※この注意事項を確認してから読んでね※
・このSS内で行っているゲームは『シークレットゲーム』『キラークイーン』というゲームに登場するゲームを元にしております。
気になった方はswitch版が出ているのでそちらをどうぞ。
・元ネタはデスゲームですがルールや設定を一部変えて【デスゲーム風レクリエーション】みたいな感じにしております。そのためアイドル部の面々が裏切りを行ったりしますが、あくまでゲームだから行っているのであってゲーム以外では普通に仲良くしている設定です。ドカポンで裏切りしているようなもんだと思ってください。
・作者は『キラークイーン』『シークレットゲーム』やそれを元ネタとした創作の影響を当然受けているので似たような展開があっても許してください。個人的には『彼らは最後まで殺しあうようです。』とかがオススメの創作キラークイーンです
・視点がコロコロ変わります。作者はプロじゃないので許して。あとキャラ崩壊も許して。
・不定期更新です。失踪する気は無いので気長にお待ちくださいませ
このチームのラストはこちら→>>231
現在、隠し階段がある部屋で出会った双葉・めめめ・いろはの三人は協力関係を結び、一緒に行動していた。
いろはが明らかに負傷している双葉とその双葉を背負っているめめめという最も殺しやすい二人を目の前にしてなお悩むそぶりすら見せず撃たなかったことから双葉はいろはが殺す利点が無いと看破し、いろはとの協力を持ちかけた。
明らかに双葉と一緒に行くことでチェックポイント巡りを渋ったいろはだったがめめめが持っている『疑似GPS機能』の拡張ソフトウェアのことを知って一転、同行することと協力関係を結ぶことを決めたのだ。
「やっと二人来た……遅刻するなんて良い度胸めぇ!ちょっと裏来るめぇ!」
「めめめの目の前で真似するならせめて捏造語録はやめろぉ!」
めめめと双葉はいろはの元に追い付いた。いろはが見つけたと言ったものは防弾チョッキ……のようなものだった。防弾チョッキと言い切れないのは普通の防弾チョッキとは違い、腹巻きのような形になっており、心臓は守られない。
「監視カメラ係の人ー!いろは今からこれ着るから映像切ってねー!」
いろははそういうと服を脱ぎ下着だけになって防弾腹巻きを着た。
このゲームでは全員が自分と似せたアバターを使っているが放送事故防止の為に体と下着が一体となっているが、その上に着ている物はこういった装備を着るために脱ぐことが可能だった。
「いやーそれにしても便利だよねーめめめちゃんのそのPDAの機能。階段までまっすぐだよー。いろはちょくちょく地図見間違えて迷ってたしー」
「感謝するならふたばちゃん背負うの変わってよーゴンゴン」
「えーっいろはあくまで一時的な同行で、いつでもふーさんに何かあったら置いてって逃げ出して良いんでしょ?じゃあいろはが背負う理由なくなーい」
「えーっ!ふたばちゃんを背負うの手伝うって言ったじゃん!嘘つきー!ゴンゴン薄情ー!酷いー!」
「それじゃあごんごんしかメリットないじゃん!たしかにおいていってにげだすのはいいって言ったけど!」
いろはの言葉に、ずっと双葉を背負い続けているめめめが抗議する。自分が進んでやっていることとはいえ、一度約束したことを反故にされたのは流石に怒りを覚えたのだろう。
さらに、双葉すらめめめに背負われている側の自分を立場を忘れて抗議した。
「ごめんごめんー!冗談だってー!ほらほら運ぶからさー」
いろはは中腰の状態で二人に背を向けた。双葉を載せろということだろう。
めめめはいろはの背中に双葉を直接移そうした。
「ちょっと待ってめめちゃん降ろして」
しかし、それに対して双葉が抗議した。
「えっ?ふたばちゃんなんで?」
めめめが疑問の声をあげる。いろはも声こそ出さなかったものの中腰の姿勢のまま双葉の方を見た。
「双葉、けがも痛くなくなってきてすこしは歩けるようになったから。まだ背負ってもらった方が早く移動はできるからごんごんにおぶってはもらうけれど」
めめめはその双葉の抗議に少しだけ疑うそぶりを見せたが結局信用して双葉を降ろした。
双葉は少し足を引きずっているが、ゆっくりと歩き、いろはの背中に載る。
三人は再び、階段の方に進んでいった。
誰だ!毎回きちんとコテハン打たなきゃいけないようなめんどくさい英語の章題なんかにしたやつ!
俺だよ!
Side:神楽すず 一人称視点 三階【01:03:18】
充電ノコリ82% 01:03:18
┏━━━━━━━━━┓
┃ ル ー ル ┃
┗━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━┓
┃ マ ッ プ ┃
┗━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━┓
┃ 機能拡張ソフト ┃
┗━━━━━━━━━┛
二人が寝静まっている中、私は起きてしまい、とりあえず時間をPDAで確認した。
開始から22時間経過したときに一階が二時間後に侵入禁止エリアになるという通知がPDAに届いたのを受けて、私達は予期せぬ出来事で侵入禁止エリアに足を踏み入れる可能性を考えて先を急いだ。
ちえりさんが持つ【地図機能拡張】のおかげで4階に繋がる階段にも比較的近い3階の戦闘禁止エリアまでたどり着いた私達はすでに疲労困憊で睡眠を取ることにした。
んですけれど……困りましたね。起きる予定の時間よりも早く起きてしまいました。
……そうだ。せっかくですし、おかしいと思っていたことを調べましょうか。
普通に考えればりこさんをちえりーらんど送りにした犯人候補には当然私達三人も入る。
それは二人もわかっているはず。それなのに私含め、一切誰もそのことを口にしない。これはおかしい。普通なら疑うそぶりくらい見せても良いのに見せていない。
……まぁ私のことを棚に上げて言っているわけですけれど。
自分も同じように言わないでいるのだから理由は簡単に思い付く。
この二人が「このチームで仲間を殺す人がいるわけないよ!」っていう頭お花畑なわけはない。
となると変に角を立ててこのチームが分裂するのが嫌だからっていうのが理由なのでしょうが、それにしても誰も持ち物チェックをしようとしないのは怪しすぎる。首輪が無くなっている以上、首輪を隠し持っている人がいれば確実にりこさんを殺した犯人だ。
それなのに誰も言わないということは……二人とも犯人じゃなくて首輪を持っていないにせよ、バレたらまずい何かを隠し持っていてそれがバレるのを恐れたからでしょうね。
……実はロッシーさんが持っていた煙玉をいくつか隠し持っている私のように。
このチームにおいて武器や拡張ソフトウェア、食糧などの隠匿は禁止だ。
最終的に誰の手に渡るかはともかくとして必ず報告しなければならない。
……基本的には見つけた人の物になるんですけれどね。
信頼のためには相手が自分に対して何が出来て、何が脅威となるかを把握することは必須だからこの方式にみんな納得した。一人だけ銃を隠し持っているとか不意うちが怖い。
私は二人が起きていないことを確かめると音を立てずに立ち上がる。そして、近い位置にいたもちさんが寝ている脇にある持ち物を入れたバッグをこっそり開けた。
中には……PDAが一つ入っている。解除条件はQ。ジョーカーではありませんね。
他に入っているのは……うわっこの人手榴弾持ってますよ。こんなもの隠し持っているなんて……
まあいいでしょう。私も持っているからお互い様です。完全には信用できないですし。
他は……基本的にみんなで分配したものですね。
あとはバッグに入れず直接手に持って寝ている可能性もある。
もちさんが寝ているところにこっそり近づいて何ヵ所かあるポケット部分をちょこんと触った。うわっ柔らかっ……じゃなくて……特に何も持っていなそうですね。
続いてちえりさんの方へ
バッグの中は……こちらもPDAが一つ。解除条件は当然7。
あれ?りこさんを殺すとなるとしたら実はジョーカー持ちで本当の解除条件は違うと予想していたけれどどちらもPDAを一つしか持っていないとなると……りこさん殺しの犯人は二人じゃないんでしょうか。じゃあ犯人はいろはさんかな。銃持ってたし。好戦的に見えたし。
持ち物は……うわぁ……この人毒薬持ってますね。ちえりさんに料理はまかせないようにしましょう。砂糖水ドライヤースコーンっていうエピソードからして元々させるつもりはありませんが。
まぁ戦闘禁止エリアの中で毒を入れようとしたらペナルティ発生しそうですし、それを思い付かないちえりさんではないでしょうし、少し気をつければ問題ないかな。
そういえばここでPDAを奪って逃げるっていう戦法も可能なんですよね……どうしましょうか。現在私が持っている破壊可能PDAは2つ。それに加えて二人の分を合わせて4つ。4つの中にジョーカーは絶対入っていないですし、私が壊さなければならないのは5つだからあと一個どうにかして見つければ……
いや、厳しいですね。この経過時間で一人で行動している時点で怪しいですからそんな簡単に取り入ることは難しいです。殺すにしても武器が圧倒的に足りない。もうすでに他は銃とか持っているはず。このまま二人と一緒に行っても解除条件はなんとかなりそうですし、止めときましょう。
私はちえりさんのボディーチェックも行って何も持っていないことを確認してから就寝した。
next……Side:カルロピノ
原作内ではどうだったか忘れてしまいましたが、この作品内では同じ種類のソフトウェアが二個落ちていることはあります。
Side:カルロ・ピノ 一人称視点 三階【01:06:44】
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このソフトウェアはPDA拡張ツール【トランシーバー】です。
二つのPDAにインストールすることで通話することができます。
※ 注 意 事 項 ※
@インストールする事によりバッテリー消費量が増加します
A強力なソフトウェアほどバッテリー消費が激しくなります
Bこのソフトでインストール出来るPDAは2台までです
Cインストール中は絶対にコネクタを外さないでください
インストールしますか?
(消耗度:普通)
はい いいえ
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わたくしははいを選択した。
このソフトウェアはわたくしが見つけたものではない。30分くらい前に???お姉ちゃんから渡されたものだ。
わたくしが居たのは換気ダクトの中。隠れていたのに???お姉ちゃんに見つかってしまった状況はたしか……
たぶんこの書き方見たら文学を少しでもかじっている人は怒る気がしますが許してください。
あとAAいる?分かりやすいと思って入れてるんですがずれまくるし、いらない気がしてきた……
管理人さんまとめるときはAAの部分をカットしたり改変してくださって構いませんよ……すいません
Side:カルロ・ピノ 一人称視点 三階【01:06:48】
「そこに誰かいる?」
驚きで動きが止まる。わたくしが今いる場所がバレた……?なぜ?
そんなわたくしの心の中を読んだかのように???お姉ちゃんがわたくしがいる方向にPDAの画面を突きだした。
その画面に映っていたのは拡張ソフトウェア『PDA探知機能』
なるほどわたくしが換気ダクトの中で殺す隙を窺っていたのがバレたのはそういうことですか。
ここはとあるお部屋の換気ダクトの中。換気ダクトの中で休憩をしていたら、三人一緒に動いていたちえりお姉ちゃんともちお姉ちゃんとすずお姉ちゃんが手分けして動くという話が聞こえたので、その内の一人を狙おうと思ったのですが……
バレちゃあーしょうがない。逃げましょう。そう思ったとき。
なんと???お姉ちゃんがわたくしに対して手を結ぼうと言ってきた。
曰く、仲良くしているけれど裏切るつもりだから手伝って欲しいその代わり解除条件に協力するとのこと。
……これはどうしましょうか。まぁ組んでもヤバくなったら逃げれば良いですしあまりデメリットは無いですね。とりあえず聞くだけ聞きましょう。
「よくぞここにせんくぷ……せん……隠れていたことに気づきましたわね!カルロ・ピノですわ。条件によっては組みますよ???お姉ちゃん。とりあえずそちらの解除条件を教えてくれませんか?」
滑舌は置いておくとして、わたくしはすぐに攻撃されないようにさっき見つけた銃を構えて言った。金網越しなので見えないかもしれませんが。
???お姉ちゃんがPDAを操作し始める。たぶん解除条件のページを開いているのでしょう。
すぐに???お姉ちゃんはPDAの画面をわたくしの方に向け直した。
解除条件は……8。
8は確かPDA五個破壊が条件でしたわね。となると一緒に行動している二人を殺してPDAを奪おうっていうことでしょうか。
となるとわたくしがこれを手伝うメリットは二人の首輪を手に入れることが出来ること。
うーん。裏切りが不安です。首輪を貰いに来たところで殺されるのは嫌ですし、あと一押しほしいところ。
わたくしは強気に???お姉ちゃんに言った。
「わたくしの解除条件は10ですわ。ただ、手伝ったことの利益が二人分の首輪だとリスクと見合いませんし、裏切られるのも心配ですのでもう一押しなにかありません?」
Side:カルロ・ピノ 一人称視点 三階【01:07:12】
それで???お姉ちゃんは一回目のお願いをちゃんとこなしてくれればりこお姉ちゃんの首輪を渡すと言って、さらにPDAの機能拡張ソフトウェア『トランシーバー』を金網の中に入れ込んできたんでしたわね。
とりあえずわたくしは協力関係を結ぶことに決めましたし、まずは頼まれた催眠ガスと拳銃を探しましょうか。
???お姉ちゃんは一度エレベーターで上の階に来ててそのときに見つけたけど、とりあえず取らずに四階のとある部屋に放置したとの話。その場所も教えてもらいましたし、二個ずつあるなら一個あげるとも言っていましたし、ささっと取りに行きましょう。
あと頼まれたのはこれは二回目でも良いとのことでしたが……誰かのPDAでしたっけ。わたくし自身で持ってていても良いですが余裕があったら渡しましょうか。
まぁ完全に信用してませんから渡さない可能性の方が高いですけれどね。
わたくし、既に首輪の作動を一つ確認していますが???お姉ちゃんにはそのこと言っておりませんし。
とりあえずわたくしは四階に行く方向に進んだ。
next……Side:夜桜たま
Side:夜桜たま 一人称視点 三階【01:03:29】
「もしもーし。聞こえますかー」
『あっ、たまさん。いや、夜桜たまさん。聞こえてますよ』
私は今、四階に上がることができる階段の近くの部屋で上の階にいるあずきちゃんとトランシーバーで通話していた。
「なんでわざわざ言い直したの。バディ組んでからはずっと下の名前で呼んでいたじゃん」
『やっぱりフルネームで呼ぶっていう有言実行をした方が良いって思ったんですよ。それと……下の名前呼ぶときに名字も付けているだけですから下の名前呼ぶだけと変わらないんじゃないかって……思いますー』
「いや、距離感結構変わるんだけど。あとシロちゃんが有言不実行するべきだって前動画で言ってたよ。まぁいいや、それよりも準備して」
『……来ました?』
私が言っていることの意味を即座に理解したあずきちゃんが更に小声になる。
「うん足音が聞こえてきた。たぶんあっちの曲がり角から。二人か三人だと思う」
『分かりました。じゃあ挟み撃ち作戦実行ですね。……トランシーバーはこのままで』
「オッケー」
いつでも取り出せるようにPDAを二階で見つけて以来着ている上着の胸ポケットに入れる。
さぁ開始だ。三度目の正直と行こう。
というわけで前半終了です。
さぁ、たまが待ち伏せしているところに現れたのは不幸続きの双葉チームなのかそれとも出番が無いなとりチームなのか!
予想でもしつつ後半戦をお待ちくださいませ
Side:夜桜たま 一人称視点 三階【01:03:29】
息を止め、耳を階段の方に研ぎ澄ませる。この作戦の唯一の懸念点は私が今いる部屋に階段に行く前に入られる可能性だったけれど、まっすぐ階段に行ってくれて助かった。
カツ……カツ……
登る足音が聞こえる。そろそろかな。
「じゃあ行くよ」
小声で言った。あずきちゃんからの返事は無い。その代わりにPDAをコツコツと叩く音が聞こえる。
……あずきちゃんわかりずらいことするなぁ。
なるべく音を立てずにドアを開けて部屋を出る。
階段に近づき、こっそりと階段に登る人の様子を確認した。登っているのは……二人。
……あのダサいくつ下わかりやすいね。
「登っているのはごんごんとめめめちゃん。それじゃあ……さん、にー、いち、ゴー!」
私は勢いよく駆け出して階段を登る。手には既に拳銃。
バンバン!
「うわぁ!」
銃声とともに上からめめめちゃんの悲鳴が聞こえてくる。あずきちゃんが二人に対して先制射撃をしたのだろう。
バン!
あれ?今の銃声……二つのものが被っていた気がする。たぶんごんごんかめめめちゃんのどちらかが銃を持っていたんだろう。
安全には狩れるとは思っていなかったけれど、できれば楽に行きたかったな。
『金剛さんが銃を持っていました。あずきは現在階段近くの柱に隠れています。あと、もこ田さんがそっちに行きましたよ』
「うん。見えたよ」
PDAから聞こえてきたあずきちゃんの言葉に対して短く返答した。
めめめちゃんが降りて来ているのを確認した私は銃を構える。
めめめちゃんはパニックになりながら降りて来ていて、私に気づいていない。
つまり今がチャンスだ。
バン!
「チッ!」
完璧なタイミングを狙ったけれど直前でめめめちゃんにバレて避けられてしまった。つい舌打ち……じゃなかった投げキッスをしてしまう。
「おらぁ!」
私に気がついためめめちゃんが何かを投げてきた。回避に成功。今投げてきたのはまきびしかな?
「おっと!」
めめめちゃんが投げた拍子によろめいて少し情けないような声を出した。勿論、それを見逃す理由はない。
私はめめめちゃんに銃を向けた。
……次はもう、外さない。
「うわあああああああ!」
めめめちゃんが大声で叫んだ。
バン!
一発放った銃弾が命中し、めめめちゃんの体は一瞬だけぶれたあと、めめめちゃんの服とダサいくつ下を履いたマネキンに変わった。
……ふぅ、やっと一人か。
「こっちキルできたけれどどう?」
あずきちゃんの方の銃声も止まっていたのであずきちゃんに声をかける。
『ごめんなさい。逃げられました……金剛いろはさん防弾チョッキみたいなの付けているみたいですね……脚、腹、肩と三発も撃ち込んだのにダメージ受けたのは脚と肩だけみたいだったと思いますー』
「うーん。防弾チョッキみたいなの付けていたなら仕方ないか……それより怪我は大丈夫?ごんごんも銃持っていたんでしょ?」
『あ、そっちは大丈夫ですー。当たってませんから』
「そう。じゃあこっち来て、首輪ほしいんでしょ?」
『分かりました。じゃあ切りますね』
ピッ
トランシーバーでの通信が終わる。
私はめめめちゃん衣装のマネキンを見下ろした。
初めての経験だったけれど……意外とすぐカタがついた。やっぱりバーチャルの中でも現実を再現している以上、漫画のような戦闘なんて起こり得ないのかも。
それにしてもさっきのめめめちゃんのよろめき……疲労してたみたいなよろめき方だったな。
こういう緊急事態のときだからこそ休養って大事だよね。
数分後あずきちゃんが降りてきた。
あずきちゃんが持っていたハンマーでマネキンを思いっきり壊して首輪を手に入れる。そしてめめめちゃんが持っていたPDAや持ち物を取ってその場を後にすることにした。
銃弾で空いた穴とかがある以上、もう一度ここでやるのはリスクが高い。次は五階に行く階段でやる感じかな。
……そういえばめめめちゃんの持ち物異常に少なかったな。まるで私達に襲われる直前に誰かに奪われたかのよう。
……まぁ関係ないか。一応襲われたときの用だけしておこう。
【もこ田めめめ】 脱落
Side:北上双葉 一人称視点 三階【01:03:54】
めめちゃんの大声からだいたい20分経った。
戻ってこないということはやっぱりあの大声はそういうことだったんだろう。
双葉はめめめちゃんが置いていった荷物を背負う。
まだ足も手も痛い。けれどめめちゃんはきっともうこのゲームにはいない。
背負ってくれる人は戻ってこない。
だから双葉は潜伏していた部屋のドアをゆっくり開いて、廊下に出た。
少しずつ進んで行く。すぐにめめちゃんとごんごんが行った階段の近くまでやってきた。
「あっ」
もっと近づかないと分からないと思っていたから、心の準備ができていなかった。まさかこんな遠い所からでも分かるなんて。
やっぱり……か。
「もう……めめちゃんのダサいくつ下は遠いところからでもよくみえるなぁ」
思わず悪態をつく。めめちゃんが……いや、めめちゃんの代わりのマネキンが倒れているのはすぐに分かった。
めめちゃんはもう脱落してしまったようだ。
双葉を置いて、いや違う。双葉の代わりに。
next……Side:八重沢なとり
Side:八重沢なとり 一人称視点 四階【01:06:51】
「イオリさん。見てください。あそこに人がいますよ?どうしますか?」
私達はようやく一時間ほど前に四階に上がることが出来た。そして今、ちょっと離れたところに足を引きずって歩いている人がいるのを見つけた。
「もしかして階段をあんな風にした犯人じゃないかって思っているの?」
イオリさんが私が言わんとしていることに気がつき、私に尋ねる。
私達がさっき登った階段には銃弾の痕があり、めめめさんのマネキンも転がっていた。……つまりめめめさんはここで脱落。ちえりーらんど送りとなった。
階段で戦闘があったのは確実。階段を上がってわりと近いところにいて、しかも足を引きずって歩いている人なんて何が飛び出してくるか分からない。
生き延びるためにはなるべく戦闘は避けておきたい。ここはバレない内に逃げるか……逆に不意を襲うかするべきだ。
しかし……
「ふたばちゃーん!脚大丈夫ー!?」
イオリさんが行ってしまった。仕方がない。私も行こう。知っているPDAの解除条件は多ければ多いほど良いですし。
「あっ、イオリちゃんなとちゃん」
双葉さんが警戒した目でこちらを見る。双葉さんが怪我した理由があの階段に関係あろうとなかろうと怪我している以上何らかの戦闘をしたんでしょう。
それなら私達を疑う気持ちがあるのは当然。
ですが……
「ふたばちゃん!イオリ達は双葉ちゃんを攻撃する気は無いから安心して!それよりその怪我大丈夫!?」
あっという間にイオリさんが双葉さんの前に立つ。既に双葉さんの警戒心は薄くなっている。
そうでしょうそうでしょう。イオリさんのお花畑っぷりを目の前にしたらどんな猛獣だって牙を抜かれてしまうんです。
よほどの敵対理由が無い限り、裏表が無いイオリさんを警戒し続けるのは難しい。
まぁ双葉さんが攻撃してくるようなそぶりを見せたらきちんと私が今持ってる武器で対応はしますが。……大丈夫そうですね。
「その怪我どうしたの?もしかして階段のめめめちゃんと何か関係がある?」
イオリさんのその言葉を聞いて双葉さんの目が変わる。……何か知ってますね。
「えっと……長くなるけれどいい?」
双葉さんはそう言うとなぜ自分が怪我したのかというところから始めた。
「というわけで今はふーちゃん一人なんです」
辛い顔をした双葉さんの話が終わる。なるほど……双葉さんの話はずいぶん長かった。消化しきれなかったので頭の中で話をまとめましょうか。
最初はシロさんめめめさんと三人でいたけれど、ピノさんによって分断されて双葉は大怪我を負った。私達も使った隠し階段を登っていく途中でいろはさんと出会って一緒に行くことにした。
ピノさん怖い……てっきり最初に動くとしたらシロさんかたまさんかすずさんだと思っていたんですけど意外。
そしてここからがあの階段に関わる話。
三階から四階に行く階段の近くまで来たところで待ち伏せされている可能性を考えて双葉さんを一度近くの部屋まで置いていくことにしたらしい。
階段は一番待ち伏せされそうなところですし、偵察なら誰かを背負っているよりも身軽な方が良い。万が一襲われたときも双葉さんがいない方が生存率が上がる。合理的な選択ですね。
双葉さんに食糧などの持ち物を一時的に持ってもらって、二人は階段に行った。
双葉さんが少し待っているとなんと階段の方向から銃声が聞こえてくる。双葉さんはすぐさま部屋から出て様子を見ようとしたが、めめめさんの大声が聞こえてきてそれを止めた。
めめめさんが大声を出したときは緊急事態の合図。二人が戻ってくるか20分経たない限り双葉さんは部屋から出てはいけないと事前に決めていたとのこと。
双葉さんはめめめさんを助けに行きたい気持ちを押さえて、きちんとめめめさんとの約束を守った。20分経って階段まで足を引きずって行ったらめめめさんのマネキンしか無かった。と。
そ、壮絶すぎる……双葉さん不幸続きじゃないですか?足手まといになった自分を見捨てずにおぶり続けてくれた人が、自分を置いて先の安全を確認しに行って殺されていたって主人公の不幸な過去の典型例みたいなレベルの酷さです。
結果的にめめめさんといろはさんが罠を踏んだおかげで双葉さんは安全に四階に到達できたわけですし……そう思うとなおやるせないというか……
「あっ!そういえばふたばちゃんの解除条件ってなに?」
イオリさんが流石にこの空気に耐えられなくなったのか話を変える。
そういえば解除条件聞き忘れていましたね。何なんでしょうか。ジョーカーでないことは既に分かっていますが気になりますね
「双葉の解除条件?双葉の解除条件は6だよ」
6!私と同じジョーカーに関わる解除条件!協力関係を結ぶことができますね。
「私の解除条件は2ですよ!敵対する理由は無いですね。双葉さんジョーカーを誰が持っているかとか知ってますか?」
「ううん。知らない。ごめんねなとちゃん」
まぁ簡単には行きませんか。Qでも無いってことでイオリさんとも敵対しないのはありがたいんですけれど。
「あー良かったーイオリ解除条件Aだから解除条件を人に聞く度にドキドキしちゃうんだよねー」
「えっ?A?」
双葉さんがその言葉を聞いて目を変える。もしかして……
「もしかして双葉さん。自分解除条件をAって名乗ってる人に出会ったんですか?」
「ううん。違う。」
「ううん。違う。」
なんだ違うんですか。ちょっと残念。
「じゃあふたばちゃんは何に驚いたの?」
「……えっと二人は階段でめめちゃんのマネキン見たでしょ?」
「はい」
「つまりめめちゃんはすでに脱落しているん……で。双葉はめめちゃんの解除条件をしっているんだけど……」
双葉さんの言葉の歯切れが悪い。言いずらそうだ。
「それで?めめめさんの解除条件がどうかしたんですか?」
「死んだめめちゃんの解除条件が……Qだったの」
「えっ?」
「えーーーーーっ!」
イオリさんどうするんですか!まずくないですかこの状況!?
Side:猫乃木もち 一人称視点 三階【01:07:50】
≪PDAの解除条件の偽装を8からQに変更してよろしいですか?≫
≪※変更してから一時間は別の解除条件に偽装することはできません≫
やっと一時間経って、解除条件をQに戻せた。
ピノっちと協力関係を取り付けるためには必須だったとはいえ、一時間解除条件が変更できないのはいつ見せろって言われるかと思うととても怖かった。
けれど何とか二人に変わった解除条件を見せずに済んで良かった。
続けてPDA探知機能を開く。
うーん既に充電が60%を切っている。流石にバッテリー消費が思いなぁ。
さて、一階のPDAは0、二階も0、三階に4つ、四階に9個……
もうこの階には私達しかいないらしい。
残り人数はあと私を抜いて9人。この全員を殺さなきゃならない。キャー大変。
……ぶっちゃけこの解除条件酷すぎない?みんなが100m走をやっている中一人だけフルマラソンやらされているようなもんだと思うんだけど。
あとで絶対プロデューサーに抗議してやる。
まぁ、運悪くもこれが来ちゃった以上はやるしかない。
焦ってはいけない。ピノっちが来るのを待つんだ。保険もすでにかけている。
私は落ち着いて待っていて……
最後にまとめて殺せば良い。
第四章【"Who killed the Jack?" "I," said the Joker.】終
残り生存者数……10人
【A】 【2】 【3】 【4】
【5】 【6】 【7】 【8】
【9】 【10】
next……第五章【埋火】
ギャー肝心の一文が抜けました。
はぁ、なんで私こんなにこそこそ色々たくらんでいるんだろう。
でも仕方がない。だって私の解除条件は9。ジョーカーで欺かないと生きていけない全員の敵だ。
という文が293と294の間に入ります
解除条件の一覧
A【ヤマトイオリ】…QのPDAの所有者を殺害する。手段は問わない。
2【八重沢なとり】…JOKERのPDAの破壊。このPDAのみ半径1m以内でJOKERの偽装機能は無効、初期化される。
3【夜桜たま】…3名以上の殺害。ただし首輪の作動は含まない。
4【木曽あずき】…自分以外の首輪を3つ取得する。首を切り取っても、解除条件を満たし外すのを待つのも良い。
5【金剛いろは】…館全域の24個のチェックポイントを全て通過する。特殊効果として地図上にポイントの表示がされる。
6【北上双葉】…JOKERの偽装機能を5回以上使用。自分で使う必要も、近くで行う必要も無い。
7【花京院ちえり】…開始から6時間目以降に全員と遭遇。死亡している場合は免除。
8【神楽すず】…自分のPDAの半径5m以内でPDAを5個破壊する。6個以上破壊した場合は首輪が作動する。
9【猫乃木もち】…自分以外の全参加者の死亡。手段は問わない。
10【カルロピノ】…首輪が5個作動すること。ただし2日と23時間より前に行うこと。
J【牛巻りこ】…開始から24時間以上行動を共にした人間が2日と23時間時点で生存していること。
Q【もこ田めめめ】…2日と23時間の生存。
K【電脳少女シロ】…PDAを5台以上収集する。手段は問わない。
JOKERの持ち主【猫乃木もち】現在の偽装……Q
元々一つの章だった四章と五章を分けているので脱落者の部屋や馬コーナーはありません。代わりにおまけとして今までの章題の解説でもします
さてついに消去法もありますが全員解除条件が分かりました。
そして一人ちえりーらんど送りに……
まだ10人もいますが実はこの作品既に後半戦です。ある一人の死がキーとなり、ゲームが急激に加速していくのです。
次の更新は大晦日ぐらいになりそうですがよろしくお願いいたします
更新乙です
これはイオリンがアレにいつ気がつくかによって展開変わりそうだね
気がつかなかったらちえりーらんど行き決定だし
すずすずが寝ている間に探ってたのに見つけられないなんて、もちにゃん一体どこに9のPDAを隠しているんだろうか
別の部屋に置いてても壊されたら元も子もないし
というかイオリンは最後まで殺さずに終わりそう
事故でも起こらない限りは
もちにゃんがjokerと銃を隠したのはピノ様の時に見つけたダクトの中かな?あれならお嬢の地図にも引っかかりそうにないし
完全に私事になりますがこのSSを友人が読んでいたことが判明しました。
友人にVチューンを紹介したことがあるのをすっかり忘れてた……
Side:花京院ちえり 一人称視点 四階【01:10:18】
ちえりはPDAの【おしらせ】の欄をタップした。
【二時間後に二階封鎖のお知らせ】
ゲーム開始から36時間経過【01:12:00】で二階が侵入禁止エリアとなります。お急ぎください。
ちえりが見たいのはこのお知らせじゃない。
ちえりは画面をスライドさせた。
【隠しコマンドについてのお知らせ】
※このメッセージはジョーカー・予備も含めた全てのPDAに送信されています。
PDAの隠し機能【メモ帳】の機能を解放するためのコマンドをお教えします!
これさえあればもう紙にいちいち書かなくてOK!
コマンドは……
ちえりはコマンドを頭に叩きこんで、【お知らせ】ページを閉じ、コマンドを打ってメモ帳を開いた。
ちえりだよ(疑心暗鬼)
ちえり達三人は四階に辿り着き、とある部屋でちょっと休憩中。
私はつい一時間くらい前にメッセージが来て知ったメモ帳機能に紙に書いていたルールの一覧とかのメモの内容をうつす作業中です。
ちえりと同じように二人もメモ写し作業をしているみたい。
……二人といえば。
……寝ているときにどっちかがちえりの持ち物を漁っていたっぽいんだよなぁ。
ちえりがなぜそれを分かったかというとちえりのバッグのファスナーの金具の位置が変わっていたから。
どっちかが寝ているときにちえりのバッグを開けたっぽい。
中身は何も無くなっていなかったし、PDAにわざとつけたキズが今持っているPDAにもあるからPDAの入れ替えも無いみたいだけれど。
……もしかしたらその犯人がりこぴんを脱落させた犯人なのかもしれないな。
……でも、ちえり的に一番怪しい、一番裏切りそうって思っていたのはりこぴんだったんだよねー。
勿論りこぴんが誰かを襲って失敗して返り討ちにあった可能性もあるけれど。
最後にこのチーム書いたところは>>240です。安価書くの忘れてた……すいません
りこぴんを怪しいと思ったのは一人だけ明らかに持っている情報が多いと思ったからだ。
PDAの時計の見方とか、戦闘禁止エリアを知らせる機械が壊れているのに気づいたりとか……りこぴんは絶対ちえりが持っていない視点を持っている。
しかも先行して色々行動していたから知っている知識……というよりはゲームの運営側だから知っている知識って感じ。
まぁゲームの運営側ならこんなに早く脱落はしないって言われたらその通りだと思うけど。
……でもゲームの運営側ならメモ帳機能事前に知ってたりしないかな。
すずちゃんは自分のメモ帳だけを開いて、ロッシーちゃんとりこぴんのメモ帳は開いていない。
もしかしたら……りこぴんのメモ帳には何かメモが残っているかも。
無かったら無かったで別に良いし、二人に内緒でチェックしてみようかな。
ちえりはそう考えてすずちゃんに向かって声をかけた。
「あっそうだすずちゃん。りこぴんのPDAちょっと貸して。ちゃんと目の前で操作するからさー」
「良いですけれど……なんでですか?」
すずちゃんが少し怪しむような目で見てきた。
まぁ自分のPDAをジョーカーに入れ替えなんぞされたら死活問題だし、すずちゃんが警戒することは無理もないことかな。
だから安心させるためにちゃんとそれっぽーいデマカセを言おう。
「りこぴんのPDAに入っているソフトウェア見たいの。だめー?」
「あぁ『ソフトウェア一覧』。良いですけれどメモって無かったんですか?」
『ソフトウェア一覧』はまだりこぴんが生きていた頃、りこぴんが見つけたソフトウェアだ。このゲーム内で手に入る拡張ソフトウェアが全て載っているカタログ。
すでにりこぴんに見せてもらってメモはちゃんと紙でとってあるけれど……
「いやーメモポケットに入れたような気がしたんだけれどさー入ってなくて……どこかしらにはあると思うんだけど探すの面倒だからもう一回メモりなおそっかなーって」
勿論嘘。本当はバックの中に紙のメモがきっちりある。
けれど今はみんなそろって紙をPDAのメモ帳に移している最中だし、理由に違和感はないはず。
「なるほど。はいどうぞ」
「ありがとうすずちゃん!」
すずちゃんからPDAを受けとる。
一応本当にPDAにもメモりなおしておこうかな。
私はそう考えてりこぴんのPDAに入っている『ソフトウェア一覧』を開いた。
【ソフトウェア一覧】
1 地図拡張機能
地図上に部屋の名前と置かれているアイテムを追加表示する。
部屋の名前と置かれているアイテムの表示はそれぞれ消すことが可能。
2 擬似GPS機能
マップ上に現在位置を表示する。
マーカーの色は赤色。
3 首輪探知機能
首輪の位置をマップ上に表示する。ただし作動した首輪は除外。
マーカーの色は黄色。
4 ジョーカー探知機能
JOKERの位置をマップ上に表示する。
マーカーの色は紫色。
5 PDA探知機能
PDAの現在位置をマップ上に表示する。ただし破壊されたPDAとJOKERは除く。
マーカーの色は青色。
6 振動探知機能
館の動体センサーが収集した振動をPDAに表示する。
ギザギザ線で震源地を囲む。
7 トランシーバー
ネットワークを利用したトランシーバー機能。
音量調整やミュート機能も完備。
8 オートマトン
ネットワーク経由で遠隔操作可能な羊型自動攻撃機械のコントローラー。
マシンガンを背中に載せており、それを撃つ。
9 ドアコン
ドアやシャッターのリモートコントローラー。
ドアコンによって閉じられたドアは他のドアコンでも開くことができる。
10 遠隔爆破装置
爆弾とそのコントローラーのセット。
爆弾を分けて複数回爆発させることもできる。
11 ジャマー
機能作動中、範囲内の物はソフトウェアの探知に映らなくなる。
範囲はPDAを中心に半径10m。
12 残り生存者数表示
残りの生存者数を表示する。
表示方式は黒地にオレンジ色のアナログ数字。
13 侵入禁止無効化
侵入禁止エリアへ侵入しても首輪が作動しなくなる。
ただし、それ以外のペナルティによる首輪作動は起こる
14 カウントダウン
今いるフロアが侵入禁止エリアになるまでの時間を表示する。
表示方式は黒地にオレンジ色のアナログ数字。
15 罠探知機能
罠を探知し、PDAの地図上に表示する。
罠の種類の表示もされる。
16 ソフトウェア一覧
PDAの機能拡張ソフトウェアの一覧を表示する。
今あなたが使っている機能。
17 ルール一覧
ルールの一覧を表示する。
PDAのルールの項にも全部表示されるようになる。
18 換気ダクト見取り図
換気ダクトの通っている部屋や通路を表示する。
また探知するソフトウェアを持っている場合、その対象が換気ダクトの中にあった場合、換気ダクトのマップにもマーカーが表示される。
よし、メモも大体終わったし、目当てのりこぴんのメモを調べようかな。
ちえりはコマンドを入力した。
メモ帳が開く。すると……
☆メモ帳☆
現在二件のメモが保存されています。
▼『サブゲームマスター牛巻』
▼『牛巻りこが脱落したワケ』
……ビンゴ!本当にあるとはちえりと思ってなかったけどね!
サブゲームマスター牛巻がすごく気になるし、まずは上から読もう。たぶん下が遺書みたいなもんだろうけど。楽しみは後にしよっと。
ふむふむ……なるほど。……長いな。
長かったのでメモの内容を頭の中でまとめる。
りこぴんは実はサブゲームマスターで、色んな情報を事前に教えてもらっていた。ルールや隠し通路、この施設の電気や水を管理している隠し部屋など、そしてこのメモ帳機能。
もう一人サブゲームマスターがいるらしいがりこぴんもそれが誰だかは分からない。
……こんなところかな。隠し部屋とかの情報はメモっておこう。
あとはりこぴんが知っている誰がどの解除条件かなどがずらっと書かれていたり、何者かに壊されていた戦闘禁止エリアの感知センサーの話とかだけどこの辺はほぼずっと居たし大体知ってる。
……さて次はお待ちかねのメインディッシュ。何が出てくるかな〜?
▼『牛巻りこが脱落したワケ』
『このメモを見てるのが誰かは分からないけど君がこのメモを見てるとき、すでに私は死んでるだろう(一度書いてみたかった)
このPDAの最初の持ち主の牛巻りこです。現在の状況はもっちーに銃で襲われて負傷中。たぶんこのあと見つかってやられるからこれはメモを見つけた人への遺書代わり。牛巻が知っている限りの情報はもう片方のメモに書いてあるから……これを読んだ人牛巻メモを生かして勝って牛巻の未練を果たして!見てるのがもっちーだったら……牛巻は完全敗北だけど!とりあえず見てる人は強く生きろよ!』
……なるほど。もちちゃんがりこぴんをカルロピノ総合病院送りにした犯人でござったかー。
もちちゃんはQなのに殺しに行ったってことはジョーカー持ちか賞金狙いだね。
というかりこぴん襲われたあとにしては文章長くない?たぶん元々こういうときのために雛型を用意していたか書いている内につい筆が乗っちゃったんだろうなー。それでも焦ってるのから抜き言葉だったり文法が少しおかしい気がするけど。
よし、全部メモ完了。
「はい。すずちゃんありがとー!」
返却返却っと。
「どういたしまして……ちょっと長かったですね。なんか新しい発見でもありました?」
「ううん。何も?」
流石に長かったかな?ちょっとすずちゃんの心証が悪そう。
でも、このチームの中にもちちゃんという爆弾がある以上、優位性は欲しい。ちえりの解除条件はグループで行動した方が良いから爆弾があると分かっていてもチームから抜けることは難しい。
だからギリギリまで一緒にいて……もちちゃんにやられる前に逃げる。そのためにはなるべく多くの情報を握って、二人に渡さないように握り潰す必要がある。
……ごめんねすずちゃん。
もちちゃんに悟られないようにりこぴんのメモもう消しちゃった♪
next……Side:夜桜たま
Side:夜桜たま 一人称視点 四階【01:13:41】
「もしもしー。聞こえてるー?」
『はぁい。ついに来ましたか?』
私は今、五階に上がることができる階段の近くの部屋で上の階にいるあずきちゃんとトランシーバーで通話していた。
さっき成功した作戦を再び実行するつもりなのだ。
「うん。足音は二つかな」
『……その中に金剛いろはさんが入っているか分かりますか?もしいたらこの作戦は実行出来ないと思いますー』
「歩いてくる二人の声が少し聞こえるんだけれど声質はいろはちゃんじゃないかなー。たぶんその内の片方はイオリン。もう片方は自信がないけれど双葉ちゃんじゃないかなって思う」
歩いている二人の内の片方がたくさん喋っているから声の判別が付けやすかった。
『なるほど。じゃあ挟み撃ち作戦take2いけそうですね。……じゃあトランシーバーはこのまま』
「おーけー」
さっきと同じようにPDAを着ている上着の胸ポケットに入れる。
前回のこのチームの動きは>>282(また書き忘れた)
息を殺して二人が階段を昇りはじめる音が聞こえるまで待つ。
……足音が私がいる部屋がある廊下を通りすぎた。その先には階段だ。
足音を確認した私は万が一こっちの部屋にターゲットが来てしまった場合の為に隠れていた机の下から出た。
そろそろ階段の半分くらいまで登ったところかな?
……?あれ?喋る声は不自然なほど大きくなってる?
……!!階段を昇る音がいつまで経っても聞こえてこない!まさかこれは……陽動!?
……私は気づくのが文字どおり致命的に遅かった。
ガチャ
「……!双葉さんが言った通り!!」
ドアを開けたのはなとりちゃんだった。
なとりちゃんは部屋にいる私を見てすぐにこちらに突撃してきた。
「ちっ!」
私は銃を構える。しかし、そのときはすでになとりちゃんが私の目前に迫っていた。
「ちょっと眠ってくださいね」
なとりちゃんが手に持っていたのはスタンガン
それが私の体に触れると同時に私の視界は暗転した。
Side:八重沢なとり 一人称視点 三階【01:03:29】
前回のこのチームはこちら>>287
「ふぅ……予想していた通りだったね」
イオリさんがたまさんの持っていた拳銃を手に取りながら言った。
あのあと双葉さんは私達に着いてくることになった。ジョーカーが必要な双葉さんの解除条件を達成するには私と行動するのが一番良い。
行動が遅くなるのはデメリットでしたが、最悪の場合自分をおいてっても良いと双葉さんが言ったことで同行することになった。
上の階へと進んでいく上で、戦闘を回避するに越したことはない。
だから、めめめさんといろはさんが襲われた原因について考える必要があった。
三人で色々考えた結果、めめめさんが死んだ原因は下と上の挟みうちだという予想になった。
直接の決め手は階段の下に落ちていためめめさんが持っていたまきびし。
>>314時間を【01:13:43】に訂正します
まきびしが下に投げられているということは下から敵がやって来たからだろう。
けれど銃を持った敵が下からやって来たならまきびし一つだけ投げるという方法で応戦するわけがない。普通なら一目散に上に逃げるはずです。そのために双葉さんと20分待てという約束をしたのですし。
それなのにそれをしなかったということは……上にも敵がいたということ。
上と下からそれぞれ偶然襲われるなんて起こりうる確率は低いですから、しかもそれはきちんと作戦が練られた挟みうちです。
作戦を練っているなら、下から来る方は階段の下側の近くの部屋に潜伏しているはず。
それが一番確実だ。
ちなみにいろはさんがめめめさんを襲った可能性は考えていない。だってめめめさんを殺すならほぼ無防備な双葉さんを殺しに行かない理由がないから。
ともかく、いない可能性は勿論あるけれど用心するに越したことはないので、二人にわざと目立つようにしてもらって、忍び足で近くの部屋を見に行ったんですけど……
まさか予想通り本当にいるとは。
「双葉さん。スタンガン貸してくださってありがとうごさいました」
「ん。どーいたしまして」
双葉さんから借りたスタンガンを返却する。
「じゃあ私は上で待ち伏せてる人を捕まえに行きますけれどどっちかたまさん見張っててもらえませんか?」
「じゃあイオリが見てるよ」
「じゃあふーちゃんにその銃貸して。階段前見張ってる」
「はい。どうぞ!」
どうやら階段前を見張っててくれるようだ。双葉さんはイオリさんからたまさんが持っていた銃を受け取った。
「じゃあたぶんすぐ戻ってきますね。たぶん上の人は逃げているでしょうし」
「はーい」
ガチャ
ドアを閉める。階段前で双葉さんと別れた私はゆっくりと階段を登りはじめた。
五階に着く。人の気配は……無い。居るとしたら……近くの部屋かな?
ガチャ
行こうと思っていた部屋のドアが勝手に開いた。
部屋の中から人が出てくる。
「はぁい、風紀委員長」
そこにいたのは……あずきさん。
「降参するので撃たないでください」
手を挙げて部屋から出てきた。
「降参するなら武器を投げてください」
あずきさんは私の言った通りに持っていたアサルトライフルを床に投げた。
私は解除条件的に戦闘はなければないほど良いし、賞金狙いで殺すのも同行者が良い顔をしない気がする。いや、負けず嫌いな彼女なら案外認めてくれそうな気がするけれど。
「よくたまさんが既にやられているって分かりましたね?しかも逃げずに降参を選ぶなんて。降参しても命が無事になる保証は無いのに……まあ私は保証しますが」
私達はたまさんを制圧するときに声を出していないし、銃声だって鳴っていない。それなのに自分の不利を見抜いてしかも、逃げずに降参した理由が知りたい。
……もしや、これは罠なのでは?私はあずきさんが口を開くのを待った。
「PDAの拡張機能でトランシーバーがありましてーそれでたまさんと連絡を取ってたのでたまさんがやられたとわかりました。でもどうやら命は奪ってないみたいなんで降参しても大丈夫だなって思いましたー」
あずきさんの答えで私は納得した。
なるほど。たまさんのPDAはまだ取り上げていないからソフトウェアがバックグラウンドで動いていても気づかない。あずきさんがそれを聞いていたのなら降参したのは納得です。
あずきさんは言ったことを証明しようと思ったのかPDAを胸ポケットから取り出そうとした。
そのとき
バン!
PDAから銃声が鳴り響いた。
えっ?
私の方をあずきさんが睨む。おそらく命を奪わないんじゃなかったのか?と言いたいのだろう。
私だって頭の中は疑問符だらけだ。
「たまさんから銃は奪っていますし、たまさんの銃を持っている人は外に出ています!下にいる二人に誰かを殺す理由は無いですからたぶん部外者が入ってきてます!」
私もこんな状況予想外。
だって双葉さんもイオリさんも殺す理由なんて……
……いや、待てよ?双葉さんにとってたまさんはめめめさんを殺した人。普通ならデスゲームで復讐するメリットなどないけれど今回は賞金システムがあるから殺すメリットもちゃんとある。
それに……
「あずきさん。めめめさんのPDAって誰が持っていますか?」
あずきさんは急な私の質問に対して疑問を抱いたようだが、一応ちゃんと答えてくれた。
「夜桜さんが持ってますよ」
……確証が持てなかったからさっきイオリさんの解除条件について三人で考えていたときには言わないで、あとでもう一度考えようと言って棚に上げたけれど。イオリさんの解除条件について一つ思っていたことがある。
イオリさんの解除条件は『QのPDAの所有者を殺害する』文を読む限り最初にQを持っていた人を殺せとはどこにも書いていない。
つまり、QのPDA……めめめさんのPDAを現在所有している人を殺せば解除条件は達成できるのでは?
もし、これにイオリさんが気づいていたとしたら!
そういえば私はイオリさんにボディーチェックを一度もしていない。よく考えたら甘かった。
もしイオリさんが銃を隠し持っていて、今の音がたまさんをそれで撃った音だとしたら。
解除条件的には私達と敵対する理由は無いけれど。
今までイオリさんが私達に一切そういうそぶりを見せなかったというのが怖い。
あの子は案外負けず嫌いでイタズラ好きだから……
ゲームに乗り気で賞金も狙っているかもしれない。
その場合の次のターゲットは……
「あずきさん!とりあえず下に行きましょう!」
杞憂なら良いけれど……!
私はあずきさんを連れて、階段に向かって駆け出した。
本日の更新はこれで終了です
次回更新で五章も終わります。
ここでソフトウェアのお話しを一つ
原作をプレイした方ならわかると思いますが、実際のゲームではソフトウェアの種別があります。ですが原作内でもエピソードによって同じソフトウェアで違う効果だったり曖昧なので、削除しました。
ソフトウェアの名前や説明文も原作からほぼ書き直している上に効果も一部変更があります。
更新乙です
お嬢といいたまちゃんを撃った犯人といい、本格的に蹴落としあいが始まってますね…
ミスの訂正です
【残り生存者数表示】と【カウントダウン】の表示方式は黒地にデジタル数字でした!
アナログ数字ってなんだよ……
あとside:なとりの階は三階じゃなくて四階です
ミス多くてすいません
Side:八重沢なとり 一人称視点 三階と四階間の階段【01:03:36】
この視点の前回→>>314
階段を駆け降りる二人の足音が響く。
私とあずきさんは今、たまさんとイオリさんが居た部屋へと向かっていた。
この建物の階段は何故か長い。私は階段を降りている間にあずきさんに要点をまとめて現在の状況説明をした。
「なるほど……イオリさんの解除条件がAで夜桜さんがQを持っているので殺す可能性があるのに、それに気づかなかったと……何で夜桜さんからPDA取っておかなかったんですか?」
「完全に忘れてたんです!」
たまさんの持っていた二つのPDAを取って置けば少なくともたまさんの反抗とイオリさんのたまさんへの攻撃は防げる。実際に何が起こっているかは分からないですけれどもしそのどちらかが原因の銃声だったら明らかに私の判断ミス。
「双葉さんがいない!?」
階段から降りるとそこにいたはずの双葉さんがいなかった。遅かった?!
ともかく銃を構えてイオリさんとたまさんがいた方向に向かう。すると
「えっ?あずきちゃん!?……なんで?」
銃を構えた双葉さんと……
「ふたばちゃん!勘違いだって!」
銃口の先に血まみれのイオリさんがいた。
うわっ!なんですかこの状況!?イオリさんは見る限り怪我をしている様子は見られないから血はおそらく……たまさんのモノでしょう。
だとしたらさっきの嫌な予感通りイオリさんがたまさんを撃って部屋から出てきて、銃声に気づいた双葉さんがイオリさんを見て警戒しているっていう感じかな?
「あずきは風紀委員長に降伏を申し出ているので攻撃しません」
いち早くこの状況で行動をしたのはあずきさんだった。あずきさんは自分が敵ではないアピールをして、あずきさんを警戒している双葉さんの銃口が自分に向かわないようにしたようだ。
「二人ともそういうことなのであずきさんは敵ではありません!攻撃の心配はありません」
二人とも私の言葉もあってあずきさんを信用した様子だ。助かった!この状況であずきさんも双葉さんの攻撃対象になったら収拾がつけられなくなる。
「……二人とも私を攻撃するつもりはありますか?」
私は状況の確認をするために二人に聞いた。どちらも首を横に振った。
「双葉さんは部屋から急に銃声が聞こえて駆けつけてみたら、返り血がついているイオリさんを発見して警戒しているんだと予想したんですけれど、それで合ってますか?」
「うん」
「違うよー!イオリはみんなと敵対する気はないよー!」
「じゃあその血はなんなん?」
「たまちゃんの血!」
「やっぱりやってるじゃん!」
「違うの!」
「たまちゃんマネキンになったってさっき言ってたよね」
「うん」
「その原因は?」
「それはイオリだけど……」
「ほら!」
収集がつけられなくなってる……イオリさんがたまさんを脱落させたのは間違いないっぽい。
けれどそれにしてはイオリさんの様子が変なんですよねー想定外のことだらけみたいな。とりあえず私達に対して攻撃する意思はなさそう。何でそう感じるのかはわかりませんが。
ともかくイオリさんは何か知っているみたいですけれどパニックで上手く言葉に出来ないようにみえるし、それが原因で双葉さんが勘違いしている気がする。
話を誘導すれば今回の話の流れが見えてくるかもしれない。けれど何を言えば……
「……イオリさん銃は持ってないんですか?」
……!それです!ナイスですよ!あずきさん
イオリさんは今明らかに武器を持ってない。それなのに返り血がついているにしてはおかしい。
これが私がイオリさんから敵対意思を感じなかった理由かもしれない。
「銃?イオリは持ってないよ!……あっ!言うの忘れてたピノちゃんが!」
「ピノちゃん?」
急になんでピノさんが?
「こっち来て!」
イオリさんがたまさんが居た部屋の方へと急に走り出した。
「イオリさん!ちょっ!まっ!」
何はともあれ追うしかない。
私達は駆け出した。
部屋の前に着くとイオリさんが部屋を開かずにドアに向かって叫んだ。
「ピノちゃーん!部屋に入っちゃ駄目って言われたけれどドア越しに話をするのはダメー?」
「……良いですよ。入ってきたら容赦なく撃ちますけれど」
「!!」
部屋の中から聞こえてきたのは間違えなくピノさんの声。
どういうこと?双葉さんはイオリさんが居た部屋に誰か入ってこないように部屋のドアが見える位置にいたはず。だから部外者が襲ってきたとしたら双葉さんはイオリさんなんか警戒しないはずだ。
それなのに双葉さんがイオリさんを警戒していたということは双葉さんはピノさんがこの部屋に入ったのを見ていないということだ。
「イオリちゃんどういうこと?説明して?」
双葉さんがそう言うと、イオリさんはこっちの方を向いて口を開いた。
「たまちゃんがイオリのことナイフで襲ってきて!防御してたらピノちゃんが換気するとこから出てばーんって撃ってきて、たまちゃんの力が弱まったからゲームだしもういいやえいってイオリがたまちゃんを刺して、たまちゃんが死んじゃって、よく考えたらわかりあえたかもしれないって気づいて、イオリのばかばかばかばかー!って言ってたらピノちゃんが銃を構えて部屋に入ってきて今すぐ部屋から出たら殺さないって言われて、部屋からイオリ出てきたの!」
???えーっと?
「ピノさん?今イオリさんが言ってたことと何か相違はありますか?」
嘘には聞こえないけれど嘘の可能性があるし、何よりもピノさんに状況を説明してもらいたい。申し訳ないけれどちょっと整理しきれなかった。
ピノさんにもう一度説明してもらおう。
「相違はないです。わたくし偶然換気ダクトにいて悲鳴が聞こえてきたので来てみたらたまお姉ちゃんがナイフを持ってイオリお姉ちゃんに襲いかかっていたので、わたくしが背後からたまお姉ちゃんを撃ちました。それだけではたまお姉ちゃんは脱落しなかったのですが、わたくしが撃ったせいで力が抜けたのかたまお姉ちゃんは刺されまいと抵抗していたイオリさんに競り負けて逆にナイフで刺されてしまったようです。で、わたくしそのままイオリお姉ちゃんも撃ってしまおうと最初は考えたのですが、だれかが近づいてくる音が聞こえてきたので、イオリお姉ちゃんを外に出すことで時間稼ぎをすることにしたのです」
話は長かったけれど分かりやすかった。整理しましょう。
まずたまさんを殺したのはイオリさん。原因はたまさんがナイフでイオリさんを襲ったことと、換気ダクトにいた通りすがりのピノさんがたまさんを撃ったこと。
ピノさんはそのままイオリさんも脱落させるのを考えたけれど、双葉さんが来る気配に気づいて、イオリさんを外に出すことで時間稼ぎをすることにした。
おそらくPDAか首輪のどちらかが欲しかったんでしょう。けれどイオリさんも殺してしまうと漁っている間にその誰かが来てしまう可能性があり、戦闘になるリスクがある。
それならばたまさんの返り血がかかったイオリさんを脅して外に出し、来ている誰かの足止めを無意識の内にさせつつ、イオリさんに事前にこの状況の説明をさせることで、戦闘になるリスクを減らすことが出来る……とこんなところでしょうか。
ピノさんはおそらくこれ以上の戦闘は避けたい。私達も無理にたまさんのPDAや首輪を狙う必要がない以上、わざわざドアを開けたりせずピノさんが居なくなるのを待つことにした。あずきさんだけは少し残念そうでしたが。
ともかくやがて部屋から一切の物音が聞こえなくなり、外から呼びかけ返事が無いのを確認し、部屋を開けると……
たまさんのマネキンが転がっており、PDAや首輪、持っていたらしいナイフまでもがピノさんに持ち去られていた。
色々あったがようやく一段落した私達はとりあえず四階に上がり、あずきさんがいた部屋にいた。
どちらかといえばイオリさんの殺しは事故のようなものですし、警戒する理由は薄い。逆に事故とはいえたまさんを刺してしまったイオリのメンタルが心配だったけれど意外と平然としていてよかった。
サブマスターだとカミングアウトしてくれた双葉さんの情報によるとこのゲームではアバターの痛覚軽減機能があり、痛みが強ければ強いほど軽減されるらしい。
だからもしかしたら私たちの精神もある程度いじって戦闘に積極的に、メンタルを強くみたいな風にしているのかもしれない。そうでなかったらいくらゲームでアバターで本当に死ぬわけではないと言っても知り合いを殺そうとするのは相当の覚悟が必要だ。
それなのにわりと忌諱感なく殺しに行けるということはいじってあるんだろう。
よく考えたらゲームのスタートとばあちゃるさんの話を普通に信じてただのゲームだと思っているのもよく考えたらおかしいですし。
「さて、これからどうしますかあずきさん?すっかり忘れていましたけれど降参していましたよね」
色々あって忘れてたけれどあずきさんは私達を襲おうとしていた。イオリさんよりも脅威度は高い。
一度降参はしたもののさっきとは状況が違う。あずきさんは自分のアサルトライフルを回収しているし、私達を殺しにかかる可能性はある。
「そういえばめめちゃんとごんごんをおそったのって二人であってる?双葉二人と行動してたんだよね。げーむだし、まったくもってうらみとかないけど気になって」
双葉さんが私の質問を遮ってあずきさんに問いかけた。あずきさんにずっと質問したかったようですね。まぁすぐに銃口を私達に向けようとしない辺り、敵対する可能性は低いから大丈夫かな?
逆に双葉さんがあずきさんを襲う可能性も考えてはいましたが、双葉さんの表情を見る限り冷静で、本当にゲームだと割りきってそうで良かった。
「双葉さんも一緒に行動していたんですね。居たことに気づきませんでした。……合ってますよ。もこ田さんを襲ったのはあずき達です。ただ、金剛さんには逃げられちゃったので、金剛さんはたぶんどこかで生き延びていると思います」
「ごんごんちゃんまだ生きてたんだー良かったーイオリ心配してたんだよね」
イオリさんが安心しきったような顔で呟いた。
いろはさんまだ生きていたんですね。このゲームの中でいろはさんにはお世話になったので私も少し心配していましたが良かった。
「あ、先ほどの風紀委員長の質問に返答ですが。あずきの解除条件は殺しが必要ないので三人を襲うということはありません。三人とは別行動させてもらいたいなと思っています」
あずきさんの解除条件が殺しに関係ないなら必要なのはたまさんの方かな?まぁいいやその辺は今聞いてしまおう。
「良いですよ。ただし、知っている解除条件とかの情報は教えてくれませんか?イオリさんも双葉さんもこれで良いですよね?」
二人が首を縦に振る。それを見てあずきさんは自分のPDAを差し出した。
「あずきの解除条件は4。現在持っている首輪は1つ。もこ田さんのです。できればたまさんのも回収したかったのですが……まぁあの状況じゃあ無理ですね」
「夜桜さんの解除条件は聞いていませんが、殺すことでメリットがあり、首輪は関係ない解除条件ってことでおそらく3か9かKですー。……ほぼ3だと思いますけれど。あとは花京院ちえりさんの解除条件はおそらく7ですね」
あずきさんが続けて自分以外の解除条件について話をする。うーんジョーカーについて聞きたい。
ジョーカーは私の解除条件にも双葉さんの解除条件にも関わってきますからね。
「機能拡張ソフトウェアでジョーカーは四人組のチームが持っていたっていうことが分かっているんですけれどあずきさん四人組のチーム知りません?」
「四人組ですか……あずきと夜桜さんが最初に襲って失敗したチームは花京院ちえりさん、猫乃木さん、りこちゃん、神楽さんの四人組でしたよ」
あー!イオリさん追わずにそのまま一緒に居ればジョーカー簡単に手に入ったんだー!完全に失敗した!!
……もう後の祭りですね。仕方ない。私はあのときジョーカーがまだ拾われていない可能性が高いと思っていた。みんなのPDAを見た確認したあとにチームから離脱することは心証が悪すぎる。かといって5人で行動していたらジョーカーを探せない。
サブゲームマスターの双葉さんが教えてくれたジョーカーは誰かの初期位置の近くに置いてあるって情報を知っていればそんなマネしなかったのに!
「それで一つ提案と……お願いがあるんですがよろしいですか?」
あずきさんが明らかにイオリさんの方を見て言った。
……イオリさんに何か提案があるの?
「何?あずきちゃん」
「夜桜さんがQを持っていました。そして夜桜さんを殺したのはイオリさんです」
あぁ、なるほどイオリさんの解除条件の話か。
「Aの解除条件にはQの持ち主を殺すとしか書かれていないからめめめさんのQのPDAを持っていたたまさんにトドメをさしたイオリさんはもう解除条件を達成しているのではないかということですか?」
「えっ!?そうなのー?あ、確かに!イオリ気づかなかった!」
えっ……イオリさん気づかずにたまさんにやり返したんですか?ええっ……
「そうです風紀委員長さん。話が早いですね。それでイオリさんに首輪を解除してもらって首輪と……できればイオリさんのPDAもほしいです。対価はあずきが持っている武器でどうでしょうか」
あずきさんの欲しいものは首輪と……PDAですか。
イオリさんが解除に成功したらあとは誰も入れなくなった一階に降りればOKだ。首輪が無くなるから侵入禁止エリアに入ってもペナルティーは発生しない。
自分のPDAが命並みに大事なのは首輪を解除するときに自分のPDAを使わなければならないからだから、マップとか機能拡張ソフトウェアが無くても良いならPDAはもう必要なくなる。
けれど……PDAはあった方が便利ですし、元々敵だった人に渡すのは……
「首輪はともかく……なんでPDAもひつようなの?」と双葉さんが言った。
「PDA収集が条件の人に渡して首輪を解除してもらえば3つ目の首輪も獲得できます。……勿論PDAは貴重ですからPDAについては諦めても良いですよ」それに対してあずきさんが返答する。
さて、イオリさんのことですから私はイオリさんの決定に従いますが……どうでしょうか。首輪はともかく、PDAはあげない方が良いと思うんですけれど。
「いいよイオリ解除したらあずきちゃんに渡すよ」
イオリさんがあずきさんの話を承諾した。嘘でしょ?
「イオリさん!?良いんですか!?」
「イオリは別にあずきちゃんに渡しても良いと思うけど……なとなとが欲しければなとなとにあげるよ?」
「いや、別に私は大丈夫ですけど……下に逃げるときにマップが無いとまずいんじゃないですか?」
このゲームの建物は階段がそれぞれ別の場所にある現実にはほぼありえないような構造になっている。マップが無かったら階段を手がかりがない状態で降りなければいけない。
「あっ、そっか。じゃあごめんねあずきちゃん、PDAは駄目かな」
イオリさんは私の言葉をきいてPDAを持たない場合のデメリットを理解したのか少し残念な顔であずきさんの方を見ながら言った。
「まぁ普通はそうですよね。大丈夫ですよ」
あずきさんも流石にPDAは貰えないと思っていたのかあっさりとして言う。
しかし、それに待ったをかける人がいた。
「……ちょっとまって」
双葉さんだ。
「みんな双葉がサブマスターだって知ってるじゃん」
「いや、あずきは初耳です」
「あれ?説明してなかったの?」
「いや、特に重要な話でも無いですしすっかり忘れてました。ごめんなさい……で、それでそれがどうかしたんですか?」
私とイオリさんは既に双葉さんがサブマスターだという情報を教えてもらえている。ペナルティーは既に一度受けているから自由に言って良いらしい。
でも何で今その話を?
「実はこのちかくに一階から六階までじゆーにいけるエレベーターがあるのです!」
「えっ?そんなのマップには乗ってなかったよ?」
イオリさんのいう通り、双葉さんが言う『エレベーター』だとわかる何かはマップには乗っていない。
けれど言われてみると……
「あ、もしかしてこのマップ上に書かれた謎の丸ってエレベーターを表していたのですか?」
あずきさんのいう通りマップには謎の丸が書かれており、その丸の表記は全ての階の同じ位置にある。何だろうなと疑問に思っていたのですがなるほど……
「これ明らかに表記が悪いですよ」
一度その場所に言ったことがある人かサブマスターじゃないと分からないっていうのは酷い。これはあとでばあちゃるさんに抗議ですね。
「でもこれでイオリちゃんはマップ必要無いでしょ?直接一階に降りられるし」
「ほんとだ!じゃああずきちゃんにイオリのPDAもあげるよ。じゃあまず解除だね!」
イオリさんはそう元気良く言うと自分のPDAを取り出した。
そのPDAを自分の首輪に当てれば解除できるはずだ。
けれどイオリさんの腕はPDAを出すまでは勢い良かったもののそこから先が中々動かない。
さっきまでと違いイオリさんも少し緊張しているようだ。まぁ当然だろう。これの結果次第でゲームに脱落し、ちえりーらんど送りにされてしまうのだから。
「……」
あずきさんも双葉さんも表情を見ると緊張しているようだ。それは私も同じ。
やる本人じゃない私達まで緊張しているのだ。
いくらイオリさんといえ、勇気がいるだろう。
「……よし、やるよっ!」
イオリさんは意を決してPDAを首元に近づけた。
イオリさんのAのPDAが首輪に触れた瞬間、首輪から音が鳴った。
『おめでとうございます!首輪の解除に成功しました!』
その言葉と同時に首輪から小さくカチッっという音が鳴った。
イオリさんがゆっくり首輪に手を伸ばし、首輪を動かすとイオリさんの首輪が外れた。
「やったー!」
首にかかっていた銀の拘束具が外れ、緊張も解けたのか。イオリさんが大きな喜びの声をあげた。
「イオリさんおめでとうごさいます!」
「イオリちゃんおめでとー」
「おめでとうごさいますー」
それに対して私達三人はそれぞれ祝福の言葉を言った。
よかったぁ……これでイオリさんは下の階に逃げこめばほぼ生存は確定。賞金狙いの人が首輪を解除して降りてきたときぐらいしか脱落することはない。
「はい、あずきちゃん。首輪とPDA」
「ありがとうございます。大事に活用させていただきますね」
イオリさんがあずきさんとの約束通り外した首輪とPDAを渡した。
個人的にはやっぱりPDAは渡さないで自分で持っておくべきだと思うんですけれど……まぁイオリさんのPDAにはソフトウェアが入っていませんし、エレベーターで直接一階に行く以上、一階には武器もソフトウェアも無いだろうから追加でPDAを獲得することも難しいですし……PDA渡しても渡さなくても変わらなそうですね。
「じゃあエレベーターにれっつごー!」
私達4人は双葉さんのかけ声でエレベーターの方に歩みはじめた。
「それにしても一階から六階まで自由に行けるとかチートじゃないですか?」
「その代わりマップからはここがエレベーターって分かりにくくなっているでしょ?」
「まあ確かにマップにはエレベーターとは書いてはいませんけれど……でも直接一階から六階に上がれるじゃないですか。しかも五階六階には軍用兵器もあるんでしょう?強すぎません?」
「……ふーちゃんはサブゲームマスターだけれど運営側ではないのでしりませーん!」
私達はエレベーターにたどり着いた。ここでイオリさんとはお別れになる。
「じゃあ先にヤマトイオリさんがエレベーターに乗って、一階まで降りたあと私達が六階に上がりましょう」
あずきさんがそう確認するように言った。六階に私達が行ったあと、一階にイオリさんが行く場合、一階二階三階より五階や六階のエレベーター前の待ちぶせの可能性が高いことを理由にその順番になった。
それにイオリさんは首輪もPDAも持っていない状態でエレベーターを使うから、探知に引っかからないためエレベーターを使用していることがばれにくい。だから私達がイオリさんの後に使ってもリスクは高くならない。
つまりイオリさんが先にエレベーターを使うことで私達が脱落するリスクは変わらなくてもイオリさんが脱落するリスクは下がるのだ。
ポチッ
イオリさんがエレベーターの下ボタンを押した。
エレベーターのドアの上にある表示を見ると六階にあったエレベーターが四階に降りてくるようだ。
エレベーター……遅いなぁ。
「あれ?」
「双葉さん何かありました?」
エレベーターがなかなか来ないけれどそれが理由ではないだろう。
このエレベーターのスピードが普通のエレベーターよりもかなり遅く設定されているということは事前に双葉さんから聞いている。こんなに遅いとは思いませんでしたが。
このタイミングで何か双葉さんに疑問ができたということはそれとは違うイレギュラーが起きているということだ。
「いや、そんなみがまえることではないけど。このエレベーター一度は使われてるっぽいよ。エレベーターはゲーム開始時点では一階にある状態だって教えてもらったから」
一度も使われていなければ一階にあるはずのエレベーターが六階あるということは誰かが一度使って六階まで上がっているということ。
そして階段で下に降りていない限りほぼ間違いなく六階に人がいる。
……待ち伏せている可能性もある。
私達は武器を構えた。もしかしたら乗った状態で降りて来るかもしれない。
だが、結局それは杞憂マンだったようで……
「誰もいないみたいだね」
結局エレベーターには誰もいなかった。
「じゃあ乗るね……あ、忘れてたーなとなと!はいこれ」
イオリさんはエレベーターに乗る直前、急に振りかえって私に袋を渡してきた。
「これは……?」
「これはおどうぐ箱に入ってた物をまとめたやつ!何かに使えるかも知れないからあげるよー」
「……ありがとうごさいます」
まあ貰っておきましょう。メモもPDAで出来るようになったので紙もペンも使わない気がしますが嵩張らないですし、ハサミなんかは使えそうです。
とか考えている間にイオリさんがエレベーターに乗り込んだ。
「じゃあ行くね!みんなさんも頑張ってくださいね。ばいばーい」
イオリさんがボタンを押したのかエレベーターのドアが閉じ、ゆっくりとエレベーターが下に降りていく。
「イオリちゃんずっと手ふってたね」
「そうですね。じゃあ次は私達が上に上がる番ですね」
エレベーターの数字の表示がどんどん小さい数字に変わっていくのを見ながら私達はのほほんと話していた。
危険があるとしたら上の階の待ち伏せだ。今エレベーターに乗り込むことができる3階も過ぎた以上、イオリさんに危険は100%無い。イオリさんの心配をする位なら間違いなく自分の心配をした方が良い。
三人とも……いや、イオリさんも含めて四人がそう思っていた。
……はずだった。
ドカン!!!
「えっ?」
下の方……エレベーターの下の方から爆発音が聞こえてきた。
「イオリちゃん!?」
まるでイオリさんが乗っているエレベーターのかご部分が爆発したかのよう。
あずきさんは慌ててエレベーターの上昇ボタンを押す。
上がってきたエレベーターには大きく爆発で壊れた壁と床、残った部分にも焦げあとがついており……
残った床にはマネキンのパーツが少しだけ転がっていた。
【夜桜たま・ヤマトイオリ】 脱落
Side:???
『機能拡張ソフトウェア:遠隔爆発装置を起動します』
『爆弾Aを爆発させますか?』
『→はい』
第五章【埋火】終
残り生存者数……8人
【2】 【4】
【5】 【6】 【7】 【8】
【9】 【10】
next……第六章【偽の女王は自らを壊す】
本日の更新はここまでです
最初の解除成功者は誰も予想していなかったと思いますしかし、まさかの死亡です。
PDAも首輪も無しにエレベーターで一階に降りるという気付かれる可能性がほとんど無いのにどうして???は爆発のボタンを押せたのか。実は今までに伏線は仕込んであるので予想できなくはないです。
ちなみにタイトルの埋火(中世の地雷のこと)はこの爆発のことを指しています。
読者視点ではたまちゃんの死にまだ何か隠されているように見えますがミスリードしないために言うと話の中で語られていることがほぼすべてです。
元々死ぬ直前のたまちゃん視点を入れる予定だったのですが、上手く出来ずに没になってしまいました。
とはいえこのままではかわいそうなので次のオマケコーナーで死んだときの状況を話してもらおうかと思っています
あと二章(+エピローグ)で完結予定です。あと少しですがよろしくお願いいたします
更新乙です
イオリン脱落しちゃったの悲しいけど、持ち物全部誰かしらに渡していたのが唯一の救いかねぇ……
お久しぶりです脱落者の部屋と六章前半戦を一気に更新します。
これまで溜め込んだ伏線や謎が六章後半と最終章ラストで一気に開放されますのでここが最後の休憩タイムかも?
おまけコーナー【脱落者の部屋】
シロ「こんにちは!シロです。今回は趣向を変えてこんな企画を用意しました!」
めめめ「その名も!」
りこ「【夜桜たまに聞いてみて】!」
たま「視聴者視点で私の動きが分かりにくかったから自分で補足説明してっていう企画だよね。ところでイオリちゃんは?さっき爆発して脱落してなかった?」
めめめ「イオリンはさっき脱落したばっかりだからまだここには来れないみたい」
たま「へぇ……じゃあとりあえずコーナー始めようか。といっても私は当事者だからどこが分かりにくかったとか分からないんだよね。そもそも分かりにくいのはドラマ性を追求して私とイオリちゃんの戦い部分を映さなかったのが原因だし。というわけで分かりにくかったところ誰か質問して?」
りこ「はいはい!なんでさくたまちゃんはスタンガン食らったのにすぐ起きれたの?そもそもさくたまちゃんがスタンガン食らったのにすぐ起きたからなの状況になったんだよね?」
たま「気がついたら起きていたし、特に対策してなかったからそれは私にも分からないけれど……たぶん服越しにスタンガンを食らったから効果が薄かったのかも」
めめめ「あーなるほどーふたばちゃんが持っていたスタンガンはシロちゃんが上から落としてくれたものだからそれで威力が下がったっていうのもあるかもね」
シロ「うーん。そもそも普通のスタンガンってきっちり首元に当てないと気絶させるのは難しいんだよね。だから服越しで一瞬でも気絶したってことは余程強いやつだったのかも。そもそも首輪があるから首にスタンガン当てるのって難しいし、ハズレ武器じゃない?」
りこ「首がネックだったか……」
たま「コラ」ぺしっ
りこ「いてっ」
めめめ「で、起きたたまちゃんはイオリンを襲ったわけだけど……襲った理由は想像が付くとして、武器取り上げられていたのにどうやって襲ったの?」
たま「スカートの中にナイフを隠していました」
りこ「おぅ…大胆ー!」
シロ「どうやって隠してたのか気になるー!見せて見せて!」
たま「シロちゃんなら見せても良いけれど……残念だけどさっきまでのゲームでの私達の体はあくまでアバターだから、今はナイフ持ってないかなー」
シロ「そうだった!……まぁシロは特権持ちですし、別にいつでもスカートの中見れますから〜?別に良いですよっ」
りこ「イオリンに襲いかかったけど失敗したんだよね?それは何で?」
たま「武器ないイオリちゃんがパイプ椅子使って思ったより抵抗してきたことと後ろから撃たれたことが原因かなぁ。力が抜けちゃってそのときにイオリちゃんにぐさっと」
シロ「たらればの話になっちゃうけれどどうすれば良かったと思う?」
たま「気絶したままでいる。なにもしないでいれば命は無事だった」
めめめ「やっぱりそうだよね。抵抗したのはやっぱり自分のPDAが3だからなの?」
たま「うん。私が起きたときイオリちゃんしかいなかったし、何故かPDAも奪われてなかったから、逃げるなら今しかないって思って」
イオリ「なになにー?何の話ー?」
めめめ「あっイオリン!」
りこ「今はねー!さくたまちゃんがどうするべきだったのかって話してるんだよ」
イオリ「へー……たぶんなとなとに捕まっちゃった時点でたまちゃんはほぼ脱落だったんじゃないかなー」
シロ「何でイオリンはそう思ったの?」
イオリ「だってイオリとたまちゃんが居た部屋の中にある武器はたまちゃんが持ってたナイフだけでしょ?で、たまちゃんが部屋の外に出たらそこには銃を持った双葉ちゃんがいるんだよ。イオリでも疑われたんだからたまちゃんなんてすぐ撃たれちゃうよ。それにね、部屋の中にいたらピノちゃんが来ちゃうから寝たままっていうのも無理だよ」
たま「すごい。なるほど」
めめめ「イオリンすごいね!」
イオリ「イオリねエレベーターの中の爆発で脱落しちゃってから負けたのが悔しくてどうすれば良かったのかずーっと考えてたの!」
りこ「あれは不意打ちだし回避しようが無いと思うけどね。でも反省会って大事だよね。いつまたばあちゃる号に強制レクリエーションされるか分からないし」
イオリ「うん。イオリもそう思う。それでね、話が脱線しちゃったけど連絡を伝えにきたの。……ん?連絡しにきたって言う方が普通なのかなぁ?でも伝えるって方が」
シロ「イオリちゃん。ごめん連絡ってなに?」
イオリ「あっ!そうだった。あのですねもうすぐこのゲームで一番迫力があるシーンが来そうだから皆見てだって!」
りこ「迫力のあるシーン……?あ、???と???が向かいあってる。……え!?ちょっ!それは不味くない!?」
ドカァン!!!
シロ「おほー!こいつぁすげぇや!」
≪ここからは第六章『偽の女王は自らを壊す』をお楽しみください≫
第六章【偽の女王は自らを壊す】
Side:猫乃木もち 三人称視点 五階【01:08:57】
この人の視点ラスト→>>293
≪機能拡張ソフトウェア:残り生存者数表示を使用します≫
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もちの持つPDAの黒い画面の全体にオレンジ色のデジタル数字が表示された。
「残り7人かぁ……」
もちは自分を抜いた全員を脱落させる解除条件の為、残り生存者数を知るとこはとても重要である。
あと七人脱落させなければならないということを確認した彼女はまた別のアプリを起動した。
≪拡張機能ソフトウェア:トランシーバーを起動します≫
トランシーバーを使うには通話の相手もトランシーバーを起動しているのが条件だ。相手がトランシーバーを開いたことを通知する機能はあるもののピノがそれにすぐに気がつくとは限らない。
しかし、今回はもちが起動してすぐにピノがトランシーバー機能を開いた。それを確認したもちはPDAに向かって喋った。
「今どこら辺にいるの?PDA手に入れた?」
『あ、もしもしもちお姉ちゃん。……わたくしは今五階の廊下です。PDAも無事手にいれましたわ』
もちはトランシーバーの機能をONしたまま『PDA探知機能』を開いた。
おそらくその表示からピノの場所を見つけるつもりなのだろう。
「ありがとうピノちゃん。それでPDAはなにを手に入れたの?」
「えーっと3とQです」
「!!……へー3とQかぁ。今一人で廊下にいるのね……ん?」
もちは何か気になることがあったのかマップのアイコンの個数を指を動かして数え始めた。
『?もちお姉ちゃんなにかありました?』
数え終えたもちは何か難しい顔をしはじめた。何か考えているようだ。
「ふぅん。ねぇさ、ピノっち。今いるとこどこだかマップでどの位置だか教えてもらえる?」
もちはピノの位置に正確に把握したが、ピノはそのことを知らない。もちはピノに自分が『PDA探知機能』のソフトウェアを持っているということを教えていないのだ。
もちはピノに『PDA探知機能』を持っている違和感を持たせないためにすでに知っていること知らないふりをして、ピノに聞き出した。
「なるほど……ここにいるんだね」
もちは何も知らないふりをして、ピノの場所を教えてもらうことに成功した。
『それでもちお姉ちゃん。わたくしはどうしたらいいですか?できればもちお姉ちゃんに会わずに渡して首輪を欲しいんですけれど……』
ピノは協力関係を結んだもののまだもちに襲われることを未だに疑っている様子だ。
「あーまぁあたしは8。殺しに行くメリットがある解除条件だし、ピノっちが疑うのもしょうがないか……じゃあ分かった。そこに置いていいよ?」
『え?そこに?廊下にですか?』
ピノの動揺がPDA越しからも声で伝わってくる。
「うん。ちょうど近くにいるしね。それと首輪だけれど……ごめん!あたし、ボディーチェックされる前に!と思って作動させといちゃった」
もちの言う通り、もちはすずが就寝中こっそりともちの所持品をチェックする前にすでにりこの首輪を作動させていた。ピノの解除条件は自分の手で作動させるなどとは書かれていないため、この作動もピノの解除条件の作動した数には加算される。
しかし、その数作動した数をゲーム中に確認する方法は用意されていない。
そのため確実に作動した数が5以上になったことを判断するために自分の目で見るしかない。もちがそれを本当にしたか判断するすべが無いピノは当然その言葉を疑う。
『え?それが睡眠薬とPDAの約束でしたよね?……PDA持ち帰っていいですか?』
「ええーっ!待ってよ!ちゃんと作動はさせてるからピノっちの解除条件自体は一歩前進してるよ!……とはいえやっぱり自分の目で見ないとピノっちも納得しないよねぇ」
「そりゃそうですよ。作動させた首輪は消えてしまうから証拠なんて残らないはず……もしかして録画するソフトウェアでも持っているんですか?」
ピノが想像で挙げたソフトウェアは存在していないため、本当に首輪を作動させたか確認するすべは作動させた瞬間を直接見る以外にこのゲームの中では存在しえない。
そのためもちがピノに提示したのは……
「あのさ、首輪を最低でも二人分、もしかしたら三人分作動させられる作戦があるんだけれど。それで首輪の一つの起動したかどうか分からなくても良くならない?」
元々渡す予定だったリターンを霞ませるような大きなリターンだった。
この人のラストはここ→>>271
【「罠」にご注意を】
・「罠」はゲームエリア内随所に設置されており、踏み板や電子センサーによって起動します
・「罠」はプレイヤーの殺傷ではなく、集団の分断を目的としたものです。しかし、場合によっては致命的なダメージを与えることもあるのでご注意くださいませ
「ま、まずいですよこれは」
とある廊下にて神楽すずは焦っていた。
「トラップがある可能性は事前にはなしていたんですけどね」
彼女の独り言は廊下に小さく反響するが、誰も返事などしない。
なぜなら……
「どうやって二人と合流しましょう……」
現在、神楽すずは一人ぼっちだからだ。
Side:神楽すず 三人称視点 五階【01:10:04】
「まぁ起きてしまったことはしょうがないですね。とりあえず合流を目指して進みますか」
すぐに冷静になったすずはひとまず目の前のシャッターから離れるように歩きはじめた。
数分前、すずもちちえりの三人はシャッターのトラップに引っ掛かり、少しだけ先行して進んでいたすずと、ちえりもちの間にシャッターが降りてしまい、分断されてしまっていた。
シャッターの防音は完璧なようですずはシャッター越しに大声で呼び掛けたが返事は無かった。
ちなみにすずから知るすべはないがちえりともちもシャッター越しにすずに呼び掛けはしていた。
「たしか何かのテレビ番組で非常時に誰かと合流したいときはどちらかがじっと留まっているよりも両方動いて探し回った方が良いみたいな話をしてたなぁ。何でだっけ?」
すずは視線をPDAのマップに向けて、小言を呟きながら歩んでいる。シャッターの反対側に行くための最短経路を進んでいるようだ。
時間の訂正のお知らせです
>>360を【01:16:57】
>>365を【01:18:25】
に変更します
すずでなければここで合流しないという選択肢を選ぶことも出来たが、すずの解除条件8はPDAを集めなければならないまののため、二人と合流する方がしないよりも合理的だ。
それにすずはちえりももちも武器こそ隠し持っていたものの、りこの首輪を持っていなかったし、PDAも一つしか持っていない。
……つまりジョーカーのPDAを所持していない。7もQもわざわざ殺しに行く必要が無い解除条件だ。
賞金狙いでなければ殺されることはない。
当然すずは合流することを選んだ。
「校則でトラックでの通学も禁止されてますし、ロケットランチャーも禁止されているけど……まぁここ仮想空間だし良いですよね」
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