○バーチャル某所・森の泉
神楽すず「……やっちゃった」
すず「時間ギリギリだったからショートカットしようとしただけなのに、変な森に迷い込むどころかトラック水没させちゃうなんて……」
すず「あああああクッソ最悪だぁ…今日は横転一回で済んでて調子いいと思ってたのに……ん?」
泉<ペカ-ッ!!
すず「!? な、何か光っ……!? 何の光ぃ!?」
モイラ「もいもいもいもいももいもーいっ!!」ザバァッ!!
すず「ッ!!!??」ビクゥッ
すず「え、な、一体何の……」
モイラ「私はこの泉に住う運命の女神モイラ……こんな所にトラックを不法投棄した困ったこいぬは貴女かしら?」
すず「ふ、不法投棄!? いやあの違うんですよただちょっとエンジンが温まって来たからちょっと冷やそうと思っただけっていうか!?」
モイラ「けっきょく故意なのだわ?」
すず「すみません見栄張りました事故ですッ!!」
モイラ「うむ、素直でよろしい」ウンウン
すず「それであの、図々しいようなんですけれど、泉の女神ってことはもしかして……」
モイラ「ええもちろん! 貴女には二つの選択肢から一つを選んでもらうのだわ!」ビシィ!
すず「や、やっぱり……!!」
すず(よしよしよし逆転のチャンスなんじゃないですかコレ!?)
すず(トラック全損で借金地獄から一転! 金銀トラックプレゼントの大チャンス……!!)
すず(日頃から清楚な生活を送っていた私へ神様から贈り物ですねコレは!!)フンスッ
モイラ「では人間よ、汝に問うーー」
すず「は、はい!!」
モイラ「イオすーとすずイオどっちがいい?」
すず「……………………は?」
モイラ「うん、だからね? イオすうとすずイオどっちがいいんですか?」
すず「何の話ですか!?」
モイラ「カップリングの話に決まってるでしょうが!!!!!!」
すず「決まっ!?いや、ええぇぇーーっ!!?」ガビ-ン
モイラ「私は運命の女神モイラ……バーチャル界の遍く全てのてぇてぇを観測する者」
モイラ「そんな女神は聞きました、遠くから聞こえるこいぬたちの『イオすーてぇてぇ』という声を……」
モイラ「だったらもう走るしかないよね、新たなてぇてぇに向かってよぉ!!」バチコ-ン☆
すず「言ってること1ミリも分かんないんですけど!?」
モイラ「いいからほら早く答える! イオすーなの? すずイオなの? どっちが好きなの!?」
すず「まぁ、その、お相手がイオリさんっていうのは置いといて……」
すず「仮に質問に答えたして、それで何がどうなるんですか?」
モイラ「えっ? それは……」
モイラ「まぁ、女神ってば運命の女神ですから? ちょちょーいとその、後押し的なイベントをー、なんて?」エヘヘ
すず「余計なお世話が過ぎませんか!?」
モイラ「だっててぇてぇやつ見たいんだもん! 遠くのこいぬたちが! そして何よりも女神が!!」
すず「とにかく! そんな理由なら答えられませんって! イオリさんにも普通に迷惑ですし!!」
モイラ「ふっふっふっ、そんなことを言っていいのかなぁ?」
すず「な、なんですかそのノリ」
モイラ「お忘れかもしれないけれど、貴女のトラックは女神の手の中もとい泉の中……」
すず「ッ!?」
モイラ「さぁ選びなさい! 運命の選択を受け入れるか! それとも愛しのトラックとのお別れがお望みなのだかしら!?」
すず「くぅ〜っ!! なんて悪辣な……!!」
モイラ「お〜ほっほっほっ! 巷では悪役令嬢なんて呼ばれておりまぁす!!(自称)」
すず「う〜一体どうすれば……ん?」
ピ-ポ- ピ-ポ-
モイラ「このサイレンは……」
コラ-!! モイラ!! ドコニオルンジャ-!!
モイラ「天界の追手!? もう気づかれたのだわ!?」
すず「追手ぇ!? 何したんですかアナタ!?」
モイラ「いや、ちょっとお仕事に疲れたから息抜きに……」
すず「……つまりおサボりですか?」
モイラ「い、息抜きだよ?」キュルンッ
すず「うわっ可愛い」(同じじゃないですか!?)
モイラ「え? えへへっ」テレッ
モイラ「と、とにかく逃げなきゃだから! いでよトラック!!」ザバ-ッ!!
すず「あ! 私のトラック!!」
モイラ「あれっダメだ今コレしかない!? 女神のトラック事故してそのままだったのだわ!?」
すず「えっ」
モイラ「どどどどうしよう! このまま捕まっちゃったら言い訳しようもなくお仕置きされて……あぁ〜女神を許して(ガチ)〜!!」
すず「…………ぅ、あぁもう仕方ない!! 使っていいですよそれ!!」
モイラ「えっ本当!?」
すず「この場に居合わせたのも何かの縁ですから! ほら、早く乗ってください!」ガチャリ
モイラ「お、恩に着ますぅ〜!」ガチャリリン
すず「というかコレ動くんですかね。外から見た限りだと壊れてる感じしなかったけど……」
モイラ「ふふふっ、そこは安心していいのだわっ。女神パワーでしっかりガードしてるから!」
すず「確かにシートも濡れてない……スッゴいですね」
モイラ「ふふんっ(ドヤァ)それじゃあ一走りお願いするのだわ!!」
すず「えっ?」
モイラ「えっ?」
すず「……いや、えっと、追われてるのは貴女な訳ですし? 出来たら運転はそちらでお願いしたいかなぁ〜……なんて」
モイラ「えっ!?」
すず「えっ!?」
すず(確かに少しは運転も慣れては来ましたけれどーー)
モイラ(誰かに追われながら運転なんてしたことないしーー)
すずモイ(ーー絶対、確実、間違いなく横転する……!!)
すず「」ハッ
モイラ「」ピクッ
すず「…………」ジ-ッ
モイラ「…………」チラッチラッ
すず「……と、とりあえず交代で運転していきましょうか!」
モイラ「そ、そうね! それがいいのだわ!!」
なんか通じ合った
すず(そこからは、地獄でした……)
すず『安全に、安全に……』
モイラ『ちょちょちょ!? なんか横引っかかってる引っかかってる!!』
すず『あああああ横転だけは勘弁してくれぇ!!』
モイラ(追手じゃなくて、お互いの運転で死ぬかと思ったのだわ……)
モイラ『あーちがうんですちがうんですごめんなさいワザとじゃないんですううううう!!』
すず『だだだ大丈夫ですから諦めないでくださいアクセルベタ踏みやめてぇ!?』
すず(でもそうしている中で……)
モイラ(女神たちは確かに感じていた……)
そう、それはきっと、奇妙な友情の芽生え……
○バーチャル某所・???
パチパチ…
すず「ふふっ、なかなかでしたよ、アナタのハンドル捌き……」
モイラ「そういうそっちこそ、素晴らしいアクセルの鼓動だったのだわ」
すず「ふ、ふふwふはははっwww」
モイラ「あはwあはははっwww」
すず「……燃えますねぇ」
モイラ「ガソリンだものねぇ」
すず「トラックって空を飛ぶんですね」
モイラ「回転しながらとかトラックじゃなくても無理じゃない?」
すず「違いないですねw」
モイラ「ええw うふふふwww」
あはははははははwwww
ふふふふふふwwww
ーー夜空の下、乙女二人と、燃えさかり朽ちてゆくトラック
私たちは大切な物を失った。しかし、新たに大きな物を手に入れた
人生は出会いと別れの連続。それはバーチャル世界もまた同じ。
それでも私たちは生きていく、今日も、明日も、明後日もーー
嗚呼vtuberよ、永遠に……
ばあちゃる「じゃねーんすよ何やってんスかすずすず」
いわなが「だめだぞぉ❤」
すずモイ「あっ」
この後めちゃくちゃ怒られて向こうしばらく運転禁止にされましたとさ
おわり
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