※この注意事項を確認してから読んでね※
・このSS内で行っているゲームは『シークレットゲーム』『キラークイーン』というゲームに登場するゲームを元にしております。
気になった方はswitch版が出ているのでそちらをどうぞ。
・元ネタはデスゲームですがルールや設定を一部変えて【デスゲーム風レクリエーション】みたいな感じにしております。そのためアイドル部の面々が裏切りを行ったりしますが、あくまでゲームだから行っているのであってゲーム以外では普通に仲良くしている設定です。ドカポンで裏切りしているようなもんだと思ってください。
・作者は『キラークイーン』『シークレットゲーム』やそれを元ネタとした創作の影響を当然受けているので似たような展開があっても許してください。個人的には『彼らは最後まで殺しあうようです。』とかがオススメの創作キラークイーンです
・視点がコロコロ変わります。作者はプロじゃないので許して。あとキャラ崩壊も許して。
・不定期更新です。失踪する気は無いので気長にお待ちくださいませ
拡張機能が気になるところ、今後の展開楽しみだぁ
BET【木曽あずき】
倫理感にさえ目をつむれば、そこまで難易度高くなさそうな……?どうなんやろ分からんわ
>>68
原作では実際に首を切り取るんですが流石にどうかと思ったんで>>33のルール1と2の通り死亡したら等身大のマネキンアバターに変化するって設定にしてます
というわけで倫理的な面はあまり問題無いです。ただ、人間の脊椎を切るのとマネキンの首を壊すのは……どっちの方が難しいんでしょうかね?
攻撃側に回る……つまり殺す側に回る宣言をしたピノ様はどんな拡張ソフトウェアを使って殺しにかかるのか注目しててくださいませ。
BET【金剛いろは】
なんかつよそう(小並感)
今のところ一番情報が少ないけど急いでそうな感じからチェックポイント行きたい5番かJOKER探したい6番に思えたけどルール56知らないこと考えると違いそう(ごんごんだからそこまで考えてないのかも)
Side:ばあちゃる 3人称視点
「いやー中々凄いっすねこれ。映画化できるんじゃないっすかー?」
馬の覆面を被った男が大量のモニターの前で呟いた。モニターに映るのは彼がプロデュースするアイドル部と電脳少女シロが参加している『シークレットゲーム』のリアルタイム中継。
どこを向いているかも分からない彼にスタッフらしき人物がカンペのようなものを見せる。
「えーと何々?あーなるほど分かりました。はーいどうもー世界初!?男性バーチャルyoutuberのばあちゃるです!はいはいはいはい。えー皆さん楽しんでいると思うんですけどね。もうすぐ第一回BETタイムが終わっちゃうのでね。ここでBETの手助けになるヒントを教えてあげようということでね。現在もうすぐ6時間経過なんですがー実はもうジョーカーは誰かの手に渡っているんですよねーつまりですよーその人がジョーカーを手に入れたタイミング次第ですが、提示された解除条件がなんとなんとですよ!ジョーカーの偽装である可能性がある訳なんですよ。え?もう時間ですか?では再びゲームにカメラを戻しますんで皆さんお早めにBETしてくださいねー」
配信する内容が終わったのか、馬の覆面をつけた男が椅子に座る。
「はーついに6時間経過ですかーちょっと一触即発みたいなところもありましたけどやっと戦闘解放ですねー」
彼はある一つのモニターを見ながら呟いた。そのモニターには他のモニターのように建物の中を映しているのではなく文字と数字だけが書かれている。
そこには現在の生存人数などが表示されているがその中でも一際目立つ中央の表示が少し変化しようとしていた
現在ノ経過ジカン【00:05:59】戦闘不可
現在ノ経過ジカン【00:06:00】戦闘可能
ついにデスゲームが始まる。
第二章【ふりだしにもどれ】
あーやっぱもうもってるのか
すずすずの殲滅すればいいんですよに期待(違)
そういえば1って>>2のmadの作者?
ここで知ったけどけっこう好きだった
>>72
そうです!ご視聴いただきありがとうごさいます!
今リアルがバタバタしててこうやって妄想書き綴ることしかできなくて動画は作れないんですけど来年3月くらいには何らかの動画投稿したいなあって感じです
もしかしたらこのシークレットゲームを動画化するかも……?
今日はちえりちゃんサイドのみの更新です
Side:花京院ちえり 一人称視点 一階【00:07:31】
|
|
|
|__
|―へ \
|| \\
| ̄| \\
| ̄ ̄| \\
| ̄ ̄ ̄| \\
| ̄ ̄ ̄ ̄| \\
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| \\
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| \\
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | |__________________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_」_」:.工工工工工工工工工工工工工工工工工工
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ちえりだよ(四人一組)
ちえり達は今、階段の近くで作戦会議をしている。
「思ったより階段に来るまで時間が経っちゃったせいで6時間過ぎちゃいましたよね。そのせいで私達今めちゃくちゃ困ってますね」とすずちゃんが言う。
「6時間より前に来れれば何も考えずに上がれたんだけどねー」ともちちゃんもそれに続く。
「牛巻は様子見に一票かな。怖いよー待ち伏せ」
現在ちえり達が階段の近くに居て上に上がっていないのは単純明快、階段の途中で待ち伏せされているパターンが怖いからだ。
そもそも階段に着くのがこんなに遅くなったのは行きながら武器や防具になりそうなものを探していたからだ。しかし、見つかったのは紙とペンと硬式球とタライだけだ。こんな武器もない状態でデスゲームなんて出来るか!クソゲーだ!って最初は思ったんだけど……あまりにおかしいということで歩きつつ議論を重ねた。
議論の末にちえり達はこのことと上に行かなければいけないというルール。それとこんなに広いエリアなのに階段が3つしかないということからこう結論付けた。
上の階に行けば行くほど強い武器が手に入る。
「階段上がってみたらマシンガンで蜂の巣とか嫌だなー」
ちえりは3人に同調するように呟いた。
「でもですよ?階段が3つあってエレベーターが1つあるならこの階段に人が集まる確率は少ないんじゃないですか?初期地点バラけて配置すると思いますし」すずちゃんが何やら紙にメモを取りながら話す。
「かぐらんさ。イオリンとこめっちのこと忘れていない?」
「あっ!」
すずちゃんの意見は確かに良かったけどりこぴんにダメ出しされる。
しかし、すずちゃんは反論を思いついたようだ。
「いやでもイオリさんはジョーカーを探しに行ったはずです。なとりさんもそれに同行しているならすぐに見つけていない限りもう階段を上がっているってことはあるんでしょうか?」
んー的を得ている気がする。そう思ったちえりだけど次のすずちゃんの一言で前言撤回しそうになった。
「だから特攻しましょう特攻!」
ちえりは即座に突っ込もうと思ったけど、よく周りを見渡すと何か普通にすずちゃんに賛同しているようだ。あれ?普通なのはちえりだけ?
「まー結局のところ上には行かなきゃいけないんだし、そうするしかないよねー」
「うんうん。そうだね」
金髪コンビはそう言いながら頭をコクコクと動かしながらすずちゃんの意見に賛成する意思を示した。そしてちえりの方を見つめてきた。
……ん?ちえり?
「じゃあよろしくねちぇりたん!」
「頼んだよ!ちぇりー!」
……えっ?
……えっ?
スマホ勢はAAずれてると思うけど許して
私は今タライを盾のように構えて階段の前で一人立っている。
三人曰く、この中で一番リスクとリターンが釣り合っているのは全員と会わなければならないちえりだ。ということらしい。
確かにそうなるけど!確かにそうなるけど!
どうせ自分が行かなくても良い理由を探したかっただけだよ!
とか心の中で毒づきながら一歩ずつ歩みを進める。
関係ないけどタライを両手に構えてゆっくりと歩く女子高生ってとてつもなく変じゃない……?
……ちえりはかわいいから何でも似合う。大丈夫!
「あれ?」
とか考えている内にいつのまにか二階に辿り着いていたようだ。明らかにここにはちえりしかいない。
結局のところ取越苦労でした。
ちえりの苦労はいったい……私は今タライを盾のように構えて階段の前で一人立っている。
三人曰く、この中で一番リスクとリターンが釣り合っているのは全員と会わなければならないちえりだ。ということらしい。
確かにそうなるけど!確かにそうなるけど!
どうせ自分が行かなくても良い理由を探したかっただけだよ!
とか心の中で毒づきながら一歩ずつ歩みを進める。
関係ないけどタライを両手に構えてゆっくりと歩く女子高生ってとてつもなく変じゃない……?
……ちえりはかわいいから何でも似合う。大丈夫!
「あれ?」
とか考えている内にいつのまにか二階に辿り着いていたようだ。明らかにここにはちえりしかいない。
結局のところ取越苦労でした。
ちえりの苦労はいったい……
「もー酷いよ。皆ー!結構怖かったんだからね!」
ちえりは愚痴を吐いた。三人とも少し罪悪感があるのかちゃんと話を聞いてくれている。
よし、もうちょっと愚痴ろう。
そう思って紡ごうとした次の言葉ははすずちゃんの一言によって止められてしまった。
「あ!部屋発見です!」
入った部屋は倉庫のような場所。このタイプの部屋は始めてだ。
りこぴんが早速積まれているダンボールに手を出す。
「あっ!こっちには水!こっちには携帯食料みたいなのが入っている!」
「え!まじ!?やったー!ごはんだー!」
ちえり達、実はこの6時間水は飲んでいても食料は食べていなかった。水は水道みたいなところがあったから何とかなったけど食料は全くなし。当然全員大喜びした。
「やったー!ちえりおみずのむー!」
ちえりも勿論喜んだ。ちえりも戦利品を手に入れようとちょっとりこぴんから離れたところにあるダンボール箱に駆け出そうとして
転んだ。
「いたっ!」
「大丈夫ですかちえりさん!?」
「だ、大丈夫……転んだだけだから……」
ピピピピピピピピピ
一先ず起き上がり、……突如自分の前方から聞こえ始めた謎の機械音の存在に気がついてちえりはつい顔をしかめてしまった。うるさい……
この音ちえりが転んだときから聞こえてきた気がするけどいったい何だろう?
音の鳴るところを確認するとそこには2つのUSBメモリ?のような物が。
「なんだろこれここから音が鳴っているみたいだけど……PDAの機能拡張ソフトウェア?」
その二つの表にはPDAの機能拡張ソフトウェアと書かれており、裏にはそれぞれ
『ルールブック』『地図拡張機能』と書かれていた。
「とりあえず差してみたら?ちぇりー。運営側の仕込みなら悪いようにはならないでしょ」
これの取り扱いについてあーだこーだ5分くらい話していたちえり達だったが、りこぴんの鶴の一声でちえりのPDAに差してみることが決まった。
「よし、じゃあ『地図拡張機能』を入れるよ?」
ピコン
私がPDAにソフトウェアを差し込んだ瞬間、PDAの画面が変化した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このソフトウェアはPDA拡張ツール【地図拡張機能】です。
PDAの地図上に部屋の名前とアイテムの表示機能を追加します
※ 注 意 事 項 ※
@インストールする事によりバッテリー消費量が増加します
A強力なソフトウェアほどバッテリー消費が激しくなります
B一つのソフトでインストール出来るPDAは1台までです
Cインストール中は絶対にコネクタを外さないでください
インストールしますか?
(消耗度:微量)
はい いいえ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
え?何これ!凄い機能じゃん!ちえりは何も考えずにすぐさまはいを押した。
え?何これ!凄い機能じゃん!ちえりは何も考えずにはいを押した。
「ちぇりたん何も聞かずにやっちゃったねー」
「え?ちえり何か不味いことした?」
「よくさっきの読んだ?入れるとバッテリー消費するみたいだよ?まあ微量みたいだから大丈夫だと思うけど」
「あっ……」
もちちゃんの指摘で始めて気づく、まだ全然バッテリー残っているから気にしなかったけど、このゲームにおいてPDAのバッテリーが切れるということはすなわち死を意味する。首輪が外せなくなっちゃうからだ。
軽はずみにはいって押しちゃいけなかったな……反省。
「まあまあもっちー。たぶん結局入れることになってただろうし、何より凄い便利だよ!見てみてちえりちゃんのPDA」とりこぴんがちえりのことを擁護してくれた。優しい……
私もりこぴんと同じように自分のPDAに視線を向ける。現在開いているのはマップ画面。そこには今までにない表示がなされていた。それぞれの部屋に倉庫、会議室、戦闘禁止エリアなど書かれており、武器や食料、機能拡張ソフトウェアなどのアイテムがあると思われる場所には更にマークがついている。
現在位置表示機能はないからあくまで推定になるけどちえり達がいるこの部屋もアイテムマークは書かれている。
えっこれバッテリー消費微量でいいの?
『地図拡張機能』があまりにすごい機能だったから他の人のPDAに入るか試してみたけどどうやら一つのソフトウェアは一度しか入れられないようだ。
まあそもそもインストールするときの注意画面に書いてあったんだけどね。まあ一応ってことで。
それともう1つあった『ルールブック』の拡張機能についてだけど『ルールブック』の効果は
ルール3〜9が全て表示される。だった。
全部のルールを知っているちえり達には意味は無かったので『ルールブック』は誰かとの交渉用にして、ちえり達は使わないことにした。
食料も水もある部屋でちえり達はしばらく休憩することにした。
あまりに満たされた状態。ちえり達はここがデスゲームの場であることを忘れそうになった。
だけど、そのことをある人物との出会いによって思い出すこととなった。
next……Side:金剛いろは
今日はちえりちゃんだけと言ったなあれは本当だ。
だが、もう明日となったのだ!というわけで貼ります
短いです
Side:金剛いろは 三人称視点 二階【00:09:03】
金剛いろはは長い廊下を歩いていた。
小声で何やら歌っており何ともご機嫌そうだ。
「デデッデデッデデッデッデッデン!」
その視線の先にはPDAがあり、どうやら何かを確認しているらしい。
「うーん。どうしよっかなー?」
いろはは急に何かに悩みだした。だが、考えながらも歩みは止めていない。そのため彼女はすぐに気づかなかったようだ。
ガタガタガタガタガタ
「えっ!?何!?」
突然自分の前方のシャッターが閉まり始めたことに。
「え?まじ!?」
それを見たいろはは閉まり始めたシャッターの先も確認せずに走り出す。
もし、シャッターが閉まり始めたことに気づいたら、もしくはちゃんと注意深く確認していれば気づいたことだろう。
そのシャッターの先もシャッターが降りてきていることに。
「あ!奥にもシャッター!?やばい!」
それに気づいたときにはすでに遅く、途中からシャッターのスピードが早くなり出したのもあり、いろはは二つのシャッターの間に閉じこめられてしまった。
いろはは閉じ込められてすぐ天井にある監視カメラを見ながらシャッターを叩いた。
「これずっとこのままかな!?このままじゃ特に誰とも食料の奪い合いとかしないまま餓死で敗退になっちゃうんですけどー!」
いろはは恐らく……ゲームの運営側に語りかけているようだ。だが、当然誰からも返答はない。
数分経ち、いろはがシャッターを叩き始めたそのとき、天井が開いて縄ばしごが降りてきた。
「わかっちゃったぁ……元からはしごが降りてくるとこまで含めた仕掛けでしょこれ……つまり何人かいるチームの分断用だ!」
いろはは珍しく明察な答えを導きだした。この建物にはゲームをおもしろくさせるために仕掛けがいくつもあり、これめその一つなのだ。
いろはは早速縄ばしごに登り始める。しかし、服装も相まってか登るのに時間がかかっているようだ。
「上に行きたくないのに行かなきゃいけないし、行くのにも時間がかかってる……しかもたぶんこれ以外にも色んな仕掛けがあるでしょ!嫌だもうー!帰りたいー!」
やがて誰もいない三階に声が響く。
皆が上がりたいと思っている三階に一番乗りしたのは上がりたくない彼女であったようだ。
next……side:あずたまチーム
人によってキャラへの印象は違うと思いますし、彼女達も電脳存在とはいえ人間ですからその日その日によって性格も変わると思うので、
このSSにおける彼女達のキャラ付けのイメージをお伝え致します。
シロ『殺し側の視点を持つ歴戦の戦士』
双葉『ゆるふわナイフ(日常と戦闘の性格の差的な意味で)』
めめめ『生存本能つよつよマトン』
牛巻『明るく不憫な常識人』
ちえり『トラブルに弱いけど戦闘力ドバドバお嬢』
もち『頭脳明晰ハイテンション清楚ギャル(分からなくても答えがやってくる)』
すず『理性的なバーサーカーその1(理性寄り)』
たま『理性的なバーサーカーその2(脳筋寄り)』
あずきち『狂人RPをしているドジな自由人』
なとり『洞察力は高いけどときどきふにゃる』
イオリ『ちょっと負けず嫌いな頭お花畑』
ごんごん『知識はあるけどIQ足りない系お気楽脳筋プレイ』
ピノ『思い切りが良い策略家』
性格が本人とちょっと違く無い?って思うのもあると思いますがたぶんそれは一部の動画での性格のみを反映させてる故だと思います。
なんでそんなことしているかっていうと……展開の都合ですかね
ちえりちゃんの全員との遭遇ってのはどれぐらい近づけば遭遇判定なんだろう?
ジョーカーもだけど始まってから気がつくまでにPDAすり替え起こってたらとかも怖い
更新再開です
Side:木曽あずき 一人称視点 二階【00:09:20】
「はい、たまさん。もしきこえているようでしたら緑オリオンをどうぞ」
「え?ザリガニオリオン?じゃなくて!そもそも見える位置にいないんだから身振り手振りはいらないでしょ!?」
ノリ良いな……
あずきは今、かなり長い廊下に立っている。たまさんと会話してはいるものの本人の姿は全く見えてない。何と命の危機の末バディを組んだたまさんと別れてしまったのだ。
え?それなのに何で話せているんだって?それは
「これってどれくらい離れているの?」とPDAからたまさんの声。
「2km位ですかね?そんなに離れてはいませんよ」
あずきは自分のPDAに向かって話しかけた。
今、あずき達はさきほど手に入れたPDAの機能拡張ソフトウェア『トランシーバー』の動作確認をしている。
このソフトウェアは二人一組のソフトでPDAを電話のように使用することが出来る。
便利な分バッテリーの消費もまあまあ。致し方ないとは思いますが。
「やっぱりこのソフトウェアはどこでも使える神アプリなんでしょうね」
「最初の説明文にも書いてあったとおりだね」
さて動作確認も終わったところだし、合流しますか。
「じゃあ今からそっちに向かいますね」
「オッケー」たまさんの返事を聞いたので自分の足を踏み出した。そのとき
「……ん?」
「え?なになに?何かあったの?」
たまさんが少し慌てた様子で話しかけてくる。
「たまさん。話し声が聞こえてきました。数はおそらく3人以上。どうしましょうか?」
まだ距離はある。今なら通話をしていてもトランシーバー持ちであることはバレないはず。あずきはそう考えながら、たまさんに尋ねた。
まぁ……返事は予想がつきますが。
「じゃ例のアレを試そうよ。オーケー?あずきちゃん」
やっぱり予想通り。正直もっと色々準備をしたりしたかったけれど、まあぶっつけ本番でいきましょうか
「分かりました。では」
ピッ
あずきは一度トランシーバーを切ると、自分の今の見た目を確認してから話し声が聞こえてくる方へと歩きだした。
「あ!誰かと思ったらあずきちゃんじゃん!」
花京院ちえりさんが話しかけてきた。あずきが出会ったのは牛巻りこ・花京院ちえり・神楽すず・猫乃木もちの四人チームだった。
……ちょっと多いですね。リスクが少ないデスゲームなら少数で動く人が多いと踏んでいたんですが。
まあ流石に全員突然現れた人物にくらいは警戒心は持っているみたいですけど。
「あ、こんなところで偶然ですね」
「あずきちは一人なの?」
「いや夜桜さんも一緒だったんですけど一旦別行動中ですね」
少しずつ歩みをしていくと花京院さんが何やらPDAを確認しはじめた。
さらに近づいていくとちょっと笑みを浮かべたあとあずきを確認……いや、違うな。あずきと自分の距離の距離を確認しはじめた。
おそらく……全員と遭遇の解除条件。
ちょっと揺さぶりをかけてみますか。
「中々近づいてきてくれないですね?やっぱりあずきのことを警戒していますか?大体3〜5mくらいまで近づいてきているのに。そこから中々近づいて来てくれませんね」
「!!」
ビンゴ。他3人が警戒ってところで動揺したのに対して花京院ちえりさんだけは3〜5mってところに反応した。これは確定。
「いやそんなことないですよ!あずきさん。ただ……」と神楽さんが大きくこっちに近づいてきた。ただ……のあとは解除条件が何か分からないから怖いってところでしょうか。
「分かりました。解除条件を見せれば信じてくれますか?あずきの解除条件は『自分以外の首輪を3つ取得する』です。皆さんと一緒に行動させて貰えれば、皆さんが解除に成功したら簡単に解除できるので同行させてもらっても良いですか?」
あずきは解除条件を表示したPDAを4人に見せた。
「オッケー一緒に行こうあずきち!ついでに会長のところにも案内してね」
もちさんの一言であずきは4人の中に受け入れてもらえることになった
同行して10分。たまさんのいるところの近くまでやってきた。相手もまだ警戒しているのかルール交換や解除条件の提示の申し出は無い。欲しいと言って揺さぶっても良いけれど……このあとの展開に差しつかえがあったらマズイのでやめておこう。
「おーい!みんなー!りこぴんー!」
「あ!さくたまちゃん!」
廊下の先からたまさんが手を振ってやってきました。準備完了ってところでしょうか。
あずきは密かに4人よりも一歩前に出た。
「私合わせて6人!すごーい!」
たまさんが目を輝かせながらこちらを見る。たまさんは既にあずきがこの中にいることもあってかすぐに近づくことができた。
そのキラキラした目の意味は仲間が増えた喜びじゃなくて……獲物が増えた喜びでしょうか?
多人数狙うのは難しいし辛いだけなので個人を狙った方が良いと思うんですけど。
「あ!そうだみんな!さっきあっちの部屋ですごいの見つけたんだ!来てきて!」
ぐいっ
「あっ!ちょっ、たまさん!?」
たまさんはそう興奮した様子で言うとすずさんの腕を引っ張って駆け出した。急なたまさんの動きに対処が遅れたすずさんは警戒していたのにも関わらず、抵抗もできずただ引っ張られていく。
「え?何?会長!?」
当の本人も対処できていないのだから他の人びとがすぐに行動できるわけがない。
一瞬の間の後、ようやく他のメンバーも慌てて駆け出す。勿論あずきも二人を追った。
「ここここ!さあさあ入って入って」
数分後到着した先にあったのは何の変哲も無い扉。
たまさんは手を掴んでいたすずさんの後ろに回り込むと背中を押していくがすずさんは当然抵抗して前には進まない。
「何があるんですか?」まだ困惑中のすずさんはたまさんに尋ねた。
「あのねーこの部屋だけ凄い豪華な装飾でお菓子とかがいっぱいあるんだ!」たまさんは食いぎみに答える。よほど早く入りたいんだろう。
すずさんは少し考えたあと意を決してドアを開けた。その先には……
カーペット、ベッド、冷蔵庫、机の上のお菓子、高級ホテルのような豪華な部屋があった
「わっ!豪華な部屋!ほんとだ!」
ドアの先にあったのは今までデスゲームにいたとは思えないほどの豪華絢爛な部屋。
そのため全員先ほどまで持っていたたまさんへの警戒心を忘れ、部屋に入りたそうにウズウズしだした。
「よし、じゃあ入ろうか?すずちゃん」たまさんがすずさんを押して部屋に入っていく。というかあずきの後ろにいるりこちゃん、花京院ちえりさん、猫乃木さんもあずきを押してでも入ろうとしている気配を感じる。
「はい!」すずさんはたまさんに押されるどころか自ら入った。そしてたまさんもそのまま入っていく。次はあずきが入る番だ。
あずきはポケットの中を確認した。
「え?」
そう声を漏らしたのはおそらくりこちゃん。だが、無理もないことだろう。何故ならあずきは部屋に入らずに急にドアに背を向けるように後ろを振り返ったから。
「ミッションスタート」
後ろ側からたまさんの合図の声が聞こえた。
バタン
部屋のドアが閉まる。勿論閉めたのはたまさん。今ごろすずさんも急に閉じられたドアに混乱しているだろう。勿論、こちらの三人も絶賛混乱中。だからこそ一気に畳み掛ける。
チャキ
「抵抗は無駄です。渡す情報によっては命を助けないこともありません」
あずきはエアガンを三人に向けて構えた。
Side:夜桜たま&木曽あずき 三人称視点 二階【00:09:50】
「抵抗は無駄です。渡す情報によっては命を助けないこともありません」
あずきが3人に対して銃と見せかけたエアガンで脅す頃、たまも同様にすずを脅していた。
「これなーんだ」
たまがあずきに行った脅し行為と同じ、背後から抱きついてナイフを首元に近づける。
「たまさん……何をすれば殺さないでくれますか?ちえりーらんどは嫌なんですけど」すずが少し怯えた様子でたまに話しかけた。
抵抗することも可能だがその前に首にナイフの刃が当たることは目に見えているため抵抗するつもりはないようだ。
「うーんそうだね……助けてほしいんだったら、まずは解除条件教えて欲しいな」とたまは言った。だがしかし、本当に助ける気は一切ないようだ。
たまとあずきは最初からこの作戦をする気で4人組に接触した。その作戦の内容とは部屋に一人だけを入れて武器で脅して情報収集。そのあと部屋に招いた人間を殺し、たまはこの部屋に存在するもう一つの扉から首輪とPDAを持って逃走。
それを確認後あずきも逃走し、トランシーバーで合流という作戦であった。
だからすずが殺されるのは規定路線であった。
「えっと、PDAの破壊です」
そうとも知らないすずは自分の命の為に自らの解除条件を伝える。だが最初の質問は殺してPDAを奪うつもりであるたまにとっては何の意味もなく。あくまですずに疑念を抱かせないものである。そのため当然次の質問を続ける
「じゃあ次。仲間の解除条件は知ってる?嘘をついても無駄だよ。今ごろあずきちゃんが同じ質問しているだろうし、知ってたら解除条件教えてね?」
すずは悩むことなく自身のちえりーらんど行き阻止のために三人の解除条件を喋った
「もちさんはQ、りこさんはJ、そしてちえりさんは7です」
たまは即座に返答が来たことに少しだけ戸惑って、よく考えたら当然かと考え直し口を開く。
「じゃあ次の質問。ルール何知ってるか教えて?」
これに対し、すずが返答したそのときだった
「たまさん!一旦すずさんに攻撃しないでください!」
あずきの初めて聞くような大声が廊下から聞こえたのだった。
「で?花京院ちえりさん。それは本当のこと何ですか?」廊下側では先ほど大声を出したあずきが銃を構え続けながらもちえりに質問をしていた。
「うんそうだよ。このソフトウェア拡張マップ機能によるとこの部屋は戦闘禁止エリアって書いてある。だからこのままだとこの部屋でたまちゃん。もしくは二人両方が死んじゃう」
ちえりは自分のPDAを出しながら言った。ちえりが言ったことは正しい。現在たまとすずがいる部屋は戦闘禁止エリアだった。だが、この部屋に戦闘禁止エリアであるという目印は無く、そもそも戦闘禁止エリアについてのルールを所持していなかったたまとあずきにはこの部屋が戦闘禁止エリアだと知ることは不可能だった。
「戦闘禁止エリア……あずき達が知らないルールですか。くっ」
戦闘禁止時間に救われたものの、戦闘禁止エリアに苦しめられているあずきは現在の状況を呪った。
「そこで提案なんだけどあずきちゃん。ルールあげるからさ。ここは引いてくれない?」
あずきの苦しむ顔を見てこのことを二人が想定していないことを把握したちえりは畳み掛ける。しかし、この提案はあずきにとって受け入れることは難しかった。
「すでに敵対しているこの状況でルール確認?無理に決まってますよ。いつ襲われたり、嘘教えられたりするか分からないのに?」
あずきの言う通りこの状況で銃の構えを解いてPDAの画面を見せてもらってなどいたらいつ襲われてしまうかなど分からない。銃は没収されること確実な為、いくらエアガンといえど優位性を失ってしまうのは確実。
かといって、この場で読み上げてもらうのは嘘を付かれる危険性がある。
持っているのが銃ではなくエアガンのため、この場で3人殺してPDAを奪うのは不可能であるし、出来たとしてもルールの内容が分かっていないため、戦闘禁止エリアがどこまでなのかが不明。
まさにこの状況。あずきとたまにとっては詰みに等しい状況であった。
「大丈夫だよ。あずきちゃん。ほらこれ見て」と言いながらちえりは自分が持っていたもう一つの機能拡張ソフトウェアを取り出した。
「……ルールブック?まさか!」
「そう!このソフトウェアはルール一覧を読むことが出来るソフトウェアなのです!今からこれを廊下のあっち側に放り投げるからそれで手打ちにしない?」
ちえりの提案に裏や見落としが無いか少しだけ考えてあずきはその提案を了承した。
「今の話たまちゃん聞こえてたー?」とちえりは大声で喋った。
「……大体聞こえてたよ!」
たまもそれに対して大声で返した。ちなみに既にたまはすずのことを解放し、反対側のドアに手をかけている。
「オッケー!じゃあぽいっ!」
ちえりがソフトウェアを廊下の方に投げた瞬間。二人は駆け出し、そのまま何処かに消えていった。
寝落ちしたマーン!すマーン!
5分後
「ふぅーやっと合流できた。というか私二連続で戦闘禁止のせいで失敗しているんだけどどう思う?」たまがあずきに対して愚痴を言った。二人はトランシーバーもあり、元々の逃げ出すルート通りだったこともあり、すぐさま合流することが出来た。
「そんなことより聞いてくださいたまさん。世紀の大発見しました」
「なにあずきちゃん?」あずきの真剣な声にたまは身を構え、返事を待った。
「踵を蹴ると死ぬほど痛いです」
あずきは真顔で言った。
「ようするにしばらく走れないってことね。はぁ……」たまは呆れながらも呟いた。
「じゃあ早速ルールブックタウンロードしますか……どちらが入れますか?」あずきは唯一の戦利品であるPDA拡張ソフトウェアをスカートのポケットから取り出した。
「私いらないよ?やだよバッテリー消費。さっきの作戦失敗はあずきちゃんのミスだし、あずきちゃんが入れておいてよ」
あずきはたまの言葉にしぶしぶ納得し、PDAに差し込んだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このソフトウェアはPDA拡張ツール【ルールブック】です。
PDAで1〜10の全てのルールを確認することができます。
※ 注 意 事 項 ※
@インストールする事によりバッテリー消費量が増加します
A強力なソフトウェアほどバッテリー消費が激しくなります
B一つのソフトでインストール出来るPDAは1台までです
Cインストール中は絶対にコネクタを外さないでください
インストールしますか?
(消耗度:微量)
はい いいえ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あずきは『はい』を選択した。インストール終了後、二人はまだ知らないルールを確認した。
「あ、そういえばそのソフトウェア」ルール確認後、たまはふと思った疑問をあずきに聞くことにした。
「実はこれがもう既に使用済みのソフトウェアで騙されてた可能性もあったと思ったんだけどよく見抜いたね。どうやって見抜いたの?」
「あっ」
「えっ」
「い、いや、えっとー」あずきは明らかに動揺していた。おそらく、そんなことは考えてもいなかったという感じだろう。
「あずきちゃん……結構ドジっていうか抜けているところあるよね……」たまはクスクスと笑った。
作戦には失敗したものの明るい雰囲気だった。
やがて、二人は少し廊下で休んだあと、また行動を始めた。
Side:??? 一人称視点 二階戦闘禁止エリア外の廊下【00:10:11】
ガチャ
3人が豪華な部屋で寛いでいる中、私はなに食わぬ感じで廊下に出た。
「えっと……確かここ」
廊下に出た私は辺りを見渡して、ドアの近くの壁に近寄った。暗くて見ずらいけれど……
「あった」
そこにあったのは壁につけられている謎の機械……の残骸だ。既に何者かによって壊されてグチャグチャになっており、何の機械かは全く想像が出来ない。
普通ならば。
まあ私はこのゲームの『サブマスター』だから知っているんだけれど。
私はゲーム開始前に既にこのゲームのルールや建物に関する知識などの誰がどのPDAを持っているか以外の情報は大体知っている。何かゲーム内で何らかのトラブルが生じたときの報告係などの仕事を任されているのだ。
……ゲーム開始前にランダムに選ばれたらしいんだけど運が良いのか悪いのか。
そのため私は当然『この機械がプレイヤーが戦闘禁止エリアに入ろうとするのを感知する動体センサーであること』も『この機械が壊れていなければ本来ならドアを開けた時点で備え付けられたスピーカーがこの部屋が戦闘禁止エリアであることを伝えてくれる』ということも知っているのだ。
「にしてもこれは酷いなー何発もバットで殴り続けたって感じだ。全く……一体誰がやったんだか」私はぶつぶつと小声で呟いた。
あの二人は知らなかったみたいだし、これをやったのは別の人物。
あの二人より早くここにたどり着いて、この機械の意味に気付き、壊した存在がいる。しかもこれをやって利益があるというということは犯人の候補は9、10、そして……
「賞金が欲しい人……か」
私は軽く身震いした。サブマスターとなったおかげで他人より有利な私でも、他の人を自分が貰う賞金のためにちえりーらんど送りにする勇気はない。
それなのにゲームに積極的に参加している人がいるのだとしたら。
『自分が狙われてしまうかもしれない。』
その恐怖から更に思考は進む。
……自分が狙われてしまうくらいなら先に
そう思考したその瞬間ドアが勢いよく開いた。
「えっとーいたいた!なんてそこでしゃがんでいるの?」
「あ、ここに謎のネジが落ちてたからこれは何かなーって」拾い上げた残骸の部品を見せる。
「ごはん出来たよ!早く食べようよーりこちゃん」
「おっけーちぇりー今行くよっ」
私……牛巻は明るい部屋へと入っていく。
席に付きながらも頭の中では考えて続ける。
あ、犯人候補はもう一人いた。牛巻じゃないもう一人のサブマスターだ。サブマスターかぁあの場所に機械があるってのも知っているし、上に行けば行くほど強い武器が手に入るってのも知っているから……有力候補だな。
……でも、もう一人のサブマスターって誰なんだろう?
next……Side:電脳少女シロ
今日の更新はこれで終了です。
実は牛巻はサブマスターでした。とはいえPDAの時計の見方を教えたりと本人にあまり隠す努力はなかったようですが……
一応>>86の質問にお答えしますとあずきちの揺さぶり通り3〜5m以内に入れば遭遇扱いです。距離のみが判定の条件なので壁越しでも遭遇扱いになります。7のPDAの特殊機能で遭遇人数のカウントメーターがあるのでそこで確認可能です。
次回、負傷者が出ます!それで二章は終了し、ついに三章では死人が出ます!お楽しみに!
次は戦闘開始だと言ったな。次はシロちゃんsideだと書いたな。
あ れ は ミ ス だ
すいません…3章に入れる予定だったエピソードよく考えたら時系列的にこのタイミングだったので。
本当のシロちゃんsideは土曜辺りに投稿する予定です
Side:八重沢なとり 三人称視点 一階【00:13:21】
「見つかりませんね……。もうそろそろ諦めて階段に行きますか」
なとりとイオリは現在一階のとある部屋でジョーカーのPDAを探していた。現在の経過時間をPDAで確認したなとりはジョーカーのPDAの捜索を諦めることにしたようだ。
「えーっ?なとなともう諦めちゃうの?まだ1階にあるかも知れないし、まだ11時間もあるよ?」
それに対してイオリは疑問の声を投げかけた。
「いや、もう13時間経っているんですよ。もう見つけた食べ物なくなりそうですから早く二階に上がらないと」なとりは焦った表情で言った。声色からもその様子が伝わってくる。
「まぁもうジョーカーが誰かに取られちゃっている可能性もあるもんね。よいしょっと」
イオリは何かを手に持って立ち上がった。イオリの言う通りジョーカーは一階のどこかに置いてあるという性質上、誰かが既に見つけて持っているという可能性も高い。その場合、完全に今ここでジョーカーを探している時間は無駄である。
「はい。……ん?イオリさん何を持っているんですか?」なとりはイオリが何かを持ちながら立ち上がったことに気付き、持っている物に興味を持ったようだ。体をぐいっとイオリの方に曲げて顔を近づけた。
「これは……箱?何が入っていたんですか?」
「えっとねーいろんな色の紙とかハサミとかペンが入ってたよ。さっきここで見つけたの」
イオリが持っていたのはおどうぐばこ、もしくは工作セットというべきラインナップのアイテムが詰め込まれた箱だった。本人の言う通り、このアイテムはこのゲームの運営が置いたアイテムだ。
「護身用……に使えそうなのはハサミくらいですかね」
なとりは箱の中身を見ながら呟いた。すぐに武器に使えるか考えてしまう辺り完全に今の状況に適応してしまっているようだ。
その状態をほんの少しだけ不満に思ったのか一瞬だけイオリはムスッとした顔をして、すぐに気を取り直した。
「なとなと!見てこれ!こんなのも入っていたんだよ!」
イオリが取り出したのはかなり大きなサイズのスーパーボールだった。イオリはとりあえず投げるのは当然とばかりスーパーボールをぶん投げる。
トントントントン
部屋の中でスーパーボールが縦横無尽に跳ね回る。
「懐かしいけど危ないですねこれ。……これやっても何にも無いですしそろそろ行きません?」
なとりは少しその様子に呆れながら呟いた。早く部屋から出たいという感情が喋っている合間にもどんどん強くなってしまっているのは、いつまで経っても跳ねるのが終わらないからかそれとも喋っている途中で自分の目の前にスーパーボールが跳んできてぶつかりそうになったからか。
なとりの早く出たいという願いがどこかに繋がったのか思いがけない形で達成されることとなった。
イオリが持っていたのはおどうぐばこ、もしくは工作セットというべきラインナップのアイテムが詰め込まれた箱だった。本人の言う通り、このアイテムはこのゲームの運営が置いたアイテムだ。
「護身用……に使えそうなのはハサミくらいですかね」
なとりは箱の中身を見ながら呟いた。すぐに武器に使えるか考えてしまう辺り完全に今の状況に適応してしまっているようだ。
その状態をほんの少しだけ不満に思ったのか一瞬だけイオリはムスッとした顔をして、すぐに気を取り直した。
「なとなと!見てこれ!こんなのも入っていたんだよ!」
イオリが取り出したのはかなり大きなサイズのスーパーボールだった。イオリはとりあえず投げるのは当然とばかりスーパーボールをぶん投げる。
トントントントン
部屋の中でスーパーボールが縦横無尽に跳ね回る。
「懐かしいけど危ないですねこれ。……これやっても何にも無いですしそろそろ行きません?」
なとりは少しその様子に呆れながら呟いた。早く部屋から出たいという感情が喋っている合間にもどんどん強くなってしまっているのは、いつまで経っても跳ねるのが終わらないからかそれとも喋っている途中で自分の目の前にスーパーボールが跳んできてぶつかりそうになったからか。
とりあえずなとりの早く出たいという願いは思いがけない形で達成されることとなった。
ピコン
なとりとイオリの二人のPDAから音声が鳴った。画面にメッセージが映し出される。
『隠し通路の発見おめでとうございます。このエリアはマップには表示されていません。ただし、ゲームマスターは隠し通路の位置を知っているのでご注意を』
なとりとイオリは目を合わせ、互いにサムズアップしたあと、階段をゆっくりと登り始めた。
Side:八重沢なとり 三人称視点 二階【00:13:27】
なとりとイオリは隠し階段を登っていき、二階のとある部屋へと辿り着いた。二人はとりあえずその部屋を探索していくつかの食糧と防具となるバックラーを発見した。
「ふーっ。やっと一息ですね」
なとりとイオリは探索が一段落し、休憩中のようだ。
「そういえばなとなと何で三階まで行けそうだったのに一旦二階に行こうって言ったの?なとなとの考えじゃ上の階に行けば行くほど良いものが手に入るんじゃないの?」
一段落ついたことで疑問を思い出したのかイオリが階段の中でなとりが言った言葉の真意について尋ねた。
イオリの言う通り、隠し階段はまだ続きがあり、階段をそのまま登れば三階までは行くことが可能だった。それなのに一旦二階に留まったことに疑問を抱いたようだ。
また上の階に行けば行くほど良いものが手に入るという考察も正しい。
なとりはどうやら長い間一階で探索していても殺し合いの武器になりそうなものがなかったこと。そしてとあるルールからそのことを予想したようだ。
「イオリさん……ルールの6って覚えてますか?侵入禁止エリアのやつ」
「うん覚えてるよ侵入禁止エリアに侵入すると強制ログアウトしちゃって、そのエリアがどんどん下から上へと広がってくってやつだよね」
「そうです。だから上行ってから下に戻るのって難しいから一旦二階で良いもの探してから三階に行こうかなって思ったんです」
「なるほどー」
「と言ってもそんなに長居する気は無いですよ。一階が侵入禁止エリアになる時間こそおそらくルールの書き方からして2日目になる辺りだと予想は付きますが、それ以降の時間は全く分かりません」
「……その2時間後に二階封鎖とかだったら怖いね」
「そうです。それが怖いのですぐ三階に行きますよー。まあ隠し通路を発見したときにメッセージが届いたのを見るに禁止エリアになる一・二時間くらい前にはメッセージで教えてくれそうですけどね」
なとりとイオリはそのあとも10分程度話したあと、周辺を探るためにこの三人がいる部屋から出ていった。
そう、現在この部屋にいる人間は二人ではない。
三人いた。
なとりとイオリが気づかない場所にもう一人潜んでおり、二人の話を密かに聞いていたのだ。
Side:カルロ・ピノ 一人称視点 二階【00:13:27】
「そういえばなとなと何で三階まで行けそうだったのに一旦二階に行こうって言ったの?なとなとの考えじゃ上の階に行けば行くほど良いものが手に入るんじゃないの?」
イオリの声が響く中、ピノは息を殺して彼女達の『上から』盗み聞きをしていた。
(PDA機能拡張ソフトウェアの換気ダクトの見取り図を使って換気ダクトの中に入ってみたら遭遇!ラッキーですわ)
彼女が手に入れていた二つのソフトウェアの内の片方『換気ダクトの見取り図』の効果はその名の通り、換気ダクトの入り口やそのルートを表示させる機能だ。
換気ダクトの入り口は分かりづらい所にあり、基本的にはこのソフトウェアが無ければ利用できない。
ピノはこの不意打ちや盗み聞きには持って来いのソフトウェアを試していたところ偶然にもなとりとイオリが話しているところに遭遇した。
(まぁ、今は武器を持っていないので奇襲は無理ですわね。おとなしくここで息を潜めていましょうか)
「イオリさん……ルールの6って覚えてますか?侵入禁止エリアのやつ」
(!!ルール 6!?)
ピノが知っているランダムに配られるルールは4・7・9・10の4つであり、ルール6は知らない。この話題でルール6が何かわかると考えたピノは一言一句聞き漏らさないように集中した。
「うん覚えてるよ侵入禁止エリアに侵入すると強制ログアウトしちゃって、そのエリアがどんどん下から上へと広がってくってやつだよね」
「そうです。だから上行ってから下に戻るのって難しいから一旦二階で良いもの探してから三階に行こうかなって思ったんです」
「なるほどー」
(なるほど。どうやらルール6は侵入禁止エリアについての話のようですわね。侵入禁止エリアにいると強請ログアウト……ということは首輪が作動していまう……わたくしの解除条件的にも重要なルールですわね)
「と言ってもそんなに長居する気は無いですよ。一階が侵入禁止エリアになる時間こそおそらくルールの書き方からして2日目になる辺りだと予想は付きますが、それ以降の時間は全く分かりません」
「……その2時間後に二階封鎖とかだったら怖いね」
「そうです。それが怖いのですぐ三階に行きますよー。まあ隠し通路を発見したときにメッセージが届いたのを見るに禁止エリアになる一・二時間くらい前にはメッセージで教えてくれそうですけどね」
(24時間経過時点でおそらく一階が侵入禁止エリアに……わたくしの持っているもう一つのソフトウェアを使えば……閃きましたわ)
カルロピノはすぐさま動きたい気持ちに駆られたが、じっと息を殺す。更なる多くの情報を入手するために。
結果的には彼女はその後あまり多くの情報を二人の話から得ることは出来なかった。が、彼女は得られた情報だけでも満足をして二人が部屋から出た瞬間、行動を開始した。
next……Side:電脳少女シロ
今日の更新はここまでです。
実はPDA君は結構色々なことを知らせてくれます。実はごんごんが罠に引っかかって強請的に上の階に行かされたときも知らせてくれているはずです。描写し忘れましたが……
描写といえばもう一つ。サブマスターについてですが書き方が悪くて誤解させてしまっている気がするのでちゃんと説明します。
13人の中にルールや建物の構造を教えてもらったサブマスターが二人います。二人は誰がもう一人のサブマスターかは知りませんが存在自体は知っています
ちなみにゲームマスターとサブゲームマスターが一人ずついるわけではないです。ばあちゃる君がゲームマスターなので
書き終わりかけていたデータがメモ帳がフリーズして全部吹っ飛んで書き直しすることになったけれど私は元気です。
他のグループと一切遭遇していない電脳少女シロ・北上双葉・もこ田めめめのグループ。
そんな彼女達は
今!
なんと!
「めめめー大人のたけのこの里取ってー」
「えっ?シロちゃんたけのこの里派?嬉しい!めめめたけのこ派なんだぁ!」
「残念でしたーシロは基本きのこ派ですぅー!大人のたけのこだけ例外なの!というか早くたけのこの里取ってよ。駄目ならふたふたでも良いよ?」
「ふーちゃんは人を駄目にするソファに心も体も囚われてしまったので無理ですー」
「ふたふた!お母さんの言うことを聞きなさい!」
「シロちゃんだろうと嫌なものは嫌ですぅー。第一イオリちゃん曰くアイドル部の母親はうまぴーですぅー」
戦闘禁止エリアでとても寛いでいた!
Side:電脳少女シロ 三人称視点 二階【00:16:54】
「めめめこのままずっとここにいたい……」
「シロもシロもー」
彼女達がいる戦闘禁止エリアはたまとあずきが拠点にしていた場所とはまた違う場所にあった部屋。
二階に上がっても武器や防具しか見つからず、ひもじい思いをしてさ迷っていた三人は数時間前にこの部屋を発見。あまりの快適さからなかなか出れず、この部屋に入り浸っていた。
「二人とも。もうそろそろ出た方が良いんじゃない?」ようやくこの現状が不味いと気がついた双葉が二人に言った。
「うん。そうだねー」とシロ
「あと5分だけ……」とめめめ
明らかに二人はまだやる気が出ていないようだ。このままだとしばらくは動かないだろう。
「もう!二人とも!」
双葉は怒って声を張ったが、元の声質のせいかあまり怒っているように感じられなかった。
何度も声をかける内にようやく二人は動いたが、結局出るのに20分はかかったのだった。
「さあ出発だー!」
「「おー!」」
三人は今までに手に入れた武器や防具。更には戦闘禁止エリアにあったお菓子まで持つという万全な体制で遂に外に出た。
「めめめ、例のアレお願い」
「おっけーシロちゃん!」
めめめはシロに言われてPDAを取り出し、マップ機能を開いた。表示されたマップには他のPDAのマップと違い、廊下に謎のアイコンが一つ存在していた。
「便利だよねーめめめちゃんの『疑似GPS機能』」
「うん!とっても便利なんだよねー」
めめめのマップに表示されたアイコン。これはPDAの機能拡張ソフトウェア『疑似GPS機能』によるものだ。
これは地味ながら広大なエリアから自分の位置が一発でわかるという大変有用なものだ。
実はちえり達やいろはもマップを見て行動をしていたが、自分の位置を勘違いして行動を間違えることは何度かあった。
しかし、これにより自分の位置を誤認するリスクが無くなる。
このソフトウェアのおかげで三人は階段がある方向に一切迷わずに進むことが可能だった。
そのため途中にある分かれ道にすら目を向けずに進んでいった。
「あっ!お姉ちゃん方!」
そのためか三人は後ろから声をかけられるまで、分かれ道の先に人がいることすら気づかなかったようだ。
「ごきげんよう皆様方」
三人が振り返った先には分かれ道からカルロ・ピノがひょっこりと顔を出し、にこりと微笑んでいた。
「もうすぐ着きますわ!」
カルロ・ピノに呼び止められた三人は最初こそ、警戒感を露にしていたものの、隠し通路を見つけたという情報と即座に自らのPDAを開示したことでピノの後を着いていくことに決めた。
「シロちゃん。そんなにピノちゃんのこと信用できないの?」
「いや、そんなことは無いんだけど……」
そんな中、あまり意外でも無いことだが……シロはピノのことを信じきることが出来なかった。
しかし、ピノ自身が自らをボディーチェックすることを要求。隠していた武器などは一切確認できず、隠さずに唯一持っていたスタンガンはシロが一旦預かることでシロも納得したはずだった。
しかし、未だに何故か渋っているようだ。シロ自身も何故未だに警戒心を露にしてしまうのかが分かっていないようだ。
「大丈夫ですわ、シロお姉ちゃん。わたくしシロお姉ちゃんの気持ちも分かりますから。普通こんなゲームで接触してきた相手など絶対疑ってしまうものですからね」
双葉とシロの会話が聞こえていたのかピノが振り返って言った。
現在歩いている四人の位置は学校での廊下は左側通行というルールが抜けないのか左側で歩くピノが一番先頭で次がめめめ、双葉と来て最後にシロという順番だ。ちなみにピノ以外の三人はまん中をずてずてと歩いている。
「あっ!あそこですわ!」
ピノは少し大きな声を出しながら正面右側にあるドアを指差した。どうやらそこに隠し通路がえるらしい。少し早歩きになってそのまま真っ直ぐ進んだ。
後から着いていく二人も早歩きになりながら真っ直ぐ進む。
先行したピノはある所まで進むと振り返り、すぐ後ろにいためめめと双葉を見つめ、にこりと微笑みながらこう言った
「ふりだしにもどれ」
めめめと双葉はどうしてピノがそんなことをしたのか分からずに次の一歩を踏み出す。
……踏み出してしまった。
そして
めめめと双葉は
空
を
踏
み
し
め
た
いや、正しく言うならば、足を踏み出そうとした先には床が無かった。
「えっ?」
落とし穴のようになっていた床で二人は落下する。落下先は一階だ。
最初二人は現場がまったく飲み込めず、混乱していた。しかし、やがて落下しているという状況に気づいたのか顔を青褪める。
しかし、二人は落下先の一階を見て更に顔を蒼白にさせることとなった。
そこにあったのは……
床一面に敷き詰められたまきびしだった。
二人はパニックに陥った。
当然だろう。まきびしである。しかも鉄製の物だ。
そんなものが敷き詰められているとあっては最低でも片足の怪我は確実。下手すれば全身がはちの巣になって死亡だ。
しかも落下中とあってはもはや天に任せる他はない。
その状況をピノとシロは上から見つめるが助ける方法など無かった。しかもその内の片方……穴を境にしてドア側にいるピノに至っては助ける気すら無い。
そして二人は一階に落ちた。
「痛い!痛い!!」
運が良かったのはめめめだった。
着地地点こそ運が悪くまきびしがあり、片足が踏んづけてしまったものの、痛みで跳び跳ねた先の床はまきびしが敷き詰められた場所より外側であった。
「いだっ!い゛だい゛!」
一方運が悪かったのは双葉だった。
落下した先にはまきびしが無かったが着地に失敗して足をひねり、ひざと手をまきびしがある床に着地させてしまった。
しばらく両足、腕ともに使い物にはならないだろう。
ただ、運が良かったのはゲームのプログラムによって痛覚軽減機能が発動し、痛みがすぐさま押さえられたおかげで、痛みに転げ回らずに済んだということだった。
「良かったですわ。痛覚軽減機能はちゃんと発動したようですね。自分も事前にわざと怪我してみたかいがありましたわ。」
ピノは実質的に自分がこの状況を仕込んだというようなことを呟いた。明らかに残虐なこの方法に対してピノ自身も思うところがあったらしい。自分で一度わざと軽く怪我をして、このゲームの中で痛みがどうなるかを確かめてみたようだ。
そんなことを言いながらピノは徐々に後ろ―つまりドアがある方向へと下がる。
「動かないで」
落とし穴が作動したことによる影響か少し煙か砂埃が立ち込めている。
そんな中、ピノの動きは止めたのはシロの脅しであった。
シロはカラーボールのようなものをセットしたパチンコを構えて脅した。ピノは少し考えて……不利を悟ったのか動くのをやめて両手を上げる。
彼女が回避できる可能性にかけて逃げ出さなかったのはおそらく、ボールがどのようなものかが判断がつかなかったからだろう。
ここは電脳世界の中に作られたプログラムの中、しかも彼女達の今の身体は本物ではなく見た目をコピーしたアバターだ。そのため彼女達は実際の身体に害が無いことを知っている。
だからこそ、ボールの中身の判断がつかないのだ。身体に害が無く、しかも仮想空間の中とあっては現実世界では作り得ないものもある可能性がある。
ボールの中が毒である可能性などあたりまえで、王水、更には想像のつかないようなものである可能性すらあるのだから。
「シロお姉ちゃんは何で落ちなかったんですか?明らかに落とし穴が作動する前に足を止めたように見えたんですけれど、それどころかわたくしが振り返るより前に止まってましたよね?なぜ見破られたのか知りたいですわ」
ピノは時間稼ぎか単純な興味かシロに質問を投げかける。ピノの言う通り、シロは確かにピノが振り返るより前に足を止めていた。
「それはね、右側の目的地が近づいたのにそのまま左側をまっすぐ……いやむしろ更に左に進むっておかしくない?それであれ?っと思って足を止めていたらこんな酷いことになったんですよね。はぁ……ちゃんと二人も静止させてあげれば」
シロは構えは一切解かずに質問に解答した。ピノと……静止させることができなかった自分へ怒りが表情から伺える。
落とし穴は壁から壁まで全てが穴となった訳ではなく、壁に近い部分は残っている。おそらくピノはこの床部分に進むこと床に一定の重さがかかることで落とし穴となる床を回避したのだろう。
とは言っても残った床部分は狭く、簡単には反対側に進むことはできない。そのためシロは未だにピノを捕まえることができていないのだ。
ピピピ
急にピノを除く三人のPDAから音が鳴り響く。
「おや?シロお姉ちゃん。PDAから音が鳴っていますわよ。確認した方がよろしいのでは?」
ピノがシロに問いかける。
しかし、シロは一切構えを解かない。
「こんなタイミングでピノちゃん以外から鳴るってことは十中八九この落とし穴に関することだから見る必要は無いよ。それよりピノちゃんを逃がさない方が遥かに大事だし」
ピノはその返答に対して少しだけ苦虫を噛み潰した顔をして、すぐさま元に戻った。
どうやら運が良ければここで逃げられるかもしれないと考えていた程度でそこまでこのタイミングで逃げられるとは思っていなかったようだ。
一方そのころめめめは双葉を救出して二人でまきびしが無い床に退避していた。
今の一連の会話を聞いていたのかPDAを取り出した。
「シロちゃん!来た内容を読み上げるよ!」
【「罠」にご注意を】
・「罠」はゲームエリア内随所に設置されており、踏み板や電子センサーによって起動します。
・「罠」はプレイヤーの殺傷ではなく、集団の分断を目的としたものです。しかし、場合によっては致命的なダメージを与えることもあるのでご注意くださいませ。
「ありがとうめめめめ!……ふぅん殺傷を与えるのが目的では無いってことはまきびしはピノちゃんが撒いたんだね……」
「ご名答ですわ」
めめめが伝えてくれた内容からシロは思考を巡らしたようだ。事実、ピノは二階で見つけたまきびしをわざわざここまで持ってきて使っていた。
「じゃあ逆に質問。何でピノちゃんはこんなことをやったの?」
「ちえりーらんどに行きたくないからですわ。ほら先ほど見せたではないですか解除条件」
ピノはシロに動くなと言われたのに関わらずPDAを取り出した。
「解除条件を達成するためにこの機能拡張ソフトウェア『罠探知機能』を使用してこの落とし穴を探して、わざと一度落とし穴を起動させてまきびしを撒いて、床が元に戻るのを待ったのです」
このゲームのエリアにある罠の多くは起動しても一定時間経過後元に戻るようになっている。ピノはそれを何かしら重いものを投げて落とし穴を発動させ、二階からまきびしを撒き、落とし穴が元に戻るのを待つことでこの罠を完成させたようだ。
「……なんで解除条件が関係するの?てっきり賞金が欲しいのかと思ったんだけど」
「……ところでめめめお姉ちゃん。PDAの最初の画面を開いてもらっても構いませんか?」
ピノはシロの質問に答えずめめめにPDAを開くように言った。
それに対してめめめは従うべきか少し悩んだあと……PDAのスタート画面を開いた。
充電ノコリ89% 00:17:06
┏━━━━━━━━━┓
┃ 解 除 条 件 ┃
┗━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━┓
┃ ル ー ル ┃
┗━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━┓
┃ マ ッ プ ┃
┗━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━┓
┃ 機能拡張ソフト ┃
┗━━━━━━━━━┛
「めめめお姉ちゃん。今何時間経過って書いてありますか?」
「……17時間6分」
「では続いてルールの侵入禁止エリアに関する項目を開いてください」
「ちょっと?シロの質問に答えられないのぉ〜?」
シロが目のハイライトが消えた状態でピノに話しかける。しかし、ピノはそれを意にも介さない。
「開いたよ。読み上げればいいの?」
「はい。そうすればシロお姉ちゃんも何でわたくしがめめめお姉ちゃんにしてもらったことの理由が分かりますわ」
「えっと……侵入禁止エリアが存在する。初期では屋外のみ。進入禁止エリアに侵入すると首輪が警告を発し、その警告を無視すると首輪が作動し強制ログアウトが行われる。また、2日目になると侵入禁止エリアが1階から上のフロアに向かって広がり始め……あっ!」
めめめ含め、全員が気づいた。
「わたくしの解除条件は『首輪が5つ作動すること』一階に落ちて怪我してそのまま二階に上がれない人が出れば……解除への第一歩ですわ。ところでめめめお姉ちゃん、双葉お姉ちゃん……こんなところにいていいんですの?今すぐ階段に向かった方が良いのでは?」
めめめと双葉が焦ったような顔をした。それを見て……ピノは何かに気がついたのか一瞬だけ驚いた顔をして再び喋り出す
「では皆さまわたくしもそろそろ行きます。というわけで皆さんごきげんよう」
ピノはそう言ってダッシュでドアの方に走り出した。
シロはすぐさまパチンコを構えるが、いつのまにか濃くなっていた煙によって視界が悪かったせいで弾を外してしまう。
どうやらピノはシロ達と出会う前に発煙筒か何かを事前に用意していたらしい。喋っていたのもその時間稼ぎだったようだ。
シロは持っていた食糧を幾つか双葉達の方へと投げ込んだあと、煙の中に見えるピノのシルエットを追ってすぐに駆け出した。
しかし、穴を乗り越えるのに少しだけ時間がかかってしまった。
ガチャ
シロはピノが逃げこんだと思われるドアの中に入った。
しかし……
「もう、隠し通路に逃げ込んじゃったか……」
ドアの先にあった広い部屋にピノの姿はなかった。
どうやらピノは彼女の言っていた隠し通路の中に逃げ込んでしまったらしい。
シロは隠し通路を発見するためにしらみつぶしに部屋を探索しはじめた。
悲報:もう一度データが消える。急ピッチで生配信を見ながら打ち直ししている模様
Side:カルロ・ピノ 三人称視点 二階【00:17:12】
(ふぅ……何とかシロお姉ちゃんから逃げ出すことに成功しましたわ。やっぱり『換気ダクト見取り図』のソフトウェアは素晴らしいですわね)
ピノは隠し通路……ではなく換気ダクトでシロから逃げおおせたようだ。そもそもあの部屋には隠し通路は存在しない。まあ隠し通路と換気ダクトは似たようなものかもしれないが
(めめめお姉ちゃん……はともかくとして双葉お姉ちゃんはあの怪我では確実に二階にたどり着くことはできないでしょう。これで一人目ですね。やりましたわ!)
ピノは事前に安全を確保していた部屋へと降り立った。
ピノは現在喜びの感情に包まれている。喜んでいる理由は複数あるが最も大きな理由は双葉とめめめを罠にはめることが出来たからではないようだ。
(あーそれにしてもよかったー!本当に侵入禁止エリアに関するルールがあって!あそこまでやって実はお米お姉ちゃんの虚言とかだったら恥ずかしいにも程がありますわ!)
訂正>>121の
Side:電脳少女シロ 三人称視点 二階【00:16:54】
の時間を00:16:34に変更します
Side:もこ田めめめ 三人称 一階【00:17:12】
「シロちゃん食糧投げてくれたね……」
ピノとシロが言ったあと、双葉がか細い声で呟いた。現在二人は痛覚軽減機能により痛みは軽くなったものの、足を踏み出そうとすると倒れてしまったり、よろけたりしてしまうなど、実際にダメージを負ったように体が反応してしまっているようだ。そのためめめめはともかく双葉はほとんど動けない。
「双葉ちゃん!諦めちゃだめだよ?」
めめめはもう諦めてしまった風の双葉を励ます。
「ピノちゃんはめめめが持っている『疑似GPS機能』を知らないからそこで計算に狂いが生じてるはずだよ!」
めめめは更に双葉を理論立てて説得しようとした。確かに階段への道のりを迷わず行ける『疑似GPS機能』は強力だ。
確かにこれがあれば二階に制限時間より早く確実に行けるだろう。
めめめ一人ならば
双葉もそれに気づいているのか何も言わない。めめめはやがて無理矢理双葉を背負うと歩き始めた。
双葉は小さくありがとうとだけ言った。
「痛っ!」
双葉と比べれば遥かに軽傷なもののめめめも足を怪我していることは間違いなく、痛覚軽減は痛覚オフではない。
しかし、めめめは歩みを止めない。
一歩ずつ
一歩ずつ
階段へと足を進めていった。
Side:八重沢なとり 三人称視点 二階【00:17:08】
私達は二階をある程度探索したあと、あの隠し通路を使用して三階へと上がった。
三階には、爆弾や銃などがあり、どんどん殺しあいの激化が想像できるラインナップで、イオリさんなんかは武器を見ただけで青褪めていました。
そんな中、私はとても有用なものを発見することができ、今からそのソフトウェアをインストールしようとしています。
「なとなと。どう?インストールできた?」
「今、差し込んだばかりですよ。ほら、今画面が変わったじゃないですか」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このソフトウェアはPDA拡張ツール【ジョーカー探知】です。
PDAの地図上にジョーカーの位置表示を追加します
※ 注 意 事 項 ※
@インストールする事によりバッテリー消費量が増加します
A強力なソフトウェアほどバッテリー消費が激しくなります
B一つのソフトでインストール出来るPDAは1台までです
Cインストール中は絶対にコネクタを外さないでください
インストールしますか?
(消耗度:普通)
はい いいえ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「当然はいですね!」
インストールが始まった。私はずっと心配だった。もし誰もジョーカーを手に入れていなかったら。もしずっと一階にあり続けていたら。
もしそうだったら私は詰み。つまりちえりーらんどに……
そんなことを考えている内にインストールが終わったのを確認した私はマップ機能を開いた。
ジョーカーはどこだ?
「三階にはない……二階に…………あった!よかった!一階に取り残されているわけじゃない!」
本当によかった。私の解除条件的にジョーカーは必須。ですがもし誰にも見つかっておらず一階にあった場合、もうこの時間じゃ手遅れだった。
だけれど実際は誰かが持っている。これなら交渉で何とかなる!
しかし、そう簡単には行かないようで……
「なとなと!誰かがこっちの方に来ているみたいだよ!」
あまりに機能拡張ソフトウェアに集中していたせいか近づいて来る足音に気づくのに時間がかかった。
……どうしましょう!
「うわわっなとなとどうしよう!」
「えーっととりあえずとりあえず!」
焦っている内にドアが開く。とりあえず私は銃を構えることにした
「待ってぇ!撃たないで!」
「あれ?ごんごんちゃん?」
ドアを開いた先に居たのはPDAを持ちながら両手をあげているいろはさんだった。
Side:北上双葉 一人称 一階【00:17:15】
自分は一体何をしているんだろ……
「大丈夫?双葉ちゃん?痛い?」
双葉は今、めめめちゃんにおぶられている。めめめちゃんも片足は痛いはずなのに背負ってもらっている。
こんなの完全に足手まとい。
確かにめめめちゃんのソフトウェアがあればめめめちゃんは二階に行けるはず。ピノちゃんが二階で待ちぶせして攻撃するつもりだったとしてもピノちゃんよりも早く辿り着けるだろう。
でも今の状態じゃ無理。だって双葉を背負っているんだから。このままじゃ共倒れだ。
だから……
「めめめちゃん。双葉を置いていって。このままじゃ共倒れだよ」
双葉だってちえりーらんど行きは嫌だし、せっかくなら賞金でお菓子とか欲しい。
けれどこれじゃあ絶対無理。ならせめてめめめちゃんだけでも。
「双葉ちゃん」
「めめめちゃん?」
めめめちゃんがいつになく真剣なトーンで私の名前を呼ぶ。
「めめめ絶対に諦めないから!めめめ絶対双葉ちゃんも連れていくから!」
めめめちゃんは双葉を話す気は無いようだ。むしろ双葉を背負う腕の力が少し増したように感じられた。
……双葉も覚悟を決めるときが来たみたい。
これを言ってしまったらどんなペナルティが来るか分からない。けれど別に良いや、めめめちゃんだけでも助けたい。
もう言っちゃおう。
すーっ……はぁーっ……良し。
「めめめちゃん。シロちゃんが解除条件みたいな秘密は互いに言わない方が良いって言ってたじゃん」
「うんそうだね」
「あれ。今から双葉破るね」
「えっ?ええ〜!!」
今から双葉が言うのは二つ。
一つは解除条件。そして……
双葉がサブマスターだって言うことだ。
めめめちゃんをサブマスター専用の隠し通路に連れていこう。
めめめちゃんは絶対死なせない。絶対に。
第二章【ふりだしにもどれ】終
Side:ばあちゃる
「はーいどうも世界初⁉男性バーチャルyoutuberのばあちゃるです。はいはいはい皆さま楽しんでいますかー!いえーいはいはいはい!というわけでですね。遂に動きましたね!いやーあんな作戦思い付くなんてやばーしーですねピノ様。それに関することなんですけれどね。現在のBET比率を公開したいと思いますね」
ピノ 【10】1.1
シロ 【?】1.2
ちえり【7】1.233
なとり【2】1.4
いろは【?】1.4
あずき【4】1.667
りこ 【J】2.0
たま 【?】2.111
すず 【8】2.111
もち 【Q】2.111
めめめ【?】2.667
イオリ【A】3.5
双葉 【?】10.0
「右に書いてある倍率が賭けに勝ったときに現在戻ってくると思われる額ですのでね。ぜひ皆さん今からでも投票お願いしますねはいはいはい。ちなみにもうすぐ誰か死にそうということでね。誰が最初にちえりーらんど送りになっちゃうかの予想もしていただければねって感じでですね。あーばあちゃる君に負荷がかかってきたんでね。とりあえず終わります。あざーす」
というわけで二章終わり&今日の更新終了です。
こんな感じで進んで行きますのでこういう怪我描写が嫌な方はこれから先に見ないことをおすすめいたします。
ただ、彼女たちは全員レクリエーションとかスポーツのつもりでやっているので陰湿でギスギスみたいな展開にはならないとだけは先に言っておきます。疑心暗鬼くらいですかね。
BETに関しては事前に自分がこんな感じになるだろうなっていう13人それぞれの掛け金を決めた後に皆さまのBETした分を追加して計算して算出しています。
また次の章の終わりにでBET公開いたしますのでよろしければ最初のちえりーらんど送りに遭う人予想といっしょに一度既にBETした方も改めてBETしてもらいたいなと思います。
御披露目回の前に更新!
Side:八重沢なとり 一人称視点 三階【00:17:10】
「撃たないで〜!!ほら、武器捨てるから〜!!」
いろはさんは手に持っていたショットガンのようなものを床に放り投げた。
銃を持っているなら私と同じように構えれば良かったのにしなかったということは元々戦闘する気はなかった。ということでしょうか?
いや、だけどまだ、あやしい。
この廊下にはこの部屋のドアの両隣にも部屋がある。それなのに他のドアを一切開ける物音はしなかった。つまり、まっすぐこの部屋にいろはさんはたどり着いているということ。
けれど……
「なとなと!何でまだ武器構えているの?駄目だよ」
同行者の心証も大事ですからね……
私は銃を降ろした。
あっちは武装してないですし大丈夫でしょう。いろはさんは落とした武器を拾わずにこちらの方に近づいてきた。
「ごんごんちゃん……解除条件って見せて貰える?見せてくれたらイオリ達も見せるよ?」とイオリさんが言う。
これたぶんいろはさんのことを信じきれないから解除条件を見せてほしいっていうことじゃなくて自分がAだから相手がQだったら困るから聞いているんだろうなぁ……
「うーん。いろはにもなにかメリットあればね……」いろはさんはちょっと悩むそぶりを見せている。
いろはさんがジョーカーを持っていないっていうのは私が持っている『ジョーカー探知』ソフトウェアの効果で既に分かっているので、別に解除条件を教えてもらわなくても良いんですがどうしましょうかね……
……あっ、やっぱり解除条件見せてもらう必要がありますね
私はちょっと考えを改めた。
「じゃあお菓子要ります?下の階で大量に見つけてきたんですけれど」
私は大量のお菓子を取り出した。いろはさんは大きいバッグを持っているようには見えないし、現在の所持品はそう多くないはず。……と思ったんですけど想像以上にいろはさんは食いついた。
「えっ!欲しい!わかった見せるよ!」
いろはさんは私が取り出したお菓子の中からモトヤンツケボーとかポテトチップスとかを取っていった。
そしてPDAを私達の方へと見せた。
「私の解除条件は5番だよ!」
「よかったーイオリの解除条件はAだからQだったらどうしようかなって思ってたんだよー」イオリさんが安堵したような声で言った。
解除条件を見せてもらったのはジョーカーは誰かに化ける都合上、誰かと条件は被ってしまう。だから同じ解除条件を持っている人が二人いればどちらかは解除条件を偽装しているのは確定的になる。
だから誰がどの解除条件かという情報はあればあるほど良い。
「私の解除条件は2番。ジョーカーの破壊ですね。ところでいろはさん。誰か私やイオリさんと同じ解除条件の人と出会ったりしていませんか?」
そして当然私やイオリさんの解除条件に偽装している可能性はある。だから聞いておこうと思ったのですが……
「ごめーん!いろはさー運が悪かったのか全然人に会ってなくてさーピノちゃんの解除条件しか知らないんだよねー」
どうやらいろはさんはまだあずきさんとピノさんにしか会っていないようでピノさんの解除条件が10という情報しか持っていなかったようです。
まあせっかくなのでルール交換や今まで見たものとかの情報交換をお菓子を食べながら行うことにしました。
「ところでごんごんちゃんはチェックポイントをいくつ通過したの?」
「それなんだけどさー見てよー」
いろはさんはPDAを取り出してマップを見せた。一階、二階、三階と順番に見せてくれる。あれ……?
「あれ?いろはさん?緑色の丸がチェックポイントですよね?で、それにバツ印が付いているものが通過したところと」
「うん。そうだよー!」
「なら何で一階と三階は既に全部チェックが付いているのに二階は一個だけチェックが付いていないんですか?」
「あ、それはねー!私が下からどんどん侵入禁止になるっていうルールを知らなかったのも理由なんだけど、一番の理由は二階の廊下で歩いていたら急にシャッターで閉じ込められて上に行かざるを得なくなったからっていうのが一番の理由なんだよねー。三階のチェックポイントはそんな遠くなかったから全部行けたんだけどさー二階に降りる階段全部遠いんだよね。二人ともこういう罠がここにはいっぱいあるみたいだから気を付けてね!」
いろはさんは笑い話のように喋った。罠とかあるんですね……気を付けておきましょう。そんなことを考えていたらイオリさんが少し得意気な顔でこっちを見た。あ、あれを言う気ですね。良いですけど。
「ごんごんちゃん。イオリ達下に降りられる隠し階段知っているよ。案内してあげようか?」
「えっそんなのあるの!お願い連れてってー」
私達が三階まで上がってきた隠し階段はここからそう遠くない場所にある。少なくとも下に降りる普通の階段よりは近いはず。別に教えてあげても問題はないですし。
「ごんごんちゃんマップ貸して」
イオリさんがいろはさんのPDAを手に取って触りはじめる。おそらく隠し階段の場所を教えてあげようっていう考えでしょう。
しかし、マップは現在位置が分かりづらいので苦戦している様子。すると、いろはさんが得意気な顔でイオリさんか操作をしているマップ画面のとある場所をタッチした。
『首輪の現在位置をマップ上に表示しますか?』
画面にメッセージが現れる。いろはさんは選択肢の内はいをタッチした。するとマップ上に黄色の点が表示される。
「機能拡張ソフトウェア『首輪の位置表示』これでいろは二人の位置も把握したんだー」
三階のマップのとある部屋の部分に3つの点が表示される。三階に他に黄色の点の表示はない。つまりここが私達がいる場所でしょう。なるほど擬似的にGPSみたいなことが可能なんですね。
そしてこれがあったから私達の場所が分かって真っ先にこの部屋に来れたと。このソフトウェア怖いですね……バッテリー消費も多そう。
イオリさんもマップ上の自分の位置が分かったからか隠し階段の位置をすらすらと説明できるようになったみたい。
……ん?待って
私は自分のPDAのソフトウェア。ジョーカーの表示をONにした。
「いろはさんちょっとマップ見せてください。これで誰がジョーカーを持っているかがある程度区別が付くかもしれません」
そう、私といろはさんのソフトウェアを合わせればジョーカーを誰がもっているのかがある程度わかるということに私は気がついたのだ。
私はマップの二階を開く。ジョーカーの位置は二階のここ……そしていろはさんのマップの二階と照らし合わせた。首輪が無いところにあったらいろはさんと一緒に二階に降りて回収しなきゃいけないなぁ……
そんな私の不安は結局当たらず、ちゃんとジョーカーは首輪がある位置にあった。
首輪の表示が4つあるところに。
「部屋の中の四人の首輪があるところにジョーカーのPDAがあるみたいですね……つまり四人一組のチームの所にジョーカーはあります。他の人達はみんな一人か二人で行動しているようなので四人一組のチームに出会ったらほぼ確実にジョーカー持ちだと考えて良いでしょう」
四人一組。それで思い出されるのは最初に別れたちえりさんすずさんりこさんもちさんの4人。
もし、その4人が今でも一緒に行動しているなら……
4人の中にジョーカー持ちがいる!
Side:神楽すず 三人称視点 二階【00:17:20】
結論から言うならば、なとりの予想通り、ちえり、すず、りこ、もちの中にジョーカー持ちはいる。
4つの首輪のマークが表示されていた部屋はあずき、たまと一触即発になったあの戦闘禁止エリアだった。
彼女達は今、そこで休憩と睡眠を取っていた。
ピピピピピ
「ん?何ですか?煩いですね」
戦闘禁止エリアということもあり、凄くリラックスして眠っていた4人だったが一斉に4人のPDAが鳴ったことで目を覚ました。
一番早く自分のPDAを開いたのは神楽すずだった。
「えっと何々?」
画面の中に映っていたのはメッセージ。
そこには
『エクストラゲームのお知らせ』と書かれていた。
第三章【エクストラゲーム】
Side:木曽あずき 三人称視点 二階【00:17:20】
「『エクストラゲームのお知らせ』?」
同じ頃、木曽あずきと夜桜たまのPDAにも同じメッセージが届いていた。
正確に言うならば、全員一斉にメッセージが届いていた。
「あずきちゃん?エクストラゲームって何だろう」
「あずきにも分かりません。ルールにも書かれていませんでしたし、とりあえず二人とも届いているなら全員に届いているのでは?」
たまはとりあえず画面をタップする。するとばあちゃるがサムネに映った動画が表示された。
またか……と思いながらもたまは動画の再生ボタンをタップした。
再生された動画はやはり……ばあちゃるが映っており、喋り始めた。
「はいどうもーばあちゃる君です。今回このゲーム初のエクストラゲームということでね。エクストラゲームとは何?というところから説明させていただきますとまあ簡単に言うと最初に提示したルールとはまた別でゲーム内に行われるミッションですね」
「というわけで今回のエクストラゲームの題名はですね【ロッシーちゃんを捕まえろ】ということでね。皆さん二階に上がった人は気づいているかもしれないんですが何かゲーム内の設備が一部壊れていたり汚れていたりしているんですよ。でこれは何故かと言いますと、なんと本来スタッフ側だったロッシーちゃんがですねーなんとなんとですよ予備のPDAを勝手に持っていってゲーム内に入っちゃったんですね」
「でゲーム内で悪戯を繰り返しているので運営側も凄く困っちゃってるので皆さんにロッシーちゃんの討伐を頼みたいなっていうものでフゥゥゥゥ!基本的にロッシーちゃんは二階にいるので見つけたロッシーちゃんを倒してください!倒した方にはロッシーちゃんが持っている予備のPDAをそのままプレゼントしちゃいます」
「なんとなんとですよーそのPDA。解除条件は何も書かれていないんですけど、それ以外の機能は他のPDAと全く同じなんですよー。つまり機能拡張ソフトウェアも入れられますし、マップも見れますし、ルールもランダムな二つがちゃんと書いてあります。それにーPDAの破壊や収集が解除条件の人に朗報ですよー予備PDAはその解除条件の数の一つに含んで構いません!」
「というわけでメリットだらけのロッシーちゃん討伐大作戦なんですがー最後一つだけ注意してほしいことがありまして、なんと!ゲーム開始から24時間経過時点でロッシーちゃんは消えてしまうんですね!マジンガー?……お早めの討伐をお勧めします。では負荷がかかってきたのでね。この辺で締めさせていただきます。あざっしたー」
『補足:ロッシーちゃんは首輪は付けておらず、討伐しても三人殺すの条件を達成することはできません』
動画再生が終わったあと、補足説明のテキストが出てきた。
たまとあずきは顔を見合わせた。
「このゲーム乗る?」
「あずきは乗る気ないです。旨味薄いですし、それよりさっさと三階に急ぎましょう。もう階段すぐそばのようですし」
「うんそうだね。そうしようか」
二人は迷いもなく言った。どうやら二人はこのエスクトラゲームに乗る気はないようだ。
数分後、あずきとたまは三階に到着した。
というわけで本日の更新は終了です。
ついにちえりーらんど送りが現れる三章のプロローグということであえてあっさり目に仕上げてみました。
色々予想してくださった方がいましたが戦闘禁止エリアの機械を壊したのはなんとゲーム参加者では無いロッシーちゃんでした。
ちなみにロッシーちゃんは本当に悪戯で入り込んだのでは無く、元々エクストラゲームがこうなるのは運営で決めていたようです。ばあちゃるの話は説明だけでなく演出でもあったんですね
BETはまだまだ募集中なのでどんどんどうぞ
現在の解除条件一覧
A【ヤマトイオリ】…QのPDAの所有者を殺害する。手段は問わない。
2【八重沢なとり】…JOKERのPDAの破壊。このPDAのみ半径1m以内でJOKERの偽装機能は無効、初期化される。
3【???】…3名以上の殺害。ただし首輪の作動は含まない。
4【木曽あずき】…自分以外の首輪を3つ取得する。首を切り取っても、解除条件を満たし外すのを待つのも良い。
5【金剛いろは】…館全域の24個のチェックポイントを全て通過する。特殊効果として地図上にポイントの表示がされる。
6【???】…JOKERの偽装機能を5回以上使用。自分で使う必要も、近くで行う必要も無い。
7【花京院ちえり?】…開始から6時間目以降に全員と遭遇。死亡している場合は免除。
8【神楽すず】…自分のPDAの半径5m以内でPDAを5個破壊する。6個以上破壊した場合は首輪が作動する。
9【???】…自分以外の全参加者の死亡。手段は問わない。
10【カルロピノ】…首輪が5個作動すること。ただし2日と23時間より前に行うこと。
J【牛巻りこ?】…開始から24時間以上行動を共にした人間が2日と23時間時点で生存していること。
Q【猫乃木もち?】…2日と23時間の生存。
K【???】…PDAを5台以上収集する。手段は問わない。
JOKERの持ち主【???】
更新乙です
武器によるけど基本的に集団で行動するのはリスク高いし、最初は単独行動しようとしてたたま会長が9かな?
Side:神楽すず 一人称視点 二階【00:17:39】
このチームでのラストはここ→>>154
「で、どうする?ロッシーちゃんは狙う?なんか意見ある人は挙手どうぞー」
ふかふかソファーに座っているもちさんがエクストラゲームについての動画を確認してから言った。
現在私達は安全かつ豪華な戦闘禁止エリアにいる。そろそろ外に出る予定なので持ち物はちゃんと持って武器になる物も携帯はしているものの全員寛いでいる。
「私は勿論ロッシーちゃんを狙いたいです。私の解除条件的にPDAはあればあるほどありがたいです」私は勢いよく手を上げて言った。
私の解除条件である8はPDAを5個も破壊しなければならないという難易度が高い物。解除成功した人からPDAを譲ってもらうにせよ、死んだ人のPDAを使うにせよ、壊すということはその中に入っているソフトウェアも消えてしまうことになる。バッテリーの心配もあるし、このチームには長く生き残らなければならないJとQがいる以上、有用なPDAはなるべく壊さないでおきたい。
やっぱり多少のリスクは負ってでも予備のPDAは確保したいところ。
「でも、二階にしかいないって言ってもさー。二階ってとっても広いじゃん?その辺考えるとあと6時間くらいで見つけるのって難しくない?」ちえりさんが現実的なことを言ってたしなめる。確かにとてつもなく広いエリアで動き回る対象を見つけるのは難しいかも。
「でもさーこのミッションの内容って明らかに元々決まっていた茶番じゃん。しかも動画も撮っているなら、参加者の誰一人としてロッシーちゃんを見つけられないってことは無いんじゃない?」ともちさんがそれに反論する。
確かにこんなに綿密にルール、舞台、道具が用意されているこのゲームでスタッフの謀反がそんな簡単に起こってしまうわけがない。なら、元々このエクストラゲームはやる予定だったということだろう。なら確かにエンターテイメントとしては一度も遭遇出来ないということはないでしょう。その遭遇をモノに出来るかは分かりませんが。
関係無いですけど挙手制の意味無くなってません?いや別にそこはどうでも良いですけど。
「めっちゃメタ読みだねー。でもね朗報だよ。おそらくこの近くにロッシーちゃんはいました!そしてたぶん今もこの辺にいるはず!とりあえず外に行けば牛巻の言っていることは分かるよ!」
牛巻さんはめちゃくちゃ得意気に言って、私達を外に連れ出した。
そういえば起きてすぐ、牛巻さんは廊下の外に出ていたけど何かそれと関係があるんでしょうか?
私達は廊下に出ると、ドアから少しだけ離れた位置の壁に取り付けられている機械を見せられた。
ん?これは何かのセンサーでしょうか?見た感じもう破壊されているみたいですけど。
「これは……?」
「これはねー牛巻の見立てによれば戦闘禁止エリアに人が入ろうとしたときに感知するセンサーだよ」
「おやすみタイムの前にりこちゃんが調べていたやつ?」
「そうそう。二つの入口の内片方だけ入ったときにここが戦闘禁止エリアだっていうアナウンスが流れたじゃん?それって流れた側のセンサーが誰かによって破壊されていたからなんだよね」
「なるほど……ってこっち側の廊下のドアはちゃんと流れた方でしたよね?何でこっちのセンサーが壊れているんですか?」
りこさんの言っていることに一瞬納得仕掛かったけれどよく考えたらおかしい。私達が今いるのはたまさんが出ていった側の廊下。鳴らなかったのはたまさんと私が入った側のドアのはずだから、壊れているのはそちら側の廊下のはず。
「そうそう実はこれねー牛巻達が寝るまでは壊れていなかったんだよね。つまり……寝ている間に壊した人がいるんだよ。参加者の誰もそんなことをするメリットが無い以上、やった人は単に悪戯でやったっていうことになる」
「つまりりこぴんはそれがロッシーちゃんだと?」
「うん」
なるほど……確かにその可能性は高い。
……ん?あれ?
「皆さん……ちょっとあそこ見てください」
私は廊下の奥を指差した。私は視力低いですし、もしかしたら見間違えかもしれない。
でもどうみてもあの水色のシルエットは……
「ん?何?」
「あのおくーの奥の方……ロッシーちゃんいません?」
見れば見るほどロッシーちゃんにしか見えなくなってきました。
……すぐに突撃出来るようにしておきましょうかね。ロッシーだと確認出来たら。
「あっ本当だ」
「ロッシーちゃんだね」
「マジ?マジだ……」
私は三人の言葉を聞いた瞬間即座に走り出した。当然ですね。見つけた以上、すぐに確保に向かうのは当然のこと。ここで悠長にしていて見失ってしまったら最悪ですからね。
「死ぬ覚悟で…行きます」
「ちょっ、かぐらん!ストップ!ストーップ!」
「早くあの紛い物に追い付いて殺さなきゃ私が死んでしまうんですよ!だから私、真っ直ぐ進む気しかありません!」
「分かった!確かにすぐ追い付くのは最重要事項だけど準備とか色々あるし、止まって!」
「死ぬ準備ならできてるんですけど…何の準備ができたって言いました?」
「準備出来たなんて言っていない!言っていない!心の準備とかー!元々そろそろ外に出る気だったから持ち物は全部持っているけど!」
牛巻さん達が後ろで追いかけながら何か言っている。まぁ着いてきているなら大丈夫でしょう。
Side:電脳少女シロ 三人称視点 二階【00:18:11】
この人のラストはここ→>>121
「うりゃっ!」
シロは走りながらナイフを投げた。走りながらなのに関わらずかなり上手い。
「いたっ!もう、しつこいですわ!そんなにお暇なんですの!?」
そしてそのナイフは……ピノの脚を掠めた。
現在シロとピノは廊下で追いかけっこの真っ最中。逃げるピノをシロが追う展開だ。
ピノは換気ダクトを使って逃げたが、思ったよりシロがそれに気づくのが早く、追いつかれてしまったのだ。
「わたくし落とし穴作戦が失敗した以上、別にシロお姉ちゃんと事を構える気は無いんですけれど!どうしてシロお姉ちゃんは益が無いのに追うんですかー?シロお姉ちゃんは二人と一緒にいましたし、3や9では無いんでしょう!?」
ピノは振り返りもせずに全力で走りながらシロに質問する。
「このあとのピノちゃんの動きがもう読めているからね!それを阻止するために追い回しているの!」
シロは息を切らしながらも投げたナイフを回収して言った。この二人、どちらもあまり体力が無いが実はより体力が無いのはシロの方である。
「ピノちゃん。このあと一番近い一階と二階を繋ぐ階段の所に行って確実に二人を二階に上がらせないつもりでしょ?シロがピノちゃんならそうするからね!」
シロの言葉が的を得ていたのかピノは少し狼狽える。
「くっ仕方ないですわ!見てくださいこれを!爆弾ですわ。シロちゃんがこれ以上近づくなら投げますよ!」
もう疲れ、逃げられないと悟ったのかピノが足を止めて振り返って脅す。ピノが持っていたのは手榴弾だった。
流石にシロもそれを見て足を止める。
「ピノちゃん!ここで投げたらピノちゃんも巻き込まれるよ!」
シロは少し焦ったような声で言った。しかし、ピノは一歩二歩と後退りながらも構え自体は解かない。
シロはピノの方に突撃しようか一度引き下がろうか迷っている様子だ。ピノはほの様子を確認したあと、PDAを取り出した。
それを隙だと見たシロは突撃を敢行した。
しかし、
「ふっふっふっ。シロお姉ちゃん。もう遅いですわ」
シロの目の前でシャッターが閉まる。
ガシャン
「わたくしのPDAには罠感知機能が入っていると先ほど親切に説明してあげたではありませんか」
「つまり、分断用のシャッターがここにあるのをピノちゃんは知っていてここまで来たって訳かぁ……」
「その通りですわ」
「なるほど。これはシロちゃん一本取られましたね」
- WEB PATIO -