「ええ、喜んで、、、、この映像は放送局から奪取した『楽園の声』の元データ。当然実際に放送されている映像よりもずっと画質や音質も上質で御座います」
「へぇ、、、、、奪取したんですか、、、、奪取!?」
「誰にもバレて無いので問題は無いですよ、御友人さま」
「いや、そこじゃなくて、、、、、」
老メイドがパチンと茶目っ気たっぷりのウインクを返す。
すずは何度も目をこすり、婆やことエミリーをジッと観察する。
>>91
「婆やはこう見えてかなり強いですからね」
「そうなんですか!?」
「それはもう、婆やと爺やのコンビ『蜜蜂』と『蟷螂』と言えばそれはもう有名ですわ、、、、なにせ武勇伝が本になるくらいですから」
「もう随分昔の事で御座います、、、、、ですが昨日の事の様に思い出せます。ギャング、カカラ、サイボーグ、、、、セバスと共に風穴を空けてやったものですわ」
老メイドは何かをなぞる様にそっと手の甲を撫でる。
「ま、この話は別の機会にゆっくりと…………今は『楽園の声』の検証に集中すべきですわ」
「そうですね」
「もう一度再生してみますか」
>>92
ピノ、すずと別れた三人は今、エイレーン一家の事務所の前にいた。
数え切れない程のネオン看板は殆ど性的な言葉で満たされ、扇情的な服を着た娼婦や男娼が闊歩する場所。ここはグーグルシティ最大の風俗街、『ポルノハーバー』。
その中央に位置する建物、多くの風俗店が入った一際大きなビル、その最上階に事務所は有った。
「ハロー、ミライアカリだよ。双葉ちゃんと、、、、そこの二人は付き添いかな?」
「そうだよぉ。名前はシロ、宜しくねアカリちゃん」
「オイラはばあちゃる。宜しくっすアカリさん」
三人が事務所の前で待っていると、ミライアカリと名乗る金髪の美女が話しかけてくる。
豊満な肢体を水色を基調とした服で包んだ彼女は、明るさと妖艶さの同居した不思議な雰囲気を放っている。
「早速エイレーンの所に、、、、ちょっと待って、ばあちゃるさんに何か見覚えが、、、、、そうだ!トイレにいた人だ!!」
「トイレ?、、、もしかして『クックパートナー』でトイレを開けてくれた人っすか!?」
「そう!」
>>93
ばあちゃるの頭に先日の記憶が蘇る。
『クックパートナー』でトイレに行った時、トイレを譲ってくれた女性。その時に見た姿とミライアカリがピタリと重なる。
「アハハ!世間ってのはやっぱ狭いね!」
カラカラと笑い、三人と握手をするアカリ。
握手してもらったのが嬉しかったのかデレンとするばあちゃる。
「馬ぁ!握手くらいでデレデレしないの!!もう」
「すみませんシロちゃん」
「あはは。馬Pはやっぱり馬Pだね」
ばあちゃるを咎めるシロは寧ろ嬉しそうな、何かを懐かしむような微笑みを浮かべていた。
思わぬめぐり逢い。和気あいあいとした雰囲気。アカリに案内され事務所へと入る三人は確かな希望を感じていた。
次辺りから最大トーナメント偏的な物に入ります
せっかくなので細々とした設定をば
『エイレーン一家』
リーダー エイレーン
風俗街の元締め。水商売に対する暴力や薬物などの違法な取引を取締り、その見返りで収入を得ている。
仁義に重きを置くそのやり方に反発する人間も多く、実際金回りは余り良くない
『サンフラワーストリート』
ピノ様と双葉ちゃんの話でチラッと出て来たグループ
元ネタはひまわり動画(アニメの違法転載が異常に多い)
リーダーは鳴神裁
元々はラッパーやダンサーを始めとしたストリートパフォーマーの集まりだったのが徐々に拡大し、幾つかのショービジネスを取り仕切るようになった。
『エルフC4』
元ネタはfc2(個人撮影のアダルトビデオが多く販売されている。たまーにヤバそうなのが有る)
リーダー ケリン
エイレーン一家のやり方に反発し、離脱した人間達が前身となって出来たグループ。エイレーン一家が交渉の席についてくれたのも、ここら辺の事情が大きい。
主な収入源は違法物品の取引き。
『ニーコタウン』
元ネタ ニコニコ動画
リーダー 神楽すず
ボスが街の外で略奪行為を働いていた人間や住むところの無い難民をまとめ上げて作り上げた街。
カカラを間引いて肥料に変え、農産や畜産を営んでいる。
>>96
既存のVを無能化させる訳にはいかないので、バランスを取るため敵陣営も有能にしていった結果こうなりました(笑)
この特異点のラスボスは結構意外なバックグラウンドがあるので楽しみにして頂けると幸いです!!
>>94
「ようこそ来てくれました。私はエイレーン、ここの元締めやってマース」
「『スパークリングチャット』の代表としてきました。双葉です。よろしくおねがいします」
「付き添いのばあちゃるっす。よろしくお願いします」
「同じく付き添い人、シロです。よろしくお願いします」
「ミライアカリだよー。エイレーンの補佐をやってるんだ」
三人はエイレーン一家の事務所へと通される。
小洒落たガラスの机、それを挟む様に配置された二つの黒いソファー。部屋に掲げられた代紋がここが事務所であると主張している。
そんな事務所のソファーに三人は座り、ミライアカリ、そしてエイレーンと机越しに向き合っていた。
笑顔で三人を歓迎する赤髪赤目の女性、エイレーン。その若々しい姿とは裏腹にどこか老練な雰囲気を放っている。
「双葉サーン。大会を開く為に金を貸してほしい、とのことでしたよね」
「うん。もともと貸してくれるはずの所が『サンフラワーストリート』と『エルフC4』に脅されちゃったの」
「ええ、そこまでは聞いてマース。本当に災難でしたね。ただ言わなきゃいけないことがありマース。私たちのグループ『エイレーン一家』は余り金回りが良くありません。双葉さんの提示した額、それは私たちにとってかなり慎重にならざるを得ない額デース」
「、、、、わかった」
「それと一つ、気になることがありマース。何故、これ程のリスクを負ってまでこの大会を開こうとしたんですか?もっと小さな規模の大会なら借金などせずとも開けた筈デース。つまり、何かの目的の為に急いで金を集めようとしている、私にはそう見えます」
>>98
エイレーンは笑顔から真剣な顔へと変わる。特に目が変わった。
こちらをジッと見据えて、見定めるような目だ。
穏やかな空気が徐々に薄れていく。
「もしこの大会が開けなければ貴方達は大損デース。短期間で『スパークリングチャット』をあそこまで育て上げた双葉さんが、そのリスクを見落とすはずが無いデース」
「、、、、、、」
「双葉さん、教えて下さい。何の為に金を集めているのか」
そう言うとエイレーンは口を閉ざす。アカリも又、何も言わずにこちらを観察している。
辺りがピンと張り詰めた緊張で満たされている。
「わかった。説明する」
双葉の桃色の瞳が、エイレーンの見定める様な目をまっすぐ見返す。
「カカラの大元、それが『楽園』にそんざいする可能性がたかい。だから楽園に乗り込む為に金が必要なの」
「、、、、、、証拠はありマースか?」
「いちおう、有る」
双葉は懐から図面を取り出し、机の上に広げる。ピノの屋敷で見た、あの図面だ。
>>99
「これは、、、、グーグルシティの地図ですかね。大分使い込まれていますが」
「うん。で、ここにかき込まれてる線、これはカカラのねっこの出現位置とむきをかきこんだ物なんだよね。そして根っこがさししめす中心、カカラの本体がいる可能性がたかいばしょ、そこと『楽園』のばしょが一致してるの」
「成程、、、、、確かに筋は通ってマース。ですが、これに噓偽りが無いと証明出来ませんよね」
「それは、、、、うん」
この図面はすずが調べ、ピノが書き上げ、双葉に託されたまごう事無き本物だ。噓偽りなど勿論ありはしない。だが、それを証明する手段は確かに無い。
双葉はソファーの角をギュッと無言で握り締める。
「、、、、」
「私の見る限り、双葉さんが噓をついてる様には見えません。ですが、私は『エイレーン一家』の長です。万が一、貸した金が帰って来なかったり、悪い事に使われたりしたら私の部下に申し訳が立ちません。その『万が一』を消せない限り、無理です」
そう、辛そうな声でエイレーンは言う。
「、、、、、、、、、、、、、、、、」
何か打開策は無いか、必死に考えるが何も思いつかない。賭けに負けたことを悟り双葉はうなだれてしまう。
そんな双葉の姿に罪悪感を感じるのだろうか、エイレーンはその赤い瞳を閉じ双葉を見ないようにしている。
痛々しい沈黙が場を支配する。
>>100
「、、、ふたふた、大会さえ開けば借りた金、絶対返せるんすよね」
ソファーから立ち上がり、沈黙を破る男が一人居た。ばあちゃるだ。
「うん、もちろんかえせる」
「、、、、、それが、聞きたかったんですよねハイハイ」
ばあちゃるは一度大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと喋りだす。
「エイレーンさん、臓器って売りさばけますかねハイ」
「、、、、、?まあ、やろうと思えばやれマース」
「だったら話は早いでふぅ。オイラを借金の担保にして下さいっす。健康な成人男性の臓器なら十分な金になるっすよね?」
「な、何いってるの馬P!?」
「、、、、、」
「ばあちゃる!?」
「正気デースか?」
この場の全員がばあちゃるに注目している。
「ふたふたが本当の事を言ってると証明は出来ないっす。でもオイラはふたふたが噓をついて無いと知ってるっす。だから何を賭けようとオイラにとっては実質ノーリスクなんですよねハイ」
腕をパタパタとわざとらしく振り回し、震える声でばあちゃるは言い放つ。
茶色い馬のマスクは汗で黒く染まり、足は小刻みに震えている。それでもばあちゃるは言葉を撤回しない。
>>101
「それにオイラが言うのもなんですけど、オイラなら人質としても使えますよハイ」
「馬P、、、、ダメだよ、、、馬Pにそんなことさせたくないよ」
「ふたふた、大丈夫っす」
双葉は弱弱しい声で止めようとするが、ばあちゃるの決意が揺らぐ気配は無い。
そんな最中、双葉の懐にある携帯が着信音を鳴らす。
着信欄には『カルロピノ』の文字列が光っている。
「どうしたの?」
『こんな時にすみません。ですが今すぐ知らせるべき事がありまして、、、、、数日前に手に入れた『楽園の声』に映像を加工した痕跡が見つかりましたわ』
「どういうこと?」
『『楽園の声』のインタビュー映像、室内で録画した映像に別の背景を貼り付けていた様ですの。かなり巧妙に加工されていて、すずお姉ちゃんが『環境音に違和感がある』と指摘していなければ解りませんでしたね』
「証拠はあるかんじ?」
『ええ、有ります。そちらの携帯に送っておきますわ。エイレーンさんとの交渉に役立つかどうかは解りませんが、もし役立てば幸いです。では、御機嫌よう』
ピノからの電話が切れる。その直後、双葉の携帯にファイルの添付されたメールが届く。
立ったままのばあちゃるを他所に、双葉はファイルの中身を確認する。曇った顔にいつものフンワリとした笑顔が戻っていく。
>>102
「エイレーンさん。きいてたよね」
「勿論デース。ちょっと見せて下さい。、、、、、確かにこのインタビュー映像は私も見た事が有りマースね。加工の痕跡も、成程。間違いないデース」
「でしょー。これで『万が一』はきえたよね?ね?」
「ウビ?あ、これ」
「そうですね。室内で行ったインタビューをわざわざ外でやっている様に見せかける、、、、、どう考えても可笑しいデース」
そう言うとエイレーンはアカリに目配せをし、書類を持ってこさせる。
細々とした文字が書かれた何枚かの書類、双葉はそれを満面の笑みで受け取る。
「これが契約書類だよー」
「ありがとうアカリちゃん、、、、、うん、こっちのていじした額通り、利子も相場とおなじだね」
「勿論不備はありまセーン。あと、これは受けても受けなくてもいいのですが一つ提案が有りマース」
「なあに?」
「私たちの出場枠を二つ用意して下サーイ。もし用意してくれるなら利息を減らしマース」
「いいけど、、、、なんで?」
「金回りが良く無いせいで他のグループに舐められがちなんデース。なので双葉さんの大会で力を見せつけられればな、と」
「なるほど、ワルだねぇ」
「何言ってるんですか双葉サーン。私達は『エイレーン一家』、ここ『ポルノハーバー』を取り仕切る悪い組織ですよ」
双葉のいじりにエイレーンが嬉しそうに答える。
座る機会を失ったばあちゃるを置き去りにしてトントン拍子に話が進んで行き、双葉が書類にサインを書き込み契約が交わされた。
>>103
「いやー、なんとか上手くいったね」
「だねぇ」
「上手く行ったのは良いんでふけど、オイラは空回りしちゃってましたねハイ、、、、」
真昼間の太陽が照りつける風俗街を歩く三つの人影が有った。シロ、双葉、ばあちゃるの三人だ。
スキップしそうな程上機嫌な二人とは裏腹に、ばあちゃるは二人の後ろをトボトボと歩いている。
ふと、シロは立ち止まり、そして振り返る。
「馬」
「ど、どうしたんすかシロちゃん」
「あの時、かっこよかったよ」
「、、、、、え?ホントっすか!?」
それだけを言うと、シロはクルリと振り返りまた歩き出す。
上機嫌な三人は吉報を手に、帰り道を歩く。
エイレーン一家との交渉はこれで終わり、間もなくトーナメント編です
今回の馬は何気に大活躍でした、あの時馬が提案をして無ければあのまま話が終わってた可能性が高いです。
ついでに細々とした設定と没キャラの紹介でもしようと思います。
『ポルノハーバー』
モデル Pornhub
工業地区と住宅街の中間に位置する風俗街。
かつては治安がかなり悪かったが、エイレーン一家が来てから大分マシになった
セバス(爺や) 67歳
虫さん、執事、中二病、この三つの要素が合体して生まれたキャラ。
『蟷螂』の異名を持つグーグルシティの英雄。グーグルシティが出来たばかりの不安定な頃、カカラや悪人から街を守ってきた。
異名の由来は両腕の義手から刃を生やす姿から。
武器は義手仕込みの刃、要はサイバーパンク2077のマンティスブレード。
若い頃はクール系のラノベ主人公見たいな感じだった。過去に言及されるのが割と恥ずかしい。
エミリー(婆や) 64歳
『蜜蜂』の異名を持つ英雄。
異名の由来は戦闘時に使用する武器から名付けられた。
武器は右腕に括り付けたパイルバンカー。
若い頃はラノベの暴力系ヒロイン見たいな感じだった。昔の事はいい思い出。
没キャラ
ラクア 15歳 女性
爺やと婆やの養子
通称『蜘蛛』、整形中毒ならぬ改造中毒。生身の部分が殆ど残っていない。
背中に取り付けた8本のサブアームを用いて戦闘する。
>>104
シロ、双葉、ばあちゃるの三人は『ポルノハーバー』を通り抜け、大通りを歩き、『スパークリングチャット』の前に辿り着く。
入り口の方に向かうと、そこには辺りをキョロキョロと見回しているすずとピノが居た。
「ピノちゃーん、すずちゃーん、かえったよー」
双葉が声を掛けると二人は駆け足で近寄ってくる。
「お帰りなさい双葉お姉ちゃん!、、、、、、結果は、どうでしたか」
ピノが質問をする。すずもピノもこくんと唾を飲んで答えを待っている。
「結果はね、、、、、せいこう!」
「ヤッター!」
「やりましたね!!」
二人は天に両手を突き上げ全身で喜びを表す。その動きに合わせ薄紫と緑色の髪も揺れ踊る。
「後は大会で優勝するだけですね!シロさん、プロデューサー、双葉さん、ピノさん、りこさん、あずきさん、勝っちゃいましょう!!」
『『「「「「「おー!」」」」」』』
>>108
『お は く ず!名物司会と言えばこの俺、天開司だ!!!』
「「「「「おおおおおお!!!!!!」」」」
『今回はグーグルシティ設立50周年を記念したトーナメントォ!!名立たる強豪!大悪党!伝説!全てがここに集った、正に最大最凶だ!!!』
資金を調達し、無事開催された大会の当日、会場は無数の観客と熱狂に満たされていた。
そんな会場の選手控室、観客の声が微かに聞こえるそこに五人は居た。
「馬P、ルールはおぼえてるよね?」
「勿論っすよ。
銃火器は使用禁止
試合前の妨害、談合は禁止
試合場から出た選手はその時点で敗北とする
ですよねハイ」
「馬P、大事な事をわすれてるね」
双葉はニヤリと得意気に笑い、両手の指を二本づつ立てる。
「今大会は2対2。名付けて『コラボマッチ』双葉がかんがえたんだよー」
「あ、そうでしたねハイ…………あれ?でもオイラ達5人でふよね、一人余っちゃいますねハイハイ」
「そこは問題ないよ。双葉が助っ人をよんでおいたから」
「それって、、、、」
「みるまでのお楽しみ、だね」
「なるほど、、、、、、」
>>109
ばあちゃると双葉が話し込んでいる最中、ふとシロが首をかしげ、ピノに話しかける。
「ねぇねぇピノちゃん。銃火器が使えないのは解ったけど銃火器以外の武器はどうなの?」
「あ、それ私も気になってたんですよね」
「全てOKですわ」
「それって危なくないの?」
シロがそう言うと、ピノは何処か嬉しそうに首を横に振る。
「いいえ、安全ですわ。なにせわたくしの宝具『己が身こそ領地なれば(ザ・ドミニオン)』がありますから」
「、、、、、あ!成程ね、、、、考えたねぇピノちゃん」
シロは納得がいったのかウンウンと頷いている。
と、そこにいまいち納得の行ってないすずがピノに質問をする。
「ピノさんの宝具の効果って『自分の住む場所を自身の領地と見なし、領地の中においてのみ様々なルールを設定できる』ですよね?」
「すずお姉ちゃん。わたくしの住む屋敷、あそこに行こうと思ったら『スパークリングチャット』の内に有る通路を通らなければいけませんよね?あれ、明らかに不便だと思いませんか?」
すずの脳裏に過去の光景が蘇る。爺やに案内され、通路を通り抜け、地下にある屋敷へと通されたことを。
>>110
「わたくしの屋敷を出てもそこは外ではなく『スパークリングチャット』の内部。つまり、わたくしは『スパークリングチャット』の中に住んでいると見なせるわけですわ。マンションの一室を借りている人間さんが『マンションに住んでいる』と言っても何の矛盾も無いのと同じですね」
「成程、、、、、つまりピノさんがルールを設定してるから安全なんですね」
「ええ、具体的には『如何なる攻撃に対しても怪我を負ってはいけない、但し本来受けるはずだった痛みは感じろ、そして一定以上の攻撃を受けたら気絶しろ』このルールを常に適用することで安全に大会を開ける、と言うことですわ」
「へー。凄いですねピノさ『さぁ!!イカシタ選手共の入場!だ!』
「時間みたいですねピノさん」
すずはポンポンと膝の埃を払って立ち上がり、試合場へと向かう。
後の四人も少し遅れて立ち上がり後に続く。大会が、始まる。
>>111
数時間後
『さあさあさあ!!ここまで残ったベスト8を紹介するぜ!!!』
『歓楽街の王が騎士と共にやって来た!!ヨメミ&萌美とエイレーン&ミライアカリ!!!』
「応援よろしくねー」「がんばるぞ!」
「エイレーン行っきマース!」「やっちゃうぞ!」
「応援してるぜ銀髪の嬢ちゃん達!!」「『エイレーン一家』は伊達じゃねえな!」「金髪の姉ちゃん、色っぺえ、、、、」
『続いて我らが闘技場のスター!!ピーマン&パプリカ!!!!』
「優勝してやるっぴ!」
「その通りっぱ!」
「いつも通り渋い戦い見せてくれ!」「ベテランの強さ見せつけろ!!」「行け行け行け!!」
『更に更に!!当闘技場のオーナーまで参戦して来た!!!カルロピノ&北上双葉!!』
「御機嫌よう皆様方。優勝はわたくしの物ですわ」
「かつぞー!」
「マジかよ?!」「オーナーって強かったんだな、、、、、」「半端ねぇ!!」
『生きる伝説!老いてなお健在『蟷螂』と『蜜蜂』!!!セバス&エミリー!!』
「よろしくお願いいたします」
「お手柔らかにお願いしますね」
「すっげぇ、、、、」「まさか戦ってる所が見られるなんてなぁ!」「あれが『伝説』!」
『ニーコタウンの大ボス!そして経歴不明白髪の少女!!!神楽すず&シロ!!』
「勝つぞ私は!」
「いくぜいくぜ!!」
「今回女子率高いな、、、、、」「白髪のお嬢さん、かなり鍛錬を積んでいるネ」「おほほい!おほほい!」
>>112
『かの有名なギャング!エルフC4とサンフラワーストリートが手を組んだ!!!ケリン&鳴神!!』
「ぶっ飛ばしてやるぜぇ!!!」
「大会は開催されたが、それなら俺が優勝して面目をつぶしてやろう」
「帰れ!!」「阿漕な商売しやがって!」「サンフラワーストリートのショバ代高えんだよ!!」
『そして最後!!正にダークホース!!!ばあちゃる&馬越健太郎!!』
「なぜかここまで行けちゃいましたねハイハイ」
「ウマウマ馬越♪」
「ハハハハハ!」「馬頭に下半身馬、、、、凄い絵面だな」「馬頭の方は初めて見るな」
準々決勝まで勝ち進んだ8チーム16人が試合場にそろい踏みする。
誰が優勝してもおかしくない面々がお互いの顔を見詰める、今、本当の戦いが始まろうとしていた。
>>113
双子の様に似通った二人の少女、萌美とヨメミ。地味な服を着たダークエルフの男ケリンと端麗な顔を滲み出る暗い性根でデコレートした男、鳴神。
ヨメミと萌美は白鞘の短刀、所謂ドスを携えているが、鳴神とケリンは何も持っていない。
この二組が試合場へと足を踏み入れる。
『じゃあ始めるぜ、、、、、萌美&ヨメミ対ケリン&鳴神、、、、ファイ!』
司会が合図をした瞬間、ケリンはポケットから次々と小石を取り出しヨメミに投げつける。
「ぶっとべ!!」
「ちょ!?」
ただの石にしか見えないそれは、ヨメミの足元に落ちた瞬間ボンと爆音を鳴らし破裂する。
すんでの所で避け続けてはいる。しかし絶え間なく起こる爆発がヨメミをケリンに近づかせない。
『これは悪名高いケリンの能力!!触った無機物を爆弾に変える能力だ!ルールすれすれ正に無法!!』
「ヨメミちゃん!」
「おっと、この俺を忘れてもらっちゃ困るね!」
ヨメミを助けに行こうとした萌美に鳴神が近寄り殴り掛かる。ただの拳では無い、その拳には炎が纏わりついていた。
>>114
「ほらほらほら!!どうしたエイレーン一家!!!」
ひたすらに拳を振るい攻撃し、萌美にドスを抜く暇を与えない。
赤く揺らめくその炎は掠るだけでもその熱でもって萌美の体力を奪う。
「うう、、、熱いよお、、、、」
『これまた悪名高い鳴神の能力!!人体発火パイロキネシス!!!!気に入らない奴はみんな丸焦げ、それがアイツ!!!』
「半分以上ルール違反してる奴らが勝ってもな、、、、」「いけ好かないエイレーン一家をぶっ潰せ!!」「強いのあいつらじゃ無くて能力だよな、、、、、」
ヨメミはケリンに一方的に攻撃され、萌美は鳴神に押され気味。準々決勝で一方的な試合を見せられているからか、観客は何処か白けたような雰囲気を放っている。
「不味いよどうする?」
「どうしようどうしよう!?」
「ガハハハ!弱音か!?」
「ふん、、、、エイレーン一家もこんなもんか」
『流石のエイレーン一家の精鋭もギャングのリーダーには手が出ないか!?』
不利な状況を覆せず徐々に追い詰められていく萌美とヨメミ。
>>115
会場に居る殆どの人間が勝負の行方を確信したその時、おもむろにヨメミが大きく後ろに下がり、萌美に声を掛ける。
「しょーがない、しょーがないけど、、、、本気出すよ」
「そうだね、、、、次に当たる選手に対策されたく無いから出し惜しみしてたけど、、、、仕方ないね」
『おおっと!?まさかここでの舐めプ宣言!!!本当か!?それともホラか!?一体どっちだ!!!』
「糞が!ホラに決まってんだろ!」
『今まで本気では無かった』と言われたのがイラついたのだろう。鳴神は額に青筋を浮かべ、拳の炎を巨大化させる。怒りと炎を載せた拳を萌美の顔面に向け振り下ろす。
「焼きつぶ、、、グゥ!?」
振り下ろそうとした拳に激痛が走る。鳴神が萌美の方を見れば、そこにはドスを既に振り抜いた萌美の姿が有った。
『目にも止まらぬ居合切り!さっきのセリフはホラでは無くマジだったようだな!!!!』
「どお?萌美の本気、凄いでしょ」
「う、うるさいうるさい!!絶対に、、、、」
「下がれ鳴神!!」
「させない!」
「何が何でもしてやるよ!!」
冷静さを失い始めた鳴神をケリンが後ろに下がらようとする。
ヨメミもドスを振るいケリンを切ろうとするが、ケリンは自身の髪の毛を一房引きちぎると無数の爆弾に変えて投げつけ、爆発の壁を作ることで何とか逃げおおせる。
>>116
「鳴神!アレやるぞ!!」
「解った、、、宝具、真名開放『卑火色金』」
「ぶっ飛ばして行くぜ!!宝具、真名開放『北朝将軍凱旋火』」
鳴神とケリンは何かを唱える。次の瞬間、鳴神の手には金ぴかのライターが、ケリンの手には赤いスイッチが一つだけ付いたリモコンが現れる。
それを確認した二人はニタリと顔を歪める。
「これで勝利だ、さっき仕留めていればお前らの勝ちだったろうに」
「ガハハハ!!これで終わりだ!!!!!!!」
「何かする前に倒すよ」
「ヨメミもそうするね」
「もう遅い!」
鳴神がライターに火を付ける、ケリンがリモコンを二人に向けスイッチを押す。
鳴神の姿が突如消える、萌美とヨメミの居た場所が突如大爆発を起こす。
「な、なに?」
「どういう事?」
「見えないだろう、凄いだろう!」
「ガハハハ!この勝負貰ったぁ!!!」
『鳴神とケリンも切り札を持っていたようだ!!これは解らない!勝負の行方は正に不明!!!』
「これだよこれ!!」「どっち応援する?」「俺は銀髪の嬢ちゃんたちを応援するぜ!」「やれケリン!!」
鳴神とケリンの発動した宝具、それによりわからなくなった勝敗、観客はさっきとは打って変わりここが決勝とでも言わんばかりの盛り上がりを見せる。
>>117
「どうだ、どうした、これで『本気』か?あぁ!?」
「結構根に持つんだね、、、、くっ、、、、」
姿の見えない鳴神に苦戦する萌美、不可視の攻撃を殆どカンで捌き、時折反撃としてドスを振るってはいるもののまともに当たる気配は無い。
打ち合う度、萌美の体力と集中力は大きくそがれていく。既に顔には大粒の汗がいくつも浮かんでいる。決壊は時間の問題だ。
「ガハハハッ!!とっとと爆発しろ!!!」
「ヨメミは爆発なんてしたく無いねっ」
ケリンがリモコンをヨメミに向けスイッチを押す、するとヨメミの足元が爆発する。
爆発すること自体はさっきまでの小石と同じだが、爆発の規模、威力が桁違いに大きい。そして爆発の起こせる頻度が段違いだ。
さっきまでは『石を取り出し、狙いを定め、石を投げる』だったのが『相手にリモコンを向けボタンを押す』だけで爆発が起きる。この違いは余りにも大きい。
>>118
「、、、、よし、決めた、、、、ぐっ!?」
「よし!よし!遂に当たったぞ!!」
遂に鳴神の拳が萌美を捉える。拳から噴き出る炎が萌美を包み、焼き尽くさんとする。
『これは勝負有ったか!?』
「んーん、狙い通り!ヨメミ、後は頼んだ、よ!!」
「な、何をする!?」
萌美は燃えたまま鳴神の腕をがっしりと掴むと、そのままの体勢でケリンにドスを投げつける。
「糞っ!!」
ケリンは投げつけられたドスを咄嗟に避けるが、避けた瞬間確かな隙が生まれる。
「ほいーっと」
「チックショー!!!」
当然ヨメミがその隙を見逃す筈もなく、ケリンの急所を正確に切り裂く。そしてケリンは一定以上のダメージを受けた事で気絶する。
その直後、遂にダメージが一定量を超えたのか萌美も気絶するが、気絶しても鳴神の腕を離す様子は無い。
「は、放せ、、、糞糞糞!!糞!!!!!!!」
「終わりだよ」
ヨメミが動けない鳴神にトドメを刺す。
『お、おおおおお!!!!!!これはすげえ!!萌美&ヨメミの逆転勝利だ!!!』
「よっしゃー!!」
「カッコ良かったぜ!!」「これがエイレーン一家!」「凄いなんてもんじゃねぇ!!!!」
闘技場に万雷の拍手が鳴り響く、勝者は勿論、健闘した敗者も称える、そんな拍手が闘技場全体を満たしていった。
準々決勝からです、、、、、流石に一回戦から書くのは色々と無理があったので断念しました
代わりに2対2の異能力バトル系トーナメントと言う、個人的には割かし凝ったものにしたつもりです。異能力系のお約束に漏れず先に能力を公開した方が不利な感じですね。
ただしこれはトーナメントなので、仮に準決勝で全ての手札を見せたりしたら、決勝の相手には最初から手の内が全て解ってしまうなど、実戦とは違う大会ならではの駆け引きを書けたらなと思っております。
ピノ様の宝具解説
『己が身こそ領地なれば(ザ ドミニオン)』
自分の住む場所を領地と見なして、そこを支配できる宝具。
強そうに見えて意外と使い所が限られる宝具。別の宝具もあるがそちらはかなり癖が強め
>>122
小ネタ見つけて貰えて結構嬉しいです!!
それはそうと、とりとらの体力テスト凄い良かった……スパイギアさんとすもも先生とシロちゃんのコラボも凄い面白かった、満足
>>119
「糞、糞が!!実戦なら俺が勝ってたのに!!!」
「落ち着けよ鳴神。火、出てるぞ」
端正な顔を歪め壁にダンと拳を叩き付ける鳴神。負けたのが相当悔しかったのだろう、強く握りしめた拳の隙間から真っ赤な炎が漏れ出ている。
感情を露わにする鳴神を横目に、ケリンはベッドに寝転がりながら鳴神をなだめている。
ここは医務室。敗北した選手が念の為検査と治療を受ける場所。惜しくも敗北した二人は医務室に運び込まれていた。
「いやー惜しかったなオイ。これ次は勝てるんじゃねえの?」
「『次』?大勢の観客が見てる前で負けたんだぞ!?他所の兵隊に!!明日から俺は最強の悪党から笑いもんに格下げだよ!畜生」
「だから落ち着けって鳴神。今回であいつらの能力は解った。エイレーンとミライアカリの能力も次の試合で解る」
「、、、、つまり?」
「試合で勝って思い上がってる奴らに、俺たちの本当の強さを教えてやろうじゃないかってことだよ」
「、、、ああ、成程、良いね。乗ったぜケリン」
二人の悪党が顔を合わせニンマリと笑う。
「計画は有るか?」
「ねえな。お前が考えてくれ鳴神」
「しょうがないな、、、、、あいつらがこの会場に居る隙に俺たちがエイレーン一家の事務所に乗り込む、、、、どうだ?」
「なるほど、最高のプランだ、、、、、ぶっ飛ばしてやるぜぇ!」
ピョンと勢い良く飛び起きたケリン、いつも通りの嫌味な笑顔を浮かべる鳴神と共にエイレーン一家の事務所に乗り込む準備を始める。
この後二人は事務所で留守番していたエトラ、ベイレーン、ベノの三人にぼろ負けすることになるが、それはまた別の御話。
>>124
『お次はこの方達!!我らがオーナー!双葉さん&ピノさん!!もっと休日下さい!!!それに対するは俺らのスター!!!ピーマン&パプリカァ!!!』
「欲望漏れてるぞ司会!!」「やってくれスター!」「いつも通り勝ってくれ!!!」
ピノと双葉、ピーマンとパプリカ。計四人の選手が会場へと入る。
ピノは槍を、双葉はナイフを携えている。槍は刃から柄に至るまで満遍なく上品な装飾が施されており、ナイフの方と言えばファンシーなピンクの柄に無骨な刃を取り付けた、何とも言えない見た目をしている。
それに対するピーマンとパプリカ。緑黄色ピーマンの覆面男に赤色パプリカの覆面男。この二人は何の武器も持っていない。己の肉体こそが最高の武器だと言わんばかりのポージングでもって筋肉を誇示している。
「オーナーのお二方には恩があるっピ。でも、オイラ達は本気で行かせて貰うっピ」
「ここのスターとして温い試合は見せられないっパ」
二人は真顔でポージングを決め、ピノと双葉に言い放つ。
「わかってる。良いからきなよ」
「当然ですわ」
ピノと双葉も笑顔でそれらしいポーズを決め、ピーマンとパプリカに返事を返す。
『おおっと!?オーナーは本気をご要望だ!これは答えるしかない!!』
「解ってるじゃねえか!」「本気で行けスター!!」「頑張れ!!!」
『始めるぜ、、、レディー、ファイ!!』
司会の天開が開始を告げる。
「速攻っパ!」
>>125
真っ先にパプリカが動く。
筋骨隆々の巨体からは想像もつかない程機敏な動作で双葉に駆け寄り、その勢いのまま飛び上がり頭部目掛けて飛び膝蹴りを放つ。
『早速来たぞパプリカッター!!シャープな蹴りは正に刃物!!!』
「へえ刃物、か!双葉のナイフとどっちがするどいかな」
空を切り裂く膝蹴りを屈んで避け双葉は不敵に笑う。そして飛び膝を外し背中を向けた敵にナイフの斬撃をお返しとばかりに叩き込む。
「ッ!!、、、、」
「今行くっピ!」
一拍遅れて駆けつけたピーマン。
相方に負けず劣らずの巨体から繰り出されるのはただのパンチ。
「ピノちゃん、頼んだ」
「了解ですわ、、、ぐっ!?」
『出た!Punchマン!!強烈な拳の嵐が敵を襲うぜ!!!』
ただのパンチがピノの繰り出した鋼の槍を押し返す。
「このまま押し切ってやるっピよ」
「、、、、!?拳の勢いが止まりませんわ、、くっ!」
数多の試合で鍛え上げられたその拳は正に完成された暴力。
数多の試合で鍛え上げられたその肉体は尽きることなき無限の体力を誇る。
故に、ピーマンは完成された暴力を絶え間なく相手に浴びせ続ける事が出来る。
『緑の覆面野郎、その名はピーマン!こいつはパンチしか出来ねえ、、、だがパンチなら誰にも負けねえ!!』
「渋いぜ!」「勝てるぞ!!」「一点特化こそ至高だな」
じりじり、じりじりとピノは押し込まれていく。オーロラの様な瞳が苦し気に歪む。
>>126
「ジリ貧ですわね、、、、」
「ピノちゃん、、、!」
ピノの援護に向かおうとする双葉、そこにパプリカが立ちふさがる。
「shall we dance?っパよ」
「のー!とっとと倒してピノちゃんをたすけるの!」
「オイラはそう簡単に倒れないっパ!」
そう言うと、パプリカはドンッと周囲が揺れるほど床を強く蹴り空高く飛び上がる。
「え?」
筋骨隆々の巨体が空を飛ぶ。そんな現象を前に思わず惚けてしまう双葉。
「行くッパ!!」
パプリカは下に見える桃色の頭、つまり双葉に向けて全体重を乗せた蹴りを叩き下ろす。
「、、、!!、、ぐぅっ!!」
我に返った双葉がすんでの所で避けるも、側頭部を僅かに掠った蹴りが脳を揺らす。
『遂に来たパプリカの空中殺法!変幻自在蹴り技のデパート!!』
『パンチのピーマン!蹴りのパプリカ!スターコンビに押され気味のオーナー二人!!まだまだ勝負は解らない!!!さあどうなる!?』
久しぶりの投稿です。五人が引退する事が結構ショックで、暫く投稿期間が開いてしまいました
後、ピーマンとパプリカのキャラ付けにかなり苦労しました、、、、
ついでに紹介し忘れていた鳴神とケリンの宝具とかの紹介もしておきます
鳴神
卑火色金 元ネタ ヒヒイロカネ(和製オリハルコン的な奴)
効果 透明化
周囲の温度を操ることで光を屈折させ透明になる宝具
ケリン
北朝将軍凱旋火 元ネタ 某北の将軍
効果 爆撃
指定した場所を爆撃する宝具
おっつおっつ、懲りない二人は解釈一致、引退はワイもきつかったがピノ様が悲しみは時間が解決してくれるって言ってたし頑張る
>>127
「流石スター!!」「オーナーも中々だったが流石にな、、、」「見ろよオーナー達の目、絶望してないぜ」
ピーマンとパプリカに押され気味の二人、観客達の大半は既にピノと双葉の負けを確信し始めている。
「、、、しょうがないですね。奥の手を使います」
ピノは苦々しい顔でそう言い放つ。
大きく後ろに飛んでピーマンから距離を取ると槍を自分の方に向け、一瞬躊躇した後ギュッと目を閉じ槍を自身の手のひらに突き立てる。
流れ出す真っ赤な血、穂先に垂れて青く染まる。青い血を浴びた槍は怪しげに輝く。
流れ出た血が槍に染み込み、染み込む程に槍は存在感を増す。
『これは何だ!?何も判らねえがこれだけは解る!!これはヤバい!!!』
「ぐっ、、、、ふぅ。おや、ピーマンさん。待っててくれたんですね」
痛みに顔をしかめながら瞼を開け、ピノがピーマンの方を見ると、そこには堂々と挑戦者を待ち構える緑の覆面男が居た。
丸太の様に太い腕を組みピノを待つピーマン。ピノが声を掛ければピーマンはゆっくりと動き出す。
>>132
「相手の大技は甘んじて受けるのがオイラの流儀っピ」
「成程。では次の攻撃、勿論受けてくれますわよね?」
「無論、、、、拳で受けてやるっピ!」
お互いがお互いに近付き距離を詰める。お互いがお互いの間合いに入る。
ピノが槍を、ピーマンが拳を繰り出す。槍vs拳、ほんの少し前にも起きた勝負。違うのは結果のみ。
つい先程までは拳に押し返されていた槍、今度こそ拳を貫き武器としての役割を果たす。
「どうです、わたくしの槍は」
「う、動けないっピ。束縛?違う。麻痺毒?、、、違う。これは、、、生命力を抜き取られているっ、、、ピ、、、」
>>133
ピーマンの体から力が抜ける。ピノが槍を引き抜けば堪らず膝をついてしまう。
『ピーマンが膝をついた!?ど、どういうことだ?』
「この槍は生きているんですよ、、、、普段は眠りこけていますが、わたくしが血を与えると目覚めますの」
「、、、、、、、、、、」
『頑張れスター!!立てスター!!お前はこんなもんじゃ無い筈だ!!』
「そうだ!」「根性見せたれ!」「立ってくれぇ!!」
ピーマンが立ち上がる気配は無い。観客の応援が虚しく響き渡る。
「効果は貴方が言った通り『生命力の吸収』。ついでに切れ味が上がったりしますね」
「、、、、、、ないっピ」
ピーマンの体がピクンとほんの少しだけ動く。
「ただ、、、これデメリットもありましてね。槍の能力を発動すると、わたくしの生命力も少なからず吸い取られるんですの」
「オイラは、、ないっピ」
足に力を籠めゆっくりと体を持ち上げていく。
「だから、、、今は立っているだけでも正直辛いんですけどね」
「オイラは負けないっピ!」
『、、、、、!!!立ったぁ!!』
遂にピーマンが立ち上がる。
>>134
足は生まれたての小鹿の様に震え、体は病人の様にフラフラとおぼつかない。しかし、それでもピーマンは立っている。戦意に満ちた瞳でピノを見つめ立っている。
「、、、、、倒したと思った敵が起き上がり、お互い疲労困憊、純粋な実力は敵が上。普通に考えれば顔をしかめて愚痴の一つでも吐きたい状況、、、、でも不思議ですわ。わたくし、今凄く楽しいんですよ」
「それが戦いって奴っピよ。オーナー」
「成程」
額に浮かんだ汗を優雅に拭いピノは槍を構える。
今にも倒れそうな体に喝を入れピーマンは拳を構える。
「うりゃあああああ!!!!」
「おらああああああ!!!!」
槍と拳のぶつけ合い。通算三度目の勝負。一度目は拳が、二度目は槍が制したこの勝負。三度目の結果は果たしてーーーーーー
「グフッ、、、」
「ガッッ、、、、、」
三度目の勝負。結果は引き分け。
『ピノ、ピーマン、ダブルノックアウトォ!!!両者一歩も引かず意地を魅せ切ったぜ!!』
ピノとピーマン、二人は同時に地面に倒れ伏す。
>>135
「ピーマン!!」
「ピノちゃん!!」
一方、双葉とパプリカ。
パプリカ優勢で運んでいた戦い、そこに一瞬の停滞が生まれる。
「、、、、よくやったピーマン。後は任せろ」
一瞬の停滞から双葉よりほんの少し早く復帰したパプリカ。グッと足に力を籠め、床を蹴り前に飛ぶ。
「これで倒すっパ!!」
『パプリカが決めに行ったぜ!!単純強力ドロップキック!!!』
全体重を乗せた超速の蹴り、受け流し不可能、一撃必殺の大技は、、、、双葉に届かなかった。
「な、何だ、、、これ何っパ?」
『こ、これは!?パプリカの体から突然ツタが生えて来たぞ!?』
「、、、、、ふぅ。見てのとおり植物だよ。これが双葉のちから『ナイフで切りつけた所から植物をはやして動かす』」
パプリカの体からヒュルヒュルとツタが生え、絡みついていく。
ツタはあっという間にパプリカを動けなくしてしまう。
「ただねぇ、これ発動するまでにかなりたいむらぐが有るんだよねー。一歩間違ってたら双葉はまけてたね」
「、、、、」
>>136
ツタがパプリカの全身をギリギリと締め上げていく。最早身じろぎ一つ出来ず、声すら出せない。
(オイラはこのままあっさりと負けるのか?ピーマンはあんなに見事な戦いを魅せたというのに?)
「、、、、、うん、卑怯な勝ち方なのはじかくしてる。でも双葉たちは負けるわけにいかないの」
パプリカの余りにも無念な表情を見て、双葉は声に罪悪感をにじませながらナイフをパプリカの首筋に当てる。
(違う、違う!!卑怯なんかじゃ無いっパ!勝ちは勝ち、ルールに従っている以上それは全て正しい勝利っパ!)
「いくよ、、、ごめんね」
双葉がナイフの刃先を首の中にそっと沈ませていく。
(違、、う。無念なのは、、、こんなあっさりと負ける、、、オイラ、、、、自身、、、、)
ダメージが一定量を超え、ピノの宝具『己が身こそ領地なれば(ザ・ドミニオン)』の定めたルールに従いパプリカは気絶する。
『、、、勝者は!ピノ双葉チームだぜ!』
「少し、あっけなかったな」「こう言う日もあるさ」「無数の名勝負を見せてきたあいつも、毎回名勝負とはいかんさ」
「次はせいせいどうどう、やろうね」
勝敗が決まった。
双葉がピノを抱え会場から出ようとした瞬間、背後からブチブチと嫌な音が聞こえて来る。
「え?」
双葉が振り返った先、そこには幾重にも巻き付いたツタを引きちぎり、立ち上がるパプリカの姿があった。
>>137
『な、何が起こっている?パプリカは既に気絶している筈だぜ?』
ザワザワと観客席からも困惑の声が上がる。
「ぜったいに双葉がたおしたはずなのに」
フラリユラリと初めて歩くの赤子の様な足取りで双葉に近づくパプリカ。
パプリカに意識は無い、倒れる直前に抱いた『このままでは終われない』と言う感情、ただそれだけが今のパプリカを動かしている。
「もう意識がないのに、何でうごけるの?」
双葉のすぐ側まで辿り着くと、パプリカは蹴りを繰り出す。
鋭く、重い蹴り、普段よりも脱力した状態から繰り出された剃刀の様な蹴りは双葉の真ん前を掠め、通り過ぎていく。
パプリカの蹴りが通り過ぎた直後、突然双葉の体に刃物で切られた様な痛みが走る。
「ぐっ!?、、、蹴りでカマイタチがおきたの!?」
「次は、、、、、勝つ、、、、、パ」
突然の痛みに狼狽える双葉、それを見たパプリカはいたずら気な笑みを浮かべ、今度こそ倒れ伏す。
『、、、、流石パプリカ!!!こいつもやはり魅せて来るぜ!!!!ピーマンにパプリカ!!あいつらはやっぱりすげえ!!そしてそいつらに見事勝った双葉とピノ選手!!!両チームに喝采を送ろうぜ!!』
「凄いですピノさん!!」「やっぱスターは負けも様になるな!」「桃髪のカワイ子ちゃんがあんなに強いとはびっくりだぜ!」
双葉はピノを丁寧に抱え直し、歓声鳴り止まぬ闘技場を後にする。
>>138
「オイラ、しばらく修行してくるッパ」
「突然何言ってるっピ?」
ここは医務室。試合で負けた人間が暫くの間留まる部屋。
そこにピーマンとパプリカは居た。
「だってオイラ、あんな情けない負け方したんだから、、、、てピーマンは知らないッパか」
「いや、直接見てはいないけど、パプリカは立派に戦っていたと聞いたっピよ」
「そりゃ、優しい噓って奴ッパ。オイラは情けない負け方をして、勝った人間に罪悪感まで抱かせてしまったパ」
パプリカはくたびれた声でそう言うと、医務室のベッドに寝転がる。真っ白なシーツが歪んで大きなシワが幾つも生まれる。
パプリカの記憶に残ってるのは、双葉が申し訳なさそうにとどめを刺す所まで。気絶してからの事は記憶に無い。
「正直、オイラの蹴り技には限界を感じてたっパ。巨体が空を飛んで、蹴りを叩き込む。派手で威力も有る。でもそれだけ、オイラの技は所詮無駄の多い見栄え重視のモノ。ピーマンの拳技よりもずっと弱いっパ」
「、、、、確かにオイラの拳技の方が完成度は高いっピ。だけど、パプリカの空中殺法は誰にも真似できないっピ。その並外れた身体能力と天性のバランス感覚があって始めて使える唯一無二の技っピ」
「でも強くは無いっパ。強く無いならスターを名乗る資格なんて無いっパ」
そうパプリカはやけくそ気味に言い放ち、自分の顔を両手で覆う。
と、酷く落ち込むパプリカを見たピーマンはおもむろに立ち上がり懐から何かを取り出す。
>>139
「これ、何か解るっピ?」
パプリカはゆっくりと顔を上げ、ピーマンの取り出した物を見る。
それは黄ばんだ紙。ザラザラの茶封筒に入った古い手紙。
「手紙、、、っパか?」
「その通り。でもただの手紙じゃないっピ。これはオイラが初めて貰ったファンレターっピ」
「ああ、ピーマンがいつも大切に持ち歩いてる奴ッパ、、、、」
「パプリカも初めて貰ったファンレターを持ち歩いてたピよね?」
「勿論」
パプリカも懐から手紙を取り出す。
濡れたり破れたりしないよう小さなケースの中に入れてある大切な手紙。
「これをもらった時、どんな気持ちになったピか?」
「本当に嬉しかった。それで、今でもファンレターや声援を貰うと嬉しくなるッパ」
内容を空で言える程何度も読んだソレを一文字一文字なぞる様に読み返す。
一行読むたび、パプリカの心は少しづつ軽くなる。
「オイラ達は、勝利の為に戦うんじゃない。ファンレターを書いてくれる、応援してくれる、見に来てくれる人達を楽しませる為に戦っているっピ、、、、だから、修行に行くなんてやめるっピ。修行に行ったら試合で観客を楽しませる事が出来無くなるっピ」
「、、、、、解った。でも情けない負け方をするのはもう嫌っパ。今度新技を開発してみるっパ」
「それは良いアイデアっピね」
この後パプリカは紆余曲折の果てに、カマイタチを起こし相手を切り裂く新技『カミソリ蹴り』を生み出す事になるが、それはまた別のお話。
大学の勉強が徐々に忙しくなり、前回程では有りませんが投稿が開いてしまいました、、、、
でも戦闘シーンは結構キャラごとにらしさを出せたので満足です。今度は溜めを身に意識してみようと思います。
細々とした設定集
『スパークリングチャット』
元ネタ スパチャ
双葉ちゃんとピノ様が経営する闘技場。ピノ様の宝具のおかげで、有望な選手が怪我で引退する事がない為選手のレベルが高い。
元々野球場だった廃墟を改築した建物だったりする。
『ピーマンとパプリカ』
資料が殆ど存在せず、キャラ付けにかなり苦労した存在。
結果、『スパークリングチャット』のスターと言うキャラに。
『観客を楽しませる自分』に誇りを持っており、試合において勝敗よりも観客が楽しませる事を常に意識している。
ピーマンの技はひたすらに敵を殴りつける拳のみ、パプリカの技は空に飛びあがって敵を蹴りつける物、レパートリーが結構多い。
おっつおっつ、ピーマンパプリカかっけぇじゃねぇか、個人的にピノ様のうりゃああが半角カタカナで脳内再生される
>>142
半角カタカナで書こうか迷いましたが、あの場面だと茶化す様になってしまうかな、と思い辞めた経緯が有ったりします
ピーマンパプリカを始めとした一部のキャラは(ストーリー上の都合で)登場回数がどうしても少ないのですが、そう言うキャラが出る時は出来る限り焦点を当てるので気に入っていただけたら幸いです!
>>140
『準々決勝第三回戦!選手の入場だぜ!!』
熱気に満ち満ちた闘技場、司会の声に従い四人の選手は会場へと歩を進める。
『ばあちゃる&馬越の馬コンビ!!それに対するはエイレーン一家の家長と若頭、エイレーン&ミライアカリだぁ!!!』
「岩本カンパニーのケンタウロス馬越、強いぜあいつは」「歓楽街の元締めエイレーン一家。弱い訳がねえ!」「行け馬マスク!」
馬越とばあちゃる、ミライアカリとエイレーンの四人はそれぞれの獲物を携え相対する。
馬越は飾り気の無い武骨なハルバードを、ばあちゃるはシロから渡された大振りのナイフを構えている。
対するエイレーン一家、エイレーンは古びたサーベルを一振り持ち、ミライアカリの携える黒い革製の鞭は艶めかしく光っている。
『では!試合開始だぜ!!』
司会の天開司が試合開始の合図を出す。始まると同時にミライアカリは後ろへと下がり、逆にエイレーンはアカリを庇うように前へと出る。
『早速出たぞ最強陣形!!エイレーンが戦いミライアカリが補助に徹する!!準々決勝第三回、今に至っても未だにこの陣形を崩せた者はいない!!』
「これは厄介そうっすね」
「馬越も全くもって同意ですよ、、、、おや?」
アカリは鞭を『エイレーン』に向けて振るう。
「ちょっ、え?何やってるんすか?」
「もっと、もっとお願いしマース!」
「もう、、、、しょうがないなぁ」
>>144
バシン、バシンと強烈な音を奏で、鞭がエイレーンの全身を叩き打つ。
金色の髪を快活になびかせるミライアカリが革の鞭を振るう様はひたすらに倒錯的だ。
恍惚の表情で鞭を受けるエイレーンは完全に変態的だ。
「なぜ、公衆の面前でこの様な事を?」
「オイラは何でSMプレイを見させられてるんですかね、、、、」
ばあちゃるにとって、エイレーン一家というのは短い付き合いながらも印象深い存在だった。
思慮深いエイレーンに快活なミライアカリ。その二人が、今自分の前でSMプレイを敢行している。意味が解らなかった。
「、、、、ふぅ。お待たせして申し訳ないデース」
「、、、、、、ああ、大丈夫っすよ」
鞭の音が止む。
エイレーンは服についた埃をはたくと、啞然とする二人に向けて事もなげに話しかける。
余りの事に脳が追い付かないのだろう、ばあちゃるは何処かズレた返事を返している。
「そうですか、それは良かったデース」
「ええ、オイラ女の子待つなら何時間でも、、、、え!?」
ばあちゃるの視界から突如エイレーンが消える。
>>145
「アガッ!?!?」
「叩っ切られてくだサーイ」
『エイレーンが消える!その正体は残像すら残さない高速移動!!数多の対戦相手を翻弄した神速だぜ!!!』
「迅いな、、、」「あのスピードタネがありそうだが、さて」「凄ぇ!」
次の瞬間ばあちゃるの真正面にエイレーンが現れる。現れたと思った頃にはもうエイレーンのサーベルが振り下ろされている。
ばあちゃるは何の反応も出来ず後ろに吹き飛ばされる。
「やってくれますね貴方!!」
突如現れたエイレーン。全くの想定外。その想定外に対し馬越は即座に反応する。
茶色い瞳をスウと細め、ハルバードの鋭利な先端を真っ直ぐに突き下ろす。
『ケンタウルスの高い身長から繰り出される突きぃ!!厚さ9.5mmの鉄板すら貫通する馬越選手の得意技だぜ!!』
「ハァッ!!」
マグナムの如き一撃をエイレーンは受け流し、返す刀で反撃する。やる事は単純、難易度は激高。それをエイレーンはいとも簡単にやってのける。
とっさの一撃を受け流され、体勢を崩した馬越の腹にサーベルの一撃が入る。
「く、、、これで勝てる程甘くは無いですか」
「勿論デース。アカリさんお願いします」
「OK!」
「ウビッ!?」
いつの間にか起き上がり、背後からエイレーンを襲おうとしていたばあちゃるをアカリの鞭が襲う。
ばあちゃるの振り上げたナイフを鞭が器用に弾き飛ばす。
>>146
「ちょっ、マジっすか」
「ナイスですアカリさん!」
「えへへー、どういたしまして!」
『ミライアカリの華麗な鞭さばきが炸裂!!まるで鞭が生きているのかの様な精度!』
「鞭ってあんな風に動くのか!」「私も鞭使ってみようかな」「金髪なのにいぶし銀な活躍だねぇ!」
弾き飛ばされたナイフはクルクルと回りながら山なりに飛んでいき、試合場の端に落っこちる。
ばあちゃるはそのナイフをチラリと名残惜しげに一瞥した後、直ぐに視線をエイレーンへと戻し懐に忍ばせておいた予備の武器を取り出「させまセーンよ」
取り出そうとした瞬間エイレーンがばあちゃるに例の高速移動で近寄り、首を引っ掴んで持ち上げる。
「ぐっ、、、ちょっと力強すぎじゃないですかねハイハイ」
「それはアカリさんのスキルデスね。『鞭で打った相手を強化する能力』特別に教えてあげマース」
「成程、、、最初のアレは、、、、そう言う事っすね、、、、所で、、、、そろそろ息が、、、苦し」
ばあちゃるの首が締まり息ができない。徐々に視界が暗く、意識が遠くなっていく。
「ばあちゃるさん!!」
馬越が助けに入る。馬の下半身から生み出される加速力、たゆまぬ鍛錬に支えられた技術、ハルバードの重量。それら全てを十二分に発揮する一撃。十分な助走をつけてからの振り下ろし。
何もかもを両断出来る一撃がエイレーンの頭上に降りかかる。
「グルルルルァ!!!」
「ちょっとヤバいデスね!」
「ガハッ、ゴホッ、、、、、ハァハァ、、、フゥ。助かったっす馬越さん!!」
>>147
どんな技量をもってしても受け流せないほどの斬撃、エイレーンはばあちゃるを手放しての回避を余儀なくされる。
『強烈な振り下ろしぃ!!ハルバードの刃が血を吸いてえと唸り立ってるぜ!!!』
「流石は岩本カンパニーの馬越、強いデースね」
「おや、馬越の事を知っているんですね。光栄ですよ」
「当たり前デース。この街に住んでいてあなたの事を知らなかったらモグリですよ、、、、、ただ、ばあちゃるさん。あなたの強さには納得が行きまセーン」
「オイラ?」
ばあちゃるが聞き返すと、エイレーンは訝し気に目を細める。
嫌な予感がする。ばあちゃるの首筋を生温い汗が流れ落ちる。
一応この戦いの最後まで書きあげたのですが、眠過ぎて推敲が出来る状態では無いので明日続きを上げます
ついでに紹介し忘れてた設定をば
蟲槍『無銘』
ピノ様の使ってた生きている槍。カルロ家に伝わる槍と言う裏設定が有る。普段は眠っているが持ち主の血を吸うと目を覚まし、能力を発揮する。由来すら失われる程古い槍。
『植物操作:C』
双葉ちゃんのスキル。切りつけた所から植物を生やして操る。
『馬越健太郎』
岩本芸能社所属のV。古参のVファンならかなりの確率で知っているV。
今作ではケンタウロス要素をかなり前面に押し出しているが、実際の馬越さんはそんなにケンタウロス要素なかったりする。(動画や配信では基本胸から上しか映らない為)
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